てんとう虫コミックス第19巻


アスレチック・ハウス   7頁 小三78年10月号
 昼寝するのび太を起こして外で遊ばせようとするドラえもんだが、のび太は一向に起きる気配はない。そこでドラえもんは無理やり運動させてやろうと屋根裏に上がりこむ。ところがのび太は寝たふりをしていただけであり、ドラえもんの忠告通りに外へ野球をやりに行ってしまう。ドラえもんは機械をセットして家を「アスレチック・ハウス」にしてしまうが、のび太はもう既にいない。そこへママがお客を連れて入ってきた。説得するドラえもんを無視してあがる二人だが、いきなり廊下がルームランナーのようになり、3人は走って居間までたどり着く。ドラえもんは機械を止めに行くが、居間の座布団がトランポリンになったり、階段の段がものすごく高くなったりして、機械を止めに行くだけでも一苦労する。さらに腕の力を鍛える為に障子が重くなり、ドラえもんも幅跳びや鉄棒をする羽目になり、ママ達も障子で重量あげをさせられて気絶してしまう。やっとスイッチを切ったが3人は疲れきって倒れてしまい、事情を知らずに帰ってきたのび太は部屋で寝ないで外で遊ぼうと呼びかけるのだった。  

 (解説)のび太がドラえもんの説得を聞いて素直に従うという珍しいパターンのため、いつもの作風とは少し毛色が違っています。ですが道具のせいでひどい目にあうという構図はいつも通りで、しかもそれが設置したドラ自身という事が余計におかしくしています。「スケジュールどけい」のような系譜に連なっていますね。例によってひどい目にあう野比家のお客も可哀想(笑)。
人よけジャイロ   8頁 小五79年8月号
 明日、箱毛山に行く事をみんなに自慢するのび太。しかし箱毛は大変混んでいて、行くだけで疲れてしまうというスネ夫の話を聞いたパパが、面倒がって行かない事にしてしまう。やけになって騒ぐのび太にドラえもんは「人よけジャイロ」を出す。家の近所の地図を出して、のび太の家の所にジャイロをセットすると、何故かのび太達は家の外へ出てしまい、雨に降られても入る気がしなくなってしまう。地図で指定した所に一切人を近づけさせなくしてしまうのだ。これを使って箱毛へ行こうと考える二人。翌朝、ジャイロの効力から解放されるバッジをつけて、しずかも連れて箱毛へ向かう二人。しかしのび太は山登りですぐにへばってしまい、タケコプターを借りようとするが、ドラえもんは機械に頼らないようにとポケットをはずして隠してしまう。ロープウエー乗り場に到着するが、誰もいないために動かす事が出来ず、自分達で歩いているうちに三人は道に迷ってしまう。そのころ家ではママがジャイロを倒してしまい、直そうとして間違えて上下逆にジャイロをセットしてしまう。すると箱毛にはいきなりたくさんの人間がやってきて、大混雑になってしまうのだった。  

 (解説)あまり展開に動きがなく、ちょっと消化不良気味の作品ですが、最後の唐突なオチはいかにもドラ世界らしいものになっています。冒頭のスネ夫のセリフは絶対確信犯でしょう。今話では意外な所でスネ夫の真骨頂を見る事が出来ますね。
海に入らず海底を散歩する方法   10頁 小六78年8月号(水をよけるロープ)
 スネ夫から分厚い封筒が送られてきた。スネ夫はしずかとジャイアンを連れて、四丈半島の別荘へ行っていたのだ。写真と手紙を見て泣きながらうらやましがるのび太のために、ドラえもんはどこでもドアを出すが、のび太は泳げないので、海に入らずに泳ぎたいなどと無茶苦茶なことを言い出す。そこでドラえもんは「水よけロープ」を取り出し、使えるかどうか実験してみる。このロープで囲った所には水が入ってこないのだ。これを持って島へ向かった二人はのび太をバカにするスネ夫たちを見ながら、ロープを使って海へと潜る。そこから海に入って泳いでいる所の写真を撮ろうとするが、のび太はやはり溺れてしまうので、水に入らずに写真を撮る。そしてサザエやアワビを見つけた二人は海底でそれを食べ始める。一方のスネ夫達は、海底からたちのぼる煙を見て、確認するためにボートでそこに向かう。のび太達はロープを使って鬼ごっこをするが、その時ロープで作った空間の所に、スネ夫たちのボートが落ちてきてしまう。壊れたボートを見たドラえもんは、その代わりにと大きな折り紙で船を作り、その上にスネ夫たちを乗せ、気付いたスネ夫たちは大慌てするのだった。  

 (解説)のび太の無茶苦茶な願いを叶えるという、中期以降の作風の典型と言えるようなストーリーです。道具を使っての遊びという低学年誌的なものと、スネ夫の遠まわしのイヤミという高学年誌的なものが渾然一体となっている、「ドラえもん」というマンガの真髄とも言えるような世界になっていますね。溺れるのび太の図がナイス(笑)。
天井うらの宇宙戦争   24頁 小四78年9月号(スペース・ウォーズゲームセット)
 ドラえもんに出してもらったコンピューターゲームにも飽きてしまったのび太。ドラえもんは仕方なく「スペースウォーズ・ゲームセット」を出した。使用する戦闘機に小さくなって実際に乗り込む事が出来るのだ。最初こそふらついていたものの次第に慣れていって、敵をやっつけるのび太。だがそこに見たこともない戦闘機が現れ、しかものび太を攻撃し始めた。のび太はバットでそれを壊し、勘違いしたドラえもんはのび太を激しく怒るが、その戦闘機はゲームセットには含まれていないものだった。するとその中から豆粒のようなロボットが落ちてきて、そのロボットはある女性の立体映像を映し出した。アーレ・オッカナ王女と名乗るその女性の映像は、助けを求めながら消えていった。ホンヤクコンニャクで話を聞くと、R3−D3と言うそのロボットは、悪者・アカンベーダーが故郷のリリパット星を攻めてきて王女を人質に取ったため、助けを求めて地球まで来たと言う。助けに行こうと言うのび太に現実的な意見を言って諦めさせるドラえもんだが、アカンベーダーはさらに地球征服まで企てている事を聞き、ジャイアン達からの野球の誘いも断って、地球のために戦うことを決意する。
 始めにロボットが乗ってきた宇宙船を探しに行った二人だが、その宇宙船が球形だったために子供達に遊ばれ、さらにジャイアン達にも勘違いされてしまう。それでも宇宙船を修理した二人は「ガリバートンネル」を使って小さくなって宇宙船に乗りこむ。そして宇宙人の秘密基地へ向かうが、なんとそこはジャイアンの家の屋根裏だった。上がるのを嫌がるのび太だが、ジャイアンは今はいないと思い直して基地に潜入する。しかし見つかれば生きては帰れないというロボットの忠告を聞いたのび太は逃げ出してしまい、その時大声を出して警備兵に気付かれてしまう。しかし基地の兵士達は、サイレンがなると同時に一斉にどこかへ飛び去った。その隙に王女を助け出すドラえもん達。兵士達は食事のためにジャイアン家の食卓へ向かっていたのだが、王女がいなくなったことを知ったアカンベーダーは直ちに追撃する。追っ手の宇宙船をゲームで鍛えた腕で次々に撃破していくのび太。しかしさすがに母船には攻撃が通じず、追い詰められていくのび太達。絶体絶命のその時、地上から飛んできた弾丸――野球ボールに貫通されて、敢え無く母船は撃沈した。それはジャイアンの打ったホームランボールだった。ラジコンを壊したものと勘違いしたジャイアンとスネ夫はその場から逃げ、そんな二人に勲章を渡そうとする王女を見て、『いやにスケールの小さい宇宙戦争だったね。』とドラえもんは呟くのだった。  

 (解説)言うまでもなくこれは、連載当時大人気であった「スターウォーズ」に触発されて描かれたストーリーです。藤子F先生もスターウォーズは大変お気に入りだったようで、これ以降もたびたび作品中でパロディ化されています。
 そんな背景がある今話ですが、内容はいかにもドラ世界的で面白いものでした。伏線の貼り方の冴え、映画をパロったストーリー展開や人物の名前、「戦争」というキナ臭いテーマと「小さい人間」という世界を巧みに組み合わせた、センス溢れるSFギャグの世界。藤子Fであり、ドラのものでもある世界を十分に堪能する事が出来ます。個人的には「アカンベーダー」のネーミングセンスがイカす(笑)。
しあわせな人魚姫   7頁 小二79年8月号
 のび太の家にベソ子が遊びに来た。泣き虫のベソ子の相手をする事を嫌がったのび太は遊びに行ってしまう。ドラえもんはベソ子にせがまれて「人魚姫」の絵本を読むが、その悲しい結末にベソ子は泣き出し、ドラえもんが怒られてしまう。とんだ濡れ衣に怒ったドラえもんは絵本の結末を変えようと、絵本の中に入る事が出来る「絵本入りこみぐつ」を履いて絵本の世界へ入り込む。そこでは嵐の中、人魚姫が王子を助けている所だった。姫は人間になる変わりに、魔法使いにその声を差し出そうとするが、そこへドラえもんが乱入して文句を並べ立て、魔法使いは只で姫を人間にする羽目になる。地上へ上がって王子と出会う人魚姫だが、王子はすでに隣の国の王女と婚約しており、怒ったドラえもんは人魚姫にハッパをかけ、さらに王子も説教して、強引に二人を婚約させ、ハッピーエンドにしてしまう。安心して元の世界に戻ってくるドラえもん。そして外から帰ってきたのび太はベソ子にせがまれ、泣かないように釘をさしてから絵本を読み始めるが、ドラえもんのために展開がまるっきり変わってしまっていたために、話が違うと言ってベソ子はまた泣き出し、ドラえもんも困り果ててしまうのであった。  

 (解説)一人で勝手に道具を使って一人で勝手に騒ぎを起こすという点では、初期のキャラを思わせる今話のドラえもん。性格は中期以降の真面目な性格のままなので、本人はあくまで真面目にやっているというそのギャップが最高に笑えます。お話の世界に入るという「夢」をしっかりと描いているところも特筆点ですね。しかし、「絵本が悲しいからいけない」と、かつてないほどの無茶な論理をかますドラは、かなりすごいというべきなのか何なのか(笑)。
ロボッターの反乱   7頁 小三77年10月号(らくらくおそうじ?)
 部屋を散らかしっぱなしにしていたのび太を叱るママは、更にのび太に部屋の掃除と庭の草むしりをするよう命令する。そこへ帰ってきたドラえもんは良い薬だと話すが、のび太に泣いてせがまれたため、つけるとなんでもロボットになるという「ロボッター」を出して、のび太に貸してやる。ロボッターを使って部屋を片付けたのび太はそのまま掃除機や雑巾、鎌にロボッターをつけて家を掃除させる。家中の物にロボッターをつけたのび太はコーラを自動で飲んだり、壊れたラジオを捨ててしまったりと王様のような気分に浸る。だが機械がのび太の言うとおりに動かなくなり、のび太が怒ると今度は先程のラジオをはじめとする道具たちが、自分達を使い捨ての道具にする人間をやっつけようと、のび太に襲いかかってきた。しかしドラえもんが「ロボッターとりもどしじしゃく」でロボッターを回収し、なんとか事無きを得る。だがそのためにまた部屋中が散らかってしまい、のび太は結局自分で片付けることになるのだった。  

 (解説)もうこんな時期から「リサイクル」のようなテーマを持つ作品を発表していたんですね。先見の明と言うべきか。低学年誌向けにわかりやすい構成になってはいますが、道具の使い捨てなどという事は現在でも決して色褪せていないテーマなので、十分共感できるものだと思います。ラジオでのび太が聞く曲には時代を感じますが(笑)。今時の子供に「ピンクレディーって何?」と聞かれたら、どう答えれば良いんでしょう(笑)?
カップルテストバッジ   8頁 小五79年3月号
 のび太の隣の家でまた夫婦ゲンカが始まり、旦那が出て行くのをのび太とドラえもんは見物する。自分が将来しずかと結婚しても、あんな風になったら嫌だと考えるのび太に、ドラえもんはテストしてみればいいと「カップルテストバッジ」を出す。片方をのび太が付け、もう片方をしずかがつけると、付けた二人は夫婦のようになれるのだ。早速しずかの家に向かうのび太だが、行く途中でバッジを落としてしまったためにドラえもんからもう一個もらい、それをしずかに渡す。バッジをつけたしずかはすぐさまのび太の家にやってくるが、二人は恥ずかしがってなかなか話が弾まない。しかし次第にいちゃいちゃしだし、付き合っていられなくなったドラえもんは外に出る。一方、のび太が落としたバッジを拾ったジャイアンがそれを付けると、なんとジャイアンにもバッジの効力が効きだし、ジャイアンはのび太の家でしずかと口論を始め、二人は最後には浮気したとしてのび太を痛めつけてしまう。のび太は結婚する事に複雑な思いを抱いてしまうのだった。  

 (解説)一般向けのマンガを子供向けマンガがここまでパロってしまうのも珍しいですねえ(笑)。例によってしずかが結構大人っぽいのに対し、やたら子供っぽく描かれているのび太(特に愛情表現)が対照的ですね。そして例のごとく、やたらしおらしくなってしまうジャイアンも健在(笑)で、ギャグ作品としてツボを押さえた作りになっています。
のび太の秘密トンネル   10頁 小六78年12月号(秘密のぬけ穴)
 のび太を呼びつけるママ。のび太は押入れに隠れるも当然見つかってお説教を受ける。のび太は映画のような抜け穴が欲しいと言い出し、仕方なくドラえもんはイモムシ型ロボットの「スペースイーター」を出す。超空間の穴を掘って抜け穴を作り出すのだ。それを使って庭までの抜け穴を掘ったのび太はわざとママを怒らせ、抜け穴を使って見事逃げ延びる。次に空き地までの穴を掘ると、ジャイアンがのび太から取り上げた本を友達に貸そうとしていた。仕返しに石をぶつけたのび太はジャイアンの家まで穴を掘り、今までとられたマンガをとり返してから、帰って来たジャイアンに先程の本の事を聞き、本を借りたというスネ夫の部屋まで穴を掘って、スネ夫の食べていたまんじゅうを食べ、さらにマンガをとり返す。のび太は続いてマンガをしずかに見せようとするが、何故か掘った穴からはお湯が出てきた。のび太が行ってみると、穴はしずかの家のお風呂と繋がっており、慌てて弁解するのび太にしずかは帰るように叫ぶのだった。  

 (解説)これもまた子供だけではなく誰でも持つような「夢」を元にした、楽しい話になっています。全編ほとんどのび太の部屋が舞台という、狭い空間で話が進行していく珍しいタイプの話でもあります。あと、タイトルページののび太、髪型が何かすごい事になっています(笑)。あれじゃま〇とちゃんだ(大笑)。
オコノミボックス   7頁 小二79年1月号()
 ジャイアンに先導され、無理やり寒い外で遊ばされるのび太達。ジャイアンは家のストーブが壊れており、自分だけ寒い思いをするのが悔しいのでみんなも巻き込んでいるという。のび太はジャイアンに突き飛ばされながらも家に帰るが、洗濯機が壊れているということでママも困っており、更にテレビも壊れてしまっていた。しょげるのび太にドラえもんは「オコノミボックス」を出し、それをテレビにしてしまう。面白い番組がないと、今度はレコードプレーヤにもしてしまった。四角い形状の物になら何にでもなることが出来るのだ。カメラや洗濯機、ライターや冷蔵庫にして遊ぶ二人は最後にストーブにして暖まるが、良い考えを思いついたのび太はストーブの温度を低くしてから携帯し、外へ出て寒がっているみんなに自慢するが、ボックスを落としてしまったためにジャイアンに取られてしまう。ジャイアンは家に持って帰るが、のび太があらかじめボックスをクーラーに変えてしまっていたためにますます寒くなり、ジャイアンは母ちゃんに怒られるのだった。  

 (解説)四角い物になら何にでもなれるという制限が面白いのですが、今時は四角くないストーブなんかもたくさんありますからね(笑)。道具中心という、典型的な中期以降の展開になっています。ジャイアンの横暴さも相変わらずで、楽しいですね。
おかしなおかしなかさ   7頁 小一78年1月号
 雨の降る中、会社帰りのパパを迎えに行くのび太は雨宿りしているしずかを見かけ、2つもっていた傘を片方貸すが、それを見ていたジャイアンにもう片方の傘を取られてしまう。パパから電話を受けたドラえもんは「人さがしがさ」を使ってのび太を探し、のび太とともにパパの待つ駅へと向かう。ドラえもんはお祝いの時に使う傘や「オルゴールがさ」を出してパパに貸すが、なぜか必要以上に目立ってしまうので、パパは飾りの突いていない傘を出してもらおうとする。腕の力を強くするための鉛の傘や「こうもりがさ」を出してもらうが、こうもりがさによってパパは空を飛んでしまい、ドラえもん達は助ける羽目になってしまう。木に引っかかっていたパパをパラシュート型の傘で助ける二人だが、もう既に雨がやんでいたのでパパは傘を差すのを断る。それでもせっかく持ってきたのだからと無理にパパに傘を差させる二人だが、それは「差すと雨がふるかさ」だったので、さすがにパパも怒ってしまうのだった。  

 (解説)今回ののびドラのやっていた事はどうみても迷惑なことなのに、それを迷惑だと思っていないあたりが厄介ですね。今話の二人はまるで初期ドラとガチャ子のようだ(笑)。あれだけたくさんの傘は、はたして「秘密道具」と呼んでいいのか?
パンドラのお化け   8頁 小五79年6月号(パンドラボックス)
 いつものようにママにこってりしぼられたのび太は真面目に勉強する事を固く心に誓うが結局3分30秒しかもたず、のび太は強い意志を持ちたいとドラえもんに頼み込み、ドラえもんはそれに応えて「パンドラボックス」を出す。スイッチを押してから24時間、決して箱を開けてはならず、開けたらお化けが飛び出してくるのだという。様々な手を使って開けさせようとする箱の誘惑に勝つための強い意志が培われると言うのだ。のび太はふと興味を持って箱を開けようとするが、寸手の所でその手を止める。しかしその後も部屋にまいこんできたカブトムシを入れようとしてしまったり、昼寝していて寝ぼけながら開けようとしてしまったり、しずかにあげようとしていた切手を探していて箱を開けそうになってしまったりと、油断ならない箱に四苦八苦してしまうのび太。箱を何重にも縛って物置にしまおうとするが、そこをママに見られてしまい、0点の答案を隠していると勘違いしたママは、箱を開けるよう強要する。のび太は箱を開け、お化けに抱きつかれながら『ママよりましだ。』と呟き、その様子を驚きながら見つめるドラえもんであった。

 (解説)あの手この手でのび太に箱を開けさせようとする、その手段が面白いですね。結局お化けよりもママの方がのび太にとっては恐怖の対象だという、妙に現実的なオチも好きですね。しかし、のび太に箱を開けさせたのはいいんですが、あそこから出てきたお化けをママは目撃したのでしょうか?もしそうならとんでもない事になっているような(笑)。
ありがたみわかり機   8頁 小三78年11月号(アリガタミワカリ機)
 昼食のご飯をたくさん残してしまうのび太。ママは食べ物の大切さを知ってもらおうと話をするが、食べ物の価値がわからないのび太には馬の耳に念仏であった。一部始終を聞いていたドラえもんは食べ物のない苦しさをのび太に経験させようと「ありがたみわかり機」を出す。普段身のまわりにある物のありがたみを知るための機械で、のび太は試しに「空気」と言ってからスイッチを入れると、のび太の回りから空気がなくなり、のび太は苦しんでしまう。機械を解除して改めて「食べ物」のありがたみを知ろうとするのび太は、おやつのケーキを落としてしまって食べる事が出来ず、ラーメンもパンも家にはなく、小遣いがないのでなにかを買う事も出来ない。夕食を待つのび太だが、そこにジャイアンから野球の誘いがかかってしまう。その際にボールをなくしてしまったのび太は夜遅くまで捜し続け、遅く帰ってきてママに叱られて夕食を食べる事ができなくなってしまう。食べ物の有りがたさを思い知ったのび太は機械を止めてもらい、ママに作ってもらったご飯をたっぷりと食べる。安心して眠ろうとするのび太だが、口うるさいママに閉口し、ある考えを思いつく。それはありがたみわかり機を利用して、ママをしばらくいなくさせることだった。変な考えを思いついたのび太を見て、ドラえもんも呆れてしまうのであった。  

 (解説)これとまったく同じコンセプトの話が「はらぺこのつらさ知ってるかい」なのですが、オチがまったく違っていますね。道具の特性ゆえとも取れますが。ですが個人的には今話での一番の見所はオチではなく、空気を失ってヒクヒクするのび太を前に、のんびりと解説するドラの図ですね(笑)。
出前電話   8頁 小五78年11月号
 封筒を買ってくるよう頼まれたのび太とドラえもんだが、二人とも理屈をつけて行こうとしない。ケンカする二人だが、向かいの家にやってきたラーメン屋の出前を見て、封筒も出前してくれれば良いとのび太が言い出し、それを聞いたドラえもんは「出前電話」を取り出す。これで電話すると、どんな物でも持ってきてくれると言う。文房具屋に電話して封筒を出前してもらった二人は、続いてマンガを本屋から出前してもらう。どんどん買い物をしようとするのび太だが、ママは用事はないと言う。そこでしずかを電話で呼びつけるが、しずかはお風呂に入っていた途中だったので帰ってもらい、ママに手紙を出すように頼まれたため、ポストを誰かに持ってきてもらうことにする。すると、通り掛かりの人が持ってくる羽目になった。だがその手紙に切手を貼り忘れたと聞いて、相手先のおばさんを呼ぼうとしたり、漫画家や星野スミレを呼ぼうとしたりしてのび太は落ちつかない。ドラえもんは電話をしまおうとするが、最後にジャイアンとスネ夫に自慢しようと電話をかけるのび太。すると、二人はケンカをしている最中だったようで、のび太の部屋で続きを始めてしまうのであった。  

 (解説)出前は便利なものですが、人までも電話で出前してしまえる機械という、その発想がものすごいですね。ポストまで担いできてもらうとは(笑)。ドラ世界のナンセンスぶりが遺憾なく発揮された作品です。冒頭ののびドラの些細なケンカも子供ならではのもので、意外と共感してしまった読者も多いのではないでしょうか。
影とりプロジェクター   10頁 小六80年1月号(影取りプロジェクター)
 人気歌手の星野スミレの恋人についての話で盛り上がるのび太達。スネ夫は秘密の情報を知っているというが、のび太は口が軽いと言われて話を聞かせてもらえない。秘密を知りたがるのび太はドラえもんに相談し、星野スミレのファンでもあるドラえもんは悪い噂の真偽を確かめるべく「影とりプロジェクター」を出す。人物の影を機械の中に移し、その影を投影する事で本人が何をしているのかが分かるのだ。スミレの影を取ってきた二人はその影を投影して、スミレの一日を監視する事にする。しかしスミレは1日中忙しく、とても恋人と会う雰囲気ではない。会うとすれば夜中だろうと考えた二人は、それまで暇をつぶす。そして夜中、家に帰ってきたスミレは何かを見て驚いた。急行する二人。するとスミレの家には二枚目スターの落目ドジ郎がやってきていた。スミレの噂を振りまいていたのはこの男だったのだ。スミレに迫る落目を、プロジェクターで映した巨大な影で追い払う二人。そんな二人にスミレは本当の事を話す。遠い遠い国にいる、好きな人のことを。自分がまだ少女だった頃、いつも一緒に行動していた、ドジで間抜けで、そして、とても優しかった人のことを。  

 (解説)ウッワー、難しかった(笑)。何がって、今話の紹介。なにせ他作品からやってきたキャラがメインの話だけに、彼女が以前「出演」していた作品の事にも少しはふれなければならないし…。と言うわけで出来あがったのが今話の紹介です。
 で、その内容は、完全に大人向けのしっとり?とした内容です。通常の動きの激しさや速さなどはまったくなく、「ドロン葉」と同じく、のびドラが完全に第三者というか、傍観者になっています。それ故、星野スミレという一人の女性の姿を浮き彫りにしています。そしてラストにのびドラだけに話される、スミレの「好きな人」。読者にさえも謎のままの「好きな人」の正体は、24巻にて…。
クイズは地球をめぐる   10頁 小六79年2月号(クイズゲームマシン)
 「東京タワーより高く飛ぶ方法」というクイズをジャイアンから出されて、解答に詰まるのび太とスネ夫は、結局正解できずに殴られてしまった。ジャイアンは「ポカポカクイズ」というクイズを考え出したのだ。クイズが答えられるようになりたいというのび太に、ドラえもんはクイズを解くコツを教えようと「アクションクイズ」を出す。未来の道具を使って実際に行動して答えるのだが、不正解だと雷が落ちるという。挑戦するのび太だが、第一問の「その場で海水浴をせよ」という問題で早くも詰まってしまう。結局不正解のまま、のび太はドラえもんから「タイムマシンで、東京がまだ海だった頃の大昔へ行く」という正解を聞いて納得する。しかし次の「時速1500キロ以上で走れ」という問題も分からない。赤道直下で東に向かって走れば条件を満たすということはのび太に分かるわけもなく、三問目の「1分以内に地球一周せよ」という問題もやはり分からずに雷を落とされてしまう。そして最後の4問目に入るが、「30時間連続で焼きつけなければならない日光写真を焼きつけよ」という問題にすっかり諦めてしまい、どこでもドアで南極に逃げてしまうのび太。しかし機械はそこまで追ってきた。雷を怖がるのび太であったが、制限時間を過ぎるとファンファーレと共に正解のメダルが飛び出てきた。南極の今の季節は夏なので陽が沈むことがなかったのだ。  

 (解説)たかがクイズでも、未来道具が関わるとここまで壮大になってしまうのか(笑)。場面はほとんどのび太の部屋であるにも関わらず、出かける場所が大昔だったり世界の果てだったりして、自然と動きのある作風になっています。ドラは簡単だと言っていますが、実際は小学生程度の頭で解ける問題ではありませんよね(笑)。ですが、それだけの事を知っている藤子F先生の知識がフルに活用された話とも言えるでしょう。
無敵コンチュー丹   10頁 小四78年5月号(コンチュー丹)
 いつものようにジャイアンにボロボロにされて帰ってきたのび太を見て、話も聞かずに強くなる道具を出してやるドラえもん。今回ドラえもんが出したのは「コンチュー丹」という、飲むと虫の力がつく薬だった。始めはバカにするのび太だったが、これを飲むとカブトムシの堅さやチョウのような舞い、アリの怪力などが身につくのだ。しかしそれを飲んですぐにジャイアンの下に向かったのび太はまたしても返り討ちにあってしまう。怒るのび太にドラえもんは薬の効き目は明朝当たりだと話す。おやつにホットケーキを出されるのび太だが不思議と食欲がわかず、何故か木の葉っぱを食べ始めてしまう。そこではママに止められるが、ドラえもんに持ってきてもらって葉っぱを食べる。そして夜、寝つけないのび太の口の中から糸が伸びてきた。その糸で繭を作って、中でさなぎになるのだという。朝、出来あがった繭の中から飛び出してきたのび太はジャイアンの下に向かう。ジャイアンと出会ったのび太は、自分の体に備わった虫の力をフルに使い、ジャイアンを倒すことに成功する。噂の広まった町を闊歩するのび太だが、コンチュー丹の影響か、虫捕り網を怖がり、さらに家で撒かれていた殺虫剤をかいで、気絶してしまうのであった。  

 (解説)ジャイアンへの仕返しを主軸とする一連の話の中では、比較的静的なイメージで統一されている作品です。虫の持つ特殊な力をわかりやすく説明し、さらにはモハメド・アリのことまで作中に盛りこまれており、10ページで収まり切るのが不思議なくらい、豪華な内容になりました。最後のオチも「虫」で統一されており、展開の妙味を感じさせますね。冒頭でスライムで遊んでいるドラや、ジャイアンの後ろを、いかにも「腰巾着」といった感じで歩いているスネ夫がイイ味を出してます。
サンタえんとつ   7頁 小一77年12月号(クリスマスプレゼント)
 珍しく机に座って何事か書いているのび太。感心するパパだがそれは勉強ではなく、サンタへの手紙であった。テレビゲームが欲しいと言うのび太に、実際にプレゼントを買うパパは困り、偉い人の本などがいいと言い出す。それでものび太は手紙を出すが、パパがサンタのふりをして書いた返事には、偉い人の本を贈ると書かれてあったため、のび太は泣き出してしまう。それを見たドラえもんは「サンタえんとつ」を取り出す。欲しい物を紙に書いてその中に入れると、それが手に入るのだと言う。のび太が言う通りにしてみる一方、偉い人の本を買いに行ったパパは偶然出会った知り合いの家に行き、そこの子供がやっているテレビゲームに自分が夢中になったので、偉い人の本をやめてテレビゲームを買うことにしてしまう。プレゼントにテレビゲームをもらって喜ぶのび太。のび太は調子に乗って、電気機関車をもらえるようにお願いしてしまう。さすがにパパも今度は断るが、丁度家にやってきたお客が、福引で当てたと言う電気機関車のセットをのび太にプレゼントしてくれた。のび太は友達にも使わせようとするが、ジャイアンが借り切ってしまう。ジャイアンは漫画がたくさんもらえるように頼むが、そこへやってきた母ちゃんが、勉強しないからと言ってジャイアンの漫画を全部燃やしてしまう。ジャイアンはえんとつを逆さにして願い事の紙を入れてしまったため、もらえるのではなく取り上げられてしまったのだ。  

 (解説)楽しい道具です。これが本当にあったらどんなにいいことか(笑)。子供の頃は本気で欲しがったものです。クリスマスの一悶着もドラ世界の風物詩ですが、結構パターンは決まっているにも関わらず、ほとんどの作品でオチが違っているというのも、見事としか言いようがありません。で、今回割を食ったのはジャイアンでした。今話では別に悪いことをしていないので、ちょっとかわいそうな気も…。
大雪山がやってきた   17頁 小六79年10月号(公園でスキーを!!)
 夕日岳と言う人の少ないスキー場へ行ってくることを自慢するスネ夫。のび太は最初こそ相手にしなかったが、スキー場のロッジからのスネ夫の電話を聞いて遂に怒り、どこでもドアでスキー場へ行って練習しようとする。しかしドアは壊れているために使うことが出来ず、文句を言うのび太にドラえもんは「空間入れかえ機」を出した。実験してのび太の周りをチョークで囲み、機械を作動させると、チョークで囲った部分だけが家の庭の一部と入れ替わった。囲った部分を別の空間と入れ変えることが出来るのだ。それを使ってスキー場の一部を持ってきたのび太は早速練習を始めるが、部屋が狭いので上手く滑れない。その時ママから手紙をポストに出してくるよう頼まれたのび太は、スキー場の変わりにポストを持ってきてしまい、さらにしずかを誘って世界中の様々な場所の一部を持ってきて遊ぶ。そこへ帰ってきたドラえもんはのび太を叱るが、狭いので練習できないという話を聞いて一計を案じる。そして夜中、近くの広い公園をチョークですっぽり囲った二人は、空間入れかえ機で夕日岳をそっくり持ってきてしまう。そこで練習を始めるのび太だが上手く行かず、早々に諦めてしまうがドラえもんに睨まれて練習を続ける。そんな時、別の場所では道に迷っていたスネ夫一家がいた。空間が移動したことなど知る由もない一家は、偶然公園の外を走っていたタクシーに乗りこみ、夕日岳に向かってしまう。そしてのび太は練習を断念し、ドラえもんは空間を元に戻すのだった。  

 (解説)今話のオチは最高です。タクシーに乗ろうとするスネ夫一家を前に、なぜか異様に冷静な対応をするタクシー運転手がなんとも言えないとぼけた味わいを出しています。空間入れかえ機の面白さも、17という総ページ数の中で、十分に紹介されています。夕日岳が公園と入れ替わった時の雄大な景色も特筆点ですね。のび太が練習をやめようとした時のドラの睨み顔が面白いです(笑)。
あの窓にさようなら   10頁 小四78年11月号(窓けしききりかえ機)
 机に座ってボケっと外を眺めるのび太。ドラえもんは外へ遊びに行くように言うが、のび太は足を挫いてしまって三日も学校を休んでいるのだった。機嫌を損ねたのび太のためにドラえもんは「窓けしききりかえ機」を出した。他の家の窓から見た景色を映し出すことが出来るのだ。それを使って、庭で焼き芋を焼くしずかや、部屋に忍び込もうとしているジャイアンを見るのび太達。さらに二人は日本庭園が見える窓や高層ビルの窓、飛行機の窓などの様々な景色を楽しむ。次に遠いところを選んでみると、どこかの農家の庭先に出た。するとその窓に向かって一人の男性が歩み寄ってきた。ヒデキというその男性は、これから東京へ働きに行くので、この家に住んでいる桃枝という女性に、彼女が留守でありながら、お別れと自分が今まで抱いていた彼女への想いを吐露して去って行った。どうしようもないことだが気になってしょうがない二人。二人はその家へ行ってみることにする。そこではちょうど桃枝が帰ってきた所だった。話をしようとするのび太を制したドラえもんは「まどビデオ」に録画しておいた先程の映像を投影し、ヒデキ自身に話をさせる。一応目的を果たした二人だが今一つすっきりしない。「自動ついせきアダプター」を使ってヒデキが乗っているはずの汽車の窓からの景色を映してみると、丘の上に桃枝が立って、ヒデキに手を振っていた。その様子を見て安堵の笑顔を見せるのび太とドラえもんであった。  

 (解説)中期(僕は勝手に黄金期と呼ばせてもらいますが)の「ドラえもん」の中で何がすごいかと言えば、今話や「影とりプロジェクター」のように、のびドラが純粋な主役でない話でも、きちんと「ドラえもん」の世界として話が成立している点です。今話ものびドラは主役ではなく、道具を使って他の誰かを助けるという第三者的な役割を担っています。そこにはのびドラ達レギュラー陣だけでなく、その世界にいるすべての人たちにドラマがあるという、作者の考えがあるような気がしてなりません。そして、同様の話全てに言えることですが、のびドラは「第三者的」であり、やはり「主役」なのです。「天才」としか形容しようのないその作品構成を、今話では存分に堪能できます。



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