てんとう虫コミックス第21巻


雪がなくてもスキーはできる   9頁 小三80年4月号(雪のないスキー)
 季節は春。今年もスキーが出来るようになれなかったのび太は、一生スキーが出来ないと騒ぎ出す。仕方なくドラえもんは「いつでもスキー帽」を取り出す。これをかぶると雪が見えるようになり、それを実感することが出来るようになるのだ。ダイヤルを調節して雪を50センチつもらせたたのび太は「さか道レバー」を使ってスキーの練習を始める。その時に出会ったしずかにも帽子を貸して二人でスキーを練習するが、のび太はすぐに飽きてしまい、結局二人で雪の中を遊ぶことにする。それを羨んだジャイアンとスネ夫はドラえもんにウソをついて「ジャック豆」を借り、それを使ってのび太たちから帽子を取り上げる。ダイヤルを最高まで回した二人は二百メートルも雪を積もらせてしまう。だがドラえもんは話を聞いても取り返そうとしない。やがて夜になりジャイアン達は戻ろうとするが、雪を消さなければ帰ることが出来ず、しかし雪を消したら二百メートルの地点から落下することに気づき、どうしようもなく二人で泣き出すのであった。  

 (解説)「大雪山がやってきた」よりもインパクトに欠ける話ですが、ラストのオチは道具の特性をうまく利用しており、好感が持てます。いつでもベレー帽以外にも、結構いろんな種類の道具が出てくるのも、ファンとしてはうれしいところですね。
だいこんダンスパーティー   10頁 小四79年4月号(新種植物せいぞう機)
 家に飲みかけのジュースを置きっぱなしにしていたことに気づいたのび太が慌てて家に帰ると、見たこともない蝶がジュースを飲んでいた。追いかけるのび太を、「花をいじめるな」と言ってドラえもんが制す。この蝶はドラえもんが「新種植物製造機」を使ってスイートピーの花を改造したものだったのだ。試しにチューリップの球根を改造して新種を作り出し、タイムふろしきで育てると、蜜をたくさん出す花になった。その蜜を飲んだのび太は自分も新種の植物を作りはじめるが、ドラえもんが横からいろいろ口を出す。そんな中できあがったのは、花の部分がネズミのような花だったので、ドラえもんは大慌てで逃げてしまう。のび太はでたらめに改造してユリの花の楽器や踊る大根、カボチャの馬車などを作り出す。それらを使ってしずかを家へ招待したのび太はダンスパーティーを始めるが、次第に家中が騒がしくなってくる。大根が勝手に仲間を増やしてしまったのだ。遂にママも怒りはじめ、のび太は木のつたを使って家の外に逃げ、ツタの通信機でドラえもんと連絡を取り合う羽目になるのだった。  

 (解説)これも「イキアタリバッタリサイキンメーカー」よりはインパクトに欠けますが、「イキアタリ〜」の方が強烈すぎる作品ですから、それは仕方ないでしょう。「遺伝子改造」と言う当時(今でも)最先端の科学技術を作品内に取り入れているあたり、情報の早さと作者自身の興味が伺い知れますね。カボチャの馬車でのび太の家に向かったしずかが『なんだ、のび太さんか。』と呟くのは何故か好きです。彼女にとってののび太など、まだその程度の存在でしかないんですね。
ひろびろ日本   14頁 てれびくん80年3月号(ひろびろポンプ)
 空き地で野球をしていて、また隣家の窓ガラスを割ってしまったみんなは、広い場所で野球をしたいと愚痴をこぼす。家ではママが自分の家を持ちたいと話しており、そんなときにつまずいて転んだのび太まで、日本が狭いと言い出してしまう。話を聞いたドラえもんは「ひろびろポンプ」を出し、土地を大きくしようと言い出す。影響が大きいためにとりあえず「狂時機」で世界中の時間を止め、ポンプで日本を大きくする。「ゆめ風りん」と「ゆめスピーカー」を使ってみんなを眠ったまま起こし、とりあえず一日の生活を普通通りに送ることにする。しかし学校までの道があまりに遠いため、のび太は学校に行くのをやめてしまう。だが混乱はそれだけではなく、あまりにも広くなってしまったためにみんなもそれぞれの事情で困り果てていた。更に何故かどんどん暑くなってくる。ニュースを見たドラえもんは愕然とする。大きくなった日本列島が潮流を遮ってしまったため、寒流と暖流がごっちゃになって世界中で異常気象が発生しだしたというのだ。さらに海が狭くなった分の海水が日本列島に流れ込み、大洪水になってしまう。仕方なくポンプをはずして事なきを得る二人だが、二人は何とかして広くできないかと口論を始め、『せまい家の中でさわぐな!!』とパパに怒られてしまうのであった。  

 (解説)ドラえもん全作品の中でも、「土地問題」をこれほどまでに大きく扱った作品はこれが唯一です(笑)。今回はストーリーももちろんですが、随所に存在する、しかし言われないとなかなか気づけない「おかしなシーン」に注目すべきでしょう。白眉は、のび太が何故道路などの幅は同じで長さだけ伸びているのかとドラに聞いた時の、「説明すると長くなる。」でしょうが、他にも何故か「グウグウ」と言うアナウンサーの言葉だけで事態を把握してしまうドラや、『せまいままで広くできないの!?』と、この上なく不条理な頼みをするのび太、それを受けてラストのセリフを返すパパなど、さり気ない面白さが各所で光っています。「狂時機」で時間を止めたにもかかわらず、なぜか「ゆめ風鈴」でみんなを起こしてしまっているのが不思議ですが、それもまた良しですかね(笑)。
多目的おまもりは責任感が強い   10頁 小六79年11月号
 下校時に出木杉と仲良くするしずかを見て、ヤキモチを妬いてしまうのび太。その帰り道で、のび太はどこかへ向かって走っているドラえもんを見かける。後を追いかけると、ドラえもんは急に止まったあと1円を拾い、何故か文句を言い始める。話を聞くと、ドラえもんは「多目的おまもり」をつけており、4つのうちどれか一つのボタンを押すと、コンピューターがその願いを叶えるようにしてくれるのだ。ドラえもんは「金運」を押していたのでのび太もお守りを借りると、お守りに操られるままに家に戻る。するとそこではアイロンがつきっぱなしになっており、服が焦げてしまっていた。感謝されたママから小遣いをもらったのび太は、今度は「交通安全」を押して出かけようとする。だが安全のために外に出づらくなったり過敏に反応したりと迷惑なことばかりして、のび太はやっとの事で家に帰り着く。のび太は次に「恋愛運」を押すと、ドブを眺めるしずかの前へ来てドブさらいを始め、落ちていたしずかの財布を拾う。しかしその間は金運にまで手が回らないようで、のび太は自分の財布を落としてしまった。次に出木杉のノートをしずかの家まで持っていって宿題を教えるが、お風呂に入っているしずかに石鹸を持っていってしまったために逆に嫌われてしまう。怒るのび太は「受験合格」のボタンを押して東大に入ろうと考えるが、おまもりがのび太に猛勉強させるために、のび太は机から離れられなくなってしまうのであった。  

 (解説)今回は結局うまくいったのが最初の金運だけだったので、道具としての利便性はわからずじまいでした。やはり小学生にはまだ恋愛の話は早すぎるということなんでしょうかね(笑)?お守りに振り回されるのび太の姿が滑稽で面白いのですが、ラストのオチは「グラフはうそつかない」などでもお馴染みのものなので、今ひとつ新鮮味に欠けていたのが残念でした。
恐竜が出た!?   9頁 小三79年7月号(恐竜がでた!!)
 いつも自分の部屋を散らかしっぱなしののび太を今度こそ注意しようと待ちかまえるドラえもん。だがやって来たのび太は、高井山に恐竜が出たというニュースをドラえもんに伝える。もちろんドラえもんは信じないが、ニュース番組で流された8ミリの映像を見て二人もどこでもドアで高井山へ向かう。するとそこには本当に恐竜がいた。だがどうしても信じられないドラえもんは、一つの結論に達した。その真偽を確かめるために二人はタイムマシンで三日前の世界に向かう。
 三日前。ドラえもんは未来の世界で「大恐竜展」を見てきた。お土産のプログラムからは、ミニサイズの恐竜が飛び出すのだ。それを使って箱庭を作り、動物園のように恐竜を放すのび太。おやつのイチゴをビッグライトで大きくしたのび太はしずかと高井山へハイキングに行こうと思い立ち、どこでもドアを使って山へ向かう。だがその時にビッグライトを落としてしまい、スイッチが入ってしまう。さらに箱庭の恐竜たちはパパに虫だと勘違いされてホウキではたかれ、どこでもドアを通って恐竜たちは高井山まで移動してしまい、さらにビッグライトの光を浴びて巨大化してしまったのだ。
 三日後から見に来たドラえもんは後片づけをしないのび太を叱るが、とりあえず恐竜を片づける。しかし高井山では恐竜を調査しようと世界中から大勢の人が集まり、二人は困り果ててしまうのであった。  

 (解説)ドラ世界の十八番であるタイムパラドックスの要素を盛り込んだ、秀逸な出来映えのギャグ作品です。伏線の張り方も絶妙で、最初と最後のオチが見事に融合しています。それ以外にも「三日前の世界」での二人の描写は、のびドラが作品外の日常で普段どう過ごしているかを描いているような気がします。漫画作品として描かれることのないいつもの日常では、きっとあんな風に適当に道具を使ったりしてのんびり暮らしているのでしょうね。読者の想像力を膨らませるシーンだと思います。
未来の町にただ一人   19頁 小四79年7月号(のび太、タイムマシンで行く)
 夏休み、友達をプールに誘うのび太だが、みんなはそれぞれどこかへ旅行に出かけてしまい、どこにも出かけられない不幸を嘆くのび太は、ドラえもんに頼んでどこかへ行こうとするが、当のドラえもんは非常に慌てた様子で未来の世界へと帰ってしまう。何があったのか考えるのび太は、その時不意に、ドラえもん達の住む22世紀へ行ってみることを思いつく。住所を調べ、2125年の時代へとタイムマシンで向かうのび太。ところがタイムマシンの出口は高層タワーのてっぺんに出てしまった。驚くのび太は近くを飛んでいたUFOのようなものに助けを求めるが、その際に弾みで下に落ちてしまう。だが急激に落ちるスピードが遅くなっていき、無事に地上に着地する。22世紀の科学に感心しながらもドラえもん達を探すのび太だが、街には人っ子一人見あたらない。道を尋ねようとして衣類販売店やレストランに入っても、あるのは留守番コンピューターばかり。そんな時、空中公園で何かが動いているのを見つけたのび太は急いでそこに向かうが、それは人間ではなく、得体の知れない妙な生物だった。隠れてやり過ごしたのび太は、奴らのような宇宙人が地球に攻めてきたのだと直感する。とりあえず20世紀へ帰ろうとするのび太の前に、銃を持ったセワシが現れる。感激するのび太に少し驚きながらも、セワシは宇宙人が攻めてきたことを話し、のび太にも戦うための銃を渡す。現れた宇宙人と戦いを始め、善戦する二人だが、巨大UFOが現れて二人は吹っ飛ばされてしまう。そこへ、ジャンボを始めセワシの友人が現れた。実はセワシのしていたのは立体インベーダーゲームだったのだ。夏休みにどこにも旅行できないと聞いて複雑な気分になるのび太。一方のドラえもんは原子炉の調子がおかしくなったので工場へ行っていたのだ。ドラミとも会って、修理したドラえもんと一緒に20世紀に戻ってくるのび太。のび太は立体インベーダーゲームでドラえもんと共に遊ぶのであった。  

 (解説)作品史上初めて22世紀の世界が明確に描写された、記念すべき話です。22世紀の描写は、藤子F先生の描いている「明るい未来像」が結実した、夢いっぱいの楽しいものになっています。オチの伏線も、200年の時を隔てて使われるという壮大なものになっています(笑)。冒頭のドラ、確かに原子炉の調子がおかしいのなら慌てて帰るだろうなあ。もし壊れたら大変なことになる(笑)。
いばり屋のび太   10頁 小六79年9月号
 パパとママが何かを話しているのを見て、自分も参加しようとするのび太だが、子供の出る幕ではないと追い出されてしまう。のび太はドラえもんと共に部屋の整理をやっていたのだが、面倒臭がってのび太は全然手を着けようとしない。一計を案じたのび太はタイムマシンでどこかへ向かう。ドラえもんは大人になった未来の自分を連れてきて手伝わせるつもりだと推測するが、案の定追い返されて帰ってきた。そこでのび太はタイムふろしきで自分を10年成長させ、片づけを終わらせる。パパの服を借りて大人のままでいることにしたのび太は、階下に降りてママからケーキをもらい、先程の話について自分の意見を話してから遊びに行ってしまう。パパとママは大人ののび太がそれぞれの知り合いだと思っていた。のび太は出会ったジャイアンに無理やり相撲を取らせて勝ち、野球にも参加させてもらうが、やはりのび太はへたくそのままで、野球は負けてしまう。しかしのび太は大人であることを良いことに威張り始め、あやとり大会を始めると言い出す。有頂天になるのび太だが、そこへ何故か子供ののび太が姿を現した。そののび太に説教されて帰っていく大人ののび太。子供ののび太はジャイアン達に感謝される。一方の大人のび太はタイムふろしきで元に戻り、タイムマシンで先程の空き地へ向かう。そこでのび太が見たものは、大人のくせに子供に対して威張り散らしている、みっともない自分の姿だった。のび太は慌てて大人のび太を注意するのだった。  

 (解説)てんコミ2巻の「ゆめふうりん」で、のび太は大人になってからガキ大将になりたいという夢を語っていましたが、今話ではそれが現実のものとなってしまいました。けれども本人にとっては子供の気分で威張っているつもりでも、端から見れば大人なわけで、子供のび太はそのみっともない姿を見て幻滅するわけですが、「子供の中で威張り散らす大人」というのは、「コーモンじょう」や「世界平和安全協会」でも見受けられるパターンで、そう言った意味では今話はそのパターンの変則的なものでもあると思います。派手さはありませんが、オチにドラ世界の面目躍如たるタイムパラドックスを利用していますね。
ミニハウスでさわやかな夏   9頁 小三79年8月号
 夏休みの宿題を一緒にやろうとしずかを誘うのび太だが、のび太の家よりも環境がいいと言って、スネ夫が約束を取り付けてしまう。怒ったのび太はママに引っ越しを頼むがママには訳が分からない。話を聞いたドラえもんはのび太を環境のよい家に連れていくと言い出す。目隠しをしてのび太が連れて行かれた場所には、広い庭と大きな家があった。プールなども設備されており、驚くのび太。そこへドラえもんはアイスを買ってくるが、そのアイスはとても大きく、ではなくのび太がガリバートンネルで小さくなっていたのだ。二人が行っていたのはエネルギー節約のための「ミニハウス」で、未来の人が時々住むものだという。一方、クーラーが故障したりして勉強できないしずかはスネ夫の家から帰ってくるが、のび太に招待されてミニハウスへと向かう。木陰で勉強をした二人はドラえもんと一緒にプールで楽しく泳ぐ。それを見てうらやましがったスネ夫はジャイアンと協力してのび太達をミニハウスから追い出し、ミニハウスとガリバートンネルを持っていってしまう。小さくなって遊ぶ二人だが、そこへ巨大ゴキブリが現れたために二人はガリバートンネルへ駆け込むが、トンネルの出入り口を間違えたために更に小さくなって風に飛ばされてしまい、二人を虫めがねで探すドラえもん達であった。  

 (解説)小さくなって家に住むという、お人形ごっこのような単純な夢の世界を、「資源節約」という世界にまで発展解釈しているところがすごい(笑)。こんな道具があればエネルギー問題も即解決なんですけどねえ。そう言う意味では、藤子F先生らしい、未来に希望を持った話だと思います。ありそうでなかった最後のガリバートンネルオチも、結構新鮮でした。
行け!ノビタマン   17頁 てれびくん79年9月号(ノビタマン)
 庭で大きな機械を整備しているドラえもん。のび太が話を聞くとこれは「宇宙救命ボート」で、地球が爆発してしまうような、地球規模の不測の事態に備えて地球脱出のために使うボートなのだ。だが中に入って一つだけあるボタンを押してしまったのび太は、ドラえもんと共にボートで宇宙に飛んでいってしまう。これは全自動なので、どこかの星に着陸するまで止められないのだ。そしてワープの末に地球によく似た惑星へ到達する二人。二人は偶然出会った少女に助けられ、ボートが直るまで少女の家で暮らすことにする。夜、ボートを修理するドラえもんだが直し方さえもわからず、のび太と口論になってしまうが、その時家の外で銃声が響いた。外に飛び出すと、膝に軽い怪我をした男が倒れていた。その男はその家の主人で、新聞記者である主人はギャングの集まりであるシンジケートの犯罪を告発する記事を書いているために、シンジケートに狙われているのだと言う。その話を聞いて早くこの星から出ていくことを考える二人。だが翌日、登校途中の少女がシンジケートに誘拐されてしまい、脅迫状が届けられた。その汚いやり方に憤慨したのび太は思わず飛び上がってしまうが、何故か大きく飛び上がり、家の屋根まで突き破ってしまう。この星は地球よりも重力がずっと小さいので、コンクリートなども柔らかく、人間の力もずっと弱いのだ。それを知ったのび太は「ノビタマン」を名乗ってシンジケートの本拠地へ向かう。ギャングの銃撃も二人には通じるはずもなく、二人は少女を救出した後、シンジケートのビルを倒壊させ、シンジケートを壊滅させた。一躍英雄になってしまった二人は、ずっとこの星で暮らしていこうと考えはじめるが、また何気なくボートのボタンを押すと、ボートはいつの間にか直っており、二人は地球へ戻ってしまう。地球でいつもの生活を過ごしながら、また口論をしてしまう二人であった。  

 (解説)21巻中、というよりも全ストーリーの中で僕が気に入っている話です。後の「宇宙開拓史」の草案とも取れる重力の概念、そして「ガンファイターのび太」の元ネタとも取れる、ダメ少年・のび太の英雄譚が描かれており、この話には後の名作群の草案が詰まっていると思います。ラストもいかにもドラ世界らしいあっさりしたオチで、好感が持てます。個人的に好きなのはボートが惑星に落下してボロボロになる二人。あれじゃ「安全」とは言い難いよな(笑)。腕をピクピクさせているのび太がまたおかし。あとはアジトに突入する時の「タンタカターン」ですね。
ドラキュラセット   10頁 小四79年12月号
 スネ夫からドラキュラの話を聞かされ、怖がったのび太は恐怖のあまり靴も履かずに外へ逃げ出し、家に戻ってきてしまう。靴を届けに来たしずかにまで笑われる始末。そして夜中、ドラキュラがあまりに怖くて一人でトイレに行けなくなってしまったのび太はドラえもんをたたき起こす。やむを得ずドラえもんは「ドラキュラセット」を出し、のび太からドラキュラの記憶を吸い取る。これは人の記憶を吸い取ることが出来るのだ。トイレを済ませたのび太はみんなに昼間のことを忘れてもらおうと、ドラキュラセットを使ってみんなの記憶を吸い取る。だがジャイアンはニンニク入りのギョウザを食べていたためにうまくかみつくことが出来ず、自分で歯を磨いて何とか吸い取った。だが調子に乗ったのび太は翌日も怒っている先生やママの記憶を吸い取って、さらにはどんな悪いことをしてもこれで記憶を吸い取ろうとまで言い出す。それを聞いたドラえもんは取り返そうとするが逃げられ、その際にドアに顔をぶつけてしまう。のび太はドラえもんから道具を貸した記憶を消そうと考え、ドラキュラになって近づくが、その時振り向いたドラえもんの顔には、先程の怪我のためのバンソウコウが十字架状に貼られていたためにのび太は気絶してしまう。その隙にドラえもんは道具の記憶をのび太から吸い取ってしまうのであった。  

 (解説)「ドラキュラ」の設定をうまくかみ合わせた、楽しく笑える話です。冒頭の裸足で逃げるのび太や、何故かバンソウコウを十字架状に貼っている(オチのためといえばそれまでですが)ドラがなんかおかしいですね。のび太も「カミナリだいこ」の時のようにドブに落ちたりはしませんでしたが(笑)。個人的に好きなのはしずかが靴を届けに来た時の、のぞき込むのび太の図。あまりにも情けなくて笑えます。
ハッピープロムナード   8頁 小五80年3月号
 テストで0点を取ったために家に入りづらいのび太はしずかの家へ向かうが、しずかはテストで85点しか取れなくてママに叱られたという話を聞いて、よけいに心が暗くなってしまったのび太。更に家にやたら暗いセールスマンが百科事典を売り付けに来たため、よけいにのび太は暗くなってしまう。その様子を憂えたドラえもんは「ハッピープロムナード」を出し、その上をのび太に歩かせる。すると一歩歩くごとに楽しい気分になっていく。気分が良くなったのび太はしずかにも使ってもらおうと、上を歩かせるが、しずかは何故かよけいに暗い気分になってしまう。プロムナードを逆に歩いたために、暗い気分になってしまったのだ。改めて歩かせ、しずかを明るい気持ちにさせた二人は、更に先程のセールスマンも明るくしてしまう。そこへスネ夫に0点のことを聞いたママがやって来た。しかしママはプロムナードの上を歩いたために、明るい気分になってのび太を厳しく叱らなかった。安心して帰る三人だが、うっかりそのままプロムナードを逆に歩いてしまったため、三人とも暗い気分になってしまうのであった。

 (解説)各キャラの明るい状態と暗い状態とのギャップが面白いですね。特にセールスマン(笑)。何故かスネ夫からテストのことを聞くママも変ですが、ハンカチで涙を拭きながらのび太を叱る姿は、なんか面白いです。ドラえもんがポケットに手を突っ込んでいる時に、のび太が横目でそれを見たりと、細かい描写も光っています。
念写カメラマン   7頁 小三79年6月号(念写カメラで記念写真)
 みはらし山で撮ってきた写真を現像したのび太だが、自分が撮影したすべての写真が全然まともに写っておらず、ママに写真を催促されてのび太は困り果てる。仕方なくドラえもんは、心に思ったことを写真に写し出せる「念写カメラ」を取り出した。早速撮影するのび太だが、思い出し方がいい加減なため、ちぐはぐな写真が出来上がってしまう。性格に思い出して服装までは合わせたものの、さすがに背景まで細かく思い出すことは出来ず、以前みはらし山に行ったしずかに写真を見せてもらうことにする。しずかの家に向かったのび太は、テレビで見ている舞台劇に出てみたいというしずかの希望をカメラで叶えてやり、みはらし山の写真を借りる。その帰り道でスネ夫のラジコンをジャイアンが壊したのを見かけ、証拠にとカメラでその時の状況を写し出す。帰ってきたのび太は早速念写を行ってママに写真を見せるが、その写真には撮影者ののび太の姿まで入ってしまっており、不思議がるママであった。  

 (解説)念写が出来る道具ですか。「エスパー魔美」の影響かしら(笑)?でも「まねコン」に登場ののび枝よりはましかな(大笑)。写真を撮るために奔走するのび太の姿がユーモラスに描かれていますね。ラストページの『ママがまだかって。』のセリフの時のドラの指づかいが個人的にウケました。
ママをたずねて三千キロじょう   9頁 小一80年3月号(ママをたずねて三千キロぐすり)
 今日もママに叱られ、逃げるのび太は、ママに会いたくないと言い出す。それを聞いたドラえもんは、一粒飲むと三百メートル歩かないとママに出会えない「ママをたずねて三千キロじょう」を出した。これを飲むと、ママは何か理由が入ってのび太の所に来ることが出来なくなってしまう。だがのび太は余計にも自分からわざわざ会いに行き、結局叱られてしまう。うんざりしたのび太は薬を一万粒全部飲みほしてしまう。三千キロ歩かなければママに会うことが出来ないというドラえもんに、そんなはずはないとから笑いしながらも、ママの様子を見に行くのび太。しかししずかやジャイアン達がやってきたりして、なかなかママの姿を確認できず、その間にもママはいなくなってしまっていた。あちこち歩いてもママは見つからず、公開してママに会いたいと泣き叫ぶのび太。その時ドラえもんは名案を思いついた。どこでもドアで千五百キロ離れた所まで行って戻ってくれば、三千キロ歩いたことになるというのだ。その通りに実行してようやくママに会えたのび太は、感極まって抱きつくのであった。  

 (解説)掲載誌の問題もあるのでしょうが、この話は純粋に「子供の親への思い」を描いています。普段は怒られたりして嫌なことがあっても、やはり母親が恋しいのも事実であり、それは人間が本来持っている自然な感情であると思います。それをギャグテイストでさらっと描いている作品になっており、その構成には好感が持てます。これとは反対、つまり「親の子への思い」を表したのが「のび太のなが〜い家出」ですね。
まねコン   14頁 てれびくん79年12月号(まねラジコン)
 今シーズンの野球成績が最下位だったのはみんながたるんでいるからだとして、ジャイアンは足腰を鍛えるためにマラソンで町内十周を始め、ビリになった人間を殴ると言い出す。当然ビリはのび太だったためにのび太は殴られ、話を聞いたドラえもんはさすがに乱暴だとして、「まねラジコン」を出した。受信機を体のどこかにくっつけて送信機を真似したい相手につけると、その人の行動通りに体が勝手に動くのだ。翌日、送信機をジャイアンに取り付けたのび太は、様子を見に来たドラえもんと共に快適に走る。だがビリのスネ夫をジャイアンが殴るのにあわせて、のび太は近くにいたドラえもんを殴ってしまう。受信機のスイッチを切ったのび太は、これから宿題をやるというしずかに出会い、しずかに送信機をくっつけてタイミングをあわせて勉強をはじめる。しかししずかが参考書を取りに行く時の動きにあわせて壁に頭をぶつけた際に、頭に着けている受信機のスイッチが壊れてしまい、拘束から解除できなくなってしまった。宿題を終えたのび太は昼寝しようとするが、しずかに動かされるまま、ママやいとこののび枝の前でお風呂にはいるため服を脱ぎはじめてしまう。その時送信機に気づいたしずかが機械をはずしたために解放されたのび太は送信機を取り戻しに行くが、送信機が犬にくっついたために犬のような行動をとってしまう。のび太はドラえもんに頼み込み、送信機をつけた犬を探し出してもらった。お礼にドラやきをご馳走するのび太だが、ドラえもんから何故受信機をはずさなかったのかと聞かれ、『教えてくれればよかったのに!!』と怒るのであった。  

 (解説)いつものドラ世界を逆手に取ったラストのオチと言い、佐倉魔美プラスのび太ののび枝と言い、なんか今話はマニアックに笑える箇所が多いですね。今話の「道具乱用によるしっぺ返し」は通常よりもきつい気がしますが、それもまた楽しいですね。でもいくら相手の通りに動くと言っても、激しい運動をすればそれなりに疲れると思うのですが、どうなんでしょうか?
サンタメール   21頁 小五79年12月号
 クリスマスの前日、パパから偉い人の本をもらってがっかりするのび太だが、徹夜の麻雀大会があるために前日に渡したという話を聞いて余計にがっかりしてしまう。小さい頃、サンタが来るのを待っていたような楽しい日々は戻ってこないと遠い目をするのび太に、ドラえもんは「サンタメール」を出す。これを使ってサンタに手紙を書くと、サンタがクリスマスの夜にプレゼントを持ってきてくれると言うのだ。最初こそ信じないのび太だが、思い直してドラえもんに内緒でメールを出す。そして夜、気になって眠れないのび太の下にサンタが現れ、ラジコンを渡していった。喜ぶのび太はみんなにも喜んでもらおうと、タイムマシンでクリスマス前日に戻って残りのサンタメールをジャイアン達や子供たちに配る。しかし当日になってもサンタは来なかったようで、のび太はドラえもんに文句を言おうとするが、逆にドラえもんからメールを勝手に使ったことで怒られてしまう。切手が貼っていないので送ることが出来ず、ドラえもんはのび太のために高額の切手を一枚だけ買ってきていたのだ。サンタメールとは22世紀のデパートへおもちゃを注文するハガキで、イブの夜に北極の配送センターからサンタロボットがプレゼントを配る仕組みなのだ。困り果てるのび太だがドラえもんは責任は自分でとれと冷たく突き放す。決心したのび太は夜遅くまで町中を歩いて古いおもちゃをかき集め、タイムふろしきで新品に変える。その姿を見たドラえもんも協力を申し出、デパートなどのおもちゃをフエルミラーでコピーして持ってきた。タイムマシンでイブの夜の北極に向かい、そこから「トナカイロケット」でプレゼントを配りに出発する二人。通り抜けフープでそれぞれの家へプレゼントを配るのび太は、次第にくたびれながらもプレゼントを配り続け、寝ているジャイアンやスネ夫をたたき起こして無理やりお礼を言わせてしまう。そしてようやくプレゼントを配り終えた二人は帰路につく。ところが翌日、しずか達はやって来たのび太のことを夢だと思っており、それを聞いたのび太は「夢のない世の中になった」とぼやくのであった。  

 (解説)「夢」。多少の異論もあると思いますが、「ドラえもん」という作品は夢を与えてくれるマンガです。そしてその夢を一番純粋に信じているのは他でもない、子供たちです。それはサンタクロースに関してもまた然りだと思います。もちろんサンタなどいるはずはない。それはいつかわかることですが、それでも子供たちは純粋にサンタという夢を信じます。今話ではのび太とドラえもん、二人の小さな善意がその夢を叶えています。夢を叶える優しい心。それをいつまでも持ち続けることが一番大切であり、作者の望んでいたことでもあると思います。「夢」を与えるマンガがサンタの「夢」を叶えてくれる。今話では二重の夢を叶えているような気がします。もちろんドラらしいギャグやオチもありますが、今話で一番心に留めておきたいことは、やはりこの作品のテーマだと思います。
精霊よびだしうでわ   11頁 小三80年3月号
 ストーブの灯油がなくなったため、野比家は当分ストーブを受けられなくなってしまった。寒がるドラえもんは万物に宿る精霊を具象化できる「精霊よびだしうでわ」を使って火の精を呼ぶが、火の精はカーテンを燃やそうとして騒ぎを起こす。しかし一階でパパがタバコの火を消すと同時に精も消えた。近くにその物がないと具象化していられないのだ。外では雪が降ってきたためドラえもんは布団に入り、のび太はせっかくだからと腕輪をつけて空き地へ向かう。だがのび太が『このひどい寒さは雪のせいだな。』と呟いて腕をこすったとき、こすれた腕輪から「雪の精」が出てきた。雪の精に頼んで雪をたくさん降らせてもらったのび太は二人で楽しく遊び、のび太に雪をぶつけるジャイアン達を追い払ってもらう。そこへストーブがついたとドラえもんが知らせに来るが、雪の精がいることを知って大変なことになるとささやく。しかし精によってドラえもんは吹き飛ばされ、二人は吹雪に乗って空を飛ぶ。精は雪がなくなると消えてしまうので春を来させないと言うが、時間が遅くなったのでのび太は家に帰る。だが家についた途端、のび太は熱を出して寝込んでしまった。しかし大雪のために医者も家まで来ることが出来ないという。その夜、眠るのび太の横に雪の精が現れ、のび太の熱を吸い取りはじめた。熱を吸い取れば自分が消えてしまうのを承知の上で、雪の精は好きなのび太のために熱を吸い取っていく。そんな精に、のび太も一緒に遊んでいて楽しかったと話すのだった。そして朝、のび太の熱も下がり大雪も嘘のように消えていた。やがて来る春の風を感じながら、のび太は遠い空を見上げるのだった。  

 (解説)「冬」という季節を人間にしてしまうと言う、F先生ならではの擬人法で、季節の移り変わりを優しく、情緒豊かに描いています。ラスト、のび太のために熱を吸い取って消えていく雪の精には一抹の寂しさと共に、これが永遠の別れではないことを示唆しているような気もします。これが「鉄人兵団」のクライマックスの原点、と言ったら言い過ぎでしょうか?そして最後のコマ、表情少なく静かに空を見上げるのび太の姿が、またたまらなく良いです。蛇足ではありますが、今話のアニメ版もアニメ独自の解釈を加えた名編に仕上がっていることを付け加えておきます。



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