てんとう虫コミックス第33巻


ポスターになったのび太   9頁 小三81年5月号
 スネ夫が集めたたくさんのポスターを自慢されるのび太としずか。のび太はしずかの前でやせ我慢をするが、本当はポスターが欲しくてしょうがない。そこで自分で絵を描いてみることにするが良いポスターが出来るはずもなく、ふてくされて寝転がってしまう。そんな時のび太はドラえもんと一緒に、ママが整理した物置のゴミを捨ててくるよう頼まれる。しかしゴミはやけにたくさんあり、しかもすごく重いので2人はすぐにへばってしまった。ドラえもんは「かるがるもちはこび用紙」を出して、その中に荷物を全部入れてしまい、一枚の絵にすることで簡単にゴミを運んでいった。ゴミを捨てたのび太はこの紙を使ってポスターを作ることを考えつくが、ドラえもんは相手にしないで先に帰る。のび太がポスターを広げて歩いていると、紙の中に自動車が突っ込んできたので車のポスターが出来上がってしまった。早速しずかに見せようとするのび太だが、中の車に乗っている人は早く出せと騒ぎ出したので仕方なく出してしまう。だがすでにしずかを呼んでしまった後だったので、のび太は困ってしまう。しずかが玄関に出てくるとのび太はおらず、ポスターが一枚置かれているだけだったが、それはのび太のポスターだった。のび太が用紙の中に急場凌ぎで入ったのだ。とりあえずしずかはポスターを部屋に飾り、のび太はしずかと2人っきりの空間で幸せをかみしめるが、しずかはずっと宿題ばかりしているので退屈になり、漫画を読もうと紙を出てしまう。先程から誰かの視線を気にするしずかは後ろを振り向くが、間一髪でのび太は紙の中に戻る。それでも不思議がったしずかはポスターを触り始め、のび太はくすぐったさを必死にこらえるが、そこに出木杉がやってきた。部屋に上がった出木杉はしずかに宿題を教えたりして楽しい雰囲気にあるが、それを嫉妬したのび太は本を出木杉にぶつけてしまう。だが2人はそれからも遊び続け、飽きたのび太は座り込んで眠ってしまい、それを見た2人は怖がってポスターを丸めて外に捨ててしまい、更にしずかのママが落ち葉と一緒にポスターを燃やそうとしたのでのび太は丸まった紙のままで家まで逃げ帰る。ところが紙の外に出てものび太の体は丸められたためにしわくちゃで、ドラえもんはアイロンをかけるかどうかをのび太に提案するのであった。  

 (解説)紙と一緒にのび太までしわくちゃになってしまうというラストのオチがどうしようもなくバカバカしくて良いですね。三次元と二次元を行き来するような道具はこれまでにもたくさん登場しましたが、こういう道具には純粋に憧れてしまいますね。冒頭のスネ夫コレクションの中にQ太郎が混じっているのも嬉しいところです。
フィーバー!!ジャイアンF・C   10頁 小六82年11月号(ジャイアンのファンクラブ)
 伊藤翼ファンクラブ全国大会に行って来た時のことをみんなに話すスネ夫。だがジャイアンは何故か不機嫌になり、更に突然怒り出して帰ってしまう。その後、家でテレビを見るのび太とドラえもんの所にジャイアンが訪ねてきた。そしてジャイアンは先程怒った理由を2人に話し始めた。ジャイアンは自分のファンクラブがないことに疑問を抱いていたのだ。思わず大笑いしてしまう2人だがジャイアンににらまれてとりあえず落ち着き、ジャイアンの話を聞くが、ファンクラブを作ってくれるよう頼まれても、ファンクラブは製造するものではないと一旦は断る。しかし涙ながらに頼み込むジャイアンに同情したドラえもんは「ファンクラブ結成バッジ」を出して空から町中に配り、みんなにバッジをつけさせる。そして「ファンクラブ本部」から出す指令電波を使ってバッジをつけたみんなを集め、ファンクラブに入会させようとする。事実を知ったみんなはバッジを外そうとするがどうしてもはずせない。会員名簿を見て喜ぶジャイアンは試しに街に出て、スネ夫のスケッチブックに強引にサインを書くが、ファンから熱意が感じられないと再びドラえもんに注文してくる。そこでドラえもんは本部の熱狂度めもりをあげてみると、ジャイアンは街を歩いているだけでサインを求められるようになった。そんなファンに答えるためにジャイアンはチャリティコンサートを開くことにするが、道具の力もジャイアンの歌のひどさには負けたらしく、一気に街から人気がなくなってしまったのでチケットが売れなかった。仕方なく2人はバッジをもっとばらまき、めもりを最大限にアップすると、突然ファンが嵐のように訪れて、チケットは一枚残らず売れてしまう。さらにファンクラブの連中は翌日のコンサートで良い席を取るために前日から空き地で行列を作り始めた。それを聞いたジャイアンは喜びながらもみんなを説得するために空き地に向かうが、やって来たジャイアンを見たみんなは興奮して我先にとジャイアンに飛びかかり、そのせいでボロボロになったジャイアンはドラえもん達にファンクラブを解散させるよう頼むのであった。  

 (解説)ファンクラブかあ…。こういったことが拡大化していったこの時期らしい話ではありますね。今話でもそんな現実を巧みにパロって、爆笑必至の快作に仕上げています。「諸刃の剣」みたいな感じのオチももちろん好きですが、今話ではさらにそんなジャイアンに対するのびドラの対応や態度がまたおかしいですね。にこやかにファンクラブの会員を集め、バッジが取れないみんなに『そうなんだよ。』と言うシーンは個人的に大好きです。今話は他にも細かい見所が満載なので、ご一読をお勧めします。
地底のドライ・ライト   12頁 てれびくん82年1月号(ドライ・ライト)
 のび太の部屋のストーブを消してしまうママ。怒るのび太にドラえもんは家の経済事情のためだと説明するが、図星に思ったのか、ママは地球に石油があまり残っていないため、省エネでストーブを消したと説明した。それを聞いたのび太は慌てて怖がってしまうが、ドラえもんは22世紀で使われている新燃料として「ドライ・ライト」を見せる。太陽光線のエネルギーをドライアイスみたいに固めたものなのだ。しかしドラえもんが取り出したかけらは小さかったためにすぐ溶けてしまい、ドラえもんはいつの間にか家の庭に作っておいた鉱脈にのび太を案内する。夏の陽射しを貯めておいたのだが、開け放しておくと溶けてしまうので戸締まりを厳重に注意するドラえもん。適当な固まりを掘り出してカイロや電灯、湯沸かしなどの様々な用途に使ってみた2人だが、のび太はこれを使って商売をすることを思いつき、早速ドラえもんに怒られてしまう。しかしドラやきの話を持ち出されたドラえもんはお金をもうけてドラやきをたくさん手に入れるため、セールスマンとなって友達の家をまわるが、百グラム100円のお金を取ると聞いて誰も買ってくれない。一旦引き返してくるドラえもんだが、のび太はドラえもんをうまくおだて、更にまたドラやきの話を持ち出してドラえもんは何が何でも売ってくると息巻いて飛び出していく。ドラえもんは今日はサービスで見本を配るだけにし、ドライ・ライトの便利さをみんなに理解してもらうことにした。そのセールス方法が功を奏したのか、見本を求めてのび太の家にまで客が押し掛けるようになった。一旦見本サービスを終わらせる2人だが、お金を払っても欲しいという客のためにドラえもんは百グラム200円と値段を釣り上げて売ってしまい、更にドラえもんはどんどん値段を釣り上げ、ついには500円にまで釣り上げてしまう。その様子を見てさすがののび太も呆れてしまった。ドラえもんは喜んで地下からドライ・ライトを採掘してくるが、その際に入り口を閉めておくのを忘れてしまった。順調に売れていくドライ・ライトの様子を見て、将来的にはもっと規模を拡大し、儲けた金で大量のドラやきを手に入れることを夢想してよだれを垂れ流し放題のドラえもん。ところが何故か、だんだんと周りが暑くなってきた。入り口を開けっ放しだったためにドライ・ライトが溶けて町中に流れ出してしまったのだ。夏のような気候になってしまったのでみんなも夏のような服装をする中で、夢破れ、ショボくれるドラえもんであった。  

 (解説)最初期の話に近い、ドラの暴走ぶりが面白いですね。子供の世界に本格的な商売の概念を持ち込むセンスや、「ドラやき」をキーワードにして巧みにドラをその気にさせるのび太や、ものすごいあこぎな商売までしてしまうドラなど、まさに全編が見所と言っても過言ではありません。ドライ・ライトが溶けて、日本の気候は大丈夫だったのでしょうか(笑)?未だに解決していない燃料問題を背景にしている点も見逃せません。
どこでもだれでもローラースケート   7頁 小二83年5月号
 道路でローラースケートを楽しむしずか達だが、乗れないのび太はスネ夫にバカにされてしまい、家に帰って悔しがる。そこでドラえもんは「どこでもだれでもローラースケート」を出した。足を乗せるだけの簡単な作りだが、のび太が履くとドラえもんはいきなりのび太を押しだし、のび太は壁にぶつかりそうになるがスケートは壁をすいっと登っていった。このローラースケートを履いていれば、立った所を地面として認識することが出来るのだ。しかも障害物は自分で避けてくれるので、目をつぶっていても何かにぶつかる心配はない。一方のしずか達は道路でローラースケートに乗っていることを先生に注意されていた。のび太達は屋根の上に飛び出して自由に滑り始め、家にいたしずかにもスケートを渡して一緒に楽しく滑る。壁を滑っている2人を見て先生も納得した。そしてそれを見たジャイアン達は3分だけ貸して欲しいと頼み込み、仕方なくのび太はスケートを貸すがジャイアン達はそのままスケートを取っていってしまい、目をつぶったままでどこかへ滑っていく。話を聞いたドラえもんと一緒にタケコプターでジャイアン達を探すのび太の耳にジャイアン達の悲鳴が聞こえ、行ってみるとジャイアンとスネ夫は行き止まりのアドバルーンの上に乗ったまま、2人で泣き叫んでいるのであった。  

 (解説)素早く流行のローラースケートを取り入れていますが、同時に問題になっていた「道路で滑ったための事故」についても、作品中で先生の口から語られており、上手な構成になっています。話は道具を使っての遊びとジャイスネの失敗とを丁寧に描き、展開としてはオーソドックスですが、上下の関係がない雰囲気が不可思議で楽しい様子を醸し出していますね。
あの道この道楽な道   9頁 小五81年10月号(クロス・スイッチで楽しくくらそう)
 今日も寝坊して騒いでしまうのび太。のび太も一日のコースが決まっていることに嫌気がさしていたが、それを聞いたドラえもんは2人の人間のコースを入れ替える事が出来る「クロススイッチ」を出してのび太に貸してやる。ドラえもんは自分の人生は自分で切り開くべきだと主張するが、そこは聞かずにのび太はさっさと学校に行ってしまう。遅刻したのび太はスイッチを使って先生とコースを入れ替え、のび太は先生になってしまうが、中身は変わらないので授業など出来るはずもなく、自習にしてみんなに喜ばれる。だがのび太は先生のことをすっかり忘れていたために、先生は一日中廊下に立たされっぱなしになってしまい、下校する時になってのび太は元に戻す。帰りにスネ夫が従兄弟と映画に行くことを話しているのを聞いたのび太はスネ夫とコースを交換し、スネ夫はのび太の家に帰って怒られてしまう。のび太はスネ夫の家でおやつをたくさん食べ、従兄弟と映画に行くが、途中でジャイアンに会って野球の約束を思いだしたので映画は中止になってしまう。昼寝をしていたスネ夫も誘って野球に連れて行かれるのび太は、スネ夫を止めてジャイアンのコースを取ることにする。しかし野球は下手なままなので、一回だけで77点も取られてしまい、のび太は野球を止めて遠くへ逃げてからジャイアンを止める。のび太は今度はしずかのコースを選び、のび太の代わりに家に帰ってきたしずかを見てドラえもんも驚く。だがのび太はピアノの練習をさせられてその後に風呂に入る羽目になる。しずかはどこでもドアでのび太の所へ遊びに行くが、ちょうどのび太が風呂に入っているところに出てしまい、のび太はその時にやっと戻ってくることが出来た。人のコースを歩いても決して楽ではないことを学んだのび太だが、スイッチを使ってドラえもんとコースを交換し、ドラえもんに宿題だけやってもらうのことにするのであった。  

 (解説)今話の道具は「自分と相手の立場を入れ替える」みたいな感じだと思いますが、さすがに「入れかえロープ」の頃のように強烈なギャグは描かれていませんね。その分、この種の作品にしては派手さのない、落ち着いた雰囲気の話になっています。ラストののび太はわかったことを言っているようで、それでも宿題はドラに肩代わりさせているのですから、やはりずるいヤツですね(笑)。
大人をしかる腕章   8頁 小五80年10月号
 珍しく家の前を掃除するのび太だが、そこへ通りがかった男の人がタバコをポイ捨てしたためにのび太は注意するが、「子供のくせに」と逆に言い換えされてしまう。泣いて悔しがるのび太の話を聞いて怒ったドラえもんは「大人をしかる腕章」を出した。ドラえもんはすぐ調子に乗ってしまうのび太に貸すことをためらうが、とりあえずのび太に貸して自分もついていくことにする。するとさっきの男の人がまたタバコをポイ捨てしていたので、のび太は腕章をつけて注意する。すると男の人は深々と土下座して謝った。その様子を持てドラえもんも帰っていき、のび太はその後も割り込みをしてきた人や立入禁止の芝生に入っている人、ゴミを捨ててはいけないところに捨てている人を注意するが、それを見ていたスネ夫はのび太に自分のママを叱って欲しいと頼む。機嫌が悪いと自分に八つ当たりをしてくるそうで、のび太の注意でスネ夫のママも反省する。ところが今度はジャイアンに脅かされ、悪いことをしても叱らないように母ちゃんを注意してしまう。それらのことで自分が偉くなったような錯覚に陥ってしまったのび太は、家に帰ってきても叱ってくるママを逆に叱り返し、腕章を取り返そうとするドラえもんをママに頼んで追い払ってしまう。だが何故か不安がよぎるのび太。その不安は的中し、母ちゃんに怒られる心配がなくなったジャイアンが今まで以上にひどい乱暴を始めてしまった。のび太はジャイアンを叱るが腕章は子供には効力がないのでボロボロにされてしまう。結局いつものような結果になってしまったことで、なんでこんな事になってしまうのか自分でもわからないと言うのび太だが、ドラえもんは憮然とした表情で答えるだけであった。  

 (解説)ちゃんと道具名にも「大人をしかる」となっているのに、子供も叱れると勘違いしてしまうのだから、やはりそれはのび太だから何でしょうね(笑)。ママにヒゲを引っ張られるドラや、怒られる心配がないと認識して「ウヒ…」と笑うジャイアンの不気味な顔がおかしいです。
鏡の中の世界   22頁 小三82年6月号(のび太の鏡の中の世界)
 ジャイアンに追いかけられ、ギリギリで家に逃げ込むことに成功したのび太だがジャイアンはまだ諦めず、のび太を見るたびにぶん殴ると言いだしてしまう。のび太も一生外に出ないなどと言いだし、翌朝になって学校に行く時間になっても外に出ようとしない。学校の正門前で待ち伏せしていることを予測するのび太に、ドラえもんは「入りこみ鏡」を出した。これを使うと鏡の中の世界に入ることが出来るのだ。こちらの世界には人間はおらず、道にあるミラーを覗いてみると、現実世界にいるしずかが映し出されていた。のび太は学校の教室に入ってから鏡を通り現実世界に戻る。のび太を待ち伏せていたジャイアン達は来るのが遅れて遅刻してしまうが、休み時間になって先生がいなくなったスキを狙ってのび太を追いかける。のび太はまた鏡の中の世界に逃げ、その後もそうやって一日、ジャイアンから逃げ延びることに成功する。そのまま鏡面世界を通って家に帰ってきたのび太は鏡に感謝するが、ドラえもんは鏡にばかり頼らないようにと鏡をしまってしまう。その頃ジャイアン達はしずかの家の前でのび太を張り込むことにする。お使いを頼まれたのび太はドラえもんにまた鏡を出してもらうが、鏡面世界に入ると同時に鏡を消してしまい、ドラえもんをお使いに行かせてしまう。鏡面世界で遊び始めたのび太はしずかの家で待ち伏せているジャイアン達を見つけ、ジャイアンに石をぶつけてスネ夫がやったと勘違いさせ、スネ夫を殴らせてしまう。更に2人に仕返しすることにしたのび太は家に帰ってきたスネ夫のおやつを全部食べてしまい、「ミラー貝入」と書いた紙を残す。ジャイアンの部屋から取り上げられたものを取り返すのび太だが、その際に部屋を散らかしたことをジャイアンのせいだと思いこんだ母ちゃんは帰ってきたジャイアンを叱りつけ、逃げたジャイアンの隠れ場所を母ちゃんに教える。そしてまた「ミラー貝入」の紙を残した。
 次にしずかの家に上がり込むのび太だが、しずかはバイオリンの練習が迷惑だからとママに注意されていたところだった。そこへ「ミラー貝入」の紙がふってくるが、のび太は「ミラー怪人」と書きたかったらしい。何はともあれのび太はしずかを鏡面世界に招待し、しずかはバイオリンを弾き始めるがあまりに下手くそなのでのび太はそれを止めさせて2人で遊びに出かける。本屋やパチンコ、映画館に入ったり、誰もいない町中で遊び回ったりするが、空き地でボール遊びをしている時にそのボールを鏡にぶつけてしまい、鏡が割れてしまう。しずかの提案でかけらをセロテープで繋ぐがテープが使えて通ることが出来ない。泣きわめいて抱きつくのび太を慰めるしずか。ドラえもんは戻ってこないのび太を心配するが、のび太がジャイアン達にいたずらしたのを知って心配するのを止めてしまう。夜になってものび太は帰ることが出来ないが、ドラえもんは気にせずにご飯を平らげ部屋に帰る。そこで小さなかけらを通してドラえもんと話をすることにしたのび太だが、さすがのドラえもんにも2人を助ける方法が見つからない。その時しずかがスモールライトを使うということを提案した。ドラえもんはスモールライトで2人を小さくして、かけらを通って現実世界に戻ってこられるようにする。戻ってきたのび太は例によってドラえもんに謝るが、その様子をしずかに茶化されてしまうのであった。  

 (解説)ある意味これも「秘密基地願望」の具現化ととらえて良いのでしょうか。道具のコンセプト自体は「ではいりかがみ」と同じなのですが、今話は「鏡の中に入る」というコンセプトの完成形になっていると思います。今話では鏡面世界に入ったのび太の遊びが中心になって描かれており、どちらかと言えば低学年誌に掲載される作品のような雰囲気を持っていますね。それでも「ミラー貝入」などのボケを忘れていないところがまた嬉しいです。
ユクスエカメラ   8頁 小五80年8月号
 珍しく真面目に宿題をやっているのび太だが、やはり全然わからないので少し頭を冷やすことにし、ドラえもんと遊ぼうとするがドラえもんは押入に閉じこもって開けようとしない。のび太が開けてみるとドラえもんはたくさんのドラやきを写真に撮ろうとしていた。楽しみに取っておいたドラやきがいつの間にか貯まってしまい、ドラが古いか新しいかがわからなくなってしまったと言う。ドラえもんは「ユクスエカメラ」を使ってそのドラやきの未来の姿を写しだし、早くカビがはえる順番にドラやきを食べていくことにする。仕方なくまた勉強をすることにするのび太だが、ママにお使いを頼まれたのでお使いに行くことにし、気になったドラえもんはついていくことにする。どのスイカが美味しいかで悩む2人だが、ユクスエカメラを使ってスイカを切った頃のスイカを写しだし、どのスイカが美味しそうかを比べる。スイカを一個選んだのび太は家に帰るがドラえもんを巧みに騙してカメラを持ったまま遊びに行ってしまう。しょぼくれたスネ夫にあったのび太は、ジャイアンからラジコンの戦車を貸すように言われて迷っている事を聞いて、戦車がどうなるかをカメラで調べると一時間半後に壊されることがわかり、かと言って貸さないと30分後にスネ夫はギタギタにされてしまうこともわかり、選択権をスネ夫に委ねるのび太。続いてテレビを買おうとしている人のためにそのテレビをカメラで写し、3日後に壊れることを突き止め、男の人に感謝される。のび太は更にその人から結婚したい女性の20年後を写すように頼まれるが、出てきたのは今とは似ても似つかぬおばさんの姿だった。だがそれだけでは不公平だと、ハゲ頭になっているその人の20年後の写真ものび太は撮ってやった。のび太はその後もカメラで遊び続けたために、夜になって宿題を一つもやっていないことに気付く。大慌てで宿題をするのび太だが、名案を思いついたのび太は明日の朝のノートをカメラで写し、それに書かれている答えを書き写してしまうのであった。  

 (解説)話自体はそんなにオーバーなものではないのですが、のびドラがやけに生き生きと動いているような気がするのは何故なんでしょう?未来の写真を撮るだけ撮って、決定権を本人に委ねるというのび太の姿勢は、ある意味正しいのかも知れません(笑)。それにしても、20年経っただけでハゲ頭、と言うよりハゲチャビンになってしまう男の人もすごいもんだなあ(笑)。
横取りジャイアンをこらしめよう   10頁 小四82年9月号(位置固定スプレー)
 本棚の本をぶちまけて何かを探しているのび太は急に思い立った様子で階段を駆け下り、通話中のしずかにもう少しだけ待ってくれるよう頼み、ジャイアンに貸したままのマンガを返してもらいに行く。ジャイアンはそのうち見つかったら返すと言うが、のび太がうっかり口を滑らしたためにジャイアンは怒り出してのび太を追いかけてしまう。隠れたのび太を見つけるためにジャイアンはスネ夫と分かれてのび太を捜すが、スネ夫はのび太を簡単に見つける。だがスネ夫もジャイアンに色々なものを取られているためにジャイアンに知らせようとはせず、新しい電子ゲームも持ち出せないと愚痴を言う。帰ったのび太はママからドアを開けっ放しにしたり受話器を外しっぱなしにしたりと、後始末を全然していないことで叱られてしまう。のび太の代わりに部屋の片づけをさせられたドラえもんも文句を言い、ドラえもんは「位置固定スプレー」を出した。これを吹きつけると物体に自分の居所を覚え込ませることが出来、試しに本棚の本など家中のものに吹きつけてから散らかすと、ひとりでに片づいてしまった。定位置から動かして、手を離すか、離さなくても百メートル以上離れるか10分経つと元の位置に戻るのだ。このスプレーをスネ夫の電子ゲームに吹きつけたのび太はスネ夫と共にゲームを持ち出して空き地で遊ぶ。すると早速ジャイアンがやってきてゲームを持っていってしまうが、ゲームはひとりでにスネ夫の所に戻ってきて、ジャイアンは不思議がる。のび太は更に他の友達が持っているマンガにもスプレーをかけ、わざとジャイアンに知らせて本を取らせてしまうが、本が持ち主の所に戻り始めたので、ジャイアンも必死に抵抗するが引きずられてボロボロになり、本も飛んでいってしまう。喜んで帰ってきたのび太だがまだドラえもんにスプレーを返そうとしない。翌朝、ひとりでに片づく布団を見て喜ぶのび太はさらに自分が学校に持っていく持ち物全てにスプレーを吹きかけるが、部屋の畳の上で吹きかけたために持ち物はその位置を覚えてしまい、持ち物はのび太を置いて家に帰り始めてしまうのであった。  

 (解説)ストーリーとは全然関係ないですが、今回の道具のデザインは結構好きです(笑)。本に引きずられてボロボロになるジャイアンや、ラストで飛んでいってしまうのび太の服やズボンの図が笑えますね。
ハリーのしっぽ   13頁 小六84年7月号
 家族総出で物置を整理する野比家の面々だが、しまってあった浮き輪を見つけてドラえもんは捨てるかどうかのび太に聞くが、のび太はこれがなければ泳げないと言う。そんな時、パパがひいおじいさんの代から伝わっているという巻物を見つけた。ひいおじいさんが子供の頃に書いたというこの巻物には、1986年に天から振ってくる災いを免れるため、庭の柿の木の根本を掘り返すよう示唆しているものだった。巻物を受け取ったのび太は柿の木のあったところを掘り返そうとするがドラえもんに説得されて来年の86年まで掘らないことにする。だがのび太は巻物に書かれている内容が気になってしょうがない。そこでドラえもんはタイムテレビで巻物を埋めた一週間ほど前を見てみることにするが、そこではひいおじいさんののび吉が、家の庭で桶の中の水に顔を突っ込んでいるところだった。苦しそうにもがきながらも何故か顔を上げようとしないが、母親に突き飛ばされて顔を上げてしまう。のび吉はチューブが買えなかったから息を止める稽古をしていたと訳の分からないことを言うので、のび吉の言うとおり、昼間の学校を見てみることにする。学校では先生が、もうすぐやって来る「ハリー」と言う物の尻尾に毒が含まれているかも知れないと話し、さらに尻尾が地球をかすめる時に一時的に地球から空気がなくなってしまうと言うことまで話し、のび吉も、そして見ていたのび太達も仰天する。友達と善後策を話すのび吉だが、警官が乗っている自転車のタイヤを見たのび吉は、タイヤのチューブに空気を詰めてため込んでおくことを思いついた。母親を説得してチューブを買いに行くのび吉だが、チューブは友達に全部買い占められてしまっていた。ガッカリして家にも入らないのび吉を見かねたのび太は、さっきの浮き輪をプレゼントすることを思いつき、空気を詰めてタイムマシンでその時代・明治43年へと向かう。浮き輪を見つけて喜ぶのび吉だが、のび太は「ハリー」という物がいったい何なのか不思議がる。その時夜空に巨大な彗星が輝いた。それを見たドラえもんは明治43年、つまり1910年はハレー彗星が大接近した年だったことを思い出す。「ハリー」とはハレー彗星のことだったのだ。この当時は研究がまだ進んでいなかったこともあって様々な憶測が飛び交い、世界中で大騒ぎになったということをのび太に話すドラえもん。そして現代に帰った2人が柿の木の下を掘り返してみると、そこからは箱に入った浮き輪が出てきた。76年後の来年、再びやって来るという「ハリー」の脅威から子孫を守るためにのび吉が残したものだったのだ。  

 (解説)言うまでもなく、86年は実際にハレー彗星が地球に大接近した年であり、藤子F先生も朝から望遠鏡を覗いていたという話が残っています。そんな時期に描かれた今作はタイムリーすぎる話であるが故に、現在の視点から見ると少し時代背景が分かりづらい点もありますが、現在と過去を巧みに交差させた、ドラらしい話になっています。1910年の大接近時に、世界規模で騒ぎが起こったというのも歴史的事実で、タイヤのチューブを用いたということも確かにあったようなので、学校で習うことのない「歴史」の一端を知ることもできますね。
サンタイン   9頁 小三82年7月号
 炎天下の中、アイスを食べながらも暑がるのび太は部屋に戻って涼もうとするが、部屋ではドラえもんが平べったくなって眠っていた。驚いたのび太はアイスを落としてしまうが、そのアイスがドラえもんに当たると、水たまりに落ちたように水しぶきをあげた。ドラえもんは液体になって寝ていたのだと言う。ドラえもんはのび太のアイスを使って固体・液体・気体の説明を行い、その上で「サンタイン」を取り出した。一粒飲むと液体、二粒飲むと気体になることが出来ると言う。効果は一時間だが、早速のび太が一粒飲んでみると体が水っぽくなっていく。のび太はママを驚かすために階下に降りようとするが、階段から転げ落ちて水のように散らばってしまう。雑巾で拭いて集めた水の中から元に戻るのび太だが、水分が少し床に吸い込まれたために、いくらか軽くなってしまった。のび太は更にもう一粒飲んで気体になってしまい、風に吹き散らされたら元に戻れないというドラえもんの忠告も無視して、空に飛び上がっていく。空で昼寝するのび太だが、突然のび太の体を野球ボールが突き抜けた。ジャイアン達の野球ボールだったのだが、怒ったのび太はボールを神成さんの家に放り込んでしまい、怒ったジャイアンはのび太を呼んで殴りかかるが、のび太は気体になっているために殴ることが出来ない。ジャイアンは帰ろうとするがのび太はつけ回し、家に入って戸締まりをしてもわずかな隙間から家に侵入する。部屋の中を物色するのび太はジャイアンが隠している0点の答案の束を見つけ、ジャイアンをペコペコさせてしまった。愉快な気分で空を飛ぶのび太だが、その時になって風が吹いてきた。吹き散らされないためにそばの家に隠れるのび太だが、そこはしずかの家のお風呂場で、ちょうど風呂に入っていたしずかを必死に説得するのび太だがしずかが聞くはずもなく、サンタインの効き目が切れると同時にしずかにボロボロにされてしまうのであった。

 (解説)この話で「固体・液体・気体」の概念を覚えた人も多いのではないでしょうか?僕はそのクチです(笑)。僕としては話云々よりも、飛び散った液体を一つに集めるとのび太が完成したり、ドラえもんの体にアイスが落ちると波紋が広がって水しぶきが上がるという、そこらへんのセンスが好きですね。どことなく往年の特撮映画に似ている所が、シンパシーを感じる原因かも知れませんね。
すぐやるガン   7頁 小一80年5月号
 ママからお使いを頼まれるのび太だが、あとでと言ってすぐにやろうとせず、散らかっている部屋の片づけや宿題もあとでと言ってすぐにやろうとしない。いつまでたっても何もしないのび太に腹を立てたドラえもんは「すぐやるガン」を出して一発放ち、それを聞くとのび太は片づけや宿題、お使いを一気にやりだしてしまう。あとでやろうと思っていることをすぐにやらせてしまうピストルなのだ。ママに誉められるのび太だが、ラジコンを買ってくれるように頼むとママははぐらかしてしまう。のび太はガンを使ってママにラジコンを買ってきてもらい、ラジコンをしずかに見せに行く。しずかは勉強しているようで遊ぶのを断られるが、ガンを使われたためにしずかもすぐに遊びに行き、空き地で仲良く遊ぶがそこにやってきたジャイアンとスネ夫がラジコンを取って遊び始める。更に水たまりの中を走らせようとするのでのび太は手が汚れてしまうと話すが、後で風呂に入ればいいとジャイアン達は開き直るので、のび太はガンを使って今すぐ2人を風呂に入るようにしてしまい、2人は水たまりを使って風呂に入る羽目になってしまうのであった。  

 (解説)やはりラストのオチのインパクトが全てでしょう。低学年誌の作品はオチに強烈なものが結構あって、初期のドタバタギャグ路線を密かに継承しているような気がしなくもありません。それでももちろんカラー原稿ならではの優しい雰囲気も存在しています。
いやになったらヒューズをとばせ   9頁 小五82年10月号(いやなことヒューズ)
 遅刻しそうだというのに何故かのんびりしているのび太。のび太は体育でマラソンをさせられ、ビリになるのが嫌でわざと遅刻するのだと言う。学校に行かせるためにドラえもんはのび太に「いやなことヒューズ」を渡す。これを襟首につけておけば、嫌なことがあったときにヒューズが切れて何も感じなくなり、15分後に気がつくと言う。それをつけてマラソンをやるのび太だが、いつものように遅れてしまい、先生に注意されたりスネ夫からからかわれたりして、いよいよ辛くなったのび太はヒューズが切れたために何も感じなくなってしまう。息も脈も止まってしまうが15分後に目を覚まし、その間に体育は終わってしまったので喜ぶのび太。のび太は更にドラえもんを説得してヒューズをたくさんもらい、常にヒューズを一個つけておくことにする。ママはのび太が草むしりをさぼっているためにヤブ蚊が多いのを気にして、のび太を呼びつけてお説教するがのび太はヒューズが切れて気絶してしまい、慌てたママが医者を呼びに行ったスキにのび太は外に逃げる。それからもジャイアンに殴られたり、借りたお金を取り立てられたり、びっくり箱で驚かされるたびにのび太は気絶し、友達の間でのび太に怒らない方がいいという話が広まってしまう。住みやすい世界になったことを喜ぶのび太だが、夜になってその事で怒ったドラえもんは残り一個のヒューズを庭に捨ててしまう。のび太は庭に出てヒューズを探し、無事に見つけたヒューズを首に付けるが、その時現れたクモに驚いてヒューズが切れ、のび太は15分間、庭で気絶したままになってしまい、その間にヤブ蚊にたくさん食われてしまったのび太は体の至る所が膨らんでしまい、家に入ってきたのび太をドラえもん達は怪物と言って騒ぐのであった。  

 (解説)それにしても今回ののび太は気絶しすぎのような(笑)。10円を請求されたくらいで気絶してしまっては、世の中やっていけませんからねえ。伏線もあらかじめ張ってあるのでオチに全く無理がなく、楽しく読んでいける話です。のび太にびっくり箱を見せるしずかも案外ひどいヤツだ(笑)。
SLえんとつ   10頁 小六83年4月号
 ジャイアンやスネ夫、しずかまでもがやたらに走り回っている姿を見かけるドラえもん。明日校内マラソン大会があるのでトレーニングをしていると言うのだが、のび太はいつものように家でごろ寝しながらテレビを見ていた。トレーニングをしても自分がビリになることは変わらないので練習をしないと言うのび太は、テレビで映されたSLを見てその力強さに憧れるが、SLの持っているイメージとのび太とではまるっきり正反対であるということを正直にドラえもんが言ってしまったため、その言葉は刃となってのび太の心に突き刺さった。それを見て反省したドラえもんはお詫びに「SLえんとつ」を出した。石炭を入れて水を入れると蒸気が沸き上がってきて、これをのび太の頭につけるとモリモリ力が湧いてきた。お使いを頼まれたのび太は猛スピードでお使いに行き、汽笛を高らかに鳴らして帰ってきた。のび太は今すぐジャイアン達とマラソンをすることにし、みんなは早速走り出すが、煙突をつけたのび太は遅れてスタートしながらもあっという間に3人を追い抜いてしまい、えんとつを怪しんだジャイアンとスネ夫は先回りしてのび太を捕まえようとするが、のび太は2人を跳ね飛ばしてなおも疾走する。ドラえもんはそのエネルギーを勉強の方に使わせるが、窓を閉め切っていたために部屋中が煙だらけになってしまい、換気をした所にママがやってきた。煙を出して走り回ると洗濯物や部屋の中までもススだらけになってしまうので、二度と使わないでくれと近所からクレームが来たと言うのだ。時代の流れを痛感するドラえもんだが、納得できないのび太はリニアモーターカーの煙突を出してくれと無茶な頼みをするのであった。  

 (解説)「人間機関車」の時と違って、道具を使ってののび太の行動に様々なバリエーションがあるところが楽しいですね。SLのパワーで勉強まで出来るのかどうかは疑問ですが、ともかくパワフルなのび太の行動と、いきなり現実的なことが持ち出されたラストのオチを楽しみましょう。ドラの言葉で「傷つく」のび太の姿も忘れてはいけませんね。しかし、煙突をつけて走るのび太の姿を見て「すてき」と思うしずかもなんか変なような(笑)。
だせば当たる!!けん賞用ハガキ   10頁 小四82年1月号(必中けん賞はがき)
 友達から懸賞で当たったというゲームウォッチを見せてもらい、友達から懸賞のことを聞かされたのび太は自分も懸賞にハガキを出すことにするが、何故か家に置いてあったハガキが消えていた。仕方なく全財産をつぎ込んでハガキを買ったのび太は、懸賞の宛先を聞くために友達の家に行くが、帰ってくると部屋からドラえもんが出てきてどこかへ行ってしまった。だがのび太が部屋に入ると何故か先程のハガキが全部消えてしまっていた。ドラえもんの仕業だと感づいたのび太はドラえもんを探すが、偶然他の友達が買っていたハガキを、必ず返すという約束でもらうことにする。精神を集中してハガキを書こうとするのび太だが、たった一枚しかないのだから商品が良くて当たりやすいものを選ぶことにし、友達の家に再度行って面白い懸賞を聞いてくるが、帰ってくるとまたハガキがなくなっていた。怒るのび太だが、その時部屋に「返事先取りポスト」が置かれていることに気づく。すると小包がポストの中に投函された。中を開けてみると、そこには一枚のハガキが入っているだけだった。そこへ先程ハガキをもらった友達が来て、懸賞に出したいのでハガキを返してほしいと言ってきた。のび太は今届いたハガキを渡し、ふてくされてごろ寝するが、そこへドラえもんがタイムマシンでどこからか戻ってきた。ドラえもんは未来の懸賞に当たったのだと言う。先取りポストを使って応募していたその懸賞の賞品は「必中けん賞ハガキ」と言って、出せばどんな懸賞にも必ず当たり、しかもすぐに商品が届くと言う。のび太が先程友達に渡してしまったハガキこそがそのハガキだったのだ。喜ぶドラえもんを見ながら冷や汗を流すのび太だが、そこへ友達が懸賞に当たったという報告をしてきたので、隠しきれずにドラえもんに話し、ドラえもんは激怒してしまう。空き地にとりあえず隠れるのび太だが、友達の噂で使い捨てタイムテレビが当たる懸賞があると聞いたのび太はそれが告知されているポスターを見ると、なんとそれは自分を捕まえることにかけられた懸賞だった。自分を捕まえようとする大勢の人から逃げながら、屋根の上でドラやきを食べているドラえもんに恨み言を言うのび太であった。  

 (解説)今話に限ってはどう見てもドラが悪いような気がするけど(笑)。暗躍するドラえもんと、それに振り回されるのび太の姿が面白いですが、やはり目を矢印にしてしまうドラが最高ですね。現代でも「懸賞」が話題になることもあるし、ある意味それに熱を上げすぎた人たちを揶揄して描いている部分もあるかも知れません。
ガッコー仮面登場   9頁 小五84年4月号(ガッコー仮面登場!)
 学校から帰ってきたのび太は、パパとママがのび太に家庭教師をつけようと話しているのを聞いて慌てて飛び出し、家庭教師を頼むことで高額なお金がかかることを力説して何とか2人を思い留まらせることに成功する。ところが、どこからともなく現れた覆面の男が、のび太の家庭教師を無量で引き受けると言い出す。「ガッコー仮面」と名乗るその男はのび太をすぐに部屋に連れだし、大量に問題集を出してのび太にやらせようとし、更に文句を言うのび太を「愛のムチ」で痛めつけてしまう。帰ってきたドラえもんに泣きつくのび太だが、ドラえもんも勉強させることに賛成してしまったのでのび太はどうすることもできなくなってしまう。だが問題ので着ないのび太を教えようとせずにただ痛めつける姿を見て、ドラえもんもさすがに見咎めてしまう。ドラえもんはガッコー仮面が訪ねてきたジャイアン達の応対をしている間に何とかすることにし、ジャイアン達を追い返したガッコー仮面は戻ってきてのび太の姿がないことに気付くが、本棚から本を取ってきておもむろに部屋の隅々に投げ始めた。彼はのび太が「かくれマント」で隠れていたことを見抜いていたのだ。問題集を倍にされたのび太だが、今度はガッコー仮面がしずかの応対をしている間にタケコプターで逃げ出す。しかしガッコー仮面はタケコプターを付けて2人を追ってきた。ドラえもんがその正体を詰問すると、彼は「中学生ののび太」という正体を現し、今の自分の成績の悪さを小学生ののび太のせいにして、監督に来たのだと言う。ところがそこへ今度は高校生ののび太も現れ、自分同士で責任のなすり付けを始めてしまう。こんな事にならないよう、日頃から勉強するように諭すドラえもんだが、当ののび太は少なくとも高校まで行けることがわかったので安心してしまい、ドラえもんも呆れてしまうのであった。  

 (解説)やっていることは「ぼくをぼくの先生に」と同じですが、今回はそれにガッコー仮面なる正体バレバレの(笑)ギャグキャラも加わって、より面白い話になっています。自分同士で議論しあうなんていう奇妙な構図もドラ世界ならではのものですね。でも、中学や高校時代ののび太のところには、まだドラがいるのかな?
さらばキー坊   25頁 小四84年4月号
 太陽系第三惑星・地球。この星の様子を遠い宇宙から何物かが見ていた。その連中は地球の木々が急速に失われていることに驚き、調査隊を派遣すること決定したが、その事実に気づいた地球人は誰1人としていなかった。
 団地を作るために切り崩されていく裏山を複雑な思いで見つめるのび太。のび太は裏山が大好きなのだが、そのうち裏山で遊ぶこともできなくなってしまうかも知れないことを悲しむ。小さな苗木を見つけた2人は掘り返して家の庭に埋めようとするが、ママにそれを注意されたためにのび太は困り果ててしまう。そこでドラえもんは「植物自動化液」をかけて、木が自由に動けるようにする。
 キー坊という名前を付けたのび太は、キー坊にエサである肥料入りの水をあげたり、字を教えてあげたりして仲良くなっていく。キー坊ものび太を慕うようになり、学校から帰ってきたのび太を待ちかねていたように飛びつき、のび太と一緒にマンガを読むようになった。
 夜、のび太達と一緒にテレビを見ていたキー坊は、ちょうどその時に降ってきた雨にうたれたがり、喜びながら普通の木のように雨にうたれる。ところがそんな雨降る夜空を、一つの円盤が飛んでいた。
 地球を調査していた円盤は宇宙空間に停泊していた大型宇宙船の中へと戻っていく。その中にいたのは以前から地球を観察していた植物型宇宙人だった。宇宙人は報告から得たデータを下に会議を進め、その中で地球の植物の実態が紹介された。地球を支配している人間達によって地球全土の植物が次々と切り倒されていき、このままでは地球植物が絶滅してしまうという。植物が出す「酸素」という恩恵を受けていながらそのような暴挙を続ける人間に味方するものは1人もなく、彼らは地球の植物を救うために全ての植物を宇宙に運び去る計画を実行に移すことにした。母船から地球を目指して続々飛び立っていく小型円盤。
 キー坊はマンガに飽きてしまい、パパの書斎から難しい本を持ってきたり、新聞を読んだりしていた。キー坊をもっと日に当てようと考えた2人は、キー坊を故郷である裏山に連れていく。喜ぶキー坊を楽しそうに見つめる2人だが、裏山の木が伐採されることについての2人の会話を聞いたためにショックを受けたキー坊はどこかへ行ってしまい、夜になっても見つからない。弱る2人だが、その時突然、周りの木々が空中に吸い上げられ始め、2人も一緒に吸い上げられてしまい、円盤の中に収容されてしまう。
 円盤の中で気がついた2人の所に植物型の宇宙人が現れ、ドラえもんは地上に戻すことを要求するが、彼らは自分達の計画を守るために2人を地上に帰さないと言う。彼らの計画を聞いた2人はそれを止めさせようとするが、宇宙人に捕まってしまう。なおも説得する2人の言葉にも宇宙人は耳を貸さないが、そこへキー坊が現れる。言葉を話すようになったキー坊は宇宙人に、地球の植物と動物は互いに助け合って生きていることを話し、確かに現状は自然破壊は止まっていないものの、のび太やドラえもんのように、それが間違いであったことに気付き始めてきている人間がいることを訴えた。そしてもうしばらく地球と人間を見守ってくれるように頼む。宇宙人は母船とテレパシーで連絡を取り合い、計画を取りやめることにする。百年後、今よりももっと植物が失われていたらまた戻ってくると言い残し、2人を地上に戻してくれた。
 地球に無事帰ってきた2人だが、キー坊は進化した植物文明を見るためにこの円盤と一緒に宇宙に行くと言う。地球を救ってくれたキー坊に感謝し、笑顔で見送る2人。だが家に帰ってみると、帰りが遅いことでママに叱られてしまうのであった。  

 (解説)自然の破壊と保護。これは中期以降のドラえもんが訴えてきた子供たちへのメッセージであり、同時に作者自身のメッセージでもありました。現在においても当時ほどではないかも知れませんが、自然破壊そのものはまだ止まってはおらず、自然を保護するための具体的な行動もまだ不透明なままです。自然を守るための答えが出ていない現代においては、宇宙人達の方にまだ分があるかも知れません。しかし、作者は決してそこで諦めてはいません。世界中の人間が自然を大切にすると言う気持ちに気付くことが出来る可能性を信じる、その想いをキー坊に託し、自然を守るのは大規模な機械でも政治家でもなく、のび太のような普通の子供が、小さな木を愛おしむ心であるということも訴えています。作中に込められた明確なメッセージ。これを受け取った我々読者がどう行動するか。その答えは来る21世紀に出ようとしています。あまりに強いメッセージ性から、いつもとの雰囲気の相違を感じる方もいるかも知れませんが、「日常と非日常」を明確に区別したオチはきちんと存在しており、この感覚があればこそ、今作はただのエコロジーマンガではなく、「ドラえもん」たりうるのです。



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