てんとう虫コミックス第23巻


本人ビデオ   9頁 てれびくん80年11月号
 教室の掃除を押しつけられ、文句を言いながらも掃除を行うのび太を見た先生はのび太を誉める。気を良くしたのび太はドラえもんに話すがドラえもんは信じず、確かめようと「本人ビデオ」を出す。時間と場所を設定してボタンを押すと、なんと先生が現れてあの時と同じようにのび太を誉めた。ビデオのように本人に同じ事をやってもらう道具なのだ。のび太は続いてママにも誉められたシーンを見せ、しずかにも見せようとするがドラえもんに反対され、ビデオでネズミを呼んで追い払ってしまう。しずかにも誉められたところを見せたのび太は、玄関から消えたと言うしずかのママの靴をビデオで探し出す。そしてスネ夫から、ジャイアンが空き缶で滑って転んだことを聞いたのび太はそれをビデオで再現し、ジャイアンに怒られてしまう。その時、曲がり角でどちらからぶつかってきたかでもめている二人の男を見かけたのび太は、ビデオでそのシーンを再現して調べようとするが、何回も繰り返したために二人はボロボロになってしまった。家に戻ったのび太はちょうど帰ってきたパパにも、先生に誉められたところを見せようとするが、時間設定を間違えたために、朝遅刻して怒られる所を再現してしまうのであった。  

 (解説)確かに面白い道具ではありますが、再生される当人にしてみれば、この上なく迷惑な道具でもあります(笑)。今話の見所は、「デデン」という擬音ですっ転ぶジャイアンと、「誉められた」とのび太が話しても信じようとしないドラとママですね。二人ののび太観を再認識させられます。
もはん手紙ペン   10頁 小六79年12月号(心をこめた手紙を書こう)
 おじさんに図鑑をもらいながらも、三ヶ月もお礼の手紙を出していないことをママに注意されたのび太は、仕方なく手紙を書き始めるが、あまりにも誠意のない手紙の書き方に呆れたドラえもんは「もはん手紙ペン」を出す。それをのび太が持つと、考えもしないのに手紙がかけてしまった。書きたいことをペンが自動的に文章にしてくれるのだ。手紙を出しに行ったのび太は出木杉と楽しそうに話しているしずかを見かけ、自分と出木杉を比べて落ち込んでしまう。ペンを使ってしずかに手紙を書くことを思いついたのび太は早速手紙を書き上げるが、年齢目盛りがずれていたために、大人のような激しい文章が出来上がってしまった。改めて子供の文章で書き直すと、ドラえもんはおろか、書いた本人ののび太でさえ感動してしまう名文が出来上がった。「超速達切手」で届いた手紙を読んだしずかも感動し、のび太の下へやって来る。万事めでたしと喜ぶドラえもんだが、手紙と本人のギャップが大きすぎて、かえって印象が悪くなってしまった。のび太は今度はずっとペンを使ったままでしずかと「会話」をするが、これから後はどうすればいいのか、考え込むドラえもんであった。  

 (解説)やけに感激屋のしずかも面白いですが、文章と会話のギャップのせいで迎えてしまうラストのオチは、今見ると結構皮肉めいた感じもしますね。面と向かい合っているのにも関わらず文章でやりとりするという姿は、今問題になっている「関係性の薄さ」を表しているような感じがしなくもありません。まあそれはともかく、しずかへの手紙の大人、子供両方のバージョンを全部読んでみたいと思うのは、僕だけではないでしょう(笑)。
おそるべき正義ロープ   10頁 小二80年5月号(せいぎロープ)
 真実を力でねじ曲げてしまうジャイアンの横暴に腹を立てたドラえもんは、悪者を許さないという正しい心を持つ蔓草のサイボーグ・「正義ロープ」を出した。外に出かけた二人は突然スネ夫に驚かされてしまうが、そのためにスネ夫はロープに縛られてしまう。効果を確認した二人はジャイアンのそばをついてまわり、車に水をかけられたジャイアンは難癖を付けてのび太に殴りかかってきた。するとロープがジャイアンを縛ってしまうが、それでもジャイアンはドラえもんを蹴っ飛ばしたため、さらに強く縛られてしまう。安心した二人だがそこへ雨が降ってきたため、雨宿りのためにしずかの家に上がり込む。その頃、家で洗濯物をしまっていたママは、正義ロープの種が入っているびんにつまずいてしまい、弾みでたくさんの種が外に飛び出し、雨を浴びて正義ロープになってしまった。たくさんのロープはウソをついたしずかを始め、町中の人たちを縛り始めた。ロープのびんの所へ急ぐ二人は近道のために立入禁止の場所を通ってしまい、自分達も縛られてしまう。それでもびんについている「ロープよびもどしボタン」を押して、すべてのロープを回収した。そのことでジャイアン達に追いかけられ、公園の芝生に隠れた二人は正義ロープを使おうとするが、二人のいる場所は立入禁止の区域だったため使うことが出来ず、困り果てる二人であった。  

 (解説)今話のテーマって、「正義の暴走」なんですかね(笑)?初期からある「融通のきかない機械」を用いてのギャグ話で、ロープが町に出ての町中での騒ぎは面白いですが、「ペコペコバッタ」何かに比べると、あっさり処理されていますね。ドラもびんを出しっぱなしにしておくなど、相変わらずの無責任ぶりを発揮しています。正義ロープは「サイボーグ」とのことですが、「サイボーグ」というのは「サイバネティック・オーガニズム」なので、あれは機械ではなく「生物」ということになりますが、どうなんでしょう(笑)?
うちでのデパート   7頁 小一80年12月号
 アニメを見たいのに自宅でテレビを見られないというしずかを家に連れて来るのび太だが、のび太の家でもテレビはパパが占領しており、自分の部屋にテレビがあるというスネ夫にしずかはついていってしまい、のび太はドラえもんにテレビを出してもらおうとするが、「ない」と言われて落ち込んでしまう。そこでドラえもんは10円を入れるとなんでも出て来ると言う「うちでのアパート」を出し、その通りにのび太がやってみると、手のひらサイズのテレビが出てきた。特別なメガネをかけることで大きく見ることが出来るのだ。テレビを見る二人だが、のび太のくしゃみでテレビは吹き飛んでしまう。のび太は10円でマンガやラジコン飛行機など様々なものを買い、しずかを部屋に招待する。驚くしずかと一緒にソファーに座ろうとするのび太だが、本来は小さいものであるために、のび太達によって一式全部、ペシャンコにつぶれてしまうのであった。  

 (解説)23巻の中では凡作かなと思います。オチに意外性がなく、あまり面白くないのが一番の理由だとは思いますが、打ち出の小槌とデパートを絡めた道具は秀逸ですね。全体的にほのぼのとした感じが印象的です。
ハッピーバースデイ・ジャイアン   9頁 小三80年6月号(ジャイアンのたん生日)
 一緒に下校するのび太としずかの下に、スネ夫が大慌てで走ってきた。ジャイアンの誕生日・6月15日が今年も巡ってきたのだ。ケーキは一人で平らげ、プレゼントが気に入らないと殴られ、歌まで聞かされるパーティーに参加しまいと、三人は去年に続いてどこかに隠れることを決める。だがその頃ドラえもんを訪ねたジャイアンは、相手の動きを止めておく「相手ストッパー」を借りていた。帰ってきたのび太から話を聞いたドラえもんは急いで逃げだそうとするが、相手ストッパーの効力で動けなくなってしまう。結局みんなジャイアンにつかまり、強引に誕生パーティーに招待されてしまう。プレゼントを準備していなかった4人は苦しいいいわけをするが、そのことはあまり気にせずジャイアンは一人でケーキを食べ、歌を歌い始める。だが4人の本心を見抜いたジャイアンは怒りだして4人を追い出してしまう。そしてその日の夜中、ドラえもんはジャイアンに呼び起こされた。人気はないと知りつつも、一年に一度の誕生日だけは祝って欲しいというジャイアンの辛い心情を聞いたドラえもんは、怒りを抑える「かんにんぶくろ」を渡し、「フリダシニモドル」で時間を三日前まで戻した。大人しくしていればみんなも祝ってくれると言うのだ。それから三日間、ジャイアンはかんにんぶくろで怒りを抑えてきたが、袋はいっぱいになってしまったので、あとは自分で我慢するようにドラえもんは話す。その時に調子に乗ったスネ夫に蹴られたジャイアンは思わず怒りだしてしまうが、ドラえもんに止められる。のび太達がジャイアンの誕生日を祝おうと話している横で、怒りを抑えるために苦しむジャイアンであった。  

 (解説)今話の見所はジャイアンの魅力に尽きるでしょう。誕生パーティーでもいつもの横暴ぶりを発揮するかと思えば、そんな自分に悩みながらもどうすることもできない人間らしさも垣間見せています。他にも台風が来たかのように騒ぐ冒頭の三人や、「もっとさわげ」と言われて「ワアワア。」と静かに呟いたり、ジャイアンのニコニコ顔を見て大口を開ける安雄&はる夫コンビなど、見所は満載です。大人しくなった途端に態度を変えるスネ夫も、スネ夫らしくていいですね。
まあまあ棒   9頁 小三81年1月号
 今日も先生やジャイアン、ママに怒られて疲れ果てるのび太。そんなのび太にドラえもんは「まあまあ棒」を出してやる。試しにママを怒らせて、まあまあ棒でその怒りを静めてしまう。棒を持って外に出たのび太は難癖をつけてきたジャイアンに使ってみて、その効果を確認する。安心したのび太はジャイアンに苦しめられているみんなを助けようと、ジャイアンが怒り出すたびにその怒りを静めてしまう。それを見たスネ夫は棒を借りていってしまう。スネ夫はわざとジャイアンを怒らせて、そのたびに怒りを静めていった。だがのび太から話を聞いたドラえもんは仰天する。あの棒は本来は怒りを「静める」のではなく、腹の中に押し込んで我慢させる道具で、やたらにため込むと、積もり積もったエネルギーが大爆発するというのだ。案の定、ジャイアンは爆発寸前だった。安全のために空き地へ誘導する二人だが、そこへまたスネ夫が現れたために二人は逃げ出すが時すでに遅く、エネルギーは大爆発を起こした。ボロボロになったジャイアンとスネ夫を見て、この凄まじいエネルギーを平和利用できないものかと語るドラえもんであった。  

 (解説)ラストのオチももちろん爆笑ものですが、そこに至るまでの過程もまた笑えますね。「出目フグ」と言われただけで息子の胸ぐらまでつかんでしまうママや、ここぞとばかりにジャイアンをからかうスネ夫がおかしいです。「目つきが気に入らない」と言いがかりをつけるジャイアンも個人的に好きですね。確かにスネ夫の目つきは個性的ですが(笑)。
おざしき水族館   12頁 てれびくん80年7月号(ミニ水族館)
 今度は海中公園の自慢をするスネ夫。それを羨んだジャイアンとしずかは、ドラえもんに連れていってもらおうとのび太に提案する。のび太が帰ってくると、ドラえもんは昼寝をしていた。尻尾をピコピコさせていることから機嫌が悪いと察したのび太は、勝手にポケットの中からどこでもドアを探そうとするが、出てくるのは「声カタマリン」「スモールライト」「手ばり」「おざしきつりぼり」「ミニ潜水艦」などばかり。思わずポケットに頭をつっこんでしまい、ドラえもんも目を覚ましてしまう。ドラえもんはこれらの道具で水族館を作ると思いこみ、のび太はそんなことを考えてはいなかったが、その考えに従って手ばりで魚を釣り始める。だが大きな魚に引っ張られてドラえもんが釣り堀に落ちてしまい、その時にポケットに水が入ってしまう。ポケットを外して乾かすドラえもんは釣り堀の海にスモールライトを当て、網を付けたミニ潜水艦で魚を集めてくる。そして水槽に魚を放し、自分達も潜水艦に乗って水槽の中に移動し、さらに縮小して様々な魚の群れに見とれる二人。だが鯨に吹き飛ばされた拍子に水槽のガラスにぶつかってしまい、潜水艦が壊れてしまう。水槽の底にまで落ちてしまった二人だが、ポケットを外しておいたために脱出も出来ず、困り果ててしまう。やって来たママに気付いてもらおうと声カタマリンで助けを求めるが、釣り堀に落ちてしまったママはそれを見ないままで部屋を出ていってしまう。部屋にあがったジャイアン達もそれには気付かず、怒ったジャイアンは水槽を釣り堀に蹴飛ばしてしまう。が、その弾みで潜水艦が元の大きさに戻り、二人も無事脱出するのであった。  

 (解説)様々な道具を使っての遊びがメインかと思いきや、のび太の言うとおり、自分の部屋の水槽の中から出ることが出来ないと言う、ドラ世界らしい展開の話になっていきます。不機嫌な時に尻尾がピコピコしていると言うのは今回限りの設定ですが、個人的には好きな設定です。ポケットにも蓋があったんですね(笑)。
勝利をよぶチアガール手ぶくろ   10頁 小三80年8月号
 スネ夫とのオセロ勝負で珍しく優位に立つのび太。しかし周りで見ている女の子がスネ夫ばかりを応援するため、結局のび太は負けてしまう。自分は誰からも応援されないとひがむのび太に、ドラえもんは「チアガール手ぶくろ」を出してやる。女の子にはめて応援してもらうと、必ず勝つことが出来るというのだ。これを持って再びスネ夫の家に行ったのび太は女の子達に手袋をつけ、自分の応援をさせ始める。圧勝したのび太だったが、女の子を帰らせたうえでスネ夫はかけっこの勝負を挑み、慌てたのび太は強引にしずかに手袋をつけさせ、何とか勝つ。さらに相撲を挑まれても難なく倒したのび太だが、スネ夫がジャイアンを呼びに行っている間に、しずかは用事のために家に帰ってしまう。現れたジャイアンから逃げるのび太は、通りがかりのおばあさんに手袋をつけ、やっとの事で勝利する。夜遅くまで遊んで楽しんだのび太だが、帰りが遅いということで、パパもママも怒っていた。のび太を激しく叱るパパだが、のび太はママに手袋をつけさせ、パパとの「勝負」に勝ってしまうのであった。  

 (解説)今回ののび太の悩みは、個人的にも非常に共感できるものがありますが(←どこかで使ったフレーズ)、今話はいろんな人たちの応援する姿が面白いですね。特に「女の人なら誰でもいい」「どんな勝負でも勝てる」という設定を生かした終盤の展開は笑えます。後は、オチに繋げるためでしょうが、ママよりも怒っているパパが珍しかったですね。
水加工用ふりかけ   11頁 てれびくん80年9月号(水ざいくで遊ぼう)
 暑い夏の日、昼寝もできないのび太がドラえもんの寝床を覗くと、ドラえもんは水でできた布団をかぶって寝ていた。ドラえもんは「水加工用ふりかけ」を使って水を布団のようにしていたのだ。水を様々な材質のものに変えられるこの道具を使って大きな家を造りたいと考えたのび太は、ドラえもんと一緒に海へ行って家を作り始める。だが水は重いので二人はくたびれてしまい、ドラえもんは「水ビル建築材」を使って自動で家を造る。ジャイアン達も誘ったのび太は、家ができるまでの間、水で船を造って競争することにする。のび太は粗末な形の船を造って出発しようとするが、自分の船のことでスネ夫がバカにしているのを聞いて作り直し始める。ジャイアンの作った戦艦でスネ夫としずかの船は沈んでしまうが、ジャイアンの船ものび太が造った潜水艦に穴を開けられてしまった。濡れてしまった服の代わりに水で服を作り、ペンキふりかけで服に色を付けた三人と共に戻ってみると、水ビルが完成していた。だが壁が水なので、太陽の光をそのまま通してしまうため、のび太はペンキふりかけで色を付けようとするが、間違えて水もどしふりかけを使ってしまったため、家も何もかも水に戻ってしまうのであった。  

 (解説)「大氷山の小さな家」に通じる、自然を使っての楽しい遊びを描いています。そもそも「水」とか「雲」と言った形のないものに形を与えるという構図もドラ世界ならではのもので、そういう意味では王道的な展開のストーリーと言えるでしょう。完成してすぐ水になってしまった水ビルや、のび太の造った船の形をズバリ言い当てるスネ夫など、随所で笑いの要素が光っています。
透視シールで大ピンチ   10頁 小六80年9月号
 出木杉としずかがノートのやりとりをしているのを見て、何をしているのか聞くのび太だが、二人は笑って答えようとしない。ふてくされて昼寝するのび太の所に、おじさんからもらったシャープペンとボールペンのお礼の手紙を出すようにママが言ってきた。適当に手紙を書いて出しに行こうとするのび太だが、宛名の「のび太」の所を「のび犬」と書いたかも知れないので確かめたいという。そこでドラえもんは「透視台」と「透視シール」を出し、シールを手紙に貼って透視台で中身を透視する。すると「大」の両方の部分に点がついていたので、構わずのび太は投函に向かう。そこであることを思いついたのび太はドラえもんから透視シールをたくさんもらう。翌日の昼休み、誰もいなくなった教室でのび太は出木杉のカバンを調べ、全部のノートにシールを貼り付ける。帰宅後、しばらくして透視台で出木杉のノートを調べるのび太。これを使って宿題を丸写ししようというのだ。だがそんな中で、のび太は出木杉としずかの交換日記帳を発見してしまう。さらにその中で自分のことを書いていることに腹を立てたのび太は、思わず透視台に落書きしてしまう。翌日、しずかが出木杉から日記を受け取ると、しずかは怒りだしてしまう。透視台に書き込まれた落書きがそのままノートにも写されていたのだ。出木杉は筆跡を年賀状の筆跡と比べることを提案し、それを聞いたのび太は何とか落書きを消そうとするが、そのチャンスもなく、ついに二人は出木杉の家に入ってしまう。だが家で開いてみると、落書きは消えていた。不思議がるのび太が家に帰ると、ドラえもんが透視台の落書きを消したところだった。二度と貸さないと怒るドラえもんに、のび太は『ぼくも、そんなもの二度とみたくない。』と呟くのであった。  

 (解説)出木杉への嫉妬と、のび太個人の出来事とを上手く絡めた展開になっています。例によって漢字を間違えるのび太も面白いですが、のび太の目の前で日記を交換しておきながら「ないしょ」と言うしずか達も面白いです(笑)。「ボールペンシル」ってなんなんだ(大笑)?後はP99でしずか達をバカにしている時ののび太の顔が面白いですね。
ぼくよりダメなやつがきた   10頁 小六80年8月号(「配役いれかえビデオ」で反省!)
 なにやら楽しそうな様子で帰ってきたのび太。転校生がきたらしいのだが、その転校生は自分よりもダメな人間で、自分よりもダメな子がいたことでのび太はうれしがっていたのだ。早速その転校生・多目くんを家に呼んだのび太は一緒に宿題を始めるが、のび太はせき立てるばかりで宿題をしようとしない。そのうち多目くんを誘って遊びに行ってしまい、かけっこをしたりして一人勝ちし、一人で悦に浸る。翌日、二人は廊下に立たされてしまうが、これからも0点をとったりして仲良くしていこうと話すのび太に反対する多目くんを見て、逆に怒りだしてしまうのび太。さらに野球に誘われた時、かわりに多目くんを推薦してしまう。そんなのび太を見かねたドラえもんは「配役いれかえビデオ」でこれまでののび太と多目くんの様子を、スネ夫とのび太に変えて見せ始めた。そして自分が多目くんにしていたことは、これまで自分がいじめっ子にされてきた事だったことを思い知ったのび太は空き地へ向かう。そこでは試合で負けた理由を多目くんのせいにしてジャイアンが殴りかかっているところだった。責任を感じたのび太は彼のかわりに自分が殴られる。後日、多目くんはまた転校することになり、仲良くなったのび太に感謝の言葉を残して去っていった。自分のしたことを回想して恥ずかしがるのび太は「穴があったら入りたい」と呟くが、その例えを真に受けたドラえもんは「即席落とし穴」を取り出し、のび太を落っことしてしまうのであった。

 (解説)弱者が強者に転じた時、弱者であった頃の気持ちを覚えておくことができるか。今話に込められたメッセージは、かなり重いものです。決して理想論ではなく、強者になった時点で弱者だった頃の自分を忘れてしまうのび太をきちんと描き、その上でのび太の反省を描いています。そのためのキーアイテムとして道具が使用されており、「ドラえもん」ならではの巧みな物語構成になっています。結構重たい雰囲気があるだけに、ラストのドラのボケは一層の笑いを誘います。最初期ドラのようなボケに違和感を感じる人もいるでしょうが、こういった相反する要素を柔軟に取り込める世界が、ドラえもんならではの世界なのだと解釈したいです。
異説クラブメンバーズバッジ   22頁 小四80年11月号(異説クラブメンバーバッジとマイク)
 裏山で深い穴を見つけたのび太としずか。のび太は地底人の出入り口だと言うが、スネ夫にバカにされて悔しがる。ドラえもんにまでバカにされて拗ねてしまったのび太に、ドラえもんは「異説クラブメンバーズバッジとマイク」を出した。マイクに同調したい考えを吹き込み、バッジをつけると、その考えが成り立っている世界に入ることができるのだ。「天動説」や「月の裏文明説」で試してみた二人は「地底空洞説」の考えに同調し、裏山の穴を入り口にして地底世界へ入り込む。ミニ太陽で明かりをつけた二人は、「透視スクリーン」で山中湖の裏を見つけ、「協力岩とかし」で水を噴出させる。さらに「インスタント植物のタネ」を巻き、「動物粘土」で地底人を作り始める。最初に作ったものこそグロテスクになってしまったが、きちんとした地底人も完成し、とりあえず家に帰る。スネ夫に見せてやりたい気持ちを抑え、その後も地底へ向かう二人。次第に地底人の数も増えて行くが、以前捨てた粘土細工が暴れはじめ、自衛策のために火の使い方なども教える二人。文明が発展したところで、満を持してスネ夫達を地底へ招待する二人。スネ夫達も驚くが、そのスネ夫達が噂を広げすぎたために、いろんな人間が集まってしまい、地底へ侵入しようとし始める。地底人の平和な生活が乱されることを危惧した二人はマイクとバッジを埋め、地底人の国をこの世界から消してしまう。スネ夫達はウソをついたとして、みんなから追い回される羽目になってしまうのであった。  

 (解説)いかにも藤子F先生らしい道具の登場です。一種の「もしもボックス」な訳ですが、新たな生物を創造するという点で、「ハロー宇宙人」などにも共通する、「創世」のテーマが込められていると思います。俗な人間達を描いているのも忘れてはならないところでしょう。まあ、後々になって本物の地底人がいることを知るわけですが(笑)。
オキテテヨカッタ   9頁 小三80年12月号
 昼寝のしすぎで眠れないのび太は暇でしょうがない。たまらずドラえもんを起こすのび太は、ドラえもんから「オキテテヨカッタ」を借りる。これを使うと昼間と同じように眠ったまま働くのだ。一応テレビを見てみるが面白いものもなく、のび太は本屋へ向かう。本屋で立ち読みをしようとするのび太だが、夜間割引で値段が10分の1になっていると聞いて喜び、商店街全部に起きてもらうことにする。いろいろ楽しむのび太はしずかも起こして一緒に映画館に行き、面白いシーンを何度も見せてもらう。たっぷり遊んだ二人だが、夜明けが近くなったのでみんな帰り、のび太も今頃になって眠ってしまった。ドラえもんはオキテテヨカッタを使ってのび太を起こし、失敗をやらかすようにし向けるが、のび太は眠っていたおかげで怒られても平気だったと話し、今夜もオキテテヨカッタを貸してくれと言い出すのであった。  

 (解説)寝たままで起こす道具も結構ありますが、それらの中では一番使い勝手のいい道具ではないでしょうか。なんといっても夜間割引がいいですね。子供の頃は真剣に欲しかったものです(笑)。商店街を自由に利用するという点では、子供だけではなく、人の持つ夢を叶えているような感じにも思えますね。ただ、個人的にはあまりにもそのまんまのネーミングがどうも…。
ぼくのまもり紙   7頁 小二80年6月号(まもり紙)
 またも色んな災難にあって帰ってきたのび太。ドラえもんにすがるのび太だが、ドラえもんは自分でしっかりしなければダメだと突き放す。だが結局のび太に負け、「まもり紙」を出す。毎日三回拝めば、拝んだ人間をあらゆる災難から守ってくれるのだ。拝んだのび太は階段から転びそうになったりドブに落ちそうになっても、紙が守ってくれるようになった。道路でキャッチボールしていたスネ夫の球が飛んできても打ち返してくれるが、逆にスネ夫にぶつかってスネ夫は怒りだしてしまう。そんなスネ夫を追い払うまもり紙を見て安心するのび太だが、ドラえもんはそれでもお説教しようとする。それを疎んじたのび太はドラえもんを追い返してしまった。今度はジャイアンをわざとバカにしてまもり紙と戦わせるが、ジャイアンの前に紙も苦戦し、心配になったのび太は援軍を呼ぼうとドラえもんの下へ向かう。ドラえもんは昼寝していたが、ポケットの中から色の違う紙をとりだして、とりあえず拝む。しかしそれを見たドラえもんは驚いて、それは拝んだ人間を不幸にする「びんぼう紙」だと話す。びんぼう紙の効力で散々な目にあうのび太は、まもり紙をやっつけたジャイアンの所へ向かい、これもやっつけてくれるよう頼むのであった。  

 (解説)言葉の語呂合わせを利用した、面白い道具が登場しました。見た目の情けなさと、のび太をきちんと守ってくれると言うそのギャップがいいですね。ページ数の都合でまもり紙の活躍が少ないのが残念です。今話で面白いのはボールにぶつかった時の、『ボールにぶつかるのは、いつものび太のやくだぞ。』というスネ夫のセリフ。読者がある程度ドラえもんの世界を知っているからこそのギャグですね。
長い長いお正月   20頁 小三80年1月号(「三倍時計ペタンコ」で長〜いお正月)
 お正月をのんびり満喫するドラえもん。だがのび太は憂鬱そうな顔だ。のび太は正月の三が日が終わってしまうのが寂しいというのだ。そこでドラえもんは「三倍時計ペタンコ」を出した。これをくっつけると、自分だけ周りに比べて三倍早く時間が進むため、一日を三日間のように感じることができるようになるのだ。周りの動きが遅く見えるため、しずかとはねつきをやっても珍しく勝ってしまう。喜んで家に帰ってくるのび太だが、時間の進み方が違うため、再びママに外へ追い出されてしまう。空き地ではジャイアン達がドラえもんに何か面白い道具を出してくれるよう頼んでいるところだった。ドラえもんはのび太のリクエストに応え、「アクションカルタ」を出す。ヒントを頼りに町中に散らばった札を集めるのだ。他のみんなも誘ってカルタを始めるが、のび太はヒントが難しくて取ることができず、しずかは先を越されてしまうと言う。そこで二人はコンビを組んで、しずかが場所を考えた後、のび太が札を取りに行くことにした。だが「にくまれっ子のシャツの下」という札が読まれ、みんな場所の見当はつきながらも手が出せない。そんな時のび太がその場所・ジャイアンのシャツの下から札を取ってしまった。怒ったジャイアンはのび太に襲いかかるが、のび太にはジャイアンの動きがスローに見えるので、簡単に攻撃をかわして勝ってしまう。ところが、「町一番のなまけ者」という札が自分のポケットにあったことで恥ずかしがる。
 ご飯を食べようとするが、時間の立ち方が違うために夕食にはほど遠い。ドラえもんは気を紛らわせるために「メリーゴーラウンドゴマ」や「たこのり」、「雲かためガス」を使っての雲の上での遊びなどをするが、それでも夕食の時間にはならず、のび太はうるさくわめき出す。仕方なくドラえもんは「3分の1時計ペタンコ」を出した。これは逆に自分の時間が周りよりも3倍遅くなるのだ。これをたくさんつければ時間がもっと早くたつと考えたのび太は、自分にいっぱい貼って、早く来年の正月が来るようにしようと言い出すのであった。  

 (解説)「道具を使っての遊び」と「道具が引き起こす騒動」を一つの話の中にまとめ上げた作品ですが、前半と後半の部分が少し遊離しているような気もします。それでも、カルタ取りで町中を走り回るのび太達の姿は、見ていてこちらも楽しくなってきます。久々に登場人物のアクティブなシーンを見た思いがしますね。たこのりをしている最中に「ゆかい、つうかい」と話すのび太は、何かのアニメに影響を受けたのでしょうか(笑)?
大あばれ、手作り巨大ロボ   21頁 小三80年2月号(巨大ロボットを組みたてよう)
 スネ夫のいとこが作ったというラジコンのロボット・グランロボを自慢するスネ夫。スネ夫はグランロボのパンチ力を試そうとのび太を実験台にしてしまう。悔しがるがロボットをほしがるのび太に、仕方なくドラえもんは「タイタニックロボ」のプラモデルを出す。勇んでのび太は作り上げるが、出来上がったのはロボットの一部であった。このプラモは全長10メートルもあり、しかも操縦ができるという。二人はどこでもドアで人里離れた山奥に向かい、残りのパーツを作り始めた。とりあえず下半身を完成させて一日目を終えたが、翌日のび太は居残りさせられ、ロボのことを忘れて勉強しようと考えるが、今度はグランロボにキックをされてしまい、そのことを忘れてロボの製作に取りかかる。だが結局頭部だけは完成せずに、明日に持ち越しとなった。翌日も残されたのび太だが、スネ夫達がまた自分を実験台にしようとしていることを知り、ドラえもんがいないにも関わらずロボの製作に取りかかる。完成したタイタニックロボに乗り込んだのび太はスネ夫のグランロボと決闘に向かい、グランロボは叶うはずもなく、タイタニックロボの一撃でペシャンコになってしまった。ロボを降りたのび太は帰ろうとするが、その時、ロボが勝手に動き出し始めた。戻ってきたドラえもんと共に操縦室へ入ってみると、コントロール装置を誤って作ってしまったことがわかる。とりあえずロボに空を飛ばせるが、このままだと10時間ずっと空を飛ばせなければならない。困り果てる二人だが、その時吹雪の中で倒れている子供たちを見つけた二人は、ロボで彼らを家まで送っていく。毎日山を越えて学校に行くため、三時間も歩かなければならないと言う。そこで二人は、ロボにトンネルを掘らせることを思いつく。ちょうどロボが穴を掘り終えたところで電池も切れ、二人は家へ帰ったが、ママに勉強するように怒られ、ロボが動くうちに学校を壊しておけば良かったとぼやくのび太であった。  

 (解説)子供のプラモづくりもここまで来ると大したものです(笑)。いつものようにスネ夫への対抗心から話が始まり、終盤の美談的展開、そしてラストののび太の呟きと、様々な要素を織り交ぜた「幕の内弁当」的な豪華な作りとなりましたね。タイタニックロボもドラ世界には珍しい「リアルなロボット」タイプのもので、一見の価値アリです。



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