てんとう虫コミックス第11巻


もしもボックス   9頁 小四76年1月号
 正月に凧上げで遊ぶみんなだが、のび太の凧だけは上がらず、やたら走り回ったのび太は転んで膝をすりむいてしまう。しずかと羽根つきをしてもボロ負けしてしまい、顔に墨を塗られてしまう。帰ってくると用意のいいドラえもんがバンソウコウと顔を洗うお湯を用意していた。凧上げや羽根つきのない世界へ行きたいというのび太にドラえもんは「もしもボックス」を出す。「もしもこんな事があったら」という仮想世界を作ってくれる機械なのだ。これを使って凧上げと羽根つきのない世界を作った二人は、みんながそれらを知らないのを見て、のび太がこれを教える事で、のび太が一番上手になるようにしようとする。しかしやはりのび太は凧を引きずってしまい、みんなは引きずって遊ぶものと勘違いしてしまう。次にのび太はしずかたちに羽根つきを教えるが、のび太は羽根を避けた方が勝ちだと、またウソをついて、しずかたちの顔に墨を塗ってしまう。嫌気がさして帰るのび太のところにジャイアン達がやってきて、凧が空に上がってしまうので、上手いやり方を教えてくれといってきたので、自分は知らんといって怒ってしまうのび太であった。  

 (解説)出ました!「最強の秘密道具」の名をほしいままにしている道具の登場です。凧上げと羽根つきのない世界へ行っても結局のび太はへたくそなままで、それをみんなは上手だと思っているというバカらしさが面白いですね。凧の絵柄に往年の藤子Fキャラのイラストが描かれているのも嬉しいお遊びでした。この「パラレルワールドを自在に作り出す」という設定の道具も後年、タイムマシンに次いで物語のキーアイテムとなる重責を担う事になります。
ロボットペーパー   8頁 小二76年4月号
 紙ずもうで遊ぶみんな。しかし紙ずもうでも全敗してバカにされたのび太は、ドラえもんに厚くて丈夫な紙を出すよう頼む。それを聞いたドラえもんは「ロボットペーパー」と言う、切りぬいて作ったものが本物のようになる紙を出す。試しにドラえもんが切ってみると、それは蝶になった。早速のび太が作った力士は部屋の中で勝手に稽古を始め、家を地震のように揺らしてしまう。再戦を挑みにスネ夫の家に向かうがみんなは既に帰っており、スネ夫は庭の草むしりをやらされていた。紙で作ったヤギに草をまかせたのび太はしずかを呼びに行くが、しずかは家で留守番をしていた。のび太は紙で犬を作ってそれを番犬にし、ジャイアンを呼びに行くが、ジャイアンはバスで買い物に行っていたため、車を作ってバスを追いかけ、やっとみんなを集める。紙ずもうを始めるが三人いっぺんに相手になってものび太の力士には勝てない。怒ったジャイアンが破こうとするが、紙の力士は逆にジャイアンまでもぶん投げてしまうのだった。  

 (解説)ロボットペーパーでいろんな物を作る、という道具の能力を、ストーリーの中に無理なく溶けこませており、安心して読める話です。紙ずもうですら全敗するのび太は、まさしく「野比のび太」という人間そのものを表していて面白いのですが、やはり今話はのびドラの『ドラえもん、紙。』『あいよ。』のやり取りでしょう。マンガだからこその間、と言うようなものに爆笑させられます。平然とトイレットペーパーを渡すドラがおかしいです。
いやなお客の帰し方   10頁 小六74年1月号(招かれざる客)
 正月なので部屋でゴロゴロするのび太とドラえもん。ところがいきなり見知らぬ人が部屋に入ってきて、外に追い出してしまう。不思議がる二人だが、その人はパパの会社の社長で、家では落ち着けないというのでのび太の家に来たと言う。社長は2,3日泊めてほしいと話すが、立場上パパは追い出す事も出来ない。さらにのび太の部屋で昼寝し始めたり、のび太に煙草を買ってこさせたりと威張りちらし、怒ったドラえもんは「ゴーホーム・オルゴール」を出した。この音色を聞くと家へ帰らずにはいられなくなるのだ。だが社長はどうしても帰ろうとせず、ボリュームを上げると今度はママが実家に帰ろうとするので、やむなくオルゴールを止める。その時トイレに行こうとする社長を見て、ドラえもんはトイレのドアに「こだまラッカー」を吹きつけた。自分でドアを叩くとその音がこだまとなって返ってくるのだ。中に誰かが入っていると信じ込み、我慢できなくなった社長は公園のトイレに行く。さらにドラえもんは「空間ひんまげテープ」を出し、そのテープでメビウスの輪を作って玄関のドアに貼った。戻ってきた社長は家に入ろうとするが、どう入ってもまた表に出てきてしまう。空間を歪曲させてドアの表と表をつなげたのだ。うんざりした社長は遂に家に帰り、安心する二人だったが、こだまラッカーのせいでトイレに入れないパパとママを見て、慌ててラッカーをはがす薬を探すのだった。  

 (解説)ドラ世界によく出てくる「横暴な第三者」が登場する話ですが、この話での社長は(恐らく)本人に悪気はないため、余計に問題を解決するのに苦労するようで、ドラも道具を三つも出してやっと解決しています。正月作品にふさわしい豪華な大盤振る舞いと言えますが、個人的にはゴーホーム・オルゴールがいいですね。「蛍の光」のメロディーだけでなく、「かえる」というイメージから、本体がカエルの形をしているという細かさが気に入りました。
雲の中の散歩   10頁 小二76年1月号(ふわふわぐすり)
 スネ夫から借りた凧で、珍しく空高くまで凧をあげるのび太。しかし凧の糸が切れてしまい、しかもその凧が落ちてこないため、特注の凧だと言われて、雲の中まで探しに行けなどと無茶な事を言われてしまう。ドラえもんはボールが水に浮かぶ理論を話し、それと同様の理論の効果を発揮する「ふわふわぐすり」を出す。これを噛むと体の中にガスが発生し、空気より軽くなる事が出来ると言う。薬を飲んだ二人は、凧の仕返しをしようとするじゃイアンをからかって逆に気絶させ、空へ凧を探しに行く。その時2人が落としたふわふわぐすりをしずかは拾っていた。風船に絡みついていた凧を見つけた二人は、同じく薬を飲んで空に来たみんなと共に楽しく遊ぶ。目を覚ましてそれをうらやましがったジャイアンは薬を飲むが、飲みすぎたためにどんどん上昇して行ってしまう。ガスが抜けるまでのび太に糸で結ばれて空に浮かぶジャイアンを、子供達はやっこだこと言って喜ぶのだった。  

 (解説)「何故タケコプターを使わないの?」という、ドラファンでなくても思いつきそうなツッコミはさておき(笑)、空を「飛ぶ」のではなく「浮遊する」という、藤子Fマンガの根底にある基本概念をここでも奈何なく発揮しています。1ページ丸々、みんなが空で遊ぶ様子に使ってあるのは、未就学児童誌の絵物語のようで、本当に雄大です。発端とラストのオチを「凧」でしめているのも構成の妙味さを感じさせますね。
おおかみ男クリーム   9頁 小二75年10月号
 のび太の書いた作文を無理やり読み始めるママ。それは「ぼくのこわいもの」という題で、内容は「おおかみ男よりも、ママが怒った時の顔が怖い」というものだったため、ママは激怒する。のび太はドラえもんに相談するが、ドラえもんはおおかみ男とママを比べてみようと「おおかみ男クリーム」を出し、それを顔に塗る。そして麦わら帽子の丸い部分を見るとドラえもんの顔はみるみる狼の顔になっていった。丸いものを見ると顔が変身するのだ。すぐ元に戻り、水でクリームを洗い流すドラえもんだが、なんとママが知らずにクリームを塗ってしまい、しかもそのまま出かけてしまった。のび太は逃げ出してしまうがドラえもんはママについていくことにする。丸い風船を隠したり、丸いボールを蹴飛ばしてジャイアン達に殴られたりしながら、ママは知り合いの家に着く。しかし門の丸い外灯を見たために顔が変身してしまい、ドラえもんは慌てて庭の茂みに引きずり込むが、ママに叱られてしまう。さらにドラえもんは部屋の丸いものを片付けたり、丸いせんべいを自分で食べたりしたために、とうとう追い出されてしまう。しかし案の定、変身したママを見て相手は倒れてしまい、医者を呼んだりして帰りが遅くなった二人だが、そこに強盗が現れる。しかし強盗の持つ丸い懐中電灯を見てママはまた変身し、強盗は逃げていってしまう。自分がそんなに怖い顔なのかと心配してしまうママであった。  

 (解説)通常こういった話では、のびドラ二人で騒ぎを起こしそうなものですが、今回はドラ一人で何もかもやっているため、どことなく最初期の「一人で騒動を起こすドラ」を連想させます。しかも絵柄は中期のものなので、さらに笑いを誘います。そういう意味では、年季の入ったファンであれば余計に笑える作品かもしれません。個人的にはジャイスネに殴られたドラや、訪ね先の門の外灯に気づいて大口を開けるドラが好きですね。
ネジまいてハッスル!   7頁 小二73年4月号(ふしぎなネジ)
 給食を食べるのが遅くて外で遊べなかったのび太。先生に指されても問題が出来ず、かけっこをしても負けてしまう。さらに宿題が終わらない事をバカにされたのび太は、自分の行動の遅さを悲しんで泣き出す。ドラえもんは動きを早くしてやろうと「ハッスルネジまき」を出し、パパで試してみると、パパは一瞬のうちに庭に飛び出て、壁にぶつかってしまった。早速ネジを巻いてみると、あっという間に宿題が終わり、野球へ向かう二人。その試合はジャイアンズが負けそうな試合だったが、ネジをたっぷり巻いたのび太のランニングホームランで一気に逆転して勝利する。気分よく帰宅してご飯を食べるのび太だが、まだネジが残っていたために一瞬で食事を済ませてしまうのだった。  

 (解説)人には生まれついての性質というものがありますから、例え他人にバカにされたからといって、それをすぐに直せるわけではありません。そういう意味では今回ののび太の悩みはすごく感情移入しやすいと思います。今回も未来感と「ネジ」というアナログ感を巧みに融合させていて、「あったらいいな」と素直に思える道具になっています。
名刀〔電光丸〕   15頁 小四75年2月号
 最も尊敬する人物である剣豪・宮本武蔵に憧れ、剣道を習い始めたジャイアン。ジャイアンの練習台になりたくないと考えたのび太は逃げようとするが、それを見つけたジャイアンは気分を壊し、のび太に決闘を申し込む。そんなのび太にドラえもんは「名刀『電光丸』」を出した。レーダーで敵の動きをキャッチし、自動的に相手を倒すのだ。だがのび太はそれ以前に逃げてしまうために勝負にもならない。困ったドラえもんはのび太を武蔵と佐々木小次郎の決闘の場にタイムマシンで連れて行こうとするが、のび太が怖がって暴れたために、時代も場所も狂って到着してしまう。そこで大柄の侍に脅かされている一人の青年を見かける。大柄の侍の顔を笑ったのび太はその男に襲われるが、電光丸で一蹴する。自信をつけたのび太は帰ろうとするが、先程の青年が弟子にしてほしいと二人をつけまわし始めた。そしてのび太にやられた男は仲間を集めて復讐しようとしていた。その頃空き地でジャイアンは寒い中のび太を待ち続けていた。一方、まだしつこく付きまとう青年にのび太は電光丸の秘密を話す。信じない青年だがその時先程の連中が現れた。二人は逃げるが電光丸を持つ青年だけが立ち向かって行き、見事敵をやっつける。自信をつけた青年は、宮本武蔵という自分の名前を告げて二人の元を去って行った。しかし武蔵が電光丸を持っていってしまったことに気づいたのび太は上手に負けようと空き地に向かうが、ジャイアンは風邪をひいて家に帰ってしまっていたのだ。  

 (解説)歴史的事実の世界にドラ達が介入するという、非常に興味と想像力を書き立てられる題材を用いた佳作です。ジャイアンの尊敬する武蔵の師匠がのび太というのもなんかおかしいですね。冒頭に武蔵と小次郎のカッコイイ決闘を描いて、その後にのび太達の「決闘」を描くという構成は面白いです。結局のび太もジャイアンも、武蔵や小次郎にはなれなかったようで(笑)。
さいなんくんれん機   7頁 小二73年10月号(さいなんくんれんき)
 留守番を頼まれたのび太とドラえもんだが、10分も経つとすぐに飽きてしまい、退屈してしまう。そんな時、家に台風のような強風が吹き荒れる。外へ逃げるのび太だが、外ではそよ風さえ吹いていないという。実はドラえもんが「さいなんくんれん機」を使って起こしたいたずらだった。目盛りをでたらめにかけて、いつ何が起こるか分からなくするドラえもんだが、ランダムのために本当にいつ起きるか分からず、飽きた二人はやってきたお客に留守番を任せて外に行ってしまう。そのうち部屋で火事が起き、客は慌てて消防車を呼ぶが、来てみると何もない。その後も地震や洪水、雷が発生して、出て行こうとするお客。のび太やママ達が帰ってきてもどうしても家に入るのは嫌だといって、外でお茶を飲むのだった。  

 (解説)今話はなんと言っても、無関係のお客がかわいそうですね。野比家に来るお客はいつも何かしらの被害を受けている気がします。これは法則か(笑)?外に座布団を敷いてお茶を飲む姿には、何とも言えない味があります。でも今回の機械、地震や火事はともかく、雷や台風まで部屋の中で発生しては、あまり訓練の役には立たないのでは(笑)?
おすそわけガム   8頁 小五76年5月号
 最近のび太達のおやつが貧弱になってきた。予算の都合だろうと察した二人は、偶然出会ったスネ夫の家で遊ぼうとするが、スネ夫はこれからメロンを食べると言って断る。羨ましがったドラえもんはついて行き、ポケットから出したガムを3分の1だけスネ夫に食べさせる。このガムは「おすそわけガム」で、等分してガムを食べると、誰かが何かを食べたその味がそのまま他の人の口にも伝わるのだ。メロンの味を堪能したのび太は、ガムを半分ずつ色んな人に渡すが、ジャイアンはそのガムに疑いを持つ。ケーキやかしわもち、タイヤキなど様々なものを分けてもらってお腹いっぱいののび太は、ママの作ったケーキも食べられない。とその時、急に気持ち悪い味が口の中に広がってきた。ジャイアンはさっきのガムを犬にやり、その犬があさっている生ゴミの味がそのまま飛んできたのだった。  

 (解説)道具の効能を発揮した楽しい話で終わるのかと思いきや、ラストでものすごい事になってしまいました。この落差が一番の見所ですね。ラストの犬はドラ世界には珍しく、すごく汚らしく描かれており、のび太の気持ち悪さを増幅させています。あと個人的には、冒頭で四次元ポケットに手を突っ込んで歩くドラがイイですね。スネ夫の家を覗くドラは、まるでどこかのオバケのようだ(笑)。
さいみんグラス   7頁 小二76年5月号
 テレビで催眠術の番組を見たジャイアンは、自分も催眠術をかけようとする。スネ夫はかかったふりをするが、バカ正直なのび太はジャイアンに殴られてしまう。事の次第を聞いたドラえもんは催眠術を簡単にかけられるようになる「さいみんグラス」をのび太に貸してやる。早速それを使ってジャイアンを女の子にしたり犬にしたりするが、スネ夫のアドバイスを受けたジャイアンは耳栓をしてのび太の声が聞こえないようにする。だが自分で自分に催眠術をかけることを思いついたのび太は、鏡を使ってプロレスラーになり、見事ジャイアンを撃退する。しかしその時に落としたさいみんグラスをパパがかけ、鏡に写った自分の姿を見て「ふくろう」と言ってしまった為に、パパはふくろうのようになってしまうのだった。  

 (解説)この頃はまだオカルトブームが続いていたのでしょうか。それは別として、今回は催眠術にかかった各々が面白いですね。ジャイアンはよく女の子になります(笑)。しかもやけにブリッコに(大笑)。犬になっておしっこまでしてしまうのもすごい。極めつけはふくろうのパパ。庭の木の上で「ホーホー」と鳴くパパの後ろで、パパを心配するのびドラのシルエットが映るという構図がすごくおかしいものとなっています。
テレビ局をはじめたよ   15頁 小学館BOOK74年2月号(のび太郎テレビ出えん、メインタイトル『ドラミちゃん』)
 突然、木鳥からの電話で呼び出されたのび太は彼の家に急ぐ。それはのび太だけでなく他の友達もだった。木鳥は「ジャリっ子歌じまん」という番組で自分が歌っている所を見せようとみんなを呼んだのだ。怒って帰るみんなだが、みんな帰ると番組への出場希望のハガキを出そうとする。ライバルを気にしたのび太はママの所からハガキをたくさん貰おうとする。そんな様子を見たドラミはテレビ塔のようなアンテナをテレビに立て、その前でのび太に歌わせる。すると友人達が、のび太がテレビに出ていると押しかけてきた。あのアンテナはテレビをテレビカメラに変える機械だったのだ。それを聞いたみんなはテレビに出ようとするが、とりあえず二人で時間表を作成する事にして、みんなには帰ってもらう。企画会議の後早速のび太が新聞ニュースを始めるが、文句を言われて中止し、のび太のワンマンショーも文句が来て中止する。次にママに料理を教えてもらおうとするが、ママは恥ずかしがって逃げてしまう。次に友人の戸手茂に宿題の解説放送をさせる。その時お風呂屋がスポンサーになりたいとやってきた。丁度やってきたしずかにコマーシャルをやってもらおうとするが怒られ、急場しのぎでのび太がコマーシャルを行う。次にお菓子屋がやってきて、スポンサーになる代わりに浪花節を始めた。のび太はコマーシャルの為にお菓子を食べまくり、腹いっぱいになってしまう。文句が来た為に浪花節を止めてもらい、コマーシャルしようとするが腹いっぱいで食べられず、ぶん殴られてしまう。その時待ちきれなくなった友人が押しかけて勝手な事をし始めたので、ドラミは放送を中止するのだった。  

 (解説)今話は「ドラえもん」でも使われそうなストーリーですが、まあ連載2回目ということで、基本路線で攻めたのでしょう。この話でもエキストラキャラが生き生きと描かれており、作品世界の幅を広げています。「ジャリっ子歌じまん」という番組からも、正編である「ドラえもん」世界とのリンクが窺い知れます(もともと1話でリンクしてるんだけど)。ちなみにスポンサーに困らせられるという展開は、後の「テレビ局セット」と全く同じですね。
Yロウ作戦   10頁 小六76年6月号
 ジャイアンズの成績が悪く、焦るジャイアンはこれから二軍制度をとることを宣言する。それを聞いて青ざめるのび太。へたくそなのび太は自分が二軍に落ちると決めつけるが、ドラえもんに叱咤激励されたのび太は練習をして上手くなろうと張りきる。しかしママに野球道具を取り上げられてしまい、絶望してしまう。仕方なくドラえもんは「Yロウ」を出した。これをママに渡すと、ママはとてもいいものを貰ったような気分になり、その際にのび太が頼んで道具を返してもらう。しかしのび太のあまりのへたくそさにドラえもんも呆れてしまい、怒ったのび太はドラえもんを家に帰してしまう。その時空き地に現れたスネ夫のいとこが野球の腕前を披露し、ジャイアンはいとことスネ夫をメンバーにする事を決める。のび太は悩んだ末にYロウを使うことを決意、スネ夫の代わりに試合に出ることをジャイアンに約束させる。だが当然スネ夫はおさまらない。友達にも相談したスネ夫は、ジャイアンがのび太に書いた領収書を見つけるが、ジャイアンは知らぬ存ぜぬの一点張りで、のび太は仮病を使ってみんなに会おうとしない。みんなに罵倒されるのび太だがそれでも開き直る。だが試合当日は雨で中止になったのだが、Yロウの効力のためにジャイアンは強引にのび太を連れ出し、のび太は雨の中で一人野球をするのだった。  

 (解説)11巻中で一番の問題作(?)の登場です。言うまでもなく、道具はおろかストーリーの骨子までも、当時を騒がせた「ロッキード事件」が元ネタです。その為か、人間同士の確執がかなり高次元で描かれており、いつものギャグ路線とは一線を画す内容になっています。特にみんながのび太に文句を言うシーンは、まさに当時のデモそのもので、時代が窺えますね。もちろん笑いも忘れてはおらず、「領収書」とか「のび太」の漢字をジャイアンが間違えて書くなど、細かな所で笑いを取っています。
あらかじめアンテナ   9頁 小四76年4月号
 空から落ちてくるボールをじっと見ているうちに、顔面にぶつけてしまったのび太。ドラえもんはそんなのび太の呑気さを注意するが、のび太はドラえもんに、先のことなど考えられないと文句を言う。そこでドラえもんは、つけると何かが怒る前にあらかじめ役に立つものを準備する「あらかじめアンテナ」を出す。試しにつけると早速ドラえもんは枕を出した。と、その時ネズミが現れ、驚いたドラえもんは倒れてしまうが、枕のおかげで頭を打たずに済んだ。アンテナをつけたのび太がママに呼ばれると、のび太はなぜかガムをちぎって丸め、耳に詰めた。ママはのび太にお説教をするが、ガムの耳栓をしていたので平気だったのだ。次にパパに呼ばれるが、のび太は先にライターを持っていく。アンテナの話を聞いたパパは自分にも貸して欲しいと言う。つけてみたパパが用意したものは望遠鏡とズボンと重箱だった。理由はわからないが、とにかくそれを持って出かけるパパ。するとその途中、車に水をはねられてズボンをぬらしてしまい、ズボンをはきかえる。すると遠くの方で火事が起こり、パパは望遠鏡で眺めてしまい、知り合いに驚かれる。おはぎをごちそうされたパパは、お土産にという薦めに思わず重箱を出してしまい、赤面する。帰ってきてふてくされるパパをドラえもんは不思議に思い、そんなパパを見てのび太はアンテナを使うのを止めるのだった。  

 (解説)今回のあらかじめアンテナ、設定だけ聞くと役立ちそうな気もするのですが、なんかやってることが妙にショボいような(笑)。先のわからない未来のために結果的に恥をかいてしまうパパには、「のび太ののび太」でののび太と同様のことが言えると思います。未来の事を何でも知ってしまったり、予測してしまうという事は、あまりいい事ではないのでしょうね。そんな作者の意志も働いているのかもしれません。アンテナの形がテレビアンテナっぽいのも時代ですねえ(笑)。
とりよせバッグ   7頁 小二73年6月号(なんでもバッグ)
 ションボリした様子で帰ってきたのび太だが、ママはその理由を知っていた。のび太はノートも教科書も忘れてしまったのだった。さらにランドセルを学校に忘れてきてしまい、ママをさらに怒らせる。のび太は忘れ物をしなくなるような薬がほしいとドラえもんに頼むが、ドラえもんはその代わりに「とりよせバッグ」を出した。怒るのび太だが、このバッグはどんな遠い所にあるものでも取り出す事が出来るのだ。早速ランドセルを取り出したのび太は表に出てみんなに見せびらかそうとする。はじめにおやつを出そうとするが失敗し、ママのメガネを出すも、みんなから珍しいものを出すように言われたのび太は、とあるノートを取り出す。それはスネ夫の日記だったが、それでもジャイアンはまだ信じないので、のび太は一部が濡れているジャイアンの布団を引っ張り出した。怒ったジャイアンを見て二人が帰ると、ママがメガネを探していた。忘れてきてしまった二人だがバッグですぐに取り寄せる。ママは二人を叱ろうとし、二人は逃げ出してしまうが、のび太の落としたバッグを使ってママはのび太を取り寄せてしまうのだった。  

 (解説)全体としては平均作ですが、スネ夫のナルシストぶりを改めて紹介したり、ジャイアンがおねしょをしたことにしたりと、キャラクター個々人のおバカさが笑いを誘います。忘れ物ばかりしてしまう今話ののび太には、初期作品のテイストが残っているようですね。
からだの部品とりかえっこ   8頁 小五76年4月号(からだの部品をとりかえちゃえ!)
 テレビを見ていたしずかだったが、のび太に誘われて仕方なくついていく。のび太が連れてきた裏山にはドラえもんと、ドラえもんが出した「人体とりかえ機」があった。体の部品をとりかえることが出来るこの機械で、のび太はしずかと頭を交換し、冴えた頭を持って宿題をスラスラと解こうとしていたのだ。しずかは最初は嫌がるものの、しぶしぶ承諾し、二人は頭を交換するが、その際に人格もそのまま交換されたために、結局頭はよくならなかった。先に行ってしまったしずかが戻ってくるのを待つ二人だが、不意にドラえもんがしずかの長い足と自分の短足を交換したいと言い出した。足を交換して喜んで走り回るドラえもんを目撃したスネ夫は、妙な格好ののび太を見てさらに仰天する。話を聞いたスネ夫は、しずかの腕を交換してしまい、さらにそれを見たジャイアンはしずかの体を交換してしまう。体の異変に気づいたしずかがやってきた時は、のび太はジャイアンの体にドラえもんの足というものすごい体になっていた。さらに各々体を貸してしまったために戻す順番がわからなくなり、困ってしまう一同であった。  

 (解説)F先生、相変わらずすごい事をやってくれます(笑)。体のパーツを交換するなんていう、まさにマンガチックな事を大真面目にやってしまうのだから、まずそこが一番笑えますね。さらに体の各パーツを替えたキャラの姿(特にドラ)が面白いです。ドラはまるで逆人魚(頭は魚で足が人)のようだ(笑)。ジャイアンが『小鳥になったみたい!』と叫ぶのもなんか不気味(大笑)。
自動販売タイムマシン   10頁 小六75年12月号(自動はん売タイムマシン)
 カメラを買うためにお使いの釣り銭をごまかして金を貯めてきたのび太。パパに煙草のお使いを頼まれ、釣り銭がない事を知りながらも怒られたために出かけるのび太。店が休みだったために戻ってくるが、パパは自動販売機で買うように言い、のび太はドラえもんに行かせようと部屋に戻る。部屋には自動販売機のようなものが置いてあったので、のび太は試しに煙草を買うと、たくさんの煙草が出てきた。パパものび太も驚くが「チェリー」という銘柄は一緒だった。さらにママからインクを買ってくるよう頼まれたのび太はこの販売機でインクを買うと、やはりたくさん出てきて、しかも値段が30銭と書いてある事にさらに驚く。しかしパパのお客の話を聞いたのび太は理解した。この販売機は一種のタイムマシンで、昔の物価の安い時代から品物を買えるのだ。のび太は今の貯金でカメラを買おうとするが、いくら入れてもカメラが出てこない。その時戻ってきたドラえもんは、時代設定が奈良時代になっていた事に気づく。のび太はやっとカメラを買うが、そのカメラのフィルムは古すぎて売ってはいなかった。しかしこの販売機で金儲けをして、その金でカメラを買う事を考えたのび太は早速品物を売り始める。金の入ったのび太はお祝いにと、百年後のお菓子を購入した。とても美味しい味に感動するのび太だったが、23万円という代金を見て仰天してしまうのだった。  

 (解説)なんともノスタルジックな感覚の話ですね。それぞれの品物のデザインは本物に忠実に描かれており、F先生のこだわりが感じられます。道具を使って商売を始めるのび太の才覚も相変わらずですが、「物価の違い」を伏線にして描かれたオチには笑わされると同時に考えさせられました。もしかしたら未来には「1円」とか「10円」程度の金は存在していないのかもしれませんね。
化石大発見!   12頁 小六76年4月号(インスタント化石)
 スネ夫達にだまされて、宝があるという場所を掘り続けてしまったのび太。今日はエイプリルフールだったのだ。帰ろうとする二人は、化石を掘っているというおじいさんに出会う。面白がって化石を掘ろうとする二人だが、おじいさんに怒られてしまう。家に帰ってきた二人は自分たちも誰かをだまそうと、ある事を画策する。昼ご飯の残りを土に埋め、タイムふろしきをかぶせて化石を作り、先程のおじいさんに見せに行くと、おじいさんは大発見だと興奮し出す。面白がった二人はさらにゴミ捨て場のゴミを使って化石を作り、ばれたところでエイプリルフールだと打ち明けようと考える。また化石を作った二人はおじいさんのいないスキにガケの中に化石を埋める。だがやってきたおじいさんの娘から、おじいさんの化石への夢と真摯な想いを聞いて、二人は急いで真実を話そうとするが、先におじいさんが化石を見つけてしまい、話すタイミングを失ってしまう。それでも本当の事を話し、がっくりするおじいさんだが、その時タイムふろしきで戻したゴミの中から三葉虫が出てきた。もちろん二人にそんなものは作れるはずもなく、これは本物であり、しかも新種だったのだ。ジャイアンとスネ夫に会った二人は、「素敵な宝物が見つかった」とお礼を言うのだった。  

 (解説)冒頭のあんな地図にだまされるとはさすがのび太(笑)。のびドラの作ったインチキ化石を自分の都合のいいように解釈してしまうおじいさんも面白いですが、最後は本物の三葉虫を見つけるという、美談的な終わり方になっています。途中から作品の雰囲気がガラリと変わっており、しかも何ら違和感がないという構成はこの時期に定着したものであり、F先生のすごさを感じさせます。そんな意味でも興味深い話です。
ジャイアンの心の友   7頁 小三76年4月号(レコードせいぞうき)
 ドラえもんに爆弾を出すよう頼むのび太。ジャイアンにいつも殴られてしまうと言うのび太にドラえもんは、仕返しではなく逆に親切にしてやる事で、いつか真心が通じるようになると話した。のび太はジャイアンの家を訪れ、「レコード製造機」を出した。のび太はこれでジャイアンの歌のレコードを作り、ジャイアンはのび太を心の友として固い握手を交わす。一安心するのび太。早速レコードを売り始めたジャイアンだが、レコードを買わないようにしようとみんなが近づかないために一枚も売れず、結局ジャイアンが脅す事でみんなは強制的に買わされる。次に町中で自分の歌が流れるか聞くジャイアンだが全然聞こえず、これもみんなを殴ったり脅したりして強制的に聞かせる。ジャイアンの喜ぶ姿を見て自分も喜ぶのび太だったが、被害にあったみんなに逆襲され、爆弾を20個出してくれとドラえもんにせがむのだった。  

 (解説)僕は個人的には、ジャイアンの歌がらみの話では今話が一番好きです。それはやはり「乙女の愛の夢」に尽きるからでしょう(笑)。ジャケットにしろポスターにしろ、そこに描かれているジャイアンの乙女チックなイラストがブキミすぎて面白いです(爆笑)。例によっておべっかを使いながらもぶん殴られるスネ夫もおかしいですね。でも結局のび太の苦しみは消える事はないのでした。最初と最後のつながりも見事です。



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