てんとう虫コミックス第35巻


大砲でないしょの話   8頁 小三84年5月号(メッセージ大砲)
 裏山で木イチゴがたくさん生っている場所を見つけたのび太はしずかにその場所を教えようとするが、そこへジャイアン達が現れたので引き上げてしまう。のび太はジャイアン達には内緒にしておくつもりなのだ。しずかに電話をして待ち合わせようとするのび太だが、ちょうどそこに電話がかかってきてママが応対する。電話はパパの会社の部長からで、パパに至急連絡を取りたいとのことだったが、パパは朝から釣りに出かけているので連絡の取りようがなく、ママは困ってしまう。それを見たドラえもんは「メッセージ大砲」を出した。パパの居場所を探し出し、スイッチを入れてメッセージを吹き込むと、そのメッセージが雲のような弾となって発射された。音であるために障害物も無視して飛んでいったメッセージはパパの元に届き、メッセージを聞いたパパは連絡を取るために電話を探しに行った。それを聞いて安心するママ。のび太はこれを使ってしずかに連絡を取り、しずかを家まで呼ぶことにするが、家の前でジャイアン達が待ち伏せしているのを見つけたので、今度はしずかに一旦家に戻るようメッセージを送る。しかしのび太の部屋から飛んでいくメッセージを追っていったジャイアン達は、そのまましずかの後をつける。ジャイアン達がいなくなったことを確認したのび太達はそこでジャイアン達の悪口を言うが、大砲のスイッチが入れっぱなしだったためにその悪口がメッセージとなって発射され、それがしずかの下に届いて近くにいたジャイアンとスネ夫にも聞こえてしまう。2人は結局、ジャイアン達に許してもらうために木イチゴの場所を教える羽目になるのであった。  

 (解説)今回の道具よりも携帯電話のほうがよっぽど利便性が高いような気が(笑)。メッセージの弾が当たった時の、それぞれのびっくりした表情が豊かで面白いですね。それ以外は特に見所はないかな。
ききがきタイプライター   7頁 小二84年11月号
 おじさんにもらった目覚まし時計のお礼の手紙を書くよう、ママに注意されてしまったのび太は渋々手紙を書き始めるが、元々手紙を書くのが苦手なのび太はやはり文を書くのがうまくいかず、手紙を書くのを止めてふて寝してしまう。仕方なくドラえもんは「ききがきタイプライター」と「マイク」を出した。マイクに向かって話すと自動的にタイプしてくれるのだ。手紙の文章を読み上げると本当にその通りの文章が印字されたが、それに驚いたのび太は思わず大声を上げてしまい、その声までもタイプされてしまう。一旦やり直して再びタイプし始めたのび太は、今度は順調だったのだが、途中で何も知らないママが大声で話しかけてきたのでそれがタイプされてしまい、のび太はすっかりやる気をなくして、この道具を持ってしずかの家に遊びに行ってしまう。だが途中でのび太はマイクを落としてしまい、ドラえもんに叱られながらも一緒に探すことにする。その時持っていたタイプライターに文字がタイプされ始めた。のび太をバカにしているその内容からジャイアンとスネ夫であることに気付いた2人は急いでジャイアン達を探し、悪口を話していた場所が空き地の前だったということを聞いて、空き地に急行する。しかしその途中でさらに文字がタイプされ、誰か女の子に拾われたらしいことがわかるが、空き地へ行ってみても近くには厳つい顔と体の学生がいるだけで、女の子の姿が見あたらない。ところがその学生は女友達を見かけると女口調で話しかけ始め、拾ったマイクをプレゼントに渡そうとするが、それを厄介がった女友達はマイクを再び捨ててしまう。手がかりもなくなってしまって困る2人だが、マイクはまた女の人に拾われた。持ち帰られることを懸念する2人だが、家からいなくなってしまったのび太をうんと叱ってやるという内容がタイプされたのを見て、拾い主がママであることを知るのであった。  

 (解説)リアルタイムで文章だけが打ち出され、それを元にマイクを探すという構図は、何となく宝さがしにも似た緊張感がありますね。話の進行上の理由とは言え、いきなり登場の女口調の学生や、例によって文章が書けないのび太なんかも面白いですが、今話で一番面白いのは道具であるタイプライターでしょう。大声を出すときちんと大きな文字で印字され、ジャイスネの悪口やイヌの声などがただひたすらに印字されていくという無機質な感じと、書いてある内容のギャップが最高におかしいですね。
ま夜中に山びこ山が!   10頁 小四84年1月号(山びこ山)
 家に帰るやいなやママから宿題をするように命令されたのび太はさすがに腹を立ててしまい、ドラえもんがいないのをいいことに昼寝を始めてしまう。しかしどこからともなく部屋にいないはずのドラえもんの声が聞こえてきた。部屋中探してもドラえもんはどこにもいないのに声だけは聞こえてくるので、のび太は気味悪がって宿題を始めることにする。すると本当に戻ってきたドラえもんが机の下に置いてあった「山びこ山」を出してきた。24時間の範囲で、これに発した音をこだまのように再生することが出来るのだ。のび太はみんなに見せに行こうとするが、ママにまた宿題をするように言われてしまい、怒ったのび太は山びこ山に、5分おきに自分の声が再生されるようにセットする。それを玄関に置き、5分経ってのび太の声が再生され、遊びに行ったものだと勘違いしたママは急いで玄関に出るが、部屋にいるのび太を見て困惑してしまう。さらにその後も同じようなことが続くので、ママは熱があるものと勘違いして寝込んでしまう。改めて出かけていった2人は空き地にいたしずかとスネ夫に山びこ山を見せる。のび太達は試しにジャイアンの悪口をたくさん吹き込むが、そこへ当のジャイアン本人が現れたために動転してしまうが、ドラえもんが取り消しボタンを押していたので事なきを得た。ジャイアンは今度開く予定のリサイタルのリハーサルをしに来たと言って、4人を観客に歌を歌い始めた。台風が荒れ狂ったような恐怖の3時間が過ぎ、終わると同時にみんなは帰っていったが、ジャイアンは空き地に置きっぱなしの山びこ山を家に持ち帰ってしまう。そして夜、吹き込まれたジャイアンの歌が山びこ山によって再生され、止めることが出来ないジャイアンは山びこ山を持ったままで町中を逃げ回るが、そのために町中の人が目を覚ましてしまうのであった。  

 (解説)以前にも全く同名の道具が登場しましたが、その時と今回とでは道具の効能が全く異なっています。そちらの話は未収録の方で後々語るとして、今話はストーリー自体は平凡ですが、生き生きとした各キャラの魅力が全開になった作品でもあります。悪口をジャイアンに気付かれた時のスネ夫の顔や、夜中に山びこ山が鳴り出した時の母ちゃんのやたら怖い様子がイイですね。ジャイアンも客観的に自分の歌を聴くと下手だと思えるようです(笑)。
ぐ〜たらお正月セット   10頁 小六85年1月号
 元旦の夜明け前、初日の出を見たいと言っていたのび太を起こそうとするドラえもんだが、のび太はやはり起きようとしない。ドラえもんが無理に起こそうとしてもさらに屁理屈を言って起きようとしないのでドラえもんも放っておくことにするが、のび太は同時に人並みの正月を過ごしたいとも思っており、二律背反した二つの願いを同時に叶えられる道具を出してくれるようドラえもんに求める。呆れ果てたドラえもんは「ぐ〜たらお正月セット」をのび太に渡して布団の中に潜り込んでしまい、のび太は早速「人払いごへい」をさして誰にも邪魔されないようにしてから眠りにつく。そして元旦の朝、新年の挨拶を交わすドラえもん達だが、パパ達は何かが足りない感じを受ける。しかし気にせずに雑煮を食べ始めた。のび太は午後1時になってようやく目を覚まし、「初日の出ジオラマ」で初日の出を拝み、「スーパーインスタントおぞうに」と「おせちボックス」で正月料理を食べることにする。ふと家族のことを気にしたのび太は階下に降りてみるが、家族はのび太のことをすっかり忘れて楽しんでいた。そこへいつもお年玉をくれるおじさんがやってきたが、のび太は会うわけに行かないので困ってしまう。だが「自動ふりこみお年玉通帳」にもらえるはずのお年玉が自動で振り込まれるのを見て安心する。さらにいろんなお客が挨拶に来たので階下に降りようかとも考えるのび太だがそれを抑え、「おざしきだこ」で遊ぶ。そこにしずかが遊びに来たが、ごへいの効力でしずか達ものび太のことを忘れてしまい、すぐにどこかへ行ってしまった。それを見たのび太は「一人遊びマシーン」で遊ぶが何か物足りず、「全チャンネルかべかけテレビ」でテレビを見るが、逆に目を回してしまった。そして夕暮れになり、一日が終わりそうになっているところを見て、急にのび太は元旦という一日を無駄に過ごしたこと後悔してしまう。その様子を見たドラえもんは「ふりだしにもどる」で元旦の朝にまで時間を戻した。そして2人は一年の始まりである日の出を眺めるのであった。  

 (解説)「一年の計は元旦にあり」と言うわけで、やはり多少の事情はあっても、元旦だけは規律正しく生活しようということなんでしょうね。寝正月で過ごすのは2日からでも十分と(笑)。ですが、最近はつまらない用事で睡眠時間を削り、結果的に元旦を寝正月で過ごしている僕としては、結構シビアなテーマと言えるかも知れません(笑)。「セット」と言うだけあって、様々な道具がたくさん出てくるのが楽しいですね。
さか道レバー   7頁 小一79年12月号(さかみちレバー)
 のび太はジャイアン達と一緒に簡単な手押し車を作り上げた。ジャイアンに言われるままにスネ夫とジャンケンをしたのび太は見事勝つが、それはジャイアンが乗った手押し車を押す順番を決めるためのもので、のび太は車を押す羽目になってしまい、それを見たスネ夫は逃げ出してしまう。話を聞いたドラえもんは「さか道レバー」を取り出した。自分では動かせないのでジャイアンが乗り捨てていった車にレバーをつけ、のび太がレバーを前に倒すと、道が坂になって車が動き始めた。レバーをもっと倒すと坂が急になって車のスピードも増していく。だが実際には道は元のままで、乗っている人間にだけ「坂」を体感することが出来るのである。のび太はスピードを出しすぎてしまうが、レバーを戻すことで無事に停止する。そしてしずかやスネ夫とも遊ぶことにしたドラえもんはみんなをのび太の家の玄関先に連れていき、「ガリバートンネル」でみんなを小さくして玄関先で楽しく遊ぶ。ところがそこにジャイアンが現れて車を取られてしまうが、急にレバーを倒しすぎたために急降下に近い状態で進み始め、車は転倒してしまう。だが車から降りたらただの地面なので、大事には至らないのであった。  

 (解説)単純な道具ではありますが、乗っている人間にしか体感できないという点で、ドラ世界における「四次元」に類似する発想が息づいていると思います。ガリバートンネルで小さくなって、普段住み慣れた空間を遊ぶ空間に変えてしまうというのも痛快で、読んでいて爽やかな気分になれる一作です。
レプリコッコ   7頁 小一82年11月号
 ジャイアン達に新しいマンガを見せるスネ夫だが、いつもの如くのび太は見せてもらえない。泣きついてきたのび太を逆に叱りつけるドラえもんだが、そのマンガが「あばれちゃん」の新刊であると聞いて逆に自分が騒ぎ出し、「レプリコッコ」を出した。レプリコッコにマンガを見せながらくちばしを押すと、レプリコッコから卵が生まれてきた。家に帰ってそれを割ると中からミニサイズのマンガ本が出てきた。ミニサイズのレプリカを作ることが出来るのだ。マンガを読んだ2人はママからおやつのプリンを出されるが、プリンが一つしかなかったためにレプリコッコでもう一つ増やして食べることにした。のび太はさらに本屋に行って読みたいマンガを全部レプリコッコに見せてレプリカを作り、おもちゃ屋でも同じ事をして、空き地でそれらの卵を全部割って中身を取り出す。その様子を見たジャイアン達はレプリコッコを借りて自分達も本をコピーしようとするが、本屋の主人は怪しんでレプリコッコを使わせてくれない。そこでスネ夫の提案でテレビコマーシャルの画面を見せることにした。新発売のおもちゃのコマーシャルが流れたので急いでレプリコッコに見せようとするが、慌てたために操作に戸惑い、くちばしを押した時は画面が切り替わって怪獣の姿が映し出されていた。果たして卵の中から出てきたのはミニサイズの怪獣で、怪獣のはく炎で真っ黒焦げにされてしまうジャイアンとスネ夫であった。  

 (解説)「テレビとりもち」と同じようなパターンですが、オチは少々異なったものになっていますね。「レプリカ」という言葉を巧みに変化させた秀逸なネーミングは、今でも僕のお気に入りです。楽しい雰囲気で全体が覆われている作品です。
空ぶりは巻きもどして…   10頁 小六84年4月号(現実ビデオ化機)
 野球の試合で大ホームランを放つのび太。さらに守備においてもヒットになるような当たりをダイビングキャッチし、試合はジャイアンズの圧勝で幕を閉じた。勝利の立て役者となったのび太は一躍ヒーローとなるが、実はこれにはちゃんとカラクリがあるのだった。昨日の午後、スネ夫がジャイアンズの個人成績を出したのだが、のび太は打率「一分」という驚異的な成績を弾き出し、翌日の試合でヒットを打たなければクビにすると宣告されてしまったのだ。だが打率を上げる道具などはドラえもんも持っておらず、ガッカリしたのび太はふて寝してしまう。そこへスネ夫からアニメビデオを見せてやるという電話を受け、のび太は嫌がるが見たがったドラえもんは一人でスネ夫の家に向かう。スネ夫の家でビデオを見たのだが、スネ夫がビデオを巻きもどしたりスローにしたりするのを見て、ドラえもんは名案を思いついた。家に帰ったドラえもんは「現実ビデオ化機」という、現実世界をビデオのように操作できる道具を取り出した。これを使って空振りするたびに巻きもどしてやり直すようのび太に指示を出し、翌日、つまり今日、のび太はその通りにしてヒットを打ったリファインプレーを行ったのだ。のび太はしずかに誉められたので気を良くし、嬉しくてそのセリフを何回も聞いてしまい、50回も聞いたためにしずかは声を枯らしてしまう。ドラえもんはビデオ化機を返してもらおうとするがのび太はまた返そうとせず、ドラえもんは思わず叱りつけるがのび太はそれも早送りで飛ばしてしまった。だがのび太だけではなく、巻きもどすたびにみんな同じ事を何度も繰り返したため、みんなは潜在的に疲れており、のび太もご飯も食べずに眠りこけてしまう。目を覚ましたのは夜中の12時だったためにママに叱られてしまうが、のび太はビデオ化機で時間を巻きもどすことにする。しかし調子に乗って戻しすぎたために、ドラえもんがビデオ化機をのび太に貸す以前にまで戻ってしまい、ドラえもんはビデオ化機を貸すのを止めてしまうのであった。  

 (解説)今話のオチも一種のタイムパラドックスなんでしょうか?しかし一回空振りするたびに、本人だけでなくその他のみんなまでやり直してしまう羽目になるというのがすごいですね。「ビデオ式なんでもリモコン」とはケタが違います(笑)。オチが唐突な気もしますが、「うる星ケニヤ」というネーミングとか、打率一分というのび太の成績のインパクトで帳消しでしょう。
ムリヤリキャッシュカード   8頁 小五84年6月号
 ジャイアンに以前かした50円を返してもらおうとするのび太だが、ジャイアンの迫力に圧されて結局何も言えずに引き下がってしまい、ドラえもんに泣きついてくる。ふがいなさを感じながらもドラえもんは「ムリヤリキャッシュカード」を出した。カードに空いている穴から相手を覗き込み、もらいたい金額を言えばお金を取り立てることが出来るのだと言うが、のび太がドラえもんで試してみてもお金は出てこない。これを使うには暗証番号が必要で、カーゴの右下にある黒丸を押しながら、のび太は4桁の暗証番号を吹き込む。早速のび太はジャイアンを見つけてお金を取ろうとするが、暗証番号を忘れてしまったためにお金を取ることが出来ず、しかもジャイアンに気付かれてしまう。しかたなくのび太の誕生日をもじって新たに番号を作るが、それでも不安なのび太はドラえもんについてきてもらう。ジャイアンはスネ夫と一緒にアイスを食べようとするが、ジャイアンが金を持っていないことを見抜いたスネ夫は素早く逃げてしまう。それを聞いたのび太だがドラえもんに言われてカードでお金を請求してみる。するとちゃんと50円が出てきたのでのび太は喜んでマンガを買いに行くが、その帰り道で先程のことを見ていたスネ夫に脅され、カードを貸す羽目になってしまう。しかも暗証番号まで見抜いたスネ夫はのび太から千円取ろうとし、のび太は千円も持っていないのだが、何故か千円が出てきたのでカードを返してもらう。これを見て自分から金を取っても損をしないと考えたのび太は、しずかに頼んでカードで八千円を出してもらい、喜んで何かを買いに行こうとするが、その時にジャイアンを見かける。ジャイアンは道に落ちていた百円玉を拾うが、その百円玉は突然50円玉に変わった。不思議に思ったのび太がドラえもんに聞いてみると、このカードは相手にお金がない場合は、その相手の未来の収入を先取りする事になっており、つまりのび太が先程出した八千円も未来ののび太のお金であるために、未来ののび太達が文句を言いに、タイムマシンで大挙やって来るのであった。  

 (解説)「暗証番号を忘れる」という所が妙に現実的で怖いですね〜(笑)。金持ちのくせに千円だけ取っていったスネ夫も妙と言えば妙ですが、面白いからOKでしょう(笑)。例によってお金に関しては自分に都合のいいようにしかとらえないのび太がおかしいです。
しずちゃんとスイートホーム   10頁 小六83年2月号
 しずかが出木杉に手編みのマフラーをプレゼントしているところを目撃してしまったのび太は絶望状態に陥り、スネ夫のからかいの言葉も耳に届かない。のび太はドラえもんに文句を言うが、気が動転しているので何を言っているかドラえもんにはわからない。だがそれでもヤキモチであることを理解したドラえもんは、空き地に「即席スイートホーム」を建てることにする。家の中に好きな人を誘うと、家の中でだけ相手も自分を好きになってくれるのだ。のび太を家に入れてみたドラえもんが部屋のスイッチを入れると、ハート型の電灯が光り始めた。それと同時にドラえもんののび太を見る目がだんだん怪しくなってきて、ドラえもんは好きになったのび太に飛びついてしまう。弾みで外に出たためにすぐ元に戻ったドラえもんだが、つまり後から家に入った方が先に入った方を激しく好きになるというわけなのだ。早速しずかを呼びに行ったのび太は愚痴を言われながらもスイートホームに招待する。するとしずかはのび太のことが好きになってきて、あまりのラブラブぶりにドラえもんも見ていられなくなって帰ってしまう。2人はスイートホームで甘い一時を過ごすが、しずかがホットケーキを焼くと言って材料を取りに行くために外に出た時にしずかは我に返ってしまい、そのまま家に帰ってしまう。そこへジャイ子がのび太の居場所を尋ねてきた。ジャイ子は今度自分が描くギャグマンガの主人公のモデルとしてのび太を参考にしたかったのだが、スイートホームに入ると順番の関係上でのび太を好きになってしまい、のび太は慌てて外に飛び出す。我に返ったジャイ子は再びのび太を捜し、話を聞いたジャイアンとスネ夫も手伝うことにする。2人は空き地のスイートホームを見つけ、スネ夫が先に、ジャイアンが後から入ってみるが、もちろん家には誰もいない。しかしそんな時、ジャイアンの挙動が見る見る怪しくなっていく。のび太はしずかをスイートホームに戻すために説得していたがしずかは聞き入れない。しかしカバンを忘れたためにホームへと行ってみると、中ではホームの効力でスネ夫に惚れてしまったジャイアンがスネ夫を追いかけ回し、スネ夫はボロボロになりながらも必死に逃げまどっているところだった。  

 (解説)これはもう笑うしかないと言うくらいの快作です。冒頭ののび太の動転ぶりから、「惚れる」と言うよりはまさに「怪しい」という言葉がピッタリのドラとジャイアンの「惚れ」シーン、ハートを見た時ののび太の下手な会話(吹き出しまでハートっぽくなっている所が細かい!)など、どこから読んでも面白いです。さすがにのび太も過去のことがありますから、ジャイ子に惚れられるのは嫌だったでしょうし、「勉強相手としてはのび太は適当ではない」というしずかの何気ない言葉も結構意味深だったりして、深読みもし放題の奥の深い話になっていますね。
地球下車マシン   12頁 小六84年2月号
 雪が積もったために外は一面の銀世界となっていた。のび太の家にジャイアンとスネ夫がやってくるがのび太は居留守を使うようドラえもんに頼む。2人はこれからスキーをしようとしていたが、誘っても滑れないのび太が来るはずはないことを見越してわざと誘いに来ていたのだ。それを聞いたドラえもんは我が事のように怒るが、やはりのび太もバカにされて悔しいのだった。そんなのび太にドラえもんは、スキーに乗って立っていられるかどうかを確かめてから「地球下車マシン」を出した。方位磁石で方位を計ったドラえもんはマシンを机の上に置き、少しだけマシンのダイヤルをひねる。すると机がゆっくりと滑るように動き出した。だがドラえもんは机ではなく、自分達や地球の方が動いたのだと言う。この機械を使うと地球の自転から少しだけ降りることが出来るので、そのために自転から降りた机は、自転から降りていないのび太達には動いたように見えたのだ。これを持って空き地に積もった小さな雪山に向かった2人だが、この山は東を向いているためにマシンを使って山を滑ることが出来ない。ジャイアン達に催促されて進退きわまったドラえもんはそのままダイヤルを回すと、のび太は雪山を滑って登り始めた。それを見てみんなは驚くが、すぐに調子に乗ったのび太は普通にスキーで山を滑らずに、何度もマシンを使って山を登ってしまい、呆れたドラえもんは家に帰ってしまう。たっぷり遊んだのび太は家に帰ろうとするが、道を歩いていると何故か自然に壁のほうに寄って行ってしまう。自分が西に流されていることに気付いたのび太はマシンを取り出そうとするが、使いすぎでダイヤルがぐらぐらになっていたため、無理に引っ張ってダイヤルがすっぽ抜けてしまい、のび太は自転から降りる度合いが高くなっていってしまう。走っても西へ流されることを止めることが出来ないのび太は塀づたいに進み、角は一気に走って渡りきる。しかしその角から突然イヌが現れたために驚いたのび太は塀をつかみ損ね、完全に自転から降りきってしまったのび太は止まれずに西に向かって走りはじめてしまった。ドラえもんは助けを求められるが、何故か妙に落ち着いた態度をとってのび太をからかってしまう。だがドラえもんの指摘でのび太はズボンごとマシンを外し、ズボンはものすごい勢いで西の空へ飛んでいった。家でズボンのことをママに聞かれたドラえもんは、ズボンは中国大陸に上陸したのではないかと話すのだった。  

 (解説)やはり今話はラストの「飛んでいくズボン」が全てでしょうね。「ズボン」という効果音でズボンが脱げるところが芸コマです。難点と言えば、今回登場の道具のメカニズムが少し難しい理論を使っているために、ちょっとわかりづらい部分がある点ですね。それでも地球の自転を「観覧車」と表現して説明するのはさすがです。
ジャイアンへのホットなレター   10頁 小六83年12月号
 伊藤翼のサイン入りパネルをみんなに見せびらかすスネ夫。これは「翼ちゃんへのホットなレター」コンクールで優勝してもらった記念品で、スネ夫はさらにファンクラブの幹部になったので色々忙しい様子などをみんなに話すが、何故かジャイアンだけは不機嫌な様子で、その場を去っていってしまう。気になったのび太はドラえもんに話してみるが、ドラえもんは「歌手」であるジャイアンが翼にヤキモチを焼いたと解釈し、事が起こる前に自分達からジャイアンの方に出向くことにする。ジャイアンはファンが盛り上がっていない現状を憂えるが、のび太達は逆にこの状況に納得してしまう。ジャイアンはご馳走を食べながらみんなで話し合おうという企画を提案するが、これにはのび太達が否定的だったために、ジャイアンはファンレターを募集することにする。一等にはサイン入りパネルを送ると言い出し、そのための道具を出すようドラえもんに強要したため、「ダイレクトパネル」を出してパネルを作ろうとするが、今度はジャイアンは自分のデザインした舞台衣装を「着せかえカメラ」で着せるよう命令し、とりあえずパネルを作ることに成功する。とりあえずパネルはジャイアンに任せて2人はファンレターを出すようみんなを説得に向かう。締切を一週間後に設定して2人は家に帰るが、そこへジャイアンからタイムマシンでファンレターを持ってくるよう命令されてしまい、一週間後に行ってファンレターを持ってくる。しかしどのハガキも書かれている字は汚く、しかも内容もジャイアンを酷評する物ばかりで、賞を選ぶことさえも出来ずに2人は困り果ててしまう。仕方なくのび太は「もはん手紙ペン」でそれらしい文章を書き、自分を一等にしてしまう。内容を読んで涙を流して喜ぶジャイアンは一等のサイン入りパネルをのび太に送るが、そのパネルはあまりに巨大なために部屋に置いたら自分達の居場所がなくなってしまい、泣き叫んでしまうのび太とドラえもんであった。

 (解説)今回も一応いろんな道具が出てはいますが、それはほとんどジャイアンに命令されて出されたもので、いつもと違った趣向になっています。「フィーバー!!ジャイアンF・C」と同様、現実を巧みにパロったような面白おかしい話が展開していますね。ファンレターの文面も面白いものばかりですが、ファンレターの数が「13」というのも暗示的ですね。
動物変身恩返しグスリ   8頁 小五83年8月号
 絵本の「鶴の恩返し」を読んで、自分も動物に恩返しされたいと夢を話すのび太だが、ドラえもんはその夢を実現させる道具である「動物変身恩返しグスリ」を出した。これを助けた動物にかけると、女の子になって現れて恩返ししてくれると言うのだ。但しいじめると仕返しに来るらしい。ドラえもんは空き地で木に縛り付けられている子犬を助け、その子犬にクスリを一滴垂らす。その場では何の変化もなく家に帰る2人だが、しばらく経つと女の子になったイヌが家にやってきた。ドラえもんは恩返ししてもらうチャンスを気長に待ちながらドラやきを食べようとするが、なぜか押し入れにドラやきが入っていない。その時イヌの少女が本棚の戸棚にしまってあったドラやきを見つけてくれた。のび太が隠していたのだ。恩を返したイヌは元の姿に戻って去っていった。のび太も早速かわいそうな動物を探しに行き、ゴミバケツの中に閉じこめられているネコを助けてクスリをかけるが、そのネコはドロボウネコだった。早速ネコは女の子になって家に来るが、金魚にいたずらしたり眠りこけたりとあまり役に立ちそうもない。そしてネコはママに叱られているのび太を見てママをひっかき、ママを余計に怒らせてしまう。怒ったのび太は八つ当たりしてクスリの入れ物を道路に叩きつけてしまうが、その時流れたクスリでアリが溺れそうになっていたことに気付かなかった。家にも帰れず空き地で弱り果てるのび太だが、そこへアリの変身した少女が何人も現れ、のび太を抱え上げて川に落としてしまうのであった。  

 (解説)「いじめると仕返しに来る」という最初の何気ないセリフが伏線になっているとは驚きました。それぞれの動物が変身した女の子は、それぞれに元となった動物の特徴を持っていて、見ていて楽しいものになっています。と言っても「可愛い」と言えるのはイヌが変身した女の子だけだと思いますが(笑)。
ドラえもんに休日を!!   9頁 小五84年9月号
 のび太のパパは会社が週休二日制になったので土曜日も休みになった。それを見て羨むのび太だが、ドラえもんは「のび太の面倒を見る」という仕事のために一年中休みがない事をのび太に漏らす。それを聞いたのび太は明日の日曜をドラえもんの休日にすることに決め、ドラえもんも最初は心配するが、のび太がはっきりと宣言したのでタマちゃんとイリオモテ島へハイキングに行くことにする。楽しみにするドラえもんは嬉しさのあまり、夜になってもなかなか寝付けない。翌日、ドラえもんは一応のび太に「よびつけブザー」を渡してから出かけて行くが、のび太は絶対に使わないことを心に決める。それを聞いたジャイアンとスネ夫はのび太にブザーを使わせることを画策、手始めにジャイアンが殴りかかってきたのでのび太は逃げ、スネ夫の言うままに塀をよじ登って逃げるが、降りた先には大きなイヌがおり、のび太はイヌをふんでしまったために追い回され、木の上に追いつめられてしまう。ブザーを使おうとするがその手を寸手の所で止め、のび太は屋根づたいに逃げて行くが慣れないことをしたために転げ降り、ダンプカーの上に落下してしまう。だがどうしてもドラえもんを呼ぶことは出来ない。運良くダンプカーは信号で止まったので降り、のび太は家に帰ろうとするが走っているところでがらの悪い小学生にぶつかってしまい、絡まれたのび太は路地裏に連れ込まれてしまう。ドラえもんを呼ぼうとするのび太だが、久しぶりの休日を楽しんでいるであろうドラえもんのことを想い、のび太はドラえもんが呼べないように、ついにブザーを壊してしまう。その様子を見ていたジャイアン達はのび太の度胸を認め、のび太に加勢する。そして夜、楽しそうに帰ってきたドラえもんに、のび太は何もない平和な一日だったと報告するのであった。  

 (解説)ドラえもんを想い、そのために無理をしてでもがんばり抜く。このテーマは言うまでもなく、かの名作「さようなら、ドラえもん」と同じものです。ドラえもんを心配させまいとするのび太の姿、そしてその姿を見てのび太の信念を認め、のび太に協力するジャイアンとスネ夫の姿は、嫌でも読む者を感動させずにはいられません。「さようなら〜」の頃と比べて、幾分成長したのび太の姿を見ることもできますね。藤子F先生が本来ならば描くはずであった「真の最終回」。作者がどういう構想を持っていたのか、そのヒントの一端と言うべきものがこの作品に隠されているかも知れません。
ネンドロイド   7頁 小二84年8月号
 ドラえもんが留守であるにも関わらず二階で物音がするので、二階にのび太が上がってみると、人型の粘土がドラえもんの隠しているドラやきを食べようとしていた。そこへ急いで帰ってきたドラえもんはドラやきを取り上げ、人型粘土の頭についていたヒゲの一本を自分の顔に戻す。これは「ネンドロイド」と言って、自分の髪の毛をさすことで自分そっくりに動く粘土のロボットなのだ。それを聞いたのび太はドラえもんにさっきネンドロイドがしようとしていたことをしつこく聞いたので、怒ったドラえもんはまた出かけていってしまう。のび太は自分の髪の毛を使って自分そっくりのネンドロイドを作って宿題をさせるが、やはり間違いだらけのようで宿題は止めさせる。次にママに頼まれたお使いに行かせるが、これまたのび太そっくりに道草を食ってしまい、ママを怒らせてしまう。帰り道で雨が降ってきたためにママは急いで洗濯物を取り込むが、のび太がそれを手伝わせると粘土であるために雨に濡れて溶けてしまい、洗濯物を汚してママをさらに怒らせてしまう。ドライヤーで乾かしたのび太はどこでもドアで出木杉の髪の毛を取ってきて、出木杉のネンドロイドを作り出して宿題をさせてしまう。さらにママから肩たたきを頼まれたのでジャイアンの髪の毛を取ってきてジャイアンのネンドロイドを作り、それに肩たたきをさせる。ところがネンドロイドはジャイアンそっくりにのび太のマンガを取り上げてしまったためにのび太は慌てて毛を抜き、今度はお風呂に入っているしずかから毛を抜いてしずかのネンドロイドを作るが、そこへ帰ってきたドラえもんがネンドロイドを返すようのび太に言ってくるが、しずかのネンドロイドはお風呂に入ったために溶けてしまったのであった。  

 (解説)「インスタントロボット」みたいな話ですが、アンドロイドの材料に粘土を使うという設定は「ロボットねん土」から来ているものですね。相変わらずのダメぶりを露呈するのび太ネンドロイドや、ドラネンドロイドのことでのび太にしつこく質問されて怒り出すドラが楽しいですね。
なんでもぬいぐるみに…   10頁 小四84年8月号
 ドラえもんと自分の分のアイスを買いに出かけたのび太は、おもちゃ屋でラッコのぬいぐるみを見つめているしずかを見つける。そのぬいぐるみをしずかが欲しがっていると聞いて、自分がぬいぐるみをプレゼントしてしずかに喜んでもらうことを夢想したのび太はぬいぐるみを買おうとするが、さすがにアイスの代金100円だけでは買えるはずもなく、貯金を使おうと家に戻ることにする。ところがその途中でのび太に会い、ぬいぐるみの話を聞いたスネ夫は意地悪そうな笑みを浮かべる。家に帰ったのび太はドラえもんの貯金まで借りてしまうがそれでもとても足りないので、お金が出来るまで店の人に待ってもらうことにする。そこへ、おじさんからお小遣いをもらったと言うしずかがやってきた。しずかは喜んで買いに行くが、ぬいぐるみは売れてしまっていた。ぬいぐるみをのび太が欲しがっているものと勘違いしたスネ夫が買ってしまったのだが、しずかが欲しがっていたものと聞いて慌ててしずかにプレゼントしようとするが、わけもなく高価なものはもらえないと、しずかは家に帰ってしまう。ドラえもんにお金を返して事の次第を話したのび太は落ち込んでしまうが、ドラえもんは「ぬいぐるみオーブン」、そして「ぬいぐるみコートとつめもの」を出した。試しにドラやきのぬいぐるみを作ってみることにしたドラえもんは、コートをドラやきにかけて、乾いたコートからドラやきを抜き取り、その中につめものをいくつか入れてオーブンにかけ、仕上がり寸法をセットするとその通りの大きさのドラやきぬいぐるみが完成した。どこでもドアでラッコの住む北の海に出かけた2人は「タンマウォッチ」で時間を止め、型を取ってラッコのぬいぐるみを作る。ぬいぐるみをプレゼントされたしずかは心底喜んでくれたので、2人はもっといろんなぬいぐるみをプレゼントすることにし、動物や文房具、車やフルーツなど様々なものでぬいぐるみを作ってしまう。だがそれらを見せられてもしずかの部屋には置き場がないので受け取ることが出来ない。のび太の家でも邪魔者扱いされてしまったので、ドラえもんはある考えを思いついた。ドラえもんは家のぬいぐるみを作ってその中に全てのぬいぐるみを入れ、しずかの家の庭先にそれを置くのであった。  

 (解説)「ぬいぐるみ」という題材のせいか、ホンワカした暖かい雰囲気の作品になっています。スネ夫ものび太に自慢するためにわざわざぬいぐるみまで買ってしまうのだから、金持ちの道楽とは恐ろしいものです(笑)。貯金をせびられて文句を言うドラが可愛いですね。
ゼンマイ式潜地艦   11頁 小六83年7月号
 裏山でジャイアン達に無理やりプロレスごっこをさせられたのび太だが、偶然にも2人をぶってしまったために追いかけられ、どうにか家まで逃げてくることは出来たが、ランドセルと片方の靴を裏山に置きっぱなしにしてきてしまった。だが家の前ではのび太を捕まえるためにジャイアン達が見張っており、しかもタケコプターやどこでもドアを使うことまで想定した準備をしてきたので、ドラえもんは庭に「原子力潜水艦型ゼンマイ式潜地艦」を出した。ゼンマイを巻いて動力を得た潜地艦は地底に沈み、発進した。潜望鏡でジャイアン達を確認したのび太は2人をからかい、2人は地面に隠れたのび太達を捕まえるために裏山の方向へ急ぐ。ゆっくり進んでいく潜地艦だが、ゼンマイ切れになったために地上に出てゼンマイを巻くが、そこを発見したジャイアン達が追いかけてきたので急ぎ潜航し、スネ夫が潜地艦の一部をつかむが何とか逃げ延びる。だがスネ夫はその様子から、潜地艦が500メートル進むごとにゼンマイを巻かなければならないことを突き止め、次の浮上予測地点まで移動し、近くの家の庭に隠れて現れるのを待つ。スネ夫の予測通り潜地艦はそろそろゼンマイ切れになる頃合いだったが、しずかの家を発見したのび太は潜地艦の方向を変えてしずかの家の地下に入り、お風呂に入っているしずかを潜望鏡で眺めるが、その時にゼンマイが切れたので潜地艦は浮上し、驚いたしずかは浴槽の中に潜り込んでしまう。スクリューの音が消えたことを不思議がるスネ夫達はその家を覗こうとするが、お風呂に入っていたその家のおじいさんに水をかけられて逃げ帰ってしまう。無事に裏山に到着したのび太は自分がエッチだったから助かったと話すが、ドラえもんは複雑な顔をするのであった。  

 (解説)「地底に潜る」という道具にもついに潜水艦タイプが登場し、すごいことになってしまいました。でも利便性の点では「ドンブラ粉」には遠く及ばない気が(笑)。スネ夫の頭の回転の早さも久々に披露されていて、「知恵比べ」といった感じがして良いですね。風呂に入っているおじいさんというオチも「スーパーダン」なんかで出てきましたが、あまりにも登場が唐突すぎておかしいです(笑)。
悪魔のイジワール   9頁 小三83年9月号
 久々に激しい口げんかをしたのび太とドラえもん。のび太は部屋を飛びだして行ってしまい、ドラえもんは我慢できずに「悪魔のイジワール」を出してのび太に意地悪しようとするが、我に返ったドラえもんは頭を冷やそうとタイムマシンの通路に入ってしまう。それを見ていたのび太は意地悪をする薬だと考えてイジワールを飲んでしまうが、それを見たドラえもんは仰天してしまう。この薬は意地悪をしたい相手に飲ませるもので、これを飲むと周りの人から寄ってたかって意地悪されると言う。何とかして欲しいとのび太が頼んでもドラえもんは無視してどこかへ行ってしまい、早速意地悪されてしまう。のび太はママから宿題をやるよう言われ、宿題はないとウソをつくが、ちょうど野球に誘いにやってきたジャイアン達が宿題の話をしたために結局やる羽目になってしまう。のび太はトイレに行こうとするがママに先に入られてしまったのでしずかの家に行くことにするが、家の前に、ちょうど入り口をふさぐ形で車が止まっていたためにタケコプターで行くことにする。だが偶然飛んできた風船がのび太の目の前で割れたために驚いたのび太は飛び退き、木の枝に引っかかってしまい、しかもその下で焼かれているゴミの煙を浴びてしまう。それでもどうにかしずかの家についたがしずかは出かけた後で、しずかを追いかけるがマンホールの穴に落ちてしまう。のび太は仕方なく公園の公衆トイレで用を足すことにするが、そこに偶然先生がいたために長々と説教を受ける羽目になってしまい、やっと終わってトイレに行くと今度はたくさんの観光旅行者が列を作っていた。仕方なく芝生の陰で立ちションをしようとするのび太だが、そこへ運悪くしずかが現れたためにおしっこできずにしずかの家まで行くことにする。しかしその途中でジャイアン達が野球の勝利を祝っているところに遭遇し、のび太も一緒に祝杯のジュースを飲む羽目になってしまう。いよいよ辛くなってきたのび太だが、そこへイジワールの効き目を消す薬を持ってきたドラえもんが何気なくのび太の背中を叩くと、その衝撃で我慢の限界に到達し、のび太は派手におしっこを漏らしてしまうのであった。  

 (解説)なんかイジワールを飲まなくても、のび太はいつもああいう不幸な目にあっていそうですね(笑)。今話は立て続けに起きる意地悪の数々とそれにすっかり参ってしまうのび太の様子が面白いですね。しかしドラえもんもいくらのび太とけんかしたからって、こんなものを飲ませようとするなんてひどいなあ(笑)。突然現れる先生も相変わらずイイ味だしてます。
ジャイアン台風接近中   10頁 小六84年9月号(怒りエネルギー観測チャート)
 また野球の試合に負けてしまったジャイアンは怒り狂ってみんなを叱ろうとするが、みんなはすぐ逃げてしまう。だがそれでも怒りが収まらないジャイアンを見てのび太は外に出ないようにするが、ドラえもんはそんなのび太を情けなく思い、ドラやきを買いに出かける。のんびりと歩くドラえもんだが、ジャイアンはドラえもんの顔が丸いことから野球ボールを連想し、野球で負けたことを思いだしてドラえもんまで追いかけ回してしまう。慌てて家に戻ってきたドラえもんは「怒りエネルギー観測チャート」を出してジャイアンの現在位置を割り出した。台風のように怒っている人間の動きを探ることが出来るのだ。ドラえもんはジャイアンの動きを見ながら反対の道を進んで無事にお菓子屋にたどり着いてドラやきを買う。ドラえもんからチャートを借りたのび太は空き地で苛ついているジャイアンを肉眼で確認し、動き出すと同時にのび太も安全圏に避難する。スネ夫に会ったのび太はチャートのことを話し、のび太はドラえもんに頼んでスネ夫や他のみんなにもチャートを配る。みんなはチャートを見てうまくジャイアンを避けるため、ジャイアンはみんなの気配を感じるものの誰も見つけることが出来ずに余計イライラしてしまう。次第に怒りの台風も大きくなってくるが、ジャイアンはついにスネ夫を見つけて捕まえてしまった。そしてスネ夫からチャートのことを聞いたジャイアンはのび太に対する怒りで巨大台風にまで怒りを発展させ、猛スピードでのび太の所へ向かう。のび太はしずかの家に逃げようとするがしずかは出かけているので仕方なく外に出る。ジャイアンはさらにのび太を追いかけてきて、しかものび太は行き止まりの道に入ってしまい、絶体絶命の窮地に陥る。ところがそこで先生に出会ったジャイアンはテストのことで誉められたことから機嫌を良くし、怒りのエネルギーが消滅した。のび太は安心してジャイアンのそばから離れようとするが、偶然飛んできた野球ボールがジャイアンの頭にぶつかり、それを見たジャイアンは再び怒り始めてのび太を追いかけるのであった。  

 (解説)怒りの度合いを台風に例えるという、そのセンスがいいですね。台風の表現にふさわしく、ジャイアンの怒り方も真に「怖い」ものとなっており迫力があります。のび太に責任を転嫁してしまうスネ夫や、一旦消えた怒りをすぐに思いだしてしまうジャイアンなんかがおかしいですね。
ドンジャラ村のホイ   23頁 コロコロ84年7月号
 川辺で襟巻きのようなひれをつけたカエルを見かけたのび太。しかしカエルはすぐに逃げてしまい、のび太はその事をみんなに話すが当然誰も信じてはくれない。
 そこにある老人が現れ、のび太達を自宅へと招待する。珍しい動物の標本を集めるのが趣味だと言うその老人は自分のコレクションを4人に見せ、さらにもっと珍しい動物のはく製を集めたいと言う自分の夢を語ったところで、エリマキガエルを捕まえて自分に渡してくれれば百万円払うという条件を言ってきた。のび太は喜んでドラえもんに知らせるが、ドラえもんは今まで様々な動物が人間の手によって絶滅してきた経緯を話し、万一エリマキガエルが絶滅した場合は、その責任がのび太にあると断じる。
 後悔するのび太と共にカエルを見つけようとするドラえもんだが、既に噂が町中に広まってしまったようで、川辺にはカエルを捕まえるためにたくさんの人が押し掛けてきていた。ドラえもんは「あっちこっちテレビ」を使ってエリマキガエルを探すが、そんな中で見つかったのはカエルなどではなく、何と小人のような新種の人間だった。ドラえもんは「お医者さんカバン」で手当てし、のび太はしずかから人形の家を借りてきて、小人をその家のベッドに寝かせる。ところが目を覚ましたその小人はのび太達に驚いたのか、部屋中を逃げ回ってしまう。2人はスモールライトで小さくなって改めて話をすることにし、そんな2人に小人はドンジャラ村のホイと名乗った。
 ホイにドラやきをご馳走する2人はホイから事情を聞くことにする。ホイは最近急速に開発が進んだ青葉ヶ丘という所に住んでいたが、開発が進んだために住んでいる場所である森が少なくなり、新しい土地を求めて旅に出たのだが、どこへ行っても大人族の街ばかりで困り果てていたと言う。2人はホイを連れてどこでもドアで青葉ヶ丘に向かうが、何と既に森が消えてしまっていた。村がなくなってしまったことにショックを受けるホイだが、2人はホイを励ましてドンジャラ村探しに出発する。その時ツバメを見つけたホイはカバンから、先程エリマキガエルがつけていた襟巻きのようなものを取りだしてツバメにくっつけた。これは「万能手綱」と言って、これを使うことで小動物に乗って旅をするのだと言う。先程のび太が見たのはホイがカエルにこれをつけていたものだったのだ。
 空から森を探す3人は団地の近くに森を見つけてそこに降りてみるが、そこは子供たちの遊び場になっていたために他を探すことにする。車の往来が激しい道路を必死に渡ったり、手綱をつけたネズミに乗ることをドラえもんが拒んだり、犬に吠えられたりと色々な目にあったものの、結局村は見つからない。
 3人はまた明日探すことにして、とある家の庭先の木に「みの虫式ねぶくろ」を使ってくっつき、眠りにつく。夜もふけた頃、その家の床下からこっそりと小人が出てきた。その小人はねぶくろで寝ているホイを見て驚く。その子はホイの妹のクンだったのだ。やっと家族と再会することが出来たホイはドラえもん達を床下の家に招待する。ホイの父からも礼を言われる2人だが、2人は自分達大人族が今までしてきたことを謝る。他の村人はちりぢりになって家の床下に隠れ住んだらしく、2人はホイたちと一緒に夜の公園に出かけていく。公園で遊び回るホイたちを見つめながら、父親は自分が子供の頃のドンジャラ村での想い出を2人に語る。そこへ同じ小人族がやって来るが、住んでいる家が翌日にシロアリ退治をするので、消毒薬を使うために住めなくなってしまうからと言ってその人達は新たな家を探しに旅立っていった。
 広い地球で自分達が安心して住める土地がなくなったと悲しげに呟く父親を見て、家に帰ってきた2人は小人族のための土地を探すことを決意、「リクエストテレビ」で目的の土地を探す。そして見つかった土地は、アマゾン川流域の未開のジャングル。ミニハウスで家も造った2人はホイ達小人族をどこでもドアで連れていった。その広い土地を見て様々な夢を巡らすホイ達を見て喜ぶのび太達は安心して帰ってきた。
 2人はこのことは絶対口外しないと誓い、エリマキガエルも見間違いだということになった。のび太はジャイアン達にいじめられながらも秘密を守り、そんなのび太をドラえもんは誉める。そして、遠いアマゾンのジャングルに出来た新しい村で、平和にドンジャラ祭りを行っているホイ達に想いを巡らすのび太とドラえもんであった。  

 (解説)当時流行の「エリマキトカゲ」、そしてこの作品が掲載された翌月から連載が開始される「宇宙小戦争」を意識しながらも、本作は「さらばキー坊」と同様、自然保護を色濃く訴えたメッセージ性の強い作品になっています。絶滅していった様々な動物を「ホイ」というキャラクターを通して擬人化し、のびドラとの交流を通じて、「自然を守る」事の真の意味とはどういうものかを読者に考えさせる筋になっています。もちろん我々はドラえもんではないのだから、ドラえもんのような芸当は出来ません。そんな我々に出来ること。それはラストののび太のように、ほんの少し意地を張ることではないでしょうか。大上段から「自然保護」を声高に叫んでいるのではなく、あくまで読者である子供の視点で自然を守ることを訴えている、ドラえもんらしい作品です。



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