てんとう虫コミックス第16巻


音のない世界   8頁 小三77年5月号(モシモマシン)
 窓を開けようとするドラえもんをのび太が必死に止める。それでも窓を開けると、風に乗ってジャイアンの歌が流れてきた。もうすぐリサイタルを開くので練習しているらしく、なんとかしなければと思案する二人。その時のび太がある考えを思いついた。そしてその日。二人はもしもボックスを出して、音のない世界を作り上げる。紙を使って作戦の成功を喜ぶ二人。のび太は安心して昼寝するがママに起こされてまた小言を言われ、更にママの書いた漢字が読めなかったために余計叱られてしまう。外に出たのび太は音がないために車にぶつかってしまい、更に先生と出会っても紙を持っていなかったので挨拶が出来ない。更には間違えた字で挨拶をしたために、先生から0点をもらってしまう。途中で会ったしずかと一緒にリサイタルに行くのび太だが、ジャイアンのリサイタルが始まると、歌詞を見るだけで寒気がしてきてしまう。のび太はメガネを外して字が見えなくなるようにするが、そのインチキにジャイアンは気付き、のび太は紙に悲鳴を書きこみながら殴られるのだった。  

 (解説)16巻は冒頭からコレですか(笑)。「音のない世界」という、割と簡単に思いつきそうな世界を、独創性たっぷりに描き出しています。みんなが大真面目に紙に字を書いて会話をしているところがすごく間抜けですね。各人の字体も個性を表していて好感が持てます。でもそれでもジャイアンの歌には効き目はなかったんですね(笑)。
時間貯金箱   7頁 小二77年4月号(時間ちょ金ばこ)
 ママが出かけているために外に行けないのび太は退屈でしょうがない。ドラえもんはこういう時間を大切にしようと「時間貯金箱」を出した。時間をこの箱の中に貯めることが出来るのだ。これで30分貯金したためにママがすぐに帰ってきたため、二人はしずかの家に遊びに行く。しずかは勉強中だったが10分貯金することで勉強も終わり、三人は楽しく遊ぶ。しかしピアノのレッスンがあるというのでしずかは二人に帰ってもらおうとする。そこでドラえもんは今まで貯金した40分の時間をおろし、時間を戻してまた遊ぶ。家に帰ってきたのび太は宿題をしないで遊びに行った事でママに怒られるが、ドラえもんが小言の終わる時間までを貯金したために事無きを得る。更に二人は7時30分からのアニメを見ようとするがまだ7時のために、30分までの時間を貯金する。だが宿題を忘れていたのび太は大急ぎで取りかかるが、パパが帰宅する時間になっても全然時間が足りず、のび太は今まで貯めた時間を全部いっぺんにおろしてしまう。そのために時間は夕方頃になってしまい、パパは会社から早く帰りすぎたと、慌てて会社に向かってしまうのだった。  

 (解説)時間を飛ばしたり戻したりという事は、既にこれまで様々な道具で実践されてきたことですが、今回の道具は時間をお金のように貯金するという、新しい概念を取り入れています。でもこの道具、後の「タイムワープリール」と同じで、時間が過ぎる時はその時間分の出来事を過ごした事になるようですが、戻す時はその効果がないようですね。そのためにパパはラストでえらい勘違いをしてしまいました。結局今回一番ひどい目に会っているのはパパだけだったりして(笑)。
オールシーズンバッジ   10頁 小六77年10月号
 1年を振りかえり、やり残した事がいっぱいあると後悔するのび太。だがそれは、夏にはもっと海に行きたかったとか、春にはお花見、冬にはスキーに行けなかったとか、遊ぶ事ばかりだった。ドラえもんの説得も聞かずに屁理屈をこねて騒ぎ出すのび太を見て、ドラえもんは「オールシーズンバッジ」を出す。ダイヤルを合わせて付けると、半径3メートル以内を春夏秋冬、好きな季節にする事が出来るのだ。早速ママにお弁当を作ってもらって中山湖へ向かう二人。そこできのこ狩りに来ていたスネ夫に会うが、二人が湖で泳ぐと聞いて驚くスネ夫。だが平然と泳ぐ二人を見て思わずスネ夫も湖に入ってしまい、寒がって両親に注意される。次に二人は周囲の桜の木にバッジを置き、春の状態にしてお花見を楽しむ。その様子は骨川親子にも見えるが、三人は信じようとせずに無理をする。そして二人はゲレンデに冬にセットしたバッジを巻いて、一足早いスキーを楽しむ。そこを目撃した骨川親子はついに仰天してしまう。二人は帰ろうとするが、どこでもドアのたてつけが悪かったためにタケコプターで帰るが、その時ドラえもんは気付かないうちにポケットからたくさんのオールシーズンバッジを落としてしまう。夜、一部の地域で異常気象が発生しているというニュースを、不思議がりながら聞く二人であった。  

 (解説)今話はやはり骨川親子に尽きるでしょう(笑)。しかも通常ならスネ夫のママどまりなのですが、今回はなんとスネ夫のパパまで参加してしまいました。別にのびドラはスネ夫達をからかおうとは思っておらず、二人の知らない所で骨川親子が勝手に驚いているところが爆笑を誘います。特に桜の花びらを見て、口に出してはいないのに三人とも「もみじ」と言ってしまうところが最高です。そしてラストのオチもまたおかしいですね。のびドラがまったく気付いていないところなんかが特に。個人的にはドアの調子が悪い時に『また?』とのび太が呟くこと。もうこの時点でドラの道具の不具合は定番化していたんですね(笑)。
りっぱなパパになるぞ!   12頁 小六77年3月号(のび太のゆくすえ)
 夜中に酔っ払って帰ってきたパパ。目を覚ましたのび太は酔っ払っている時を見計らって、自分の部屋にテレビを買ってくれるよう頼むが、途端にパパは早く寝るようにのび太をせかす。腹を立てるのび太だったがドラえもんは「そんなものさ」とそっけない。のび太は将来自分がなりたいと思う理想の父親像を話すがドラえもんにバカにされ、のび太は自分がどんな父親になっているか、未来へ見に行ってしまう。そこでは息子のノビスケが深夜コンサートに行こうとしているのを母親のしずかが止めているところだった。こっそり部屋に入ったのび太はノビスケと入れ替わってノビスケを出かけさせる。そこへ未来ののび太が帰ってきた。しかしのび太はベロベロに酔っ払っており、それを見たのび太はショックを受け、さらにノビスケの日記を読んで普段の自分の事を知り、幻滅してしまう。そこへやってきた未来ののび太をのび太は叱るが、未来ののび太は開き直ったように『大した努力もしないである日突然えらい人になれると思う?』と話す。がっかりするのび太だったが、未来ののび太は良き伴侶であるしずか、そして息子のノビスケのためだけにでも、がんばっていくことを話す。そして二人ののび太はお互いにしっかりやっていくことを誓って別れた。のび太は立派な大人になる決意をするが、結局やれる範囲で頑張ることにし、そのくらいなら守れるだろうとドラえもんも安心するのだった。  

 (解説)やはり小さい頃、一度は自分の親の悪い一面を見て、立派な親になろうと考えると思います。でも人がそんなに簡単に理想通りの人間になれるわけがありません。完全な理想の世界を描いていると思われがちなドラ世界でさえも、このような厳しい現実を描いているのです。しかしたとえ立派な人間でなくても、自分の周りの人の幸せを紡ぐことはできる。それは人間が本来持っている力だから。夜の都会の風景と混ざって、優しくそのテーマを読者に訴えています。のび太もあくまで等身大に描いており、人間個人の力の上限を知りながらも、それでも生きていく人間を優しく見つめている秀作だと思います。
お金なんか大きらい!   8頁 小三72年1月号(お年玉作戦)
 今年もお年玉の額に満足しないのび太はパパに交渉に行くが、パパはのび太から隠れながらドラえもんの所にやってくる。むやみにお金をほしがってはいけないと話すパパに、ドラえもんは「お金がきらいになるくすり」を出し、のび太に飲ませるようパパに渡す。だが今度はのび太がケチなパパの事を話し、ドラえもんから「きまえのよくなるくすり」をもらう。それらの薬を互いにあげっこするのび太とパパだが、薬を飲んだのび太はお金が嫌いになり、もらったお年玉さえもドラえもんにあげようとする。そこへやってきたパパはのび太に一万円をあげようとするがのび太は当然嫌がり、二人はケンカになってしまう。止めに入ったママに毛皮のコートを買うと行って貯金をおろしに行ってしまうパパを止めるためにドラえもんは薬の効力を消す薬を飲ませようとするが、なかなか見つからずにお金が嫌いになる薬と気前の良くなる薬をほっぽり出してしまう。パパは着物を他人にあげたり家まであげようとしてしまうが、薬を飲まされて何とか元に戻る。家に帰ろうとする二人だが、ドラえもんが置いていった二つの薬がなくなっている事に気付く。気前の良くなる薬をのび太の友達が飲んでしまい、お金をあげようとするみんなからのび太は必死に逃げるのだった。  

 (解説)ママの代わりにパパが目立っている話ですね。お金の事に関して双方の言い分でドラに相談するのも面白いのですが、それを聞いて二人に薬を渡して、結果的に一番混乱させてしまうドラが一番スゴイですね(笑)。ドラにしてみれば悪気はないのでしょうが、どうしても確信犯に見えるな(爆笑)。そんなドラをパパが叱っても、自分が出してくれと頼んだのだから、あまり説得力がないような…。前話でしんみりした後にこのドタバタギャグと、話のバランスが良くとれていますね。
デラックスライト   7頁 小二77年11月号
 スネ夫の持っているラジコンカーを見て、欲しがったのび太はパパ達に頼もうとするが、パパは新しいカメラ、ママは新しい腕時計が欲しいと言って口ゲンカをしており、とても買ってくれそうに無い。話を聞いたドラえもんは「デラックスライト」を取りだし、のび太の持っている古い車のおもちゃにライトをあてた。すると車はスーパーカーのラジコンに変わった。何でもデラックスにすることが出来るのだ。ラジコンで遊ぶのび太はまだケンカしているパパとママのカメラと時計をデラックスにし、さらに家の中のさまざまな物にライトを当てて、デラックスにしてしまう。外へ出たのび太はしずかの服を始めとしてさまざまな物をデラックスにするが、逆にしずか達に文句を言われてしまう。何でもでラックスが良いという訳ではない事を実感したのび太の所にドラえもんが慌ててやってくる。パパとママは、今度はデラックスになった時計とカメラをめぐってケンカをし始めてしまうのだった。。  

 (解説)古い物を新しくするというコンセプトの話は「タイムふろしき」以来の伝統(?)ですが、今話はタイムふろしきの方とはオチが違いましたね。同じコンセプトの話でも、やり方次第で色々なオチを作り出す事が出来るという好例だと思います。
立ちユメぼう   10頁 小四78年1月号
 何かをかぶったままで、フラフラと部屋にやってきたドラえもん。のび太が話しかけるとドラえもんはのび太の食べていたお餅を食べてしまった。怒るのび太が飛びかかると、ドラえもんは「ユメから覚めた」と訳のわからないことをいう。ドラえもんがかぶっていたのは実際の出来事を夢に直して見る事の出来る「立ちユメぼう」だった。早速かぶってみたのび太だったが、ダイヤルが「かわいそうなユメ」になっていたために、パパが死んでしまった夢を見てしまう。起こされたのび太は、魔境を舞台に魔物と戦って宝物を見つける冒険物の夢を見たいと話し、ドラえもんはダイヤルを合わせてのび太に夢を見させる。そこは魔境になり、そばにはドラえもんの愛犬ドラがいた。それを聞いたドラえもんは怒って出ていってしまうが、のび太はかまわず外に出かけて行く。すると前から突っ込んできたトラックの怪物から身をかわしてドブの川に落っこちる。次にしずか達の妖精が羽根つきで遊んでいるのを見て、自分も混ぜてもらうが負けたために顔に墨を塗られてしまう。続いて妙な怪物がタコを空中に浮かべているのを目撃し、のび太はそのタコを助けるが、それはジャイアン達があげている凧だったためにのび太は殴られてしまう。そこへドラえもんが助けに来るが、のび太はまだ宝を見つけていないといって起きようとしない。ドラえもんは適当な場所を言ってのび太に地面を掘り返させるが、その時偶然出会ったおじさんが二人にお年玉をくれたので、ドラえもんはそれを使って金銀財宝をのび太に見せる。しかしのび太は目を覚ましてもそれが頭に残っていたために、お金が少ないなどと言ってしまうのだった。  

 (解説)これも「オーバーオーバー」系の話ですが、今回は夢だからなのか、やたら冒険物の主人公になりきっているのび太が笑えます。最初のかわいそうな夢も面白いですね。「トランプ」を「トラック」としてしまうところはおかしかったです。その時のやたらボロっちいドラがなんか面白い(笑)。このような骨子の失敗編が「いねむりシール」なのかな?
四次元ポケット   8頁 小二77年5月号
 のび太の部屋にあるガラクタを全部捨てろと怒るママ。だがくだらない物でものび太には必要な物のようで、のび太はドラえもんのポケットにしまってもらおうとするが、さすがにドラえもんも嫌がる。仕方なくドラえもんは自分と同じ物の「四次元ポケット」を出し、のび太に貸してやる。のび太はガラクタをポケットの中に全部しまい、ママに自慢してから出かけたのび太は、今までためた本を捨てろといわれて困っているしずかを見かけ、しずかの本をポケットに入れてやる。ところがそれを見たジャイアンがいきなりポケットにもぐりこんできた。ジャイアンは母ちゃんから逃げているところだったが、ジャイアンはさらにポケットの中で眠ってしまう。そこへしずかから聞いたというスネ夫が捨て犬を入れにやってきた。さらにのび太が捨て猫を拾ってしまったために誤解されてポケットに入れられたり、噂を聞いた近所のおばさんがゴミを入れてしまう。ジャイアン達はポケットの中で暴れ始め、たまらず家に帰ろうとするのび太だが、その時転んでポケットの中身を全部出してしまい、ママにまた叱られるのだった。  

 (解説)ドラえもんのポケットは一体どんな物なのか?作品中で明確になったのはたぶん今話が始めてだったのではないでしょうか。それはともかく今話はのび太のバカさかげんが光りますね。冒頭のガラクタを取っておく意味不明な理由や、ポケットの扱いなど、随所にそれが光っています。同じポケットでも扱い方が違うとこうも異なる印象を持つ事になるのか(笑)。まあのび太だからしょうがないんですが。自分勝手な事ばかりしていたのび太には、今回のオチは正に因果応報ですね。それにしても、スネ夫が犬を拾ってくるとは…。
ナゲーなげなわ   10頁 小二77年3月号
 スネ夫がのび太の家に傘を返しに来たが、二人は面倒がって取りに行こうとしない。ドラえもんは仕方なく「ナゲーなげなわ」を出し、これで傘を取る。命令すれば離れたところにある物を取ることが出来るのだ。のび太はそれを使おうとするがドラえもんは庭に隠してしまう。それを見つけたスネ夫は手始めにジャイアンに取られたマンガを取り返すが、その時通り掛かりの女の子に不思議がられる。その頃なげなわが無くなっている事に気づいたドラえもんたちはなげなわを探し始める。一方のスネ夫はなげなわを使っていたずらを繰り返し、とうとうジャイアン達はなげなわを使っている人間を捜し始める。焦ったスネ夫はのび太になげなわを持たせてのび太に疑いを向けさせてしまう。なげなわを使っていた人物を探すのび太だが、その時川で溺れている少女を見つけ、なげなわで助けようとするが、ジャイアン達に見張られているためにそこから立ち去ろうとする。しかし溺れそうな少女を放っておく事は出来ず、なげなわで助けてしまう。すかさず現れてのび太のせいにするスネ夫だが、溺れていた少女は先程スネ夫と会った女の子だったため、スネ夫がやったという事がみんなにもわかり、スネ夫はみんなに追いかけられるのだった。  

 (解説)今話はスネ夫とのび太の本領発揮といった感じの話ですね。スネ夫が様々ないたずらをしてそれをのび太のせいにしてしまうと言うのは、ずるがしこいスネ夫の真骨頂でしょう。それに対して例え自分が疑われていようとも、目の前で苦しんでいる少女を見捨てる事の出来ないのび太の優しさは白眉ですね。その少女のおかげで疑いは晴れるわけですが、今話ではこの両者の対比がはっきりと描かれていたので、ラストにカタルシスを感じることが出来ました。
びっくり箱ステッキ   8頁 小一77年10月号(びっくりばこステッキ)
 しずかにびっくり箱をみせるスネ夫だが、しずかはまったく驚かない。スネ夫は次にのび太に見せてみると、のび太はスネ夫達が驚いてしまうほどの大声を出して驚いた。悔しがるのび太だがドラえもんにまでバカにされてすっかり拗ねてしまう。そこでドラえもんは、触るとどんなものでもびっくり箱になる「びっくり箱ステッキ」を出し、ためしに机の引き出しに触ってみると、そこがびっくり箱となってのび太は仰天する。ママが駆けつけるが引出しには何もなく、その中に0点の答案があったために叱られてしまう。一度しかステッキの効果はないのだ。煮えている鍋で試してママを驚かした二人はスネ夫を狙って近くのゴミバケツを触るが、スネ夫は相手にせず、ゴミを捨てに来たおばさんが驚いてしまう。スネ夫が電話をかけようとしているのを見てすかさず電話ボックスに触るが、スネ夫は怪しんで入ろうとしない。さらに電話をかけに来た人が引っかかったため、スネ夫はのび太からステッキを奪い取ってしまう。家へ逃げ帰るスネ夫だが、その時家のドアにステッキが触れたためにドアから大きな恐竜の顔が出てきてスネ夫は気絶し、それを見て喜ぶのび太だった。  

 (解説)個人的には今話の中で一番ひどい目に会っているのはスネ夫だと思いますね。だって他の人たちはみんな叫ぶだけで終わっているのに、スネ夫は気絶してしまうんですから(笑)。しかしスネ夫もしずかを驚かそうとしてびっくり箱を見せたりして、よくわからん奴だなあ。あとは各人の驚きの声が面白いですね。特にのび太の最初の叫び声はベストでしょう。
ドロン葉   12頁 小六78年2月号
 昔話を読んで、タヌキが人を化かすという話を笑うのび太。そんなのび太にドラえもんはまことしやかにタヌキの特殊能力について話すが、それはウソだった。しかしドラえもんは実際に防御念波を放出できる「ドロン葉」を出した。だがタヌキに合わせて作ってあるので人間では使えない。ドラえもんから同じイヌ科のイヌなら使用できると聞いたのび太はしずかの家のシロにつけてみるが何も起きない。怒るのび太にドラえもんは、幸せなイヌは化ける必要がないからだと説明した。話を聞いたしずかは、裏の家で飼われているベソというイヌの事をのび太に話す。散歩にも連れて行かれず、ご飯ももらえない日が多い。しかもキョーボーとあだ名される飼い主が気に入らない事があると、八つあたりされるのだという。そんなベソにドロン葉をかけて様子を見るのび太。その時野球チームの球が庭に入ってきた。チームメイトは取りに行こうとするがキョーボーに追いかえされ、その時ベソの防御念波が働いて、ベソとキョーボーの姿が入れ替わってしまい、キョーボーは自分を鎖につないでしまう。ベソは野球に参加して大活躍し、キョーボーは最初こそ仕返しを考えていたが、次第に自分がこれまでしてきた行為を省みるようになり、幼い時、ベソと仲良しだった頃を思い出して悲しい遠吠えをあげる。帰ってきたベソにキョーボーは自分に今までの仕返しをするよう言うが、ベソはドロン葉をはがして元の姿に戻す。その優しさを知ったキョーボーは涙を流してベソを抱きしめる。その顛末をのび太はドラえもんに話し、互いに喜び合うのだった。  

 (解説)今回は完全にキョーボーとベソという二つのキャラが主役で、のび太達は完全な脇役、と言うより読者同様「傍観者」になっています。姿の入れ替わった二人の描写が交互に挿入され、終盤でその身をさらけ出すまでに至るキョーボーの心理の変化や、それでも主人への優しさを失わなかったベソとの涙の和解が淡々と、しかし丹念に描出されています。ラストで抱き合っている時に『ごはんよお。』と家人の呼び声が入るところもアクセントがきいていますね。ラストのコマでそのことを喜び合うのびドラがとても優しい雰囲気に包まれています。単なる子供マンガでない、上質の人間ドラマとなっています。
モノモース   7頁 小二78年3月号
 切手を探して部屋中の物をひっくり返すのび太。そんなのび太にドラえもんは説教するが、切手がドラえもんの座っていた下にあったため、ドラえもんはお詫びにと「モノモース」を出す。切手にふきかけると何と切手が話し始めた。物に話させることが出来るのだ。部屋中の物にかけたのび太は切手を持って出かけようとするが、本やノートが自分たちを片付けて行けと言うので仕方なく片付ける。しずかの家に行って切手を自慢するのび太だが、切手は余計な一言を言う。切手を交換する話になってのび太は切手をしまっている箱を取りに家に戻るがママに見つかり、宿題をやるように言われる。ウソをつくのび太だがノートがばらしてしまい、仕方なく宿題をするが、貧乏ゆすりでイスに文句を言われたり、宿題ができないことで周りのものに陰口を言われて腹を立ててしまう。のび太がなかなか来ないのでしずかが家にやってきたため、のび太はこっそり抜け出そうとするが、切手箱やシャツをはじめ、身につけているものが告げ口をしようとするので、のび太はどんどん服を脱いでしまい、素っ裸で外に出てしまうのだった。  

 (解説)「無生物を生物のようにする」というコンセプトも、よく「ドラえもん」の中で使われるプロットです。で、そのような話はいつも、無生物達が急に自分たちの立場を主張し始めると言うものなので、今話もご多分に漏れず、そうなっていますね。のび太が一人でケンカしていると勘違いするママや、素っ裸で飛び出してしずかに逃げられてしまうのび太が面白いですね。
ウルトラよろい   7頁 小二77年8月号
 いつものようにジャイアンに負けて帰ってきたのび太に、自分でどうにかするよう諭すドラえもんだが、のび太は弱気のままなので、ドラえもんは仕方なく「ウルトラ・スペシャルマイティ・ストロングスーパーよろい」を出したが、のび太には何も見えない。だがドラえもんが、このよろいはバカには見えず、バカな人にはこのよろいは役に立たないと話したために、のび太は見えるふりをしてよろいを着て飛び出して行く。しかしこれはドラえもんが「はだかの王さま」を真似たハッタリだった。慌ててのび太の後を追うドラえもん。のび太はしずかによろいが見えるか聞くが、しずかはのび太の後ろにある古道具屋のよろいを見えると言ったために、のび太は信じこんでしまう。次にのび太はよろいの効力があるかどうかを試そうとするが、うまい具合に痛い目に会わない。それでも子供の持っていたバットでぶってもらうと全然痛くなく、それがビニールのバットだという事も知らずにのび太は喜んで、ジャイアンへの報復をみんなに宣言する。それを聞いてさらに慌てるドラえもん。ジャイアンはのび太の下に行こうとするが、スネ夫の忠告から、のび太がドラえもんに何か道具を借りたと思いこみ、先手をうってのび太と仲直りする。そしてよろいの事を聞いたジャイアンはのび太から借りてみるが、バカには効かないという事を聞き、のび太にバットで殴られながらも必死にやせ我慢するのだった。  

 (解説)「はだかの王さま」のストーリーを藤子・F・不二雄流に、と言うより、のび太流にやったらどうなるかといった感じの話です。疑う事を知らないバカなのび太は不幸な偶然も重なってよろいの存在を信じ、さらにジャイアンも必要以上に勘ぐってしまって、結局見えていないよろいを信じてしまうバカでした。今話はこの二人のバカさかげんを笑い飛ばす話のようですね(笑)。
シンガーソングライター   7頁 小三77年9月号
 台風の前の動物のように慌てて家に引きこむみんな。一人残ったのび太の前に、ものすごい形相のジャイアンが現れ、のび太はジャイアンの芸術家としての悩みを聞く。ジャイアンはシンガーソングライターを目指しているが、曲が作れないと言う。何とかすると約束したのび太はドラえもんに相談し、ドラえもんはジャイアンに「メロディーお玉」を出す。曲の雰囲気を調節してジャイアンが詞を吹きこむと、お玉が五線の上に並び始めた。さらに楽譜が読めないと言うジャイアンのためにタイムフロシキでお玉をカエルに成長させて今の曲を歌わせる。道具をジャイアンに貸し、心の底から感謝された二人はすっかりいい気分になる。数日後、再びみんなが家に引きこむのを見て、ジャイアンの機嫌を心配する二人だが、ジャイアンの機嫌は良かった。だがジャイアンはこれから百曲もの新曲発表のリサイタルを開こうとしていたのだ。聞かされる羽目になった二人はジャイアンがいるのも忘れてケンカを始めてしまうのだった。  

 (解説)町中に影響を及ぼすジャイアンの歌のすごさを別角度から思い知らされる今話ですが、それに伴って動物的カンに従って逃げて行ってしまうみんなの描写も面白いですね。冒頭の野獣の如きジャイアンや、ジャイアンのやつれた顔を見て思わずふきだしてしまうドラの表情なんかも特筆点ですね。作品中でジャイアンが吹きこんでいた歌は、歌詞からして演歌調になるのか(笑)?
いっすんぼうし   6頁 小一76年9月号
 アイスを買ったのび太だが、そこで会ったジャイアンに無理やりアイスを取られて舐められてしまい、のび太が嫌がるとアイスを持っていってしまう。お金を出していたドラえもんは怒って取り返してくるようのび太に言うが、のび太は怖がって行こうとしない。ドラえもんはかぶると小さくなれる「いっすんぼうし」を出し、これをジャイアンにかぶせるようアドバイスする。ジャイアンを探しにいくのび太はしずかを見つけ、ビックリさせようと小さくなってしずかを呼んでみる。さらにしずかの足の上に乗って呼びかけたためにしずかは驚いて走り出し、その弾みでのび太はふっとばされ、ぼうしが脱げなくなってしまった。追いかけるのび太はしずかにさっきと同じ事をしようとしているジャイアンを見つけて思わず叫ぶがジャイアンにつかまってしまう。だがのび太はジャイアンの背中に潜り込んでくすぐり、息が出来なくなるほどジャイアンを笑わせて、新しいアイスを買わせる事に成功する。半分に分けると少なくなってしまったので、のび太とドラえもんはぼうしで小さくなって、たっぷりアイスを食べるのだった。  

 (解説)今回のジャイアンは「クエーヌパン」同様、異様に食い意地が張っていますね。そうかと思えば、小さくなっているのび太をつかまえて『のみみたいにつぶしてやろうか。』などと物騒極まりない事を言っています(笑)。短いページの中では道具の効用も十分に描かれており、水準作と言えるでしょう。ところでしずかの靴の上に乗っていたのび太は、まさかしずかのパンツを見・・・・・(以下自粛)。
サハラ砂漠で勉強はできない   10頁 小六77年8月号(観光ビジョン)
 ママに何事かを言って仰天させるのび太。ドラえもんがわけを聞くと、勉強して欲しいのなら、私立中学を受験するために軽井沢の別荘を借りたスネ夫の家のように、環境を整えてほしいと言ったらしい。環境さえ良くなれば勉強するとドラえもんは考えた。のび太が昼寝していると、突然部屋の景色がカナダのジャスパー公園になった。ドラえもんが「観光ビジョン」を使って景色の映像を部屋の中に持ってきたのだ。試しにスネ夫の別荘を覗いて見たのび太は、あまりにボロっちいために雨漏りする別荘にいるスネ夫を見て、電話をしてスネ夫をからかう。他の友達がだらけているのを見て喜ぶのび太だがドラえもんに催促され、あてずっぽうに場所を決める。するとサハラ砂漠の景色が映った。景色を変えようとするのび太の目に人影が映った。それは遭難者であり、二人は助けようとするがどこでもドアは鍵が見つからず、タケコプターは時間がかかりすぎる。二人は慌てるが、そこを飛んでいた飛行機が遭難者を見つけたようで、二人も一安心する。それで疲れたのび太は屁理屈をこねて勉強を嫌がるが、ドラえもんが道具で先生の自宅の景色を映したために、のび太は慌てて勉強を始めるのだった。  

 (解説)立体プラネタリウムとは生の現実がそのまま投影されるところが違っており、そのためにこの話がより特徴的になったと思います。道具の力で遭難者を助けるという話も多いですが、今話では結局最後まで自分たちでは助けられませんでしたね。その展開は結構異色です。映像に対してお約束のボケをかましたり、救急車を呼ぼうとするのび太が愉快です。ちなみに先生の家は「ああ、好き、好き、好き!」とは違っていますが、そこらへんはあまり気にしないように。何せ「ギャグマンガ」ですから。
雲ざいくで遊ぼう   7頁 小三77年7月号(雲コントローラー)
 屋根の上で騒ぐのび太。夏休みの終了後に日焼け大会があるというので日に焼けようとしていたら雲が太陽を遮ってしまったと言う。そんなのび太にドラえもんは雲を自由にコントロールできる「雲コントローラー」を出した。ドラえもんはそれを使って雲をどかすが、今度は庭で草むしりをしていたママが暑がるので、「雲ベラ」と「雲ピンセット」を使って雲を一部切り取り、ママの上にだけ雲を置く。面白がったのび太は雲でドーナツやブドウを作って楽しみ、それを見て驚いたしずか達をもっと驚かすためにイヌやキリンやヘビを作るが、のび太がへたくそなために、しずか達に勘違いされてしまう。怒ったのび太は雲をかき集めて巨大な怪物を作り、しずか達を怖がらせる。下へ下りてきてドラえもんと共にスイカを食べるのび太だが、その時急に空が曇ってきた。のび太が機械のスイッチを入れっぱなしだったために機械が焼けてしまい、その黒い煙が雲となっていたのだった。  

 (解説)雲を自由に使って遊ぶというのは純粋に楽しい印象を受けますね。のび太の不細工な雲を見て全然見当違いの事を言ってしまうしずかたちが笑えます。しかしスイッチが入りっぱなし程度で機械が焼けてしまうとは、未来の道具にしてはやわだ(笑)。「日焼け大会」というのは本来は初出時は違う言葉でしたが、筆者としてはこの改編は妥当と判断し、現在のままにしておきます。
あらかじめ日記はおそろしい   7頁 小二77年9月号(あらかじめ日記)
 家族で泊りがけで山へ行ってきたのび太は、明日から三日間海へ行くというスネ夫にこれから雨が降ると意味深な事を言う。疲れきったパパ達は映画に行きたいと言うのび太の誘いを断るが、のび太はまたも意味深な事を言う。のび太はドラえもんから貰った「あらかじめ日記」に書きこみ、そのとおりの事を実現させていたのだ。日記の通りに昼寝を始めるのび太だが、ドラえもんが日記に「勉強をする」と書きこんだために勉強をやりはじめ、消しゴムでも消せなかったが何とか勉強を止める。のび太はどんな事でも叶うのかどうか、試しに「空からアメが降ってくる」と書くと、本当に空からアメ玉が降ってきた。怖くなったのび太だったが、ニュースで飛行機の積荷が落ちてきたという事を聞いて一安心する。アメを拾ったスネ夫に日記を自慢するのび太だが、スネ夫に「ジャイアンに殴られ、しずかに首をしめられ、ライオンに食べられる」と書かれ、その通りに殴られたり締められたりして、さらに動物園からライオンが逃げ出したのを聞いてスネ夫は逃げてしまう。話を聞いたドラえもんにもどうしようもなく、やむを得ず日記を焼いて事態を収めるのだった。  

 (解説)今回の道具は今でも個人的に欲しい道具の一つです(笑)。もうおなじみの「こじつけギャグ」も全開で、少ないページ数の中で良くまとまっています。ページ数があれば、もっと暴走できたような気もしますが、それは無いものねだりですね。でもしずかも結果的にのび太の首を締めることになったのに、『あら、ごめんね。』だけというのは…(笑)。
パパもあまえんぼ   10頁 小六77年9月号
 おやつのブドウを出されても何故か食べようとしないのび太。ドラえもんはブドウを貰ってしまおうとするが、のび太は何故か怒り出して部屋に行ってしまう。ママは様子を見に行き、ブドウを食べてからドラえもんが行って見ると、のび太はママに抱き着いて泣いていた。何か悪いことをしてしまったようで、そのことでママに言うかどうかを悩んでいたのだ。ドラえもんにからかわれるのび太だが、時々母親に甘えたくなってしまう心情をドラえもんに話す。その夜、ベロベロに酔って帰ってきたパパは玄関で騒ぎ出し、ママも呆れ返ってしまう。さらに「子どものくせに」とパパに言われた二人は、パパを親であるおばあちゃんの生きていた時代へ連れて行くことにする。だがそこでママに見つかってしまい、ママは混乱してしまう。おばあちゃんに言われて幼いのび太と一緒にママは散歩が行った隙を見て、のび太はおばあちゃんに会いに行く。久々の10年越しの再会に感動するのび太。そしておばあちゃんをパパのところに連れてくると、パパは突然泣き出しておばあちゃんに抱きついた。寄りかかって甘えることのできない「大人」というものについて考える二人。そして二人はパパを連れて戻ってきた。翌朝、パパは母親の夢を見たと嬉しそうに話すのであった。  

 (解説)「大人の悲哀」と言ったら大げさかもしれませんが、それに近いようなことをテーマとしています。子供マンガにはふさわしくないテーマかもしれませんが、「子供はやがては大人になる」という当たり前の真理を大事にしていたF先生らしい話であると言えるでしょう。現実の世界でも大人は誰かに寄りかかることなど滅多にできない。そんな思いをドラの道具を使ってさらっと叶えてしまう事こそが、ドラ世界の真骨頂であると思います。ドラの道具はなにも大仰な願いを叶えるために存在しているのではありません。このようなささやかな幸せを叶えるために存在しているのですから。
宇宙ターザン   23頁 小五78年8月号
 テレビのヒーロー番組「宇宙ターザン」を見て熱狂するのび太。しかしドラえもんは冷静に作品の出来を分析して他の番組を見ることを薦めるがのび太は聞こうとしない。空き地で宇宙ターザンごっこをしようと呼びかけるが、他のみんなはつまらなくなったと言って興味を示さない。悔しがるも諦めない決意を固めるのび太の前に、宇宙ターザン役の俳優が偶然現れ、サインを求める。しかしその俳優はもうすぐ番組が打ち切りになるということをのび太に話した。愕然とするのび太はドラえもんに視聴率を上げるよう頼むが、もちろんそんなことはドラえもんにも出来ない。それでもずっと机の前で考え込むのび太だったが、あまり考えすぎて、夕食の時間を過ぎてしまった。腹が減ったと騒ぐのび太にドラえもんは「桃太郎印のキビダンゴ」を食べるように言うが、その時のび太に名案がひらめいた。翌日、撮影所にやってきたのび太は撮影所の所長に一億年前そっくりの広いセットを提供すると持ちかけ、1日だけ待ってもらうことを了承させる。のび太はタイムマシンで一億年前の世界へ行き、キビダンゴで恐竜を操り撮影に使おうと考えたのだ。先に向かっていたドラえもんが恐竜を探していたが、なかなか良い恐竜が見つからない。一人で探すのび太はプテラノドンに襲われて、タケコプターとキビダンゴを落としてしまった。そこにティラノザウルスが現れてのび太を襲う。しかしこの恐竜はのび太が落としたキビダンゴを食べていたため、のび太の命令を聞くようになる。ブロントザウルスを見つけてきたドラえもんと共にたくさんの恐竜にキビダンゴを食べさせたのび太は翌日、タイムマシンの出口をつないだどこでもドアを使って、撮影メンバーを一億年前に連れて行き、スタッフから感謝される。新たに撮影が始まった宇宙ターザンは大人気を博し、みんなが宇宙ターザンごっこをし始めるのを見て、端役ながらも喜ぶのび太であった。  

 (解説)未来道具を使って願いをかなえるという骨子は変わらないのですが、今回はその規模がすごいですね。一つの作品を愛し続けたのび太の想いが結実したとも言えるでしょう。タイムマシンの秘密は他人には漏らせないという設定は唐突過ぎるし、現在から見ると矛盾も多いような気がしますが、一億年前の世界を「セット」と言われて深く疑わないスタッフの方々よりはましかな(笑)。『落ち目の時にこそおうえんしなくちゃ。』というのび太のセリフは、テレビ番組を愛する者として、常に心の中に留めていなければならない言葉でしょうね。それがファンというものですから。



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