てんとう虫コミックス第2巻


テストにアンキパン   9頁 小三72年5月号(アンキパン)
 今日も翌日に国語と算数のテストがあると言って、なぜかやかんとまくらを持って慌てるのび太。ところがドラえもんは扇風機で学校を吹き飛ばそうとか、動物ライトで先生をゴリラに変えようとか無茶な事を言い出し、のび太はもちろん怒るが逆にきちんと勉強していないのがいけないとドラえもんに説教されてしまい、今度だけ助けて欲しいと頼む。そこでドラえもんは「アンキパン」というパンを取り出す。覚えたい事をパンに写して食べると、そのことを覚えられるのだ。しかし覚えるのに必要なページはのび太がちり紙代わりに破ってしまっていた。
 のび太は友達のノートを写させてもらうことにするが、スネ夫のノートは汚くて使う気になれず、しずかのノートを写すことにする。しずかにバカにされたのび太はアンキパンで電話帳の番号を覚えてしずかを驚かせる。だがのび太は覚える前に出されたおやつの草もちを食べ過ぎ、お腹が一杯になってアンキパンが食べられなくなってしまう。さらに家では母の日ということでパパがたくさん料理を作っていた。満腹ののび太はとてもアンキパンを食べる事が出来ないが、ドラえもんは水で流し込んででものび太に食べさせようとする。そして翌朝、無理が祟ってお腹を壊し、覚えた事を全部出してしまったのび太は1ページ目から食べ直す羽目になるのだった。
 

 (解説)いわゆる「ドタバタギャグ」とは少し違った感じのギャグ話です。冒頭のやかんとまくら、ドラのボケ、ページを破った理由、電話帳の暗記など、キャラが激しく動いているわけではないのですが、それでも爆笑必至のこの話は、F先生の作風の底の深さを感じさせます。ちなみに今話は僕の姉が一番好きな話なのですが、姉はコンピューターペンシルよりもアンキパンの方がいいそうです。曰く「アンキパンは暗記できてパンも食べられるから一石二鳥」なのだとか。確かにそうですね(笑)。
ロボ子が愛してる   12頁 小四71年9月号
 ピーナッツの連続投げ食いを誉められ、女の子にコーチしてくれと頼まれたと言うのでしずかの家へ出かけるのび太。下らない事ではあるが、のび太本人が満足しているなら良い事とドラえもんも納得する。ところがスネ夫のゲームに誘われた女の子達はのび太を置いて行ってしまい、のび太はさりげなく笑って帰ってきたが、その辛い心中を察したドラえもんは未来から「トモダチロボットのロボ子」を連れてくる。
 あまりに可愛いロボ子を前にすっかり舞い上がってしまうのび太。どんな事でものび太をベタぼめし、のび太を手伝うロボ子にのび太はすっかり夢中になってしまい、さらに頬にキスまでされて幸せの絶頂に浸る。そんなのび太を羨ましがったジャイアンとスネ夫はのび太に石をぶつけてくるが、ロボ子は百万馬力の力を使って二人をメタメタにしてしまう。さらにロボ子は大変嫉妬深い性格で、仲直りにきたしずかやのび太がかわいがる犬にヤキモチを焼いてしまう。
 そして買い物の帰りが遅くなった事でのび太を叱るママをいじめと勘違いし、ママに襲いかかるロボ子。止むを得ず結局ロボ子は未来に戻り、仕方なくドラえもんが女装してのび太の友達になろうとするが、のび太は気持ち悪がるだけであった。
 

 (解説)今話ののび太は大変大らかな性格で、女の子に裏切られたにもかかわらず、笑ってごまかすという大人の性格にしあがっています。それでもやはり今回のトピックスはロボ子でしょう。嫉妬深いだけではなく、百万馬力という超絶的なパワーを持っている事と、絵のかわいらしさのミスマッチが彼女の魅力を引き立てていました。ラストの「ミス・ドラ」も別の意味ですごい(笑)。
怪談ランプ   10頁 小六73年9月号(怪談の会)
 ママにしきりに恐い話を教えて欲しいと頼むのび太。しかしママが話したのは「ごはんがこわい」というオチの笑い話だった。ドラえもんが訳を聞いてみると、ジャイアンの家で怪談の会をやるので、恐い話を知りたいというのだ。そこでドラえもんはのび太に「怪談ランプ」を渡す。これを出したままで怪談話をすると、話のとおりの出来事が起きるというのだ。
 そして夜になって会は始まり、他の三人はそれぞれの怪談を披露するが、全部どこかで聞いたような話なのでみんなはちっとも恐がらず、のび太が1人で怖がってしまう。のび太もランプを取り出して話をはじめるが、のび太の話す通りに皿の割れる音が聞こえたり、ロウソクの火が消えたり、「一まあい、二まあい」と声がしてくる。そして遂には障子がスーッと開いて出刃包丁がにゅっと出てきた。実はジャイアンの家にドロボウが入りこんでいたのだ。ところがのび太達の悲鳴で逆にドロボウが逃げてしまい、みんなは一番怖がらせたのび太を優勝とするのだった。
 優勝したのび太は喜んで帰ってくるが、その時調子に乗って『ノッペラボーなんかも出したかった。』とランプを出したままで言ってしまい、パックしているママをノッペラボーと勘違いし、大慌てするのだった。
 

 (解説)少し地味めの話ですが、なかなか面白いです。一人で話して一人で勝手に叫び出すのび太が個人的には笑えます。あと冒頭の「ごはんがこわい」と言うのは、ご飯の状態を表現する時に「かたい」という意味で「こわい」という言葉を使うそうです。つまりこれは「怖い」と「かたい」という意味の「こわい」をかけた笑い話なんですね。母から聞いて納得しました。「髪の毛がかたい」というような時にも「こわい」を使うそうです。
ゆめふうりん   12頁 小四72年7月号
 大人になったら何になりたいかという話をしていて、急にパパは幻滅した声をあげる。のび太はパパの期待に反し、ガキ大将になりたいと言うのだ。ジャイアンのようにみんなを集めていばり散らしたいのだそうだが、当のガキ大将のジャイアンはみんなを集め、相撲大会を開こうと言い出し、賞品を持ってこさせる。のび太はそんなガキ大将に、子供の頃になれないから大人になってからなるのだと言い、そんなのび太の姿を想像してやはり幻滅するドラえもん。ドラえもんはのび太をガキ大将にするため、とりあえず寝かせる。
 そして夜中、「ゆめふうりん」を出したドラえもんはのび太の友達だけを眠ったまま起こす。眠ったままの連中はのび太の言う事を聞くようになるのだが、あやとり大会をしたいというのび太に対し、みんなは相撲をやりたがる。結局相撲をするが、のび太はジャイアンやスネ夫はおろか、しずかにまで負けてしまう。さらにドラえもんがのび太に勝ったら「おねしょじゃ口」をつけてやると脅かしても、今度はのび太が勝手に転んで負けてしまった。のび太もさすがにウンザリしたようで、みんなはその場で解散した。
 翌朝、友達はのび太と相撲を取って勝った夢をみたと話し、それを聞いて悔しがるのび太だった。
 

 (解説)まず最初に面白いのはのび太の将来の夢。その発想も笑えるけれど、その光景を勝手に想像して幻滅するドラも面白いです。ストーリー紹介では省略しましたが、のび太に耳を引っ張られて目を覚ましそうになるジャイアンとか、賞品を持ってくる時に寝ぼけてゴミを持って来たりと、一つ一つに笑いを取る要素がちりばめられています。それにしても、しずかにまで負けてしまうとは、少し情けないぞ、のび太(笑)。
ぼくの生まれた日   10頁 小四72年8月号
 今日も勉強の事でママに叱られていたのび太はもっと自分を信用して欲しいと宣言するが、言ってるそばから遊びに行こうとしてしまったのでパパとママに厳しく叱られてしまう。怒られたのび太は自分がパパとママの本当の子ではないと言って騒ぎ出してしまった。あきれたドラえもんはのび太を連れて、タイムマシンでのび太の生まれた日へと向かうことにする。
 そこでは子供が生まれたと聞いて慌てて家に帰ってきたパパがいた。パパの後を追いかけて、ママが入院している病院へ向かう二人。パパは喜びのあまりママを赤ん坊と勘違いしてしまうが、続いて病室へ乗り込んだのび太は赤ちゃんの自分を見てサルみたいだと言ってしまい、怒ったパパに追い出されてしまう。
 ママに尋ねられてパパは子供につける名前・「のび太」の名の意味を語る。その名前にはすこやかに大きく、どこまでも伸びて欲しいという意味が込められているのだ。赤ん坊ののび太を見ながら将来の夢を語りあうパパとママ。だがそれを聞いて照れくさくなってしまった当ののび太が茶々をいれたためにまた怒られてしまう。
 とりあえず自分がパパとママの子供である事を確認したのび太だったが、両親の自分への想いを知ったのび太は夜遅くまで勉強し始め、パパ達をを心配させてしまうのであった。
 

 (解説)ぱっと見では動きの激しいギャグ話です。子供が生まれて興奮しているパパの姿がユーモラスに描かれています。子供が生まれたときは、親は誰でもそうなってしまうのかもしれませんね。子供の将来を夢見る親も、平凡ではありながらも、ささやかな幸せを願う家族の姿が見られて微笑ましいです。まあ、その通りに育たないのが子供でもあるのですが。ラストのコマ、何故かボーっとした顔で座っているドラが笑えます。
正直太郎   9頁 小三73年9月号
 親戚の玉夫おじさんが、好きな人のことでパパとママに相談に来た。面白がったのび太も話に参加しようとするが、子供には関係ないと追い出されてしまう。三人の会話からおじさんが失恋してしまったと察したドラえもんは、気が弱く、自分の気持ちを告げられないおじさんのために、心に思った事を代わりに話してくれる「正直太郎」を取り出す。
 しかしこれはあまりに正直過ぎて考えた事を全部話してしまうので、のび太はママに0点をとったことがばれ、代わりに持っていたドラえもんは通行人にまで怒られてしまう。仕方なく近くの草むらに隠すが、それを見ていたスネ夫が面白がって持ち去ってしまう。おじさんに再びデートする事を薦めるのび太とドラえもん。
 一方ジャイアンと出会ったスネ夫は本音を正直太郎が話してしまったためにぶん殴られてしまい、怒ったスネ夫は正直太郎を捨ててしまう。そのためおじさんは再び恋人と会っているにも関わらず、のび太達はおじさんに正直太郎を届ける事が出来ず、おじさんの彼女は結局イライラして立ち去ってしまう。だがその時恋人の方が正直太郎を拾い、同時に正直太郎によって話された彼女の本当の気持ちを聞いたおじさんはついに自分でも想いを告白する。楽しそうに話す二人の様子を見て、世話を焼く事はなかったと呟くのび太とドラえもんであった。
 

 (解説)「本音を言うための道具」というのは結構初期の頃からあったようで、これもそんな話の1つで、今回は本音を言ったために成功する、というパターンです。しかしスネ夫は裏表が激しい奴ですね(笑)。人間には時として勢いも大切なんだなあ、と実感させてくれます。
しずちゃんのはごろも   8頁 小二73年12月号(ふわふわはごろも)
 しずかの持つ羽衣をとろうとするのび太を叱るドラえもん。しかしそれは劇の稽古であり、二人は「天人のはごろも」という劇を演じる事にしていたのだ。ところが天人が空へ登っていくシーンをどうするかで二人は悩んでおり、そこでドラえもんは巻きつけると空に浮かぶ「フワフワオビ」をしずかに渡す。喜んで空を飛ぶしずかだが、強風で遠い山まで吹き飛ばされてしまった。
 羽衣を山の木こりに取られてしまったしずかは返してもらうために、劇さながらにバレエを踊って披露する。しかしその間に羽衣は風に飛ばされてどこかへ行ってしまい、サルにひっかかった羽衣は山に住んでいる女性の所に落ち、女性はそれを赤ん坊のおむつに使ってしまったため、赤ん坊は空に舞い上がってしまう。だがその赤ん坊も無事、やってきたのび太とドラえもんに助けられる。素敵な天人になると張り切るしずかの後ろで、おむつになっていたことを話すべきかどうか悩む二人であった。
 

 (解説)単純に道具を使って遊ぶだけかと思っていると、少しストーリーにひねりがあって、なかなか楽しめます。全体的にほのぼのした感じの話ですね。しずかが踊る時に木こりが歌うのはソーラン節でしょうが、ソーラン節をバックにバレエを踊るなんて、シュールな構図だ(笑)。
うそつきかがみ   10頁 小四71年5月号
 部屋においてあった鏡にとんでもなくハンサムな自分の顔が映し出され、世界一の美男子ではないかと思い込むのび太だが、さらにその鏡がしゃべり出してきたので驚く。そこへ現れたドラえもんは「うそつきかがみ」だと説明してポケットにしまう。だがのび太はあれこそ自分の真実の姿だと信じこんでしまった。
 その時、部屋の中でボーリングしていたドラえもんが家の鏡を壊してしまった。のび太に言われてやむを得ず代わりにうそつきかがみを出すドラえもん。それを見たママも美女として鏡に映し出され、かがみの言うとおりに髪をちょんまげにするために美容院へ行ってしまい、さらにのび太も変な顔にさせられてしまう。それを美しいと思いこんだのび太は逆に真実を教えようとするドラえもんから逃げて裏山に行く。
 自分の顔を見せようとしずかに会いに行った最中、当のしずかも偶然その場を訪れてかがみのために変な顔をするようになってしまう。さらに近所の子供がみんなかがみの前に集まって、夜になっても帰ってこない事を心配する親たちを見てドラえもんも事態を察知、かがみを取り戻す。壊されかけて反省したかがみは、帰ってきたのび太にわざと不細工な顔を見せるのであった。
 

 (解説)常に自分を擁護する言葉しか言われず、自分を美化してくれる鏡。後年の「いたわりロボット」などにも通じる、「楽な道だけ歩んでいてはだめになる」というメッセージがあるように思います。ですが、今話はテーマよりもまず、うそつきかがみに写し出される劇画チックなパロディイラストで笑うべきでしょう。しかし家の中でボーリングをするとは無茶だ(笑)。ボーリングが流行ったのって、このころでしたっけ?「美しきチャレンジャー」とかいうドラマがあった気がしますが。
タイムふろしき   14頁 小四70年12月号
 古いテレビがようやく壊れたので、この機会にカラーテレビに買い換えてもらおうとするのび太達。しかしテレビはママが一発殴っただけで直ってしまった。だがまたすぐに壊れてしまい、二人は再びママの所に向かうが、ママは新しい洗濯機、パパは新しいカメラが欲しいと言って口論を続けており、とてもカラーテレビが買える状況ではなさそうなので、仕方なくドラえもんは「タイムふろしき」を取り出して今のテレビを新品の状態に戻してしまった。裏を使うと未来に進み、かえって古くなってしまうが、洗濯機とカメラを直した二人は、さらに古い物を新品にして売る計画を立てる。
 だがドラえもんが口を滑らし、秘密がスネ夫にばれてしまった。その能力を目の当たりにしたスネ夫は二人のいない隙にタイムふろしきを奪うが、現れたジャイアンに取られてしまう。ジャイアンはみんなを使って古い物を集めさせるがジャイアンも店の配達を頼まれ、包んだふろしきの中で荷物の卵が孵ってしまう。
 ふろしきを見つけたのび太達とスネ夫は激しい争奪戦を繰り広げ、そんな最中でついにスネ夫がふろしきを手に入れ、家に逃げ帰ってしまう。事情を聞いたスネ夫のママはすぐにふろしきを返すように言うが、その前にワニ皮のバッグを新品にしようとして、そのワニ皮の持ち主、つまりワニそのものにまでさかのぼらせてしまうのであった。
 

 (解説)道具を使っていとも簡単に金儲けしようとするドラのび。初期は大らかでいいですね。3人の争奪戦のさなか、車がポンコツになったり、老人が若返ったり、ジャイアンが赤ん坊になったり(この後どうなった?)と、ストーリーと直接関係ない所での面白さが光っています。さらに注目なのは、タイムふろしきの効力を知っても、『ひとの物はかえすざます。』と忠告するスネママ。意外と良識ある人物なんですね。この道具が後々の大長編で活躍する事になるとは、恐らく作者自身も想像できなかったでしょうね。
かならず当たる手相セット   9頁 小四74年3月号(かならずあたる手相セット)
 女の子の手相を見てご機嫌を取るスネ夫をバカにするのび太。だがそれを聞いたスネ夫の手相占いで残酷な未来を占われたのび太は、いとも簡単に落ち込んでしまう。それでもドラえもんに励まされて元気になるのび太だったが、みすぼらしい扮装をして現れたパパを見て、不吉な運命の前触れだと騒ぎ出す。そこでドラえもんは「かならずあたる手相セット」で手相を変えることを勧める。
 効果を疑うのび太に、テストページで金運の相を自分の手に書いたドラえもんはパパからおこづかいをもらう。それを見たのび太も続いて手相を書いてもらい、家に来たおばさんからこづかいをもらうことに成功した。だがのび太は調子に乗って片っ端から手相を書いてしまうが、なんとそれは書いてはならぬ悪運の相だった。さらに手相を消すクリームをおばさんの連れてきた子供に捨てられ、ダンプカーに持って行かれてしまう。
 ダンプカーを追いかけるのび太はその際ジャイアンにぶつかって殴られ、「ぶつかり相」と「なぐられ相」は当たってしまった。この後落っこちて縛られてナイフで刺されてしまうという手相を消すため、クリームを取りに未来の世界へ向かうドラえもん。果たしてのび太はその通りになってしまい、縛られて身動きが取れなくなってしまうが、、子供に刺される寸前、クリームが間に合った。これに懲りたのび太は、自分なりにがんばっていく事を決意するのであった。
 

 (解説)今回の道具、「書いてはならぬ悪運の相」が堂々と載っているとは、不思議ですね(笑)。のび太も不幸な占いはすぐに信じて、ドラの書いた手相を疑うのだから、ずいぶん勝手な奴です。結局は最後ののび太のセリフ通り、自分なりにがんばるしかないんですね。なお今話はてんコミ初版時と現在とでセリフの違う部分がありますが、ストーリー紹介では敢えてそこには触れていません。ご了承を。
オオカミ一家   10頁 小三73年11月号(日本オオカミ)
 山神とうげで日本オオカミを見つけたという話題がニュースになる。それを聞いたのび太は自分がオオカミを見つけると言ってみんなに笑われるが、ドラえもんは必ず見つけると自信ありげに言い出し、見つけられなければ目でピーナッツをかむという約束までしてしまう。だが犬を見て怖がるのび太を見て、ドラえもんもやはり心配になってしまう。
 翌日、山神とうげへ向かった二人だが、そこでは既にオオカミを探しに来た人間達がいた。山奥まで進んだ所で、ドラえもんは人間をオオカミに変身させる「月光とう」をのび太に浴びせてオオカミにしてしまう。仲間と思ってオオカミが寄ってきた所を麻酔で眠らせようというのだ。だがのび太が試しに撃った弾でドラえもんが眠ってしまい、慌てている所に本物のオオカミが現れる。
 オオカミはかつては山一帯に住んでいたが、今はこの一家だけになってしまったと言う話を聞かされるのび太。一方人間たちはオオカミの足跡を見つけ、後を追い始めた。それに感づいたオオカミ達。しかしその時月光とうの効き目が消えて元に戻ってしまったのび太はオオカミ達に襲われるが、危ないところでドラえもんに助けられた。しかしのび太には人間に追いやられながらも必死に生きるオオカミを捕まえる事など出来ず、そっとしておく事にした。人間達にもうそをついてごまかしたが後日、目でピーナッツをかむ約束を実行するように言われ、ドラえもんに「目でピーナッツかみき」を出してくれとせがむのび太であった。
 

 (解説)ニホンオオカミの生存については現在でも話題になる事がありますが、この話の中でドラは「未来にはちゃんとオオカミがいる」と言っている事から、F先生はそういう希望を持っていたのではないでしょうか。何より印象的なのは、動物を愛するのび太の優しさが前面に出されたことでしょう。一人の心優しい少年がいなかったら、オオカミも22世紀まで生き残れなかったかもしれませんね。初期の名作です。
N・Sワッペン   10頁 小六73年6月号
 磁石のNとN、SとSだと反発しあい、NとSだとくっつくという事を発見し、みんなに自慢するジャイアン。しかしそんな事は誰でも知っているとのび太にバカにされ激怒したジャイアンは、顔を見るたびにぶん殴ると息巻いてしまう。のび太に泣きつかれたドラえもんは、磁石と同じ作用を貼ったものに与える「N・Sワッペン」を取り出す。試しにパパとママにNのワッペンを貼ると、二人は近づく事が出来なくなり、さらに片方にSを貼るとくっつけてしまった。
 早速のび太にSを貼り、ジャイアンにもSのワッペンを貼りに行くドラえもん。のび太を見かけたスネ夫はジャイアンに居場所を教えるが、ジャイアンはまだワッペンをつけていなかった。ジャイアンに殴られそうになってしまうのび太だが、間一髪ワッペンをつけられたジャイアンはどうしてものび太に近寄れない。とりあえず安心したのび太は一計を案じ、ドラえもんからワッペンを借りる。
 しずかにNのワッペンを貼り付けてくっつこうというのだ。だがその時ジャイアンが投げ縄を使ってのび太にしがみつく。しかしそれでも縄はちぎれてジャイアンは吹っ飛んでしまった。改めてしずかにワッペンを貼るが、間違えてしずかにSを貼ってしまったため近寄れなくなってしまう。自分のワッペンが剥がせないので服を脱いでNをつけたのび太だが、今度は吹っ飛んで気絶していたジャイアンとくっついてしまった。それを見たスネ夫は『ほんとにへんなやつ。』と呟くのだった。
 

 (解説)この作品の初出は「小六」なので、さすがに磁石の関係を知らないジャイアンはバカにされるでしょうね。のび太にバカにされたとあって、ジャイアンの怒り方も凄まじいです(笑)。スネ夫はこの当時から、ラストのコマで冷静なセリフをいうのが役目になっていたようで、これ以降の作品でもしばしばスネ夫のセリフでシメるオチが出てきます。
地下鉄をつくっちゃえ   10頁 小一73年12月号(ちかてつ)
 買い物の帰り、会社帰りのパパと会って家族で帰る事になったのび太達。ところが帰りの満員電車のあまりの混雑ぶりに、慣れているパパは平然としているものの、他の三人は疲れ果ててしまう。あんな混雑の中を通勤しているパパをかわいそうに思ったのび太は、パパにクリスマスプレゼントとして地下鉄を作ろうと言い出した。ドラえもんもそれに賛同し、「穴ほり機」で穴を掘り始める。
 途中で川にぶつかったのでコースを変えて改めてやりなおすが、固い地層にぶつかったので一旦機械を冷やす事にする。だがその時、のび太の耳には穴の向こうからまだ土を掘る音が聞こえた気がした。
 そしてクリスマス。夜中にパパはサンタクロースに扮した二人から定期券を受け取るが、翌朝になってそれが本当に使えるものと聞かされて驚く。パパは完成した地下鉄に乗り、喜ぶ様子を見て二人も安心するが、地下鉄のコースは本物の地下鉄が通る予定のコースにぶつかっていたために使えなくなってしまう。仕方なく穴ほり機に乗り換えて別の道を掘るが、今度は穴ほり機が壊れてしまい、会社まで掘り進む羽目になってしまった。申し訳なくて泣き出してしまうのび太達だが、パパは優しく慰める。とその時、会社の前のマンホールの近くと穴がつながった。マンホールから出たパパは会社に向かい、それを泥だらけのままで見送るのび太とドラえもんであった。
 

 (解説)親子の情愛を丁寧に表現した佳作です。でも会社まで掘るくらいならいっそのこと「どこ…」いやいや、それは言わない約束ですね(笑)。ちなみにパパの定期券では年齢は36才となっていますが、まだこの当時は、学年誌ごとにのび太の年齢が違う、という裏設定的なものが残っていた可能性もあるので、一概にパパの年齢を断定は出来ないと思います。
タタミの田んぼ   8頁 小四74年1月号
 おやつのモチを食べるのび太とドラえもんだったが、4つずつ食べたところで余った一個をどちらが食べるかでケンカになってしまう。モチがもっとあればいいと考えたドラえもんは「もちせいぞうマシン」をだした。しかし材料のもち米を入れるのを忘れており、ママに頼み込むがもちろん断られてしまう。
 仕方なくドラえもんは自分たちでもち米を作る事にし、「しゅみの日曜農業セット」を取り出した。もち米の苗を田んぼに植えて、後は2時間後に訪れる秋を待つばかりだったが、季節コントローラーが狂っているのか、雨がいつまで経っても降らないので田んぼが乾き出した。慌てて二人は水を持ってくるが、今度は降りすぎていたのでてるてる坊主を出して台風を追い払おうとする。台風はなんとかそれていったが、今度はイナゴとの格闘になる。
 それら苦労のかいあって稲穂は大豊作となった。刈り入れた稲穂をマシンに入れ、完成したモチを食べる二人だが、出てくるモチの総数は259個で、分けると129と130ということになり、どっちが130個食べるかでまたもケンカを始めてしまう二人であった。
 

 (解説)もち米を作ってモチを作るまでの家庭がユーモラスに描かれています。「日曜大工」に引っ掛けた「日曜農業」という言葉も面白いですね。このセットも後に何度か出てくる事になります。そんな苦労をしたにも関わらず、結局最初と同じ理由でケンカをしてしまう、というオチもバカっぽくていいですね。
このかぜうつします   8頁 小四74年2月号(かぜをうつしちゃえ)
 風邪をひいてしまったパパ。しかし今日は会社で大事な会議があると言って、無理して会社に行こうとする。のび太に頼まれてもドラえもんもすぐに治せる風邪薬は持っておらず、そのかわりに「かぜを他人にうつす機械」を取り出した。とりあえずのび太は自分に風邪をうつし、風邪が治ったパパは元気になり会社へ行った。
 代わりに風邪にかかってしまったのび太はジャイアンにうつす事に決め、途中、パンツ1枚で歩いている人を見かけながらジャイアンの家へ向かう。しかしジャイアンは家にはおらず、近づいてきたしずかを追い返してしまうのび太だったが、スネ夫にバカにされたのび太はスネ夫に風邪をうつす。しかしスネ夫は親と一緒に映画を見にいく約束をしていたため、気の毒に思ったのび太は自分に風邪を戻す。
 のび太はついにジャイアンに出会うが、ジャイアンはこういう時に限ってのび太にやさしい言葉をかけたので、風邪をうつせなくなってしまう。苦しむのび太を見て、さっきのパンツ1枚の人がうらやましがる。彼はある看護婦を好きになり、友達になる為に風邪をひいて病院に行こうとしていたのだ。喜んで風邪をうつすのび太。相手は風邪にかかったので喜び、二人の方も変わった人がいて良かったと喜ぶのであった。
 

 (解説)少し強引なオチですが、きちんと伏線をはっているのでそれもよしとするべきでしょう。今回のジャイアンはとてもやさしいです。さすがガキ大将。そんじょそこらのただのいじめっ子とは違うぜ!ラストのコマ、風邪をひいたのに『ばんざあい。』と言って走り去る人の姿も忘れがたいですね(笑)。
勉強べやの大なだれ   12頁 小四72年1月号
 新しく買ってもらったスキー道具を自慢するスネ夫。しずかとジャイアンもそれぞれの道具を自慢するが、自分だけ持っていないのび太は滑れないから買わないのだと指摘されてしまい、内心では買ってくれないように祈りながら、パパに買ってもらうよう頼み込む事を宣言してしまう。ところがパパはこんな事もあろうかとスキーをあらかじめ買っておいたのだ。しかもまもなく雪が降ると予想され、困り果ててドラえもんに泣きつくのび太。
 そこでドラえもんは室内練習用の「おざしきゲレンデ」を出した。ドラえもんはうまく滑って手本を見せるが、のび太はやはり転んでしまう。雪景色がなければ気分が出ないと文句を言うのび太に、立体映画で雪景色を出すドラえもん。しかしそれでもうまく滑ることは出来ず、さらにのび太は今度は雪が冷たくないから気分が出ないと言い出した。仕方なくドラえもんは気温を下げる。だがそれでもやはり滑ることが出来ないのでスキーがいやになってしまうのび太だが、ドラえもんの真摯な説得を受け、真面目に練習を始める。
 そのかいあって滑れるようになってきたのび太だが、いいかげん寒くなってきたドラえもんは温度を上げようとして変な所をいじってしまう。と、突然吹雪が吹き始め、さらに雪崩が発生する。のび太は助けを呼びに行くが、いくら走ってもドアに辿りつけない。その騒ぎを聞きつけたママが見たのは、押入れから飛び出した布団に埋もれるドラえもんと、おざしきゲレンデの上で走り続けるのび太であった。
 

 (解説)今回もギャグの応酬ですね。『こんなこともあるかと思って』スキーを買っておくパパはすごい。その他、『さいわい、いや、あいにく〜』とか、『ぼくいっしょうけんめいころぶ・・・・・・、いやすべるね。』と言うのび太の言葉ギャグ、ドラの解説と同じようにして転んでいる状態を解説するのび太など、まさに「お腹をかかえて笑おう」の世界です。ただ僕はオチがよくわからないのです。ラストでママが停電らしいと言いますが、それが何か関係あるのでしょうか?
恐竜ハンター   16頁 小三70年5月号
 部屋に恐竜が現れ仰天するのび太。しかしママと一緒に改めて部屋に来ると恐竜の姿はなかった。のび太は不思議がるが、実はあの恐竜はドラえもんがセワシと恐竜狩りに行ってきて、のび太の部屋で一休みさせていたものだったのだ。連れて帰った恐竜はペットにするという。自分もやろうとするのび太だが、誰でも出来るわけではないと説教するドラえもん。しかしその時ネズミを見て怖がってしまい、それを内緒にしてもらう為に仕方なくのび太を連れて行く事になる。
 準備としてバターとジャムを持ってくるよう頼むが、のび太はそれを弁当だと思って他の食べ物をたくさん持ってきた。タイムマシンで一億年前の世界に向かう二人。ドラえもんは物体を小さく出来る「さいぼうしゅく小き」をとりだした。撃つのをのび太に任せ、獲物を誘い出しに行くドラえもん。心細くなって帰ろうとするのび太の前に、ドラえもんが恐竜を連れてきた。だがのび太は怖がって光線を撃ちすぎ、恐竜はアリのように小さくなってしまう。
 結局ドラえもんが銃を撃つことにし、ドラえもんは取り出したバターとジャムをのび太の顔に塗る事で囮になってもらう。と、のび太の意思に反してすぐに恐竜は追いかけてきた。だがポケットの中にたくさんしまわれた弁当に邪魔されて、ドラえもんはさいぼうしゅく小きを取り出せない。そうこうしているうちに二人は恐竜につかまってしまう。ドラえもんはロボットのために食われず、のび太もメガネを虫メガネのように使って光を集めて恐竜を熱がらせ、なんとか逃げのびた。だがその時にメガネを落としてしまい、さらに噴火が起きたので二人は逃げ帰る。
 帰ってきた二人はパパに不思議な化石の載った新聞を見せてもらう。そこにはのび太のメガネをつけた恐竜の化石が載っているのであった。
 

 (解説)連載最初期という、ものすごく大らかな世界だからこそ成立した作品ですね。ラストのオチといい、恐竜狩りのシーンといい、ナンセンスというよりは「無茶苦茶」といった感じさえします。こういう多様な世界を内包している事が、ドラ世界の魅力なのでしょうね。今回一番笑えたのは恐竜狩りの話を聞いて自分もやろうとするのび太。紐付きのコルク弾がついてるおもちゃのライフルを持って何をしようとしていたのか(笑)。
出さない手紙の返事をもらう方法   10頁 小六74年2月号(返事先どりポスト)
 ママが親友へ送った手紙の返事がこないということで憂鬱になっていた。しかし本当は一月前に頼まれたパパが出し忘れていたのだ。慌てるパパに「返事先どりポスト」を出したドラえもんはこの中に手紙を投函する。これを使うと実際に手紙を出す前に返事をもらう事が出来るのだ。送られてきた返事の手紙を渡し、ほっとするママとパパ。
 ポストの事をみんなに話したのび太達はしずかから、歌手の天野星夫宛てのファンレターを投函するよう頼まれる。しかし返事は来なかった。本当に出しても返事がもらえないということなのだ。次にスネ夫が、ジャイアンの悪口を書いた手紙をジャイアンに出したらどんな返事がくるかという実験を行いに来た。だが送られてきたその返事にはよほど恐ろしい事が書いてあるらしく、スネ夫はジャイアンの声を聞いただけで逃げ出してしまう。
 その時のび太は、しずかへのラブレターを送ってみるという考えを思いつく。ドラえもんが読んでもムズムズしてしまうような文章を書いて投函するのび太だが、宛先も書かれておらず切手もなかったので配達されなかった為、二人は切手を買いに行く。ところがその間にママがのび太に手紙を出してもらおうと部屋に来て、ついでにのび太の手紙を出してしまった。
 その事を聞いたのび太はもう一度同じ文面で出してみると、しずかからの絶交宣言が送られてきてしまった。手紙もすでに回収されてしまったため、しずかの家の前で配達されてきた所をおさえることにした二人は、しずかに訝しがられながらも家の前をウロウロするのであった。
 

 (解説)今話の面白さはやはり「手紙」に尽きるでしょう。スネ夫に来た返事にはいったいどんな事が書いてあったのか。もっともジャイアンだったら返事を書く前にぶん殴りそうだけど(笑)。さらにのび太の書いたラブレターも気になる。ドラに『気もちわりい、むずむずする。』とまで言わせた文面、是非読んでみたいものです。想像をかきたてるのも面白さの一つなのですね。F先生の職人芸を見せられた感じがします。

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