第1章-1:ゲームセンター
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オープニング


『おりゃ!そりゃ!とぉりゃ!』
『負けるか!いけぇ、伸びる首で!!』
『甘いっ!』

いつものゲームセンターでのいつもの時間。
俺と一馬が格闘ゲームではしゃいでいると、
いつの間にか後ろに人だかりができ始めていた。
実はこれもいつものことだったりする。

「あぁ!真下くんが負けちゃうよぉ!」
「もぉ、相手のブサイクも少し考えろってとこだよね!」

うるさい。いや、むしろ五月蠅いと言わせてもらいたい。

『はははっ、美晴、隙ありぃ!』
『し、しまった!!』

一瞬の隙を見せてしまったがために、
一撃必殺最終奥義を決められ、俺のキャラクターが吹っ飛ぶ。
く、くそぉ・・・集中力が途切れちまった・・・。

『美晴、これで俺の通算15勝14敗。勝ち越しだな。』

筐体から顔をのぞかせ、勝ち誇った顔で俺の顔を見る一馬。
本当にうれしそうな顔をしやがる。
そして、俺はきっと本当に悔しそうな顔をしているに違いない。

『次回は必ずイーブンに戻させてもらうからな。』
『ふふふ、いっていろ。次回も俺の勝ちというシナリオだ。』
『まぁ、次回の勝負までこのゲームが残ってれば、だけどな・・・』

俺と一馬が熱く戦う格闘ゲーム、「大江戸 de ファイト!」は
はっきりいってあまり人気がない。
大味、そして、日本文化を意図的に間違っているキャラクターたち。
「芸者」っていう名前のキャラクターはこれ以外には見たことがない。
人気がないため、コマンドもまったくの未公開。
俺と一馬の2人が一つ一つ技を解明して言っただけに、
ほかのゲームとは思い入れが違う。・・・のだが、
正直いって、俺たち以外のやつらがプレイしているのを見たことがない。

「真下クンすごぉい!」
「何でもできちゃうんだね!」

一馬の周りを取り巻く女性たち。
制服からして、どれもこれもはじめてみる顔ばかり。
だが、どうやら一馬にとってはどの顔も見たことのある顔らしい。
すこしうざったそうにしながらも、
きっちりひとりひとりと言葉を交わす。
全員の名前をしっかり覚えているところが微妙にすごい。

・・・まぁ、たしかに一馬は男の俺から見てもかっこいいよな。
自然と周囲に女性が集まってくる。さらに男もなぜか集まる。
行動力やら、指導力とか、みんなが引っ張られる不思議な力を持っている、
とでもいえばいいのだろうか。
ちょっと前のことば使うなら、カリスマがあるってやつだろうか。

俺も一応年頃の男だから、一馬にあって俺にないものはなんだろうか、
と考えたことがある。・・・が、なんだかひどく落ち込んでしまった。
あいつは俺にないものを持っている。
それなのに、俺と一馬が自然と親友と呼び合える仲になっているのは
とても不思議なことだった。

不思議といえば、一馬に彼女がいないということも不思議だ。
21世紀、学園7不思議のひとつにすらされている。

黙っていても勝手に周囲にうわさが立ち上るのだが、
一番近くにいる俺から見て、そのどれもが本人のあずかり知らぬところで
根拠なく立ち上るうわさばかりだ。
特定の女性との関係がない、そんなところがまたいい、
なんて話になるので、もてない俺としてはもう勝手にやっててくれ、
という感じなのだが。

「あ、わりぃ、美晴。ちょっと席はずすな。」
「あぁ、わかった。」

周囲を取り囲まれて歩き出す一馬。
きっと、一緒にプリクラかなんかを撮りに行くんだろう。

「ああいったマメさがえらいよな・・・」

「もてない男の僻み(ひがみ)みたいに聞こえるよぉ、美晴ぅ・・」

いつの間にか俺のそばに立っていた茜がつぶやく。

「うおっ!、黙って俺のそばに立つな!」
「某国のスナイパーじゃあるまいし・・・
大体、一人でつぶやいてる人のほうが世間的に迷惑じゃない?」
「いや、俺は冷静に自己分析をだなぁ・・・」
「で、何か建設的な改善策はできた?」
「・・・いや、とくには。」

遠くから、小さく舌打ちの音が聞こえたような気がした。
ちらりと目をやると、男の二人連れがこちらを指差しながら
何事か話している。
「・・んだよ・・・男連れ・・・かよ」
「・・・・じゃねえか・・」
わざと聞こえるようにいっている2人の会話が耳に届く。
どうやら、茜に声でもかけようとしていたようだ。

「ね、美晴。」
「ん?」
「真下君に対抗して私たちも一緒に撮ろうよ。」
「んな、こっ恥ずかしい・・・」
「結構楽しいんだよ?美晴、撮ったことないでしょ?アレ。」
「まぁ、ひとりで撮るもんじゃないからな。」
「今日は特別サービスで私が一緒に写ってあげるから、ね。」
「いや、別に前からやってみたかったわけじゃないし。」
「いいからいいから、次のサービス日程は未定だよ?
今、撮っておかないともうチャンスないかもだよ?」

なかば強引、というより完全に強引に茜に手をとられ、
遮光用のカーテンのついた筐体の前につれられていく。
カーテンの向こう側には原色をふんだんに使いこなした
メルヒェンな筐体。
むぅ、光の三原色が目に痛いぜ。

「えっとぉ・・・ここ、かな。」

画面の説明書きを見ながら茜が操作をしている。

「なんだよ、茜。お前こういうのやったことないのか?」
「やったことないわけじゃないけど・・・前にやったの結構昔だったから。」
「いかんね、時代の最先端をいく女子高生がそんなことでは。」
「いいもん、別に最先端をいってなくたって・・」

ひとつ操作をするたびに、ピロリロリ〜ン、とこれまた
メルヒェンな音が鳴り響く。
むぅ、電子の和音が耳に痛いぜ。

そんなことを考えていると、画面に
「お気に入りのフレームを選んでね」との文字。

「ねぇ、美晴はどれがいい?」
「ん〜、そうだな・・・」

ボタンを押すごとに色とりどりのフレームが出てくる。
何度かボタンを押したところで、2人の動きが止まる。

・・・夕焼けの海。

・・・あの海に少し似ていた。

「これにしよっか。これでいいかな、美晴?」
「ん、そうだな。これがいい。」
「・・じゃ、もうちょっと真ん中にきて、美晴。」

撮影の関係で、俺の顔と茜の距離が近くなる。
小さいころからずっと一緒だったから、別に恥ずかしいとか、
緊張するとか、そんな浮いた感情は生まれてこない。

ただ、多少の贔屓目が入っていたとしても、
茜はかわいい部類の女の子に入ると思う。
さっき、声をかけようとしていた2人組みの気持ちも
まぁ、男だったらわからないでもない。

だが、不思議なことに茜には浮いた話がひとつもない。
いや、俺が知らないだけなのかもしれない。
ただ、俺が知っている中にその手の話がないのは確かだ。

ちなみに、茜に彼氏がいないことは、
一馬に彼女がいないこととあわせて
21世紀の学園7不思議のひとつに数えられている。

ぱしゃっ!

シャッター音が響き、画面に2人のスナップが表示され、
「これでいいですか?」との文字。
ほぉ、取り直しもできるのか・・・さすが21世紀。

「あぁ〜!!美晴、何であさっての方向見てるのぉ?」
「いや、ちょっと考え事を・・・」
「もぉ、私、めちゃめちゃカメラ目線だし・・・」
「うん、場慣れしている感じだな。」
「なんか、私だけ張り切ってるみたいな感じ・・・」
「まぁ、茜の写り方のほうが正しいと思うぞ、この場合。」

しばらくの間、むっとした表情で画面を見つめていた茜は
少し、くすっと笑って決定ボタンを押した。

「おい、取り直しもできるみたいだぞ?」
「いいの。」
「まぁ、茜がいいっていうならいいけど。」
「うん、いいの。・・・だって・・・・・・もん。」
「あ、わりぃ、何?ちょっと聞こえなかった。」
「いいのいいの。ほら、でてきたよ。」

筐体の横についていたハサミで半分にカットすると、
その片方を俺に押し付ける。

「へぇ、このハサミはこのためについていたのか・・・なるほどねぇ。」
「なんか、美晴って時代に取り残されてない?」
「いいんだよ、俺は俺の道を進むんだから。」
「ふ〜ん、そういう言い方するとかっこよく聞こえないこともないね。」

手渡された片割れのシール。
果たしてこの使い道があるのかないのか、俺には予想もつかない。
・・・どうすんだよ、これ。
とりあえず携帯に貼ったりすればいいのだろうか。

使い道のないシールの使い道を考えあぐねていたところで、
野暮用を片付けた一馬が俺を見つけて手招きする。

「お、いたいた、美晴。もう1勝負しようぜ!」
「オッケー。じゃあ、次はいつもの坑道バトルだな。」

「じゃ、悪いけど、弘瀬さん、美晴を借りてくよ。」
「茜、あっちでもう1勝負してくる。」
「はいはい、私も後でそっちに行くね。」


・・・・・ひとり、茜は自分だけに聞こえるように、
さっき作ったばかりのシールを見て、
とどかなかったさっきの言葉をつぶやく。

「・・・だって、このほうが『私たち』らしいもんね・・・」

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