てんとう虫コミックス第32巻


巨大立体スクリーンの中へ   9頁 小三84年3月号(超巨大立体テレビ)
 スネ夫に48インチの大きなテレビを自慢されるのび太達。だが今回はのび太は怒らず、スネ夫の自慢に張り合わないことにする。ところが家に帰ってみると、ドラえもんが「超巨大スクリーン立体テレビ」を買ってきた所だった。ジャイアン達にカッコつけたことを気まずく思いながらも、のび太はドラえもんと一緒に大スクリーンの立体テレビを楽しむ。始めに怪獣映画を見た二人は次に伊藤翼の歌番組を見るが、興奮したのび太は身を乗り出しすぎて、テレビ画面の中に落ちてしまう。巨大な翼の足につぶされそうになって逃げまどうのび太だが、画面が切り替わったそのスキにのび太は脱出する。早速しずかにも見せようと連絡するが、なぜか間違えてスネ夫の家にかけてしまい、テレビのことがジャイアン達に知られてしまう。のび太を脅してテレビを借りたジャイアン達はジャイアンの家にテレビを持っていき、動物番組を見始める。さらに画面の中に入れることを知って、二人は遠くまで遊びに行ってしまう。だがそこへジャイアンの母ちゃんがやって来て、電気代の節約にとテレビのスイッチを切ってしまったため、二人はテレビの世界から出られなくなってしまう。ドラえもん達は仕方なく普通のテレビで同じ動物番組を見るが、その中でジャイアン達がサイに追いかけられているのを見て驚くのであった。  

 (解説)テレビの中へ自由に入れるというのは、まさに「こんなこといいな」の世界なので、個人的には好きな設定です。「電気代」と、やけに庶民的なことを持ち出すジャイアンの母ちゃんもイイ味出してます。確かにあの電力をどこから供給しているのか不思議ですからね。オチは「テレビとりもち」と同じ感じです。
のび太も天才になれる?   10頁 小四82年12月号(宇宙救命ボート)
 今夜もまたママに叱られるのび太。結果的に2時間15分59秒叱られたのび太はウンザリして、庭にいるドラえもんの所へ向かう。ドラえもんは以前使った「宇宙救命ボート」の整備をしているのだった。整備を終えたドラえもんは家の中に入るが、家出を考えていたのび太は何気なくボートのスイッチを押してしまい、宇宙に飛び出してしまう。ボートはあっという間にワープして目的の星に到着するが、今回の星はやけに地球に似ており、町並みも、そしてのび太の家までそっくりだった。しかもママに叱られたのび太は結局地球に戻ってきたのだと思い、ドラえもんに文句を言おうとするがドラえもんはおらず、明日のテストの事を考えて憂鬱になる。翌朝、ジャイアン達が自分の成績の悪いことを話しているのを聞いて、更に情けなくなってしまうのび太。そしてテストは始まったが、なぜか問題は一年生で習うような、簡単な足し算の問題だった。のび太は軽く満点を取るが、なぜかそれを聞いてみんなは驚く。国語の時間でも、全部ひらがなで書かれた簡単な文章を読んだだけでみんなは驚き、のび太を天才扱いしてしまう。友達からも感心され、ママにも百点を取ったことを泣いて喜ばれるのび太は、道を歩く人にまで尊敬されて気分を良くするが、その時家の外に自分そっくり、と言うより自分そのものの人間を見つけ、びっくりして飛び出す。その相手ものび太で、家出をしたがお腹が空いたので戻ってきたのだと言う。やはりのび太は地球によく似た別の星にたどり着いており、ここでは小学校で足し算引き算、中学校でかけ算、高校でわり算を習うような教育レベルの星だったのだ。それらの計算を全部小学校で習うと聞いて驚く異星ののび太に、のび太は諦めずに頑張れば自分のようになれると明るく励まし、ボートで地球に帰ってきた。だがのび太は帰ってきても天才気分を引きずって勉強せず、ドラえもんも困ってしまうのであった。  

 (解説)宇宙救命ボートを使っているものの、今話は「もしもボックス」などにおけるパラレルワールドの部類に属する話です。冒頭のママと同じ説教を終盤でのび太に言わせるという、予想しづらい伏線の張り方も巧妙です。あまり人に説教できる立場ではないのび太が他人に説教するという構図が面白いのではないでしょうか?でも、こんな教育制度の星、ホントならあまり高い文明を持てないような気も…(笑)。
落とし物つりぼり   10頁 小四82年2月号(おとし物つり堀とつりざお)
 ジャイアン達と一緒に釣りをするのび太だが、釣れるのは空き缶やヤカンといったゴミばかりで、不機嫌になったのび太は帰ってしまう。家ではママがバケツを探していたが、そのバケツはのび太が釣りに持っていってしまったものだった。取りに戻っている暇もないので、ドラえもんは「落とし物つりぼりとつりざお」を出した。四次元スクリーンのつりぼりが場所を探して、つりざおが品物を探してくれるのだ。バケツを釣り上げるドラえもんだが、それはジャイアンのバケツだったために慌てて戻し、その弾みでジャイアンの頭にバケツがぶつかり、ジャイアンはスネ夫を疑ってしまう。だが突然空中に現れた糸がのび太のバケツを釣り上げるのを見て、二人は怖がって飛んで帰る。バケツをママに渡したのび太は、この道具を使って昨日落としたボールペンを探すことにする。気長に待ってようやくかかったが、なぜか変に重い。ドラえもんと協力して引っ張るとズボンが釣り上げられ、そのポケットの中にボールペンが入っていた。一方、いきなり自分のズボンが消えて怒り出すジャイアン。更にのび太は去年落とした10円玉を探させ、つりざおは町中の10円玉を拾い上げてしまう。喜ぶのび太だが、ドラえもんは一枚を残して残りを交番に届けに行く。のび太はしずかに見せに行くが、そこにはスネ夫が来ていた。釣り堀を見たスネ夫は「古靴や穴の空いたヤカン」と口走ったために、釣り竿がそれを釣り上げるように認識してしまい、のび太はゴミばかりを釣り上げてしまう。更に引っかかったためにのび太はスクリーンを覗くが、弾みで向こう側のゴミ捨て場に落っこちてしまう。帰ろうとするがスネ夫が持ち出したためにスクリーンが消えてしまい、のび太はしずかの家に向かうが、途中で下半身を新聞紙で隠したジャイアンを見て震え上がる。スネ夫は空き地で、今までジャイアンに取られたものをつりぼりで取り返していたが、家に帰ってその様子に気付いたジャイアンは釣り糸にくっついてスクリーンから飛びだし、スネ夫をギタギタに痛めつけてしまうのであった。  

 (解説)釣りを題材にした道具も結構登場しますが、今話は道具よりも何故かやたらと被害に遭うジャイアンの姿が面白いですね。新聞紙で隠しながら、効果線入りで怒るジャイアンの姿には爆笑です。冒頭の、『むじゃきな魚をエサでだましてつりあげるなんて。』というのび太の言いわけも愉快ですね。
オンボロ旅館をたて直せ   12頁 小六80年5月号(オンボロ旅館をたてなおせ)
 パパと何か議論を交わしているのび太。だがその議論は決裂に終わったらしく、のび太は怒って部屋を飛び出してくる。のび太は小遣いの値上げを頼んで断られたため、家出を決行することにした。家を出るのび太だが、ドラえもんが自分のことを止めないのを見て、ドラえもんのことを薄情だと思いこんでしまうが、ドラえもんは苦労を味わった方がいいと考えながらも、衛星中継でのび太を監視していた。行く所のないのび太だが、雨に降られたので近くの古い建物の下で雨宿りをする。ところがいきなりその建物から男性が飛び出してきて、のび太を中に連れ込んでしまう。ここは「つづれ屋」という三百年以上前から続くホテルで、支配人はのび太の話を聞かずに部屋に泊めてしまう。お世辞にもホテルとは思えない汚い部屋だが、のび太はとりあえず自立したことを自覚する。だが何をしたらいいかも思いつかないので、さしあたり風呂に入ろうとするがお湯が出ず、支配人に聞くと銭湯を紹介されてしまい、ご飯を食べようとするとラーメンを注文すると言いだし、さらに電話が止められているので自分で出向いて行ってしまう。その時点で始めてのび太はお金を持っていないことを話し、のび太はここで働くと進言するが、このホテルは客が来ないのでガスや水道も止められ、潰れる寸前なのだと言う。気の毒に思ったのび太はとりあえずお客の呼び込みを始めるが、やはり誰も来ようとはしない。だが何故か一人の男性がふらっとホテルに誘われてきた。特別室に案内するのび太だが、やはり部屋は汚い。ところが突然部屋がゴージャスな雰囲気に変わってしまった。ずっと様子を見ていたドラえもんが駆けつけてくれたのだ。お客を呼ぶ「カムカムキャット」と「室内旅行機」の立体映像を使ったのだ。お客もぼちぼち増え始めたが、お湯や食事のことで客から早速注文を受けたので、ドラえもんは本人だけにそういう気分になってもらう「ソーナルじょう」を出し、客に飲ませてから風呂に入れたり食事を出したりする。道具のおかげでどうやらホテルとしての体面を保ち、明るい兆しも見えてきたつづれ屋だが、支配人は家出してヒッチハイクをしているという息子の話をし、その事を自分に照らし合わせたのび太は家に帰ることにする。二人が帰る時、また一人カムカムキャットに引き寄せられてきたが、何とそれは支配人の息子・19えもんであり、支配人は息子が帰ってきたことを喜ぶのであった。  

 (解説)言うまでもなく、「21エモン」の設定をそのまま流用した、いわゆる「クロスオーバー漫画」です。これはやはり純粋なファンサービスもあるのでしょうが、つづれ屋親子の関係をうまくのび太に照らし合わせているところがうまい構成ですね。カムカムキャットやソーナルじょうなど、懐かしの道具が出てくるのはファンには嬉しいところです。藤子Fワールドの広がりを感じさせる、スケールの大きな話かも知れません(笑)。
超リアル・ジオラマ作戦   11頁 小六84年1月号
 自分で作ったジオラマをスネ夫達に見せるのび太だが、あまりの稚拙さにバカにされてしまい、スネ夫はのび太のものより数段優れたジオラマ写真を見せる。スネ夫はプラモの道について熱く語り、従兄弟に家庭教師を頼んで物置を特設ジオラマスタジオにしているのだと話す。のび太は参考にするためにスタジオを見たがるが断られてしまい、ドラえもんに泣きつく。プラモのことなどよくわからないドラえもんだが、とりあえずスネ夫のスタジオを見ることにする。スタジオではスネ夫の従兄弟がスネ夫にどうすればより良いジオラマを撮影できるかを教授していたが、説明が難しくて二人には理解できない。ドラえもんは実物大のプラモを買ってきて撮影することを提案し、未来デパートへ買いに行く。喜ぶのび太はスネ夫や他のみんなにも自慢するが、帰ってきたドラえもんは、実物大プラモは値段が高くて買えなかったと言い、のび太も大慌てしてしまう。逃げ出すドラえもんを捕まえようと掴んだのび太は、四次元ポケットだけを取ってしまった。とりあえずプラモのロボットをリアルに見せるために汚れのようなものを塗りつけるが、肝心のジオラマをどうにかしなければならないので、ポケットを探るとスモールライトとインスタントミニチュア製造カメラが出てきた。そこで名案を思いついたのび太はカメラでビルのミニチュアを作り、それを並べてセットを作り、スモールライトで小さくなって、実際の景色のようなジオラマを撮影することに成功する。写真を見たみんなも驚きながら感心し、スネ夫は泣いて悔しがる。満足して帰ってきたのび太だが、家に入ると何やら大きなものが家の中に置いてある。何とこれはドラえもんが無理して買ってきた実物大のプラモであり、その大きさのせいでドラえもんはママと口論をしているところだったのだ。  

 (解説)ジオラマの撮影方法に2ページも費やしてしまうのだから、作者自身の熱の入れようも自ずとわかるというものです。まあ本当はドラが言っているとおり、「好きなように楽しんで作る」事が一番大事だとは思いますけどね。すれ違いになってしまったために迎えたラストのオチが無性におかしくて、僕としてはお気に入りです。「プラコン大作」の名前が出ているのはご愛敬ですね。
ビデオ式なんでもリモコン   10頁 てれびくん83年3月号
 ドラやきの最後の一口を食べる時に、ドラやきとのしばしの別れを惜しむドラえもん。その時ある考えを思いついたドラえもんは「ビデオ式なんでもリモコン」を出し、自分がドラやきを食べたらリモコンを自分に向けて、巻き戻しのボタンを押してくれるようのび太に頼む。言われたとおりにのび太がやると、ドラえもんが食べたドラやきが、ビデオの巻き戻しのようになって元通りに戻ってしまった。ビデオのように現実を操作することが出来るのだ。ドラえもんはボールを投げてスローやストップ、巻き戻しを試すが、貸して欲しいというのび太の頼みは断る。良いことに使うというのび太は最初に宿題を倍速を使って早く終わらせ、さらにうるさいママの小言も早送りで終わらせてしまい、更に外に出ても、壺を落としそうな人を巻き戻して助ける。その様子を見たドラえもんは安心して一応帰るが、のび太はここぞとばかりにいたずらに使い始め、巻き戻しを使ってスネ夫の描いた絵を消してしまったり、家の皿を割ったために、それを庭に埋めたジャイアンを巻き戻してばらしたり、風でめくれたしずかのスカートを巻き戻して何度も見たりしてしまう。話を聞いたドラえもんは一応のび太の下に向かうが、巻き戻しを使われてしまって近寄ることもできない。のび太は更に調子に乗って遊び回るが、そこへまたドラえもんが立ちはだかったため、今度はドラえもんをストップさせようとするが、ドラえもんは持っていた鏡で電波を反射してのび太に浴びせ、のび太は動けなくなってしまうのであった。  

 (解説)当時一般にも普及し始めたビデオをいち早く用いた道具です。ビデオを元にした道具もこれから更に出ることになりますが、今話の道具はその元祖と言うところでしょうか。道具の力のせいでラストのオチを迎えてしまうという展開は、「道具からのしっぺ返し」を端的に表現した、わかりやすい展開だと思います。今に始まったことではないですが。
フェザープレーン   7頁 小一82年3月号
 スネ夫にフェザープレーンを見せてもらうみんなだが、のび太のくしゃみでフェザープレーンは吹き飛ばされてしまい、怒ったスネ夫はのび太を追い返してしまう。のび太にせがまれたドラえもんは本物の飛行機のような形の「フェザープレーン」を出し、プロペラのゴムを巻いて、つけると体を軽くすることが出来る「フェザーゴーグル」をのび太につけさせ、フェザープレーンに乗せることにする。ママからお使いを頼まれたのび太はフェザープレーンでお使いに行くことにし、スイッチを押してフェザープレーンは動き始めた。それを見てみんなが羨ましがるが、あまりにも移動速度が遅いのでのび太はフェザープレーンを降り、歩いてお使いに行ってしまう。お使いを住ませたのび太はドラえもんと一緒にフェザープレーンの下に行くが、そこにはもうジャイアン達が集まっていた。何とかごまかしてジャイアン達を追い返したのび太は残ったしずかにもゴーグルを貸し、のび太はしずかと二人でフェザープレーンに乗り込むが、ゴムが取れてしまったために不時着し、その間に現れたジャイアン達が飛行機を取ってしまう。ゴーグルをつけて遊ぶ二人だが、ちょうどそこでのび太はまたくしゃみをしてしまったために飛行機は吹き飛び、ジャイアン達は電柱に頭をぶつけて気絶してしまうのであった。  

 (解説)久々登場のカラー原稿作品ですが、低学年向けの話であるためか、話の展開はいつも通りなのですが、何故かのんびりとした不思議な味わいがある話になっています。「のび太のくしゃみ」をうまく最初と最後に絡めていて、うまい作りになっていますね。
野比家が無重力   12頁 小四78年10月号(重力ちょうせつ機)
 天井にくくりつけたロープを腰に巻き付けてぶら下がっているのび太を見て、ドラえもんはカメのようだと笑うが、のび太はこれは無重力状態の訓練で、将来宇宙パイロットになって火星に到達するための練習だという。突然夢みたいな事を言いだしたのび太に驚きながらも、夢を持つこと自体の良さに納得したドラえもんは「重力調節機」を出した。試しに部屋の重力を半分に下げてみると、机も簡単に持ち上げることが出来るようになり、無重力にすると部屋中のものがフワリと浮かび始めた。コントロールが効かないのび太にドラえもんは指にはめる小型の空気噴出機を渡し、それでバランスを取ることを教える。無重力空間を楽しむ二人だが、ドラえもんは用事があるために出かけていき、ドラえもんのいないスキにのび太は家中を無重力にしてしまう。無重力空間になった家中を飛び回るのび太は屋根の上に出てみるが、しずかを見かけたのび太はつい外に出てしまったために、地面に落下してしまう。しずかを家に誘ったのび太はジュースを飲もうとするが、無重力のためにジュースは球状になって散らばり、のび太は構わずに吸い始めるがしずかは嫌がって帰ろうとする。それを引き留めるのび太だがトイレに行っておしっこをしてしまったために、球状に散らばったおしっこを全身に浴びてしまう。更におならをしたために加速がついてコントロールを取ることもできなくなってしまい、慌てたしずかが重力調節機をのび太に投げつけたために、のび太と衝突した調節機は壊れ、同時に機械の効果も消えて重力は元に戻り、のび太は帰ってきたママに、無重力のために散らばった家中の荷物の片づけを言いつけられるが、無重力になれてしまったために、自分の体の重さに苦労するのであった。  

 (解説)普通の家を宇宙空間みたいな無重力に変えてしまうという、相変わらずのナンセンスさを発揮していますが、今話では無重力に関する科学的な説明こそないものの、無重力だからこそ起きる現象を細かく描いていて楽しいです。おならで加速力を付けるなんて、世界中探してものび太ぐらいのもんでしょう(笑)。はっきり目立ってはいませんが、結構下品なシーンが多いのも今話の面白さを引き立てていますね。
なんでも空港   8頁 小二81年9月号(なんでも空こう)
 屋根の上から紙飛行機の飛距離比べをするのび太とドラえもん。だが道路に紙飛行機が散らばってしまうために先生から注意され、だが部屋の中でやっても面白くない。そこでドラえもんは外に飛び出さないように「なんでも空港」を庭に置く。空を飛ぶものなら何でも降りてくるのだ。いろんな方角に紙飛行機を飛ばしても、紙飛行機はちゃんと空港の所に降りてきて、更に近くを飛んでいたトンボまで空港に降りてきた。誰かが飛ばした風船や風で飛ばされた洗濯物までやって来て、面白がる二人。そこへ逃げたカナリヤを追いかけるしずかが通りがかる。二人はしずかと一緒にカナリヤを探し、裏山にいたカナリヤを空港を使って捕まえることに成功する。そのあとは色とりどりのチョウが空港に降りてくるが、突然飛んできたラジコン飛行機までも空港に着陸してしまう。それはジャイアンが動かしていたスネ夫のラジコンで、話を聞いたスネ夫はラジコンで空港ごっこをするとドラえもんにウソをついて空港を借り、昆虫採集を始めてしまう。だが最初に飛んできたのは頭に毛を三本はやしたオバケだった。文句を言うジャイアン達に文句を言い返したそのオバケは立ち去って行くが、その後もホウキにまたがった怪物少年や、壺に乗った宇宙人の王子、さらに超能力少女まで着陸してきて、『日本の空には、へんなのが飛んでるんだなあ。』とぼやくスネ夫達。だが今度はそこへジャンボジェット機が突っ込んできたためにスネ夫達は空港を持ったままで逃げ、ドラえもんは空港をたたむよう二人に叫ぶのであった。  

 (解説)今話の最大のトピックスはやはり、かつての藤子不二雄作品のキャラ達がエキストラ出演していることでしょう。Q太郎に関してはジャイアン達との絡みまで用意され、往年の藤子ファンにとってはこの上ないサービス作品となったことだと思います。ストーリー的にも道具の性能を生かした展開になっていて、特にラストのやたら迫力あるオチは文句なく面白いですね。
時差時計   11頁 小五83年7月号
 近頃下がりっぱなしのジャイアンズの成績を上げるべく、ジャイアンはこれから日が落ちるまで猛特訓を始めると言い出す。それを聞いて震え上がったのび太は一旦抜け出してドラえもんに助けを求めるが、部屋に入ると何故か暗く、月まで出ていた。時計を見ると午後9時を示している。ドラえもんは昼間の月見をしたくなったので「時差時計」を使って時間を変更したのだと言う。この時計でいろんな国の時間にあわせることで、周りの時間をその国の時間にあわせることが出来るのだ。それを借りたのび太はハワイあたりの時間に時計を合わせ、空き地に隠してセットする。するとジャイアンが練習を始めようとした矢先、空は夕暮れになってしまいカラスも飛び始めた。不思議がるジャイアンだが実際に陽が沈み始めているため、ジャイアンは解散することにする。ところが、空の色がいきなり切り替わる場所があることにジャイアンは驚いてしまう。時間を戻したのび太はしずかの所へ行くが、しずかは公園へ写生に行こうとしていた。ところが雨が降ってきたためにしずかは家に帰ってしまうが、のび太はホンコン時間に合わせたために雨は止んでしまい、再びしずかと公園に向かう。のび太はしずかと長く話をするためにどんどん時差を広げて行くが、しずかは絵が描き終わったので帰ってしまい、時差を戻すともう夜になってしまっていた。慌てて帰ったのび太はテレビの「鉄人戦士」を見逃し、さらにママにも叱られてしまうが、時差時計を使って時間を元に戻し、さらに「鉄人戦士」も見ることに成功する。しかし宿題をする時もずっと時差を動かし続けていたために、のび太は結局時差を戻さないままで居眠りをしてしまい、翌朝の7時に時差を戻すと何と10時半になってしまい、パパとのび太は慌てて出かけていくのであった。  

 (解説)定番の「時間を操作する道具」に「時差」という概念を加えていることで、一風変わった道具になっています。空き地で時差をあわせた時に、一瞬で夕暮れになってしまうところは面白いですね。カラスがカアカアと鳴いているところなんかが特に(笑)。
スネ夫のおしりがゆくえ不明   8頁 小二82年9月号(だるまおとし)
 家で鏡を見ながら、自分の低い身長のことを気にするスネ夫。ママに相談してみても良い案は出ず、その事を考えながら外出するスネ夫だが、空き地でしずかから木に引っかけたボールを取ってくれるよう頼まれる。だがただでさえ背の低いスネ夫が届くはずもない。そこへやって来たのび太とドラえもんは話を聞いて「だるまおとしハンマー」を出し、木の幹をだるまおとしのように少しずつ弾きだしていき、木が低くなったところでボールを取り、しずかから感謝される。ドラえもんは木を元に戻すが、それを見ていたスネ夫がドラえもんのお腹を弾き飛ばして、そのスキにハンマーを持っていってしまう。弾き出されたお腹を持ってドラえもんをからかうのび太だが、きちんとお腹を戻してやる。スネ夫は歩いているジャイアンのお腹をいきなり弾き飛ばし、自分より背を低くしたところでジャイアンをいじめ、自分に服従することを約束させる。それを聞いてジャイアンの体を元に戻すスネ夫だが、調子に乗っているところでジャイアンにハンマーを奪われ、自分のおしりを弾き飛ばされてしまう。ジャイアンに脅されて二度とこんな事をしないと誓うスネ夫だが、勢い良く飛ばしたためかスネ夫のおしりが見つからない。しずかの目撃情報から子供が転がして遊んでいたことをつかむが、その子供はイヌにおしりを取られてしまったと言う。イヌが行ったという裏山に向かう二人だがどうにも見つけることが出来ず、そのうちイヌがおしりを舐めはじめ、そしてかぶりつき始めた。相談されたドラえもんは裏山のどこにあるかを突き止めるためにスネ夫に「音楽イモ」を食べさせ、おしりからメロディーガスを出させる。そしてその音を頼りにしてようやくスネ夫のおしりを見つけることに成功した。しかしおしりを見つけてもまだガスが残っているため、みんなはまだガスを出すスネ夫から逃げ出すのであった。

 (解説)一見すると普通のギャグ話のようですが、おしりが弾き飛ばされたり、久々にメロディーガスが登場したりと、ものすごくナンセンス性の高い話になっています。人間までもだるまおとしのように弾いてしまうという道具からしてナンセンスだし、かなり下品なオチ(笑)もおかしいです。スネ夫とジャイアンがお互いのお腹やおしりを吹き飛ばすシーンの、妙に迫力があるところや、『人のおしりで遊ぶな!!』というスネ夫のセリフは最高に面白いですね。
のび太シンデレラ   7頁 小二81年8月号(絵本入りこみグツ)
 物置を整理していたら、のび太が子供の頃に読んでいた絵本がたくさん出てきた。部屋に持ち帰って懐かしむのび太だが、突然ションボリしてしまう。のび太は昔から「浦島太郎」の最後を読むたびに、その末路に同情して悲しくなってしまうのだと言う。ドラえもんは「絵本入りこみぐつ」を出して、絵本の世界に入ることにする。そこでは老人になった浦島太郎が人生に絶望し、海へ入水自殺を図ろうとしていた。それを止めたのび太はドラえもんに頼み、ドラえもんはタイムふろしきを使って若返らせ、さらにタイムベルトを貸して浦島太郎を三百年前まで送る。満足して現実世界に戻ってきたのび太だが、手伝いのことでママに叱られたため、ドラえもんは慌ててママの所に行くが、のび太はまた絵本の中に入ってしまう。そこは「シンデレラ」の世界で、ちょうどシンデレラがガラスの靴を落としてしまうシーンだった。一目見ようとのび太は靴に近寄るが、その時に転んだ弾みでガラスの靴を割ってしまい、王子に見つかる前に慌てて逃げたため、靴が片方脱げてしまい、帰ることが出来なくなってしまう。王子はのび太の靴を使って「シンデレラ」を探すがどうしても見つからない。城の人間は町中で持ち主を捜すが、そこにのび太が飛び出した。ママに言いつけられてのび太を呼びに行ったドラえもんは、本の中から発せられるのび太の声を耳にする。本の中ではあの靴のせいで、のび太はシンデレラとして王子と結婚させられているのだった。  

 (解説)「しあわせな人魚姫」の時と基本的なコンセプトは同じですが、話自体はまるっきり変わっており、道具の応用性の広さがここから知ることが出来ます。「竜宮城の七日間」に比べるとおおらかな話ですが、こちらでは浦島太郎をのび太達が救うという理想的展開になっています。今話から、のび太は結構絵本の類が好きらしいということがわかりますが、もしかしたらここから「ドラビアンナイト」の発想が生まれたのかも知れませんね。
大富豪のび太   10頁 小五81年7月号(「もしもボックス」でお金持ち!)
 漫画の本に挟まれていた、お年玉の一万円を見つけたのび太は早速何かを買いに行こうとするが、居間でパパ達がお金の話をしているのを聞いて立ち止まる。パパ達は物価の安い時代のことを話に出すが、それを聞いたのび太はもしもボックスを使って、今の世界を昔のようにものすごく物価の安い世界にしてしまう。のび太の一万円はそのままになっているので、のび太は本屋やおもちゃ屋に行って品物を買おうとするが、一万円はあまりに高額なため、お釣りをもらうことが出来ず、のび太は困ってしまう。ドラえもんは元の世界に戻すことを勧めるがのび太にお金をやると言われたために、銀行に預けて必要な分をおろせばいいと助言してしまう。ドラえもんに一円分を渡したのび太はタクシーを使ってデパートに行き、パパとママに高級ゴルフクラブセットと高級婦人服をプレゼントし、更にいろんなものを買い付けたために家におけなくなったのび太は、隣の家の人に千円払って立ち退いてもらい、とりあえずそこに荷物を置くことにする。ジャイアンはスネ夫のラジコン飛行機を空き地で操縦していたが、突然現れた大きなラジコン飛行機にスネ夫のラジコンは落とされてしまう。それはのび太が動かしていたものだったが、その他にものび太が持っているたくさんのラジコンを見、好きな物をプレゼントすると言われたジャイアンはのび太の味方になってしまう。さらにみんなにごちそうを与えるのび太だが、スネ夫はろくな目にあわないと忠告する。それを聞いて心配になったのび太が家に帰ってみると、銀行や金融など様々な人たちが家の前に集まっており、のび太は家に帰ることもできない。しかものび太はいろんな誘拐犯に狙われてしまい、ついには誘拐犯同士で争う始末でさすがに困り果てたのび太は元の世界に戻してしまった。とりあえず漫画一冊を買いに行ったのび太だが、350円という値段を聞いてその「高さ」に驚き、更にドブに一円玉を落としてしまったため、のび太は必死になって一円という「大金」を探すのであった。  

 (解説)今までにもしもボックスで作られた世界に比べると、今話の世界は「人よりもたくさんお金を持っている」というだけなので、ある意味今までで一番日常に近い世界とも言えますが、そこはやはりドラえもん。そんな単純な話に終わってはいません。誘拐犯同士で争うところはホントにバカらしくておかしいのですが、僕たちにしてみれば大した額ではない「一円」程度で振り回される人たちの姿が、滑稽で愉快ですね。その感覚がオチの「ドブさらい」に繋がっていると思います。物価の説明を怠っていないところもさすがですね。
ほしい人探知機   9頁 小五82年9月号
 のび太としずかは空き地で捨てられた子ネコを見つけるが、二人の家にはそれぞれの事情があるために拾っていくことが出来ず、二人は後ろ髪を引かれながらもその場を去る。ネコのことを心配し悩むのび太だが、そこへ玉夫おじさんが声をかけてきた。おじさんもなぜか暗い顔をしている。おじさんは車のセールスを始めたのだが、今まで一つも契約を取ることが出来ず、すっかり自信をなくしてしまったと言う。その事をのび太から相談されたドラえもんは、車が欲しい人を捜せばいいと「ほしい人探知機」を出した。おじさんの持っている車のパンフレットを機械に覚えさせ、あとは機械が自動的に車を欲しがっている人を捜してくれるのだ。次第に反応が近くなってきたのでガイドアローを発射すると、暗そうな雰囲気の人に当たった。だがその人は車を欲しがってはいるものの、お金がないので買えないと言う。仕方なく次を探し始めるが、今度は免許取り立てだと言うお金持ちの人に当たったため、急いで二人はおじさんをその人の家に向かわせる。次にのび太は先程のネコに飼い主を見つけるため、探知機を使ってネコが欲しい人を捜す。だが当たったのはボロッちいアパートに住んでいる、先程の暗い雰囲気の男性だった。案の定、お金がないのでネコを飼うことが出来ないと聞いて理不尽に怒り出してしまうドラえもん。その時のび太は机の上に置いてある漫画の原稿を目にした。その人はマンガ家志望なのだが今まで一度も売れたことがなく、今回のマンガは最後のチャレンジのつもりで描いたが、怖くてどこにも出せないと言う。それを聞いた二人はマンガを探知機に覚えさせて欲しい人を捜すことにする。すると何故か反応があったので、二人は急いで駆けつける。相手はマンガ雑誌の編集者で、フニャコフニャ夫の原稿を取りに来ていたのだが、フニャコの原稿が締切を過ぎても全然出来ていないので、困り果てていたのだった。二人の説得で一応あの青年のマンガを見ることにしたが、そのマンガを読んだ編集者はその人の才能に惚れ込み、会社の専属契約を結んでしまう。契約金が入ったためにその人はアパートを引っ越し、ネコを飼うことが出来るようになるのであった。  

 (解説)F先生のSF短編にも同じような道具が出てきますね。それはともかく、今話のストーリーは「自動質屋機」の焼き直しのような感じの話で、売れないマンガ家を二人が救済するという所はほとんど同じですね。捨て猫を思いやるのび太の優しさも改めて描いており、そして姿こそ見せないもののフニャコ先生も再び登場させており、オールドファンにはニヤリとさせられるような要素が満載の話です。
腹話ロボット   13頁 てれびくん81年10月号
 久しぶりにジャイアンが新曲を作ったと言う。スネ夫はとっさにおべっかを使って歌を聴きたいとウソをつくが、のび太が下手に話したためにジャイアンは怒って帰ってしまう。その間に二人は逃げるが、のび太は家にも帰りづらいと言う。家ではのび太が0点を取ったことを知り、ママが待ちかまえているのだった。それを聞いたスネ夫は見本を見せると言って家に帰り、自分を叱ろうとするママを上手に説得して静めてしまう。それを見たのび太は自分も試してみることにする。家ではドラえもんがママを説得することに成功していたが、乱入したのび太がまた変なことを言ったために、余計にママを怒らせてしまう。口べたなのび太はもっと話すのが上手になりたいとドラえもんにしつこくせがみ、ドラえもんは仕方なく「腹話ロボット」を出す。これを肩に乗せると人形が適当なことを話させてくれるのだ。ママに庭の草むしりをするよう言われたのび太だが早速ロボットが働いて、適当な理屈を付けてママが草むしりをするように仕向けてしまう。この調子で小遣いまでもらってしまうのび太だが、ドラえもんはロボットを止めるとごまかしがばれることを忠告する。遊びに出かけたのび太は途中で先生に会い、いつものように説教を受けるが、のび太はまた適当なことを言って先生をごまかし、そんな様子を見てドラえもんも呆れ返る。そこへジャイアンがリサイタルのチケットを配りながらやって来た。しかしごまかしてリサイタルを止めさせると息巻くのび太。お風呂に入っているために来られないしずかを残したままでリサイタルを始めるジャイアンだが、そこへのび太がまたもや巧みな話術を披露し、ジャイアンはリサイタルを中止してしまう。のび太はその事を伝えるためにどこでもドアでしずかの所に行くが、またお風呂場に出てしまう。だがのび太はそこでも裸について意気軒昂に語り、そのためにしずかは裸のままで散歩に行こうとする。さすがにのび太も止めようとするがロボットはなおも話させ続け、ロボットを外すことでやっとごまかしは解かれたが、ごまかしに気付いたママやしずか達がのび太を叱ろうと探し始め、のび太は土管の影にこっそり隠れるのであった。  

 (解説)しずかにストリーキングまでさせるとは…。恐るべし、「ドラえもん」(笑)。いちいち列挙は出来ませんが、それぞれの場合に対するのび太の言い訳や話術の内容がたまらなく面白いですね。個人的には先生に言った言い訳は何となく共感できなくもないのですが(笑)。その言い訳のバリエーションと、言い訳を聞いて何故か涙まで流して感動してしまう各人の様子に注目すべきですね。
本はおいしくよもう   8頁 小五83年2月号(本の味の素)
 パパは去年のび太に買ってやった本の感想を聞くが、のび太は読んでいないために適当なことを言ってしまい、パパを怒らせてしまう。パパが買った本はシュバイツァーの伝記だったが、のび太は字ばっかりの本は読めないのだ。仕方ないとは思いながらもドラえもんは未来デパートへ行って楽しく読めるようになる道具を買いに行くが、嫌がるのび太は外へ出かけてしまう。居間でまだ怒っているパパだが、ママが飾ってある絵を変えようとするのを見て、何故か慌てて自分がやると言い出すパパ。その絵の額の中にはパパのへそくりが入っているのだが、いち早くそれに感づいたママはへそくりを探そうとし、パパはズボンや書斎の本の中に隠そうとするがママが来るので安全に隠しておけない。パパは悩んだ末に、のび太の部屋にあるシュバイツァーの伝記の中に挟んでおくことにする。ところがそこへ未来から戻ってきたドラえもんが現れたので、パパはまたびっくりしてしまう。ドラえもんはしずかの所に行ってみるとやはりそこにのび太がいたので、買ってきたばかりの「本の味の素」を渡す。これを本にふりかけるとどんな本でも面白くなるのだ。試しにふりかけた百科事典を読んでのび太は大笑いし、電話帳にふりかけるとのび太もしずかも次の番号がどうなるのかをハラハラしながら読み続ける。そして家に帰ったのび太は伝記を読み始め、その内容に感動するが、そこからパパのへそくりが出てきた。パパはママに内緒にしてもらう代わりにのび太にお金を一割渡し、のび太は「いい本を読むとためになる」という言葉を実感するが、その勘違いに複雑な面持ちを見せるドラえもんであった。  

 (解説)本来なら全く関係するはずのない二つの事象が終盤で連鎖するという、おなじみの技巧的な手法を用いた作品です。やはり本の味の素をかけて辞典や電話帳を楽しく読むという描写が一番面白いのですが、パパがへそくりを隠すために四苦八苦する姿もなかなか楽しいものになっていますね。久々に書斎も登場して、個人的には少し得した気分です(笑)。
連想式推理虫メガネ   20頁 小四82年3月号
 昼寝をしていたのび太にスネ夫から電話がかかり、面白いことがあるのですぐに来るよう言われてしまう。仕方なくのび太はスネ夫の家に向かうが、その途中、道路工事をしている「ヤブイ医院」の前にある水たまりに足を突っ込み、更に野良犬に追いかけられて走って逃げながらスネ夫の家に到着する。やって来たのび太をスネ夫はジロジロ眺めてから居間に通し、先に来ていたジャイアン達に自分が推理した、のび太がここに来るまでの行動を解説するが、それは全てが当たっていた。本を読んで推理の仕方を勉強したというスネ夫は探偵事務所を設立し、事件解決に乗り出した。それを羨ましがったのび太は自分も探偵になろうとドラえもんに「シャーロックホームズセット」を出してくれるよう頼むが、それは既に壊れてしまっていた。代わりのものをと頼まれてドラえもんは「連想式推理虫メガネ」を出した。ドラえもんは試しにドラやきをのび太に隠してもらい、その隠し場所を虫メガネで探し当てることにする。メガネは連想していって見事隠し場所を当てたが、のび太がドラやきを食べてしまったことが発覚したのでドラえもんは怒り出してしまう。のび太も早速探偵事務所を設立するが、スネ夫の方に向かうしずかはのび太は当てにならないと言う。しずかは財布を落としたそうだが、スネ夫は事細かにしずかに様子を聞き、苛ついたのび太は虫メガネで推理するが、バス停という答えが出た時には二人の姿は既になかった。のび太はバス停に行くがそこには財布はなく、スネ夫の推理通り、しずかの財布は交番に届けられていた。その事から一気にスネ夫の名声が広がり、悔しがるのび太は何か事件を解決しようとジャイアンの下に向かうが、そこでは母ちゃんがジャイアンを探している最中だった。頼まれたのび太は虫メガネでジャイアンを探すが、「ブタ」という連想が出てきた所で怒ったジャイアンが飛び出し、ジャイアンはのび太を逆恨みしてしまう。のび太はドラえもんに頼ることにするがドラえもんはまだ怒ったままだった。しかしのび太が買ってきた二つのドラやきを見てすぐにのび太を許し、スネ夫の様子を見ることにすると、スネ夫は実際のコイン盗難事件の調査を依頼されていた。
 スネ夫は事件現場となったその人の家に向かうが、どこからも犯人が侵入した形跡はなく、さすがのスネ夫も困り果ててしまう。だが突然犯人が分かったと言って笑い出すスネ夫。スネ夫は「どこでもドア」を持っているドラえもんが犯人だと確信したが、ドラえもん達はたまらずそれに抗議に向かう。ドラえもんは虫メガネで犯人を推理するが、そこでも犯人はドラえもんだと出てしまい、わけが分からなくなってしまう。二人は一時間以内に犯人を捜すことになったが何の手がかりもない。二人は以前使った「落とし物つりぼり」を使って探すことにするが、何と世界中のどこにもコインは存在していないという。困り果てる二人だが、昨晩に戻ってコインを見張ることにし、タイムマシンで過去に向かう。だがいつまでたっても犯人は現れず、ついイライラした二人はケンカを始めてしまい、その騒ぎで家人が目を覚ましてしまった。結局朝になっても犯人が現れなかったので、ドラえもんはとりあえずコインだけを持って現代に帰ってくるが、帰ってきたところでドラえもんは重大なことに気付いた。今ここでドラえもんが持ってきたから金貨が消えたことになってしまったのだ。このややこしく、そしてバカらしい話をどう説明しようか悩む二人であった。  

 (解説)久々にドラ世界の醍醐味を味わえる「タイムパラドックス」の登場です。オチ自体は今までの作品でも使われることがありましたが、今回はそのオチに繋がる前に「落とし物つりぼり」を出してワンクッションおいた展開になっています。本格的なスネ夫の推理も見ていて面白いし、「以前使った道具」として、この32巻の最初の方で出てきた落とし物つりぼりを使用しているあたりは、作品の収録順番の巧みさを感じさせます。
しずちゃんさようなら   12頁 小六80年11月号(しずちゃん、さようなら)
 落ち込んだ様子で下校するのび太は偶然しずかに会うが、しずかを見るやのび太は逃げるように走り去って行き、それを見て不思議がるしずか。帰ってきたのび太はドラえもんに「しずかと別れる」という重大な決意を話す。今日のび太は先生に「このままではろくな大人になれない」と厳しく説教され、もしそうなった時にしずかと自分が結婚したらしずかを不幸な目にあわせてしまう。だから別れることにしたと言うのだ。あまりにも未来のことなので笑ってしまうドラえもんだが、のび太はどこまでも真剣な様子で、大好きなしずかの幸せのために離ればなれになることを思いつき、ママに転校話を持ち出すが怒られてしまう。とりあえずのび太はしずかと自分の関係を断つべく、今まで借りた本を返すことにする。しずかの家に本を届けたのび太は、ママにしずかにさよならと伝えてくれるよう頼んで去っていく。その様子を聞いてますます不審がったしずかはのび太の様子を追いかけ、しずかの姿を見たのび太は思わず駆け寄ろうとするが寸手の所で足を止め、しずかから逃げようとするが機になったしずかはのび太から離れようとしない。困ったのび太はしずかに嫌われるためにわざとスカートめくりをし、一応嫌われることに成功する。別れの辛さを一人堪え忍ぶのび太。ちょうどそこに通りがかった出木杉にしずかのことを託し、泣きながら家に走り去って行く。家に戻ってきてからもまるっきり生気のないのび太を見て、バカらしいとは思いながらも同情するドラえもん。一方出木杉からものび太の様子を聞いて心配するしずかだが、先生にのび太が叱られていたことを話題にしているジャイアン達の話を立ち聞きし、しずかはのび太が自殺を考えているのではないかと勘違いし、急いでのび太の家に駆けつける。困ったのび太はドラえもんに頼み込み、「虫スカン」を出してもらうが、のび太は間違えて全部飲み干してしまったために強烈なふゆかい放射能を発散し始め、ドラえもんもママも家から逃げていってしまう。しずかも逃げようとするが、薬をいっぺんに飲んだために気持ち悪くなってしまったのび太の助けを求める声を聞いて、何とかしずかはのび太の元まで辿り着き、のび太にくすりを全部吐かせる。しずかは勘違いをしたままであったが、薬を飲んだのび太を激しく叱りつけ、その言葉に自分を友達として想ってくれているしずかの優しさを感じたのび太は、嫌われるのを先送りにするのだった。  

 (解説)どこまでも深刻なのび太の主観と、そんなのび太を笑い飛ばすドラの主観とで、二つの見方が出来るという面白い作品です。のび太が借りていた本を返す時に『残ったのはまんが雑誌ばかり。』と呟くドラや、のび太が出木杉に呼び止められる時にさりげなく舞っている一枚の木の葉なんかがイイ味を出していますね。先生もひどいことを言うと思いますが、自分も言われたことがあったかななんて思ったりして、決して的はずれなセリフではないですね。何はともあれ、今は「友達」としてしずかはのび太のことを大切に想っているわけですから、もちろん将来がどうなるかはわかりませんが、とりあえずのび太は「しずかがいる」という幸せな空間にいることを選んだようです。



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