スノウクラッシュ 篇

2002/02/13

 おまえは、泥を食ったことがあるか?

――浅倉威「仮面ライダー龍騎」

 白雪は、毎日僕に昼の弁当を作ってくれる妹だ。それ以上でもそれ以下でもない。キャラ紹介でも「にいさまに食事を作ってあげるのが生きがい」とある。ありがたくはあるが、しょーもない生きがいであるな。もっと夢を見て生きようぜ。「本の虫 本を取ったら ただの虫」という川柳を知っているかい? 兄と別な学校に通っているにも関わらず毎日弁当を持ってくるあたり、決してバカにできない見上げた根性の持ち主ではあるのだが。弁当を30分以内に持っていかなかったら即処刑(註1)、とシスターズの誰かから言い渡されてたりして。

 鯉のウロコチップチョコレモン風味なるブツを白雪から手渡された。さすが料理をアイデンティティとする白雪、気合が入っているのは認めよう。しかし気合が入りすぎて鯉ともウロコともチップともチョコともレモンともつかぬ謎食品となってしまっているのは惜しい。

「なんでこの魚屋ではワニ売っとらへんねんワーレー」イベント発生。白雪よ、ワニは魚じゃないんだ。わかるよね? まあそんなことを言ったら鯨も魚ではないのだが。

 毎日白雪と登下校。なのだが今日は白雪と別れた途端春歌出現。う、うああーーーっ! 今度はすんでのところで白雪がシュヴァルツヴァルト殺人空手の餌食に! 素手で殴りあったら春歌最強だろうなあ。対抗しうるのはメカ鈴凛か、魔界のプリンセスとしての潜在能力を秘める千影くらいか?

 公園で出くわした咲耶とテレビドラマの話をする。彼女、「国際調査室所属・さわやか男爵」なるドラマに夢中らしい。男爵が毎週カッパに会う感動的なラブストーリーだとか。さわやか男爵……! なんというイカしたネーミングセンスなんだッ! みてェ! 愛のつむじ風並に気になる。

(註1)30分以内に持っていかなかったら即処刑:「スノウクラッシュ」(ニール・スティーヴンスン、早川SF文庫)は「マフィアのピザ屋は30分以内に配達できなかったら運び手を即処刑」という話なのです。
2002/02/16

「パパとママがいなくなっちゃうの」
 昼休みに花穂がいきなりの爆弾発言。というかおまえにはパパとママがいるのかよ!? どう考えても僕の両親ノットイコール花穂のパパとママである。もう僕の生活環境の謎なんてどうでもいいけどね。いつまでたっても真実にたどり着けないので、――僕は考えるのをやめた。

 それはさておき花穂の両親はひどい。たしかに花穂のダメっぷりは両親を海よりも深くがっかりさせているだろうが、しかしそんなの育児放棄の正当な理由にはならないだろうが……と思っていたら、よく聞くと両親、単に旅行に行くだけらしい。なーんだ。それはそれでひどい話だが、しかし花穂を旅行に連れていったらどんなことになるやら。

 鍵持たないでオートロックの部屋から出てしまう。
 公共交通機関を利用中にトイレに行きたくなる。しかもゲロとのダブルパンチ。
 どっかに財布を落として右往左往する羽目になる。

 わかりました花穂の両親殿、旅行の間花穂の面倒はきっちり僕が見ます。次から次へとドジをやらかして、旅行を狂気と混沌の渦に引きずり込むであろうことは想像に難くない。もし海外旅行だったら、ドジで己の命を危険に晒しかねない。

 商店街でデートしてください、とのメールを受け取る。何をするのかと思ったら無差別デザート食べ歩きツアーだって。しまいにはトロの乗ったアイス(註1)とかパイナップルが一個丸ごと入ったクレープとか食べさせられた。というか後者は単なるパイナップルだと思った。僕は全てを食べ尽くすのにかなりの苦労を強いられたのだが、白雪は平気な顔で全てを平らげていた。まあ、女性は生まれながらにして九つの胃袋を持つというしね。

 ピーマンとトウガラシは兄妹だ、などとわけのわからないことを白雪が言い出した。まあたしかに、ピーマンはトウガラシの変種(註2)であるからして、血縁関係になぞらえるのはさほど不自然なことではない。だがピーマンを妹と呼ぶのはどういうことだ。ピーマンが雌に見えるのかよ!? まあ雄というわけでもないけどね。

 クラスメイト弁当略奪イベント発生。主人公のブチ切れぶりも凄いが、このクラスメイトもなかなか極悪だよな。「そんなに大事なお弁当なら、名前書いて金庫にでもしまっときなって。そこで二人で食うんだな!!」ふむ。このような輩にかける情けは、ない。おまえなんかが白雪の弁当を食べる資格はないんだぁ! トウガラシ食え! トウガラシでも食っとけェェーーーッ!!

(註1)トロの乗ったアイス:一瞬ずっといっしょのトロ歌と思ったがそんなことはない。と思いたい。

(註2)ピーマンはトウガラシの変種:フランス語でトウガラシのことをピマンというからピーマンという名前になったらしい。しかしそれではフランス語でピーマンはなんというのだろう。謎。

2002/02/17

 商店街で白雪と遭遇。とある食材を買いたいのだがその店が怖いのでにいさまおともしてください、といわれた。手を引かれるままに連れられていった先はアフリカンな店だった。なんでも、ダチョウの卵がほしいらしい。ダチョウの卵ならデパートでも売っているじゃないか、と言ってみたものの、なんでもこっちの店のほうはダチョウを放し飼いしているから卵が新鮮なんだって。なんでこの街にはダチョウの卵などという奇抜なものを売っている店が、しかも二つもあるのだろうと思いながら、僕は卵を略奪するためにダチョウ放し飼いの庭へ赴いたのだった。セルフサービスかよ!? なんちゅうでっかいダチョウや! と驚愕しながらも悪戦苦闘の末卵ゲットに成功いたしました。白雪はたいへんなダチョウマニアですね。

 珍しくも、白雪が花穂のごとくこけて作ってきた弁当をひっくり返し台無しにしてしまった。いつぞ、クラスメイトに弁当を食われてしまったときのような大泣きである。ま、白雪にとっては料理が唯一のアイデンティティなのだ、これは己のアイデンティティを否定されるに等しき大事である。そこを汲み取り、僕は優しく白雪をなだめた。相手の気持ちを思いやるというのはとても大事ななことだ。というか妹が12人もいる身ではそれがなくては生きていけない。

 衛から相談のメールを受け取った。なんでも白雪がひどく疲れているようだ、と。あと四時間目になると決まって姿を消す、とも。そりゃまあ毎日僕の学校まで弁当を届けに来ていたら必然的にそういうことになるだろう。何が白雪をここまでさせるんだろう。本当に「30分以内に弁当届けなかったら処刑」とか言われてるんじゃないだろうな。

 で、言ってやったんですよ。授業をサボってまで僕の為に弁当を持ってくることはない、ってね。そうしたら途端白雪ブチキレですよ。
「にいさまなんてやせ細ってしまえばいいんだ! バカバカバカ――ッ!」
 だって。なんでここまで言われねばならないのだ。

 公園のベンチに寂しそうに座っている白雪を発見。そこで、何故白雪は強迫的なまでに僕に料理を食わせようとするのか、その理由を語ってくれた。

 昔、白雪が砂場で遊んでいたくらい昔の話。白雪は泥団子を作って僕に食わせようとしたことがあるらしい。ちょうどその場に居合わせた白雪の友達は、「泥団子が食べられるわけないよ」と至極まっとうな意見を口にした。それを僕は白雪が馬鹿にされたものととってしまったらしい。僕は泥団子を男らしく食らい、そして人事不省に陥った。この事件を白雪は負い目に思っているらしく、だから僕においしいものを食べさせなきゃ、と子供心に誓い、そして今日に至っている。ということだ。

 …………
 泥が降っていた。
 思い出の中を、黒い泥が埋め尽くしていた。
 …………

 ひょっとして元凶は僕ですか? 「30分以内に弁当届けなかったら処刑」という強迫観念を植え付けたのは幼い僕の不用意な行動ですか――ッ!? 過去の罪は尾を引くというかなんというか……。

 クリア。本当にメシの話題しかなかった。最後がちょっとKANON風味(註1)だった、と考えるのは僕の穿ち過ぎですか? あと2回連続で攻略失敗して攻略サイトに頼ったのも痛恨。3月11日に衛のメールを見るのが必須条件ということに気づかなんだわ。参るねえ。

 次はその衛だ。白雪のエピソードからわかるとおり、姉妹思いのいい娘です。

(註1)ちょっとKANON風味:もう覚えてもいない自分の行為が他者に多大な影響を与えていた、というところはKANON的であるなあと思うのですが。