てんとう虫コミックス第15巻


ゆめのチャンネル   9頁 小五77年8月号
 昼寝のし過ぎで深夜眠れないのび太は退屈でしょうがない。起こされてしまったドラえもんはポケットからテレビを出して画面を映す。するとそこには怪獣に追いかけられるのび太と、それを助けるヒーローのようなジャイアンが映し出された。そのテレビは人の夢を見られる「ユメテレビ」で、これはジャイアンの夢だったのだ。のび太はスネ夫の夢を見てみるが、そこでものび太は情けない役どころで、更に身長の高いスネ夫が登場していた。怒るのび太は続いてしずかの夢をみてみると。しずかは魔物にさらわれて古城に閉じ込められている夢を見ていた。しかしそこへ助けにやってきたのび太は馬ではなくブタに乗っており、さらに魔物を見ておもらししてしまう。そしてカッコイイ王子が現れて魔物を倒し、しずかと共に去っていった。完全に怒ったのび太は思わずインクびんをテレビ画面にぶつけてしまうが、なんとそこから夢の中のものが実物になって飛び出してきた。飛び起きたドラえもんは、絶対に消す事の出来ない魔物たちからのび太を逃がすために犠牲になると言う。その友情に感謝して涙を流すのび太だが、実はこれはいつの間にか眠っていたのび太の夢の中の事で、それをテレビで見たドラえもんは怒り、学校へ行く時間にも関わらず、のび太を起こしてやらないのだった。  

 (解説)眠っている時の夢というのは自分一人のものですから、自分がいいカッコをしてしまうのはしょうがない事です。でも他人から見ればそれは「勝手」であるわけで、その事をオチへの伏線にうまく使っていますね。でものび太は現実世界でも対して変わらないから仕方ないのでは(笑)。個人的には「パンパカパーン」とやってくるジャイアンがスキです。ここで問題。のび太はいつ眠ってしまったのでしょう(笑)?
ネコが会社を作ったよ   10頁 小四77年9月号(ネズミたいじ会社)
 ある朝、ドラえもんが見守る中、のび太は眠ったまま目覚め、歯磨きや朝食を済ませて学校に向かう。その手首には腕時計のようなものがつけられていた。登校途中で目覚めたのび太は慌てるが、「タイマー」をつけている事を思い出す。これをつけておけば、毎日決まった時刻に決められた事をひとりでにやるのだ。安心して学校に行くのび太はその途中でしずかに出会う。しかししずかは元気がない。1日中憂鬱そうなしずかを見て相談に乗るのび太だが、しずかの悩みとは、拾ってきた捨てネコをどうするかということだった。仕方なくのび太が一時預かるがママにすぐ見つかり、飼い主を探しに出かけてみる。しかしどこも引き取ってくれず困り果てる二人だったが、その時のび太のタイマーが作動し、ネコを持ったままで家に勉強に向かってしまう。とりあえずデンデンハウスに逃げ込んでママをやり過ごしたのび太だが、その時ドラえもんは一計を案じ、ネコたちの首にタイマーをつけ、ある実験を始める。時間が来てネコたちは天井に上がり、しばらくするとネズミを追い出した。その結果に満足したドラえもんは自分の考えをのび太に話す。ドラえもんはネコたちにネズミ退治の会社を作らせ、毎日決められた時間にタイマーで契約した家に向かい、報酬としてキャットフードをもらおうというのだ。のび太が仲買人として会社を始め、ネコたちは元気に働くのだった。  

 (解説)ギャグテイストの話ですが、商売を始めるにあたってのドラの利害関係についての細かい説明など、結構難しい話が出てきています。捨て猫たちにも生きる場所を与えてしまうとラストには、F先生の優しさがあふれています。『はじめにすてたむせきにんな人間がにくらしい。』とのび太に言わせているところもさすがです。デンデンハウスというマイナー道具を登場させているところも、サービス精神を感じられていいですね。
珍加羅峠の宝物   10頁 小六73年8月号(宝さがし)
 ドラえもんがニヤニヤしてのび太のところにやってきた。いい考えを思い付いたと言うドラえもんはのび太から借りた百円を空き地に投げ捨ててしまう。怒るのび太だが、ドラえもんは「宝さがし機」を出して百円玉を探し始める。文字通り宝を見つけられる機械なのだが、この機械は千円以下のものは宝と認めないために百円玉は見つからず、のび太は余計に怒ってしまう。ドラえもんは慰め、日本中に眠っているという伝説の財宝を宝さがし機を使って探そうと話す。みんなにはバカにされてしまうが、二人は幕末に宝が埋められたという珍加羅峠に向かう。さっそく探し始めるが捜索範囲が狭いために、いくら探し歩いても見つからない。それでも反応のあったところに行ってみると、そこは誰かの家の庭だった。二人は掘り返してみるが、出てきたツボの中には先ほど会った農夫の預金通帳が入っていた。改めて探しに行く二人は、リュックに大金を詰め込んでいる怪しい人物に出会う。後を追う二人だが、その人は不動産屋でこの山を買い取ろうと農夫を説得にやってきていたのだ。いくら探しても宝は見つからず、雨まで降られてついにケンカを始めてしまう二人。だがその時再び反応があった。土砂崩れの起きたところを掘り返すと、先ほどの不動産屋が出てきた。土砂崩れで生き埋めになっていたのだ。不動産屋はお礼にと二人に札束を渡す。後日、そのお金を山の中から掘り出したとみんなに自慢する二人であった。  

 (解説)のび太以上に宝の発見に意欲的なドラが面白いですね。未来道具を金儲けのために使ってはいけないのでは(笑)?農夫や不動産屋などのエキストラキャラがしつこいほど出てくるのは何故かと思っていたら、ちゃんとオチにつながる役どころを持っていたわけで、物語構成の巧みさに感心します。話自体は面白いのですが、問題はこれが15巻に収録されているということです。絵の雰囲気がだいぶ固まってきた頃の作品の中に、初期の作品が混ざるのはどうも…。「バラエティに富んでいる」という考えもできるんですけどね。
ナイヘヤドア   12頁 小六77年2月号
 欲しいアイスを我慢して貯金をするのび太。それは甘えてばかりの自分を世間で試すべく、独立するための資金を確保するためであった。それを聞いて感心したドラえもんはすぐに独立させてやろうと、「田中荘」というアパートにつれてくる。ここは縁起を担いで3号室の隣は5号室になっているため、ドラえもんはないはずの4号室を「ナイヘヤドア」を使って作り出してしまう。家から必要な物を持ってきたのび太は自由を満喫して寝転がる。ところがドアをつけっぱなしだったために5号室の人が入ってきてしまい、のび太はなんとかごまかした。のび太はしずかたちを部屋に招待しようと連絡するが、ドアをつけていないためにみんなはのび太の部屋を見つけられずに帰ってしまう。引き止めようとするのび太だがママにばったり会って逃げ出してしまう。宿題をしようと思ってもやる気にならないのび太は家に戻ってママに叱られてから宿題をはじめ、ドラえもんが家に帰った後も慣れない事ばかりで四苦八苦する。だがママになんとか心配させたいと思ったのび太は部屋を移動し、自分の家の中にナイヘヤドアで部屋を作ってしまった。それをボケっと見つめるドラえもんであった。  

 (解説)結局のび太に自立は早かったという事ですね(笑)。ラストで家の中にいながら「家出」と表現するのび太のバカらしさが一層の笑いを誘います。ラストのドラの無表情は好きですね。でもそれ以外は特に見所がないのは残念でした。
入れかえロープ   9頁 小二72年3月号(いれかえロープ)
 ジャイアンに殴られてしまうのび太。自分がジャイアンみたいに強く、ジャイアンが自分のように弱いのならケンカできるという消極的な言葉をはくのび太にドラえもんは「入れかえロープ」を貸してやる。のび太とジャイアンがこのロープの端を持つと、二人の内面が入れ替わり、のび太はジャイアンになってしまう。のび太になったジャイアンをやっつけたのび太はさらにロープでいたずらをしようとし、止めようとするドラえもんとまた入れ替わってしまう。そしておやつにケーキを食べようとしているしずかを見かけたドラえもんののび太はしずかと入れ替わってケーキを食べようとする。しかし母親に歯医者に連れて行かれ慌てて逃げ出すが、その時に野良犬とロープが触れ合ってのび太は犬になってしまう。いやになったのび太は元に戻ろうとするが、どういう順番で戻したらいいのか分からなくなり、困ってしまう一同であった。  

 (解説)「からだの部品とりかえっこ」と全く同じオチですが、こちらのほうは掲載年が古いぶん、よりナンセンス性が強まっているように思います。でもやはり15巻という時期にこの時代のマンガを載せるのは少し違和感があるような。入れかえロープの定義も不明瞭(のび太は完全にジャイアンになったわけではなく、のび太としての意識もちゃんとある)なので、僕としては今一つ楽しめませんでした。
不幸の手紙同好会   5頁 小四77年4月号
 なにやら悲壮な決意を固めているのび太。そこへドラえもんが入ってくると、のび太はものすごい声をあげて驚く。ドラえもんが訳を聞いてみると、のび太は不幸の手紙をもらったと言うのだ。笑い飛ばすドラえもんは手紙を破り捨てるが、それを信じているのび太は慌てて破片を拾い集め、その時机にぶつかった事を不幸の始まりなどと言って泣き出してしまう。呆れたドラえもんだが、手紙に書いてあったとおり29人の人間に手紙を出そうと話す。ドラえもんは「郵便逆探知機」を出して、のび太に手紙を送ってきた人の名前と住所を調べる。するとそれはなんとスネ夫であった。さらに逆探知を進めて手紙を送っている様々な人達を調べ上げて、その人達の名簿を同封し、その中だけで不幸の手紙をやり取りさせるように仕組む。そうすれば嫌いな人に迷惑がかからないからだ。二人は手紙を送り、そしてスネ夫の家には毎回たくさんの郵便が来るようになり、そのきりのなさにうんざりしてしまうスネ夫であった。  

 (解説)最近では「不幸のメール」などというものもあるようですが、このようないたずらはやはり尽きるものではないと思います。それを逆手に取ったかのような今回の話は、未来道具で不幸の手紙を出す事を楽しむ人達をやんわりと苦しめるという、逆説的な痛快さがあります。純粋過ぎるのび太も、他人の事を心配して手紙を出せないという優しい少年として描いており、全体的に好感が持てる話です。これも一種の「都市伝説」のようなものですが、後年ドラも都市伝説のせいでよくわからない噂がたってしまいますからねえ。
オールマイティーパス   10頁 小五77年4月号
 突然大声を張り上げるドラえもん。「オールマイティーパス」の期限が今日の午後六時で切れてしまうと言う。パスがあればどこへでも行けるしどんな乗り物にも乗れるということを聞いたのび太は六時までに使ってみようと言い出し、期限が切れたら帰れなくなるというドラえもんの制止を降りきって飛び出していく。その時ジャイアンに野球ボールをぶつけられたのび太は怒って近くの家に放り込んでしまうが、そこには怖いおじいさんと犬が入ると言うので、のび太が取りに行かされる。パスを試したのび太は無事にボールを取り、しずかを誘ってどこかへ行こうとする。喫茶店やパチンコ屋に行ってみるがしずかは嫌がり、映画で星野スミレ主演の映画を見た二人は星野スミレに会いに行こうとする。タクシーで家まで向かった二人はパスの力で家の中に入り、星野スミレと楽しいひとときを過ごす。だがその時パスの期限が切れ、家を追い出された二人はタクシーにも乗れず、家まで歩いて帰る羽目になるのだった。  

 (解説)どこにでも入れるという道具を使って、子供が普段は入れないようなところへ入っていくのび太には、読者である子供達の願望がストレートに反映されているような気がします。でも喫茶店もパチンコ屋も、実際は大した事ないんだけどね(笑)。あと特筆すべきはやはり「パーマン」連載終了以来の星野スミレの登場でしょう。今話ではメインゲストではありませんでしたが、後々の作品において重要なキャラクターとなります。
タイムマシンで犯人を   10頁 小四71年4月号
 今日は一度も先生に怒られなかったのび太は家に帰ろうとするが、後者の近くの茂みに誰かが潜んでいるのに気づく。追い払われたのび太だが、そのすぐ後に自分の背後で誰かの声とガラスの割れる音がしたのを聞いて教室へ向かう。そこでは教室の窓ガラスが割れていた。そこへやってきたスネ夫は先生にのび太がやったと言ったためにのび太は結局怒られてしまう。ところが教室でボールを見つけたのび太は野球をしていたスネ夫を疑う。理屈でスネ夫に負けてしまったのび太だが、必ず証拠を見つける事を宣言する。話を聞いて怒り心頭のドラえもんは先生やスネ夫をぶっ飛ばしに行こうとするが、のび太の提案でタイムマシンで過去に戻り、犯人を捕まえる事にする。授業中についたのび太は教室で眠っているのび太を見かけるが、その時校長先生に見つかって混乱させてしまう。そして放課後、茂みの中に身を隠す二人は、過去ののび太が自分達に気づいたために、過去ののび太を追い払ってしまう。そこへスネ夫たちの野球ボールが落ちてきてのび太に当たってしまい、怒って投げ返したボールが教室のガラスを割ってしまった。スネ夫は考えた末にのび太に謝ろうとするが、真実を知ったのび太は済んだ事だからと情けなさそうに話すのだった。  

 (解説)上のほうでも言いましたが、15巻に初期の作品を収録すると、こういう違和感が生じてしまうのです。「怒って先生やスネ夫をぶっ飛ばしに行こうとするドラ」というのは紛れもなく最初期のドラのキャラクターで、中期の常識あるドラと、最初期のハチャメチャなドラを同列に並べて収録してしまうと、我々大人はともかく子供達は混乱してしまうのではないかと思うのです。もう少しその辺を注意して欲しかったですね。ストーリーはタイムパラドックスを利用してのドタバタギャグという、ドラの十八番とも言える内容で面白いですよ。
こっそりカメラ   11頁 小五73年10月号
 道を歩いていても家で昼寝をしていても、絶えず誰かに見られているような気がするのび太。そんな中で、スネ夫が撮った8ミリをみんなに見せようとしていたので、のび太も強引に頼んで見せてもらう。だがそれは「のび太のしっぱい日記」と題した、のび太の日々を記録した映画だった。余りの事に怒り出すのび太だが、みんなは理屈をつけてのび太をやり込めてしまう。話を聞いたドラえもんは自分達も8ミリでスネ夫を撮ろうと「こっそりカメラ」を出す。電送レンズを試しにママにくっつけ、しばらくしてから映し出すと、そこにはママの様子が映し出された。のび太はみんなの前でスネ夫を撮影する事を宣言、逃げるスネ夫にレンズをくっつけようとするが、その時吹いた風のせいでレンズは近くのネコにくっついてしまい、二人はそれに気づかなかった。スネ夫は部屋から一歩も出ないと言い張る。夕方になって、みんなに見せる試写会の前に試しに二人が見てみると、そこにはネコが行く先々で見ていたものが映し出された。顔の美容体操をしているしずか、塾をサボってマンガを立ち読みしたり、鼻くそをためこんでいる友達、直径5センチのおならアブクを作って喜ぶジャイアン、押入れに隠れていておもらしをしてしまうスネ夫と様々なものが写っており、大爆笑する二人。しかし試写会の時間になり、これをみんなに見せるべきかどうか、迷う二人であった。  

 (解説)口ではえらそうな事を言っていながら、やっている事が全然異なる友人達が面白いですね。特にスネ夫は自分が撮られるとなると部屋に閉じこもってしまい、ここらへんはスネ夫という人間の真骨頂でしょうか(笑)。でもいくらなんでも隠し撮りはまずいのではないでしょうか。これじゃストーカーだよ(笑)。鼻くそをためたり、おならのアブクで喜んだりと、いつになく下ネタが全開しているのも面白いです。
ふみきりセット   7頁 小二77年6月号
 ジャイアンに追いかけられて慌てて帰ってきたのび太は、その時に玄関のかびんを割ってしまう。追いかけられないようにしようとドラえもんは「ふみきりセット」を出した。ふみきりを置いてからリモコンの警笛の音を鳴らすと、遮断機が出てきて誰もそこを通れなくなるのだ。それでママから逃げたのび太は町中にふみきりをセットし、ジャイアンをこれでやっつけようとする。ジャイアンは怒る気をなくしていたが、のび太がわざと怒らせて遮断機でやっつけてしまう。さらに追いかけられないのをいい事にいたずらを始めてしまうのび太だが、雨が降ってきたために家に帰ろうとして、玄関先のところでつまずいた弾みにリモコンをふみきりの向こう側に落としてしまい、さらに警笛が鳴ったために遮断機が出てきて家に入れなくなってしまった。慌てるのび太の所に向かってくるジャイアン達を見て、知らぬふりをするドラえもんであった。  

 (解説)物語の発端が見事にオチの伏線となっています。のび太が慌てて帰ってきたためにかびんを壊してしまうというのは、慌ててリモコンを落としてしまうというラストへの伏線だったのですね。もともと一番悪いのは慌てて失敗してしまうのび太なので、因果応報を如実に表現した作品と言えましょう。ふみきりを突破できないママが『キーッ。』と叫ぶとき、何故か人間ばなれしているように思うのは僕だけでしょうか(笑)。
人生やりなおし機   15頁 小四77年4月号(天才のび太)
 ママは4歳になるお客の子供ばかりを誉めて、自分を全然誉めてくれないと怒るのび太。能力が今のままで子供に戻りたいと言うのび太にドラえもんは「人生やりなおし機」を出した。体の能力は今のままで、小さい頃の体に戻ることが出来るのだ。4歳の体に戻ったのび太が気づいてみると、小さい頃近くにあった材木置き場にやってきていた。小さい頃のしずかたちと遊ぶのび太だが、学校ごっこをする際にのび太が名前を漢字で書いたためにみんなは驚く。近くにいた大人にも聞いてみるとやはり本物の漢字で、怒ったジャイアンとスネ夫はのび太に殴りかかるが、逆にのび太に倒されてしまう。その話を聞いてママとおばあちゃんは驚くが、更に先ほどの男性がやってきてのび太が漢字を書けることを知って更に驚く。その男性は天才教育研究会の人間で、テストした結果、のび太は小学二年並みの知能を持っている事になった。家族一同は喜び、のび太もここでずっと暮らしていこうと考えるが、やってきたドラえもんはもう帰る事を勧める。帰ろうとしないのび太にタイムテレビで小学四年生の頃を見せると、元々二年生並みのために勉強が出来ずにママに叱られるのび太の姿が映し出された。帰ってきたのび太は勉強し始めるが、頭が悪くても頭の良くなる機械を発明するという考えを聞いて、複雑な思いに駆られるドラえもんであった。  

 (解説)誰でも人生をやり直したいと思う事はあると思います。しかし思い出の時を自分の都合よく過ごす事は出来ても、結局自分自身は何も変わっていないのだから、たどる未来は同じものになってしまうと思います。本当に人生を変えるには、自分が努力するしかないという冷徹な視点からのメッセージが今話には込められている気がします。でも4歳のガキとまともに張り合うのび太はやはり本当の子供ですね(笑)。しずかの小さい頃はあまり出てこないので、結構貴重な話かもしれません。それにしても「天才教育研究会」って、なんかすごそうな団体…(笑)。
階級ワッペン   10頁 小六77年4月号
 百円玉を拾ったのび太は交番に届けようとするがそれをジャイアン達が止め、のび太にアンパンを買いに行かせる。だが2個しか買えなかったためにのび太はアンパンを貰いそびれてしまう。家に帰ってきたのび太はパパとママの買い物を押し付けられ、いつも貧乏くじを引く自分に嫌気が差してしまう。それを見たドラえもんはポケットからワッペンを取り出してのび太と自分に貼りつけ、唐突に命令を出した。するとのび太はドラえもんの言う事に反発できずにそのとおりの事を実行してしまう。ドラえもんがつけたのは「階級ワッペン」で、旧日本陸軍の階級を元にした階級が定められており、自分より下の階級は絶対自分には逆らえないのだ。パパとママに二等兵のワッペンを貼ったのび太は早速命令をし、みんなにも片っ端から貼ってしまう。空き地で模型飛行機で遊ぶスネ夫はジャイアンに飛行機が取られそうになるが、スネ夫は一等兵でジャイアンは二等兵のため、ジャイアンはスネ夫のいうとおりに飛行機を返す。そしてその飛行機にぶつかったしずかは中将のワッペンをつけているので、ジャイアン達は平謝りする。二人はワッペンに気づいても大将であるのび太しか取る事が出来ず、調子に乗ったのび太はワッペンをつけたもの全員に町内を50週させてしまう。逆らう事の出来ないみんなだったが、偶然ジャイアンがワッペンごと服を脱げば命令から解放される事を発見し、みんなでのび太の家を取り囲む。困るのび太にそ知らぬふりを見せるドラえもんであった。  

 (解説)弱者が強者に転じるとどういうことになるかを描いています。今回ののび太の悩みも個人的には非常に良くわかりますが(笑)、強者になってしまうと弱者であった時の気持ちを忘れてしまうという、アイロニカルなメッセージが込められていると思います。さりげなく戦争批判を言っているところはさすがですね。でも、なんでも命令できる割にはのび太のしている事はショーもない事ばかりでした(笑)。テーマが結構重いからなのでしょうか?
どくさいスイッチ   16頁 小四77年6月号
 野球で大敗したのはのび太のせいだとしてのび太を殴ろうとするジャイアン。悔しがるのび太にドラえもんは殴られないように練習しようというが、のび太はジャイアンさえいなければこんな目にはあわないと考える。それを聞いたドラえもんは未来の独裁者が邪魔者を消すために使う「どくさいスイッチ」を出した。誰でも完全に消し去る事が出来るというこのスイッチを受け取ったのび太だが、さすがに躊躇する。しかし再びジャイアンに殴られてしまい、何も考えないうちにジャイアンをスイッチで消してしまう。ジャイアンが最初から存在しない世界になってしまった事に愕然とするのび太。しかしジャイアンの変わりにスネ夫がのび太を殴ってきたために、のび太は思わずスネ夫も消してしまう。自分が怒らないように逃げ惑うのび太はドラえもんに消えた二人をまた出してくれるように頼むが、ドラえもんは『わすれろ。』とそっけない。スイッチを使うかどうかの心の葛藤に疲れたのび太は昼寝するが、夢の中で友人はおろかドラえもんにまでバカにされ、『だれもかれも消えちまえ。』と寝言を言った時にスイッチを押してしまった。そのために世界中から人間がいなくなってしまう。最初は悲しむのび太だが開き直って、この世界でひとりだけで生きていく事にする。独りの寂しさを忘れるようにご飯を食べたりゲームに講じるのび太だが、夜に家が停電になってしまい、その暗闇の中で、独りでは生きていけないことを悟る。だがそこになんとドラえもんが現れた。実はこのスイッチは独裁者を懲らしめるためのものだったのだ。元に戻った世界の空き地でジャイアン達にバカにされながらも、のび太はうれしそうに野球の練習をするのだった。  

 (解説)自分の気に入らない人間を消したとしても、それは一時凌ぎでしかなく、また同じような者が現れる。その堂々巡りを抜け出すには自分が変わるしかないという、ある意味「現実」を突きつけた重いテーマを内包する作品となっています。現実は決して楽な世界ではない。それは例えドラえもんの世界でも。それでも人が変わっていけることを作者自身が信じているからこそ、このように厳しく、且つ優しい作品がかけたのでしょう。人間の持つ力を最後まで信じ続けたF先生らしい名作です。後年「無人境ドリンク」で同様のテーマを扱いますが、作品のテーマ性、作品内へのギャグの転用などの点で、この作品のほうが勝っていると思います。
らくがきじゅう   6頁 小二74年6月号
 落書きをしているジャイアンとスネ夫を止めるのび太。しかしその家のおじいさんが出てきた時、二人は落書きをのび太のせいにしてしまい、のび太はおじいさんにぶたれてしまう。怒ったドラえもんはのび太に「らくがきじゅう」を貸してやる。この銃で狙ってスコープテレビに映し出された目標に落書きを書きこむと、本当に落書きを書きこめるのだ。それを使って早速のび太はしずかと話をしているスネ夫の顔に落書きし、スネ夫は家に逃げ帰ってしまう。続いてジャイアンが先ほどの家を通る時に、壁に落書きを書いてジャイアンのせいにし、更にどんどん落書きを増やしておじいさんを怒らせ、ジャイアンを叱らせるのだった。  

 (解説)ストーリーとしては平凡ですが、やはりキャラの描き方が面白いですね。特にコンパクトを持ち歩いていたり、『ぼくのきれいな顔が、だいなしだ。』と呟くスネ夫は爆笑ものです。「どくさいスイッチ」が結構ハードな話だっただけに、次の作品がこのようになってほっとできる構成になっているのも嬉しいですね。
表情コントローラー   5頁 小五74年6月号
 スネ夫がこの間行った遠足のスライドができたというので、みんなは見に行く約束をする。その時現れたムス子もしずかは誘おうとするが、ムス子は返事もしないままで去っていってしまう。無愛想なムス子が来ない事を喜ぶ3人だが、その態度に怒ったしずかは自分も行かないと言い出してしまう。ジャイアンやスネ夫にムス子を連れてくる役を押し付けられたのび太は彼女と話をするがひっかかれてしまう。話を聞いたドラえもんは相手の表情を自由に変えられる「表情コントローラー」をのび太に貸した。いつも笑わせていれば、そのうちムス子の性格も変わっていくだろうというのだ。半信半疑ののび太だがともかくムス子の家に行ってコントローラーを使うが、少しスイッチを押した程度ではムス子の表情は変わらない。それでもやっと笑わせる事に成功したのび太はムス子を連れて行く事に成功する。ジャイアンやしずか、スネ夫も笑わせてムス子の機嫌をとってから再びムス子を笑わせ、自然と場の雰囲気が和む。しかし笑い慣れていないのに笑いすぎたために、ムス子はアゴがはずれてしまうのだった。  

 (解説)偏屈に見える人でもやはり人間なのだから、きっと仲良く出来るはずだ、というメッセージがあるかどうかは分かりませんが、今回はゲストのムス子がとにかく面白いキャラとなっています。表情コントローラーを使ってもなかなか笑わないその頑固さとラストのオチは笑えます。今話はこのムス子のキャラが強すぎて、肝心の道具が目立たなくなってしまいましたね。ムス子の笑顔を見て喜ぶみんなの後ろで、「スライドも見てくれ」と叫ぶスネ夫はちょっとかわいそうですね(笑)。
騒音公害をカンヅメにしちゃえ   8頁 小五76年6月号(騒音公害をカンヅメにしちゃえ!)
 ドラえもんに何かを話そうとするのび太だが、隣の家のステレオがうるさくて聞き取れない。困ったドラえもんはポケットから「吸音機」を出し、缶をセットして騒音を吸収した。改めて話を聞くが、のび太は漫画雑誌を買うためのお金をドラえもんからもらおうと考えていたので、それをいち早く察したドラえもんは一目散に逃げる。だが吸音機を使って金儲けを考えたのび太は騒音がうるさくて眠れないと言うパパに吸音機を使って見せ、使う代わりに130円をもらおうとする。始めは嫌がるパパだがそのうるささには勝てずに払おうとする。だが調子に乗ったのび太が額をつりあげ、問答しているうちに音が止んでしまう。のび太は隣家に行って再びステレオをかけるように頼み、のび太はお金をもらおうとするが、野比家の反対側の家から文句が来たために結局騒音は消えてしまう。悔しがるのび太だが、道路工事の工事夫たちが場所を探しているのを見て、自分の家の前で工事をやらせ、やっとパパから300円せしめる。喜んで雑誌を買って来たのび太は夢中で読みふけり、工事のことで注意するママの言葉も吸音機で消してしまう。だが夢中になっているために知らずに吸音機の缶の中身を飲んでしまい、のび太の中から様々な騒音が流れ始め、みんなはやかましがるのだった。  

 (解説)のび太はやはりがめつかった(笑)。しかし今回はラストのオチがすごい壮絶ですね。まさかあの缶の中身を飲む事が出来るとは。騒音に苦しむパパもいつも以上に感情表現が豊かで、のび太との掛け合いも楽しいものになっています。漫画と聞いて一瞬に逃げるドラがなんか好きです(笑)。
ポータブル国会   10頁 小六77年1月号
 今年は不景気のためかお年玉の集まりが悪いが、北海道のおばさんに期待するのび太とドラえもん。しかし国鉄運賃が上がったために今年は来れなくなったと言う。値上げ法案を可決した国会を逆恨みするのび太だが、それを聞いたドラえもんは「ポータブル国会」を出した。これに法案を入れると日本中でそれが施行されるのだ。これを使って正月の間だけ国鉄運賃を値下げしたため、おばさんは来ることができるようになった。次にのび太はお年玉を一万円以上もらえる法案を通し、一万円分のお年玉をもらったのび太は総理大臣になった気分で悦に浸るが、ママから庭の掃除を言いつけられ、腹を立てたのび太は子供に仕事をさせない法案を通す。のび太は買い物に行こうと欲しいものを選ぶが、欲しいものがたくさんあるのでとてもお年玉だけでは買いきれず、今日だけ物の値段を十分の一にしてしまった。買い物に行くのび太だが、途中で友人達と会いバカにされる。犬山くんに出した年賀状で、太と犬の字を間違えてしまったのだ。バカにされたのび太は道具を使って太と犬の字を入れ替え、みんなをあっと言わせてから買い物に行くが、他の客が押しかけてしまったためにみんな品切れになってしまっていた。怒ったのび太は自分に都合のいい法案だけをたくさん通そうとするが、この機械には無茶をすると壊れる装置がついており、機械は「カイサン」と言って爆発するのだった。  

 (解説)「階級ワッペン」と同じく、のび太の子供じみた傲慢さと、それに伴うしっぺ返しを描いた作品です。「カイサン」と爆発するポータブル国会は、ある意味すごい道具かも(笑)。のび太は今話で「太」と「犬」を間違えるということだけではなく、「太」と「犬」の漢字と意味を逆に覚えていることを露呈してしまいましたね。ところでちょっと疑問なんですが、現在では「国鉄」という表記は変わっているのでしょうか?と言っても、僕の持っているコミックス(1989年発行)で変更がないから、たぶん変わっていないと思いますが。
あやとり世界   18頁 てれびくん77年4月号
 「ほうき星」という新しいあやとりを考えたのび太だが、しずか達もママも相手にしてくれない。そこでのび太はドラえもんにもしもボックスを出してもらい、あやとりのうまさで人の値打ちが決まる世界を作ろうとする。ドラえもんは激しく怒って止めようとするが、のび太は構わずあやとり世界を作ってしまう。外へ出てみるとジャイアンがあやとりの練習をしていたり、スネ夫がしずか達にあやとりの自慢をしていた。それを笑ったのび太はスネ夫に言われるままにあやとりの天才的な腕前を披露し、町中のみんなから喝采を浴びる。さらに良い大学へ行くためにもあやとりが必要だと聞いたのび太は有頂天になるが、ドラえもんはなぜか不機嫌なままだ。そこへ慌てて帰ってきたパパはママと一緒に「プロあや」のタイトルマッチを観戦する。チャンピオンのグレート・フィンガーと、挑戦者のアヤノ・トリローとの凄絶なあやとり合戦の末、必殺技「銀河」を出したチャンピオンが勝利した。その賞金が30億円と聞いて自分もなってみたいと考えるのび太だが、そこへ全日本プロあやとり協会のスカウトマンがやってきて、のび太と契約金三千万円での契約を申し出る。翌日、家であやとりの研究をするのび太は戦況であやとり党が勝ったのを聞いて、将来あやとり大臣になることを夢見る。そしてジャイアンに弟子入りを志願されたり、しずか達にちやほやされて幸せ絶頂ののび太だが、それでもドラえもんは不機嫌なままだった。ドラえもんは手が丸いのであやとりをすることができなかったのだ。我慢の限界を超えたドラえもんはもしもボックスで元の世界に戻してしまい、しずか達はのび太の下から去るのだった。  

 (解説)もしもボックスで創造されたパラレルワールドは数あれど、ここまでおバカな世界観を持つパラレルワールドは、今だかつて存在しないでしょう。まったく役に立ちそうにない物の価値を逆転させるという事については、後年の「ねむりの天才のび太」がありますが、今話のおバカ度はその比ではありません(笑)。あやとりがうまいだけで町中で賞賛され、プロあやだのあやとり党だのあやとり大臣(どんな仕事するんだ?)だのと、バカバカしくて無茶苦茶な世界を、それでも地に足のついた感覚で構築しているのは見事としか言いようがありません。単なるドタバタではない、「ドラえもん」特有の笑いの世界の一つの完成形と言えるでしょう。ドラもペタリハンドをもってしても、あやとりはできなかったようで(笑)。三人がプロあやに夢中になっている後ろで頬づえをついている姿が哀愁を誘います(『あいしゅうのドラえもん』・・・・・なんちて)。



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