てんとう虫コミックス第36巻


貸し切りチップ   9頁 小三83年6月号
 みんなはスネ夫が買った電子ゲームを交代しながら遊び、とうとうのび太の番になった。しかしそこにジャイアンが現れてゲームを取られてしまったためにのび太はゲームをし損ねてしまい、仕方なくしずかの家に向かうと、父親と一緒にどこかへ出かけていたらしいしずかがやって来た。しずかは映画の「スペースウォーズ」を見に行ってきたが映画館が満員で見られなかったと言う。自分の家で遊ぼうとしずかを誘うのび太だが、スペースウォーズのビデオを買ったと出木杉が言ってきたため、しずかはそっちに行ってしまう。空き地で昼寝しようとしても土管の上には他の人が寝ており、のび太は自分の前にはいつも邪魔者が入るとひがみだしてしまう。それを軽く受け流したドラえもんは一緒にテレビで野球を見ようとするが、のび太は邪魔者を気にして落ち着かない。それでも野球を見始める二人だが、ちょうど始まったところにパパがやってきてゴルフを見始めてしまった。怒ったドラえもんは「貸し切りチップ」を取り出してテレビにくっつける。するとパパは知り合いから呼び出されて出かけてしまい、二人は野球を再び見ることが出来た。チップをつけたものはつけた人の貸し切りとなってしまうのだ。チップを少しもらったのび太は最初に空き地の土管にくっつけて寝ている人をどかし、ゆっくりと昼寝を満喫する。次にジャイアンがまだやっている電子ゲームにチップをつけ、ジャイアンを追い払って自分がゲームを借りてしまう。スネ夫を帰してゲームを続けるのび太だが、そこで出木杉の家から戻ってきたしずかを見かける。機械の故障でビデオを見られなかったしずかと一緒に映画を見に行こうと提案するのび太だが、出木杉がビデオが直ったと言ってきたのでのび太はしずかにチップを貼ると、また出木杉の家の機械が壊れてしまい、さらにピアノのレッスンも、先生が休んでしまう。映画館は満員だったがのび太がチップを貼ると、ちょうど映画が終わって観客が全員出てしまい、偶然次の回には誰一人観客が入ってこなかったため、のび太としずかは貸し切りとなった映画館で映画をゆっくり鑑賞するのだった。  

 (解説)例によってのび太の「不幸の累積」も面白いですが、チップを使うことで次々に起こる「偶然」もまたユニークで面白いですね。何故かのび太にゲームを貸しっぱなしにして取り返そうとしないスネ夫や、そのゲームを取り上げようとするジャイアンもおかしいですね。『おじさんにかしてみな。』なんて、すごく怪しい言い方だ(笑)。
サカユメンでいい夢みよう   10頁 小六81年12月号(「サカユメン」でいい夢みよう)
 今日もいつものパターン通りにいやな目にあったのび太。話を聞いたドラえもんはいつものことと受け流すが、それを味わうのび太の心情はさすがにたまったものではなく、そのストレスを察したドラえもんは「サカユメン」という薬を出した。これを飲むと起きている時にあった嫌な出来事と反対の夢を見ることが出来ると言う。のび太は一応飲んでみて、夜になって夢を見始める。夢の中ではのび太は大天才で、伸びたいが異のクラスメートの成績が悪いためにみんな廊下に立たされてしまい、ママにも満点のテスト答案を見せて逆にママを叱りつける。部屋に入ったのび太はどうせ夢だからと昼寝もせずに宿題をやりはじめ、簡単に終わらせて外に遊びに行く。イヌに襲われているしずかと出木杉を見かけたのび太はイヌを追い払い、その姿に夢中になったしずかは出木杉を置いてのび太のほうに行ってしまう。そこへ難癖をつけてきたジャイアンとスネ夫もあっという間にやっつけてしまった。そこで目を覚ましたのび太はさわやかな朝を迎えることが出来たが、現実をしっかり生きろと言うドラえもんの説教にも耳を貸さず、サカユメンを今度は5、6粒ほどいっぺんに飲んでしまう。のび太は木の上にいるカタツムリを観察してわざと遅刻するように遅れて登校するが、珍しく先生も遅れて教室に入ってきた。テストが返却されたが、のび太は偶然にも95点という高得点を取ってしまい、何とか悪い目にあいたいと考えるのび太はわざとママを怒らせようとするが、ママも宝くじで百万円当たったと言って上機嫌だ。いい思いをした時にサカユメンを飲むと悪夢を見てしまい、しかものび太はたくさん飲んだのでその分悪夢の度合いも倍増されてしまうとドラえもんは話し、のび太は犬に噛みつかれようとするがイヌは虫歯になっており、ジャイアンに殴られようと思って突き飛ばしても、それが逆にスピード出しすぎの車からジャイアンを助ける形になってしまい、ジャイアンには感謝されてそれを見ていたしずかには誉められてしまう。さらにおじさんやおばさんからたくさんお小遣いをもらい、のび太は今夜は絶対に寝ないと宣言するが案の定寝てしまい、悪夢にうなされるのび太を寝床から見つめるドラえもんであった。  

 (解説)最初の「良い夢」の展開はかの名作「うつつまくら」を思わせるものがありますが、それ以上に良いことが起こってしまう現実の描写もまた面白いものになっていますね。「事実は小説より奇なり」ってところですかね(笑)。冒頭の疲れ果てるのび太には、新たに問題となりつつあった、「子供のストレス」というものも意識しているのかも知れません。ラストの悪夢が描かれていないところも読者の想像力をかき立てるうまい構成ですが、惜しむらくはやはりペン入れが途中からアシスタントのたかや健二氏に変わっているために、いつもと違った印象を持たれてしまうことでしょうか。
めいわくガリバー   10頁 小六83年10月号(めいわくなガリバー)
 近くの女の子から借りた「ガリバー旅行記」を熱心に読みふけるのび太。のび太はこれを始めて読んだらしく、ガリバーが小人の島に行って活躍したということにいたく感動するが、ドラえもんはあらかじめ「小人の島」なるものは存在していないことを説明する。だがのび太が言いたいのはそんなことではなく、宇宙には小人のような人間が住む星があるのではないかということだった。それを聞いたドラえもんは無駄だとは思いつつも、「宇宙救命ボート」で探すことにする。「小さい宇宙人」という条件を加えたために星の発見は難しいだろうと思われたが、すぐにボートに着地の衝撃が走った。ドアを開けてみると海の真ん中だったために浸水してしまうが、なぜかそこは浅かった。近くを通りかかった船から、ここが小人の星であることを悟った二人は陸地を目指して飛んでいき、ついに港に上陸する。だが「マイクロ補聴器」で人間の声を聞いてみると、人間達は巨大な二人を見て怪獣だと騒いでいる。それでも自分達は味方だということを説明した二人は上陸して町中を歩くが、車を踏みつぶしそうになってしまい、街を歩くことを嫌がられてしまったので二人は広い空き地に「おりたたみハウス」を建てて、そこに住むことにする。自分達の力を生かせば小人の自分達を見る目も変わるだろうと考える二人だが、ハウスのせいで街が日陰になってしまうので立ち退きを命じられてしまう。山奥へ行ってみてもダム建設予定地だったために追い出され、ドラえもんは帰ろうとするがのび太はまだ意地を張って海の上にハウスを置く。海の中の魚を見つけた二人は金魚鉢で水族館を作ろうとするが、漁場荒らしと言われてしまい、空しくなったのび太は何気なく海におしっこを流すが、そのせいで小人達は猛烈なデモを展開し、二人は追い出される形で地球へと戻ってくる。ガリバーの話は時代に合わないと考えたのび太は新しいガリバー物語を自分で作り、紙芝居のように女の子に方って聞かせるが、女の子にはつまらないと言われてしまうのであった。  

 (解説)小説の世界にちょっとだけ「現実感」というテイストを混ぜただけなのに、なぜこんな面白い話になってしまうんでしょう?おしっこをしてデモが起きてしまうところなんてのはその白眉ですね。のび太もご丁寧に下手な絵で新しいガリバー物語の紙芝居を作りますが、そりゃつまらんよな(笑)。紙芝居を読むのび太を無表情で見つめるドラも意味深ですね。
「そんざいかん」がのぞいてる   10頁 小四84年11月号(そんざいかん)
 宿題を終えるまでは一歩も外に出てはいけないときつくのび太に命令するママ。だが結局のび太はいつものように昼寝を始めたりして、勉強が手につかない。そこでドラえもんは「そんざいかん」を出してのび太に開けさせてみる。すると缶の中からのび太の上半身だけが出てきた。これは蜃気楼のような幻で、どこへ行っても開けた人間の姿が映し出されるのだと言う。これを椅子の上に乗せて一旦のカモフラージュとした二人は、タケコプターで先生の家に向かい、のび太は先生にそんざいかんの蓋を少しだけ開けてもらう。その缶を部屋に持ち帰ってのび太の蜃気楼をしまい、変わりに先生の蜃気楼を出して飾り、それでのび太を威圧して宿題をさせ始めるドラえもん。そしてのび太は何とか宿題を終わらせ、急いで先生の蜃気楼をしまう。のび太はドラえもんからそんざいかんをもう一つ借りて、しずかの蜃気楼を部屋に飾るためにしずかの家に向かうが、その事を考えてにやついているところをスネ夫にバカにされたため、のび太は缶の蓋を少しだけ開けてもらい、家に持って帰ってスネ夫の蜃気楼を殴りつける。もう一つそんざいかんを借りて出かけるのび太だがジャイアンに見つかってしまい、ジャイアンは缶の蓋を少しだけ開けてしまうがそこでのび太も逃げ、部屋に戻ってジャイアンの蜃気楼を殴りつける。さらに缶を借りたのび太はやっとしずかの家についたが、しずかは右手の指に怪我をしているために蓋を開けられず、家に来ていた出木杉が代わりに蓋を開けてしまう。のび太はドラえもんに懇願して最後の一個をもらい、ついにしずかに蓋を開けてもらう。しずかの蜃気楼を部屋に飾るのび太だが、出木杉と話をしているしずかの楽しそうな様子を見て、のび太はヤキモチを焼いてしまう。そして出木杉が帰ったところでしずかはお風呂に入るために服を脱ぎ始めた。慌てて缶の蓋を閉じるのび太だが、そこで良い考えを思いついたのび太は出木杉のそんざいかんをしずかのお風呂場の窓の当たりに置いておくことで、出木杉が覗いているように見せかけ、出木杉が嫌われるように仕向ける。しかしのび太が持っていった缶はのび太自身の缶であり、蜃気楼ののび太を見たしずかはのび太を嫌ってしまうのであった。  

 (解説)のび太に宿題をやらせるためとは言え、随分まわりくどい方法を…(笑)。今話ののび太はしずかの蜃気楼とインテリアとして飾って「一日中眺めて暮らそう」と考えたり、ジャイアンやスネ夫の蜃気楼を殴ってストレスを発散させたりと、いつになく根暗な雰囲気を出していますね(笑)。
もりあがれ!ドラマチックガス   10頁 小六84年10月号(ドラマチックガス)
 大きな大きなあくびをして、その勢いで寝転がるのび太。その様子を見たドラえもんはのび太のだらけぶりを注意するが、退屈な毎日では感動したりすることは出来ないとのび太も言い返す。そこでドラえもんは、日常のなんでもないことを大げさにしてくれる「ドラマチックガス」を出した。のび太も適当にふりかけてみる。かけてもすぐには何も起こらないが、昼寝をしているのび太をママが叱りつけると、のび太は急に涙を流し、今の怠惰な自分を反省する。のび太はママからお花の先生の家へお使いに行くことになり、のび太は使命感を燃やして出発の決意を固める。外に出ると不吉な風が吹き始めたが、ドラえもんとママの声援を背に受けて、のび太は風の中出発した。一人で風の中を進むのび太を見かけたしずかは話しかけるが、のび太から「お使い」という用事を聞いてのび太の身を案じ始める。それを制したのび太はしずかへの秘めた想いを告白する。そしてしずかものび太への想いを告げ、のび太は絶対の帰還を約束して再び出発し、そんなのび太をいつまでも待ち続けるとしずかは誓うのであった。のび太に出会ったジャイアンとスネ夫はのび太を野球に誘うが、のび太が断ると突然悪鬼の如き形相となってのび太を痛めつける。痛めつけられながらも使命に殉ずることを誓うのび太だが、そこへ眩しい光と共に現れた先生がジャイアン達を追い払う。事情を聞いた先生はのび太の無事を祈って送り出した。隣町に着いたのび太は近くの家の主人にお花の先生の家がある場所を聞き、急いでそこへと向かう。無事に先生の家に到着して努めを果たしたのび太は足取りも軽く家路を急ぐが、そこにジャイアン達が待ちかまえていた。諦めかけるのび太だが、そこへやって来たしずかが事情をジャイアン達に話し、それを聞いた二人は自分達の非礼をのび太に詫びる。だがのび太は過去のいざこざを水に流し、みんなで暮れなずむ夕日を見つめるのだった。ようやく家に帰還したのび太はママとドラえもんから祝福を受け、のび太はこの感動を忘れぬうちに日記に書き留めておくことにするが、「お使いに行った」と書いたところでそれ以上のことが浮かばずに詰まってしまう。ガスの効き目が切れてしまったからであった。  

 (解説)今話でのび太がやったことはラストの日記にもある通り、「お使いに行った」事だけなのです。にも関わらず「お使い」の事で、まるでヒロイックファンタジーのような世界を作り出してしまうところが、ナンセンスの極致ですね。一人一人のオーバーアクションがまさに愉快で、ばからしいにも関わらず極上の笑いを提供してくれています。太陽までのび太達にあわせて動いてしまうのもすごいですね(笑)。この時期のギャグ大作と断言できるでしょう。
ツモリナール   8頁 小五84年12月号
 伊藤翼主演の映画がテレビで放送される時間を心待ちにしているのび太とドラえもん。しかし放送開始の時間になってパパが突然割り込んでゴルフを見始め、二人は追い出されてしまう。怒ったドラえもんは「ツモリナール」を出して、それを叩いて鳴らした音をパパに聞かせる。するとパパはゴルフ番組を見たつもりになって部屋を出ていってしまった。どんなことでも「やったつもり」にさせてくれる道具なのだ。二人は映画を見始めるが、途中でママからお使いを頼まれてしまう。嫌がる二人はツモリナールで行ったつもりになることにする。相手もつり込まれてその気になってしまうので、ママも二人がお使いに行ったつもりになった。二人はさらにお風呂に水を張ったりゴミを捨てたりするのも、それをしたつもりになってごまかした。映画を見終わった二人は外に出かけ、しずかと映画の感想を話し合うが、現れたジャイアンは映画があったことを知らなかった。ジャイアンは思わずのび太に殴りかかるが、ドラえもんが寸前でツモリナールを鳴らしたために二人はそれぞれ殴ったつもり、殴られたつもりになる。三人は空き地を海、土管をヨットのつもりにして楽しく遊び、二人は家に帰ってくるが材料がないので晩ご飯が出来ていなかった。腹が減ったのび太はご飯を食べたつもりになり、さらに宿題もしたつもりになって眠ってしまう。翌朝寝坊して起こされるのび太だがこれまた起きたつもりになってしまい、のび太が寝ている布団の横で、なぜか妙な胸騒ぎを覚えるドラえもんであった。  

 (解説)ものすごい「ご都合主義」の道具ですね(笑)。ある意味「ソノウソホント」や「うそつ機」に近いかも知れません。音叉をモチーフにしたデザインのツモリナールは、音の表現にも波紋を使ったりして、音叉みたいな雰囲気を出していて個人的には好きです。冒頭のパターンは「貸し切りチップ」と同じですが、ほとんど同じ導入部が同じ巻の中にあるというのも面白いですね。
ジャイアン反省・のび太はめいわく   9頁 小五84年10月号(ジャイアンのけんか相手は、タイムマシンでさがせ!!)
 空き地でジャイアンに追いかけられるのび太は慌てて土管の中に逃げ込んでしまい、反対側から入ってきたジャイアンに捕まりそうになってしまうが、なぜかジャイアンは土管の中で誰かとケンカを始め、のび太はそのスキに逃げる。のび太は帰り道、大柄な男の人からジャイアンの家を尋ねられる。スネ夫はその男の人が、ジャイアンがしょっちゅう自慢していた柔道十段のおじさんではないかと指摘する。そのおじさんはジャイアンの家に到着し、ジャイアンはおじさんに会えたことを素直に喜び、先程の土管でのケンカのことを話し、柔道を教えてくれるようおじさんに頼み込む。だがおじさんはジャイアンの求めるケンカの強さと柔道は違うということを話し、さらに真の強さについてもジャイアンを諭す。それを聞いて大変なショックを受けたジャイアンはのび太の家に駆け込み、これからは弱いものを助けていくことを宣言し、手始めに一番弱いのび太を守ることにしたと言う。だがジャイアンはこれから誰かにいじめられることをのび太に強要し、無理やり外に連れ出してしまう。それを見て、おじさんの言っていたことをジャイアンが全く理解していないことに呆れてしまうドラえもん。ジャイアンは離れてのび太を見張り、ジャイアンはのび太がいじめられているところを颯爽と助け、のび太や他の友達から尊敬されることを夢想する。だが当ののび太は全然いじめられる気配がなく、ジャイアンは思わず怒鳴ってしまう。そこへスネ夫が通りがかるがのび太に何もしないで歩き去っていくので、ジャイアンはスネ夫に石をぶつけてのび太のせいにしてしまう。スネ夫はのび太に殴りかかるがその刹那、動物的な本能で危険を察知したスネ夫はその場を去っていった。その後ものび太はいじめられず、だんだんジャイアンもイライラしてきた。当のジャイアン以外にはいじめられる心あたりはないと言うのび太の言葉を聞いて、ドラえもんはジャイアンをタイムマシンで過去の世界に連れていく。そこは先程のび太が空き地でジャイアンにいじめられていた時間であり、ドラえもんは土管に潜り込んだ過去のジャイアンの後ろから、現在のジャイアンを潜り込ませる。そして土管の中でジャイアン同士のケンカが繰り広げられるのであった。  

 (解説)やはりジャイアンに正当な理屈は通用しませんでしたね(笑)。こう見るとジャイアンにも結構なヒーロー願望があるようで、「スーパーダン」とか「スーパージャイアン」でも活躍していいかっこしたいと考える節がありましたね。危険を察するスネ夫もおかしいですが、ジャイアンのおじさんもあと一回くらいは出て欲しかったですね。従兄弟は二回出たんですから(笑)。
シズメバチの巣   8頁 小三84年12月号
 ママに叱られると言って家に入らないのび太を見かねたドラえもんは、自分も一緒に謝ってやることにしてのび太を中に連れていく。だがドラえもんはのび太がテストで0点を取ったり、お使いのお釣りをごまかしたり、その他ママの知らないいたずらなどを全部ばらしてしまい、激怒したママを見て二人は外に逃げてしまう。さすがに責任を感じたドラえもんはのび太のために「シズメバチの巣」を出した。このシズメバチにレーザー光線で刺してもらうと、怒っている人の心が風船のように弾けてしぼんでしまうのだ。巣を叩くことでハチが飛びだし、もう一度叩くことで巣に戻るこのハチの力でママの怒りを静めたのび太はもっと試してみることにし、怒られそうで黙っていた秘密を一気にばらすことにする。最初にしずかを訪ね、しずかの人形にヒゲを書いた犯人が自分であることを話すが、シズメバチを使ったために怒られずにすみ、昨日ガラスを割って逃げた家の主人も、シズメバチによって静められる。そこへスネ夫を追いかけるジャイアンを見かけたのび太はシズメバチを使ってジャイアンの怒りを静めてしまった。話を記いたすネオは面白がってハチを出してしまうが、近くに怒っている人がいないのでどこかへ飛んで行ってしまい、行方不明になってしまった。やっとハチを見つけたのび太は巣を持っているスネ夫に巣の中に戻してもらうが、スネ夫は巣ごとハチを持ち去ってしまう。ハチの巣を手に入れたスネ夫は日頃の恨みを晴らすためにジャイアンに向けてバットを振り下ろす。家に帰ったのび太だが、家にはシズメバチだけが戻ってきていた。スネ夫がさっき巣の中に入れたのは本物のハチだったのだ。ジャイアンをバットで殴ったスネ夫は巣の中から本物とは気付かずにハチを出しているのであった。  

 (解説)冒頭の「自分で勝手に騒ぎを大きくする」という展開はまさにギャグマンガの面目躍如ですが、それを行っているのがドラと言うこともあって、どことなく最初期の雰囲気も漂わせていますね。しかしのび太もしずかの人形にヒゲを書いてしまうとは悪いヤツだ。これは許されて良いのか(笑)?ジャイアンにバットで殴りかかろうとするスネ夫の姿が通り魔みたいで怖いですね(笑)。
タイムふしあな   9頁 小三84年9月号
 土管の上でゆっくり昼寝をしていたのび太はようやく目を覚まし、のんびりと家に帰る。だが途中でテレビの「ゼイ肉マン」があることを思いだしたのび太は急いで帰るが、到着した時には既に終わっていた。そこへのび太と同様遅れてきたドラえもんがやってきたが、ドラえもんは「タイムふしあな」を出して時間を35分ほど前にあわせ、テレビをつけて節穴からテレビ画面を覗き始める。不思議がるのび太は横で寝転がるがドラえもんは何やら夢中になっているようで、ドラえもんは穴からゼイ肉マンを見ていたらしい。これは一種のタイムマシンで、節穴を通してどんな時間のことでも見ることが出来るのだ。のび太も時間をまた調整して覗き、ゼイ肉マンを見る事に成功する。楽しんだのび太は外でも色々見ようと空き地へ行って一時間前の自分の姿を見る。さらに30分後の未来を節穴から見てみるが、なんとそこでは空き地でのび太が犬に噛みつかれていた。のび太は空き地とイヌには近寄らないことにする。そんな中で友達がマンガを読んでいる所を見かけたのび太は、友達がいなくなったあとのその場所に立って、節穴を使ってマンガを読む。そこへラジコンカーを操縦しながら通りがかったスネ夫は珍しくのび太にもラジコンを貸すと言うが、空き地で走らせるというのでのび太は遠慮させてもらう。次に出会ったジャイアンは珍しいチョウを見つけたので探しているところらしく、節穴でのび太が見てみると確かに綺麗な蝶が飛んでいて、のび太はそのチョウを追いかけるが空き地に入りそうになってしまったので慌てて飛び出す。問題の時間が過ぎるまでしずかの家にいることにしたのび太は、しずかが勉強していることもお構いなしで部屋に上がらせてもらう。早速節穴を使って過去の部屋の様子を見てみるが、一時間前はしずかはテニスに行っており、少し時間を進めると帰ってきたしずかが着替えを始めてしまった。驚くのび太だが大声を張り上げたためにしずかに気付かれてしまい、ふしあなを家の外に捨てられてしまう。ふしあなは風に乗って遠くまで飛んでいき、追いかけるのび太はその最中にイヌの尻尾を踏んでしまい、やっと空き地でふしあなを取ったところで犬に噛みつかれてしまうのであった。  

 (解説)36巻にはやたらと「テレビ番組」に関する導入部が多いですね。今回もそれに関連して道具が登場するわけですが、今話の道具は「タイム」という未来的な単語と「ふしあな」という泥臭い?単語を組み合わせているミスマッチ感覚が良いですね。「風に乗って飛んでいくふしあな」という展開はものすごく強引な感じがしますが、まあ良しとしましょう(笑)。
大予言・地球の滅びる日   8頁 小五84年7月号(ナゾの予言書)
 その日は真っ昼間なのに変に暗い、妙な天気だった。天候が悪くなることを心配しながらもタマちゃんとデートに出かけるドラえもん。ドラえもんのいなくなった部屋でのび太は一冊の分厚い本を見つけた。そこにはどのページにも2、3行の意味不明な文章が書かれており、200ページで文は終わっていた。のび太はみんなに見せてみるが、これが何なのかはしずかやジャイアンにもわからない。だがスネ夫だけは何かに感づいた様子だったが、考え込んだままで空き地を出ていってしまう。帰ってきたらドラえもんに聞くことにするのび太だが、家ではまだ3時だというのにもう部屋の電気をつけていた。薄暗い天気なので新聞も読めないかららしい。のび太はこの妙な天候のこともさることながら、先程の本の最後のページに書かれていた「暗き天にマ女は怒り狂う この日○終わり悲しきかな!!」という一説が気になっていた。その時家にものすごい勢いでスネ夫が駆け込んできた。スネ夫が先程感づいたのは、その本が「ノストラダムスの大予言」によく似ていると言うことで、スネ夫は新聞を切り抜いたスクラップブックも持ってきて、あの本に書かれている文章と照らし合わせる。すると恐ろしいほどにピッタリ的中し、二人はこの本を予言書だと断定する。そして200ページ目、つまり今年の元旦から数えて200日目の7月19日の予言は、地球滅亡を意味しているものだと推測した。二人はドラえもんが帰ってきたらタイムマシンで逃げることにし、友達にも知らせるために二手に分かれて走り出した。ジャイアンやしずかは聞き入れたが、出木杉は予言はインチキだといって信じようとしない。今日の天気も「黄砂」という自然現象であると説明するが、のび太は出木杉を放っておいて家に帰ってしまう。だが先に家に帰っていたドラえもんは予言書を「日記」と説明した。これは去年ドラえもんが書いた暗号日記で、例えば200ページ目の文は実際は「0点にママは怒り狂う。この日ドラやきがなくなってしまい、とても悲しい。」ということになるのだ。その他のページのこと、そして200ページから後がないのはドラえもんが怠けただけだという説明を受けて、すっかり脱力してしまうのび太。だが時既に遅くみんなはのび太の家に集合してきてしまい、のび太はドラえもんに説明させようとするが、事態を把握していないドラえもんも困ってしまうのであった。  

 (解説)ノストラダムスの大予言に代表される「予言」というものもいつも話題になるものですが、今話ではその「予言」というものがいかにいい加減に決められたものであるかを、面白おかしく揶揄しています。そういう意味では「風刺」の側面も持っている作品ですね。何より面白いのは予言でも何でもないのに、勝手に予言だと解釈してしまうのび太とスネ夫の姿なんですが、「黄砂」の知識を織り交ぜているのは親切ですね。僕はこれで始めて黄砂を覚えましたね。
アドベン茶で大冒険   8頁 小五84年8月号(アドベン茶)
 昼間から昼寝しているのび太を見て、パパは冒険を求めて遊び回っていた自分の子供時代のことを話すが、のび太は素っ気ない返事を返す。それでもパパは心に生命力があるかどうかだと力説し、さらに今でも自分はわくわくするような冒険をしてみたいと話した。それを聞いたのび太はパパに冒険をさせてあげたいと考え、ドラえもんは「アドベン茶」を出す。一口飲むと五分間、外でハラハラするような冒険が出来るのだと言う。しかも絶対安全保障つきだと言うので、のび太も一口飲んで外に出てみるが、起きることと言えばイヌに追いかけられたりジャイアンに殴られたりすることぐらいだと考えたのび太は家に戻ろうとするが、突然現れたハチに追い回されて家に戻れなくなってしまう。のび太はイヌやジャイアンを避けて逃げるが、後ろのハチを見ながら走っているうちに、通りがかりの人が持っていたはしごを駆け上がってしまう。五分経っても帰ってこないのび太を心配したドラえもんが出かけてみると、のび太は木の上に登ったまま降りることが出来ないでいた。スリルを味わったのび太は今度はパパに茶を飲ませることにするが、パパは大冒険をするためにお茶を何杯も飲んでしまう。冒険への意気込みを見せるパパだが、ママから屋根の雨漏り修理を頼まれて屋根に上がると、どこからか飛んできたラジコン飛行機に追い回され、足を滑らせて落っこちてしまい、木にぶら下がってしまう。ぶら下がった際の反動で飛び上がり、何とか着地したパパだが、後ろから逃走中の銀行強盗が現れ、持っている包丁に驚いたパパは一目散に逃げる。逃げ切ったパパは近くの鉄骨の上に座って休むが、今度はクレーンによって鉄骨がパパごと持ち上げられてしまい、思わず近くのビルの窓に飛び込むとそこは火事で、慌てて飛び降りるとなぜか下にトランポリンがあったために跳ね上がってしまい、今度はトラックの幌上に乗っかってしまった。すっかり参ってしまったパパは帰ってくると、のび太に危ないから外に出ないように注意するのであった。

 (解説)まずは道具の秀逸なネーミングに感心するべきですね。安全保障つきの冒険と言うことですが、のび太が経験した冒険とパパが体験したものとではずいぶん差があるような(笑)。パパは「ムリヤリトレパン」でも同じような目にあっていますが、「人間あやつり機」でも「あらかじめアンテナ」でもそうですし、パパは自分に直接道具が絡んでくると、結構ひどい目にあっていますね。「くろうみそ」もそうだし(笑)。
神さまごっこ   10頁 小六82年7月号
 部屋で悶え苦しむドラえもん。心配したのび太が聞いてみると、ドラえもんは三日もドラやきを食べていないために禁断症状が発生してしまったようで、小遣いが10円しかないので買いに行くこともできないと言う。のび太も小遣いは10円しかないので協力することが出来ず、ドラえもんはさらに悶絶する。その時ドラえもんはあることを思いだし、思いだした道具・「神さまごっこ」を出した。これをのび太につけて神様になってもらい、10円を賽銭箱に入れてドラやきが食べられるようにと祈ると、頭の輪が光り始めた。ドラえもんはすかさずのび太に「かなえてつかわす」と言わせる。すると階下でママが近所の人から贈り物のドラやきをたくさんもらい、ドラえもんは満面の笑みを浮かべてドラやきを食べる。この道具は個人的なささやかな望みなら何でも叶えることが出来るのだ。のび太はドラえもんに道具をつけて賽銭を入れ、小遣い百万円をくれるように祈り始めた。しかしさすがに10円だけでその願いは叶えられず、のび太は金額をどんどん下げて百円と言ったところでようやく輪が光った。早速のび太はママに百円をもらいに行くがママは何もくれず、のび太はドラえもんに文句を言おうとするが、その際に廊下で転んだ時に偶然百円玉を見つけた。次にのび太は自分が神様になっていろんな人の願いを叶えてくると言いだして出かけて行くが、ドラえもんは一抹の不安を覚える。しずかの家に行ってその事を話すと、しずかは賽銭を入れてタレントのトンちゃんに会いたいと祈った。輪が光ったのでとりあえずセリフを言うのび太だが、そこに突然トンちゃん本人がしずかの家にやってきた。お腹をこわして我慢が出来ないのでトイレを貸して欲しいと言う。ロマンチックに会いたかったとしずかは言うが、賽銭が10円だったので仕方がないとのび太は慰める。だがトンちゃんはお礼にとしずかにサインや握手をして、しずかから喜ばれる。次にのび太は家の前に突っ立っているスネ夫を見つけた。スネ夫はテストで90点を取ったのだが、ママからは絶対に百点を取ってくるように言われていたので、家に入ることが出来ないと言う。のび太は神様のことを話し、スネ夫は半信半疑ながらも賽銭を入れて祈ると、全員の採点をやり直しているという先生がやってきて、スネ夫の間違えていた問題を訂正したのでスネ夫は100点になった。10点だったのび太は20点になるのかと期待するが、唯一あっていたその問題が訂正場所だったためにのび太は0点になってしまう。納得できないのび太だがそこにジャイアンが現れ、母ちゃんに追われているピンチを救って欲しいと言ってきた。だが賽銭を五円しか入れないのでのび太がつい愚痴を言うとジャイアンはのび太を殴り飛ばしてしまう。輪が光ったので例の言葉を言ったと当時にドブに落ちてしまったのび太はドブから何かを拾い上げた。それはジャイアンの母ちゃんが去年なくした財布で、それを見せて何とかごきげんを取ったジャイアンだが、ジャイアンの横暴さを見て天罰を与えたいと考えるのび太。家に帰ったのび太はなにかママの願いを叶えてあげるために賽銭を自分で入れてママの願いを聞くが、その願いは「のび太が人並みの成績を取ってくれるように」というものだったので、のび太は勉強のために机から離れられなくなってしまうのであった。  

 (解説)通常こういった「神さま系」の道具が出る話では、その道具のせいで神さま気分になったのび太が最後にしっぺ返しを受けるという筋の話になるのですが、今話の道具は道具自体が普通の「神さま道具」とは若干ニュアンスが異なるため、必然ストーリーも毛色が違ったものになっています。ラストのオチは「グラフはうそつかない」や「多目的おまもりは責任感が強い」でも使われていますが、何度見ても面白いオチですね。後ろでドラやきを平然と食べているドラもグーです(笑)。
いたずらオモチャ化機   9頁 小三84年8月号
 スネ夫の家に呼ばれたのび太は普通に座布団の上に座るが、突然座布団からおならのような音が出て、みんなはのび太がおならをしたとはやし立てるがのび太には身に覚えがない。だがしずかはそれがプープークッションであると話す。腹を立てるのび太にガムをあげようとするスネ夫だが、取ろうとした瞬間に仕掛けられていたバネハサミでのび太は指を挟んでしまう。痛がるのび太を見てみんなは大笑いし、スネ夫はのび太にケーキをあげようとするがのび太は神経過敏になってケーキを食べようとしない。そのケーキには何の仕掛けもなかったが怒ったのび太は家に帰ってしまう。話を聞いたドラえもんも怒り、「いたずらオモチャ化機」を取り出した。これから出る光線を浴びたものは何でもいたずらオモチャになってしまうのだ。試しに机やドアに使ってみるが、何が起こるのかはやってみないとわからないのでのび太もドラえもんもそれぞれいたずらに引っかかってしまう。「とうめいペンキ」を体に塗ったのび太は仕返しに出発する。スネ夫の家ではちょうどみんなが帰っていったところだが、のび太はスネ夫の靴に光線を浴びせて勝手に動くようにしてしまい、スネ夫は靴に引っ張られるまましずかの家にやってきてしまう。とりあえず部屋に上がらせてもらったスネ夫は座布団に座ろうとするが、その座布団に光線を浴びせたためにそこからおならのような音が出てきてしまう。スネ夫はプープークッションだと考えるがなぜかそれらしい匂いまでしていた。気を取り直してしずかにガムをあげるスネ夫だが、そのガムは噛めば噛むほど口の中で膨らんでいってしまうので、スネ夫のいたずらだと勘違いしたしずかは追い出してしまう。次に靴に押されるままジャイアンを空き地に連れていったスネ夫だが、そこでものび太が空き地の木や土管に光線を浴びせてジャイアンにいたずらし、ジャイアンはスネ夫のせいだと思って追いかけ回してしまう。靴を脱いでやっと帰ってきたスネ夫だが、それからものび太は光線を使って様々ないたずらをし、ついにスネ夫は押し入れに閉じこもってしまい、それを見て満足したのび太は家に帰るのであった。  

 (解説)いたずらオモチャに振り回される4人の描写が面白いですが、今回は話に直接関連していないところにも面白さがありますね。なぜか必要以上にのび太のことをけなしてしまうドラや、ガムで顔をパンパンに膨らませてしまうしずかなどがその代表です。おなららしき匂いをかぎつけて怪しむしずかとスネ夫の様子が個人的に好きですね。
オバケタイマー   9頁 小五85年6月号
 遅刻したので廊下に立たされてしまったのび太とジャイアン。どんな目覚ましを使っても起きることが出来ないと話す二人だが、ジャイアンはのび太のだらしなさが移ったと難癖をつけてのび太をギタギタに殴ってしまう。怒ったのび太は恨みをきっと晴らすと叫ぶが、ジャイアンにさらにすごまれて家に逃げ帰る。家に帰ると先生から今日の遅刻のことを聞かされたママがのび太を叱り、すぐに宿題をやるように命令する。ドラえもんもそれに同意するが、のび太は五分だけ休むと言って横になってしまう。部屋を出ていくドラえもんだが信用できないと考えて、なにやら時計のようなものをのび太の頭の側に置いて行く。ムシャクシャしているのび太は何とかしてジャイアンに恨みを晴らすことを考えていたが、その時不意に先程の時計から不気味な音が聞こえてきて、中からオバケが出てきた。びっくりするのび太にオバケは宿題をするように命じ、のび太は怖がりながらも宿題を終わらせる。するとオバケは時計の中に帰っていったが、のび太がそれを見てみると、この時計は「オバケタイマー」で、時間をセットすると時計の中からオバケが出てくるのだ。試しにママを驚かしたのび太はこれを使ってジャイアンを驚かすことにし、時計を持ってジャイアンの家に急行する。途中でしずかに会うがしずかには時計を見せず、ジャイアンの家の玄関先に時計を置いていく。帰ってきてその話を喜びながらドラえもんに話すのび太。しかしその時計を見つけたジャイアンの母ちゃんは落とし物と思って交番に届けようとし、しずかの言葉からのび太が持っていたことを知った母ちゃんはのび太の家にタイマーを届けてしまう。夜中の12時になって出てきたオバケに仰天するのび太。だがそれでも諦めないのび太はタイマーを新たに午前2時にセットしてどこでもドアでジャイアンの部屋に投げ込む。所がそれを見たジャイアンは目覚まし時計だと思いこんでタイマーを午前7時にセットし直してしまう。ジャイアンが驚く様を見るために2時を待つのび太だが、結局そのまま眠ってしまい翌日も遅刻してしまった。今日は遅刻しなかったジャイアンは、時間になるとオバケが出てくる目覚まし時計のおかげで寝坊することがなくなったと喜んで話し、それを聞いてのび太は悔しがるのであった。  

 (解説)まあ、元からジャイアンはオバケに驚くタイプの人間ではないのですから、今回のオチはある意味迎えるべくして迎えたオチなのかも知れませんが、37巻の「しかしユーレイは出た!」と比べると少し違和感があるかも知れませんね。今回はのび太の表情が特に豊かで、それを見ているだけでも笑えてしまう作品です。
のび太の息子が家出した   10頁 小六84年3月号(わからずやのパパは、のび太)
 日々の生活のことでパパからいつになく厳しい説教を受けてしまうのび太。だがのび太にはパパの真意は伝わらず、逆にパパを逆恨みして家出を決行しようとしてしまうが、その時タイムマシンに乗ってのび太の未来の息子・ノビスケが姿を現した。ノビスケはわからず屋の両親に反発して家出してきたと言い、それを聞いて我が意を得たりと納得するのび太だが、そののび太がノビスケの父親であることを聞いてにわかに信じられなくなってしまう。だが自分の思い描く理想の父親像を聞いてノビスケは大笑いし、とりあえず納得することにする。二人はノビスケを家に帰そうとするがノビスケは言うことを聞かず、力ずくで帰そうとしても腕力ではのび太は叶わないので、放っておくことにする。ノビスケは未来ののび太が、子供の頃はわき目もふらずに勉強していて、しかも成績はトップだったと話していたことをのび太に話したので、のび太は仕方なく勉強を始める。だがずっとそばにいるノビスケに耐えられなくなったのび太は外に出かけるが、ノビスケもついてきてしまう。そこで二人はしずかに会うが、ノビスケが余計なことを言ったためにしずかを怒らせてしまう。のび太はジャイアン達から野球に誘われるが、ジャイアンののび太に対する態度に腹を立てたノビスケは思わずジャイアンに殴りかかってしまい、それを見てノビスケの度胸を認めたジャイアンはノビスケを野球に誘っていく。一人になったのび太はドラえもんと共に未来ののび太の所で事の次第を知らせに行くことにする。大人ののび太は現在ののび太から話を聞くが、やはり自分が怠けていたために苦労してしまったことをノビスケに味わわせたくないのでつい厳しく叱ってしまうと心情を吐露し、かつて自分を叱った父親の気持ちも今になってわかるような気がすると呟くのだった。親をやっていくと言うことの難しさが少しだけわかったのび太だが、ノビスケは当分こちらの世界に住むなどと言いだし、さらにドラえもんもタイムマシンでどこかへ行ってしまう。困り果てるのび太だがそこにドラえもんがある少年を連れて帰ってきた。その少年はなんとノビスケの子供で、子供は父親であるノビスケに色々文句を言って、ノビスケもたじたじになってしまうのであった。  

 (解説)親と子には世代の違いがあるために、どうしても価値観の違いなどで衝突してしまうこともあると思います。ですがそれは親子関係というものが存在する以上は未来永劫なくなるものではないでしょうから、それを承知の上で生きていかなければいけないのかも知れません。未来ののび太が作品中で言っているように、親の気持ちは実際に親になってみなければわかるものではなく、そういう意味では今話の真のテーマは、子供には理解しづらい「親の複雑な心理」なのかも知れません。
断層ビジョン   10頁 小四85年2月号
 小遣いが足りなくなってきたので、以前に埋めた小遣いの隠し場所を記してある「宝の地図」を広げるのび太。以前おばさんやおじさんから小遣いをもらった時、親に取り上げられないように隠して置いたのだ。ドラえもんも一緒に探そうとするが、外は風が吹き荒れていてものすごく寒いのでドラえもんは部屋に戻り、のび太は一人で裏山まで向かうが、目印がなくなっていたので貯金箱を見つけられなかったと言う。だが地図を見てみると「目印」というものは近くに偶然あったゴミやイヌといったもので、ドラえもんもさすがに呆れ返ってしまうが、生きる望みをなくしたと泣き叫ぶのび太のために「断層ビジョン」を出してやる。これは学術研究用に開発された機械で、外から見えないような所を手軽に調べることが出来るのだ。試しに深海の底やピラミッドの中、小さな機械の中や人体の内部まで見てみて、その上で貯金箱を探すことにする。縮尺率を間違えて地球全体の内部を映しだしてしまうが、縮尺率を下げていって裏山の地底を調べ始め、そしてついに貯金箱を見つける。目印に旗を立てて裏山に取りに行ったのび太はやっと貯金箱を手に入れて大喜びする。帰ってきたのび太だが、もっと断層ビジョンを使いたいと言ってドラえもんに出してもらう。しずかの家の庭にある大きなアリの巣を見始めるが、ドラえもんがいなくなったスキを見計らって、その上の方にある風呂場と入浴中のしずかを見物する。だが突然ドラえもんが戻ってきたので適当に位置をずらしてごまかす。ところが偶然映ったその部分に雪崩で埋まっている人を発見した二人はそこに旗を立て、急いで救出に向かう。目的地の槍ヶ峰についた二人は旗を頼りにして無事に遭難者を助け出し、近くの病院に入院させた。家に戻ってきた二人はおやつを食べに行こうとするが、ドラえもんは用があると言ってのび太を先に行かせる。のび太は階下に降りないで中の様子を聞いてみるとどうも様子がおかしいので開けてみる。するとドラえもんは断層ビジョンでしずかの家の風呂場を覗いており、それをのび太に見られたドラえもんは慌てふためいてしまうのであった。  

 (解説)これも一種の箱庭もので、現実の世界をミニチュアのようにしてしまうという発想が楽しく生かされています。結果的に同じ行動をとってしまったのびドラの様子がおかしくて笑えます。でも一番面白いのはやはり冒頭ののび太の「目印」と、それを聞いて呆れた時のドラの顔ですかね(笑)。
酒の泳ぐ川   10頁 小四84年2月号(サイラン液でサケをもどそう)
 今飲んでいるお酒がもうすぐなくなってしまうことを残念がるパパ。これはとても高級なお酒で、社長に一つだけもらったものなのだと言う。それを聞いたのび太は好きな酒くらいはたっぷり飲ませてあげたいと考えてドラえもんに相談すると、ドラえもんは自信たっぷりにサケを増やせると言ってくれた。のび太は急いでパパにその事を話すとパパも喜んでくれたが、増やすための道具としてドラえもんが出したのは「サイラン液」で、これを飲ませて卵を生ませ、稚魚を川に放流するなどとわけの分からないことを言い出す。ドラえもんはサケを「鮭」と勘違いしていたのだ。パパを喜ばせただけに困ってしまうのび太だがドラえもんはとりあえず酒ビンを持ってこさせ、その中にサイラン液と「コジツケール」を垂らす。すると酒の中に酒の卵が生まれ、慌てて洗面器に開けると、アルコールの匂いでのび太は酔っぱらってしまった。やがて孵化した稚魚を川に放流した二人は、稚魚が成長して川に戻ってくる3日後を楽しみに待つ。そして3日目当日。しずか達にもその事を話してみんなで酒釣りに出発するが、なぜか全く酒は釣れず、川底を探しても一匹も泳いでいない。みんなは騙されたと思いこんで怒って帰ってしまった。あげくに責任をなすりつけあった二人はケンカ別れしてしまい、ドラえもんは酒を増やせなかったことをパパに謝るが、その時やっていたテレビニュースで酒ビンが東京湾で発見されたというニュースが報道され、ドラえもんは喜んでのび太に知らせる。しかしサケには生まれた川に戻ってくる習性があるのに、なぜ戻ってこないのかを疑問に思う二人。のび太は川が汚いからではないかと思い立ち、ドラえもんは「ウォータークリーンシップ」を出して川の水を綺麗にする。するとやがてたくさんのサケが川下の方からやって来た。喜ぶ二人は川を綺麗にしていかなければならないことをみんなに話すのであった。  

 (解説)今回も一応「自然保護」がテーマになってはいますが、「サケ」についての話をメインに据えているために、そちらのテーマ性は同様の作品群と比べると希薄になっています。やはり「酒」と「鮭」の勘違いがお約束ながらも楽しいですが、酒を釣る時のエサがおつまみのピーナッツなんていうところも細かくていいですね。海の底を酒ビンが泳いでいる図は不条理マンガみたいで笑えます。
きこりの泉   7頁 小一84年12月号(木こりのいずみ)
 ジャイアンのボロボロの野球グローブと自分の綺麗なグローブを比較されるのび太だが、エラーばかりでボールに触っていないから綺麗なのだと屁理屈をつけたスネ夫はジャイアンのグローブとのび太のグローブを無理やり交換してしまう。ドラえもんに泣きつこうとするのび太だが、家に入ると逆にドラえもんがのび太に泣きついてきた。パパに自分のドラやきを食べられてしまったと言うのだ。慰めるのび太だがこのドラやきに固執するドラえもんは「きこりの泉」を出した。童話の「しょうじきなきこり」と同様、この泉に何かを落とすと女神が出てくるのだ。ドラやきを落とすと女神が出てきて、落としたのは大きなドラやきかと聞いてくる。ここで童話通りに正直に答えると、正直者へのご褒美として女神は大きいドラやきをくれた。最初に落とした食べかけの方は戻ってこないものの、これを見て便利だと考えたのび太は自分もグローブを落として綺麗なグローブを受け取る。早速のび太はしずかに泉を見せに行き、しずかは小さくて着られなくなってしまった服を落として、新しい服と交換してもらう。ところがそれを見たジャイアンも泉を使いたがり、二人を家にまで連れていく。ジャイアンは背中に背負うほどたくさんのものを持ってくるが、あまりの重さにふらついたジャイアンは自分が泉の中に落ちてしまう。女神は綺麗なジャイアンを出してくるが、二人が正直に答えてしまったために女神は綺麗なジャイアンを差し出してきて、泉の中で出ようとして暴れるジャイアンと綺麗なジャイアンを比べながら、困ってしまうのび太とドラえもんであった。  

 (解説)ついに登場しました、伝説の「きれいなジャイアン」の登場です(笑)。今話はこれが全てと言っても過言ではないですね。二人のジャイアンを比べて「どうする?」と悩んでしまうのびドラもなんかおかしいですね。そこで悩むなという感じで(笑)。本物のジャイアンを「きたない」と表現してしまうところも面白いです。
天つき地蔵   23頁 小四82年11月号(ないしょごみすてホール)
 下校してきたのび太はママの目を逃れてこっそりと部屋に入る。のび太はまた0点を取ってしまったので答案を隠そうとするが、既に答案は机の引き出しがはち切れそうなほどにたまっていた。ゴミ捨て場を出してくれるよう頼まれたドラえもんは「ないしょごみすてホール」を出した。一見するとただの穴だが、その穴がどこかに繋がっているらしく、答案を入れると見事に消えてしまった。ついでに家のゴミまで捨ててしまったのび太はこの穴がどこに繋がっているのか不思議がるが、ドラえもんは笑って答えない。のび太は早速みんなに話し、半信半疑のみんなはホールに石を投げ込んでみて納得した。のび太は捨てるものがあればいつでも貸すと話すが、早速スネ夫が自転車を持ってきた。まだ壊れてはいないのだが新しい自転車を買ってもらうためと言って捨ててしまい、しずかやジャイアン、その他噂を聞きつけたみんながたくさんのゴミを持ってきたので二人は大変になってしまう。飽きてしまったのび太は古本の中から昔話の本を見つけ、仕事をさぼって「天つき地ぞう」という話を読みふけってしまう。その話では、与作という貧乏な木こりがお腹を空かしている母親のために食べ物を手に入れようとするが、隣に住んでいる意地悪な吾作には断られ、仕方なく山の中に入ってみると、道ばたにお地蔵様が倒れていたので立て直してみる。するとお地蔵様は動き出して杖で天を突き始め、すると天から見たこともない食べ物が落ちてきた。与作は喜んで帰るが、それを聞いた吾作もお地蔵様に何か出してもらおうとやって来る。だが今度はゴミが落ちてきて吾作は怒って帰ってしまう。面白がるのび太は本に夢中になるが、ドラえもんは一人だけで仕事を続けていた。しかしほこりだらけになってしまうのでポケットを外してエプロンをつけ、再び作業を開始するがホールにゴミが詰まってしまい、竹竿で突っつくとその時の弾みでドラえもんも一緒にホールの中に落ちてしまった。
 昔話はまだ続き、与作は今度は障子を貼り替えるための紙をもらうためにもう一度お地蔵様の所へ向かうが、その後を吾作がつけていた。お地蔵様は今度はたくさんの紙を出し、与作は喜んで帰って行くが、それを見た吾作はお地蔵様から杖を奪い取って強引に天を突き始める。すると今度は大小の石が落ちてきたので吾作は逃げてしまった。そこまで読んだ時にスネ夫がまたゴミを持ってのび太を訪ねてきた。貰い物のお菓子を捨てに来たのだが、のび太はドラえもんがいないことを不思議がる。一方のドラえもんはお菓子が落ちてきた際にホールの穴が空いたのでのび太に助けを求めるが穴はふさがってしまった。この道具は人がまだ住んでいない大昔にゴミを捨てる道具だったのだが、故障していたために全てのゴミが超空間の中で浮遊していた。ドラえもんは脱出するために竿で適当に当たりをつつくが、間違えて出口の方を開けてしまい、地面に落下して気を失ってしまう。そこにやってきたのは昔話の主人公・与作だった。与作はエプロンをつけているドラえもんを地蔵様と勘違いし、立て直してお祈りを始めるが気付いたドラえもんは出口を求めて天を竿で突き始めるが、そこから先程スネ夫が捨てたお菓子が落ちてきた。与作は喜んでそれを持って帰るが、あとになってその話を聞いた吾作がドラえもんの下にやってきた。吾作に脅されてドラえもんも仕方なく天を突くが、落ちてきたのはゴミばかりだったので吾作は怒って帰ってしまう。すると今度は木枯らしが吹いてきたので、ドラえもんは何とか体を温めようとがむしゃらに天を突くが、するとそこから大量の0点の答案が降ってきて、しかもそれをやって来た与作は障子の張り替え用の紙として持って帰ってしまう。複雑な気分になるドラえもんだが、それを見ていた吾作は竿を取り上げて自分で天を突くが、今度は石やブロックが落ちてきたのでまた逃げ帰ってしまった。
 物語でも、そして現実の過去でもドラえもん=お地蔵様は天を突くたびに何かを出し、そしてそのたびに与作は宝物と勘違いして持ち帰っていった。ところがそれを羨んだ吾作が殿様に密告し、殿様は与作を捕まえて宝を自分のものにするために家来達を差し向けた。それに気付いた与作は母親を連れてお地蔵様と一緒に逃げだし、何とか国境の近くまでやって来たが、そこには何と隣国の軍勢がこちらへ攻めてきているところだった。油断している隙に一気に攻め落とそうというのだ。この危機を知らせるためにドラえもんは適当に天を突くと、スネ夫の自転車が落ちてきた。ドラえもんは二人を背負って自転車=仙雲車をこいで殿様の下に急行し、与作の知らせで準備を整えた殿様は戦で大勝利する。そしてこのことで殿様からたくさんの褒美を与えられた与作は、感謝の意味を込めてお地蔵様に祠を作ってあげた。だがそれ以降お地蔵様の姿は見えなくなってしまったという。それは、祠を踏み台にしてドラえもんがようやくホールの出口に到達したためで、ドラえもんはやっとの事でホールから脱出することが出来た。何も知らないのび太は読んでいた本を捨てようとするがドラえもんはもったいないと言って怒り出し、急にリサイクル活動を始めてしまった。その様子を見て訝しがるのび太であった。  

 (解説)現代の消費社会に警鐘を鳴らす作品…とまでは行きませんが、「リサイクル」ということを描いた作品であることは間違いないでしょう。偉そうに説教するのではなく、ほんの少し無駄を抑えるだけで変わっていくと言うことをゆっくり優しく訴えています。ストーリーも絵本の世界と現実(過去の世界ですが)を同時に進行させていくという凝った展開になっていて、虚構と現実が入り交じっているという「すこしふしぎ」な世界を描出しています。後年の「ドラビアンナイト」みたいな雰囲気ですね。



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