ザ・ムーン


掲載紙:少年サンデー1972年より
作者:ジョージ秋山
小学館漫画文庫全四巻


ザ・ムーンDATE
製作者:魔魔男爵
制作費:2兆5000億円
操縦者:サンスウ、カテイカ、シャカイ、リカ(注・人名)等9人の少年少女
武装:特に無し
必殺技:満月時に発射可能になる名称不明のビーム


概説
 「デロリンマン」、「アシュラ」などで少年漫画に過激で残酷な描写を盛り込み、当時PTAから総バッシングを食らっていたジョージ秋山が世に放つ世紀末的ロボット漫画。それが「ザ・ムーン」である。さすがに他の作品と違って人を食ったり肉親を殺したり精神病院に入れられたりしないけど、問題意識の高さは負けてない。ラストの後味の悪さは25年以上経った今でも色あせない。

あらすじ
 魔魔男爵は自らがつくりだした正義の神、ザムーンをサンスウ達9人の心正しい少年少女に渡す。9人の脳波がそろわないとザムーンは動かないのだ。初めはいきなり与えられたザムーンをもてあますが、「正義」の名の下に水爆を使い、数十万人を殺そうとする連合正義軍との戦いに9人の心が一つになってゆく。
 やがて宇宙の彼方からやってくるケンネル星人。彼らは地球をカビだらけにする機械を地上のどこかにそなえつけ、地球を滅ぼそうとする。それを防ごうとサンスウたちはザ・ムーンで機械を壊そうとするる。だがすでにカビは広がりはじめ、サンスウたちの体もおかされていた。死を目前にして結婚を誓い合うサンスウとカテイカ。仲間は一人、また一人と死んでゆき、機械まであと一歩に近づいたサンスウも息絶えるのであった。



感想
 「神は死んだ!」今の世では神は死んだと考える魔魔男爵は自ら正義を発明する。その名はザムーン。「力がなければすべてが無意味だ!力がなければすべてがむなしい!力こそ正義だ!ザムーン!!」・・・なんだかタイガーマスク二世に怒られそうなこと言ってますな。ちなみにタイガーは「力が正義ではない!正義が力だ!」というのが持論でした。・・・それはさておき、魔魔男爵は科学の粋と膨大な年月と巨額の資金(2兆5000億円!!)を費やしたザ・ムーンをサンスウたち心正しき9人の少年少女に渡し、その力をもって正義を示させようとする。さらに自分の部下「糞虫(なんて名前だ)」に密かに9人を守らせる。サンスウたちは突然神にも悪魔にもなれる力を持ってしまったのだ。サンスウたちは連合正義軍(全員オロカメンそっくりの仮面をかぶっている)との接触により正義の定義に疑問を持つが、自らの正義を信じ連合正義軍と戦う。また社会から見捨てられた老人が社会への復讐のために巨大ロボットを操る老人問題を扱った話や、それと戦うサンスウたちが般若真経を 唱えて精神を集中させザ・ムーンを動かすなどのいろいろと話題に事欠かない場面が多い。一時期はアニメ化の話も出ていたそうだが、もし実現していたら「スーパーロボット大戦」でエヴァと夢の競演を果たしていたかもしれない。
 この「ザ・ムーン」もザンボット3と同じく主人公全滅型のひどい話である。しかも本作はザンボットよりひどい。まずザンボットでは勝平は生き残ったが、ザムーンではサンスウも死ぬ。また勝平はまがりなりにもガイゾックのボスを倒したが、サンスウはカビ発生器の一歩手前で息絶えている。カビ発生器が健在している以上、地球人は全滅だろう。主人公たちは全員死亡、地球は(おそらく)滅亡という救いのないラストは後味の悪いことこのうえもない。別の項で紹介したイデオンも知的生物全員死亡というすさまじいラストを迎えたが、最後には救いが残されていた。イデオンの主人公コスモ達の戦いは無駄ではなかったとされている。だがこのザ・ムーンでは主人公サンスウたち9人の死は何の意味もないのだ。大体この地球の危機にザ・ムーンの製作者である魔魔男爵は何をしているのか?神の死んだ世の中なんてどうでもいいと思っているのだろうか。大体自分が正義を見失ったからって難の関係もない小学生にとてつもない力を与えて正義のありかを示させるなんて、神は死んだといっておきながら自分が神にでもなったつもりなのだろうか。
 作者のジョージ秋山氏はほかにもデロリンマン、アシュラなどザムーンに優るとも劣らない悲惨な話をかいており、漫画を通して社会に問題意識を投げかけている。

(文中敬称略)

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このアイコンは嵯峨野さんにリクエストして作っていただいた、恐らく世界初のザ・ムーンアイコンです。嵯峨野さん、どうもありがとうございまっす!