てんとう虫コミックス第31巻


時門で長〜〜い一日   9頁 小三81年7月号(時の流れを変える時門)
 宿題が終わるまでは遊びに行ってはならないとママに固く言われてしまったのび太は仕方なく宿題をはじめるが、のび太は生来ののん気さ故に宿題も早く終わらせることが出来ず、しずかとの約束を守ることが出来ないと文句を言いっぱなしで、仕方なくドラえもんは「時門」を出して、少しだけその門を閉めておく。やっと宿題を終わらせたのび太だが約束を守れなかったと泣きわめく。ところが時計を見てみると、宿題を始めてからまだ30分しか経っていない。時門で時間の流れをせき止め、ゆっくり時間が流れるようにしたのだ。安心するのび太だが、例によって時門を借りていこうとするため、世界中に影響を与えてしまう力を持つ時門を取り返そうとするドラえもんだが、ママから当番の草むしりを頼まれ、仕方なく草むしりを始める。しずかの家に行くとしずかは5時のピアノレッスンの時間までしか遊べないと言うので、早速のび太は時門を閉めて時間の流れをゆっくりにしてしまう。たっぷり遊びながらも時間が余り経っていないことに驚くしずか。ドラえもんもずっと草むしりを続けているが一向に終了時間の6時にならない。帰ってきたのび太は「宇宙ターザン」を見始めるが、もっとたくさん見ていたいと考えたのび太は時門をまた閉めてしまった。ドラえもんは時門を取り返そうとするがママに止められて出かけることが出来ない。だがさすがにママも時間の立ち方に疑問を持ち始め、宇宙ターザンの番組も次回の怪獣を持ち出して番組を続けていく。ドラえもんやしずか、パパやターザンなどいろんな人が疲れたりイライラする中、のび太は一人で眠りこけてしまう。更にみんなの疲労と苛立ちが頂点に達しつつある時、やっと草むしりを終えたドラえもんがのび太を起こして時門を開けた。機嫌の悪い両親を見て自分のしでかしたことの重大さに気付いたのび太は、このことを内緒にしておいて欲しいとドラえもんに懇願するが、ドラえもんは嫌らしい笑みを浮かべて思案するのであった。  

 (解説)時間の流れを変えるという道具としては「狂時機」が有名ですが、あちらは特定の空間内にのみ影響するのに対し、こちらは全世界規模というスケールのでかさになっており、そのためにのび太の知らないところでひどい目にあってしまう各人の様子が面白おかしく描かれています。懐かしの「宇宙ターザン」が登場するのもファンの注目点でしょう。
海坊主がつれた!   10頁 小四83年8月号(みせかけつり針)
 電話で知り合いから釣りの自慢話を聞かされるパパ。その友人は自分が釣った魚の魚拓を持ってくることになったらしいが、その人の釣り自慢がしつこいので、パパはあまり好んではいないらしい。そんなパパの気持ちを理解したのび太は、46センチの魚拓よりも大きな魚拓を作れないものかとドラえもんに相談し、ドラえもんは「みせかけつり針」を出した。目盛りをあわせて魚をこれで釣ると、ダイヤルの数字の分だけ大きくすることが出来るのだ。試しに家の金魚を10倍に大きくし、その魚拓を「瞬間魚拓用紙」にとってみる二人。二人はママから魚を借りようとするが、家にある魚はめざしと魚の切り身だけだった。そうこうしているうちにパパの友達が家に来てしまった。慌てる二人はどこでもドアでスネ夫の家に直行し、池に飼われている鯉を借りることにする。スネ夫は止めようとするが二人の物凄い剣幕に思わず引き下がってしまった。友達に魚拓を見せびらかされてイヤミを言われるパパだが、のび太達の持ってきた魚拓を見て、友達もパパ自身も驚いてしまうが、それを見て悔しがった友達はパパにどちらが大物を釣り上げるかの勝負を挑んできた。次の日曜日、勝負を開始する二人だが、順調に魚を釣り上げていく友達と違い、パパは一匹も釣ることが出来ない。海中に隠れていたドラえもん達はパパの針をみせかけつり針と交換し、ついでに魚もくっつけるが、倍率をあわせそこなったために三メートルもある巨大な魚が釣れてしまい、パパは仰天してしまう。のび太はパパに作戦の内容を説明して再び魚をくっつけようとするが、水の中のためダイヤルをあわせるのに苦労しているドラえもんの頭が針にくっついてしまい、それを魚と勘違いしたパパはどんどん引き上げてしまう。そして巨大化したドラえもんの頭が海面にでてきたため、パパと友達は『海坊主!!』と叫んで驚くのだった。  

 (解説)親子そろって自慢される立場にあるとは、これも野比家の血筋なんですかね(笑)?オチの巨大なドラえもんは結構ばかばかしくて、読んでいて笑えます。他には「魚」と言ってめざしと切り身を出してくる時の「間」が、例によって絶妙です。
つめあわせオバケ   11頁 小四80年9月号(つめ合わせオバケ)
 珍しくスネ夫に海岸の別荘へ誘われたのび太。だがのび太は喜ぶどころか泣いてドラえもんにすがってくる。夜に行うという肝試しで絶対に自分をからかってくると考えたのだ。ドラえもんが衛星テレビで見てみると、確かにジャイアンとスネ夫はのび太を驚かすために肝試しの準備をしていた。種がわかっていても怖がってしまうのび太に呆れながらも「つめあわせオバケ」を出すドラえもん。いろんな用事をしてくれるいろんなオバケが詰め合わせになって入っているのだ。試しに傘を探しているママに唐傘オバケを出して貸してあげるドラえもん。そして日は経ち、のび太達四人は別荘に到着した。早速海で泳ぐことにする4人だが、のび太は浮き輪を忘れたために泳ぐことが出来ず、それを知りながらしつこくつきまとってくるスネ夫をやり過ごすためにつめあわせの中から海坊主を出して、その頭の上に乗って泳ぐふりをするのび太。泳いだあとに家の中でくつろぐが、暑いのにも関わらずクーラーも扇風機もなく、しかものび太の分のうちわが足りないので、のび太は雪女を小さくしてポケットに忍ばせ、暑さをしのぐ。そして夜、肝試しが始まり、スネ夫達は普通に予定のコースをまわってくるが、のび太の番になって懐中電灯の電池が切れてしまった。のび太は明かりを持たずに行くことになり、その一方でジャイアン達はのび太を驚かすために先回りする。あまりの暗さに転んでしまったのび太はつめあわせから鬼火を出して、それを明かりにする。だがそれを待ち伏せているジャイアン達が見て驚いてしまう。その際の物音を聞いたのび太はろくろ首に様子を見てもらうが、そのろくろ首を見たジャイアン達は仰天して我先に逃げ出してしまう。のび太はそのままゴールしたが、代わりにジャイアン達が戻ってこない。様子を見に来たドラえもんは二人をオバケに捜させることにするが、別荘の周りにいるたくさんのオバケを見て、やっと戻ってきた二人は別荘をお化け屋敷だと思いこんでしまうのであった。  

 (解説)前話のあとの今話では本家本元?の「海坊主」が登場しており、本物と偽物の違いを確認しやすくなっています(そうか?)。驚かすつもりが逆に驚かされてしまうという構図も古典的ですが、やたら古めかしいオバケがでてきているためか、そんなに違和感は感じませんね。どちらかと言えば、オチに完結感が薄いので、それがネックになっている感じはします。
エスパースネ夫   9頁 小三80年7月号(ぼくはエスパーだ!)
 部屋でじっと10円玉を見つめているのび太。何気なくドラえもんが10円玉をとって話しかけると、気持ちが乱れたと言ってのび太は急に怒り出した。のび太はテレキネシスの練習をしていたのだ。「エスパーぼうし」を貸そうとするドラえもんだが、のび太は自分の力でエスパーになると言ってドラえもんを笑わせてしまう。バカにされたのび太は更に意地になって、空き地でテレキネシスの練習を始めるが、そこにやってきたスネ夫に10円玉をとられてしまう。話を聞いたスネ夫達はのび太をバカにし、さらに10円玉を使ってのび太をからかってしまう。悔しさのあまり熱を出して寝込んでしまったのび太を見て、ドラえもんはスネ夫をエスパーにしようと言いだし、更にある計画をのび太に耳打ちする。そして二人は「かたづけラッカー」をかけて透明になり、スネ夫の家に向かう。スネ夫は庭に置いてある椅子に座って、のび太のことを思いだして笑っていたので、のび太は思わず椅子ごと蹴っ飛ばしてしまう。座り直したスネ夫は何気なくそばにあった灰皿を見つめるが、すぐさまそれをのび太が動かす。するとそれはスネ夫には宙に浮かぶように見えたため、スネ夫は自分がエスパーだと勘違いしてしまう。だがもっとよく確かめることにしたスネ夫は紙くずや空き缶、イヌや果ては土管で試してしまい、持ち上げているドラえもん達は疲れてしまう。念力で自分の体を空に浮かべることを思いついたスネ夫は空を飛ぼうとし、のび太はスネ夫の体を持ったままタケコプターで飛び上がるが、持ち方が悪かったためにスネ夫はくすぐったがって暴れたため、地面に落ちてしまう。これらのことで自信をつけたスネ夫は知り合いを全部集めて、みんなの前で超能力を披露しようとする。しかし当然出来るはずもなく、慌てるスネ夫の姿を見てさわやかな、しかし皮肉めいた笑顔を見せるのび太達であった。  

 (解説)中期以降のドラは道具メインの話になっているので、必然、こういった「道具がメインでない話」は珍しくなってしまうわけですが、今話ではその分、生き生きしたキャラクター描写が見られるのが面白く、特にスネ夫の活躍?ぶりは特筆ものですね。「念力が使えるなら自分の体も浮かべられる」という考えは「エスパー魔美」からの流用ですが、これよりも前に原典があるんでしょうか?でもこう見ると、ホントにスネ夫は「魔美」に縁が深いですね(笑)。
モーゼステッキ   10頁 小四83年7月号
 しずかと一緒にボートに乗ったのび太だが、慣れていないためにボートを漕ぐのにも四苦八苦する。そこへどこからかラジコンのモーターボートが近づいてきた。ラジコンはボートの手前で急ターンし、のび太達に水しぶきを浴びせる。それはもちろんスネ夫のラジコンだったが、面白がったジャイアンが勝手に操縦したためにラジコンはボートにぶつかって沈んでしまう。のび太達はそれぞれ家に帰るが、スネ夫達はラジコンが沈んだのはのび太のせいだと言って、ラジコンをとってくるよう無茶なことを言ってきた。のび太はドラえもんに相談するが、話を聞いたドラえもんはおもむろに昔話を始めた。それは賢人・ヨーゼが奴隷として苦しめられているイスラエル人を救うため、神に祈って海を真っ二つに裂き、無事に逃げおおせたという話だった。その話をしてからドラえもんは「モーゼステッキ」を取り出した。あの話のように、水を真っ二つに割ることが出来るのだ。洗面器の水で試したものの、まだ効力を疑うのび太はどこでもドアで入浴中のしずかの下に行き、お風呂の水を話って効果を確かめた。川を真っ二つに割った二人はラジコンを探し始めるが、のび太は魚と遊んだり、ゴミの中から何かを探して遊んだりと、なかなか真面目に探さない。ボートに乗っている人からも文句が出たので急いで探す二人は、やっとラジコンを発見した。ラジコンをスネ夫に返すのび太だが、その際調子に乗ってステッキのことを話してしまったために、ジャイアン達にステッキをとられてしまうが、あのステッキはもうすぐ電池が切れると話すドラえもん。その通り、電池が切れてステッキの効力を失ったために川は元に戻り、ジャイアン達は溺れてしまうのであった。  

 (解説)モーゼって、元々なんの話だっけ?「十戒」という映画は知っているのですが。ついでに言えば「十戒石板」もモーゼの話がモチーフだったはずです。話についてはごく普通の水準作ですが、目を引くのはボートに乗っている人が平然と『こまるな、川をわけちゃ。』と言っていることですね。川が分かれるという異常事態にも平然としているこの人達は、ナンセンスなドラ世界をそのまま体現していると言えるでしょう。
恐竜さん日本へどうぞ   22頁 小五81年8月号(恐竜たちに「招待錠」を)
 科学博物館で行われた「中国の恐竜展」というイベントで、かつて中国大陸にいた様々な恐竜たちの化石を見て感心するのび太だが、同時になぜ日本には恐竜の化石が出ないのかと不満がる。翌日、しずかを家に呼んでその事を詳しく話そうとするのび太だが、横やりを入れてきたスネ夫がしずかに恐竜の卵の化石を見せると言いだしたので、のび太は部屋を掃除しろと言うママの注意も無視して、ドラえもんにすがりつく。ドラえもんはお客を呼ぶための薬・「招待錠」を出し、一錠を半分に割り、片方を部屋に置いてもう片方を試しに通行人に食べさせてみる。すると通行人は突然のび太の部屋に上がり込んできたが、部屋に置いてある方の薬をずらすと、薬の効果は消えて通行人も出ていった。早速しずかを呼びに行こうとするのび太だが、とりあえずしずかのピアノレッスンが終わるまで待つことにする。その間に、のび太はものすごいアイデアを思いついた。それは招待錠の半分を中国の恐竜たちに食べさせ、日本に連れて来るというものだった。時間を越えて働くことが出来る招待錠を持って一路大昔の中国大陸へ向かう二人。一億三千七百年前に到着した二人は、化石の発掘分布地図を頼りにどこでもドアで探し回ることにする。まずチンタオザウルスうを探しに行くが、その化石は白亜紀後期のものであり、二人が来たのは前期だった。しかしチンタオザウルスはこの時代にも生息していたようで、二人は招待錠を食べさせる。その調子でいろんな恐竜にどんどん招待錠を食べさせる二人。そして恐竜たちはのび太の部屋がある地点に向かって移動を始めた。一仕事を終えた満足感に浸る二人は、帰りがけに恐竜が到着した頃の日本を見に行くことにするが、日本に行ってみるとなんとそこは一面海であった。まだこの時期は日本列島は出来ていなかったのだ。招待錠の力に逆らえない恐竜たちはみんな海の底へ沈んでいってしまったと知ったのび太は思わず海に飛び込んでしまう。自分のやってしまった行為を後悔し、また恐竜たちへの罪悪感にかられるのび太は現代に戻ってきても泣きやまない。ドラえもんも話しかけることが出来ないが、その時ドラえもんは招待錠のかけらが部屋に一つもないことに気付いた。二人がいないうちにママが部屋の掃除をしたのだと言う。タイムマシンで様子を見に行くと、招待錠の効果が消えてしまった恐竜たちは自分のすみかへと引き返していた。二人はママに感謝するが、しずかの一件を思いだしたのび太は急いでしずかの下に向かう。しかししずかは卵の化石を見に行くことにしてしまい、招待錠も全て使ってしまったためにどうすることもできなくなってしまうのであった。  

 (解説)一般的にはあまり知られていない(はず)の中国の恐竜についての説明や、さりげない伏線の絶妙な張り方など、作者の物語構成の巧みさを改めて実感することが出来る佳作です。のび太が「かつて日本は海だった」という事実を知らなかったのは、今までの話、そして「のび太の恐竜」を考えると矛盾しているともとれますが、その辺は大目に見るべきでしょう。様々な恐竜たちも大きなコマを使って大迫力で描かれており、作者の恐竜に対する憧れを実感できると思います。
よい家悪い家   8頁 小五79年2月号
 しずかを家に誘うのび太だが、しずかは同時に誘ってきたスネ夫の方についていく。なぜスネ夫の家に行くのか疑問に思うのび太だが、ドラえもんがその理由を話そうとすると、妙にひがみだして訳の分からない理由を言って怒り出してしまう。スネ夫の家にはいつも面白いものがあって楽しいからだという理由を話したドラえもんは、のび太に頼まれて「家の感じ変換機」を出した。家を楽しくするプレートをセットして、のび太がお客のつもりで玄関から入ってくると、突然楽しい雰囲気の音楽が流れ始めた。さらに自動的に飛び出すスリッパやドレミ音階の音を鳴らす階段、その他様々な楽しい仕掛けが施されるようになり、のび太も大満足する。ドラえもんは用事があったので出かけてしまうが、のび太も機械にプレートを乗せて準備をする。早速しずかを連れてきてみるが、家に入るとなぜかお化け屋敷のような音楽が鳴り響いた。怖がるしずかを何とか上がらせるのび太だが、先程と違い、スリッパはしずかの顔をぶったり、ドアや電灯もしずかを痛めつけたりして、なぜかしずかを追い返しかねないような変なことばかりが起こる。そしてトイレの便器がしずかに噛みついてくるのを見てとうとうしずかも怒り出し、帰ってしまった。戻ってきたドラえもんが見てみると、のび太は間違えて嫌なお客を帰す「こわい家」のプレートを使ってしまっていたのだった。  

 (解説)個人的には冒頭の、ひがみ根性全開ののび太が好きですね(笑)。ドラがいないためにのび太が失敗するというのもよくあるパターンですが、それにしても今回のしずかはひどい目にあいすぎのような(笑)。楽しい時と怖い時の家の落差を味わえれば、結構面白い作品になると思います。
録験機で楽しもう   10頁 小六79年7月号
 部屋で何やらラジカセのようなものに繋いだヘッドホンのようなものをつけているドラえもん。しかもドラえもんは何か一人芝居のようなことをしている。のび太が聞いてみると、ドラえもんはこの道具は「録験機」であると言い残して、腹ごなしにと出かけていってしまう。のび太は試しにヘッドホンをかぶって再生させてみると、突然目の前に大量のドラやきが現れ、しかもそれをドラえもんの手が勝手に口に押し込んでくる。苦しみだすのび太だが戻ってきたドラえもんが機械を止めてくれたので何とか助かる。これはカセットに記憶させた体験をいつでも再生して実感することが出来る機械で、先程のはドラえもんが「ドラやき30個早食いコンテスト」で優勝した時の体験だった。のび太は試しに「銀河の果てのなぞの惑星探検記」をつけてみるが、あまりにも刺激が強すぎたためにのび太は泡を吹いて倒れてしまう。のび太は面白そうな体験を集めることにし、手始めにママに体験を吹き込んでもらう。しかしそれは知り合いの人に自分の容姿を誉められる体験だったので、のび太は友達の体験を記録しに行く。美味しいものを食べたという友達の体験は断り、先程ホームランを打ったという友達の体験を記録して、自分のことのように楽しむのび太。そのあとスネ夫に軽井沢の別荘の体験を記録してもらうが、そこではボロ別荘で雨漏りやカから逃げる体験が記録されていた。のび太は先日ハワイに行って来たしずかの体験を記録し、空き地でそれを味わうが、そこにジャイアンが現れる。ジャイアンは自分のためにのび太に何か面白い体験を記録するように命令するが、そう言われてもすぐには面白い体験など浮かぶはずもなく、逆にジャイアンに殴られる時のことをリアルに想像してしまう。しびれを切らしたジャイアンが録験機を再生するが、そこにはのび太がジャイアンに殴られるという想像が記録されており、ジャイアンも自分が殴られているかのように痛がるのであった。  

 (解説)今で言う「バーチャルリアリティ」みたいなものなんでしょうか。様々な体験を自分のことのように味わうのび太の派手なリアクションが、見ていて楽しいものになっています。ママの体験を味わった時ののび太の無表情な顔は個人的に最高ですね。「惑星探検記」でのび太はいったいどんな経験をしたのかも非常に気になるところです(笑)。
やどり木で楽しく家出   10頁 小六81年6月号(「やどり木」を使って、らくらく家出)
 今日もママに激しく叱られたのび太は家出を考えるものの、生活力のないのび太には家出が出来ないことはわかっていた。そんなのび太の所に未来からのタイム小包が届く。開けてみるとそこには「やどり木」という道具が入っていた。これは無銭旅行に使う道具で、これを家の前に植えるとどこの家にでも泊まり込むことが出来るのだと言う。それを聞いたのび太はこっそり持ち出して、念願の家出を決行することにする。試しにラーメン好きの人の家にやどり木を植えてみると、泊まることが出来るようになった。喜ぶのび太だがそんな時、ジャイアン達が遊んでいた野球ボールがおっかないおじさんが住んでいる家に飛び込んでしまった。のび太はやどり木を使ってその家に入り、ボールをとってくる。良い家を探すのび太は写生に行こうとしているしずかに出会うが、そこへ雨が降ってくる。とりあえず近くの家にやどり木を使って入り込むのび太。しずかは緊張するがのび太は構わずに家の人から食べ物をもらい、のび太はこの家に住むことにする。しずかは帰ろうとするが雨が強いので仕方なく居残ることにし、すっかり安心したのび太は家の人にいろんな注文をつけて、さらに昼寝してしまう。その頃、やどり木がないことに気付いたドラえもんはのび太を捜しに家を飛び出す。雨が止んだ為にしずかは帰り、のび太もその家にテレビがないというので、一旦家に帰ってテレビを見ることにする。その間にしずかから話を聞いたドラえもんはやどり木を持ち去ってしまった。家でテレビを見るのび太をまた叱るママだが、のび太もそれに反発し、ドラえもんの話も聞かずにのび太は家を出ていってしまう。だがやどり木がないためにさっきの家にも入ることが出来ず、困り果てたのび太は自宅の前でウロウロしながらドラえもんの助けを待つのであった。  

 (解説)親に反発する気持ちも分かりますが、やはり行動原理がまだ子供であるためか、結局今回ものび太は失敗してしまいましたね。今回も何気なく小池さんが登場していますが、「スケスケ望遠鏡」の頃から比べると、ずいぶんと扱いが変わったものです。セリフもあるし(笑)。
あとからアルバム   8頁 小五83年9月号
 昼寝するドラえもんをモデルに絵を描くのび太だが、どうもうまくいかず、ドラえもんの顔に落書きをしてしまう。そこへやって来たパパは真の芸術がなんであるかをわかりやすく説き、更に小学生の頃に全国図画コンクールで金賞を取った時の写真を見せようとするが、それは戦争中に空襲で焼けてしまったと言う。それらの話を聞いて自分にも芸術肌のパパの血が流れていることを実感したのび太は、より良いモデルを描くためにしずかの下へ向かう。目を覚ましたドラえもんは降りていくが、ママに顔を笑われたので落書きに気付く。一方ののび太はモデルのしずかに妙な注文ばかりしてしまうので、とうとうしずかを怒らせてしまう。そこへやって来たドラえもんは激しくのび太を詰問するがのび太は知らぬふりをして、更に証拠を見せろとまで言いだしたので、ドラえもんは「あとからアルバム」を出した。時間と人物を設定して3分待つと、その時の状況が写真になって出てくるのだ。のび太は試しに色々な過去の自分を写し出すが、それらの写真にはいつものび太が昼寝をしているところが写されていた。更にこれを使ったある考えを思いついたのび太はしずかの写真をモデルに絵を描こうとするが、時間を選んでいるために、しずかの入浴中の写真ばかりが出てきてしまう。空き地で更に写真を見る二人だが、偶然やって来たしずかにボロボロにされて写真も全部取り上げられてしまう。自分のことを棚に上げてのび太を叱るドラえもんだが、のび太は最後に一つだけ良いことに使いたいと言う。それはパパが小学生の頃にコンクールで金賞を取った時の記念写真を再び作り、パパにそれと気付かれないように見せることだった。のび太は出来上がった写真を引き出しに隠し、パパはその写真を見つけて喜ぶのであった。  

 (解説)いつもの如く、オチへの伏線が絶妙ですね。中盤の展開で思いっきり笑わせておいて、最後でほのぼのとした雰囲気にさせるという展開も秀逸です。今回はしずかに写真を取り上げられる時の「間」も面白いですが、『じつにまずい、もっとだせ。』と言っていたくせに、二つあとのコマではのび太だけを叱っているドラがイイですね(笑)。
ターザンパンツ8頁 小二81年12月号(ターザンパンツとターザンロープでどうぶつの友だち・ターザンになろう!!)
 また野良犬に足をかまれてしまうのび太。逃げなければ追ってこないと話すドラえもんだが、のび太は怖がってしまうのでなかなかうまくはいかない。そこで動物に慣れさせるためにドラえもんは「ターザンパンツ」を出してのび太に履かせる。これを履くと動物たちと話せて仲良くなることが出来るようになるのだ。「ターザンロープ」を使ってターザンのように屋根を飛び交うのび太はついターザンのように叫んでしまうが、するとどこからともなくカラスが集まってきた。叫び声にもどの動物を呼ぶかで色々違いがあるらしいのだが、ドラえもんにコーチしてもらってものび太には違いがわからない。イヌを呼ぶために練習するのび太だが、代わりにネコやゴキブリが来てしまい、あげくにネズミまで集まってドラえもんは逃げてしまう。ウンザリしたのび太は背伸びをすると同時に声を出すが、その何気ない声がイヌを呼ぶ声だったようで、いろんなイヌが集まってきた。その中には先程のび太に噛みついたイヌもいたが、みんなで仲良くしようと言うのび太の言葉にみんなは賛成する。調子に乗ったのび太は今度はライオンを呼びたいなどと考えるが、突然目の前にライオンが現れた。だがいくらなんでも町中にライオンがいるはずもないので、のび太は勝手に夢だと思いこんでしまう。しかしライオンは本物で、どこかの家で飼われていたが檻を破って逃げ出したのだと言う。急いでライオンを追いかけるのび太はライオンを撃ち殺そうとする警官達の前に立ちはだかり、ドラえもんはどこでもドアでライオンをアフリカに連れていく。一件落着したのだが、みんなはのび太がライオンを捕まえたことを信じない。そこでターザンロープでの綱渡りを見せようとするのび太だが、木の枝にパンツが引っかかって脱げてしまい、素っ裸になったのび太を見てジャイアンとスネ夫は笑い、しずかは帰ってしまうのであった。

 (解説)「てれびくん」に掲載された方とは随分話が異なりますが、こちらの方が良くまとまっていると思います。違いのわからない叫び声を練習するところがバカらしくてイイですね。集まったイヌの中に「大魔境」のペコみたいなイヌがいたのはご愛敬と言うところでしょう。
むすびの糸   9頁 小五81年12月号
 つまらないことでしずかとケンカしてしまったのび太。だがあとになって反省したのび太が謝ろうと思っても怒ったしずかは答えてくれず、絶望に浸って泣いてしまうのび太。見るに見かねたドラえもんは何とかしようと「むすびの糸」を出した。まずのび太に結びつけ、同じ糸をしずかに結びつけると引き寄せられて10分間離れなくなってしまうので、その間に謝るようアドバイスする。のび太はどこでもドアでさっと結びつけようとするが、ちょうどしずかは入浴中だったのでますます嫌われてしまう。急いでしずかの家に向かうのび太はジャイアンにぶつかってしまい、追いかけられてしまう。一旦は帰ろうとするのび太だがそれでも諦めずにしずかの下へ向かうと、しずかはどこかへ出かける様子で、のび太は輪にした糸を投げつけるが、それはしずかの持っている本に引っかかった。だが引き寄せられるどころか、のび太を見たしずかはまだ怒っている様子で行ってしまう。糸を結んでしばらく経ってから効果が聞いてくるのだと言う。その通りにのび太としずかは引き合い始めた。しかしその先にジャイアンがいることに気付いたのび太は何とか止まろうとするが自分では止められず、ジャイアンがよそ見をしている一瞬のスキをついて移動する。しかし途中でスネ夫にあったしずかはスネ夫に借りていた本を返してしまい、スネ夫が引き寄せられるようになる。だがスネ夫は履いていたローラースケートで思いっきり反対方向に走りだしたので、のび太もそれにあわせて移動させられてしまう。ところがスネ夫はジャイアンに本を取り上げられてしまい、結局のび太はジャイアンとくっついたのでギタギタにされてしまう。しずかとの仲直りを諦めてしまうのび太だが、そこに通りがかったしずかがのび太のことを介抱してくれ、その時にのび太も謝って二人は仲直りをする。ボロボロになりながらも結果的には成功したことを喜ぶのび太であった。  

 (解説)思えばのび太としずかがケンカをするなんて話は、今までなかったのではないでしょうか?そう言う意味でも貴重な話ですね。今話はしずかと仲直りするために走り回るのび太のドタバタチックな騒ぎがメインですが、同時に例えケンカをしている相手でも、怪我をした人を放っておけないというしずかの優しさも描いています。もちろんこれがメインというわけではないのですが、こんな風にさりげなく「優しいしずか」が盛り込まれていると、読んでいる読者もラストのコマののび太のような嬉しい気分になってしまうものです。
バリヤーポイント   9頁 小三82年12月号
 ジャイアンに殴られたりイヌにかまれたり転んだりと、今日も色んな災難にあってしまうのび太。見かねたドラえもんは「バリヤーポイント」を出した。ポケットに入れておくと半径2メートルの範囲にバリヤーが出来るのだ。だがドラえもんはのび太のためにはならないと貸すのをためらうが、窓から偶然飛び込んできた野球ボールにのび太がぶつかってしまうのを見て、仕方なく貸すことにする。スイッチを入れるとバリヤーが発生し、そばにいたドラえもんは吹っ飛ばされてしまった。だがママが持ってきたおやつのホットケーキも食べることが出来なくなってしまい、「ホのつくもの入れ」と言うことでホットケーキをバリヤーの中に入れる。しかしそう言った場合は他にもホのつくものが何でも入るようになってしまうらしい。外に出たのび太は野良犬をからかい、ぶつかりそうになった車まで壊してしまう。そして空き地にいたジャイアンとスネ夫をわざと怒らせ、バリヤーを使ってからかい始める。しつこく絡んでくるのび太にスネ夫は電子ゲームを貸すことで許してもらうことにし、のび太もデのつくものを入れることで電子ゲームを手に入れる。その様子を見ていたドラえもんはバリヤーポイントを帰してもらおうとするが、もちろん近づくことは出来ず、更に雨が降ってきてしまう。バリヤーのおかげで濡れないのび太は雨宿りしているしずかをバリヤーの中に入れるが、その時の様子をジャイアン達が観察していた。しずかを家まで送ったのび太にジャイアンとスネ夫は「ジャ」と「ス」が頭文字のマンガを持ってきてのび太に貸そうとし、それを見たのび太はよく考えずにバリヤーの中に入れるようにしてしまったため、ジャイアンとスネ夫もバリヤーの中に入ってしまうのであった。  

 (解説)話のプロット自体は極めて単純なので、そんなに深く考えずに楽しむことが出来ると思います。やはりのび太がジャイスネをバカにする時のコマのインパクトが一番でしょう(笑)。個人的には「ジャンボーグX」も忘れてはいけませんね。なんでいきなりこんな古いネタを持ち出してきたんだろ?
かべ景色きりかえ機   9頁 小三83年4月号
 春だというのにまだお花見に行っていなかった野比家だったが、ようやく今日、お花見に行くことが出来るようになった。のび太達は楽しみに待つが、パパが会社に急用が入ってしまい、お花見は中止になってしまう。大人の事情がわからないのび太はふてくされてしまい、それを見たドラえもんは衛星中継で桜を見ようとするが、のび太は本物の桜を見たいと駄々をこね、ドラえもんは次に「花咲か灰」を出して部屋中に桜の花を咲かせるが、のび太は更に屁理屈をこねるのでドラえもんも諦めてしまう。しかしある道具のことを思いだしたドラえもんはその道具・「かべ景色きりかえ機」を出す。壁を通してどこの景色でも見ることが出来るのだ。ドラえもんは花野山公園の風景を壁に映しだすが、酔っぱらった花見客が間違えてのび太の部屋に上がってきてしまい、更に家中を歩き回るので、ドラえもんは機械のスイッチを切ってしまい、花見客は慌てて退散していった。人が入ってこないように高い所から桜を見ることにし、二人は「グルメテーブルかけ」を使って家にいながらの花見を楽しむ。そして夜遅く、パパが帰宅したことに気付く二人。仕事があったとは言え、パパ達がお花見に行くことが出来なかったことを残念がっているのを見たのび太は、パパ達にも花見をさせてやろうと考え、パパ達は夜桜を眺めながら花見を楽しむのであった。  

 (解説)今回の道具は壁に景色を映すのではなく、壁と他の空間を繋いでしまう道具のようですね。子供らしいのび太の理屈ももちろんですが、行きたくても行くことが出来ない大人の事情もさりげなく描いていて、奥の深さを感じます。ラスト、花見をする野比一家の楽しそうな様子が、こちらまで楽しい気分にさせてくれる一編です。
まんがのつづき   11頁 てれびくん82年5月号(早くつづきをみよう)
 明日発売のはずのマンガ雑誌を今日手に入れたことを自慢するジャイアン。のび太は人気のマンガ「アバレちゃん」だけでも読ませてもらおうとするが、ジャイアンは読ませようとしない。そこへ笑いながら現れたスネ夫は、来週分の「アバレちゃん」の試し刷りを見せびらかしに来た。例によって見せて貰えないのび太はドラえもんに泣きつくが、のび太はアバレちゃんの説明をする時にドラえもんと比べてしまったため、ドラえもんはひがんでしまう。のび太はタイムマシンで未来に行って雑誌を読んでこようとするが、既にマシンのキーは抜かれていた。だが諦めないのび太は作者である島山あららのアシスタントになることにし、フニャコフニャ夫の家に住所を聞きに行くが追い返されてしまう。そこへやって来た雑誌の編集者についていって島山あららの家についたのび太は手伝いを始めるが、何も知らないのび太はべた塗りを失敗して怒らせてしまう。さすがに諦めてしまうのび太だが、部屋に戻るとドラえもんがアバレちゃんを読んで笑っていた。やっと協力してくれることになったドラえもんは衛星中継で出来上がった原稿を見ようとするが、島山はいろんな雑誌の締切に追われていて、とても完成する気配がない。そこでドラえもんは「かべかけスタジオ」を出し、「とりよせバッグ」で島山を連れてくる。怒る島山だが、スタジオの便利さをドラえもんから聞かされて、満足して原稿を書き始める。早速出来上がった原稿の一ページを読む二人だが、それ以降がなかなか出てこない。そこでドラえもんは加速ボタンを押して数百倍ものスピードで原稿を描き上げさせてしまう。島山は全部の連載を一年分描きあげてしまい、二人も一年分のマンガを全部読んでしまう。一年遊ぶことが出来ると、原稿を持って喜びながら島山は帰っていった。だがアバレちゃんのこれからの展開を話そうとしたのび太は、先を読む楽しみがなくなると断られてしまう。マンガ雑誌を取り合うジャイアン達を眺めながら、一年分の連載を先に読んでしまったことを後悔する二人であった。  

 (解説)モロにマンガ家の理想が具現化しているような道具ですね(笑)。藤子F先生もこんな道具が欲しかったんでしょうか。今回もマンガ雑誌のパロディ名が登場したり、直接表現されていないものの、のび太が原稿をベタで汚してしまったりと、どことなく初期の作品世界を思わせる部分も混じっています。自分のことを比べられてひがんでしまうドラの後ろ姿が何となくかわいいですね。
改造チョコQ   22頁 小五82年12月号
 みんなはスネ夫の家でチョコQレースを行うが、いつもの如くのび太は触らせてもらえない。スネ夫は更に自分で改造したオリジナルのチョコQを見せ、ジャイアンとしずかに改造のためのチョコQをあげるが、のび太だけはもらえず、腹を立てたのび太は自分も改造をすると宣言してしまう。自分の持っているチョコQをいじり始めるのび太だが、結局バラバラに壊れてしまい、それを見たドラえもんは「未来のチョコQ」を出した。ゼンマイ一巻きで40メートルは走ることが出来るのだと言う。さらにどんな改造でも思った通りにやってくれる「万能改造自動ドライバー」を出し、改造しやすくするためにビッグライトでチョコQを大きくし、のび太は喜んで改造を始める。そして改造は完成するが、ヘッドライトにビッグライトとスモールライトを組み込んだために小さくすることが出来なくなってしまう。だがのび太は光線を鏡に反射させることでこの問題をクリアし、部屋の中でチョコQを思い切り乗り回す。のび太はスネ夫に見せびらかしに行ってしまうが、ドラえもんは悪い予感がして仕方がない。野良犬をからかったり水たまりの中を走ったりしてスネ夫の家を目指すのび太。一方のスネ夫はジャイアンと一緒に、庭に作った特設コースでチョコQレースを展開していた。ジャイアンがスネ夫のチョコQを池に突き落としたために二人が言い争っている所へのび太のチョコQが乱入し、前コースを制覇してしまう。チョコQを自慢するのび太だが、それを見たジャイアンはチョコQを遠くに投げ飛ばしてしまい、更に小さくなったままののび太をチョコQでからかう。のび太はチョコQを探しに行くが、水たまりやイヌに苦労させられ、駆けつけたドラえもんに助けられる。話を聞いたドラえもんはチョコQを見つけて自分も小さくなり、仕返しを開始する。ジャイアン達のチョコQを大きくして驚かせた二人は次に小石をぶつけて二人を翻弄し、さらにチョコQに仕込んであった風船を使ってジャイアン達を縛り付けてしまう。気が済んだのび太だが最後にしずかにもチョコQを見せたいと言ってしずかの家に向かう。だがチョコQに乗った二人は小さいために、玄関に現れたしずかのスカートの中まで見えてしまい、怒ったしずかはチョコQを踏みつぶしてしまうのであった。  

 (解説)チョコQと言うのはもちろん「チョロQ」のパロディですが、模型好きの先生の趣味なのか、今話でもかなりマニアックな部分が頻出しています。小さくなって乗り物を運転するというのはよくあるパターンですが、今話ではそれまでの話と全く関係ない所でオチが設定されていて、それが新鮮さを出しています。『バカを人にするな』と、わけの分からない間違いをするのび太が変におかしいですね。それにしてもいくら覗かれたからと言って、のびドラの乗っているチョコQを踏みつぶしてしまうしずかはかなり乱暴だ(笑)。
ためしにさようなら   12頁 てれびくん83年2月号(さよなら、のび太)
 みんなは空き地でサッカーをして遊んでいるが、のび太は相手にされない。のび太はしずかの所へ向かうが、しずかまでものび太のことを無視してしまう。だがそれは、アメリカへ引っ越してしまう友達を見送りに行くためだった。その様子を見て、もし自分が引っ越すことになったらみんなは悲しんでくれるのかどうか、疑問に思い始めるのび太。のび太はしずかやジャイアン達に自分が引っ越すとウソをつくが、誰からも相手にされないためにのび太はショックを受けてしまう。取りなすドラえもんだが、どうしても試したいのび太はもしもボックスを使って自分がアメリカへ引っ越すことにしてしまう。急にパパのアメリカ転勤が決まったためにのび太は引っ越すことになったが、ドラえもんは噂が街に広まるのを待たせる。しばらく待っていると、家に誰かが訪ねて来た。しずかだと思って飛び出すのび太だが相手はジャイアンで、ジャイアンはおもむろにのび太の手を握り、涙を流しながらのび太に別れの言葉を話し、言葉に詰まって飛び出していってしまう。ジャイアンの意外な一面を知った二人だが、次に訪れたのはスネ夫だった。スネ夫も今までの意地悪をのび太に謝り、お詫びと言っておもちゃをたくさんよこしてしまう。さらにクラス代表の友達がのび太の送別会を行うと知らせに来たため、さすがに止めようとするドラえもんだが、のび太はしずかが来るまでは止めないと言って聞かない。だが先生が英会話の練習セットを置いていったところでさすがにのび太も嫌になってしまうが、その時ママが家の外で佇んでいるしずかを見つけた。部屋に上がったしずかは別れの悲しさからのび太に抱きつき、何も言えずに泣き出してしまう。その様子を見てウソをついている自分達の行為を恥じた二人だが、しずかは外に飛び出していってしまった。のび太は元の世界に戻そうとするが、なんともしもボックスが故障してしまった。このままではのび太達は本当にアメリカに行くことになってしまう。必死に修理するドラえもんだが、家では近所から餞別をもらい、さらに北海道のおばさんまで見送りに来ることになってしまい、大いに慌てる二人。そこへ再び訪ねてきたジャイアンはのび太を空き地へと誘い、今までいじめた分だけ自分のことをのび太に殴らせる。だがその時ようやく修理が完成してドラえもんは元の世界に戻したため、ジャイアンは自分を殴っていたのび太に怒り出してしまうのだった。  

 (解説)やはりみんな本当は優しいんだな、という感じの話で、人間の優しさを信じ続けてきた藤子F先生らしい話です。純粋な感動話ではありませんが、どんな人間にも心の奥には優しさを持っているという、人間の希望を謳った優しい、読者にエールを送るかのような話になっています。アメリカ支社に転勤するあたりの理由や、こんな時でもギャグキャラを通す先生なんかは面白いですね。



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