てんとう虫コミックス第22巻


メカ・メーカー   12頁 てれびくん80年4月号
 紙に自分の考えた戦艦を書いて想像を膨らませるのび太。実際に作ってみたいと話すのび太にドラえもんは「メカ・メーカー」を出す。この中に設計図と材料を入れれば、本物を作ることが出来るのだ。早速作り損ないのプラモデルを原料にして、自分の戦艦を作る二人。それを自慢されてうらやましがったスネ夫はドラえもんからメカ・メーカーを借り、本格的な設計図とプラモデルやそのほかのプラスチック製品を材料として、巨大戦艦「ジャイアントスネオ号」を作り出してしまう。二人は遊んでいるのび太たちを襲い、のび太の戦艦を壊してしまう。悔しがる二人は仕返しをしようと、ドラえもんは機械を取り戻しに行き、のび太は紙を貼り繋げて大きな設計図を作る。だがへたくそな絵はそのままなので、「設計機」にかけて図面を清書し、さらに材料の鉄を集めるために奔走する。そして捨てられてある自動車を見つけた二人はこれを「スッパリぼうちょう」で砕き、超巨大戦艦を完成させる。やって来たのび太の戦艦にはスネ夫たちの攻撃も通じず、秘密基地の土管も壊されてしまうのであった。だが後日、あの車の持ち主が現れて、車返してほしいと訴えてきたので、二人は戦艦をそのままプレゼントするのであった。  

 (解説)今話も子供のみならず、人の持つ夢をストレートに叶えているという、ドラ世界の王道的なストーリーです。のびドラとジャイスネとのパワーアップ合戦は「ラジコン大海戦」も想起させますが、やはりこういった構図は魅力的ですね。のび太の最初の戦艦の砲撃で、顔を黒こげにしてしまうパパは、相変わらず損な役回りです(笑)。
カチカチカメラ   7頁 小二80年9月号
 のび太が必死に何かを応援しているのを見かけるドラえもん。のび太は、いつも黒ネコにいじめられているという白ネコを応援しているのだった。ドラえもんは白ネコを勝たせるために「カチカチカメラ」を出した。これに勝たせたい相手を吹き込んでからカメラで写すと、そのカメラに写ったとおりに勝つことが出来るのだ。これで白ネコを勝たせた二人は喜んで家に戻ってくるが、そこではパパが不機嫌な表情でテレビを見ていた。野球中継でジャイアンツが負けているためだ。不機嫌な時のとばっちりを避けるため、のび太はカメラを使ってジャイアンツを勝たせ、喜ぶパパは二人に小遣いをくれた。のび太はこれを使ってジャイアン達を負かそうと思いつき、空き地にカメラをセットして、二人に相撲を申し込む。しかし何故かのび太は二人に勝つことが出来ない。一緒に見ていたしずかがカメラをいじって向きを変えてしまっていたのだ。改めて勝負しようとするのび太だが、ジャイアン達には相手にされない。だがよそ見をしていたその時、ジャイアン達は不良学生にぶつかって絡まれてしまう。焦るのび太だが不良が空き地にやってきたのを見て安心し、カメラの力で不良たちをやっつけるのだった。  

 (解説)流れで言えば「黒おびのび太」と同じ展開ですが、「黒おび〜」の方は、ブラックベルトをつけたのび太が起こす騒動も重要視しているのに対し、こちらはラストのオチだけで引っ張っている感があるので、多少のパワーダウンは否めません。ですが、道具の面白さを十分に引き出している話でもあります。空き地にセットされたカメラを勝手にいじるしずか。結構好奇心があるようで。
出木杉グッスリ作戦   10頁 小三80年10月号(グッスリまくらでひと休み)
 今日も出木杉はテストで百点を取り、宿題もきちんとやってきた。先生はそれをみんなにも見習わせようと、たっぷりと宿題を出してしまう。出木杉を敵視するのび太たち三人は、出木杉を今日の野球の試合に誘い、疲れさせて宿題が出来ないようにしようと作戦を立てる。ところが出木杉は嫌がるどころか自分から率先してチームを引っ張り、攻守共に大活躍してしまう。その無敵ぶりを見て諦めたジャイアン達は、出木杉を怠けさせる役目をのび太に押しつけてしまう。ドラえもんはもちろん反対するが、その時の騒ぎで、徹夜のために眠っていないパパが起きてしまった。ドラえもんはパパのために「グッスリまくら」を出した。一番近くの人を強制的に眠らせるこの道具でパパは眠りにつくが、のび太はこれで出木杉を眠らせることを思い立ち、止めようとするドラえもんやママ、さらにジャイアンまで眠らせてしまう。出木杉の部屋にまくらを放り込むが、落ちた場所が出木杉から離れてしまったために出木杉は眠らず、間の悪いことにその時スネ夫が訪ねてきたためにスネ夫が眠ってしまう。出木杉が外へ放り出したために壊れたまくらを拾うのび太だが、そこからは目覚まし電波が出ていたために、のび太は眠れなくなってしまう。野比家の人間は全員眠っているためにご飯も食べられず、気を紛らすためにのび太は宿題をするが、結果的に全部宿題をやったために、翌日「全部やって来た」という行為を先生に誉められ、そのためにジャイアン達にまたいじめられてしまうのであった。  

 (解説)この時期登場したばかりの新キャラ・出木杉の無敵ぶりを描いている今話ですが、それでも出木杉本人には全く嫌みな部分がないため、余計に無敵ぶりが際だっています。それを受けて、珍しくのび太まで混ざって悪だくみを考える冒頭の三人も面白い図となっていますね。さらに最初は出木杉を怠けさせようと荷担していたくせに、すぐに出木杉に宿題を聞きに行くというスネ夫の変わり身の早さも注目点ですね(笑)。冒頭とラストが見事に伏線で繋がっている、構成の巧みさも窺えます。
しつけキャンディー   10頁 小六79年5月号(しつけキャンデー)
 スネ夫に案内されてのび太達がスネ夫の家に行くと、そこには御年93才のスネ夫のひいおばあちゃんがいた。おばあちゃんは「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれる」という迷信を信じており、それを聞いて四人は大笑いする。しかし話を聞いたドラえもんは、古人の考えた戒めの知恵をバカにする事に反対し、「しつけキャンディー」をおばあちゃんに舐めさせる。これは理屈の通じない幼児の教育のために使う道具で、これを舐めて「しつけ」に関する迷信を言うと、それが本当になるのだ。衛星中継でスネ夫を監視すると、スネ夫はママに叱られていたためにママの悪口を言い、おばあちゃんは悪口を言うと口が曲がると戒めるが、信じないスネ夫がもっと悪口を言うと本当に口が曲がってしまった。ショックを受けたスネ夫は絵を描き始めるが、イライラして画材を捨ててしまう。そこにおばあちゃんが、無駄遣いすると物が泣くと言ったために、画材は本当に泣き始めてしまい、さらにご飯を食べたあとすぐに横になったために、スネ夫は牛になってしまった。二人は面白がってスネ夫の家に行くが、ママはスネ夫はいないとウソをつく。すると閻魔大王が現れたためにママは失神してしまう。家に帰ったのび太は相変わらず勉強せずにテレビを見るばかり。そんなのび太をしつけようとドラえもんはキャンディーを取り出すが、それをのび太が横取りして使ったために、ドラえもんは巨大なネズミに遮られて何も言えなくなってしまうのであった。  

 (解説)これまた僕の大好きな道具「具象化鏡」の系譜に連なる、「抽象概念を具象化する道具」です。ですが今回は道具よりは、その道具に振り回されるスネ夫の様子がすべてでしょう。特に口が曲がったスネ夫は個人的に好きですね(笑)。今回限りのひいおばあちゃんも捨てがたいキャラクターです。ひいおばあちゃんの代から、骨川一族はあんな顔の形をしてるんですね。キャンディーを使って巨大なネズミを召喚?してしまうのび太のアイデアも相変わらずです。
無事故でけがをした話   8頁 小五78年1月号(タイム・マシン)
 インクびんを倒したことをママに疑われているしずかを見たのび太は、しずかの無実を証明しようとタイムマシンで過去へ飛ぶ。するとしずかの家では、会社から忘れ物をとりにパパが帰ってきており、その時にインクびんをひっくり返していた。そのことをしずか達に説明し、しずかの疑いを晴らしたのび太は一躍人気者になる。ドラえもんはタイムマシンをこのようなことに使っていると、いつか必ずしっぺ返しが来ると忠告するが、のび太は意に介さない。そこへジャイアンが調査依頼を持ち込んできた。父親をひき逃げした犯人を捕まえてほしいというのだ。早速のび太はタイムマシンで事故現場に向かい、ひき逃げした車を写真に納める。が、のび太は自分が事前に事故を食い止めればよいと考えてしまい、再び過去に戻り、ジャイアンの父親を突き飛ばすことで事故を防ぐ。しかし話を聞いたドラえもんは仰天する。タイムマシンで勝手に過去を変えることは許されず、もし行ったとしても、どこかで埋め合わせがつくというのだ。案の定、過去が変わったためにジャイアンは事故のことも知らず、逆に父親を突き飛ばしたとして、のび太を叩きのめしてしまう。自分の行為のバカらしさを痛感したのび太は、探偵ごっこをやめると、泣いて叫ぶのであった。  

 (解説)ドラ世界の根幹設定である、「過去を変える」ということから生み出されたギャグ話です。話の中でドラ自身が「過去を勝手に変えることは許されない」と言っているのに、過去を変えに来ているドラ自身は矛盾しないのかと言うことについては、以前からマニアの議論の対象になっていますが、とりあえずは、タイムパラドックスギャグの世界である今話を満喫しましょう。話自体には強烈な部分はありませんが、この次の作品が強烈なだけに止むを得ないのかも知れません。
ジャイ子の恋人=のび太   12頁 小六80年2月号
 ドラえもんと二人で町を歩くのび太が、自分を先程からつけ回している人間の気配を察知した。以前から女の子がつけ回しているというのび太の話を大笑いして否定するドラえもんだが、待ちかまえて尾行者を見てみると、なんとそれはジャイアンの妹・ジャイ子であった。だが何故ジャイ子がのび太をつけ回すのか、一向に心当たりが浮かばない二人。そこへジャイアンはのび太を訪ねてやって来た。ジャイアンは、なんとジャイ子がのび太のことを好きだと話す。ジャイ子の様子がおかしいので調べたところ、机の引き出しからのび太の写真が見つかったというのだ。ジャイアンは妹のためにのび太からデートに誘うように頼み、途中で、将来自分の弟になるかも知れないのび太をバカにしたスネ夫を殴り飛ばし、のび太をジャイ子と引き合わせる。しかし当のジャイ子にはそのような反応はなく、仕方なくのび太は帰路につく。しずかと出会い、鳩にエサをやるために家に帰ろうとするのび太の前にジャイアンが再び現れる。ジャイアンはのび太を強引に脅迫し、ジャイ子に好きだと告白させることを目論む。そのため、無理やりジャイアンに告白の練習をさせられるのび太。ウンザリしてドラえもんにすがるのび太だが、ドラえもんは、苦労して変えてきた運命がまた元に戻ってしまったと言うだけで、大して慌ててもいない様子。泣き叫ぶのび太にドラえもんは、スミをかぶると誰にでも嫌われるようになる「スカンタコ」を出し、そのスミをのび太にかぶせる。のび太はママにまで嫌われてしまうも、ジャイ子に嫌われるためにジャイアンの家に向かう。ところがそこではジャイアンが事の真相を話し出した。ジャイ子はマンガ家を目指しており、ギャグマンガを書くためにのび太をモデルにアイデアを練っていただけだと言うのだ。のび太は怒ってしずかの下に行くが、スカンタコの力でしずかにも嫌われてしまい、それを見たドラえもんは『どこまで運の悪い男なんだろう。』と呟くのであった。  

 (解説)22巻中、一番のギャグ話です。冒頭ののびドラのやりとりと言い、ジャイアンのジャイ子への屈折した?愛情と言い、全編が笑いに溢れた快作です。ジャイアンの度を超した妹想い、マンガ家志望のジャイ子と、中期以降のドラ世界を彩る設定が初めて登場した話でもあります。個人的に大好きなのは、ジャイ子への告白の練習で、土管の上に座って練習するのび太とジャイアンを見て、何故か偶然通りがかって仰天するスネ夫ですね。このさりげない雰囲気はたまらなく好きです。ドラキャラは「自分の色恋には不器用だが、他人のことには積極的」と言う構図もこの話からなんですかね(笑)。とにかく必見の話です。
ラジコンシミュレーターでぶっとばせ   10頁 小六79年4月号
 のび太が学校から帰ってくると、家の中で何故か車の音がする。不思議がるのび太が家に入ると、ラジコンのような車が走っており、階段にぶつかって転倒した。中から聞こえるドラえもんの声に従って二階へ上がると、大きな機械が部屋においてあった。これは「ラジコンシミュレーター」で、これで操作するとラジコンが動き、ラジコンが受けた衝撃もこちらに返って来るというのだ。危ないのでドラえもんはのび太にやらせるのを渋るが、仕方なく制限付きで使用を許可する。のび太は部屋の中をドライブするが、何かにつけてドラえもんはうるさく文句を言う。だが押入の中にいたネズミを見てドラえもんは逃げだし、のび太はラジコンを家の外に飛び出させる。しずかやスネ夫を驚かしたり、空き地を走ったりして楽しむのび太だが、前方に急に車が出てきたと思ったら、何かにぶつかってしまった。空き地に行ってみるとそれはジャイアンのラジコンであり、ラジコンを壊されたジャイアンはのび太をギタギタにしてしまうのであった。

 (解説)この時期ののび太は「ウヒラウヒラ」と笑うのが癖だったんですかね(笑)?それはともかく、恒例のシミュレーターものの道具ではありますが、ラジコンの受けた衝撃がそのまま返って来るというのは、ある意味リアルではありますが、物騒な道具ですね(笑)。これじゃ確かに子供にはやらせられないです。ラストでドラが『だから大けがするといったんだ。』と言うのも、結構深いオチがあるようにも思えて、奥が深い話になっています。
デビルカード   13頁 てれびくん80年5月号(デビル・カード)
 ドラえもんを探すのび太と、それから必死に逃げるドラえもん。ドラえもんはのび太の頼みをある程度予測したために出かけてしまうが、ドラえもんの予測通り、のび太はお金がほしいのであった。ふと思い立ったのび太がドラえもんの寝床を調べると、そこから妙な紙切れを見つけた。それを広げると部屋が急に暗くなり、なんと悪魔が出てきた。仰天して逃げようとするのび太だが、久々に呼ばれて喜ぶ悪魔は「デビルカード」をのび太に渡そうとする。ひと振りでカードから300円出てくるが、一回ごとに毎晩12時に身長が一ミリ減っていくのだ。悪魔のセールスと説得を受けたのび太はカードをもらい、300円出して欲しかったマンガを買ってしまう。翌日になっても外見があまり変わっていないことで調子に乗ったのび太はカードを使い、三千円も出してしまう。さらにしずか達にもお金を出してしまい、さすがに翌日はかなり背が縮んでしまった。さらにジャイアン達が壊した物の弁償金まで払う羽目になり、カードからお金を出す所を見たパパ達までもが、勝手にカードを使って大量にお金を出してしまう。訳を聞いたドラえもんは仰天するが、使ったお金の量は変えることも出来ず、悪魔に交渉してもどうにもならない。このままではのび太は消えてなくなってしまう。そして運命の午前12時。のび太の身長はどんどん縮んでいって、いつもの身長のところで止まった。ビッグライトで計算した大きさにまでのび太を大きくしておいたために難を逃れたのだが、ビッグライトがあるのなら何度でもカードを使えると言うのび太を、反省していないとドラえもんは追いかけるのであった。  

 (解説)何ともすごい設定の話ですね。なんで未来にはこんな物騒な道具があるんだ(笑)?ビッグライトの設定等、少し矛盾を感じる部分もありますが、今回はやはりカードに振り回されるのび太のリアクションを楽しむのが一番でしょう。この話のテーマって、「人間、金のことになると意地汚くなる」と言うことなんでしょうか?特筆点は、パパ達までがカードを使ってしまった時の、のび太の「驚き」の顔。「仰天」などという言葉では表現できないくらい、ものすごい顔をしています(笑)。
しあわせをよぶ青い鳥   9頁 小三79年11月号
 例によって己の不幸を嘆くのび太だが、「いつものこと」と言ってドラえもんは取り合わない。しかし泣き叫ぶのび太に仕方なくドラえもんは「『チルチルペンキ』と『ミチルあみ』」を出した。このペンキを鳥に吹き付け、青くしてから捕まえて家に持っていくと、15分の間、その人に幸せがやって来るというのだ。鳥のことでのび太は選り好みをするが、ドラえもんの迫力におされて、スズメを青い鳥にする。すると先程のび太を叱ったママが、小遣いのストップを取り下げてくれた。のび太は青い鳥でみんなも幸せにしようと出かけるが、みんな幸せそうで相手にされない。それでもテープレコーダーが壊れたというジャイアンに半ば脅迫されながらも青い鳥を捕まえに行くのび太。その途中で、法外な利息を付けられて借金取りに追われているという人に出会ったのび太は、その人のために青い鳥を捕まえようとするがうまくいかない。それでもペンキを吹き付けたと思ったら、通りがかりの男にペンキがかかってしまった。追いかけられるのび太はジャイアンの部屋にまで上がり込むが、男はどこまでも追いかけてきて、のび太はとうとう、とある汚い家に追い込まれてしまう。すると、そこは先程の男の家で、ペンキをかぶった男は借金取りだと言う。するとその男はいきなり泣き始め、自分のしたことを反省して借用書を破り捨ててしまい、ジャイアンのテープレコーダーも先程のび太が蹴飛ばしたら直ったという。そのことをドラえもんに話すと、ドラえもんは「青い借金『とり』のおかげ」と話すのであった。  

 (解説)オチに至るまでの強引さが、今話最大の見所ですね。次から次に人の家に上がり込むのび太達は、ある意味ナンセンスな構図と言えなくもありません。まあ、言葉のゴロがオチになっている話だから、別にかまわないとは思いますが。『こないとおまえがすごうく不幸になるぞ。』と、やけに遠回しの言い方をするジャイアンが面白いです。
のび太救出決死探検隊   15頁 小五80年12月号(あこがれの大冒険)
 スモールライトで小さくなったのび太を乗せたラジコンが裏山に墜落した。ドラえもんはのび太を助けに向かう。一方、大冒険の夢へと想いを馳せるジャイアンとスネ夫は、ドラえもんと会ってある考えを思いつき、しずかも連れて裏山に向かう。スネ夫は自分達も小さくなって行けば、裏山も秘境になるのではないかと言うのだ。ジャイアンに脅されて仕方なく「ガリバートンネル」を出すドラえもん。四人はのび太救出に出発するが、ゴミが捨ててあったり、絶壁を登ったり、ミミズやトカゲに襲われたりと次々に苦難が降りかかる。大きな水たまりを何とか渡りきったところで4人は雨に降られてしまい、「キャンピングカプセル」に避難して難を逃れる。雨が上がり、のび太のたき火の煙を見つけた四人はそこへ向かうが、途中でドブネズミが現れ、ドラえもんは気絶してしまう。空気砲のエネルギーもなくなり絶体絶命の四人だが、何とかのび太の下に辿り着いた四人はタイムふろしきでラジコンのエンジンを修理し、ラジコンに乗り込んでやっと脱出に成功するのであった。  

 (解説)大長編「大魔境」と同じような導入部で始まる本作は、内容的には「宇宙小戦争」の原型のようなものとなっています。この時期から藤子F先生の頭の中には「宇宙小戦争」のアイデアがあったのかも知れませんね。ラストは「宇宙開拓史」の如きタイムふろしきネタで、今話は各種の大長編の原型、または、良い所だけを抽出して完成した作品とも言えるでしょう。
タイムマシンがなくなった!!   21頁 小三80年5月号
 突如家の中に現れた竜に驚いて倒れるママ。これはのび太がドラえもんから借りた、伝説の怪物を出すことが出来る「モンスターボール」を使って出した幻だった。それに気付いたママはのび太を叱りに来るが、のび太はタイムマシンの入り口に隠れたので見つからずに済む。帰ってきたドラえもんはママに叱られた原因である、使っても後始末しないと言うことを注意するが、その時タイムマシンがなくなっていることに気付いた。先程のび太が隠れた時にブレーキをかけ忘れたのだ。ドラえもんは時間移動だけ行うことが出来る「タイムベルト」を装着し、超空間の波動を辿る「タイムセンサー」を使ってタイムマシン探索に出発する。ところが目的の年代近くで波動が途絶えたため、二人は超空間を抜け出し、現代から1866年前の時代に辿り着く。波動の方向より、空から西の方を探索する二人だがタケコプターの電池が切れてしまい、とうとう夜になって野宿することになる。すると森の動物たちが一斉に逃げ出してきた。二人が様子を見に行くと、暗闇からたくさんの目が二人を睨み付けている。驚いた二人は様々な道具を出して応戦準備を整えるが、そのために寝不足になってしまう。川に流れている箸を見つけた二人は川上に村を見つけ、ボールのことを聞きに行く。だがそこはやけに静まり返っており、中にいた人にほんやくコンニャクで話を聞くと、なんとヤマタノオロチが半年ほど前から現れ、村を荒らし回っているので、今夜その家の娘を生け贄に出すと言うのだ。
 二人は生け贄に代わってオロチを退治することを決めるが、ヤマタノオロチの名前のことで下らない口論を始めてしまう。そんな中、ヤマタノオロチが姿を現した。しかしヤマタノオロチには一切の道具が通じず、二人はどうしようもなく逃げ回る。茂みの中に隠れた二人は、そこでタイムマシンとモンスターボールを発見する。ボールはヤマタノオロチのボタンが押してあり、出現しているオロチはボールの生み出した幻だったのだ。改めてのび太のだらしなさを注意するドラえもんだが、その返りにのび太は再びヤマタノオロチの名前の話題を出し、ドラえもんに嫌がられるのであった。

 (解説)短編の割にはずいぶんスケールの大きい話となっており、タイムパラドックスを盛り込んだストーリーに弥生時代の雄大な景色が彩りとなって、読み応え十分の作品に仕上がっています。ファンには「ヤマタノオロチの名前論争」が有名なところですが、それ以外にも弥生時代についての蘊蓄をさり気なく織り交ぜている所など、物語に奥深さを持たせる要素も含まれています。伏線のはり方も巧妙ですね。
うつしっぱなしミラー   11頁 小四80年12月号
 のび太の学校に新しく転校してきたうらなりと言う少年は、暗い性格でのび太が話しかけても答えようとしない。学校から帰ってきたのび太は部屋にドラやきが置きっぱなしになっているのを見て、それを客間の方に隠してしまう。帰ってきたドラえもんは「うつしっぱなしミラー」を出してドラやきが今どこにあるかを確かめ、過去の様子も写し出して、犯人がのび太であることも突き止める。何かを写しながらボタンを押すと、ずっとそれを写し続けるのだ。何かに使おうと外に出たのび太はうらなりと出会うが、やはり彼は何も答えない。そこへ、犬に野球ボールを取られたジャイアン達がやってきた。犬を写したのび太は、犬がボールを隠したところをジャイアン達に教えてやる。次にしずかが拾ったと言う写真の持ち主を捜してみると、それはうらなりの持ち物であった。彼の父親は船員でいつも家におらず、さらに最近母親が入院してしまったという。写真を届けて喜ぶうらなりをミラーに写したのび太はもう一枚ミラーを出してもらい、さらにどこでもドアでうらなりの父親が乗っている船に向かい、父親も写して、うらなりが写っているミラーを渡す。父親との会話で元気を取り戻したうらなりは、みんなと仲良く遊ぶようになったのだった。  

 (解説)傷ついた少年の心を、道具を使って癒してあげるという、善意の物語です。このような範囲の広い物語を描けることこそが、ドラえもんという作品の真骨頂の一つだと思います。「真骨頂」がいくつもあるというのも変な話ですが(笑)。ついでに言えば、ドラえもんは「ナンセンスマンガ」であると断定している方もいると思いますが、最初期でさえも「ぺたりぐつとぺたりてぶくろ」のような、今話と同種の話が存在していることも忘れてはいけませんね。
オモイコミン   9頁 小三79年12月号(「オモイコミン」でこわいものなし!)
 部屋で寝転がるのび太。ドラえもんが話を聞くと、やるべき事はたくさんあるのだが、決まって失敗してしまうので始めから何もしないことにしたと言う。そのやる気のなさに怒ったドラえもんは、のび太に畳のへりの上を歩かせ、次にブロック塀の上を歩かせようとするが、のび太は怖がって落ちてしまう。ドラえもんは畳のへりよりも幅があるのだから、畳と思いこめばいいと「オモイコミン」という薬を飲ませる。するとのび太には塀の上が畳のようにみえてきた。思いこんだことを実感させる薬なのだ。ママに叱られても、スズメがさえずっていると思いこみ、さらに宿題さえも簡単な問題だと思いこんで終わらせてしまう。野球に向かったのび太は薬を使って攻守ともに大活躍するが、逆にジャイアンは失敗ばかりしてしまい、逆ギレしたジャイアンはのび太に殴りかかる。だがジャイアンを人形だと思いこんだのび太は圧勝し、さらにみんなにも無敵宣言をするが、その横でドラえもんが薬の残り少ないことを心配するのであった。  

 (解説)これもまた、僕の欲しい道具の一つです。なんでも思いこんだものになると言うことは、要は心の持ちようなんだ、ということを言っています。今回はあまり際だった見所はありませんが、ジャイアンの逆ギレぶりは面白く、「出木杉グッスリ作戦」では出木杉に対して怒らなかったのに、やはりのび太には怒るんだなあと、妙に納得してしまう部分もあります(笑)。
税金鳥   10頁 小四79年10月号
 立ち読みをしていて追っ払われたのび太は、自分の小遣いで10冊もマンガを買ったスネ夫を羨み、何とか平等にならないものかとドラえもんに相談する。ドラえもんは「税金鳥」という道具を出した。所持金額に応じて税金を取る道具で、それによりだいぶ公平になるというのだ。みんなはあまり乗り気ではないが、ジャイアンの鶴の一声で荷担させられる羽目になる。それぞれに税金を取られ、のび太もこんな時に限ってママやおじさんから小遣いをもらってしまったので、多額の税金を取られてしまう。だがジャイアンとスネ夫だけは税金を取られておらず、不思議がる二人が調べると、ジャイアンは町のあちこちで欲しいものを他人から横取りしているので小遣いなど必要なく、スネ夫は自分の小遣いをすべてママに渡し、その金を使って「お使い」という形でものを購入していた。上手く税金のがれをしている二人の影で、出木杉達は税金が高すぎると文句を言い始める。その時ジャイアンは偶然10円を拾ったためにそこからも税金を取られそうになり、怒って税金鳥を破壊してしまった。みんなは税金ごっこは終わりだと喜ぶのであった。  

 (解説)「借金」や「税」など、子供マンガらしからぬ言葉やテーマが出てくるのも22巻の特徴ですかね(笑)。スネ夫の脱税テクニックもなかなかのもので、将来その筋に走るのではないかと思ったりもしてしまいますね(笑)。それにしても、今話再登場ののび郎おじさんは、一体何をしにインドに行っているのだろう?
温泉ロープでいい湯だな   10頁 小四80年10月号(温泉ロープ)
 パパが会社の旅行から帰ってきた。温泉が気持ちよかったという話を聞いて、それほど気持ちいいのかと考えるのび太にドラえもんは「温泉ロープ」を出した。これを部屋に広げると、中の部分に温泉がわくのだ。ジュースを飲みながら二人で温泉を満喫したのび太が早速自慢しに出かけると、沈んだ様子のしずかに出会う。しずかの家のお風呂が壊れてしまい、さらに銭湯も休みだったのでお風呂に入ることが出来ないというのだ。温泉ロープのことを聞いたしずかは一旦躊躇するが、のび太の家にやってくる。勉強部屋ではお風呂に入る気にならないというしずかにドラえもんは立体映画でジャングルの映像を出し、しずかも我慢できずに温泉に入る。階下でテレビを見る二人だがママに宿題を強要されたために、嬉しそうに弱りながら部屋に行って勉強道具を取りに行く二人。温泉からあがったしずかは帰るが、少ししぶきがたったために部屋の一部が濡れていた。さらにしずかから話を聞いたジャイアン達までやってきて、温泉の中で大暴れしてしまう。二人がもぐりっこをしている時にママが二階に上がり込み、怒ってロープを捨ててしまう。ロープは窓から道路に投げ出され、出てきた二人は通行人の注目を浴びてしまうのであった。  

 (解説)よく考えると、取り立てて特徴があるとは思えない道具なのですが、それを使って一つの話を作ってしまうのだから、その構成の巧みさに驚かされます。オチは自業自得と言った感じですが、やはりのびドラ問答『1+1は?』『11!』を抜きにして語ることは出来ないでしょう。キャラ描写が面白い話です。
のら犬「イチ」の国   20頁 小六80年10月号(のらイヌたちを救え!!)
 のび太のあとをついてくるのら犬は、のび太を襲ってきたジャイアンを追い返してしまった。以前に一度だけエサをあげたことがあるのだが、それ以来すっかりなついてしまったのだ。仕方なくしずかの家に逃げ込むのび太は、先に来ていた出木杉から、最近発見された奇妙な遺跡についての話を聞く。だが難しい話ばかりなので早々に退散し、再び先程の犬と出会ってしまう。相談されたドラえもんはとりあえず「かべかけ犬小屋」を出して、そこに犬を住まわせる。とりあえず一日目を乗り切ったが、これからも飼っていけるのか不安がる二人。翌日、空き地で犬と遊ぶのび太は、その犬に「イチ」と言う名前を付ける。ある雨の夜、イチが鳴くので犬小屋に向かったのび太は、イチが屋根の上にいるのらネコを気にしていることに気付く。さらにだんだんママの監視も厳しくなってきて、仕方なく小遣いからエサを飼うことにするが、イチは何かを言いたげだ。「動物語ヘッドホン」で話を聞くと、いつかののらネコを一緒に飼って欲しいというのだ。のび太は金策に奔走するが、ドラえもんはついに「無料ハンバーガー製造機」を購入し、食糧問題も無事に解決した。だがそれもつかの間、ついにママに見つかってしまい、捨ててくることを強要される。
 どこでもドアで遠い山へ二匹を連れていく二人。だがそこには何故か野犬がたくさんいた。以前、保健所のオリが壊れて野犬が逃げ出していたのだ。帰ろうとする二人だが、犬たちのこれからを憂えた二人は、仕方なくスモールライトで全部小さくして、家に連れて帰る。生まれてきたのにどこにも住むことを許されない動物に同情し、無責任に動物を捨てていく人間達を憎む二人。そんなときドラえもんに名案が浮かんだ。人間などのいない大昔に連れていってやればいいと言うのだ。近所ののら犬たちも一緒に、三億年前に向かう二人。さらにハンバーガー製造機を使えるようにするため、イチを「進化放射線」で進化させ、機械の操作が出来るようにした。のび太はイチと最後の別れをして現代に戻っていった。帰ってきたのび太の耳にはイチの鳴き声が聞こえたような気がした。その後、例の遺跡が発掘されるに連れ、様々な事がわかってきたのだが、ある事を思い立ったドラえもんはのび太を連れて、イチ達をおいてきた時代から千年あとの時代へ向かう。すると、そこは大都会になっていた。ドラえもんが残してきた進化放射線の影響で、動物たちは進化したのだ。ところがその都会には誰もおらず、のび太は人を捜しに、神さまの像が奉ってある神殿に入り込む。その時ドラえもんは人を発見したが、その顔はなんとイチにそっくりだった。彼はイチの子孫で、気象の大変動を予測したためにみんな他の星へ移住したと言う。いつの日か、イチ達の子孫と人間が出会えることを夢見る二人。そして後日、神殿と思われる遺跡から出てきた神さまの彫刻の顔がのび太そっくりであることを、ジャイアン達は笑い飛ばすのであった。だが、当の二人はその事実は知らない…。  

 (解説)すごい奥深い話です。単純に考えれば、何の罪もない犬やネコを人間の都合で勝手に捨ててしまう事への作者の怒りがテーマになっていると思います。「身勝手な人間」をママのキャラに投影し、それでもその動物たちをきちんと思いやっている優しい人間の「心」をのび太に投影しています。人間の持つ優しい心をずっと信じていた藤子F先生らしい、シビアでいて優しいメッセージです。
 ですが、今話はそれだけでは終わりません。それはラストの展開。神の彫刻の顔はのび太そっくりだった。それは自分達を助けてくれたイチ達にしてみれば当然のこと。しかし当ののび太達はそれに気付かず、知っているのは出木杉達や、その他大勢の人たちだけのはず。自分達のした行為の結果がどういう風に出ているのか。結果は出ているのにも関わらず、のび太達はその結果に気付かない。この秀逸なストーリーテリングこそが、今話の真骨頂だと思います。



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