2001. 7. 29.
おそらくこの日付はプロレスファンにとって
これから永遠に語り継がれる日になるであろう。
この日 2人のプロレスラーがプロレスという世界を飛び出し、
外の世界に打って出てそれぞれ勝利した。
一人は 新日本プロレス所属のケンドー・カシンこと石澤常光、
もう一人は ”邪道”大仁田 厚。
まずは石澤である。
彼は昨年8月に 総合格闘技PRIDE西武ドーム大会で
ハイアン・グレイシーに惨敗し、プロレスファンを落胆させた。
早稲田大学時代には全日本選手権優勝など数々の輝かしい実績を残し
アマチュアレスリングでは無敵状態に近いものがあった。
彼と同時代にレスリングをやっていたほとんどの人間にとって
石澤は憧れの存在だったと聞く。
昨年のPRIDEでの石澤の敗退のショックはプロレスファンのみならず、
アマレス関係者、そして早稲田大学関係者(?)にとって
あまりにも大きいものがあった。
決戦直前 週刊プロレス誌上に掲載されたカシンのインタビューは
ファンにとってはショッキングなものであった。
「もし石澤が負けたら?。彼の覚悟はもう決まっている」
素顔の石澤を代弁し、カシンが語ったこのコメントにより
プロレスファンの間で もし今度負けちゃったら、カシン引退するんじゃないか説
(プロレス界そのものから足を洗う説が大多数を占めた)が沸き上がり、
それほどまでの覚悟をもって試合に臨むのなら ここは会場に行って
応援しようじゃないかというムードがグーっと高まった。
(私ヒールホールドもその一人だ。チケット代の出費はかなり痛かったが…)
この一戦は桜庭の試合をも差し置いて堂々のメインイベントに君樹した。
そして桜庭の試合が終わる。
リングアナのコールの後についに…。
「Problem!!」
昨年同様 カシンの入場テーマ 「スカイウォーク」が
さいたまスーパーアリーナに鳴り響く。
「うおーー!!」 「カシンー!!」 「石澤ー!!」
入場テーマが聞こえないほどの大歓声だ。胸が熱くなる。
昨年と同じ思いだけはさせないでくれ、俺達がついてるぜ。
僕も含めたカシンファンはこんな気持ちを石澤に託していたので 熱くなって当然である。
一方のハイアンはこれまた昨年と同じく 小柳ゆきで入場。
あいかわらずの失笑シーン。
前回はプロレスの相手の技を受けるくせが災いし、
ハイアンにパンチのメッタ打ちでKOされてしまった石澤。
そのためかゴング前から油断を見せない。
そしてゴング。
昨年と違い 石澤はグランドで圧倒的に支配する。
これぞ石澤常光の真骨頂。問題はここからだ。
「このファイト(バーリートゥード)で一番大事なこと、
相手が泣いていても殴れるか。相手が女性でも子供でも殴れるか。
殴れなくては勝てない。」
直前インタビューのカシンのコメントはこんな感じだった。
横四方の状態からガンガン膝を叩き込む。石澤にもう迷いはない。
試合開始から4分51秒 ハイアンは試合続行不可能をアピール。
そして試合終了のゴング。
「よっしゃー!」 「勝ったー!」
ファンの歓喜と興奮のなか、石澤はマイクを手にする。
「ひとこと、ありがとう。それだけです。ありがとう。」
こっちがありがとうである。
大感動だ。埼玉まで足を運んだかいがあった。
試合後、石澤はマスクを被り ケンドーカシンとして
「石澤はもう試合が終わったんで家に帰ったから俺が喋ります。」
と らしさ爆発、センス抜群のリアクション。
この行為についてなにも知らない一般マスコミは
非難したところも少なからずあったという。
プロレスファンからすればお前ら馬鹿かと言いたい。
僕達は「試合を振り返ってどうですか?」と聞かれ
「お前が振り返れ。」と返すカシンも含めて石澤を応援しているんだ。
間もなくケンドーカシンは新日本プロレスに戻ってくるだろう。うーん楽しみ。
* * * * *
さて さいたまスーパーアリーナが熱狂のるつぼとかして
私 ヒールホールドも仲間達と会場で知り合ったカシンファンと つぼ八で一杯やっている時、
実はもうひとりプロレスラーとして 異種格闘技を戦っていたのが ”邪道”大仁田厚である。
参議院比例代表候補として自民党より出馬。
17日間の選挙戦をリング上での戦い同様 熱く戦った。
僕は はじめ大仁田を好きではなかった。
何度も引退、カムバックを繰り返し、何やってんだという気持ちがあった。
しかしながら大仁田が新日本プロレスに殴りこみをかけて
彼のファイトを身近に観るようになってだんだん好きになった。
大仁田のファイトは悲壮感が漂っている。
それゆえ売れないバンドマンやフリーター、受験浪人やリストラなどで
人生の岐路に立っている人間は大仁田に共鳴する人たちも多い。
特に長州戦を実現させ「どんなちっぽけな存在だって夢を見たっていいじゃないか!」
とコメントしたときは思わず拍手を送りたくなった。
選挙活動最終日 大仁田のプロレスラー魂がついに爆発する。
「いままでは政治家流でやってきましたが、
最後にプロレスラーに戻らせていただきます。」
選挙カーの上でこう叫ぶとあのいつものセリフが…。
「オイ、オイ、オイ、オイ、オイ…。一生に一回、胸一杯生きようぜ!」
叫び終った瞬間、選挙カーのスピーカーからはなんと
「ワイルドシング」(大仁田のテーマ曲)が流れ出す。
そしてその15分後 早々と当確マークが。
最終的に46万1021票を集め 見事に猪木、馳に続く 3人目の国会議員レスラーが誕生した。
タレント議員だと言いたければ言えばいい。
名簿順位が上だから当選したと言えば言えばいい。
しかし選挙演説中の大仁田の周りには若者が大勢集まっていた。
大仁田の演説には見るものを引き込む何かがある。
だから涙のカリスマなんだ。
(他の議員の皆さん若者が何人集まりましたか)
個人的には2年前に大仁田が定時制高校に通ったことは凄いと思う。
40を過ぎて高校の制服をなんのためらいもなく着れる人間なんて
そうはいないだろう。
「俺が友達になるのではなく、あいつらが友達になってくれた」
これは大仁田が高校の卒業式に言った言葉である。
定時制高校のイメージアップに大仁田はかなり貢献したはずだ。
少なくとも僕は定時制高校、定時制大学に対する偏見は無くなった。
辛口ピーコですら、大仁田の高校生活には涙を流すほど感動したのだ。
断言しよう、大仁田は威張ってばかりの政治家とは違う。
(とか言って何年後かに汚職とかしてたら今回のコラムって一体)
とにかく7.29は、舞台こそ違えど 2人のプロレスラーが圧勝した。
最後に大声で言いたい。
プロレスファンでよかった、本当に。
* * *
◆次回予告◆
次回のジャンスポはプロ野球の両リーグ優勝が決まったころに
お送りできればと思っております。
底冷えのプロ野球の打開策とは、そして今年メジャーに行って欲しい選手とは。
それまではスポゲーレビューをお楽しみ下さい。
乞うご期待!