てんとう虫コミックス第3巻


あやうし!ライオン仮面   13頁 小四71年6月号
 マンガ家のフニャコフニャ夫・作の連載マンガ「ライオン仮面」がいいところで終わってしまい、続きが知りたくてしょうがないのび太とドラえもん。そこでドラえもんは近くに住んでいるフニャコフニャ夫の家に直接聞きに行くことにする。しかし雑誌の〆切は迫っているにも関わらず、当のフニャコフニャ夫も話の続きを考えていなかった。
 その時ドラえもんはタイムマシンで来月に行って本を立ち読みするというアイデアを思いついて、タイムマシンで未来へ行くが、立ち読みをしている途中で本屋の主人に追い出されてしまう。戻ってきたドラえもんは空き地でみんなに話の途中まで説明するが、その時土管の中に隠れていたフニャコフニャ夫が飛び出してきた。どうしても続きを知りたがるフニャコに本の代金をもらって改めて来月に行き、本を買ってくるドラえもん。
 しかしそのストーリーもライオン仮面の弟・オシシ仮面がやられるところで終わっていた。再来月の本を買ってきても同じような終わり方をしていて、仕方なくドラえもんは今度出る雑誌をみんな買ってくる事にするが、超過密スケジュールのためフニャコはついに倒れてしまう。ドラえもんはフニャコに頼まれ、未来から買ってきた雑誌を見て書き写す羽目になってしまった。マンガの本当の作者は誰なのか、わけがわからなくなるドラえもんであった。  

 (解説)フニャコフニャ夫先生、かなりムチャクチャなんですが、ドラの持ってきた10月号の(つまり未来の)雑誌を見て自分で勝手に納得してしまう順応性?のようなものを持っています。タイムパラドックスの要素をふんだんに取り入れた、ギャグの傑作ですね。ライオン仮面はカッコイイのですが、オシシ仮面やオカメ仮面は(笑)。実在の雑誌名をパロった雑誌の名前は爆笑必至です。あと、ライオン仮面と一緒に攻撃された女の子の事を誰も気にしないのが少しかわいそう(笑)。
日づけ変更カレンダー   9頁 小三73年12月号(日づけへんこうカレンダー)
 クリスマスプレゼントであるローラースケートを22日に欲しがるのび太。しかしママはプレゼントはきちんとクリスマスイブに渡すと言う。どうしても早く欲しいのび太にドラえもんは「日づけ変更カレンダー」を出してやる。日づけを変えると、範囲は近所だけだが本当にその日づけに変える事ができるのだ。
 早速25日にするのび太だが、パパとママはクリスマスの準備や会社に出かけたりでプレゼントどころではなく、さらにプレゼントを22日の日曜に買う予定だった事を知り、のび太は慌てて22日に戻す。するとママはデパートへ買い物に出かけ、パパは会社から戻ってきた。帰って来たママはしかしプレゼントは25日まで待つように言うので、のび太は再び25日にしてやっとローラースケートをもらう事に成功した。
 元の日づけに戻してからローラースケートで遊び始めるのび太だが、ローラースケートの練習中に失敗し、出前中のそばを台無しにしてしまう。弁償しようとお金をもらいに行ったのび太は1月1日にしてお年玉をもらおうとするが、パパ達は正月の準備を始めたのでやはりそれどころではない。仕方なく本当のことを話し、当然2人に叱られるのび太だが、カレンダーを4月1日にしてその場をやり過ごす。しかしこの後の事をどうするか、困るのび太であった。  

 (解説)時間をコントロールする道具が、あくまで近所にしか影響しない、というのが庶民的でいいですね。この頃はまだクリスマスプレゼントというのは25日ですが、最近では24日のようです。この後、ローラースケート関係の話はたくさん出てきますが、結局のび太は乗れないままのようです。それが一番のび太らしいんですけどね。
ママをとりかえっこ   10頁 小五74年3月号
 ママにいつになく厳しく叱られてしまったのび太。落ち込みながらも気晴らしにドラえもんと共に表に出ると、同じく親に叱られたしずかとスネ夫に出会う。それぞれに悩みを話す3人にドラえもんはママをとりかえっこしてみることを提案する。のび太はしずかのママ、しずかはスネ夫のママ、スネ夫にはのび太のママが割り当てられ、それぞれの組み合わせの写真を「家族合わせケース」に入れる。こうすることでママを交換する事ができるのだ。
 しずかの家へ向かう事にするのび太だが、ノートを取りに自分の家へ戻ろうとしてしまい、もうすでにそこはスネ夫の家になっていたことに驚く。2人は改めてしずかの家に行くが、やはり慣れないので他人行儀になってしまった。スネ夫はのび太のママが意外と優しいことを知り、のび太はしずかが叱られたことでママから謝られる。しずかもスネ夫のママから叱られ賃として小遣いをもらっていた。
 しずかの家に来たもののあまりに暇なので、のび太は家事を手伝う事にするが、水をかぶって服を濡らしてしまい、その時しずかの物である女の子の服がタンスから出てきたため、慌ててのび太達は外に飛び出した。
 再び集まった3人はそれぞれ親の立場を思いなおし、とりかえっこをやめることにした。安心して自分の家に戻ってきたのび太だが、そこではしずかのママがのび太が忘れてきたパンツを届けに来ていた所であった。  

 (解説)子供と親。同じ人間とはいえ、これほど立場の違う場合も他にないと思います。幼い子供にとって親は絶対とも言える存在ですが、やはり親も自分と同じ人間であるということにいつかは気づき、親を理解し、自分も理解してもらおうとします。それがあってこそ親子の絆が深まるのだと思います。そのような、当たり前だけど大切なことをこの話では分かりやすく描いています。けれど結局のび太が怒られた理由は、のび太が何かをしでかしたからなんでしょうけど(笑)。あと、しずかはなかなか衣装持ちです。
シャーロック・ホームズセット   15頁 小五74年2月号
 何かの本を道を歩きながら熱心に読みふけるのび太。夢中になりすぎてやってきたドラえもんにも気づかないほどだ。話を聞くとそれはシャーロック・ホームズの本で、のび太はすっかりホームズの魅力にはまってしまったらしい。
 家に帰ったのび太はママにかばんを忘れてきたことを怒られ、学校帰りに道草を食っていたしずかの家に行く。ところがしずかの家では何か大事なものがなくなったらしく、そこでのび太はホームズのような推理を披露して事件を解決し、しずかに尊敬してもらおうと考え、ドラえもんに「ホームズ・セット」を出してもらう。
 しずかの家に上がりこんだのび太は、早速「手がかりレンズ」を使って手がかりを見つけようとするが何も見えない。しかも「推理ぼう」を使って推理しても「レーダーステッキ」で犯人を探しても、みんなそれらはのび太が犯人であることを示す。のび太はダイヤなんか取っていないと泣きつくが、しずかが探しているのはのび太が読みふけっていたシャーロック・ホームズの本だった。のび太は夢中になっていたためにしずかに断らずに家を出て、ドラえもんに道で会い、話に夢中になっている間になくしてしまっていたのだ。
 家までの道筋をたどる途中では、道沿いの家に住むおじいさんに怒られているジャイアンとスネ夫がいたが、2人は気にせず本を探す。しかし結局家にたどり着いてしまった2人は、本を拾った人をレーダーステッキで探そうとするが、誰も拾っていないのか倒れない。手がかりレンズで手がかりを探すと、先程のおじいさんの頭が見えてきた。おじいさんは庭で誰かに何かをぶつけられ、ジャイアン達を疑っていたのだ。「ズバリパイプ」から泡を出して犯人を探すと、泡はのび太の頭上で爆発した。ドラえもんは推理ぼうで、話に夢中になっていたのび太が知らぬ間に本を放り投げ、それがおじいさんに当たったと推理した。案の定、おじいさんの家の庭には件の本が落ちていた。
 本を発見した2人はしずかに喜ばれるが、のび太は探偵ごっこはこりごりだと話すのだった。  

 (解説)子供の頃、おそらく誰でも一度はホームズのあの名推理に憧れた事でしょう。そのホームズを題材にしているためか、今話は結構ストーリー展開が凝っていて、なかなか読み応えのある作品になっています。のび太は「活字は苦手」と一般には知られていますが、しずかの持っていた本はどう見ても小説なので、のび太は自分から小説を読んだ事になるわけですね。マニアックな観点からすれば結構興味深い事かもしれません。
スケジュールどけい   8頁 小四73年5月号
 しなければならない事が色々あり、何からやろうかと考えているうちに時間が過ぎて結局何も出来ないと言うのび太。そこでドラえもんは、一度決めたスケジュールを絶対に守らせる「スケジュールどけい」を出した。早速のび太は1日のスケジュールを書き、とけいにセットしようとするが入り口につっかえて入らず、いらついたドラえもんがそこに入れてしまう。すると動き出したスケジュールどけいはドラえもんに勉強をさせ始める。この道具はカードを入れた人にスケジュールを守らせる仕組みだったのだ。
 途中おやつのドラやきが来ても食べる事が出来ず、のび太に食べられてしまう。それでもドラえもんは3時におやつがないのに食べるふりをさせられ、3時20分は用もないのにトイレに行き、30分では壊れているにも関わらずテレビを観る羽目になるドラえもん。さらに外は雨が降っているのに、野球の時間となったので1人で野球を始めさせられる。
 そ知らぬ顔でのび太にもからかわれ、ついに逃げ出したドラえもんはとりあえずスネ夫の家に隠れる。しかしとけいに見つけられたドラえもんは、夕食のスケジュールを守るために強引にスネ夫の家で食事をとる事になり、それを見たのび太は自分はそのとけいは絶対に使わないと宣言するのであった。  

 (解説)ドラ世界ではよくこう言った「機械的なロボット」が出てきます。ロボットなのにどう見てもロボットに見えないドラとの対比なのかどうかは分かりませんが、かなり強烈な印象を持たれる事は間違いないでしょう。「土砂降りの中で野球をする」というのは、後の問題作?でオチとして使われていますね。
うそつ機   6頁 小四73年4月号
 しずかが自分の事を好きだとのび太に言われて喜ぶジャイアン。だがそれはのび太のついた嘘だった。怒るジャイアンに今日は4月1日だからと言い訳するのび太だが、逆にジャイアンに今日は4月2日だとだまされて殴られてしまう。その後スネ夫にもしずかにもだまされ、おかえししなければ気が済まないのび太。しかしドラえもんも頭が良くないと嘘はつけないと言ってのび太を怒らせてしまったため、お詫びにどんな嘘でも本気にされる「うそつ機」を出してやる。
 これを使って手始めにママに勉強をさせたのび太は、早速スネ夫にも家が火事だと嘘をつき、ジャイアンの飼っているイヌに嘘をついて、ジャイアンをからかってしまう。他にものび太は色々な嘘をつくが、嘘をつきすぎてさすがに飽きたので、のび太は家に帰って晩ご飯を待つ。だがママはまだ嘘をつかれた状態のために勉強を続けており、何故自分がご飯を作るのかと言い出してしまうのであった。  

 (解説)ジャイスネがのび太につく嘘は本当にバレバレのものなので、のび太はよほど人がいいのか、純粋なのでしょう。「火星人がせめてきた」という嘘は、おそらくアメリカで過去に起こった出来事をまねて言わせたのだと思いますが、後年、本物の火星人が地球にやってくる事になります(笑)。
スーパーダン   10頁 小四72年5月号
 テレビのヒーロー・スーパーダン。それをまねてスーパーダンを名乗るジャイアンは、困った事があれば助けると言ってみんなを助けたがるが、みんなはジャイアンに助けてもらうような事は何もなく、ジャイアンの機嫌はどんどん悪くなっていく。仕方なくくじ引きで悪者を見つける役を決める事にし、運の悪い事にのび太がその役に当たってしまった。ドラえもんに相談したのび太は、ドラえもんから未来の子供たちがスーパーダンごっこで使う「スーパーダンマント」を出してもらう。これをつければ飛行能力や透視能力、鋼の肉体などが、おもちゃなのでそれなりではあるものの一応身につくのだ。
 早速のび太はみんなの前に行き、みんなは石をぶつけられても平気なのび太に驚く。そこへ現れたジャイアンはのび太をライバルと決め込んで決闘になるが、かろうじてのび太が勝利した。ところが今度はのび太が活躍したいと言い出し、何もないので苛つき始める。そこで偶然見つけたドロボーネコを追いかけることにするが、ネコと格闘の末マントをとられてしまう。それを見て、『なにをやらせてもだめだなあ。』と呟くドラえもんであった。

 (解説)ジャイアンは意外とごっこ遊びが好きなようですね。今回のマントは一応強くなる事が出来るらしく、やっととは言えのび太でもジャイアンに勝っています。でもネコには負けてますね(笑)。ストーリー紹介ではスーパーダンのび太の透視能力のところは省きましたが、これに関連したギャグもユニークなものになっています。
ボーナス1024倍   8頁 小四73年12月号(ボーナス秘(まるひ)大作戦)
 ボーナスで自転車を買ってもらう約束をしていたのび太だが、なぜかパパもママも様子がおかしい。それでもパパに問いただしてみると、もらえたボーナスは予想以上に少なく、ボーナスの使い道を考えた結果、自転車を買えるほどの余裕がないというのだ。
 ドラえもんにボーナスをなんとか増やしてもらおうと頼むのび太。のび太におだてられたドラえもんも思案し、そのうち名案を思いついた。それはボーナスを定期預金で銀行に預け、百年後に利子がついて1024倍に増えたボーナスをタイムマシンで取りにいく事だった。早速ボーナスを銀行に預け、タイムマシンで取りに行くドラえもん。だがその時タイミング悪く、出かけていたパパたちが帰ってきてしまった。なんとか2人にボーナスの事を気づかれないようにと四苦八苦するのび太。
 心配になったのび太が部屋に戻ると、既にドラえもんはお金を持って帰ってきていた。しかし持ってきたお金は百年後のお金のため、現在とはまったく異なるデザインのお札しかなかった。のび太から古銭を買えばいいというアドバイスを受けたドラえもんはすぐに買いに行く。古銭が値上がりしていたため、自転車一台分のお札をやっと買ってきたドラえもん。パパたちは増えているボーナスを見て驚くのだった。

 (解説)いくら小四掲載とはいえ、少し高度な内容になっていますね。定期預金の仕組みの事といい、これを読んで初めて「利子」とかいう言葉を覚えた人もいると思います。当時はまだボーナスなんかも手渡しだったのか、と思うと時代を感じます。それにしても「古銭」の知識があるとは、のび太侮りがたし(笑)。それとも丁度一年前のこと(「この絵600万円」)で古銭の話が出たのを覚えていたのか?
ミチビキエンゼル   13頁 小五73年11月号
 ロボットなのに風邪をひいてしまったドラえもん。だが学校帰りののび太から重大な問題で悩んでいるのですぐ来てほしいと電話で頼まれ、寒い中しかたなくのび太の下へ向かう。しかしのび太は家へ帰って勉強するか、しずかの家へ遊びに行くかというつまらない事で迷っているだけだった。気抜けして大きなくしゃみをしながらも、ドラえもんは相談すると一番有効な答えを出してくれる「ミチビキエンゼル」をのび太に貸す。
 のび太はエンゼルの教えでしずかの家へ向かうが、道順をエンゼルの指示に逆らったため、ジャイアン達に誘われ野球へ行く羽目になってしまった。とりあえずはエンゼルの言う通りに野球をこなし、のび太の打った球で犬を怒らせ試合はメチャメチャになってしまい、そのスキに抜け出してしずかの家へ行くのび太。しずかとしばし楽しい時を過ごすが夕食に誘われたのび太は、早く家に帰らせて宿題をさせようとするエンゼルの言うままにアカンベエしてしまい、しずかを怒らせてしまう。
 怒ったのび太はドラえもんに文句を言いに行くが、ドラえもんはねじが一本足りなくなったので具合がおかしくなっていた。昼間大きなくしゃみをした所に落としたのかもしれないが、ドラえもんは動く事が出来ないのでのび太が探しに行く事にする。もちろんエンゼルはそれを止めようとして邪魔をするが、それも振り切ってのび太は探しに向かう。途中出会ったジャイアンは試合をめちゃくちゃにしたとのび太を殴ろうとするが、偶然にエンゼルを取って行ってしまう。自由になったのび太はねじを見つけることに成功し、ドラえもんはのび太に深く感謝した。
 翌日、うるさいエンゼルを何とかしろと言うジャイアンに、取った方が良いかどうか迷う2人であった。


 (解説)これから後の作品にも度々出てくる、「自分の進むべき道は自分で決めなければならない」というテーマを分かりやすく描出しています。エンゼルの忠告を無視してドラのねじを探しに行くのび太からは、自分自身で進む道を決めていく覚悟と、親友・ドラに対する想いが伝わってきます。あと、どうでもいいことですが、最初にジャイアンがエンゼルをつけた時は右腕につけていたのに、ラストのコマでは左腕につけていますね(ホントにどうでもいいことだな、笑)。
そっくりクレヨン   5頁 小一71年11月号
 犬のスケッチをするスネ夫、しずか、そしてのび太。だが他の2人に対し、のび太のヘタな絵はまるでネコの様だとバカにされてしまう。ドラえもんまでもがネコだと勘違いしてしまい、完全に落ちこんでしまうのび太。そこでドラえもんは「そっくりクレヨン」を取り出した。これを使うと、描かれたものが描いた絵とそっくりになるのだ。試しに花瓶の写生をして実証するドラえもん。
 のび太も改めて犬を描きなおすことにし、スネ夫達はバカにするが犬は本当にのび太の描いたとおりの姿になってしまった。のび太は次にスネ夫を描くことにし、わざと変なふうに描いてスネ夫の顔をめちゃくちゃにしてしまうのであった。

 (解説)この話は作品世界そのものがすごくナンセンスですね。絵とそっくりになったものは、後で元に戻るのでしょうか。そうでないと、スネ夫はあまりにも酷だ(笑)。でも僕が今回一番好きなのは、扉ページのらくがき調のドラなんですよね(笑)。
きせかえカメラ   8頁 小五74年8月号
 野球で服を汚して帰ってきたのび太。家ではママがパパに新しい服を買って欲しいと頼んでいたが、パパはけんもほろろに逃げ出してしまう。買えないママはのび太に八つ当たりし、今度服を汚したら裸でいろとまで言い出してしまう。だが早速のび太は服を汚してしまい、困るのび太にドラえもんは「きせかえカメラ」を出してやった。ドラえもんがデザインした服をカメラに入れてシャッターを押すと、のび太に体に新しい服が着せられる。どんなデザインの服でも相手に着させることが出来るカメラなのだ。
 のび太はカメラを使ってママの欲しがっていた服をプレゼントし、さらにジャイアンとスネ夫に女の子の服を着せておもしろがる。だがのび太は怒ったジャイアン達にカメラを取り上げられてしまった。
 デザイナーになるのが夢のスネ夫とファッションモデルになるのが夢というジャイアンは、2人で組んでファッションショーをやることにしてしまう。早速女の子を集めてショーを始めるが、事前にドラえもんがデザインを抜き取っていたため、着る服がセットされていない状態なのでジャイアンは素っ裸になってしまい、女の子は悲鳴をあげて逃げ去ってしまうのであった。

 (解説)この道具も息の長い道具になりますね。この話を見る限りではドラは結構絵心があるようですが、そうすると「そっくりクレヨン」で書いた絵は?ジャイアンのファッションモデルという夢を聞いて、足をつねりながら笑いを必死にこらえるスネ夫がおかしいです。こう見ると、ジャイアンには将来の夢が色々あるんですね(笑)。
ああ、好き、好き、好き!   14頁 小四70年9月号
 部屋で何やら一人芝居のようなことをするのび太を見て大爆笑するドラえもん。何をしていたのかとドラえもんが聞くが、のび太はなぜか関係ないと怒りだしてしまう。しかし家から飛び出した所で通りかかった可愛い女の子と遭遇し、のび太は顔を真っ赤にしながら声をかけようとするが、女の子はすぐに歩き去ってしまった。そんなのび太を見てドラえもんは事情も察し、改めて話を聞く事にする。
 のび太は2,3日前からぼた子の家に来ているその子と友達になりたいのだ。そこでドラえもんは「キューピッドのや」を取り出す。この矢が当たると、当たった人は射った人を激しく好きになるのだ。ドラえもんはスズメを使って実証し、早速彼女が家に入る所を狙うのび太。しかしその矢はその家の飼い犬に当たってしまい、抱きつかれてしまう。呼び出そうとしてもぼた子に邪魔されて埒があかないので、ドラえもんは姿を消してなんとか彼女を誘い出すことに成功するが、今度は矢がぼた子に当たってしまい、抜こうにも近づく事も出来ないので、止むを得ず逃げる2人。
 残り一本の矢をのび太は射つが、それは近くを通ったカバみたいな顔の人の鼻の穴に入り、くしゃみによって鼻から飛び出した矢がドラえもんに刺さり、ドラえもんはその人を好きになってしまう。矢を抜いたのび太は女の子にできるだけ近づいて狙うが、事情を知らない女の子は誤解して騒ぎ出し、今度は通りかかった先生に取り上げられてしまう。その先生も家で遊んでいる時に間違えてガスの集金人に当ててしまい、騒ぎになってしまった。
 さすがにくたびれ果てたのび太は諦めて矢を捨ててしまうが、その矢が偶然その彼女に刺さった。仲良くなれて夢のようだと感動するのも束の間、彼女は父親の転勤でアメリカへ行ってしまうのだった。寂しがるのび太だが、家に帰ってきた2人を待っていたのは、勝手にあがり込んでお菓子を作っているぼた子であった。  

 (解説)今回の話もエキストラキャラが縦横無尽に動き回って、躍動感溢れる楽しいギャグになっています。ドラが姿を消すという能力も披露していますが、てんコミに限って言えば、ドラが姿を消したのは今話が初めてです。しかし誰でも好きになってしまうというのはよく考えるとアブノーマルな世界ですね。個人的にはガスの集金人がスキ(笑)。
ゆめの町、ノビタランド   9頁 小四74年7月号(ノビタランド)
 家の中でローラースケートに乗って遊ぶのび太だが、転んだ表紙にふすまを壊したりして、外で遊ぶようにとママに叱られてしまう。しかし外では自動車が通ったりしているので、危なくて乗れたものではない。仕方なくしずかやスネ夫と共にドッジボールをしようとするが、空き地は近くで行われる工事の材料置き場になってしまって遊べなくなっていた。いつどこで何をしても、誰にも何も言われない自由な世界が欲しいと言うのび太に、ドラえもんは僕らだけの町を作ろうと言い出した。
 「ポラロイドインスタントミニチュアせいぞうカメラ」でミニチュアの家を作って小さな町を作り、「ガリバートンネル」を使って小さくなることで、自由に作った町に住もうと言うのだ。早速本屋やお菓子屋など様々な建物を撮影し、家の庭に町を完成させる2人。のび太は友達を誘い、ガリバートンネルを使って自分たちだけの町・ノビタランドで楽しいひとときを過ごす。
 だがそれも庭に物置を立てようとするママによって邪魔されてしまい、のび太は今度は空き地を作る機械を欲しがるが、これにはさすがのドラえもんも困り果ててしまうのであった。

 (解説)現在のシンエイ動画版アニメドラの記念すべき第一回作品ともなった今回の話。道具を使って夢を実現するという、ドラ世界の根本テーマを描いています。ある意味、F先生にとっても理想の町だったのかも知れません。子供漫画で土地問題を扱うのは、ある意味シビアだ(笑)。
ソウナルじょう   14頁 小三70年8月号
 のび太をプールに誘ってついてくるかどうかで賭けをする友達。スネ夫以外はみんなプールに行く方に賭けたのだが結局のび太は行かず、賭けはスネ夫が勝つが、スネ夫はのび太が泳げないことを知っていたのでみんなに怒られる。
 そののび太もやはり泳げるようになりたいと部屋で泳ぎの練習をするが、ドラえもんにあきれられる。ドラえもんは思ったとおりになんでもそうなる「ソーナルじょう」を出し、これを使って泳ぎの練習をさせる事にした。ところが飲んだのび太がプールを想像すると、深すぎておぼれてしまったので、とりあえず幼稚園のプールで練習を始めるが、幼稚園の子の足を踏んづけたために先生に追い出されてしまう。
 次は海に来た事にするが、それでものび太は少し高い波が来ただけで慌てて逃げ出してしまい、仕方なく浮き輪を貸してもらい、それでも不安なのでドラえもんと共に町の方へ向かう事にする。途中、出目金のママやタコのおじさんに会いながら空き地まで行く。しかしのび太が何気なく想像した大うずまきに巻き込まれてしまい、ソーナルの効き目が切れて2人はなんとか助かった。
 空き地にいた友達にもソーナルを分け、のび太もアクアラングをつけて再び泳ぎ始める。他の友達が豊かな想像力で真珠貝やサンゴを見つけたりするのを見て、2人も負けじと沈んだ船の中に宝の箱がある事にして宝を探すが、のび太がまた余計な事を考えたために、人食いザメの犬に襲われてしまう。結局のび太は部屋の砂浜でこうら干しをするだけになるが、思いっきり焼けてしまい、パパと風呂に入った時に痛がるのだった。

 (解説)泳ぐように空を飛ぶ。これは「ドラえもん」のみならず、他の全ての藤子F先生の漫画に共通している願望です。それを薬一粒で実現させてしまうのだから、ドラ世界を端的に表現した好編と言えるでしょう。しかしのび太は悪い方向に働く想像にかけては天才的ですね。初期編にしては比較的のんびりしており、素直に楽しめる作品です。
ぼくを、ぼくの先生に   9頁 小五73年9月号
 のび太のために節約する事を話し合うパパとママ。何か買ってくれるのかと思ったのび太は喜んで2人のそばに行くが、それはのび太に家庭教師をつけようという考えのためだった。話を聞いて慌てて断り、二学期は勉強すると宣言するのび太。しかしやはり自分1人では勉強が長続きせず、どうすればいいか悩むのび太はタイムマシンで中学生の自分を連れてきて教えてもらおうと考える。
 ところが三年後の未来でも両親は家庭教師をつけることの相談をしていた。慌てて飛び出すのび太だが、小学生の姿で飛び出したのでママたちは驚いてしまう。逃げた2人は未来ののび太を探すが結局会う事は叶わず、仕方なく置き手紙をして帰る事にした。ところが帰ってみると中学生ののび太が既に来ていた。彼も勉強を見てやろうと思って自分から来たと言う。だが中学生ののび太は自分の成績の悪さを今ののび太のせいにし、無理やり勉強させ始める。
 都合のいい皮算用までし始める中学生ののび太だが、そこに今度は高校生ののび太が現れ、自分が見て勉強させるために中学生ののび太を連れていってしまった。結局いくつになっても変わりばえしないことがわかったのび太は、あんな風にならないように今からしっかりしておくようドラえもんに言われ、しかたなく勉強を始めるのであった。

 (解説)タイムマシンで3人の自分が交錯するというのは、正にタイムパラドックスの醍醐味ですね。実際、作品紹介をしていて少し頭がこんがらがってしまいました(笑)。過去と現在、未来の自分が起こすパラドックスとしては、名作中の名作が二つありますが、それはまた次の機会に・・・・・・。でも小学生の頃から家庭教師はつけなくてもいいと思うけど。
白ゆりのような女の子   16頁 小四70年6月号
 『その子は・・・・・・・・・ そう、たとえるとすれば、白ゆりのような人だった。色が白くて、あしは長く、大きな丸い目・・・・・・・・・・・・・・・。』
 少年時代のパパは空襲から逃れるため、学童疎開で肉親と離れ、田舎へ避難していた。一日中働きづめでいつも腹をすかせていたが、食べ物もろくにない時代、お腹を満たす事はほとんど出来なかった。つらい日々が続くある日、夕暮れ近い河原でパパはその少女に出会った。話はしなかった。しかし彼女のいたわりの心はパパには十分に伝わってきた。彼女はパパにチョコレートを渡すと、夕もやの中に消えていった。パパの少年時代の思い出である。
 その話を聞いたのび太とドラえもんも感動するが、その子の名前や住所といった情報は一切わからないとパパは話す。そこへやって来たママにドラえもんは誤解を招くような言い方をして怒らせてしまうが、子供の頃の話だと聞かされてママも納得する。
 のび太とドラえもんはタイムマシンでその時刻へ行き、その子の写真を撮ってきてパパにプレゼントしようと考え、パパが少女と出会った日、昭和20年6月10日に向かう。その日、疎開した子供たちは畑仕事にかりだされていた。しかし少年時代のパパだけが割り当ての面積を耕しきれなかったので教師から鉄拳制裁を食らい、さらに休憩もなしに続けさせられてしまう。2人もそんな姿に同情し、暑さと疲労でパパはついに倒れてしまう。パパを日陰で休ませる間に、のび太が身代わりになって「スーパー手ぶくろ」を使い畑を耕すことにする。
 しかしやってきた教師はのび太の髪の毛の事で怒り出してしまい、仕方がないのでドラえもんが姿を消してのび太の髪を刈る。結局のび太のおかげで今日の作業は終わったが、気がついたパパは事情を知らずに逃げ出してしまう。それを知った2人はとりあえず先に河原に向かう。
 坊主頭に毛を生やすために毛はえ薬を浴びたのび太は少女が来るのを待つが、夕暮れになってウロウロしているうちに肥溜めに落ちてしまった。脱臭剤をのび太にかけ、着るものを取りに行くドラえもん。その時パパが河原に現れた。離れ離れになっている母を想い、川に入っていくパパ。慌てるのび太だったがその時急激に髪の毛が伸びてきて、ものすごい長髪になってしまった。さらにドラえもんの借りてきた女物の服を着ると、のび太は話に聞いたあの少女そっくりになってしまった。思い出の少女はなんとのび太だったのだ。そのまま偶然ドラえもんが持っていたチョコをパパに渡し、一応そのシーンを写真に収める。
 現代に戻ってきた2人は、ママに思い出話をしているパパの姿を見て、思い出は美しいままにしておこうと写真を破り捨てるのであった。  

 (解説)原作最初期はどの掲載誌でもドタバタ色が強いのですが、連載から一年も経っていないのにこのようなギャグ一辺倒でない話を描いてしまえる事が、藤子・F・不二雄という漫画家の真骨頂なのでしょう。遠き日の思い出の少女は未来の自分の子供が女装(!)したものだった。筋だけ聞けば笑い話ですが、パパにとってはその思い出だけを胸につらい疎開生活を乗り切ったのでしょう。「思い出は大切」という、当たり前で大事な事を丁寧に描いています。戦時中の子供たちについてもくどくならない程度に描かれていますが、同時に軍人的な当時の人間を未来道具を使って驚かせるという痛快感もこめられています。「珠玉の名作」とは言えないかもしれませんが、忘れてならない一編でもあります。
おはなしバッジ   10頁 小四72年6月号
 タイムマシンの入り口から突然小包が飛び出してきた。セワシが未来から送ってきたもので、お話の主人公と同じ出来事が起こるという「おはなしバッジ」というものが入っているらしい。幼稚園で流行っていると聞いて怒るのび太だが、一応「もも太郎」のバッジをつけてみる。すると岡山のおじさんからきびだんごが届いたというので、とりあえずそれを三つ持って外に出かける。すると犬がよってきたので一個やり、通りがかりのおばさんもなぜか欲しがるが、のび太がサルと口走ってしまったために怒り出してしまい、のび太は慌ててきびだんごを前部上げてしまう。すると友達がジャイアンにシールやめんこを取られたと聞き、話どおりに一応ジャイアンの家に行くのび太。案の定殴られてしまうが、そこにさっきの犬とおばさんが現れ、叱られたジャイアンは謝ってシールやめんこを返した。おばさんはジャイアンの母ちゃんの妹で、しかもおばさんは洋服の「生地」を持っていた。
 話を聞いて面白がったドラえもんは「花さかじいさん」のバッジをつけてみると、さっきの犬が地面を掘っている。ドラえもんも一緒に掘ってみると見つかったのは10円だったが、ジャイアンも続いて掘り始め、そこからは犬の好きな骨が出てきたので、怒ったジャイアンは2人を追いかける。その時ゴミを燃やした灰をばら撒いてしまったドラえもん。それをかぶった花屋の人が自転車から転げ落ちてしまい、摘んでいた花がまるで一面に咲いたように広がった。
 今度はのび太がバッジをつける。ジャイアンにいじめられた子供を助けた2人は、その子の親からお礼にごちそうをもらう。バッジは「うらしま太郎」だったのだ。そうしているうちに時間が経ったので、お土産をもらい帰ってくる2人。
 もらったお土産を開けるとおじいさんになるか心配する2人だが、意を決したドラえもんはお土産の箱を開ける。するとその中は普通のケーキで、その様子をやって来たセワシが楽しそうに見つめるのであった。  

 (解説)F先生はこういう「こじつけギャグ」とでも言うべきものがすごく上手ですね。家に帰って『どなた?』と聞いてきたママに『野比さんはどちらへ?』と真面目に聞く2人がおかしいです。オチが少し弱いのが唯一の難点でした。
ペロ!生きかえって   10頁 小二71年11月号(まほうのくすり)
 空き地にいるスネ夫としずかに陽気に話しかけるのび太。しかししずかはそれどころではなかった。飼い犬のペロが死んでしまったのだ。スネ夫に注意されて無神経な言動をのび太は謝り、しずかはペロとの思い出を話し始める。自分がまだ赤ん坊の頃に家に来たペロとは、ずっと一緒に育ってきた。いつも一緒にいてくれ、危ない時はいつでも助けてくれたかけがえのない友達が死んでしまった事を悲しむしずかの姿を見かねたのび太は、ペロを生き返らせる事を約束する。
 しかし死んだものを生き返らせる事など、いくらドラえもんであっても出来ない事だった。悩んだ末にしずかの家に断りに行くのび太。だがしずかはのび太やドラえもんがペロを何とかしてくれると信じていた。それを陰から聞いたのび太は断ることが出来ずに家に帰ることにし、しずかと顔をあわせないようにすることにした。しかし待ちきれないしずかは先にのび太の家に来てしまい、のび太は家に戻る事も出来なくなってしまう。
 困るのび太のところにドラえもんが駆けつけ、「どんなびょう気にもきくくすり」を差し出す。タイムマシンで夕べの世界に行き、ペロが死ぬ前に飲ませようというのだ。庭から家に潜り込み、急いでタイムマシンに乗り込む2人。だがその世界でもしずかはペロのそばから離れようとしない。家を覗く2人を通りかかったお巡りさんが見咎めるが、ドラえもんのタケコプターで空に飛ばされてしまう。
 しずか達がいなくなったスキに、ドラえもんはペロに薬を飲ませるとペロは眠りこけてしまい、あとは明日、つまり現実の世界での結果を見るのみとなった。元の時間へ戻った2人は待っていたしずかと共にペロの下へ向かう。薬が効いていることを祈りながら走る2人。そしてしずかの家の前まで来た時、家の中から飛び出してきたのは他でもないペロであった。ペロに抱きつき嬉し涙を流すしずか。その姿を見て思わず2人も涙ぐむ。その日は秋空を飛びまわりたいような素敵な日となったのだ。  

 (解説)死んだものを生き返らせる。それはたとえどんなに科学が発達しても絶対侵してはならないタブー。そんなタブーを破ったのは、しずかの悲しみを癒してあげる事だけを願ったのび太の純粋な気持ちでした。タイムパラドックスの妙味と1人の少年の優しさを巧みにリンクさせた、「ドラえもん」史上の名編です。しかしそれと同時に本話はギャグ話でもあるのです。「秋空を飛びまわりたいような日」に本当に飛びまわっている人がいるのですから(笑)。あのお巡りさんは一日中ずっと飛びっぱなしだったのでしょうか。オチさえ分かればラストのコマはまさに爆笑必至です。

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