てんとう虫コミックス第12巻


ミサイルが追ってくる   9頁 小四76年5月号(ゆうどうミサイル)
 しずかの飼っていたカナリヤが野良猫のクロに食べられてしまった。のび太やドラえもんも金魚やドラやきを食べられた事があるので、懲らしめてやろうと考えるが、クロにはバカにされてしまう。怒ったドラえもんは「ゆうどうミサイル」を取りだし、クロの顔をミサイルに覚えさせて発射する。スピードが遅いためにクロは簡単によけてしまうが、ミサイルはそれでもどこまでも追っていき、ついにクロに命中した。ミサイルを一発借りたのび太は誰に使おうか考えるが、ジャイアンが自分にボールをぶつけてきたため、ジャイアンに狙いを定める。いくら避けても、土管で押しつぶしてもミサイルはしつこくジャイアンを追いかける。たまらず家の中に逃げ込むジャイアンだが、母ちゃんの持つ買物かごの中に入って、室内に潜入するミサイル。しかしジャイアンはミサイルを外に追い出し、のび太はこん比べを始める。ジャイアンは家中の鍵をかけ、のび太は誘い出そうと猫の泣きまねをするが、勘違いされた母ちゃんに水をかけられ、その拍子にメガネを落としてしまい、ぶつかったハチの巣から出てきたハチに、鼻と頬を刺されてしまう。そのために鼻や頬が膨れ、水をかぶって髪形の変わったのび太の顔はジャイアンそっくりになった。ミサイルから逃げ惑うのび太を、逃げ続けられることを祈りながら見つめるドラえもんであった。  

 (解説)ドラは「夢をかなえる不思議な道具」だけでなく、「人を殺しかねない危険な代物」も持っていることがよくわかる話です(笑)。そのミサイルで『だれでもいいからうってみたい。』と言うのび太も相当危険です(笑)。で、どんなオチになるのかと思ったら、のび太がジャイアンそっくりの顔になってしまい、しかもそれをドラは助けない。シビアと言うか、結構笑えないオチになっています。時々発作的にこんな話が出てくるのもドラの特徴ですね。
ベロ相うらない大当たり!   11頁 小六75年11月号(のび太のベロ相占い)
 みんなの手相を見て人気者のスネ夫を見て、手相などで未来などわかるはずもないと文句を言うのび太に、近くに座っている男性が同意した。名案を思いついたのび太はタイムマシンでどこかへ向かう。帰ってきたのび太はみんなに「ベロ相うらない」をして見せると言う。のび太はスネ夫には火難、しずかには水難、ジャイアンには女難の相があると占うが、みんなは信じない。その時、先程の男性がポイ捨てしたタバコがスネ夫の背中に入ってスネ夫は熱がり、ジャイアンは近くの女性の持っていた金魚ばちの水をかけようとするが、間違えてしずかにかけてしまい、しかもその女性にジャイアンは怒られてしまう。満足したのび太は帰ろうとするが、それを先程の男性が引き止め、自分のベロ相を占って欲しいと言ってきた。しかし実際はタイムマシンで未来を見てきただけののび太には占えるはずもなく、逃げ出すのび太だが男性に止められる。彼は元高角三といって、小説家を目指しているものの今までデビューできずにいた。そこで見込みがあるのか占って欲しいと言う。話を聞いたドラえもんも仕方なく一緒に5年後へ見に行くが、やはり作家になれてはいなかった。それを聞いた元高は空元気を出すが、その声は辛そうだった。改めて将来を見に行った二人だが、そこではやはり元高は貧乏のままだった。話を聞くと、自分の生きる道は文学以外にないと思い、今でも小説を書き続けていると言う。その時、テレビ局や新聞社の人が家にやってきた。元高の小説が文学賞を受賞したというのだ。現代に戻ってきて、歌手になれるかというジャイアンを諭すのび太に、それだけは止めさせた方が良いと話すドラえもんであった。  

 (解説)誰でも一度は夢を追いかけるもの。その夢が叶うかどうかはすべて自分次第。自分を信じていればいつかきっと願いは叶うという、理想論を真正面から描いています。それはそのままF先生が望み、理想とする人間像ではないでしょうか。理想を求めてどこまでも進むことは、人間の持つ力を最後まで信じ続けたF先生らしいメッセージと言えるでしょう。でも、ジャイアンが歌手になることは避けたい(笑)。
ウラオモテックス   7頁 小三76年6月号
 調子の良いスネ夫は今日もおべっかを使ってジャイアンをおだて、よその家から盗んできたバラの花をしずかにプレゼントする。さらにのび太のママにもお世辞を言って、すっかりスネ夫を信じたママは、スネ夫を見習うようにのび太に話すが、のび太は真実を知っているので相手にしない。しかしママに注意されてしまったために今すぐボロを出させるために外へ出る。しかし些細な誤解からジャイアンに殴られ、しずかまでスネ夫の味方だと知ったのび太はスネ夫が盗んでいく家と同じ家からバラを持っていこうとするが家の人に見つかり、今までの事までのび太の仕業にされてしまう。話を聞いて怒ったドラえもんは、裏でこそこそやっている事をおおっぴらにやらせる「ウラオモテックス」を出した。早速スネ夫に貼ると、スネ夫はたくさんのバラを取っていき、しずかにやる代わりに宿題を見せろと息巻く。さらに本音を言ったためにジャイアンにはギタギタにされてしまった。安心するのび太だが、スネ夫にのび太の事で本音を言われたママはやはりのび太を叱り、困ってしまうのび太であった。  

 (解説)今話ではスネ夫大活躍ですね。この二面性こそがスネ夫の最大の魅力であり、だからこそ、仕返しをするのび太達の姿にカタルシスがわくというものです。でもジャイアンもしずかも気づかなかったのに、のび太だけ知っていたということは、案外のび太は人間観察に長けているのかもしれません。逆に、ママはのび太の事を信用しなさすぎ。実の子供の方を先に信じろって(笑)。
わすれ鳥   4頁 小三76年3月号
 知り合いの家に出かけるパパに、手紙を出すよう頼むママ。忘れないようにとうるさく言われたために怒るパパだが、手紙を持っていくのを忘れ、自信を無くしてしまうパパ。そんなパパにドラえもんは「わすれ鳥」を出してやる。これを付けている時に忘れ物をすると、鳥が鳴いて教えてくれるのだ。安心したパパは手紙を帰りに出すことにし、知り合いの家でわすれ鳥の自慢をし、自分の財布でそれを証明して見せる。帰ってきたパパはその事を楽しそうに話すが、財布と手紙とわすれ鳥を知り合いの家に忘れてきた事に気づき、ママに怒られてしまうのだった。  

 (解説)今話のパパはいつにも増しておっちょこちょいですね。やはりのび太がおっちょこちょいなのは血筋なんですね(笑)。4ページの中に上手くまとまっている、おかしい話です。
よかん虫   9頁 小五76年7月号
 まぶたがピクピク震えているから、今日は良い事はないと思いこむのび太。元気づけるドラえもんだが、ママに叱られた事を予感が当ったと言うのび太にドラえもんもあきれてしまう。だがのび太は部屋で読んでいた本の運勢コーナーで、今週の自分の星座が良い運勢である事を知り、気を良くして遊びに行く。それを聞いたドラえもんは「よかん虫」という道具を出した。これが予感のしている人にとまって羽ばたくと、その予感が当るという道具なのだ。良い予感のするのび太にとまる虫。早速空からお金が降ってくると考えるが何も起きない。自分が信じられる事でなければ叶わないのだ。お金を拾うと考えたのび太は1円だけ拾うが、未来に希望を持つようになる。その時不機嫌そうなジャイアンを見かけたのび太は隠れるが、自信を持ってジャイアンに挑んでいったのび太は、何と一発でジャイアンを倒してしまう。喜ぶのび太は次にしずかから好きだと言われると考え、その通りにしずかが話しかけてきた。だがそれは先週号の雑誌を返して欲しいと言う話であり、その雑誌は先程のび太が読んでいたものだった。自分の読んでいたものが先週のものだと知ったのび太は一気に自信を無くし、それに呼応するかのように、先程おできをつぶされたジャイアンにメタメタにされる。急いで帰ろうとするのび太だが、「夕立にあう」と考えてしまったために夕立に降られてしまい、巻き添えを食ったドラえもんは怒ってしまうのだった。  

 (解説)最近はプラス思考などとも言われますが、要するに前向きか後ろ向きかという事で、人生は良くもなるし悪くもなる。そんな考えが今話の根底にあるとは思いますが、相手がのび太である以上、そんな希望に満ちた世界になるはずがありません。のび太はただでさえ後ろ向きに考えるのが大好きなようなので(笑)、いやな予感が次々に当たっていくラストのオチは爆笑ですね。でものび太は一旦調子に乗ると、とんでもなく前向きになるので、例えば「ムードもりあげ楽団」なんかと一緒だったら、うまくいったかもしれませんね。
大空中戦   11頁 小二76年7月号(ミニひ行き)
 珍しく勉強をしているのび太だが、ハエがうるさくてイライラしてしまう。その時突然現れたラジコン飛行機のようなものがハエを撃ち落した。それには小さくなったドラえもんが乗っており、飛行機から降りると同時にドラえもんは大きくなった。これは「ミニ飛行機」で、乗れば自然に小さくなり、操縦出来ると言う。早速乗ったのび太は最初こそ下手な操縦だったが次第に慣れていき、ドラえもんと一緒に飛行機で表へ出る。悠々と飛びまわる二人は、スネ夫のおもちゃを取ろうとするジャイアンを追い払う。スネ夫としずかにも飛行機を貸すが、残りの飛行機を陰から見ていたジャイアンが奪ってしまった。ドラえもんも他の飛行機で飛び立つが、ジャイアンはさっきの仕返しにと皆を狙い始めた。ドラえもんは善戦空しく撃墜され、他の皆も落とされた。有頂天のジャイアンは東京タワーのてっぺんに座り込むが、その時飛行機が落ちてしまったためにジャイアンは帰れなくなり、ヘリコプターまで出動する騒ぎになってしまったのだった。  

 (解説)ラジコンに実際に乗ってみるという、子供の願望でもあり、もしかしたら作者の願望かもしれなかった願いを叶えてくれる、楽しい話になりました。反面、ジャイアンが他の四人を攻撃するシーンは本格的で、できればドラ以外の三人の戦いも見てみたかったと思います。個人的には飛行機がほとんどプロペラ機だったというのが、作者の好みを表しているようにも思います。ラストは少し唐突ですが、間抜けなので結構好きです。
ペットそっくりまんじゅう   6頁 小三76年8月号
 自分が飼っている鳥をみんなに見せるしずかを見て、ペットは飼い主に似ると話し、飼っているネコの自慢をするスネ夫。ジャイアンもペットのムクは自分に似ていると自慢するが、その時現れたムクはゴミをあさったり、おしっこをしたりネコにびびったりと情けない所ばかり見せたために、ジャイアンは怒り出してしまう。ドラえもんに知らせにのび太が戻ってくると、ドラえもんはのび太に文句を言ってきた。しまっておいたドラやきがいつの間にかなくなっていたと言う。それはひとまず置いといて、事の次第をドラえもんに話すのび太。ジャイアンは恥をかかせたとして、ムクを殴ってご飯をあげないと言う。ドラえもんは、食べると飼い主そっくりになるという「ペットそっくりまんじゅう」をムクに食べさせようとするが、ジャイアンに取り上げられてしまう。諦める二人だが、その時ムクを連れたジャイアンがスネ夫たちに「そっくりだ」と言われている所を見つける。そのジャイアンの顔はムクとそっくりになっていた。人間が食べるとペットそっくりの顔になってしまうのだ。二人はまんじゅうを食べてみるが、そのうちドラえもんの顔がネズミのようになってきた。押入れに隠してあったドラやきが知らないうちにねずみのえさになっていたために、ペット扱いされてしまったのだった。  

 (解説)ジャイアンは自分が恥をかく事がすごくいやなようですね。でもムクに食べさせようとしたまんじゅうをジャイアンが食べてしまうとは、なんて卑しいんだろう(笑)。まあ、「クエーヌパン」の話でもそうですが、「ジャイアンは食い意地が張っている」というのは裏公式設定のようなものですから、さほど違和感は感じませんが。ネズミがドラのペットになっていたというのも面白いオチです。本人が自覚していなくてもペットと認識してしまうまんじゅうは恐ろしい(笑)。
正義のみかたセルフ仮面   10頁 小六76年7月号(セルフ仮面)
 テレビのヒーロー番組を見て興奮するのび太。見終わったのび太はドラえもんに正義の味方を出してくれとせがむが、ドラは相手にしない。のび太は何とか自分の味方を作りたいと夜遅くまで考えるが、そのために宿題をやる事を忘れてしまった。ドラえもんにも手伝ってもらうがとても間に合いそうにない。その時どこからともなく、正義の味方・セルフ仮面が現れた。宿題を手伝ったセルフ仮面はのび太を早く学校に行かせる。喜んで登校するのび太だが、ドラえもんは気がかりだった。そして下校時、雨に降られて傘を持ってきていないのび太としずかは学校で雨宿りするが、その時に傘を持ったセルフ仮面が現れた。セルフ仮面はのび太に傘を貸すが、自分の傘を忘れたと言って慌てる。のび太はもっとピンチに遭ってみたいと考え、ママをわざと怒らせると、セルフ仮面がやはり助けてくれた。雨がやんで外へ出かけたのび太はジャイアンをつけまわすが、その時セルフ仮面が現れ、自分でピンチを作るなと文句を言われてしまう。だが聞く耳を持たないのび太はわざとジャイアンを怒らせるが、セルフ仮面はどこかへ行ってしまった。しかし追いかけられるのび太の所にジャイアンの母ちゃんを連れたセルフ仮面がやってきたため、何とか危機を免れる。だがセルフ仮面の正体を不審に思う二人。その時ママが去年のび太が劇に使った衣装を出してきた。それは何とセルフ仮面の衣装であった。ドラえもんは全てを理解した。今までのセルフ仮面はのび太自身であり、これからのび太が衣装を着て、今日の自分自身のピンチを助けに行くのだと言う。今一つ理解できないのび太だが、とりあえずセルフ仮面になって、今日の朝へと向かうのだった。  

 (解説)過去の自分を自分が助けに行くという、時間と空間を超越した正にドラえもんらしい世界が展開します。この話が後の「大魔境」に影響を与えたかどうかは定かではありませんが、セルフ仮面=のび太であるために、助け方も頼りないのが面白いですね。冒頭でヒーロー番組を見て興奮しているのび太を冷めた目で見つめて冷静な感想を述べるドラの姿は、今でも僕の心に焼き付いています(笑)。僕もドラにバカにされない程度にヒーローたちを愛さなければ(爆笑)。
カミナリになれよう   4頁 小三76年7月号(カミナリ雲)
 突然カミナリが鳴り響き、ジャイアン達と遊んでいたのび太は怖がって押入れの中に隠れてしまい、二人にバカにされる。話を聞いたドラえもんはのび太を雷になれさせようと「カミナリ雲」を出した。コードを引っ張ると雷が発生するのだ。だいぶ慣れたのび太はみんなに見せようとして、煙草に火をつけたがっているパパに雷を落として火をつけたり、いじめているジャイアンや子猫を追いかけるイヌに雷を落として懲らしめたりする。楽しんで部屋に帰ってきたのび太だが、部屋の電灯をつけようとしたママが間違えてカミナリ雲のコードを引っ張ってしまい、黒焦げになったママはのび太達を探し、二人はママのカミナリを恐れるのだった。  

 (解説)実際のカミナリとママの「カミナリ」をかけた、落語のオチのような終わり方ですね。雷を落とす時に骸骨姿になってしまうという古典的な表現法も笑えます。でものび太はこの他にも「カミナリだいこ」の話で同様な展開にあっていますね。
天気決定表   10頁 小六76年9月号
 夏休みの日記につける毎日の天気を忘れてしまったためにドラえもんに聞くのび太だが、逆にドラえもんに注意されてしまう。良い方法はないかと考えるのび太にドラえもんは「天気決定表」を出す。説明を聞く前に早速それを使おうとするのび太は、天気を決める事の責任の重大さをドラえもんが話しても意に介さない。とりあえず晴れ、曇り、雨の順で作成したが、今から少しだけ夕立を降らせる。のび太は更に3日間雨を降らせる事にしたが、しずかが家族でキャンプに行くと聞き、しずかにテルテルぼうずを渡してから3日間快晴に変更し、しずかに感謝される。その後、みんなからプールに誘われたのび太はこれからルテルテぼうずで雨を降らせると言い、それからの時間を雨に変更する。そして8月20日、スネ夫に頼まれてその日を天気を雨に変更したのび太だったが、パパがゴルフに出かけると聞いて慌てて晴れに戻す。しかしその後もしずかやジャイアン達が現れてのび太は困ってしまい、結局天気を自然に任せる事にして、決定表を燃やすのだった。  

 (解説)夏休みの日記につける天気。誰でも一度はのび太のような思いを味わった事があると思います。そんな日記と同じ感覚で天気を決定できてしまうというのが面白いですね。天気を決めるというのは正に「神のみぞ知る」のような部分があるので、もちろん神になどなれるはずもないのび太は自分の都合で天気を変えて、結局やめてしまいます。もしかしたら、神になどなれない個人の力の限界をも表現しているのかもしれません。そう言えば、F先生の短編作品の中にも、神のような力を持ってしまっても、あまりに強大なその力に自分が押しつぶされてしまうという話がありますね。
ゆうれいの干物   8頁 小四76年8月号(『ひものゆうれい』がんばれ)
 別荘へ向かうと言うのび太に誘われるしずか。そこは古い空家で、そのために借り手がつかないのでのび太が進入して勝手に使っているのだ。二人がくつろいでいる時、家を借りようという人がやってきて、すぐに引っ越してくる事を決めてしまったため、ショックを受けたのび太はその人を追い出そうとドラえもんに頼む。最初は断ったドラえもんだがメソメソ泣くのび太を前に仕方なく「ひものゆうれい」を出した。水をかけると膨らんで本物のようになるのだ。だが夜になっていこうとすると、のび太は面倒くさがって行こうとしないため、ドラえもんが一人で向かう。水を忘れてしまったドラえもんは主人に見つかりそうになるがネコのふりをしてごまかし、水をかけられるが、その水で干物が膨らみ幽霊となった。早速部屋に入れるが、主人が回した扇風機によって外に飛ばされてしまい、しょうがなくトイレの前で待機させる。ドラえもんは蚊に刺されるのを我慢しながら待ち続けるが、主人がトイレに向かっても反応がない。幽霊が乾いてしぼんでしまっていたのだ。バカらしくなったドラえもんは家に帰り、自分でやるように言って寝ているのび太の布団に干物を入れる。すると、なぜか干物が膨らんでのび太は仰天し、ドラえもんは何故膨れたのか不思議に思うのだった。  

 (解説)今話は「道具の乱用によるしっぺ返し」と言うパターンの変則的な例ですね。自分が頼んでおきながらドラに全部任せてしまうのび太には、ラストのオチは自業自得のように思います。それを理解しながらも一人で向かうドラはなんか健気ですね(笑)。あと個人的な意見としては、空家に越してきた人の髪型がスゴイ(笑)。
ドンブラ粉   7頁 小四76年7月号(どんぶら粉)
 道を歩いていて、スネ夫やジャイアンにプールに誘われるのび太だが、逃げるように家に帰る。ジャイアン達はのび太が泳げないのを知っていて、慌てさせようとしていたのだ。それを察知していたのび太は開き直って一生泳げなくても構わないとまで言う。ドラえもんは「ドンブラ粉」を出してのび太にかけると、のび太は畳に沈み始めた。粉がかぶった人の周りを水のようにし、しかも本物の水よりも浮きやすいと言う。部屋の中で特訓を開始する二人。だが次第にイヤになってきたのび太はドラえもんの目を逃れて外に遊びに行ってしまう。偶然それを見たお客は仰天してしまった。地底を泳いでしずかの家までやってきたのび太だが、しずかはお風呂に入っていたため慌てて浴槽にもぐる。ジャイアン達が野球をしているのを見つけたのび太はいたずらをしてスネ夫をアウトにしてしまったり、ジャイアンにフライのキャッチを失敗させて、更に悪口を言って試合を台無しにしてしまう。帰ろうとするのび太だが次第に疲れてきた。しかし陸に上がることもできず、遂に溺れてしまう。ドラえもんは苦労してやっと土の中ののび太を見つけるのだった。  

 (解説)「地面を海のようにして泳ぐ」というのはF先生お気に入りのコンセプトだったようで、古くは「潜地服」からドンブラシリーズ三部作(笑)まで、様々な道具が登場しています。作者の夢がダイレクトに反映された話なのでしょうから、自然と楽しい話になっています。のび太を目撃して思わず泳ぐまねをしてママに心配されるお客や、ジャイアンがみんなを殴り飛ばすシルエットが、個人的にはツボにハマりました(笑)。
大男がでたぞ   7頁 小二76年8月号(からだポンプ)
 今日もジャイアンにいじめられたのび太は大きくなろうとして、ママが花にあげている水をかぶってしまう。大きくしてくれと頼んできたのび太にドラえもんは名案を思いつき、「からだポンプ」を出した。ジャイアンは自分の強さに浮かれていたが、それを陰から笑う声が聞こえ、ジャイアンが探すと、そこには大男の物としか思えない巨大な人間の足跡があった。慌てて逃げるジャイアンだが母ちゃんに説教され、平静を取り戻す。だがのび太から渡された大男の手紙を読んでまたビクビクし始め、家に帰る。留守番をするジャイアンだが、そのとき二階で誰かが尋ねてくる声がした。行ってみると窓の外に巨大な手があったので、ジャイアンは仰天してしまう。だがそれはのび太がからだポンプを使って体の一部分を巨大化させていたのだった。十分仕返しして家に帰ったのび太達は、ママが一人でアイスを食べているのを見つける。ママに一口あげると言われたのび太はポンプで顔を大きくして、一口分を多くしようとするが、ママは気絶してしまうのだった。  

 (解説)これまた「人体改造系」に属する道具の登場です。一部分だけ大きくなると、遠近感がわからなくなる事もあって(笑)、なかなか面白い話に仕上がっています。必要以上に大男を恐れるジャイアンの様子も見ていて楽しいですね。更にはラストののび太。道具の意外な使い方については天才的なのですが、こういった突発的な詭弁についてものび太は天才的ですね。ママも「人体改造系」の話ではよく気絶してしまいます。大変ですね(笑)。
あいあいパラソル   8頁 小五76年9月号
 しずかの家に遊びに行ったのび太だが、しずかは先日転校してきた矢部小路の家へ行ってしまっていた。ライバル意識を持ったのび太はドラえもんに、しずかと自分が結婚するという未来について尋ねるが、未来は変わるというドラえもんの言葉に怒り出してしまう。のび太の魅力でしずかをひきつけられない事をよく知っているドラえもんは「あいあいパラソル」を出した。この傘の下に5分間いると、向かって左側の人が右側の人を激しく好きになるのだ。そう説明している間にもドラえもんが道具の効力でのび太を好きになりかける。早速しずかに傘を差し掛けるが、雨も降っていないのに傘を差される事を恥ずかしく思ったしずかは逃げ出してしまう。ドラえもんは木の枝にパラソルを差して、その下で話をするようにアドバイスし、のび太はしずかを呼んでくる。だがドラえもんは道を尋ねてきた人とパラソルの下で5分間話してしまったために好かれてしまう。しずかをつかまえられなかったのび太だが、そのとき雨が降ってきたので、矢部小路の家の前で待っている事にする。しかしジャイアンに見つかって強引にパラソルの中に入られ、ジャイアンはのび太を好きになってしまった。逃げ惑うのび太とドラえもんを見て、不思議に思うしずかであった。  

 (解説)道具自体は大したことないのですが、「矢部小路」という幻のキャラクターが存在しているために、やけに知名度が高くなっている話です。今話の面白い所はしずかをつかまえるためのドタバタと、のびドラに惚れてしまうジャイアンと通行人でしょう。特にジャイアンはよく男に惚れる役柄を演じていますね(笑)。その騒動をしずかは一切気付いていない辺り、なんかラブコメディのテイストさえ感じます。でも、「コーシャク」というあだ名まで設定していたのに、なぜF先生は矢部小路をお蔵入りにしてしまったのでしょう?
勉強べやの釣り堀   8頁 小二76年11月号(おざしきつりぼり)
 暖地の裏の川で魚がたくさん釣れるという事を聞いたのび太とドラえもんは、昼食を食べてから向かおうとするが、絶対川に落っこちるとママに反対される。残念がるのび太にドラえもんは「おざしきつりぼり」を出した。水のある所からその一部分を持ってくる事が出来るのだ。早速釣りをはじめる二人だがちっとも釣れない。文句を言うのび太にドラえもんは自分で魚を掴む「手ばり」を出して魚をじゃんじゃん釣る。すると強い引きがあるので二人で引っ張るが、それはジャイアンが引っ張っていたものだった。別の場所を探す二人だが、水たまりにぶつかったり、海にぶつかってサメに襲われたりと苦労する。そんな中で、温泉のような温かい水を発見した二人は早速入ってみるが、そこは何としずかの家の風呂場の浴槽で、しずかに驚かれてしまうのだった。  

 (解説)この話はご承知の通り、現在のシンエイ動画版アニメのパイロットフィルムとして、一番最初にアニメ化された作品でもあります。そんな逸話のある今話は、家の中で、外でしかできない事をやるという、楽しい面が強調されています。「タタミの田んぼ」とはまた違った解釈の描き方ですね。相変わらずママはのび太を信用していませんが、今回に限っては納得です。確かにあんなに毎回ドブに落ちていては、川に行かせるのは不安でしょう(笑)。ちなみに今話はてんコミ中では初めて入浴中のしずかの全身が描かれた話でもあります(笑)。
けん銃王コンテスト   11頁 小六76年1月号
 様々なモデルガンを見せ合って自慢する友人達。もっていないとバカにされたのび太だが、のび太は小さい頃に買ってもらったおもちゃの拳銃なら持っていた。それを使って的を狙うと百発百中だった。驚いたドラえもんは、現代では腕を振るうチャンスがないと話すのび太に「空気ピストルの液」を出してやる。この液を指に塗り「バン」と叫ぶと、空気の衝撃波のようなものが発射されるのだ。のび太はそれを使ってけん銃王コンテストを提案、友達も誘ってコンテストを開始する。のび太は強く、あっという間にみんなを倒し、残る相手はジャイアン一人となった。だがジャイアンは物陰に隠れて被害を免れており、更にのび太の残弾が三発だと聞いて、イヌをけしかけてのび太に全弾使わせてしまう。絶体絶命ののび太だが、近くで倒れている友人の指から弾を発射し、何とかジャイアンも倒す。みんなに見なおされたのび太は上機嫌で家に帰ってきたが、たまを数え間違えていたようで、「バンご飯」という言葉で弾が発射されてママは気絶してしまい、ご飯が食べられなくなってしまうのだった。  

 (解説)のび太が拳銃が得意であるという設定が初めて明確にされた話です。のび太も「西部劇」と話しているように、今話自体もどことなく西部劇調の雰囲気を持っており、終盤のジャイアンとのび太の決闘などは、正に往年のマカロニウエスタンを連想させます。それでも晴れて拳銃王になったのび太の図だけで終らせるのではなく、最後にもう一つオチがついているのが、いかにも「ドラえもん」ですね。
はいどうたづな   7頁 小二76年2月号
 サイクリングを楽しむみんな。スネ夫は自転車に乗れないのび太をからかうがのび太は相手にしない。熱心に本を読みふけっているのび太は帰ってくると、ドラえもんを馬に見たてて乗馬の練習を始めた。のび太が読んでいたのは乗馬の本で、馬は4本足だから転ぶ事はないだろうと考えたのだ。ドラえもんはつけるとどんな動物でも馬のようになる「はいどうたづな」を出し、早速ネコにつけてみる。ゆっくりと乗りこなすのび太だが、ネコが木に登ってしまったために落っこちてしまう。次に野良犬につけるがその犬は暴れてしまい、のび太は振り落とされてしまう。今度はしずかの飼っている犬に乗ろうとするが、犬はおとなしいのにもかかわらずのび太は乗れない。そこへやってきたしずかは二人を怒るが、その時ジャイアンとスネ夫が先程の手綱をつけたネコと犬に乗ってやってきた。しずかも自分の犬にのってみんなで乗って行ってしまう。悔しがるのび太はドラえもんに手綱をつけ、部屋の中で練習を始めるのだった。  

 (解説)うまくのび太のへなちょこさを表現していますね。自転車にしても馬にしても、練習なくしては乗れるはずもなく、最初から楽な道はないのだという事を分かりやすく教えてくれます。と言ってもそんなに説教臭くないですが。しかしドラにまたがるというのはよく考えればネコにまたがっている訳で、かなりナンセンスな光景なのですが、最初期の作品ではドラは結構のび太を背にして四つんばいで走っていましたね。
声のかたまり   8頁 小二76年10月号(コエカタマリン)
 ジャイアンにいじめられ、大きな泣き声を出して帰ってきたのび太。そんなのび太にドラえもんは、その大きな声を生かそうと「コエカタマリン」と言う薬を出した。これをのんで大声を出すと、その声がそのまま文字となって固まるのだ。それをジャイアンにぶつけるようアドバイスされたのび太はジャイアンの元に向かうが、途中しずかに会い、高い木に引っかかったボールを取ってくれるよう頼まれる。驚いたのび太だがその時に叫んだ「エー」の文字を使ってボールを取る。ドロボウネコも声で捕まえしずかに誉められるが、その時大声で笑ってしまい、しずかは「ハ」の字で埋まってしまう。更にのび太はジャイアンを見つけられず、いろんなところで大声を出してしまって怒らせてしまう。その時ムシャクシャしているジャイアンがのび太を見つけた。のび太もジャイアンを見つけた事で、思いっきり悪口を叫んでジャイアンを文字の中に埋める。喜んで帰ってきたのび太だが、家の中は何故か文字で埋まっていた。風邪を引いたドラえもんがクシャミをしまくり、コエカタマリンの効力のせいでその言葉が文字となって出てきてしまっていたのだった。  

 (解説)漫画には必要不可欠な「擬音」。それを逆手にとって日常世界で擬音を出せるようにしてしまうとは、まさに「逆転の発想」ですね。思いつきそうで思いつかないそのアイデアに脱帽です。コエカタマリンを飲んだ状態ののび太が起こす騒動も、初期のドタバタっぽくていいですね。やはりドラはギャグマンガなんだなあ、と感じてしまいました。個人的にはたくさんの声に埋まっていくジャイアンが好きです。
おくれカメラ   7頁 小一76年3月号
 ため息をついて悩むパパ。のび太たちが聞いて見ると、パパは煙草を買いに行った帰りに財布をなくしてしまったと言う。ママに知られる前に何とかしようと考えたドラえもんは、過去の事を写し出せる「おくれカメラ」を出した。試しに30分前ののび太の部屋を写すと、そこではドラえもんがドラやきを食べていた。パパの財布を捜しに行き、タバコ屋からの帰り道を写しながら辿って行く。途中でしずかに写真をせがまれたドラえもんは写すが、そこにはジャイアンが立小便をしている姿が写し出された。再びパパを追いかける二人は、帰り道の途中で子供達の野球に参加し、その拍子に財布を落とした事を確認する。しかし空き地には財布はない。カメラで調べると、犬がくわえて持っていっていた。犬を追いかけて人の家に入った二人は、遂にその犬と財布を発見した。財布をパパに届け、二人に感謝するパパ。そこへママがカメラを貸して欲しいと言う。ママは戸棚のドラやきを誰が食べたかを調べようというので、慌ててしまうドラえもんであった。  

 (解説)今話はどちらかといえば道具の方は重要視されていないようで、ストーリーも道具の特徴を前面に押し出した話ではなく、物語重視になっていますね。財布を追いかけて人の家にまで侵入してしまう二人には、往年の無声映画時代のコメディ作品をも連想させます。さり気なく小池さんが登場しているのも忘れてならないトピックスでしょう。しかししずかは意外と写真に取られたがるんですね。まあ、普通の女の子らしいといえば、らしいんですが。
ゆうれい城へ引っこし   31頁 少年サンデー増刊76年6月15日号(古城の幽霊)
 売家の物件を見に行ってきたパパ。しかし土地が悪くて断念したらしく、当分は借家暮らしが続きそうだと話す両親の話を聞いて、夢のある話はないかとドラえもんに尋ねるのび太。するとドラえもんは『ドイツへいってお城を買おう。』と言う。ドラえもんが週刊誌で見ていた「ミュンヒハウゼン城」という城は一千万円で買えるという。早速パパ達に話すのび太だがもちろん相手にされない。
 とりあえず下見だけする事にした二人はどこでもドアでドイツの城へ向かう。時差の関係でドイツは夜だったが、かまわず二人は城の中に入る。しかし誰もおらず、のび太の冗談のおかげで二人は怖がってしまう。その時目の前に一人の女性が現れた。ドラえもんは彼女とドイツ後で話し始める。驚くのび太だが、ドラえもんは「ほん訳コンニャク」を食べていたのだ。彼女は城の持ち主であるロッテ・ミュンヒハウゼンで、昔はこの城で生まれ育ったが、税金や他の問題で仕方なく城を手放すことにしたと二人に話す。そこへロッテの叔父のヨーゼフが現れ、彼は城に幽霊が出るという噂を二人に話した。それを聞いて買うかどうか悩む二人だが、ロッテは結論が出るまで住んでみればいいと話し、家に飾られている先祖、エーリッヒ・フォン・ミュンヒハウゼン男爵の肖像画の説明をして、ヨーゼフと共に去って行った。
 二人はパパ達も連れてきて城で暮らし始めるが、あまりにも城が広いために4人はそれぞれの事情でくたびれ果ててしまい、パパ達は帰ってしまう。二人は城に居残るが、その夜奇妙な音がしたと思ったら、飾ってある鎧がひとりでに動き出し、二人は一目散に逃げ帰る。のび太はなにか裏があるような感じを持つが、それでも城の事は忘れようとする。一方の城ではロッテが鎧の前にやってきていた。ロッテは鎧の中身がヨーゼフである事を見ぬいたが、ロッテは秘密の地下牢に閉じ込められてしまう。その事を新聞で知った二人は助けに行こうとするが、やはり幽霊が怖くて二の足を踏んでしまう。その時ドラえもんはある名案を思いついた。
 城ではヨーゼフが言い伝えの財宝を見つけるためにあちこちを掘り返していた。そのヨーゼフの前に現れたのは、先祖のエーリッヒ男爵その人であった。逃げるヨーゼフはのび太達に捕まり、すべてを自白した。地下のロッテを救出した二人は、ロッテを男爵と対面させる。二人はタイムマシンで五百年前に行き、男爵本人を連れてきたのだった。男爵は自分が隠しておいた財宝をロッテに与え、かつての栄光を取り戻してもらう役目をロッテに託す。結局二人が城を買う夢は、夢のままで終わったのだった。  

 (解説)前年のサンデー増刊における「のび太の恐竜」の成功を受けて、サンデー増刊に3本発表された中編のうちの一作です。見たこともない異国の地へ行って遭遇する不思議な出来事(決して『冒険』ではない)が、ヨーロッパの流麗な景観に彩られて描かれています。それにふさわしく、キャラクターも充実しています。珍しい年上のメインゲストのロッテもそうですが、なにより過去の世界からやってきたご先祖が一番でしょう。これなどはまさにナンセンスの極致。幽霊なんてチャチなものでなく、本物を連れてくるのだから(笑)。中編らしいストーリーの濃密さと、ドラ世界らしいナンセンス性を余す所なく織り込んだ、心から楽しめる一編です。



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