てんとう虫コミックス第25巻


のび太のなが〜い家出   10頁 小三81年4月号
 ママと大ゲンカをしたのび太は、その勢いに任せて、とうとう家出を決意してしまう。ドラえもんもとりあえず家出したのび太を放っておくことにするが、すぐに戻ってきたのび太を見て、やはり呆れ返ってしまい、さらにのび太が6時頃にまで家に帰りたいので、少しいなくなっただけでママが心配する道具が欲しいと言い出したので、さらに呆れ返ってしまう。それでもドラえもんは「時間ナガナガ光線」を出した。この光線を浴びると10分が一時間に感じられるのだ。ママに光線を浴びせたのび太は安心して家出する。行く先がないのび太はジャイアンと会うが、家出の話を聞いたジャイアンは痛く感動し、スネ夫と共にのび太の家出に協力することにする。とりあえずジャイアンの部屋に居候させてもらうことになったのび太は、ママの様子を見に家を覗きに行くが、ママはまだ慌ててはいない。ドラえもんから衛星テレビを借りたのび太はそれを使ってママの様子を観察する。そして一時間が経ち、ママはのび太の身を案じ始めた。だがパパにも警察にも相手にされず、ついにママは怒りだしてしまう。それを見て怖がったのび太は家に帰ろうとするが、ジャイアンに止められ、家出を強制されてしまう。一心にのび太の身を心配するママを見かねたドラえもんは、のび太やジャイアンを説得し、のび太は家に帰る。帰ってきたのび太を嬉しさのあまり抱きしめるママを見たパパが不思議そうにドラえもんに尋ねると、『のび太が三時間ぶりに帰ってきたの。』と説明するのであった。  

 (解説)「親の子供への想い」がテーマだとは思いますが、今話はどちらかと言えば笑い重視ですね。一人で深刻になっていくママと周囲とのギャップもそうですが、やはりラストのセリフに代表されるように、全編に渡って冷静なドラが一番でしょう。冒頭でのび太が家出をする時の無表情さは面白いです。意外に親切なジャイスネにも注目ですね。
円ピツで大金持ち   10頁 てれびくん81年4月号(円ピツ)
 パパに小遣いをせびるのび太。パパは肩たたきのアルバイトをすれば小遣いをやろうと言うが、面倒がるのび太は断り、それでもお金をほしがろうとする。頼み込まれたドラえもんはのび太を説得しようとするが、のび太は聞く耳を持たない。そこでドラえもんは、紙に金額を書くとそれがお金になる「円ピツ」を出した。のび太は早速それでマンガを買おうとするが、一応ドラえもんに、道具を使うことでのデメリットについて尋ねるが、何もないと聞いて喜んで本を買いに行く。そんなのび太を、下心のある顔で見送るドラえもん。のび太は首尾よくマンガを買えたことで調子に乗って、様々なものを買い始めてしまう。一旦家に戻ったのび太の荷物を見たドラえもんは仰天し、大慌てでのび太の下に急ぐ。しずかに高いブローチを買ってやったのび太は、次に出会ったジャイアンにホットドッグをおごり、さらに毎月千円を払う条件で、自分の用心棒になるよう頼み込む。のび太にボールをぶつけたためにジャイアンに狙われたスネ夫は、のび太以上の金額を支払おうとするが、のび太は更に五千円もの金額を支払うと言いだし、ジャイアンはスネ夫をギタギタにしてしまう。スネ夫からその話を聞いたドラえもんは更に慌ててのび太の下に急ぐ。あの円ピツは実は「アルバイト料さきばらい円ピツ」で、書いた金額の分だけ働いて返さなくてはならないのだ。自分がエラーをしても怒らないことを条件に、ジャイアンズのホームグラウンド用の土地を買うために不動産屋に向かうのび太を寸手の所で止めたドラえもんは事情を話すが、そこへ先程の本屋を皮切りに、様々な店の人がのび太にアルバイトを要求してきた。宿題があるというのび太のために、結局ドラえもんが代わりに働くことになってしまうのであった。  

 (解説)それにしても、のび太の金の使い道はメチャメチャですね。欲しいものを買うのはわかりますが、「エラーや三振をしても怒らない」ことを条件にグラウンドを買おうとするなんて、凄まじいというか何というか。現実の「浪費家」達のことを、少しだけ皮肉っている面も見られます。何もしていないのにのび太の尻拭いをさせられる今話のドラはかわいそうですね(笑)。
四次元ポケットにスペアがあったのだ   10頁 小四81年10月号(四次元ポケットのスペア)
 四次元ポケットを洗濯するドラえもん。肝心なときに使えなかったら困ると文句を言うのび太だが、ドラえもんは「スペアポケット」を見せる。二つのポケットは繋がっており、どちらからでも自由に中身を取り出すことが出来るのだ。それを聞いたのび太はドラえもんが出かけたスキにポケットをドライヤーで乾かし、自分につけてしまう。遊びに行こうとするがママに止められたため、宿題を終わらせる道具を出そうとする。すると中身が繋がっているため、メスネコと話していたドラえもんはくすぐったくて笑ってしまう。のび太が出したのはどこでもドアだった。とりあえず行ってみると先生の家に出てしまい、先生の監視の下で宿題をさせられてしまう。とりあえず宿題を終わらせるのび太だったが、今度はママにゴミを捨てるよう言われてしまい、量の多さにウンザリしたのび太はどこでもドアで適当な所に放り出してしまう。ドアを閉まってしずかを呼ぶための道具を出そうとするのび太。メスネコの身の上話を聞いていたドラえもんはその時にまた笑ってしまい、ネコを怒らせてしまう。のび太は「とりよせバッグ」でしずかを呼び寄せるが、そこへスネ夫が、人気絶頂のタレント・田野金平のサインを自慢しにやってくる。張り合うのび太は自分達もサインを貰いに行こうと、巨大な円盤を出してしまう。しかもその時にまたくすぐったくなってしまい、ドラえもんはまたネコを怒らせてしまった。田野金平の家についた2人は「オールマイティパス」で家に入りサインを貰うが、田野金平はどこからか持ち込まれたというゴミの山に悩んでいた。先程どこでもドアで捨てたものだと察したのび太はポケットの中にゴミを突っ込んでしまう。一方のドラえもんはネコのごきげんをとるためにプレゼントを出そうとするが、出てくるのはゴミばかりで、とうとうメスネコに嫌われてしまう。のび太の仕業と気付いたドラえもんは急いで家に帰ってくるが、のび太はポケットを残して姿を消してしまう。また汚れてしまったポケットを洗おうと、ドラえもんは洗濯機の中に放り込むが、その中からのび太の悲鳴が。のび太はポケットの中に隠れていたために、びしょぬれになり、目を回してしまうのであった。  

 (解説)スペアポケットの記念すべき初登場話です。のび太がドラの道具を使っても何故か失敗してしまうのは、のび太自身のせいであることが今話で判明しました(笑)。お馴染みの道具がいくつも出てくるのも嬉しいですが、やはり今話は「口説くドラ」が一番ではないでしょうか。そりゃ、メスを口説いてる最中に邪魔が入れば、だれだって怒るよな…(笑)。
のび太のスペースシャトル   20頁 小三81年6月号
 おやつも食べずに工作に夢中になっているのび太。のび太が作ったのはスペースシャトルの紙細工だった。バカにするジャイアン達だが、紙細工は実際に空を飛んだ。中に風船が入っていて、その噴射で空を飛ぶという仕掛けを知ったジャイアンはもっと飛ばそうと空気をたくさん入れ、風船が割れてしまう。泣きわめくのび太を慰めるドラえもんだが、いつかこれの大きいものをつくって宇宙へ行くという話を聞いて思わず笑ってしまい、のび太はすねてしまう。そこでドラえもんは「ロケットストロー」を出した。これを使って息を吹くとロケット噴射並みの力を出すことが出来るのだ。吹きすぎて天井にぶつかったり、パパを吹き飛ばしてしまったりしながらも、のび太は外へ遊びに行く。そこへ野球ボールが飛んでくるが、息を吹いてボールを飛ばしてしまい、更に文句を言うジャイアンも飛ばし、空を飛んでその場を去る。しかしその時のみんなの様子があまりに面白かったために、のび太は思わず笑い出して落っこちてしまう。すんでの所でのび太を止めたドラえもんはストローを取り上げようとするが、嫌がるのび太に吹き飛ばされてしまい、2人の吹き飛ばしあいが始まってしまう。その中にしずかと出木杉も巻き込まれてしまうが、話を聞いた出木杉はこれを使って本物のロケットを作ろうと言い出す。紙で作ったロケットを「材質変換機」で鉄にし、コントロールパネルも取り付け、完成したロケットで飛行を開始する四人。とりあえず裏山に向かうロケットを見かけたジャイアンとスネ夫はこっそり後を付ける。裏山についたものの文句を言うのび太にドラえもんは「宇宙探検ごっこヘルメット」を出し、本物の宇宙旅行のような気分を味わわせる。宇宙人の街や、先生の宇宙人と話したりして遊ぶ四人だが、そのスキにジャイアン達はロケットをのっとってしまった。追いかける四人を振り切ろうと目一杯息を吹くジャイアンだが、勢い余って鼻水が出てしまって吹き込み口が詰まってしまい、そのまま墜落してしまう。それを見たドラえもんは『宇宙旅行は危険だねえ。』と呟くのであった。  

 (解説)子供の工作レベルでロケットを作ってしまうという、その発想の大胆さが「ドラらしさ」を醸し出している、ドラの面白さの神髄を味わえる一編です。今話に限り、『学校のうら山だもの。』と妙に冷静なのび太にも注目するべきかも知れません。ただ、今話では既に「登場済み」扱いの「材質変換機」は、同じコミックスのあとの方に掲載されているだけに、もう少し収録の仕方を考えてくれればよかったと思います。
ヘソリンガスでしあわせに   13頁 てれびくん79年10月号(ヘソリンスタンド)
 例によって例の如く、嫌なことがいっぺんに我が身に降りかかって、ゲンナリしてしまうのび太。見かねたドラえもんは何かを出そうとするが、その途中でやめてしまう。だがのび太に圧されて結局「ヘソリンスタンド」を出してしまう。ヘソからこのガスを送り込むと、心や体の痛みを消すことが出来るのだ。次第に幸せな気分になってきたのび太は、ママに叱られても転んでも痛みを感じなくなった。そのまま外に出たのび太は、ジャイアンに殴られているスネ夫を見かけるが、笑いながら見つめるその態度に怒ったスネ夫はのび太を蹴り飛ばしてしまう。しかしのび太は痛みを感じない。更にジャイアン達が殴っても、車に跳ねられても痛がらないのび太を見て不思議がる二人だが、30分間の効き目が切れて痛みを感じるようになってきたのび太は家に戻ってガスを注入するが、それを見たジャイアン達はスタンドを空き地に持ち出してしまう。ガスを注入した二人は互いを殴りっこしながら去っていき、のび太は通りがかったしずか達にガスを注入する。そこへ、噂を聞きつけた大勢の子供たちがガスを注入しにやってきた。使用量としてお金まで取り始めてしまうジャイアン達を見咎めることなく、のび太は家に帰るが、やって来たドラえもんは事の次第を聞いて仰天する。だが心と体の「痛み」の大切さを話しても今ののび太には通じない。だがガスの効き目が切れてガスの恐ろしさを知ったのび太はドラえもんと一緒にスタンドを取り戻しに行くが、ジャイアンに追い払われてしまう。ジャイアンの母ちゃん達に注意してもらっても効果がない。そんな時、スタンドのガスが切れたので、ある作戦を思いついたドラえもんはガスを入れる。このガスは大げさに感じるガスであり、ジャイアン達は雨の粒を浴びただけで痛がってしまうのであった。  

 (解説)ナンセンスというか、今話はA先生並みのブラックな味わいさえ感じられますね。特にジャイアンがスネ夫をバットで思いっきり殴り、気絶してしまったことをのび太が笑いながら驚くなんていうところは、その最たるものでしょう。しかしドラも、そんな恐ろしいガスならちゃんと閉まっておけばいいのに(笑)。オチに出てきた「大げさに感じるガス」と言うのも、それはそれで危険な代物だと思いますが。
な、なんと!!のび太が百点とった!!10頁 小六81年5月号(のび太の100点ピーアール)
 その日戻ってきたテストの答案を何度も見返すのび太。そのテストの点数は「百点」となっていたためだ。信じられないのび太は先生に確かめに行くが、やはり本当に百点であった。喜ぶのび太はみんなに自慢しようとあれこれ策を練るが、結局しずか達やママには見てもらえず、ドラえもんに見せても「カンニング」とまで言われてしまい、深く傷ついてしまう。さすがに反省したドラえもんは、どんなことでも人に信じさせ、望み通りに反応させる道具・「ピーアール」を出し、みんなに百点を取った事実を伝え、感心させるように命令する。特上放射線を放射して手始めにアナウンサーにその事実を語らせるピーアール。それを見て安心したドラえもんはドラやきの特売に向かう。更にピーアールは著名人にのび太のことを言わせたり、のび太の企画番組を製作させようとしたりしてしまう。昼寝していたのび太が目を覚ますと、なんと政府が今日を「のび太記念日」として制定するまでに話が進んでしまっていた。驚いたのび太は戻ってきたドラえもんに話を聞き、ドラえもんはピーアールに、今までのことをなかったことにしてもらう。すっかり疲れたのび太は机の引き出しに答案をしまうが、それを見ていたママは答案を見せてもらう。そして感動したママは額縁に飾ろうと言うが、大げさなことはやめて欲しいと懇願するのび太であった。  

 (解説)「のび太が百点を取る」という、ドラ世界史上唯一と言っていいほどのセンセーショナルな導入部、そしてさながら「あやとり世界」にも通じるものがある「やりすぎ」の世界。「ナンセンス」などという簡単な言葉を超越した面白さが存在していますね。どことなくコマ割が細かくなっているところも、面白さに拍車をかけています。「のび太が百点を取った」ということが、コロンブスの新大陸発見やアポロ11号の月面着陸と同列に並べられる世界。これがドラ世界の面白さなんですね。
材質変換機   10頁 小四80年3月号(材質変かん機)
 空き地で野球をしている最中、またガラスを割ってしまったみんなは、のび太にボールを取りに行ってもらう。怒られるのび太だがのび太も思わず本音を言ってしまったため、余計怒られてしまった。「鉄板でも貼っておけばいい」と言うのび太にドラえもんは「材質変換機」を出す。物の材質をなんでも変えることが出来る機械なのだ。試しにドアを布にしたり、紙をガラスに変えてみたりしたのび太は窓ガラスを鉄板にして、再び野球を始める。そんな中でスネ夫のバットをジャイアンが壊してしまうが、のび太は近くの丸めた新聞紙を金属バットに変え、さらに自分の座席でボールを風船のようにして打ってしまう。だが喜んでいるうちにアウトになってしまい、ジャイアン達に追いかけられてしまう。バットを布にしたり、ハッパを鉄に変えたりして何とか逃げ延びるのび太は、スピード違反の車を紙に変えたり、しずかの作った紙の服を本物にしたりするが、のび太が楽しく遊んでいるスキをついてジャイアンが機械を取っていってしまう。だがジャイアンが適当にいじると光線が自宅に照射され、家がビニールのようになってしまった。でたらめにいじったために壊れた機械をドラえもんが修理する間、ジャイアンの家は周りの木にロープを繋いで、吊されたままになってしまうのであった。  

 (解説)前述の「のび太のスペースシャトル」を先に読んでしまうと、収録順番の関係上、違和感を感じてしまうこともあると思いますが、純粋に道具を使っての遊びや騒ぎを楽しむべきでしょうね。しかしこう見ると、結構ジャイアンの家も道具の被害にあっているんですね。
カンヅメカンでまんがを   8頁 小五79年10月号(「かんづめかん」でまんがを!)
 みんなでマンガ雑誌を作ることにした四人だが、締切の日になってものび太だけマンガを提出できない。一応描いたというマンガを見せてもらうドラえもんだが、あまりに下手くそすぎるのでつい本音を言ってしまい、のび太は泣き叫んでしまう。ドラえもんは念じることで絵を描くことが出来る「念画紙」を出し、これを使ってのび太は絵を描こうとするが、雑念が入るとすぐに影響を受けてしまうため、思うように絵が描けない。仕方なく、流行作家のための仕事部屋である「カンヅメカン」を出し、その中にこもってマンガを書き始めるのび太。スネ夫に催促されたドラえもんはカンヅメの蓋を開けるが、のび太はアイディアが浮かばないために全然仕上げていなかった。仕方なく「マンガ原作集」を出し、さらに自分達をモデルにキャラクターを作ることをアドバイスし、のび太は再びカンヅメカンに入る。次第に慣れてきたのび太はスラスラ原稿を書き上げて行くが、悪役をジャイアン達にしてしまったことでの仕返しを恐れたのび太は、途中から悪役を主役に変えてしまい、それを読んだドラえもんは不思議がるのであった。  

 (解説)マンガ家にとってはかなりリアルなネーミングの道具ですね(笑)。「マンガ原作集」なんていうところに、作者の願望が入っているような気がするのは筆者だけではないでしょう。個人的には「宇宙のおつかい」とか「宇宙ちり紙こうかん」なんかも読んでみたい気が(笑)。今話を読むと、のび太以外のみんなはそれなりに絵を描けるということもわかりますね。
なかまいりせんこう   10頁 てれびくん80年10月号(なかま入りせんこう)
 下手くそだということで野球を追い出されてしまったのび太はゴム飛びをしているしずか達の仲間に入ろうとするが、「男のくせに」と言う理由で断られてしまう。更に家の前でのママと知り合いの立ち話に割って入ったために、追い払われてしまう。どこへ行っても仲間はずれにされてしまうのでドラえもんにすがろうとしたのび太だが、ドラえもんは部屋にはおらず、屋根の上でたくさんのネコと話をしていた。ネコ集めすずは壊れているはずではと疑うのび太に、ドラえもんは「なかまいりせんこう」を見せる。この線香から出た煙で囲むと、その囲ったものの仲間になることが出来るのだ。試しにドラえもんがママ達の周りを囲むと、ドラえもんは二人の会話に入ることが出来るようになった。のび太はしずか達の周りを囲って仲間入りを果たすが、ゴム飛びも上手くできないため、すぐにやめてしまう。そこで野球帰りのジャイアン達を見つけたのび太は、家に帰ってメロンを食べると言うスネ夫の家を囲って仲間になり、メロンをご馳走になる。次にのび太は警察官の仲間となり、帽子をかぶったり、不良を取り締まったり、ピストルまで借りようとし始める。その時弱いものいじめをしているジャイアンを見つけて逮捕してしまうが、警察官に止められて釈放する。線香の存在を知ったジャイアンはのび太を脅して線香を奪い取ってしまう。だが風で流れた煙が工事人夫の周りを囲い、ジャイアンは強引に仲間にさせられてしまうのであった。  

 (解説)オチの強引さを納得させるために「線香」という設定の道具にしたのでしょうか?今回に限ってはのび太もあまり有効な使い方はしていませんね。「ネコ集めすず」の設定が出てくるところは、マニアにとっては嬉しいところです。
平和アンテナ   10頁 てれびくん81年5月号
 のび太だけでなく、ジャイアン達まで夢中になっているテレビのヒーロー「ムテキマン」。その話をして楽しく下校してきたのび太だったが、家に入るとパパとママが物凄い剣幕でケンカをしていた。のび太も止めることが出来ず、のび太はドラえもんに助力を求める。ドラえもんはのんびりとおやつを食べ終わったあとに、満を持して「平和アンテナ」を出した。これから発せられる平和電波はどんな争いごとも止められると言う。その通りに二人のケンカを沈めるドラえもん。面白がったのび太は早速アンテナを借りて外に出かけるが、街でケンカと言えば、イヌとネコのケンカや、将棋の中でのケンカなど他愛のないものばかり。そんな時にジャイアンを見かけたのび太は、いつかきっとジャイアンがケンカをするだろうと後を付ける。すると、空き地でのび太の友人がケンカをしていた。アンテナを使おうとするのび太だが、先にジャイアンが中に入って仲直りさせてしまう。思わず文句を言ったためにのび太はジャイアンに追いかけられてしまい、困り果てたのび太はスネ夫に相談する。ジャイアンにあったスネ夫はのび太からアンテナを奪うと同時にのび太がジャイアンをバカにしていたとウソをつき、わざとジャイアンに襲わせるが、肝心ののび太が隠れてしまったためにアンテナを使えない。家の前で待ち伏せしていたが、とうとうムテキマンの始まる時間になってしまったため、二人はアンテナをほっぽりだして家に帰り、のび太もアンテナを拾って家に戻る。テレビで放送されるムテキマンとアクマーンとの戦いに夢中になるのび太とドラえもん。しかし興奮した時にうっかりアンテナのスイッチを入れてしまったため、ムテキマンとアクマーンは仲良くなってしまい、番組も終了してしまった。そのことで大ゲンカを始めてしまう二人であった。  

 (解説)「平和アンテナ」という道具があるのにも関わらず、オチはのびドラの大ゲンカという、そのミスマッチ感覚が何とも言えない味を醸し出しています。でも今話に限って言えばどう見ても悪いのはのび太なので、ドラに八つ当たりするのは筋違いかなあ、とも思ったりします(笑)。ところで今は「クルクルパー」という言葉は使えるんでしょうか?
羽アリのゆくえ   19頁 小五81年5月号(うつしっぱなしミラー)
 部屋で寝ころんでいるのび太に「アリとキリギリス」の話を出して説教しようとするドラえもんだが、突然のび太に突き飛ばされる。のび太は部屋に迷い込んできた羽アリを眺めていたのだ。二人は羽アリを庭に放してやるが、これからどうするかを見ていると言うのび太のためにドラえもんは「うつしっぱなしミラー」を出して羽アリを映しっぱなしにする。早速見ようとするのび太だが、宿題をやるよう言われたり学校に行ったりでなかなか見ることも出来ず、翌日になってようやく見ることが出来るようになる。アリは巣を作っていたが、拡大すると不気味であるため、ドラえもんはミラーにファンタ・フィルターをかけてやる。これによってアリが擬人化されるのだ。アリは女王アリで卵を既に生んでいた。それからのび太は友だちの誘いも断ってアリの世話に精を出すようになり、かえって怠け者になってしまった。働き者のアリを見習わせようと思っていたのが、当てが外れてしまったために困るドラえもんは、しずかと出木杉に協力してくれるよう頼み込む。26インチサイズのミラーで眺める四人だが、あるアリが大きな幼虫を巣につれていくのを見て、幼虫を助けようと考えた四人はスモールライトで小さくなり、「ファンタメガネ」、そしてアリと同じ匂いをつけ、巣の中に潜入する。だが中の様子が分からないためにウロウロする四人を見て、アリたちは怪しんでしまう。その時、四人は先程の幼虫がアリ達に可愛がられているところを目撃する。図鑑の解説を思いだした出木杉の説明によると、あれはクロシジミというチョウの幼虫で、アリに育ててもらう代わりに甘い体液を飲ませるのだと言う。理由がわかって安心する一同だが、アリ達に怪しまれたために四人は奥に逃げていくと、そこは女王アリの部屋だった。女王アリはのび太のことを覚えており、四人を歓迎してくれた。だが結局しずか達もアリに夢中になってしまい、ドラえもんの思惑は外れてしまった。だがいつしかのび太もミラーに飽き、そして季節は巡り一年後、また部屋に入ってきた羽アリを見つけたのび太はミラーを見せてもらう。するとたくさんの王子と王女が自分の国を作るために旅立って行くところだった。その姿を照らし合わせてのび太を激励するドラえもん。のび太は自分から宿題をやりはじめるのであった。

 (解説)名作「タンポポ空を行く」と同様、アリという虫を擬人化して「人間の成長」というテーマを描いた良作です。虫を可愛がるのび太の優しさ、クロシジミの幼虫の説明という作品内での科学的解説、そしてのび太のほんの少しの成長など、ドラえもんという作品の良質な部分のエッセンスが凝縮されていると言っても過言ではないほど、様々なことが詰め込まれています。132ページ、ミラーを見つめる三人の後ろで困った表情をするドラが面白いですね(笑)。
ブルートレインはぼくの家   9頁 小二78年8月号(ブルー・トレインにのろう!)
 スネ夫からブルートレインの旅についての自慢話を聞かされたのび太は、自分もブルートレインに乗りたいとママにせがむが、てんで相手にされない。そこでドラえもんは今夜ブルートレインに乗ろうと言い出す。そして夜。玄関のドアにプレートを貼ったドラえもんはのび太の部屋で運転用の機械を出し、それを動かし始めた。電車ごっこかと勘違いするのび太だが、何と家自体が電車のように動き出した。ドラえもんが出したのは「ブルートレインセット」で、これをつけると家をブルートレインのように動かすことが出来るのだ。しかもその間、家は四次元空間に入ってしまうのでどこかにぶつかる心配もない。線路に入り、長い長い星の海をしばしの間見つめる二人。やがて二人は「食堂車」に出向き、夜の街と星の海を眺めながら食事をとる。駅員やタバコを買いに行こうとしたパパを驚かせつつも、ブルートレインは静かに夜の線路を走り続け、とうとう終点に到着する。夜しか動かないために夜が明ける前に帰らなければならないので、二人は夜の海に出て、一風変わった夜の海水浴を楽しむのであった。  

 (解説)久々に情緒溢れる作品の登場です。夜の闇を幻想的に描くことで、闇を「怖いもの」ではなく「楽しいもの」として描いています。特にブルートレインになった家が線路を走る所などは、本当に情緒豊かでのんびりした雰囲気のものになっています。駅員やパパなどについても、お約束ではあるものの、やはりおかしく仕上がっています。
竜宮城の八日間   24頁 小四80年8月号(浦島事件のなぞにちょう戦)
 スネ夫の家でSF映画を見る四人。その映画の中で、主人公だけ年を取らないことを疑問に思うのび太に、スネ夫は「相対性理論」の説明をするが、のび太には到底理解できない。その時しずかが大声を上げた。おとぎ話の浦島太郎は実は宇宙旅行に行っていたのではないかと言うのだ。これを夏休みの自由研究の題材にすることに決めた四人はタイムマシンとどこでもドアで調べるようドラえもんに頼み込む。架空の話だといって相手にしないドラえもんだが、一応航時局調査課へ問い合わせると、なんと浦島太郎は実際にいたということが判明し、タイムマシンで1049年に向かう五人。そこでは子供たちがカメをいじめていたが、浦島太郎は現れない。するとそこに、イメージとかけ離れたごつい図体の男が現れ、子供を追い払ってカメを食べようとしてしまう。仕方なくカメを売ってもらおうとする五人だが、その時代の金を持っていない五人に払えるはずもない。だが男はしずかの着けていたブローチと交換してカメを置いていく。だがカメは逃げ出したので四人が押さえつけるが、そこへ本物の浦島太郎が現れた。のび太達がいじめっ子になってしまったのだ。するとそこにカメ型の巨大な潜水艦が現れた。中から出てきた人間に誘われるままにその中に入り込む浦島太郎を見て、ドラえもんは「潜水ゴンドラ」を出して後を追いかける。やがて潜水艦は不思議な空間を抜けて巨大な都市の門に出た。だが五人は締め出しを食らってしまい、外に放り出されてしまう。だがそこには何故か空気があった。とりあえず記念写真を撮ろうとする五人だが警備兵に見つかってしまい、五人はそのまま幽閉されてしまう。
 三日後、浦島太郎が帰る日になっても五人はまだ牢に閉じこめられていた。そして一週間後、五人をスパイと認定した竜宮城では、五人の銃殺刑が執行されようとしていた。処刑場へ連行される五人。だが、最初にカメを助けたのがしずか達五人であるという証拠が発見され、ギリギリで五人は処刑を免れる。巨大都市を治めるオットー姫と会うことになった五人は、彼女からこの国のいきさつを聞かされる。はるか昔、栄華を誇っていた古代の人間達は、やがて争いを始めてしまった。争いを望まない父王は国ごと海底の底に沈め、更に次元の違う世界に置いたために、地上と時間の流れ方が異なっているのだ。五人はこの国のことを公表しないことを条件に地上に帰ってくる。元の時代へ帰ろうとする五人だが、竜宮で過ごしている間に生長してしまった木の幹の中にタイムマシンの出入り口が飲み込まれてしまい、帰ることが出来なくなってしまう。そこに警官が現れ、五人が事情を説明すると、警官は今が1982年だと言う。竜宮で一週間以上過ごしているうちに、地上では800年以上が経過していたのだ。どこでもドアでのび太の家に帰り着き、安心する一同であった。  

 (解説)「海底鬼岩城」の元ネタとも取れる、深海をテーマにしたSF作品です。古代文明、別次元の世界、タイムパラドックスと、ドラ世界を構築しているSF要素がふんだんに盛り込まれ、充実した内容になっています。浦島太郎の話を持ち出すしずかには少し強引さがあるような気もしますが、それもまた良しでしょう。神秘に満ちた深海への作者の想いが再確認出来る作品だと思います。
あしたの新聞   10頁 小四81年7月号(新聞日づけ変更ポスト)
 新聞で田原聖子と河合真彦が婚約したというニュースを読んで、急いでみんなに知らせに行くのび太。だがのび太の読んだ新聞は昨日のものであったため、みんなに笑われてしまう。配り盾の新聞を読みたいというのび太のためにドラえもんは「新聞日づけ変更ポスト」を出し、ダイヤルを一目盛り動かして新聞を入れる。すると今日の新聞が出てきた。新しい情報を収集して満足するのび太だが、調子に乗ったのび太は更に明日の新聞を取り出そうと考えつく。止めるドラえもんにウソをついて追い出したのび太が明日の新聞を出すと、そこには人気トリオのチョコレイツが解散すると書いてあった。早速知らせに行くのび太だが、みんなは当然信じようとせず、スネ夫の家で武道館コンサートのテレビ中継を見るが、なんとそこでチョコレイツは解散を発表した。驚く三人を後目に帰宅するのび太は、戻ってきたドラえもんにもその話をするが、何故か部屋から新聞がなくなっていた。ママが持ち出していたのだが、その中で隣の家に空き巣が入ったという記事を読んでしまったために、ママは隣の家に行ってしまう。そのスキに新聞を取り戻すのび太だが、泥棒が入るという事実を放って置くわけにも行かない二人。そして夜、隣家の人間は出かけてしまったので、二人は寝ずの番をすることに決め、通り抜けフープで家に侵入する。「特大ドロボーたたき」を出して待ち伏せるが、家の中の様子を見た泥棒は侵入をやめて帰ってしまう。眠ってしまった二人を見つけた隣家の人間は驚くが、二人の行為で未来が変わってしまったため、新聞からも記事が消えてしまっており、二人はパパとママにこっぴどく叱られてしまうのであった。  

 (解説)藤子F先生のSF短編に「ポストの中の明日」という名作がありますが、同じような事を題材にしつつも、ここまで毛色の違う作品を作り上げることが出来るとは、さすがと言うべきでしょう。「新聞」という極めて庶民的なものを使っているところも、より親しみを感じやすいですね。例によって、アイドル達の名前パロディも楽しいです(笑)。
のび太の結婚前夜   12頁 小六81年8月号(結婚式の前の夜)
 空き地で情熱的な愛のセリフを交わし、手を握りあうしずかと出木杉。それを見て激しい嫉妬にかられたのび太は思わず叫んでしまうが、これは劇の稽古であった。だがその時の様子があまりにも本物っぽかったため、しずかとの結婚に関してまでもクヨクヨと考え出してしまうのび太。そんなのび太にドラえもんはタイムマシンで結婚式を見に行くようアドバイスし、のび太は怖がりながらも未来へ向かう。結婚式の行われるホテルに到着する二人だが、のび太は緊張してホテルの中に入れない。そこへ車に乗った未来ののび太が現れた。遅刻したようでひどく慌てていたが、挙式の日にちを一日勘違いしていたため、再び車に乗っていく。ドラえもんの方もタイムマシンの設定を間違えて、結婚式の前日に来てしまっていたのだ。せっかくだからと言うことで結婚前夜ののび太の様子を見ていくことにした二人は、「透明マント」を使ってのび太の家があるマンションの一室に入る。ママから伝言を聞いたのび太は車で、結婚式前夜祭をやるというジャイアンの下へ向かう。そこには成長したジャイアン、スネ夫、出木杉がおり、のび太の結婚を祝ってくれていた。夜中になっても騒ぐ四人に付き合いきれなくなった二人は家を出て、しずかの様子を見に家まで向かう。
 しずかの家ではお別れパーティをやったようで、しずかはパパに執心の挨拶をしに行くところだった。心なしか沈んだ様子のしずかを気にする二人だが、しずかはパパにも挨拶をしただけで部屋を出ていった。ドラえもんは「正直電波」を出してしずかに浴びせるが、するとしずかは突然「結婚をやめる」と言いだした。それを聞いて思わず叫んでしまうのび太。しずかは両親には何も恩返しできなかった、だから結婚できないと言う。しかし、そんなしずかをパパは優しく諭す。しずかと共に過ごした、満ち足りた想い出の日々。それこそが、しずかからの最高の贈り物であったと。そして結婚に対する不安も吐露するしずかに、パパは「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことの出来る人」であるのび太を信じなさいと、優しく答えた。しずかの想い、そしてしずかのパパの思いを知った二人は現代に戻り、感激で泣きながらしずかの下に出向き、「必ず幸せにする」と宣言するが、しずかには全くわからず不思議がるのであった。  

 (解説)しずかはのび太のどこを好きになったのか。「雪山のロマンス」で描かれたように、のび太には全く良い所はなかったのだろうか。それに対する一つの回答が今話に込められていると思います。そして同時に描かれるしずかの心の葛藤。この二つのテーマに対する作者の回答は、しずかのパパの口によって読者に語られます。「愛する子供と共に過ごした日々こそが、子供からの最高の贈り物」というメッセージは、全ての親、全ての子供たちに語られているのかも知れません。そして父親によって語られる「人間にとって一番大切なこと」。それは勉強でもスポーツでもない。「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ」優しさ。これはしずかだけではなく、ドラえもんを読んでいる人全てに対する、作者からの明確なメッセージでしょう。そしてその優しさを持ったのび太はしずかとハッピーエンドを迎えることが出来ます。弱く優しい人間を愛し続けた藤子F先生ならではの名編と言えるでしょう。



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