てんとう虫コミックス第34巻


「ワ」の字で空をいく   10頁 小四82年8月号(空とぶコエカタマリン)
 遅刻しそうな時間だというのにのび太はゆっくりまんがを読んでいる。のび太はタケコプターを使って行こうとするが引き出しに入っていなかったため、ドラえもんに新しいタケコプターをもらおうとするが、ドラえもんは学校へ行くためのタケコプターはないと言ってのび太に渡さず、のび太は学校へ走っていくことになる。ドラえもんはのび太に自分の生き方を真剣に考えてもらうために敢えて厳しくしたのだが、それに全く気付かないのび太は帰ってきてからも、寝坊しても遅刻しない方法やら遅刻しても叱られない方法やらを考えてばかりで、どうしたら寝坊しないかとは夢にも考えない。その時のび太は部屋に転がっている「コエカタマリン」の容器を見つけた。だがのび太はそれを見て名案を思いつく。これによって作られた文字に乗って学校まで行こうというのだ。早速自分で飲んで試してみるのび太だが、早すぎて自分で乗ることが出来ないので、ママに飲ませてわざと大声を出させてそれにつかまって空を飛ぶ。「音速字ェット機」と名前を付けるのび太だが、さすがにママの声でも学校までは届かずに落下してしまう。しかしのび太は今度は壁に向かって叫んで跳ね返ってきた声に乗ることを思いつき、「オ」の文字に乗ろうとするがうまくいかず、「ワ」の字に乗ることでようやく乗りこなすことが出来るようになった。一旦着陸するがそこはスネ夫の家の池だったためにのび太は落っこちてしまう。家にいたスネ夫とジャイアンがのび太に道具をよこすよう迫ってくるが、のび太は「ロ」の字を使って二人をやっつけ、再びワの字で飛んでいく。しずかの家に行ったのび太は訓練をかねて、ワの字で高井山まで行ってみることを提案する。しずかと一緒に高井山に向かうのび太を見て驚く登山客。のび太は大声で「ヤッホー」と叫び、あちこちでこだまする声を確認する。たっぷり遊んで帰ってきたのび太だが、登山客が文字にぶつかって怪我をしたという夜のニュースを聞いたドラえもんはのび太のしていたことに気付き、コエカタマリンを取り上げてしまう。のび太は布団の中でまた下らないことを考え始めるが、そのためにまた寝坊してしまい、大急ぎで学校に向かうのであった。  

 (解説)あまり登場していなかった道具を再び持ち出し、しかも新たな使用法を見つけてしまうとは、作者ものび太もアイデアがすごいですね(笑)。タケコプターが日常化していたことも冒頭からわかりますし、今話はある程度ドラえもんの世界に慣れ親しんでいる人なら、余計に楽しむことが出来る作品と言えるかも知れません。しかしコエカタマリンが実害を与えてしまうとは、やはり未来道具は恐ろしい(笑)。
エスキモー・エキス   9頁 小三83年8月号
 暑い夏の日、ドラえもんものび太もあまりの暑さにすっかり参ってしまうが、ドラえもんは時には暑さで汗を流すことも必要だと言って、涼しくするための未来道具を出そうとしない。風に当たりに外に出かけたのび太は、ジャイアンが面白い話をすると言うので興味本位で行ってみる。ジャイアンは父ちゃんから聞いた「がまん会」の話をし始めた。暑い日にわざと厚着をしたり熱いうどんを食べたりしながら、どこまで暑さに耐えられるかを競う会らしいのだが、ジャイアンは自分達もやろうと言いだし、みんなに集合をかけてしまう。行く羽目になったのび太はドラえもんに泣きつき、仕方なくドラえもんは「エスキモー・エキス」を取り出す。それをのび太に飲ませるが、のび太には何の変化もなく、のび太はやけ気味に「暑い」という言葉を三回言ってしまう。すると何故か涼しく感じられるようになってきた。このエキスを飲んでから「暑い」という言葉を言うごとに、体感温度が三度ずつ下がっていくのだ。のび太は試しに「暑い」を5回言ってしまうが、そのために温度を下げすぎ、逆に寒くなってしまう。薬が効いている間は温度を上げることが出来ないのでのび太は厚着する。ジャイアンの家にはみんなが既に集まっており、のび太も遅れて駆けつける。西日の射し込む部屋でみんなは我慢会を始め、スネ夫は最初にダウンした人は罰金を払うことを提案するが、やはり暑いのでみんなは「暑い」という言葉を連発するが、そのたびにのび太の体はどんどん冷えていった。周りが言うだけでも温度が下がっていってしまうようで、のび太の体感温度は零下2℃にまで下がっていた。のび太はジャイアンにストーブを出すよう頼み、ついでに「暑い」という言葉を言ったら罰金を取ることを提案した。そしてしばらく経ち、とうとう我慢できなくなったスネ夫は罰金を払って服を脱ぎ、それに倣ってジャイアンも服を脱いで素っ裸になったのでしずかは帰ってしまい、ジャイアン達はのび太に掴みかかって平気な理由を問いただす。のび太からエキスを取り上げてそれを飲んだ二人は温度を下げて涼むが、お使いから帰ってきたジャイアンの母ちゃんが「暑い」という言葉を連発したために、二人の温度は一気に下がり、二人は凍り付いてしまうのであった。  

 (解説)ドラキャラは暑くて服を脱ぐ時に、絶対に裸にならなければいけない法則でもあるのでしょうか(笑)?液体の中に雪が降っている神秘的な道具とはうって変わって、ラストのオチはなかなかに強烈なものになっています。汗を流すことも必要と説くドラえもんの意見には僕も賛成ですね。涼しいのも良いですが、やはり夏は暑くないと。解説になってないな(笑)。
ヤジウマアンテナ   10頁 小五83年12月号(やじうまアンテナ)
 スネ夫にマンション火災の写真を見せられたみんなはそれぞれの災害目撃体験を話し合うが、そんなものを見たことがないのび太は事件や事故を見たいとドラえもんに相談するが、他人の災難を面白がることは最低だと怒り出してしまう。のび太は適当な理屈を付けてドラえもんを説得し、「ヤジウマアンテナ」を出してもらう。これは何かが起きる前にあらかじめそれを知らせてくれる機械なのだが、試しに使ってみても反応がない。つまり事件が起きないということなのだが、のび太に催促されて距離と時間の範囲を拡大すると、微弱な反応があった。反応のあった所に向かって事件が起きるのを待つ二人だが、時間直前になっても何も起こる気配がない。そこへ現れたヒゲの長い通行人がライターに火をつけた時に誤ってヒゲを燃やしてしまった。これがアンテナのキャッチした事件だったのだが、のび太はこれでは納得しないのでさらに反応を探すと、先程よりも大きな反応が出たので急いでそこへ向かう。行き先の銀行では強盗事件が発生し、のび太は犯人が逮捕される瞬間を写真に収めることに成功する。それをみんなに見せたのび太はさらにもっとすごい事件をみんなに見せることを約束してしまい、ドラえもんは怒り出してしまうがのび太は一人で勝手に探し、あるガソリンスタンドで午後8時に事件が起きることを突き止め、その時にみんなで見物に行くことにする。だがどんな事件が起きるのか気になったのび太はドラえもんと一緒にタイムテレビで見てみると、午後8時ちょうどに居眠り運転のトラックがガソリンスタンドに突っ込み、辺り一面が火の海となる大惨事に発展してしまうことがわかった。これを見た二人は事故を阻止すべく、事故の前にドラえもんが運転手を起こすことにする。夜になってのび太の家に集まったみんなを一応事故現場に連れていく二人。みんなはこれから起きる事件を楽しみにするが、8時近く、トラックの運転手をドラえもんが起こしたので事故は回避され、のび太はトラックが突っ込んでからの大惨事を想像で補うようみんなに言うのであった。  

 (解説)今話ののび太達の行動を見て「不謹慎」と思う人もいるかも知れませんが、他人事の事件や事故を見て面白がると言うことは現実の我々にもたくさんあることだと思うので、そういう意味ではシビアな現実を描いていると言えなくもありません。ラストののび太のセリフはやけに説明調でイイですね。まるでナレーターのようです(笑)。
フクロマンスーツ   11頁 小四80年4月号
 「コンドルマン」というテレビのヒーロー番組を見て、自分もヒーローに憧れるのび太だが、そんなのび太をドラえもんはクールな眼差しで見つめる。のび太にヒーローになる道具をせがまれたドラえもんは「フクロマンスーツ」を出した。早速来てみたのび太はその力を試してみるが、おもちゃであるために空も泳ぐように飛ばなければ前に進むことが出来ず、石を割ることは出来てもすごく痛い。だがそれでも一応スーパーヒーローになったのび太は悪者に襲われるしずかをカッコよく助け、みんなが正体を不思議がっているところでさりげなく正体をばらし、みんなから感謝されるというシーンを妄想して、ふらつきながら飛んでいく。空き地にいるしずか達を見つけたのび太は、ジャイアンが誰かに乱暴したら飛び出そうと屋根の上で待ちかまえることにするが、しずか達は逆にスーツを着ているのび太を怪しんで、みんなはジャイアンを頼り始めてしまったためにのび太は怒って飛び去ってしまう。のび太は今度はクラスで一番エッチな少年を見つけ、彼がエッチなことをする瞬間を待つが彼は女の子に宿題を聞いているだけなので何もしない。業を煮やしたのび太は勢い余って自分がスカートめくりをしてしまい、逆に追い返されてしまう。のび太は銀行帰りの人が悪者から狙われると考え、銀行から出てきた大きなカバンを持っている人を尾行するが、その人はお金を借りに行って断られただけだったのでのび太は立ち去り、他の人にもお金のことを聞いたためにまた怪しまれてしまう。その時ある家から助けを求める声が聞こえてきたのでのび太は勇んでガラスを割って飛び込むが、その声はテレビの音声だったのでのび太は謝って逃げ帰り、さすがに嫌になってスーツを脱いでしまう。街にはエッチで慌て者の怪人・フクロマンの噂が飛び交い、それを聞いてドラえもんは驚き、のび太は幻滅するのであった。  

 (解説)冒頭のコンドルマンは「コンドールマン」が元ネタなんでしょうけど、元の方とは全然似ていませんね(笑)。それはともかく、今回もまた例によって、やる気十分ののび太のやる気が空回りしているところが面白いです。今回限りの「エッチな少年」もポイント高いですね。やはりヒーローになるにはそれなりの資格が必要ということなんでしょうかね(笑)。
みたままベレーで天才画家   9頁 小三79年10月号
 公園で写生をするみんなは出木杉の上手な絵を誉めるが、その絵と自分が描いた絵とを見比べて恥ずかしくなったのび太は、みんなの目を盗んで家に帰り、上手に絵を描ける道具を出してくれとドラえもんに頼む。のび太の描いた絵を見て納得したドラえもんは「みたままベレー」と「自動24色ふで」を出した。これを使うと「人間カメラ」と呼ばれるほどに上手に絵を描くことが出来るのだ。試しに昼寝しているパパにベレーをかぶせ、鉛筆とスケッチブックを持たせるとパパは夢で見ている場面を描き始めた。それだけではわからない二人はベレーを操作して少し前の夢も描いてもらい、それらがゴルフで優勝した夢であることを知った。さらにドラえもんを描いて試したのび太は喜んで出かけるが、ママがどこかで見たような人に会ったと言うのでベレーで絵を描いてもらうと、それはパパの会社の部長の奥さんだった。公園に戻るのび太だが、途中でカバンを持った男の人に交番の場所を尋ねられたので教えてやる。すると今度は別の人に尋ねられるが、その人は混乱していてうまく質問してくれないのでベレーで描いてもらうと、その人も交番に行きたいらしい。理由を聞くと電話ボックスに起きっぱなしだった、大金の入ったカバンがなくなったと言う。その電話ボックスに行ったのび太は近くにいたイヌにベレーで過去の絵を描いてもらうと、先程交番に向かった男の人が描かれた。カバンが交番に届けられたことを確認して喜ぶのび太は急いで公園に向かい、ベレーを使って風景を描き上げる。しかしあまりにも上手に描きすぎたためにみんなはこれを写真だと勘違いしてしまうのであった。  

 (解説)「写真そっくりにかける」という道具の設定をそのままオチに絡ませるとは、これこそまさに「道具の存在がオチへの伏線」の典型例ですね。二人のエキストラキャラも面白いですが、一言も話さないくせに妙な存在感を持っているイヌもイイ味を出しています。
タネなしマジック   8頁 小五83年10月号(タネなしマジックハンカチ)
 しずかとのび太に自分で研究した奇術を披露する出木杉。それを見たしずかは素直に感心するが、例によってヤキモチを焼いたのび太は家に帰ってしまう。だが今まで手品のタネを買ってきてもうまくいった試しがないことをドラえもんに突っ込まれ、のび太はさらに落ち込んでしまう。そこでドラえもんは「タネなしマジックハンカチ」を出した。縫い目に内蔵されている超小型コンピューターがいろんなものを自動的に作り出してくれるのだ。ドラえもんは試しにこれを使って花や鳩を出すが、自動で動くので何が出てくるのかも予測できないのだと言う。そういっているそばから、次にネズミが出てきてしまったためにドラえもんは押し入れに閉じこもってしまう。のび太は早速しずかに手品を見せようとするが、見せる前に練習した方がいいと考えたのび太はしずかに見せるのを一旦中止し、空き地にいるジャイアン達に手品を披露する。感心する二人だがタネを知ろうとしてのび太からハンカチを奪おうとし、弾みで転んだのび太の上にハンカチが被さると同時にのび太は消えてしまった。そしてのび太を消してしまったハンカチは風に乗って何処かへと飛んでいく。どうも不吉な予感がするドラえもんはしずかの家に行ってみるが、のび太がどこかへ行ってしまったと聞いてのび太を探しに行き、その様子を見たしずかものび太を捜すことにするが、雨が降ってきてしまったので家に帰ることにする。その帰り道でハンカチを見つけたしずかが手に取ってみると、そこから傘が出てきた。不思議に思うしずかは家に帰ってまたハンカチを持ってみると、今度はハンカチからのび太が出てきてしまい、しずかは『まあ、すごい手品!!』と叫ぶのであった。  

 (解説)ハンカチから出てきたのが鳩とか花ではなく、よりによって「のび太」だったと言うのに、それを見たセリフがあれですか(笑)。この「やたら冷静なセリフ」というのもよくオチに使われるパターンで、僕の好きなパターンの一つです。よく考えれば、しずかが片方の手だけでのび太を持ち上げているという図もおかしいですし、今話はオチが全ての話とも言えるでしょう。
一晩でカキの実がなった   11頁 小六83年11月号(時空間とりかえ機)
 何やら慌てて家に帰ってきたのび太は、遊びに来ているおじさんへの挨拶もそこそこに、ドラえもんの所に向かう。のび太は買い物を頼まれて出かけていたのだが、珍しいトンボを追いかけているうちに裏山でママの財布が入った買い物かごをなくしてしまったと言うのだ。ママも買い物のことを思い出すが、それより先に二人は交番へ行ってみる。だが交番には買い物かごは届いておらず、絶望するのび太だがドラえもんは良い考えを思いつき、再び裏山へ行った所で「時空間とりかえ機」を出した。ドラえもんは買い物かごを落としたと思われる箇所をチョークで囲い、機械を操作してチョークで囲った部分の現在と20分前の空間を取り替える。すると過去の空間には買い物かごが存在しており、のび太は買い物かごを取り戻すことに成功する。機械を借りたのび太は思いっきりダイヤルを回してしまい、チョークの中は海になってしまい、そこから首長竜までも出てきてしまった。元に戻して家に帰ってきた二人だが、二人の耳にパパとおじさんの思い出話が聞こえてきた。昔、庭にあったカキの実がなるのを小さい頃のパパ達は楽しみにしていたが、気の優しいパパが友達にカキをあげてしまったら、全部食べられてしまって自分達の食べる分がなくなってしまったという思い出だが、パパとおじさんにはまだ忘れられない思い出として残っているのだ。それを聞いたのび太は時空間とりかえ機を使う事を思いつき、二人はタイムマシンでその日へと向かう。そこでは子供時代のおじさんが諦めきれずにカキの木に水をあげていた。みんなが寝静まった頃に二人はとりかえ機を使い、一日前のカキの木を持ってきた。そこへ現れた子供のパパは実がなっているカキの木に驚きながらも、おじさんを起こして一緒に喜ぶ。二人が現代に戻ってみるとパパ達の思い出も変わっており、それを聞いて笑顔を見せる二人であった。  

 (解説)未来道具で不幸な思い出を変えてしまうという、ドラ世界の根本を成しているようなテーマが扱われています。「空間入れかえ機」のタイムマシン版と言うべき今回の道具は、使い方次第ではもっと応用できると思うので、登場が今回限りと言うことが惜しまれます。
「時」はゴウゴウと流れる   9頁 小三83年5月号(むだ時間とりもどしポンプ)
 明日こそ宿題をきちんとやってくるようにと、先生に厳しく注意されたのび太は今日は真面目に宿題をしようと誓うが、スネ夫から以前借りた本を返すよう催促され、事情ですぐには返せないと話すのび太だがジャイアンに脅されたので今日中に渡すことになってしまう。しかも隣町に住むおばさんに荷物を届けるよう頼まれてしまうが、何故かのび太は慌てずに昼寝を始めてしまう。しばらく経って目を覚ましたのび太はタイムマシンで過去に戻って用事を済ませようとするが、タイムマシンはドラえもんが修理に出していた。のび太はさらにドラえもんに「時門」や「逆時計」、「マッド・ウォッチ」を催促するが、ドラえもんはどれも持っておらず、のび太は大慌てしてしまう。そこでドラえもんは「タイムライト」を使って時の流れを視覚化し、のび太が昼寝をしているだけでたくさんの時間が無駄に流されていったことを体感させる。その事実を目の当たりにして自分の行為を後悔するのび太にドラえもんは今回だけと言って「むだ時間とりもどしポンプ」を出した。ペダルを踏むと、今まで無駄に過ごした時間を取り戻すことが出来るのだ。のび太は風船の中に時間を貯めていくが、時間は古くなるほど重くなってしまうので、結局10時間ほど集めただけにとどまった。のび太が風船のコックを開くと世界中の時間は止まってしまい、のび太はまず宿題を始めるがすぐに息詰まってしまい、頭を冷やすために昼寝を始めようとするが、ドラえもんの姿を見て再び立ち上がり、しずかの家に行って教えてもらうことにする。しずかのノートを用いて宿題を終わらせたのび太は続いてスネ夫の本を探して家に届け、おばさんの家に荷物を届けて用事を完了させた。それと同時に時間も切れ、ドラえもんはのび太が全部用事を済ませたことを素直に喜ぶが、のび太はこういう時のために時間を残しておかなければとまた昼寝を始めてしまい、それを見たドラえもんはまた呆れ返ってしまうのであった。  

 (解説)今話の最大のトピックスはやはり、「時の流れを視覚化した」ということでしょう。一種の抽象概念である「時間」という考え方をこうも簡単に具現化してしまうのですから、作者のアイデアももちろんのこと、それを作品世界の中に取り込めるドラえもんという作品のすごさを感じます。わかったようなふりをして実は全くわかっていないというのび太の相変わらずぶりも見ていて楽しいですね。ドラは時門を会社から借りていたのか…(笑)。
雨男はつらいよ   10頁 小五84年2月号
 久々に明日の日曜にゴルフをするというパパだが、なぜか憂鬱そうな表情を浮かべている。気になったのび太とドラえもんは「心の声スピーカー」を使ってパパの心の声を聞いてみると、パパは会社で部長から「雨男」とイヤミを言われていたのだ。どこかに行った時に雨男の人がいると、雨になる確率が上がるというのだが、これを確かめるためにドラえもんは「雨男晴れ男メーター」を出した。針がプラスなら晴れ男でマイナスなら雨男なのだが、パパに使ってみるとマイナス8.5という数値がでてしまい、二人はどうすればいいか考え、ゴルフ場の周りにある山の所に、パパのマイナスをうち消すほどの強力な晴れ男を連れていくことを思いついた二人は、晴れ男を捜しに出かけていく。スネ夫はマイナスだったので役には立たなかったが、しずかはプラスの値が高く、ジャイアンはさらに高かったのでジャイアンを連れていくことにする。翌日、ジャイアンを連れていったおかげで見事にゴルフ場は晴れたが、ジャイアンは山に連れてこられても何もないので面白くない。そこで仕方なくドラえもんは「カラオケキング」を出してジャイアンに歌の練習をさせ、しかも採点機能を「お世辞レベル」に合わせてあるのでジャイアンは100点を連発する。どこからか聞こえてくるうなり声のような音を気にするパパ達だが、パパのゴルフは絶好調だった。しかし歌いすぎて声が枯れてしまったジャイアンはついに帰ってしまう。雲行きが怪しくなってきたので二人はしずかを呼ぼうとするが、しずかはちょうど入浴中だったので呼ぶことが出来ない。だがついに降り出してきた雨を見てドラえもんは意を決し、どこでもドアを倒して強引にしずかを浴槽ごとゴルフ場に連れてきてしまう。天気は何とか持ち直したものの、しずかにお湯をかけられてのび太達はずぶぬれになってしまうのであった。  

 (解説)「ロボットのガチャ子」では雨男の話が出てきて、半ば強引にスネ夫が雨男ということになっていましたが、今話でスネ夫が雨男ということが科学的に証明されました(笑)。大長編での冒険の時、いつも晴れているのはしずかとジャイアンがいるからなんですね。しずかを連れてくることで雨が降ることは防いだものの、しずかのせいで、あたかも雨が降ったかのようにずぶぬれになってしまうのびドラが面白いですね。
自動返送荷札   10頁 小四84年10月号
 ジャイアンがスネ夫に掴みかかっているところを見かけるのび太。ジャイアンはスネ夫の持っている「ガラスのカメ」というマンガを借りたがっていたのだが、そのマンガは誰かに貸して以来、返してもらっていないのだが、誰に貸したのかを思い出せないと言う。帰宅するのび太だが、パパから太田さんにゴルフバッグを返すよう頼まれそうになったので、いないふりをしてごまかす。部屋ではドラえもんが熱心にマンガを読んでいたが、それはなんとスネ夫の「ガラスのカメ」だった。のび太が借りっぱなしだったのだ。謝って返したぐらいでは許されないことを知っているドラえもんはのび太に同情し、「自動返送荷札」を出してやる。これをつけると自動的に持ち主の元に戻っていくのだと言う。これを本につけてドラえもんはいきなり本を道に捨ててしまうのでのび太は驚くが、札がついていれば汚れることさえもないのだと言う。スネ夫の家の方向へ行く人に拾われながら、本はスネ夫の元に返っていくのだ。イヌに運ばれたりしながらもやっと本はスネ夫の家にたどり着き、スネ夫のママに拾われた。次にのび太は荷札を使ってゴルフバッグを返すことにし、荷札をつけて運んでいってもらう。そこへ、マンガをのび太に貸したことを思いだしたスネ夫とジャイアンがやってきた。殴ろうとする二人にもう一度部屋を確認するようのび太は頼み、スネ夫は一応調べることにする。玄関先で待つ三人だが、急にお腹が痛くなったというスネ夫の代わりにママが出てきて、ジャイアンにマンガを渡してくれた。安心して帰宅する途中で迷子の女の子に会った二人は、速達用の荷札を女の子につけることにする。女の子は通行中の車に乗せられて走り去ったが、タイムテレビで女の子が無事に家につく様子を見て安心する二人。しかし家に帰ると、太田さんのゴルフバッグがまだ届いていないとパパが言ってきた。二人が「ついせきアロー」で後を追うと、アローは太田さんの隣の家に入っていった。二人はその家の人に文句を言うが、バッグは太田さんが隣から借りていたものだったということがわかり、二人は怒鳴ったことを恥ずかしがってしまうのであった。  

 (解説)「なんの関係もない通行人まで巻き込んでしまう道具」というのも結構ありますが、そういう話ではただの通行人の中にも味のある人がいたりして、なかなか見所のある話になることもあります。今話ではゴルフバッグを持たされてしまう人が、「出前電話」でポストを持ってきてしまう人と同じ感じがしましたね。仮病を使って隠れるスネ夫もナイスです。
たましいふきこみ銃   8頁 小五83年5月号
 家で、のび太がジャイアンをやっつけるという人形劇をやっているのび太。ドラえもんが聞いてみると、のび太はまたジャイアンにいじめられたので、悔しいからせめて人形劇でやっつけていたというのだ。あまりのせこさに呆れてしまうドラえもんだが、のび太があまりにも惨めなので仕方なく、「たましいふきこみ銃」を貸してやる。自分の魂を半分だけ相手に移すことで、相手を意のままに操ることが出来るのだ。試しにママに魂を乗り移らせてみたのび太は、相手の体を動かすことにはまだ不慣れながらも何とか要領をつかみ、吸い取ることで魂を元に戻す。早速ジャイアンを探しに出かけるのび太だが、こんな時に限ってジャイアンが見つからない。しずかに聞いてみても所在はわからなかったが、その時いい考えを思いついたのび太は魂をしずかに吹き込んで、自分のことを「好き」だと言わせてしまう。だがコントロールが難しいので足をドブに突っ込ませてしまい、魂を戻してのび太はその場を離れるが、自分が濡れていることを知ってしずかは不思議がる。探し回るのも飽きてきたのび太だったが、スネ夫におもちゃの飛行機をぶつけられた腹いせに魂を移してスネ夫を自分で殴らせ、さらにスネ夫を使ってジャイアンを探すことにする。ジャイアンを見つけて空き地まで連れてきたのび太はスネ夫から魂を抜き取って今度はジャイアンに魂を移し、ジャイアンに向かって思いっきり悪口を言い始めた。スネ夫はのび太を止めようとするがのび太に操られているジャイアンはただ平謝りし、のび太はさらにジャイアンをボロボロにしてしまう。その場を離れたのび太は陰からこっそり魂を戻す。ところがその様子を見ていたスネ夫は、ジャイアンが本当にこんなに弱いのかと勘違いしてしまい、気がついたジャイアンに一発蹴りを食らわせてしまう。だが当然スネ夫は返り討ちにあい、その際の悲鳴がのび太の部屋にも聞こえてきて、いったい何なのかと不思議がるのび太達であった。

 (解説)ジャイアンにいじめられっぱなしののび太のストレス解消法がイイですね(笑)。変に根暗になるよりああいうことで気晴らしをしていた方がよっぽどいいですよ。それはそれとして(笑)、今話ではのび太に操られた人たちの白目が面白いですね。のび太に操られている時は中身ものび太のものなんで、セリフや態度が普通の時と微妙に異なっている所がおかしかったです。セリフしか聞こえないというラストのオチは、想像力をかき立てられていいですね。
シテクレジットカード   11頁 小四84年12月号
 パパとママがのび太へのクリスマスプレゼントの相談をしている所を聞いて、慌ててドラえもんを呼ぶのび太。のび太はクリスマスにはラジコンを買ってくれるよう前々から約束していたのだが、ママは何といろはかるたを買おうと言いだしていた。約束まで破られたのび太をさすがにかわいそうに思ったドラえもんは「シテクレジットカード」を出した。これに頼み事を書き込んで相手に持たせると、その通りに相手が行動してくれるのだ。試しにドラえもんが書き込んだ状態のカードをのび太に持たせると、のび太は突然外に飛び出して三べん回って逆立ちして「ワン」と叫んだ。カードに書き込んだのび太はドラえもんがパパの注意を引きつけている間に、カードをパパのポケットに入れる。二人は後をつけるが、パパは長い苦悩の末にラジコンを買ってくれた。喜ぶのび太はパパからカードを返してもらい、他の友達にも使ってもらおうと考える。スネ夫には断られたがしずかにカードを貸して、ママにテニスのラケットを買ってきてもらった。その様子を見たスネ夫はプレゼントを買えてもらうと言ってカードを借りていく。スネ夫の家に行ってみると、ママが仰天した声を張り上げながらもどこかに出かけるところだった。スネ夫はしずかと一緒にテニスをするためにテニスコートを買ってもらおうとしていたのだ。それを聞いた二人は慌ててスネ夫のママを追いかけ、不動産屋に入る所だったスネ夫のママをつかまえ、カードを取り戻すことに成功する。その頃のび太の家ではラジコンを買ってきたパパをママが叱っていたが、カードを使ってママの機嫌を直すことに成功する。ところがその後、友人と会う約束をしたママが、約束の時間をポケットに入っていたカードに書き込んでしまう。夜になって寝るときにカードのことを思いだしたのび太はカードを探し、電話のところに置いてあったカードを見つけて、そのままポケットに入れてしまう。寝静まった頃にパパはクリスマスプレゼントを渡しに部屋に向かうが、入ってみると誰もいない。のび太はカードに書かれていた内容の通り、「1時半」までに新宿駅西口に行けるよう走り出しており、ドラえもんがそれを追いかけているのであった。  

 (解説)ラストが「人間用タイムスイッチ」みたいで面白いですね。午前と午後を間違えているために、「午前1時半」までにと走るのび太の姿はこの上なく愉快です。お望みのプレゼントがもらえるからと言って、のび太と手を取り合って喜ぶしずかの姿も新鮮ですが、それを聞いて平然とテニスコートを買うことにしてしまうスネ夫はすごい(笑)。子供にはケチなママの態度も相変わらずですね。
変身・変身・また変身   13頁 てれびくん82年10月号(変身ドリンク)
 のび太とスネ夫はジャイアンに追いかけられるが、足が遅いのび太はジャイアンにつかまって殴られてしまう。のび太は速く強くなれないかと考えるが、ドラえもんは「体を鍛える」というありきたりの解答をしたので、のび太は面倒がってしまう。ドラえもんは様々な動物の進化の過程を話し、動物が最初から今までのような能力を持っていたわけではないことを力説するが、それでものび太は面倒がるので仕方なく「変身ドリンク」を出す。これを飲んで変身したい動物をイメージすると、6時間だけ変身することが出来るようになるのだ。早速馬になろうとしたのび太だがなかなか変身しない。変身には時間がかかるのでのび太はもっとドリンクを飲もうとするが、「変身しやすくなるから」とドラえもんに止められる。やっとのび太は馬に変身したが、正確に馬の形を思い浮かべなかったために不格好になってしまう。それでも外に出るのび太だがママには驚かれ、みんなには「イヌ」と勘違いされたのでのび太は一旦元に戻る。そして空き地にいたジャイアン達をわざと怒らせて馬に変身しようとするが、変身する前に追いつかれて殴られてしまう。家に帰ってきたのび太はドラえもんがいないのをいいことにドリンクを全部飲んでしまい、さらに図鑑で動物の形を正確に覚えて再び出かける。のび太はまたジャイアン達をバカにし、今度はウサギやゾウに変身して二人をこてんぱんにやっつけてしまう。調子に乗ったのび太はさらにライオンやヒョウ、ゴリラに変身して通行人を驚かすが、そのせいで警察沙汰になってしまったために元に戻ろうとするが、変身したために脱げてしまった服を拾う間もなく警官がやってきたのでネズミに変身してその場を逃げるのび太だが、今度はネコに追いかけられてしまう。しかし何故かそのネコをちらっと見ただけで、そのネコに変身してしまった。「ドリンクを飲むと変身しやすくなる」というのはこういう事だったのだ。屋根の上からイヌを見てしまったのび太はイヌになってしまい、屋根から落ちる寸前に鳥を見たら今度は鳥になってしまい、すぐに家に帰ろうとするが今度はしずかを見てしまったためにしずかになってしまい、当のしずか本人が驚いてしまう。だが今度はカエルになってしまったためにさらにしずかは驚き、やっと家まで帰ってきたもののゴキブリを見たために変身してしまい、それを見たママはホウキでのび太をぶっ叩き、効き目が切れてボロボロの状態で元に戻ったのび太を呆れた表情で見つめるドラえもんであった。  

 (解説)様々なものに勝手に変身してしまうのび太はもちろん面白いですが、変身したのび太を見て「キャー」と叫び通しのしずかもおかしいですね。終盤ではのび太は服を着ていないために元に戻ることが出来なくなりますが、この「服」ということについても、序盤でのび太が馬に変身した時に服のことを話題にしており、これが伏線となっています。さりげない伏線のはり方には今更ながらに脱帽させられますね。
のび太もたまには考える   11頁 小六83年3月号(能力カセット)
 部屋で突然「破滅だ」と騒ぎ出すのび太。ドラえもんが断るのも聞かずに、のび太は明日の算数のテストで絶対0点を取らないように先生に忠告されたということを説明する。それを軽く受け流すドラえもんに抗議するのび太だが、ドラえもんはのび太に本気で悩むよう促し、のび太は理解出来ないながらも仕方なく勉強を始める。だがそんな時にのび太はママからお使いを頼まれてしまい、早くお使いを済ませるためにドラえもんは「能力カセット」を出し、その中から「マラソン選手」のカセットを取り出してそれをのび太の体に直接セットする。マラソン選手の能力を身につけたのび太はあっという間にお使いを済ませて戻ってくるが、のび太はドラえもんから先程のカセットを借りてしまい、その中から「数学者」のカセットを取り出して使おうとしてしまう。ドラえもんの前でちらつかせるのび太だが、意に反してドラえもんは反論も文句も言わない。それでもカセットを使ったのび太は簡単に宿題を終わらせ、さらに翌日も学校にカセットを持っていってしまう。その様子を見てドラえもんは自問自答しながらも、結局は成り行きを見守ることにする。学校でものび太はいろんなカセットを使って活躍し、その様子を自慢げにドラえもんに話す。だがドラえもんは全く反論せず、『ぼくなんかいなかったほうが…、きみのためにはよかったかもしれない。』と呟いて部屋を出、さすがにのび太も不思議がる。学校でののび太の様子を気に入らないジャイアンとスネ夫はのび太を野球に誘いに来るが、のび太は野球選手のカセットをセットしたために攻守共に大活躍し、さらに試合後もみんなの前で「奇術師」や「歌手」の腕前を披露し、ジャイアンの歌をバカにしたために襲いかかってきたジャイアン達も「強い人」のカセットを使って簡単に倒してしまう。誰もいなくなった空き地でのび太は他のカセットを試そうと、「考える人」というカセットを使ってみる。セットするとのび太は今の自分のことを考え始めた。確かにカセットを使えば超一流にはなれるが、それは全てカセットがあるからこそで、実は全く変わってはいない自分自身の事。何も自分に言わなかったドラえもんの事。自分を変えようと何度決心しても、結局元通りにズルズルと戻ってしまう自分の事。そして、例えそうであっても、諦めずに努力をしていかなければならないという事・・・・・・。そしてのび太は、自分からカセットをドラえもんに帰すのであった。  

 (解説)変わりたいと思っても、そう簡単に変われるほど人間は強くありません。大部分はのび太のように「ズルズル」と元に戻ってしまうのが常でしょう。それでも人は努力することを諦めてはいけない。人の弱さを理解しながらも、その弱さを越えた人間の真の「強さ」を穏やかに提示してくれる、藤子F先生らしい人間愛に満ちた話です。さらに作品中でのび太は、これらのことを「自分の力」で考えています。カセットはのび太に「考えさせる」力を与えているだけで、のび太が考えたことは彼が心の奥底に本来持っていた事なのです。それは、誰であっても心の中に希望を持っているというメッセージに他ならないでしょう。本来は卒業生に送られたメッセージではありますが、これは我々全ての世代に通ずるメッセージだと思います。
地震訓練ペーパー   9頁 小三84年6月号
 ママが転んだときの揺れを地震と勘違いして外に飛び出してしまったのび太はママに叱られてしまう。ドラえもんはのび太を訓練しようと「地震訓練ペーパー」を出した。この上に乗ると、震度ごとに地震を体感することが出来るのだ。訓練を始めたのび太は始めこそ落ち着いているものの、震度を上げるうちに怖がって逃げ出してしまう。それでもドラえもんは訓練を続け、のび太は気分まで悪くなってきてしまうが、次第に慣れてきたのでさらに震度を上げ、のび太はついに震度7の状態で立つことが出来るようになった。次に不意に揺れた時の訓練を行い、のび太が昼寝で寝込んだ頃を見計らってドラえもんが揺らし始める。最初は反射的に逃げたのび太だったが、ついに平気で眠っていられるようになり、のび太はドラえもんに感謝する。のび太はペーパーを持って他の友達にも訓練をさせようと出かけ、しずかの部屋でしずかに貸してみるが、その時におやつを持って入ってきたしずかのママも乗ってしまい、おやつがメチャメチャになってしまったのでのび太は逃げ帰ってしまう。次にスネ夫の家に行くが、そこに乗ってしまったためにスネ夫の持っていたプラモまで全壊してしまい、のび太はまた逃げ出してしまうが、スネ夫から話を聞いたジャイアンがのび太を追いかけてきてしまう。ペーパーを敷いてジャイアンも地震にあわせてしまうのび太だが、怒ったジャイアンにペーパーを破られてしまい、紙切れとなったペーパーの上に乗った通行人や自動車が地震にあってしまう。その事はドラえもんに隠しておいたのび太だが、その夜に地震が発生し、のび太を除く家族3人は表に逃げるが、あまりにも慣れすぎてしまったためにのび太は地震にすら気付かない。すぐに逃げないことをパパとママは叱るが、のび太には何のことだかわからず、不思議そうに二人の顔を見つめるのであった。  

 (解説)何でも慣れすぎは良くないと言いますが、それは地震に於いても例外ではなかったようで(笑)。「ヘソリンガスでしあわせに」でもありましたが、やはり危険を感じるということは大切なことなんですよね。しかし、息子に「山のように動かない肝っ玉を持ちなさい」と言っておきながら、いざ地震が起きると走って逃げてしまうのだから、説得力ないよな(笑)。たぶんあの時のママは「転んだ時の揺れを地震と間違われた」→「自分の体重が重い」となってしまうのが嫌だったからなんでしょうね。ウーム、すごい揚げ足取りな解説(笑)。
ひるねは天国で   12頁 小四83年12月号(雲かためガス)
 突然外から大きな音が聞こえてきて驚くのび太とドラえもん。隣の家で改築工事が始まったらしい。あまりの騒がしさにウンザリした二人はしずかの家に行くが、しずかの家でも隣の家がステレオをかけっぱなしでうるさかった。空き地ではジャイアンが歌を歌っており、どこへ行っても騒がしいので二人も疲れ果ててしまう。ふと雲の上に行きたいと考えたのび太は、「雲かためガス」を使って雲の上に行くことを思いつく。一際大きな雲をガスで固め、風で飛ばされないよう木に縄をかけた。しずかも連れてきて、雲の上で三人は楽しく遊び、柔らかい雲の上で昼寝をするが、しずかが何気なく言った言葉から、のび太はここを本当の天国のようにしようと言いだし、天国らしい泉と神殿を作るためにドラえもんは「うき水ガス」と「自動万能工事マシン」を出した。しずかはムードを出すために劇で使った天使の衣装を着てきて、のび太はお菓子や飲み物を持ってきた。完成した天国で、しずかの奏でるハープの音を聞きながら次第に眠ってしまうのび太。だが下界では雲のためにいつまでたっても日陰のままで、住民が苛つき始めていた。突然のび太の頭にボールがぶつかった。泉を空かして下界を見ると、ジャイアン達のボールであることがわかり、のび太はボールをそこからぶつけ返す。怒った二人はのび太のママにウソをついて騙し、ママは降りてくるようのび太に怒鳴ってくる。仕方なく降りてくる三人だが、ジャイアンに言われて天国に行くためのどこでもドアを置くことにする。二人は天国を自分達だけのものにしようとするが、そこへ雲の下でずっと日陰になっていた家の人たちが大勢訪れ、二人は思わず逃げ出してしまうのであった。  

 (解説)相変わらず息子を信じない親ですね(笑)。地上の喧噪を離れた雲の上で過ごすというのは今までにも同じパターンがありますが、雰囲気は全く異なっているので、別作品としても十分楽しむことが出来ます。地上の住民にまで焦点を当てているところが面白いですね。
水たまりのピラルク   24頁 小五82年1月号
 叔父の別荘の裏にある谷川で釣った魚のことを自慢するスネ夫は、今度の日曜日にみんなを連れていくと言い出すが、自分はいつものように誘われないことを見抜いていたのび太はスネ夫に言われる前に引き上げてしまう。ところがのび太に気を使ってしずかも断ったことを聞いて喜ぶのび太は、ドラえもんに連れていってもらうことを提案する。それを聞いたジャイアンも一緒に行くことにし、結局スネ夫は一人で行くことになってしまう。だがそのドラえもんには近所のネコたちとパーティーを開くという予定が入っており、仕方なくのび太はスペアポケットを借りて、自分で何とかすることにした。どこでもドアを出すつもりが「どこでもまど」を出してしまったりして最初から不安であるものの、無事に目的地の谷川に着いたのび太達。だがそこでのび太は間違えて裁縫用の針や糸を出してしまい、それを見たジャイアンは先に来ていたスネ夫のほうに行ってしまう。のび太は残ったしずかと一緒に「手針」を使って釣りを始める。だがのび太達もスネ夫達もなかなか魚が釣れず、苛ついたスネ夫達はのび太達のせいにして追い払ってしまう。のび太達は大きな池を見つけ、そこで改めて釣りを始めることにする。だが一向にジャイアン達もつれず、気晴らしにのび太をからかうことにする。のび太達も釣れないのでしずかの作ってきたおにぎりを食べることにするが、がっついたのび太は中身のタラコを落としてしまう。そこへ現れたスネ夫達は大笑いしながら、その池は昨晩の雨で出来た水たまりであることを指摘した。しずかにまで恥をかかせたことを謝るのび太だが、しずかはのび太を優しく慰めて散歩に出かける。のび太を傷つけまいとするその優しさに感動したのび太は何としてもしずかに大物を釣らせるため、何か道具を出してみる。ところが出てきたのは「海水のもと」「タイムふろしき」「成長そくしんライト」といった変なものばかり。自分でもウンザリしてふて寝してしまうのび太だが、その時タイムふろしきの下で何かが動き、見てみるとタラの稚魚がたくさん動いていた。タイムふろしきで普通の卵の状態に戻ったタラの卵が成長そくしんライトを浴びて稚魚にまで成長したのだ。これを見て良いアイデアを思いついたのび太は水たまりに海水のもとを入れ、稚魚を放してライトで成長させる。全然魚が釣れないジャイアン達はまたのび太をからかいに行くが、そこではのび太がタラを大量に釣り上げていたので驚いてしまう。やけになってしまうスネ夫だが意地を張るジャイアンはなんとしてもスネ夫の行った場所で魚を釣り上げることにする。
 あらかた魚を釣り上げたのび太はしずかのことを忘れていたことに気付き、とりあえず釣った魚を見せることにする。しかし呼びに行っている最中に、魚の山にタイムふろしきが被さってしまい、元のタラコに戻ってしまう。しずかを連れてきたがタラが消えてしまったことにのび太は驚いてしまい、しずかは再び山の中に行ってしまう。タラコに戻ったことに気付いたのび太はさすがに自分のふがいなさに幻滅し、様子を見に来てくれたドラえもんに感極まって泣きついてしまう。話を聞いたドラえもんは「空間入れかえ機」を出して水たまりの周りを囲い出し、アマゾン川の一部を持ってきて世界最大の淡水魚・ピラルクを釣れてくることにする。最大5メートルもの大きさを誇るというピラルクを釣るために糸を垂らすのび太だが、代わりに釣れたのはピラニアだった。慌てて捨てるのび太だが、今度は手針から妙な手応えが返ってきた。あまりに大きいので掴む場所を考えているということに気付いたのび太は急いでしずかを呼びに行く。一方のジャイアン達はまだ魚が釣れないでいたが、土地の人から昨晩の大雨で川が濁ったために今日は釣れないということを聞かされ、ついに怒り出してしまう。だが何故かその怒りの矛先をのび太に変えた二人はのび太の所へ向かう。釣り竿を持つしずかだが、突然竿が引っ張られ、三人がかりで引っ張り続ける。それはやはりピラルクで、それを見た三人はおろか、やって来たジャイアン達まで驚いてしまう。三人は何とか地面へ釣り上げるが、それでも暴れるピラルクにしずかが振り回されてしまい、押さえようとしても巨大すぎてのび太達には止められない。ピラルクは再び水の中に飛び込み、竿を握ったままのしずかは一緒に飛び込んでしまう。ピラニアだらけの水の中に引きずり込まれたしずかを見て我を忘れて追いかけるのび太だが、途中で泳げないことに気付いて溺れだしてしまう。しずかはのび太を引き上げて戻ってきたが、何故かピラニアはいなかった。先程ピラルクが暴れた拍子で空間入れかえ機が壊れてしまっていたのだ。結局魚は釣れなかったものの、喜んでくれたしずかを見て安心するのび太はどこでもドアで帰ろうとするが、その時同じくピラニアに吹き飛ばされたジャイアン達を見つける。のび太の所に行かなかったことでケンカを始めてしまうジャイアン達を三人は諫めるのであった。  

 (解説)今話は短編作であるにも関わらず、藤子F先生が単行本収録時に大幅な加筆を加えた話として有名です。初出時と収録時の違いについてはファンの活発な論議を呼ぶ格好の題材となっていますが、それに関しては他の所で考えて下さればいいでしょう。
 そんなこんなで出来上がった今話は、段階をふんでのジャイアンの怒り顔が見られたり、ピラルクの説明で読者の雑学も増やせたり、いろんな道具を組み合わせて目的を成就させるというパズル的な手法が面白かったり、優しいしずかが嬉しかったりと、名場面や見所が満載になっています。キャラの魅力が全開になって発揮されているところがその理由ではないでしょうか。



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