叔父の別荘の裏にある谷川で釣った魚のことを自慢するスネ夫は、今度の日曜日にみんなを連れていくと言い出すが、自分はいつものように誘われないことを見抜いていたのび太はスネ夫に言われる前に引き上げてしまう。ところがのび太に気を使ってしずかも断ったことを聞いて喜ぶのび太は、ドラえもんに連れていってもらうことを提案する。それを聞いたジャイアンも一緒に行くことにし、結局スネ夫は一人で行くことになってしまう。だがそのドラえもんには近所のネコたちとパーティーを開くという予定が入っており、仕方なくのび太はスペアポケットを借りて、自分で何とかすることにした。どこでもドアを出すつもりが「どこでもまど」を出してしまったりして最初から不安であるものの、無事に目的地の谷川に着いたのび太達。だがそこでのび太は間違えて裁縫用の針や糸を出してしまい、それを見たジャイアンは先に来ていたスネ夫のほうに行ってしまう。のび太は残ったしずかと一緒に「手針」を使って釣りを始める。だがのび太達もスネ夫達もなかなか魚が釣れず、苛ついたスネ夫達はのび太達のせいにして追い払ってしまう。のび太達は大きな池を見つけ、そこで改めて釣りを始めることにする。だが一向にジャイアン達もつれず、気晴らしにのび太をからかうことにする。のび太達も釣れないのでしずかの作ってきたおにぎりを食べることにするが、がっついたのび太は中身のタラコを落としてしまう。そこへ現れたスネ夫達は大笑いしながら、その池は昨晩の雨で出来た水たまりであることを指摘した。しずかにまで恥をかかせたことを謝るのび太だが、しずかはのび太を優しく慰めて散歩に出かける。のび太を傷つけまいとするその優しさに感動したのび太は何としてもしずかに大物を釣らせるため、何か道具を出してみる。ところが出てきたのは「海水のもと」「タイムふろしき」「成長そくしんライト」といった変なものばかり。自分でもウンザリしてふて寝してしまうのび太だが、その時タイムふろしきの下で何かが動き、見てみるとタラの稚魚がたくさん動いていた。タイムふろしきで普通の卵の状態に戻ったタラの卵が成長そくしんライトを浴びて稚魚にまで成長したのだ。これを見て良いアイデアを思いついたのび太は水たまりに海水のもとを入れ、稚魚を放してライトで成長させる。全然魚が釣れないジャイアン達はまたのび太をからかいに行くが、そこではのび太がタラを大量に釣り上げていたので驚いてしまう。やけになってしまうスネ夫だが意地を張るジャイアンはなんとしてもスネ夫の行った場所で魚を釣り上げることにする。
あらかた魚を釣り上げたのび太はしずかのことを忘れていたことに気付き、とりあえず釣った魚を見せることにする。しかし呼びに行っている最中に、魚の山にタイムふろしきが被さってしまい、元のタラコに戻ってしまう。しずかを連れてきたがタラが消えてしまったことにのび太は驚いてしまい、しずかは再び山の中に行ってしまう。タラコに戻ったことに気付いたのび太はさすがに自分のふがいなさに幻滅し、様子を見に来てくれたドラえもんに感極まって泣きついてしまう。話を聞いたドラえもんは「空間入れかえ機」を出して水たまりの周りを囲い出し、アマゾン川の一部を持ってきて世界最大の淡水魚・ピラルクを釣れてくることにする。最大5メートルもの大きさを誇るというピラルクを釣るために糸を垂らすのび太だが、代わりに釣れたのはピラニアだった。慌てて捨てるのび太だが、今度は手針から妙な手応えが返ってきた。あまりに大きいので掴む場所を考えているということに気付いたのび太は急いでしずかを呼びに行く。一方のジャイアン達はまだ魚が釣れないでいたが、土地の人から昨晩の大雨で川が濁ったために今日は釣れないということを聞かされ、ついに怒り出してしまう。だが何故かその怒りの矛先をのび太に変えた二人はのび太の所へ向かう。釣り竿を持つしずかだが、突然竿が引っ張られ、三人がかりで引っ張り続ける。それはやはりピラルクで、それを見た三人はおろか、やって来たジャイアン達まで驚いてしまう。三人は何とか地面へ釣り上げるが、それでも暴れるピラルクにしずかが振り回されてしまい、押さえようとしても巨大すぎてのび太達には止められない。ピラルクは再び水の中に飛び込み、竿を握ったままのしずかは一緒に飛び込んでしまう。ピラニアだらけの水の中に引きずり込まれたしずかを見て我を忘れて追いかけるのび太だが、途中で泳げないことに気付いて溺れだしてしまう。しずかはのび太を引き上げて戻ってきたが、何故かピラニアはいなかった。先程ピラルクが暴れた拍子で空間入れかえ機が壊れてしまっていたのだ。結局魚は釣れなかったものの、喜んでくれたしずかを見て安心するのび太はどこでもドアで帰ろうとするが、その時同じくピラニアに吹き飛ばされたジャイアン達を見つける。のび太の所に行かなかったことでケンカを始めてしまうジャイアン達を三人は諫めるのであった。
(解説)今話は短編作であるにも関わらず、藤子F先生が単行本収録時に大幅な加筆を加えた話として有名です。初出時と収録時の違いについてはファンの活発な論議を呼ぶ格好の題材となっていますが、それに関しては他の所で考えて下さればいいでしょう。
そんなこんなで出来上がった今話は、段階をふんでのジャイアンの怒り顔が見られたり、ピラルクの説明で読者の雑学も増やせたり、いろんな道具を組み合わせて目的を成就させるというパズル的な手法が面白かったり、優しいしずかが嬉しかったりと、名場面や見所が満載になっています。キャラの魅力が全開になって発揮されているところがその理由ではないでしょうか。
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