てんとう虫コミックス第13巻


オーバーオーバー   8頁 小五76年12月号
 部屋でゴロゴロするのび太にドラえもんは面に出て遊ぶように勧めるが、のび太は外に出ても何もないからつまらないと言う。大冒険をしてみたいというのび太の言葉を聞いたドラえもんは「オーバーオーバー」というオーバーをのび太に着せる。すると、なんとのび太の部屋にサソリが現れた。仰天するのび太だがドラえもんがハエ叩きでやっつける。だがオーバーを脱いで見ると、それはゴキブリであった。このオーバーを着るとどんなものでもオーバーに見えるのだ。外に出かけようとするのび太をママが止めると、のび太にはそれが鬼婆のように見えたため、余計ママを怒らせてしまう。ほっとするのも束の間、今度はライオンが現れる。だがそれは実は小さい犬であり、のび太は犬のライオンと戦って勝利を収める。それを見ていたしずかにもオーバーを貸したのび太は二人で出かけるが、しずかは恐竜をダンプカーだとか、ジャングルを空き地の原っぱなどと言ってしまうので、のび太は気分が殺がれてしまう。それでもジャングルの中に入るとミミズの大蛇が現れたり、ジャイアンの落とした10円玉の大金を見つけたり、ジャイアンの人食い人種から逃げたりと様々な冒険をする。走り回って暑がったしずかはオーバーを脱ごうとするが、のび太にはそれが服を全部脱ぐように見えてしまい、慌ててしずかを止め、怪訝に思うしずかであった。  

 (解説)素直に楽しめる作品ですね。日常世界をいきなり非日常の世界に変えてしまうというのは、まさにドラ世界ならではの手法で、子供の頃にやった「探検隊ごっこ」の延長のようにも感じられます。例によって冒頭のやる気のないのび太と、オーバーを着てからの元気いっぱいののび太のギャップも面白いです。正体をいちいち解説するしずかもおかしいですね。
 あと、現在の版ではジャイアンが出てくるところで、ジャイアンは海賊に描きかえられており、本ページでも極力現在の版を尊重する方向ではあるのですが、この話については初出時を尊重し、「人食い人種」とさせて頂きました。このように表現する事は、ある特定の方たちへの差別意識を表しているのでは無論なく、今話についてはもちろんそのような思想が混じっていない事をお断りしておきます。あくまでも「原作尊重」という立場からこのような特例を取らせて頂きます。
手にとり望遠鏡   8頁 小二77年2月号(手にとりぼう遠きょう)
 自分のヨーヨーをジャイアンに取られてしまったのび太はドラえもんに泣きつき、ドラえもんは「手にとり望遠鏡」を出す。望遠鏡で覗いた物が手に届きそうな所まできたら手を伸ばして取ってしまう事ができ、買い物から帰ってくるママで実験したドラえもんは買い物かごを取ってしまった。驚くママだが、かごをドラえもんが持っていた事でさらに驚く。早速のび太もドロボウネコで練習するが、間違えて追いかけているおばさんを掴まえてしまったり、ネコの止まっている木の枝を掴んで逆にのび太が引っ張られてしまう。そこでジャイアンを見つけたのび太はうまくヨーヨーを取り返す。次にスネ夫をぶったり、ジャイアンのセーターを取ってスネ夫のせいにしたりして、仕返しを済ます。そして夜、望遠鏡で星を眺めるのび太はあまりの綺麗さについ手を伸ばしてしまい、星を一個まるまる取ってしまうのだった。  

 (解説)今話の魅力は既にたくさんの人に語られていますが、今敢えてまた語りましょう。今話の最大の見所、それはズバリ、ラストのコマです!いくら手が届きそうだからといって、星を取ってしまうというこのバカバカしさ!今までの話とは全然関係なく、突然現れるこの唐突な、そして間抜けなオチに、読んだ人間は皆爆笑すること間違いないでしょう。それを受けて『星なんかとるやつがあるかっ。』と真面目に返すドラがまたイカス(笑)。とにかく必見の話です。
いただき小ばん   7頁 小二77年1月号
 寝転がりながら何かを必死に我慢しているのび太はやってきたドラえもんに、歩かなくてもどこにでも行ける機械はないかと尋ね、ドラえもんは「いただき小ばん」という物を出す。「小ばんいただき」という魚のように、誰かの体に小さくなってくっつく事ができるのだ。それを使ってドラえもんにくっついたのび太は単にトイレに行きたかっただけだった。ママにくっついて外に出たのび太はさらにしずかにくっつく。ドラえもんはのび太を捕まえようとするが、お尻を触っていると勘違いしたしずかにぶたれてしまう。友達が、誰がかけっこが速いかという話をしているのを聞いたのび太は自分だと名乗りで、勝負をする事にする。小判で一番速い人にくっついて一位になるのび太だが、みんなには疑われてしまう。そこでジャイアンにくっつき、ジャイアンに勘違いさせて友達を殴らせる。更にスネ夫も殴らせて面白がるのび太だが、ベンチにジャイアンが腰掛けたためにお尻に押しつぶされ、歌の練習を始めたためにのび太は苦しみ、さらにジャイアンの放ったおならを満身に浴びてしまう。フラフラののび太はドラえもんに小判を返すのだった。  

 (解説)今回もまた下品な話ですね(笑)。小判を使ったいたずらを愉快に描きながら、それに対するしっぺ返しを一気に描いています。個人的には今話のしっぺ返しは全作品中屈指のひどいものでは(笑)?いくらなんでもジャイアンの歌とおならのダブルパンチは痛い(爆笑)。珍しい動物の紹介をさりげなくやっている所も流石ですね。「コバンザメ」のことや、その別称を初めて知った人も多いのではないでしょうか。
お金のいらない世界   8頁 小五77年1月号(もしもボックス)
 いつでもお金を欲しがっているのび太。そんなのび太にドラえもんはもしもボックスを出し、のび太はそれで「お金のいらない世界」を作り出す。早速欲しかったラジコン飛行機を買いに行くと、なんと主人は代金の二万六千円をくれた。喜ぶのび太は家計が苦しいと呟くママにお金をあげようとするが、ママはお金がたまりすぎて困っており、さらにパパもスリに10万円入れられたと騒ぐ。訳のわからないのび太が町へ出てみると、どうやらこの世界はお金を払うのではなく、お金をもらう世界のようだ。仕方なくお金を捨てようと考えたのび太は土を掘り返すが、そこから別のお金が出てきて、それをお巡りさんに勘違いされたために逃げるが、途中で老人にぶつかり、重要文化財のツボを壊してしまう。罰金と弁償金をもらってしまったのび太は急いで元の世界に戻す。確かめようとラジコンを買いに行くが、お金をもらおうとして主人に殴られるも安心するのび太であった。  

 (解説)もしもボックスで作り出された、これもまたバカらしい世界です。「お金のいらない世界」という物は誰しもが考えると思いますが、今話はそれをさらにひねって、「お金の価値観が違っている」世界にしています。F先生の作家としての創造性が顕著に現された、面白いナンセンス話です。「むだもらい」という造語には大笑いしました。
ちく電スーツ   5頁 小三76年11月号
 ジャイアンの歌を無理やり誉めさせられるのび太達。のび太は本当にみんなを歌でしびれさせてやりたいと話し、そこでドラえもんは着ると電気をためる事が出来る「ちく電スーツ」を出した。しかしのび太はドラえもんの説明を最後まで聞かないうちに出かけてしまう。のび太の発する電気によって、大してうまくないのび太の歌でもみんなしびれ出す。それを聞いて怒ったジャイアンは自分の前で歌を歌わせる。だがドラえもんは、スーツにアースをつけていないのび太を心配していた。一方のジャイアンは歌を止めさせようとしてのび太にさわり、電気で黒焦げになってしまう。その途端に帯電量が一万ボルトを超え、スーツが放電を始めたためにドラえもんも近寄れなくなってしまう。仕方なくたまった電気を無くすために、家中の様々な電気器具の電源となるのび太であった。  

 (解説)この話で最初に思った事は、のび太の歌声を聞いたスネ夫が『ジャイアンよりひどいや。』と言っているのですが、これはどう言う事なんでしょう?まあそんなに深く考える事ではないのでしょうが(笑)。ジャイアンが感電した所を見て、『すごいしびれかた…。』と、やけに冷静に呟いているのが面白いですね。
ジャイアンシチュー   6頁 小三77年1月号
 ジャイアンが料理に懲り出した。みんなにもごちそうすると言うのでとりあえず行く約束をするのび太達だが、以前ハイキングの時に食べたジャイアンの料理のまずさを考え、出来るだけお腹をすかしていこうと話し合う。のび太はママの作ったスパゲッティをどうしても食べないためにママを怒らせてしまう。話を聞いたドラえもんは、振りかけるとどんな料理でも美味しくなるという「味の素の素」を出し、スパゲッティに振りかける。するとのび太はその美味そうな臭いに我慢できず、全部平らげてしまう。味の素の素をもってジャイアンの家に向かったのび太は、しずかやスネ夫が我慢しながらやっと食べているシチューをうまそうに平らげる。しかし味の素の素に気付いたジャイアンはのび太から取り上げようとして、自分で全部かぶってしまい、とても美味しそうに見えた三人はジャイアンを食べようと追い掛け回すのだった。  

 (解説)今話の面白い所はラストのオチと、ジャイアンのシチューの材料でしょう(笑)。ジャイアンはあのシチューを味見したのだろうか?いや、たぶんしていないでしょう。その答えはもっと後に(笑)。しかしラストはなんかすさまじい事になってしまいましたね。ヨダレを垂らしながらジャイアンを食べようとする三人の姿には、可笑しさとちょっとした怖さも含まれていると思います。考えようによっては危険なオチですよね。「ドラえもん健全化計画」が進んでいる今となっては何時消されるかわからないので、早めに読んでおきましょう(笑)。
弓やで学校へ   8頁 小一76年12月号(ゆみやといっしょにとんでいけ)
 遅刻しそうで走って学校に向かうジャイアンとスネ夫だが、のび太がのんびり家にいるのを見て安心してしまう。のび太はドラえもんに出してもらった「はこび矢」の的を学校においてあるので、その矢と共に飛んでいって学校に向かう。のび太は間に合ったがジャイアン達は遅刻した為に下校時に仕返ししようとする。だがのび太はしずかと一緒に青い矢でしずかの家へ向かってしまった。色に対応している的のところまで飛んで行く事が出来るのだ。さらに緑の的のある空き地へ飛んでいったためにジャイアン達はうんざりしてしまう。だがのび太の家の庭にある赤い的を見つけた。のび太は赤い矢で帰ってきたが、ジャイアン達によって場所を変えられており、矢を取られてしまう。緑の矢で飛んで行く二人だが、緑の的は犬がドブ川へ落としてしまったために、二人も川に突っ込んでしまうのだった。  

 (解説)自由に飛び回る事こそ出来ないものの、空を飛んで行きたい所にすぐに行くという純粋な夢を叶える楽しい話です。珍しい所としては、のび太がはこび矢で遊ぶのがメインになっており、ドラは最初の2ページしか出てきていません。ラストのオチもいかにもジャイスネらしいオチですね。
合体ノリ   7頁 小三77年3月号
 宿題をやっていたのび太の部屋に、友達の山口くんが持っているおもちゃのヘリコプターが飛び込んできた。それを借りたのび太は外で遊ぶが、茂みの中へ落としてしまい、ドサクサにまぎれてスネ夫が持っていってしまう。山口くんは親に言いつけようと走り去り、困って泣き叫ぶのび太の所に、体は蛇で顔がドラえもんのよく分からないものがやってきたため、のび太は気絶してしまう。ドラえもんは「合体ノリ」で蛇と合体しており、合体する事で相手の能力を自分のものに出来るのだ。犬と合体したドラえもんは山口君の匂いをたどってスネ夫の元にやってくるが、おもちゃはジャイアンに取られてしまったと言う。その時通り掛かりの力士を見つけたドラえもんは、のび太を力士と合体させ、ジャイアンからおもちゃを取り返す。だが夜になって宿題を思い出したのび太はしずかと合体して宿題を終わらせようとするが、しずかは夕食の食べかけのところで合体させられたために、家に帰りたがって暴れるのだった。  

 (解説)「合体ノリ」が出てくる話はもう一つありますが、両方で機能はほぼ同じのようです。個人的には『あいあ〜い。』と言ってやってくるヘビドラ(?)が好きですね。そりゃのび太でなくてもビックリするよな(笑)。おもちゃを黙って持ち去ってしまうスネ夫は、いつもと違ってだいぶあさましいですね。これも彼の本性の一部のようですが(笑)。
チョージャワラシベ   7頁 小三76年10月号
 グローブを出して欲しいと遠慮なく頼むのび太にドラえもんは呆れながらも「チョージャワラシベ」を出す。これに願いをかけてうろうろしているうちに願いが叶うと言う。試しにドラやきが欲しいと願うと、パパがワラシベを欲しがり、代わりに家の中で拾ったと言う綺麗なガラス玉をもらう。それはママの買ったばかりのスーツのボタンであり、感謝したママはドラえもんにドラやきをやる。のび太もグローブが欲しいと願って外をうろつくが、スネ夫やしずかの前でワラシベを見せても反応がない。公園に行ったのび太はシャボン玉のストローを落としてしまった子供にワラシベをあげ、その親からドロップをもらう。ところがそのドロップは近くにいたホームレスが間違えて食べてしまい、お詫びにと新聞紙をもらう。諦めかけるのび太だが、公衆トイレの中から紙を欲しがる声がしたので新聞紙を渡すと、その人はスポーツ洋品店の社長で、大事な取引にこれから向かう所だったと言う。お礼にグローブをもらったのび太はこのことをみんなに話し、羨ましがるジャイアンにもワラシベを一個やる。ジャイアンはモデルガンが欲しいと願ってうろつくが、「モデルルーム」の看板に「ガン」とぶつかり、「モデルガン」をもらってしまうのだった。  

 (解説)「わらしべ長者」を題材にしながらも、F先生お得意の「こじつけギャグ」をフルに活用した、楽しい笑い話です。その白眉はやはりラストのオチ。ページの都合などとは言わないで、たったヒトコマでジャイアンの願いが叶ってしまったバカらしさを楽しみましょう。個性的なエキストラキャラも例によって活躍しており(特にホームレス)、愉快な話になっていますね。
宝さがしごっこセット   17頁 てれびくん77年3月号(宝さがし)
 面白い漫画を見たと言うのび太は部屋を飛び出して行く。不思議に思ったドラえもんがその漫画を見ると、それは蔵の中で宝の地図を見つけた少年が宝を探す話だった。ドラえもんが外へ行ってみると案の定、のび太は物置をあさっていた。ドラえもんに説得されると今度は何を勘違いしたか、家に蔵を建ててくれるようママに頼み始める。ドラえもんにバカにされたのび太は悔しがり、仕方なくドラえもんは「宝さがしごっこセット」を出す。中身こそプラスチックだが、適当な場所に飛んでいって、後から在り処の暗号文を送ってきてくれると言うのだ。しかしやる気を出さないのび太のためにドラえもんはパパのカメラとママのネックレスを中に入れて発射する。のび太はジャイアン達に八つ神山へハイキングに誘われるがのび太はもちろん断る。帰ってきた暗号をもとに在り処を探し、「八つ神山」という場所まで特定した二人はどこでもドアで山に向かう。しかし「どくろに見つめられた一本杉」を探す二人の前に、同じくどくろの岩を探す男が現れた。あせる二人だがどうしてもどくろは見つからない。家に帰って昼食を食べる間にうっかりカメラとネックレスの事を口走ってしまい、慌てる二人は出会ったジャイアン達もほっといてどくろを探す。そして二人はついに小学校にある骨格標本のどくろを見つけた。急いで一本杉に向かうが、例の男も既にやってきていた。ジャイアン達にも手伝わせて掘り始めるが、そこからは汚らしい箱が出てきた。それを放り投げた二人はついに宝箱を見つける。しかし中身がプラスチックである事にジャイアン達は失望し、さらに先程の汚い箱こそが本当の宝物であることを知り、それを男に取られたのび太達は残念がるのだった。  

 (解説)宝さがしはやはり子供ならいつの時代でも憧れるもののようで、「ドラえもん」の中でもよく宝探しをする話が出てきます。今回はてれびくんの付録に収録された作品であるという事もあって、通常よりは長い話なのですが、それだけに謎解きの部分や、謎の男の正体などにページ数を十分に費やし、読み応えのある作品に仕上がっています。ただ一つ個人的に嫌いな所を言えば、これは掲載紙の都合なのでしょうが、のび太がやたら子供っぽいのが気になります。まあ最近のアニメでののび太の性格の豹変ぶりと比べると月とスッポンなのですが、少し気になってしまいました。
マジックハンド   8頁 小五76年11月号
 ドラえもんが道具を貸してくれるよう必死に懇願するのび太。ドラえもんは仕方なくそれを貸し、のび太はジャイアンへの復讐に向かう。のび太は「マジックハンド」を装着し、遠くからジャイアンをつねったり殴ったりしてやっつけてしまう。しかしやはりのび太は素直に道具を返さず、取り戻しに来たドラえもんをドブに突き落としてしまう。さらにスネ夫の持つ作り物のヘビを動かして驚かしたり、口紅をつけてみようとするしずかにいたずらしてくすぐったり、水撒きをするママに水をかけたりと、やりたい放題してしまう。みんなはのび太を疑うが、証拠がないためにどうしようもない。その時のび太のおしりが突然痛くなった。ドラえもんが「マジックおしり」を出してママにひっぱたかせているのだった。  

 (解説)今話はなんか唐突な始まり方で、初見時に少し驚いた記憶があります。「遠くから何かをする機械」という初歩的な発想を用いて、それを使ってのび太のいたずらを愉快なものにしていますね。今回はキャラのセリフも可笑しいですね。ヘビでおどかそうとしたスネ夫が「ウシウシ」と笑ったり、のび太にくすぐられたしずかが「イヒヒイヒヒ」と笑うのはなんか凄いです。特にしずかはその直後にママが「気を確かに」といって駆けつけてきて、さらにおかしくなっています。
ロケットそうじゅうくんれん機   9頁 小四77年3月号
 「大宇宙の冒険」という本を読んで興奮しているのび太を見て、次の行動を予測したドラえもんはこっそり出て行こうとするが、のび太に捕まってしまう。宇宙へ行きたいと話そうとするのび太のドラえもんは、未来でも危険な宇宙旅行にのび太のような人間が行けるわけないと話す。しかしその言葉で傷ついてしまったのび太のために仕方なくドラえもんは「ロケットそうじゅうくんれん機」を出した。円盤を操縦し、そこから映し出されたものが本当の宇宙の景色になってスクリーンに映し出されるのだ。早速ドラえもんは円盤を出発させ、本当はガラスの氷の壁を突き破って外に出る。ドラえもんは機体が爆発するとくんれん機も爆発するから気をつけるようのび太に話す。のび太は猫の怪獣を見つけて驚くが、そのとき円盤が動かなくなってしまった。スネ夫が円盤を宇宙人のものと思ってバケツで閉じ込めたのだ。のび太はアクセルを全開にして脱出し、とある洞窟に侵入する。そこには入浴中のしずかの恐竜がおり、円盤は慌てて逃げる。次の洞窟に入るが、それと同時に円盤は攻撃されてくんれん機も爆発してしまった。ジャイアンの家に入った円盤をジャイアンが壊してしまったのだった。  

 (解説)これまた素直に楽しめる装具が出てきており、読者も操縦しているのび太の気分になって楽しめる話です。やっている事は「オーバーオーバー」と同じなんですが。本に影響されやすいのび太も相変わらずですが、それに対するドラの返事もまたすごい。あれが恐らくのび太に抱いている本音なのでしょう(笑)。しかし円盤と同時にシミュレーターの方まで爆発してしまうなんて、物騒な訓練機ですね(笑)。
ころばし屋   7頁 小五77年3月号
 その日ドラえもんが出した道具は「ころばし屋」だった。背中に10円入れて憎い相手の名前を言うと、その相手を三回転ばしてくれるというのだ。ジャイアンにつっ転ばされた仕返しにころばし屋を差し向けるのび太は後を追いかけ、ジャイアンを転ばせる所を見ようとする。ジャイアンは最初こそなめてかかるもののどうやっても転ばされてしまい、結局三回転ばされた。喜ぶのび太だがスネ夫に転ばされたため、ころばし屋を差し向けようとする。しかし10円を入れた瞬間に後ろからしずかに自分の名前を呼ばれたため、ころばし屋はのび太を狙い始める。逃げ惑うのび太はやっと家に帰ってきたが、ドラえもんは取り消すには取り消し料として100円が必要だという。のび太はこれ以上の出費を考えて悩むが、仕方なく100円を出して取り消してもらう。だが残念がるのび太は階段から勝手に転げ落ちてしまい、ドラえもんに呆れられるのだった。  

 (解説)まんま、殺し屋が主人公の作品をパロっていますね。元ネタがあるかは知りませんが、よく考えれば「転ばせる」という大した事でもない事でみんな一喜一憂している所は、パロディの最たる所として、文句なく面白いです。ころばし屋が動き出す時の、いかにもロボット的な擬音も好きですね。今話を読んでいると、子供の金銭感覚というものがよくわかります。120円で「大損害」なんですからねえ…。
もどりライト   8頁 小四77年2月号
 ドラえもんに何かを頼もうとするのび太だが、ろくでもない頼みだろうと勘繰ったドラえもんは先に断ってしまう。しかしのび太は宿題の事で相談があるのだった。それは身の回りのものの原料を調べるというものだった。ドラえもんはそれにピッタリの道具「もどりライト」を出した。30分間だけ原料に戻す事が出来るのだ。ノートを木に変えたり、ガラスや畳、台所の食器類なども調べる二人。今でも調べようとするが客が来ているために遠慮する。しかしそのお客にはママが迷惑している事を知り、遠慮なく原料を調べ始め、ウイスキーや様々な食事の原料を調べたために客は帰っていってしまう。しずかにライトを見せに行ったのび太はバイオリンを弾いているしずかを見て服の原料を調べようとし、ドラえもんともみ合いになる。その時ライトの光がバイオリンの弓に当たり、原料と思われるクジラのひげを持つクジラが丸々出てきて、三人は吹っ飛ばされてしまうのだった。  

 (解説)今話の面白い所は残念ながら文章では表現できません。いや、僕の文章表現が稚拙とかいう問題ではなく(笑)、今回は絵的な面白さが多いのです。例えばノートを丸ごと木にしてしまったり、食事の材料を調べて様々な動物が一気に出てきてしまったりするところなんかは、まさに文章では表現しきれない面白さですね。そして極めつけはラストのクジラ。クジラが出てきたために三人とも吹っ飛び、さらに材料についてのやたら説明的な解説(笑)を誰かがきちんとしているのには大笑いしました。冒頭ののびドラのやり取りといい、とにかく「見て楽しむ」漫画の面白さを十二分に発揮している作品です。
七時に何かがおこる   8頁 小四77年2月号
 さっきから部屋でブツブツ言ったりうろうろしたり、一人じゃんけんをしたりと落ち着かないのび太。ドラえもんがわけを聴くと、のび太は0点の答案の事で悩んでいたのだ。ドラえもんは仕方なく「みちび機」を出した。迷ったときにこれを使うとおみくじが出て道を示してくれると言う。やってみると「午後七時に打ち明けろ」と出てきた。それを守ってとりあえず外へ行く二人。疑うのび太にドラえもんは効力を証明しようと、ジャイアンについて聞いてみると「けとばせ」と出てきて、その通りにやってみると喉につかえていたアメが取れたとジャイアンは喜んだ。しかししずかの家にもいられず、雨も降ってきたためにみちび機に従って家の物置の中に隠れる。さらに7時が近くなる頃、パパまでが帰ってきてしまった。諦めて出て行こうとする二人だが、その時古い書類のようなものと答案が混ざってしまった。パパは答案を見て怒るが、それはパパが子供の頃の答案だった。そのために厳しく叱られずに済んだのび太はみちび機をありがたがって拝むのだった。  

 (解説)みちび機のいう通りに道を選んでいるために、のびドラにも先がどうなるかわからないために、自然と読んでいる読者も結末が気になってくると言う、うまい構成のストーリーです。様々な未来から最良の未来を選ぶと言う意味ではこれも「タイムパラドックス」と言えなくもないですが、今回はそれ系の話につきものの強烈なギャグなどは一切なく、比較的落ちついた感じで終始しています。今話では成功しましたが、これの失敗バージョンが「きりかえ式タイムスコープ」のようですね。
盗塁王をめざせ   8頁 小四76年12月号(しゅん間リターンボタン)
 フォアボールで珍しく出塁するも、リードをとっていなかったためにダブルプレイになってしまったのび太は、今日の野球の試合では思いっきりリードをとるが、牽制球でアウトになり、みんなに袋叩きにされてしまう。ドラえもんはそんなのび太のために「しゅん間リターンメダル」を出す。Bのメダルを1ヶ所に置き、Aのメダルのボタンを押すと、一瞬でBの地点に戻ることが出来るのだ。のび太は早速野球をしようとジャイアンに連絡するが、ジャイアンに怒られる。ドラえもんものび太に説教し、十分練習することを進める。その時ママに宿題をするよう言われたのび太は、イスにBのメダルを置き、ママが部屋を覗きに来るとボタンを押してイスに座るようにしてごまかす。更に外を歩くジャイアンを蹴飛ばし、メダルですぐに部屋に戻って来たりして練習をこなしていった。そして試合の日、デッドボールで出塁したのび太は思いきりリードを取り、牽制球を投げられてもメダルのおかげでセーフになる。しかしジャイアンがヒットを打ったためにホームへ向かうが、転んだはずみでメダルのボタンを押してしまい、ジャイアンと一緒に一塁に戻ってしまう。またも袋叩きにされてしまったのび太を見て、心底呆れかえるドラえもんであった。  

 (解説)今回の道具についてドラは「磁石」と言っていますが、間に障害物があってもきちんと移動できるので、四次元的な効果も持つのでしょう。今回は珍しくドラがのび太に道具をきちんと練習してから使うことを勧めますが、そののび太の練習方法はずるいことばかり(笑)で、それを複雑な表情で『まあな。』と呟くドラの様子が面白いです。オチは予測範囲だと思いますが、「ふくろだたき」にされたのび太の図は面白いですね。
悪魔のパスポート   10頁 小四76年6月号
 大人気のマンガを買いたくて、こづかいの一部を前借りしようと頼むのび太だが、にべもなくママに断られる。勝手に借りようとしたのび太だがママに激しく叱られ、逆ギレしたのび太は本当の悪者になるための道具をドラえもんのポケットからあさる。そこから出てきたのは、見せればどんな悪行も許されるという恐ろしい道具「悪魔のパスポート」だった。持ち出したのび太をドラえもんは止めようとするが、パスポートを見せられて許してしまう。のび太はママの財布から千円を抜き取り、更にゴミを散らかしたりジャイアンを殴ったり、しずかのスカートをめくったりとやりたい放題行う。更に欲しいマンガも盗んでしまうのび太だが、良心の呵責に迫られ全然マンガに集中できない。のび太は考えた末に本の代金を払い、散らかしたゴミを片付けてパスポートをドラえもんに返す。こづかいをもらったらママの千円を返すと話すのび太が、本のお釣りを貰い忘れたと叫ぶのを見て、のび太が悪者になるのは無理なのだと話すドラえもんであった。  

 (解説)しかし未来には恐ろしい道具があるものだ(笑)。今話は「悪いことはなんでも出来る」という状況に追いこまれてののび太の反省が描かれていますが、「性善説」などという難しい議論を持ち出しているわけではなく、あくまでのび太の本来持っている優しさに基づく反省となっています。決して高見に上った所からではなく、等身大の観点で作品のテーマを描くのも藤子F作品の素晴らしさですね。人間に一番大切な者は何かを考えさせてくれる、上質のドラマです。
タマシイム・マシン   8頁 小四77年1月号
 物置の整理中に赤ん坊の頃のアルバムを見つけたのび太は、あの頃の日々を思い返す。しかしママにガミガミどやされ、幼かったあの頃に戻りたいと願うのび太にドラえもんは、魂だけを昔の自分の体に移せる「タマシイム・マシン」を出す。タイマーをセットして一歳の頃へ飛んでいくのび太。ママは抜け殻となっているのび太を発見した。その頃のび太は一歳の体に飛んでいた。ママにミルクをもらうがコーラが飲みたいと呟いてしまい、ママを驚かせてしまう。のび太はあまり喜ばせないように自重し、しばし赤ん坊としてのゆっくりとした時間を楽しむ。そしてママの子守唄を聞きながら静かに眠っていくのび太。目が覚めた時、のび太はもとの体に戻っており、目の前には意識のなかったのび太を心配するママがいた。心配のし過ぎで寝込んでしまうママに、のび太は幼い日にママが自分にしてくれたように、布団をかけて子守唄を歌ってあげるのだった。  

 (解説)親の子供に対する愛は、例え子供が歳をとっても永遠のものだと思いますし、例えその表現に種々様々なものがあるとしても、親はいつでも子供のことを想っているのだと思います。のび太はタマシイム・マシンを使うことで、幼い日も、そして今も、ママの自分への想いは変わっていないことに気づきます。親子の絆というものを静的なイメージで表現している秀作ですね。ラストののび太とママ、そしてニッコリ笑うドラがなんとも言えない、ほのぼのとした味わいを引き出してくれます。でも『きみみたいな子どもをもてば、くろうするさ。』と言うドラ、正直すぎ(笑)。
風神さわぎ   8頁 小四76年9月号(強力うちわ『風神』)
 残暑厳しい9月だが、ドラえもんはクーラーをつけさせてもらえない。夏の電気代が高すぎたので自粛しているのだ。仕方なくドラえもんは「強力うちわ『風神』」を出した。これは空気抵抗が大きいので、かすかに動かすだけで普通のうちわと同じくらいの風が出るのだ。借りてみたのび太はいつものように仰いだために廊下まで吹っ飛んでしまう。パパにもあおいで服をふっ飛ばしたのび太はドラえもんに叱られる。ドラえもんはのび太がジャイアンを吹き飛ばしたり、しずかの服を吹き飛ばすつもりと考えたが、のび太は風神を二つ使って、翼のようにして空を飛び始める。面白がった二人はこれを「バタバタヒラヒラ」と名付け、友人達にも風神を貸して、みんなで練習を始める。しかし些細なことからみんなは互いを風神で仰ぎまくり、周囲は台風のようになってしまう。怒ったドラえもんは風神を返してもらうが、その時ネズミが現われたためにドラえもんは暴れ、もっていた風神を振り回してみんなを吹き飛ばしてしまうのだった。  

 (解説)変則的ではありますが、これも空を自由に飛ぶことを主眼をしている話です。けれど、うちわで空を飛ぶというそのバカバカしさが、作品の薬味となっています。でも風神で空を飛ぶシーンを想像力たっぷりに描いている、楽しい話です。ちなみにラストのオチ「ドラが台風を巻き起こす」というのは、これから10年以上経ち、「バショー扇」で再び描かれることになります。
立体コピー   9頁 小二75年9月号(立体コピー紙)
 しずかの家に行こうとするのび太とドラえもんだが、ママに留守番を頼まれてしまう。困ったドラえもんは「立体コピー紙」を出し、その上にのび太を寝かせる。するとのび太のコピーが立体になって出てきた。これに留守番させようと考えた二人は、コピーにポーズをつけて玄関の所に置き、安心して出かける。だがそのコピーを見かけたジャイアンはケンカを売っていると勘違いし殴りかかるが、コピーのために手応えもなく、ジャイアンは逃げ出し、コピーは風で飛ばされてしまう。一方しずかにコピー紙を見せる二人はしずかのコピーを作ってしずかのママを驚かし、ポストや車のコピーも作って、その車に乗って風に乗って遊ぶ。一方のコピーののび太は風の吹くままに飛んでいき、知らぬ間に屋根の上のドロボウを指し示したり、溺れそうな子供を助けたりしていた。そしてコピーを見つけた二人は急いで家に帰るが、ママは既に帰ってきていた。しかしのび太がドロボウを見つけたり子供を助けたという話を聞いて、ママだけでなく当ののび太達も驚くのだった。  

 (解説)どちらかと言えばのび太ではなく、コピーののび太の活躍を描いた、面白おかしい話です。のび太達は遊んでいるだけで、のび太たちの知らない所で、しかもコピーにも別にその気があったわけではない(当たり前)なのに、結果的に人助けをしてしまい、最後までのび太たちは気付かなかったという、技巧的に凝っている展開が面白いですね。勝手に一人相撲を始めてしまうジャイアンが妙におかしいです(笑)。
ハロー宇宙人   21頁 少年サンデー増刊76年8月10日号
 暑い夏だがお金がないために何も食べられないのび太とジャイアン。その時スネ夫はメロンを食べようと、円番という人の家へ行く。その人はUFOマニアで、スネ夫は適当なUFO目撃話を話してメロンをもらい、そのことをのび太から聞いたドラえもんは、火星人のUFOの写真を撮ろうと言い出す。
 ドラえもんは火星にあるというコケに、進化加速ダイヤルを最高にセットした「進化放射線」を当て、10億年分進化させて生物を作り出そうと言うのだ。放射線源をセットしたロケットを火星に送り、コケに放射線を当てるドラえもん。ニセのUFO写真を撮るジャイアン達に本物のUFO写真を撮ると自慢するのび太。火星のコケは筋肉のようなものが出来始め、ドラえもんは水を求めて動き回る新種を生み出す為に、熱風で地面を乾燥させる。ジャイアン達はのび太を殴ってでも仲間に入れてもらおうとするが、のび太はそれでも何も話さなかった。
 そして遂にキノコのような火星人が誕生し、原始社会が誕生した。どんどん発展していき、遂に近代都市まで生まれた。カメラに映っている火星人の親子は、地球に人間が住んでおり、いつか地球を探検するという話をしていた。待ちくたびれた二人はテレビの「UFOレンジャー」というヒーロー番組を見に行くが、その間に火星人は地球へ向けてUFOを出発させていた。日本にやってきた火星人だが、汚れた空気と騒音に驚き、のび太をいじめるジャイアンとスネ夫、さらにヒーロー番組に夢中になるのび太とドラえもんを見て、地球人を狂暴種とみなしてしまう。そのときそのUFOとぶつかった円番は、それをジャイアン達のおもちゃと勘違いして思わず蹴飛ばしてしまい、その時のUFOを写真に撮影するスネ夫。
 報告を聞いた火星人は地球に危機意識を持ち、遠い星に移住する為にUFOで飛び立つ。それを地球へ来るのだと勘違いした二人だがUFOは来ず、無駄骨だったと認識する二人。ジャイアン達はUFOの写真を円番に見せようとするが、円番はそれを嘘だと信じ込み、見るのを断るのだった。  

 (解説)今話はなんと言っても生命を自分たちで創造してしまうという、そのスケールの壮大さがすごいですね。F先生の短編でも時々テーマになる「生命創造」をドラの道具を使って極めて科学的に、そしてわかりやすく描いています。のびドラの方とジャイスネの方、二つのストーリーの流れを混乱させることなく巧みに描ききり、そして1つのラストに終局させていくという難しいことをサラリと行ってしまうあたり、作者の非凡さをよく表わしています。知的好奇心をかきたてられる話ですね。進化放射線の話からロケット発射までのシーンでずっと大口を開けっぱなしののび太など、「ギャグマンガ」としての側面ももちろん忘れてはいません。



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