てんとう虫コミックス第37巻


魔法事典   9頁 小二82年6月号(まほうじてん)
 テレビ番組の「魔女っ子ノブちゃん」を見て面白がるのび太。本来は女の子向けなのだが、のび太はそれでも楽しんでいた。学校で女の子達がその番組の話題をしている輪の中にのび太も入るが、それをジャイアン達がバカにしたので女の子達がのび太をかばって文句を言いだしてしまう。女の子にひいきされるのを悔しがったジャイアン達はのび太をボロボロにしてしまう。悔しがるのび太は何を思いついたか図書館に駆け込んでいった。帰りの遅いのび太を心配するドラえもんだが、のび太はガッカリした様子で帰ってきた。のび太は図書室で魔法の使い方を書いた本を探していたのだが、ドラえもんに笑われても魔法使いになりたいと言ってのび太は聞かない。そこでドラえもんは「魔法事典」を出した。そこには何も書かれていないが、自分で好きなように書き込むと、それを魔法として扱うことが出来るのだ。頭を三回かくことで、ホウキで空を飛べるようにしたのび太だがホウキはママが使っていて、しかもママが偶然頭を三回かいてしまったためにママはホウキを持ったまま空を飛んでしまう。ページを破いてその効果を消したのび太は呪文を唱えて実行することにし、「スーイスイ」という呪文で空が飛べるようにした。さらに逆さに言葉を言うことで効果を消すことが出来、これを使ってジャイアンをやっつけに出発するのび太。透明になる呪文「イナイイナイ」を使ってジャイアンの家に潜入するが誰もおらず、庭で掃除をしていたしずかに行方を聞くが、しずかはホウキを持ったままで「スーイスイ」と言ってしまったために空を飛んでしまう。誰にでも簡単に使われると困るので念力の呪文を長くしたのび太はそれでスネ夫を吹っ飛ばす。ローラースケートで遊んでいるジャイアンを透明になって蹴り続けるのび太だが、近くにいた夫婦が赤ん坊に「イナイイナイ」と言ったために効果がとけ、のび太は念力でぶっ飛ばそうとするが呪文が長いために言い終わる前にジャイアンに捕まってしまう。ボロボロになって帰ってきたのび太を見て、魔法が使えるのに負けてしまったことを不思議がるドラえもんであった。  

 (解説)魔法を使えるのなら文字通り万能になりそうな気もしますが、そこは藤子F先生。そう簡単に事を運ばせてはくれません。今回はラストのドラのセリフにもある通り、魔法が使えるのにも関わらずなぜか悪戦苦闘してしまい、結局失敗してしまうのび太の姿が情けなくて面白いです。よくある「魔法もの」をパロった作品としても十分な出来映えになっています。
なんでもひきうけ会社   10頁 小六84年11月号(なんでも引き受け会社)
 急にドラえもんの持っている道具のことを誉め始めるのび太。ドラえもんも誉められて悪い気はしないが、のび太は何とそれら未来道具を使って会社を作って金儲けをしようと言いだした。だがドラえもんは当然怒ってそれを断り、どこかへ出かけてしまう。だがのび太は諦めずにスペアポケットを引っぱり出して会社を作ることにしてしまう。「かべ紙会社」を出してそこを社屋にし、空き地に貼りつける。しずかを社長秘書として雇ったのび太は「もはん手紙ペン」と「万能コピー」で宣伝のチラシを作り、それを空から街にばらまく。ところがそのチラシをドラえもんが見ていたことに気付いたのび太は慌てて「ガードマンロボット」を出し、ドラえもんが来た時の警護に就かせる。ドラえもんは社屋に入ろうとするがロボットに追い出されてしまった。道具を使って金儲けをしたら莫大な罰金を取られることを知っているドラえもんは何とかしてのび太を止めようとするが、ロボットのために近づくことが出来ない。そして会社には始めて客が現れるが、それは小さい男の子で、パパの大事な壺を割ってしまったので何とかして欲しいと言う頼みだった。のび太は「復元光線」で元に戻し、男の子には喜ばれるが、あくまで金儲けを考えているのび太は次からはお金を取ることを決める。次にのび太はお客の家の庭の草むしりを頼まれて「インスタントロボット」を出すが、その時に自分もママから草むしりを頼まれていたことを思いだしてそちらを優先させてしまう。その際に外に出たのび太を見てドラえもんは説得しようと駆け寄るが、またロボットに追い返されてしまう。今度こそ儲けようとするのび太と、何としてもそれを阻止しようとするドラえもん。のび太の所にはコンサートのチケットが欲しいと言う客がやってきた。「リザーブマシン」を使おうと考えたのび太はポケットに手を突っ込むが、その時ドラえもんのお腹が急にくすぐったくなった。二つのポケットが繋がっていることを思いだしたドラえもんは手を突っ込んでのび太をこちら側に引っ張り、空から宙づり状態にされてしまったのび太は止めるから許してくれとドラえもんに懇願するのであった。  

 (解説)金儲けの話も今までたくさんありましたが、今話はそれの最高峰と言うべきものでしょうね。でも今までにも道具を使って金儲けをして成功した例があったような気がするけど、罰金はどうなんだろ(笑)?懐かしの道具もたくさん出てきて、読んでいて楽しい話ですが、今話で言いたいことは「商売は難しい」ってことなんでしょうかね(笑)?
感覚モニター   10頁 小四84年5月号
 どこかへ出かけようとするのび太を呼び止めるドラえもん。のび太は用事でお使いに行くだけだと言うが、その様子を怪しんだドラえもんは出かけるのび太の首筋に何かを投げつける。実はのび太はしずかと遊ぶ約束をしており、ドラえもんがいると邪魔になってしまうのでウソをついてやって来たのだ。おやつをもらったりゲームをしたりしてしずかと楽しく遊ぶのび太だが、突然しずかの家にママから電話がかかってきたのでのび太は仕方なく家に帰る。のび太は部屋にいたドラえもんにまだウソをつくが、ドラえもんは何故かしずかの家にのび太が遊びに行ったことを知っていた。ドラえもんは先程「感覚送信アンテナ」をのび太につけ、そこから送信される感覚情報を「感覚モニター」を通して感じていたのだ。のび太にモニターをかぶせて自分にアンテナをつけたドラえもんは廊下を歩いてみると、のび太の目にもドラえもんの視界が見えてきた。ドラえもんは台所のケーキを食べるが、のび太の口にもその感覚が伝わってきたのだ。送信アンテナは全部で12個あるのだが、覗かれる人には迷惑だからと道具をしまいかけるドラえもん。だがさっき食べたケーキのことでママに叱られたドラえもんはすぐに買いに行かされてしまい、そのスキにのび太はアンテナを12人につけることにする。しずかやジャイアン、スネ夫につけるのび太だが、最後の一個が余ったのでそばを歩いていた子供にくっつけてしまう。早速それぞれの感覚を味わい始めたのび太はまず出木杉の感覚を見て、出木杉がやっている宿題を全部写してしまう。次にスネ夫に行くとスネ夫はジャイアンの後ろを歩いているようで、空き缶につまずいて転んだジャイアンを笑ったためにジャイアンに殴られ追いかけられてしまう。のび太はジャイアンに交換してスネ夫を追いかける気分を味わうが、そこに現れたジャイアンの母ちゃんに耳を引っ張られたためにのび太は他の友達へと移動する。友達はマンガを読んでいたがそれは途中からだったのでのび太はわざわざ電話して最初から読むように催促してしまう。次を見るとお風呂に入っているしずかになり、しずかが体を洗い始めたのでくすぐったがって他の人に変えてしまう。それを見たドラえもんはのび太を叱ろうとするが、突然のび太は溺れるように苦しみだした。急いでモニターを外すドラえもんだが、最後にアンテナをつけた子供が川で溺れていることを知ったのび太は川に急行し、溺れている子供を助け出す。子供の親に感謝されるのび太を見て怒れなくなってしまうドラえもんであった。  

 (解説)話の大筋は「スパイ衛星でさぐれ」とほぼ同じですが、相手の感覚そのものまで味わえるというのは、今で言うバーチャル感覚を先取りしているような感じで興味深いですね。マンガのことを電話で催促するあたりは、往年の「スケスケ望遠鏡」を彷彿とさせますね。
ロボット背後霊   10頁 小四84年3月号
 「背後霊」というものについてのび太達に説明するスネ夫は霊能力者に自分の背後霊も見てもらったと言い、さらにその霊の種類と数まで説明する。迷信だと一笑に付すのび太だが話を聞いているうちに自分も怖くなってきて、その時スネ夫が突然のび太を驚かしたので、のび太は仰天して家まで逃げ帰ってしまう。事の真偽をドラえもんに問いただすのび太だが、ドラえもんは「ロボット背後霊」なら売っていると話す。ドラえもんは一応買っては見たもののやはり帰そうと考えていたらしいが、話を聞いたのび太はそれを使いたがる。ドラえもんは背後霊がどんな時でもずっとつきまとうことがどれほど煩わしいかをよく考えるように説得するが、所詮のび太ではそんなに深く考えられず、適当に返事をしてのび太は背後霊をつけてしまう。姿は見えないものの、触ってみて大きな体を確認するのび太。そこへママがのび太にお使いを頼もうとやって来るが、突然ママは買い物かごを持ったままで外まで追い出されてしまった。のび太のお使いに行きたくないという気持ちをいち早く察した背後霊がママを追い出してしまったのだ。安心して外に出かけるのび太は空き地でスネ夫がラジコンカーを乗り回しているのを見て、それを面白そうだと考えた途端にラジコンのプロポがのび太の所に飛んできた。順番を待っていたジャイアンはのび太に文句を言おうとするが、背後霊によってメタメタにされてしまい、事情を知ったスネ夫はのび太にラジコンを貸すことにする。ラジコンを止めたのび太はしずかに出会い、一緒に遊ぼうとするがしずかは買い物があるというので断られてしまう。ところがのび太がそれを残念がるやいなや、背後霊がしずかの服をつかんで引っ張ってきて、のび太は背後霊に文句を言うが背後霊の姿は見えないのでしずかは自分に言ったものと勘違いし、怒って去っていってしまう。友達が読んでいるマンガを面白そうだと思っただけで取り上げてしまう背後霊にさすがに嫌気がさしたのび太だが、これは24時間持つのだとドラえもんは話す。家に帰る二人だが、ママがのび太を叱ろうとしたので背後霊がママを殴ってしまい、さらに宿題に文句を言うと背後霊が先生を連れてきてしまった。ママはのび太を避けながらお風呂に入るよう言うが、入ってみると背後霊までも一緒に浴槽に入ってくるのでお湯が全部流れてしまった。後から入ろうとしたパパは文句を言うが背後霊がとりついている間は何も言えず、三人は表面上は笑顔を見せながらもすっかり困り果ててしまう。みんなに迷惑をかけないようにとのび太は一人で屋根の上に上がり、そこにご飯を運んでもらって食事をとるのであった。  

 (解説)お節介なロボットにずっとつきまとわれるという話には「チューケンパー」や「とうめいボディガードプラモ」などがありますが、不思議なことにそのどれもが未完の形式をとって話を終了させています。今話も問題が全部解決したわけではなく、のび太は結局みんなに近づけないままで終わってしまいます。それがオチであることには変わりありませんが、今話に限っては少し寂しさを感じますね。ちなみにスネ夫の背後霊の名前は「ドン・プラスコ・ピラニエス」という700年前のスペイン貴族です(笑)。
エレベーター・プレート   8頁 小三85年4月号
 カギをかけてお使いに行ったが、そのカギをママは落としてしまった。話を聞いたのび太とドラえもんはカギ屋を呼びに行くが、良い考えを思いついたドラえもんは「エレベーター・プレート」を出した。二人はそれに乗ってドラえもんが高さを二階に合わせると、二階の高さにまでプレートが上昇し、しかもその階の高さに見えない床のようなものが出来、それをつたって二人は二階から家の中に入ることに成功する。どこまでも広がっているという見えない床を走り回って遊ぶのび太だが、それを見たスネ夫は自分も降りようとして地面に落下してしまう。しずかに会った二人はしずかとも一緒に遊ぼうとプレートをリモコンで呼び寄せ、一緒にプレートに乗って三階の高さにまで上昇する。それを見た他の友達もそこで遊びたがり、ついでにジャイアンとスネ夫も連れてくるが、二人はもっと高いところがいいと言って、雲の中にまで上昇してしまう。空中でみんなは楽しく遊び、あっという間に夕方になってしまった。ジャイアン達は降りようとするが雲に隠れてプレートを見つけることが出来なくなってしまって助けを求めてきたので、リモコンでプレートを呼び寄せたドラえもんが改めて二人を降ろしに向かった。帰り道でパパを見かけた二人はパパもプレートに乗せて二階の窓から家に入る。そして夜、一向に帰ってこないママを心配するのび太達だが、ママはカギ屋を呼びに行ったのび太達をずっと玄関先で待っており、ドアが開かないためにまだ家に入れないのであった。  

 (解説)久々に登場の「空で遊ぶ話」ですが、今回は空を飛ぶのではなく「空を歩く」という視点で描いており、同様の話とは一線を画す内容となっています。普通だったら帰れなくなってしまったジャイスネの描写がオチになりそうなものですが、今回はさらに一捻り加えて、冒頭からの伏線であったママをオチの対象にしています。オチ自体は以前にもあったものですが、今話はオチが二つあるような気がして、得した気分になれますね。
自信ぐらつ機   8頁 小五84年11月号
 毎日鍛えた証拠の力こぶを見せるジャイアンをスネ夫は褒めちぎるが、ジャイアンがいなくなると今の世の中で物を言うのは金と頭とルックスだと話し、さらにそれらを全て自分が持っている物だとうぬぼれ始めてしまう。二人の自信たっぷりな様子を見て腹立たしくなってしまったのび太は家に帰るが、突然ママから庭の草むしりのことで怒られてしまう。一週間前にのび太が草むしりをする約束をしたと言うのだが、のび太には全く覚えがない。しかし結局力で押しつけられてしまったのび太は渋々草むしりを始めるが、そこへ何やら怒った様子のドラえもんがやってきた。買ったドラやきの味が微妙に甘いので菓子屋に文句を言うと、逆に言い換えされてしまったのだと言う。怒ったドラえもんは「自信ぐらつ機」を出した。これから発信される自信ソーシツ電波を受信するアンテナを店の主人につけ、その上で文句を言いに行くと主人はだんだんと自身をなくしていって、ドラえもんの言うとおりに作り直すことにした。喜ぶドラえもんだが帰ってくるとのび太が草むしりをさぼったことでママがカンカンになっていた。それを見たのび太はドラえもんからアンテナを借りてママにくっつけ、その上で草むしりのことを話してママに草むしりをさせてしまう。注意するドラえもんだがのび太はさらにたくさんのアンテナを取っていき、しかもドラえもんにもアンテナをつけてしまう。自分の顔にうぬぼれているスネ夫にアンテナをつけ、自信を一気に失わせて慌てふためく様を見て笑うのび太はジャイアンにもアンテナをつけ、急に自信をなくしたジャイアンを殴りつけてしまう。それを見たしずかは弱い者いじめは嫌いだとジャイアンをかばうが、しずかもアンテナをつけられたのでのび太に何とか気に入られようとし始めてしまう。だがのび太の行動を見てきたドラえもんは、のび太がろくなことをしないのは自分の責任だと思いこみ、のび太を世話することの自信を喪失して未来へ帰ろうとする。そこに至ってようやく反省したのび太はもうしないから帰らないでとドラえもんに頼み込むのであった。  

 (解説)実は今話で一番面白いのはスネ夫のナルシストぶりだったりして(笑)。どっかの料理マンガみたいにドラやきの味に文句をつけるドラや、自信を喪失したジャイスネの情けない顔なんかが見所ですが、オチの部分には笑いのコーティングこそかかっているものの、「ドラえもんが未来へ帰る」という状況が設定されていて、だからこそのび太はいたずらを止めることにします。かつての辛い「別れ」を思いだしたのかも知れないと考えることもできるこのオチは、ずっと以前から読んでいた読者であればより楽しめるかも知れません。
おみやげフロシキ   7頁 小一81年3月号(おみやげふろしき)
 久しぶりにママと一緒におばさんの家に出かけるのび太とドラえもんだが、到着する寸前になってママはおみやげを買っていなかったことを思いだした。お金の持ち合わせもそんなにないので、仕方なくドラえもんは「おみやげフロシキ」を出し、「くだもの」ということで果物のおみやげをフロシキの中に作り出した。豪勢なおみやげにおばさんも驚いてしまう。ママはお礼にドラやきを買ってくれることにし、ドラえもんも喜ぶがのび太はさっきのフロシキで出せばいいと言う。だがあのフロシキは誰かにあげるものでなくては出すことが出来ず、自分の物は出すことが出来ないのだ。残念がるのび太だがすぐにある考えを思いつき、フロシキを借りてしずかに今欲しいものがないか聞いてみる。しずかは大きなクマのぬいぐるみが欲しいと言い、のび太はフロシキに言ってそれをおみやげとして作り出し、しずかにプレゼントする。その上でのび太はしずかにフロシキを渡し、のび太の家に入る前に「テレビゲーム」と言うように頼んだ。よく理解できないながらも出かけるしずかだが、家に着く前に「大きなイヌ」と思わず言ってしまったためにふフロシキの中に大きなイヌができ、のび太は噛みつかれてしまう。のび太は今度は言い間違えないよう紙に書いて、スネ夫に同様のことを頼む。その通りに行動してテレビゲームは出てくるが、それを欲しがったスネ夫はゲームを持ち去ってしまい、さらにフロシキが風でどこかに飛んでいってしまう。ドラえもんと一緒に探すのび太だがどうしても見つけられず、諦めることにする。その頃家路についていたパパは偶然木の枝に引っかかっているフロシキを見つけ、ついでに中に入っていた紙を声に出して読んでみる。するとフロシキの中にテレビゲームができ、帰ってきたパパは不思議がるがのび太とドラえもんは喜ぶのであった。  

 (解説)この道具にはなかなか巧妙な制限がついていて、その制限をのび太がどうクリアしていくかが今話の見所になっています。しかしいきなり出てきたテレビゲームを持ち去ってしまうスネ夫は、前話の「自信ぐらつ機」とはうって変わって貧乏くさくなっていますね(笑)。
リフトストック   9頁 小五85年11月号
 何やら杖のような道具を出して部屋の中を滑って移動し、道具の性能を確かめているドラえもん。のび太が聞いてみるとその道具は「リフトストック」と言って、重力の方向を変えて水平軸を傾け、ストックを傾けた分だけ斜め感覚にしてしまう道具だとドラえもんは説明した。スイッチを押した人にしか効果はないが、のび太が試しに少しストックを傾けてみると部屋の床が斜めになってしまった。本来はスキー場で使う道具なのだが、のび太はストックを持って遊びに行く。道路を下り坂にして楽々移動するのび太はジャイアン達に会い、ジャイアン達はのび太にストックを借りようとするがのび太は二人をからかったのでのび太を追いかけ始めてしまう。ところが下り坂による勢いに乗ってのび太は走っているためにジャイアン達でも追いつけない。面白がるのび太だがその時マンホールのくぼみにストックの先端が挟まってしまい、ストックを思わず手放してしまう。勢いがついているために止まるのに時間がかかってストックからだいぶ離れてしまったのび太だが走ってストックを取りにいく。だがちょうどマンホールのそばで先生に会ってしまい、先生は姿勢の悪いのび太を注意する。のび太は重力の向きが違っているために元々地面に直立することが出来ないのだが、それを知らない先生に無理に姿勢を直されたためにのび太は坂を転げ落ちてしまう。曲がり角でやっと止まったのび太は再びストックを取り戻しに行くが、今度はストックを見つけたしずかがストックをいじり始め、どんどん斜めになっていくストックに従って坂の傾斜もきつくなっていき、のび太は地面を這いながらストックのそばまでたどり着く。だがその時ののび太の様子がしずかのスカートの中を覗くように思われたため、しずかは思わずのび太の顔面を蹴り飛ばしてしまい、のび太はまた吹っ飛んでしまう。何とか電信柱にしがみつくもついにストックは倒れてしまい、のび太は電信柱にぶら下がる格好になってしまった。駆けつけたドラえもんがスイッチを切ったので効果は消えたものの、怖くて立つことが出来ないのび太は依然としてはいつくばって歩くのであった。  

 (解説)「道を斜めにして楽に歩く」というコンセプトの道具も初期の頃からありますが、今話のように町中で使われるのは珍しいですね。しかし便利といえば便利だけど、ドラはいつスキー場に行ってるんだ(笑)?今話最大の見所はやはりしずかの「顔面キック」ですね。「ドス」という擬音がまた何とも言えない迫力を出しています。
ドッキリビデオ   10頁 小六84年6月号
 空き地へやって来たのび太はそこに落ちているポテトチップスの箱を見つけ、誰もいないのを確認してからそれを取ろうと飛びかかるが、箱は糸に引っ張られて移動した。動かしたのはジャイアンとスネ夫であり、スネ夫が買ったビデオカメラを使って「ビックリカメラ」を取っていたと言う。しずかやのび太達、撮影された人を集めてスネ夫の家で上映会を開くが、のび太以外の誰も引っかかってはおらず、のび太の無様な姿をみんなに笑われ、のび太は家で悔しがる。のび太の意地汚さを指摘するドラえもんだがさすがにかわいそうに思って「ドッキリビデオ」を出した。このビデオカメラを向けているだけでドッキリするような出来事が起きるのだ。早速お化粧中のママを写して、鏡に映ったオバケの顔を見てママは気絶してしまうが、専用の札を見せることでママも納得し怒られずにすむ。次に道を歩いているジャイアンを写し始めると、ジャイアンの鼻歌で窓ガラスが割れ、通行人が苦しみだして保健所が消毒までし始めてしまった。そこへ札を持って二人が乱入し、みんなは「ドッキリ大成功」と喜んで叫ぶが、次の瞬間に不思議がる。二人はそれからも自宅の池で遊んでいるスネ夫に恐竜を見せたり、しずかが描いている絵にいたずらしたりしてドッキリを続けていく。空き地でキャッチボールしている友達を写すとボールが突然ケーキになり、他の人も巻き込んでケーキ投げ合戦が始まった。頃合いを見計らってのび太は札を見せようとするが、そこにケーキが飛んできたため、弾みでのび太は札を離してしまい、その札が車に持っていかれてしまう。札がないと騒ぎを収拾できないので二人は必死に追うがやはり追いつけない。そこへ騒ぎの元凶を知ったみんながのび太達に向けてケーキを投げつけ始め、二人はケーキまみれになりながら必死に逃げるのであった。  

 (解説)かなりバカバカしい話です(笑)。80年代に一躍ヒットした「ドッキリカメラ」をパロっているのは一目瞭然ですが、そんな時代背景を抜きにしても、ジャイアンの歌で被害が出るとか、ラストのケーキ投げカタストロフ(笑)なんかは爆笑必至の名シーンです。やはり何だかんだ言ってもケーキ投げって面白いですよね。
アトカラホントスピーカー   10頁 小四85年11月号(「アトカラホント」スピーカー)
 テストの点数が悪かったことを先生に注意されるスネ夫だが、母親が病気で看病していたから勉強できなかったとウソをついてごまかしてしまう。スネ夫のママが毎朝ジョギングしていることを知っているのび太はそのウソに呆れ返ってしまった。スネ夫は家でもテストはなかったとママにウソをつき、遊びに出かけると、空き地でジャイアンが何かをみんなに見せびらかしていた。ジャイアンは友達からもらってきた伊藤翼の生写真を見せびらかしていたのだが、スネ夫は調子に乗って自分が翼と友達で、今日も家に来るといってしまう。だがそれを聞いたジャイアンは写真を撮らせてくれるよう頼み込み、断れなくなったスネ夫は了解してからドラえもん達に泣きつく。自業自得とのび太は考えるがほっとくわけにもいかないので、ドラえもんは「アトカラホント」というスピーカーを出した。これを口の中に入れてウソをつくと、どんなウソでも本当になってしまうと言う。スネ夫は試しに「オオカミが来る」と言ってみると、本当にのび太の部屋にオオカミが現れた。動物園から逃げ出したシベリアオオカミで、麻酔銃で眠らされたので事なきを得る。スネ夫は翼が今からうちへ来るとウソの宣言をし、写真を撮ろうと待ちかまえているジャイアンを庭に隠れさせる。そこへなんとマネージャーと一緒に翼が訪ねてきた。スネ夫の家の前で車が故障してしまったので、代わりの車を呼ぶために電話を借りたいと言う。スネ夫は迎えが来るまで翼にお茶をごちそうすることにし、部屋に入ってきた翼を見たジャイアンは我を忘れて飛びだし、夢中で写真を撮り始める。それを見た翼は一緒に写真を撮ろうと言いだし、ジャイアンは大感激する。その様子を見たドラえもんはスピーカーを返してもらおうとするが、スネ夫はのびのびとウソがつけると言って返そうとせず、さらに自分が中学生の番長グループと知り合いだとウソをついたので、慌てて二人は逃げ帰る。ところがそこへ先生がママの様子を見に来てしまったため、スネ夫は面会謝絶だとウソをつくが、すると本当にママが病気になってしまい、ドラえもんに助けを求めに行く。途中で本物の番長グループに声をかけられるがそれも無視してのび太の家に行き、ドラえもんはスピーカーのキャンセルボタンを押すためにスピーカーを口から出すようスネ夫に言うが、なんとスピーカーは虫歯の穴に入り込んでしまった。歯医者で治療するスネ夫の絶叫を聞いて、ウソをつくとろくなことがないと改めて実感するのび太とドラえもんであった。  

 (解説)日頃からウソばかりついているスネ夫に「ウソ800」系の道具を持たせてしまうとは、今更ながらに「ドラえもん」と言うマンガの自由度の高さに驚かされます。でもやっぱりスネ夫にもしっぺ返しは訪れてしまったので、そういう意味では藤子F先生の短編・「ぼくは神様」のような「因果応報」を感じさせる展開になっています。しかし以前は翼を嫌っていたジャイアンも今話は一ファンになっていますね。
かわいい石ころの話   10頁 小二80年2月号
 「名犬ラッキー」というテレビドラマを見て感動したのび太はママのところへ駆け寄るが、イヌを飼いたがっているのび太の心理を察知したママは、先にイヌを飼えないと言って先手を打つ。次にドラえもんのところに駆け込むと、ドラえもんものび太の気持ちを察して、イヌの代わりに「ペットクリーム」を出した。これを石に塗ってよく擦るとイヌのようになると言う。庭で適当に黒い小さな石を選んだのび太はクリームを塗って磨くと、石は動きだしてのび太になつき始めた。のび太はクロという名前を付けて、エサである砂と水を与えてかわいがるが、クロは水の中ではしゃいでしまい、さらに部屋の隅っこでおしっこまでしてしまう。その騒ぎを聞きつけたママはイヌを拾ってきたのかと部屋に駆け込むが、部屋には何もいないので不思議がる。二人はクロを連れて散歩に出かけるが、途中で本物のイヌとケンカになってしまう。だが石であるためにクロは強く、本物の方を撃退してしまう。空き地で楽しく走り回るクロを見て、そっと隠れてみることにするのび太。それに気付いたクロはのび太を捜して悲しそうな声をあげ、のび太はクロを呼んで感動の再会を果たそうとするが、石のクロが顔面に飛び込んできたためにのび太は顔を痛めてしまう。話を聞いたしずかはドラえもんにクリームをわけてもらい、やって来たジャイアンとスネ夫もクリームをもらう。しずかは水晶の玉を、ジャイアンは漬け物石をイヌにするが、スネ夫はなんと庭石をイヌにしてしまった。サムソンと言うそのイヌと固い友情で結ばれているというスネ夫だが、夜になってもスネ夫の家からイヌの鳴き声が聞こえ、翌日スネ夫は家中で騒ぎを起こすイヌをどこでもドアで青森の方に捨ててしまう。だが一週間後、主人のスネ夫に会いたい一心でサムソンは戻ってきて、押しつぶされるスネ夫を見ながら、石の健気さに感動するのび太としずかであった。

 (解説)純粋に楽しい話ですね。「イヌ」をかわいがるのび太の姿は普通なのですが、実際に可愛がっているのが「石」というところがシュールでナンセンスの雰囲気を出しています。ラスト、石に押しつぶされるスネ夫の横で勝手に感動しているのび太の姿がミスマッチ的感覚を出して、笑いを誘っていますね。
かぐやロボット   11頁 小六83年6月号
 22世紀デパートがまた誤配をやらかし、ドラえもんの下に「かぐやロボット」という道具が送られてきた。これは子供のいない老夫婦などが寂しさを紛らわすために使う道具で、カプセルを竹の幹に埋めると、一日で可愛い女の子に成長すると言う。それを知ったのび太はドラえもんに内緒で作ることにし、裏山の竹藪へ行ってカプセルを幹に埋めてしまう。ドラえもんにはデパートが取りに来たとウソをついて、翌日のび太は急いで裏山の竹藪に向かう。するとカプセルを埋めた部分だけが光り輝いており、その部分だけがポロリと取れた。ドラえもんはちょうどどこでもドアでどこかに出かけたらしく、持って帰ったのび太はカッターで蓋を開けると、中から小さな女の子がでてきて、竹から出ると人間ほどの大きさになっていった。全裸だったためにのび太はしずかの家の風呂場に行って、入浴中のしずかの服を借りていってしまう。かぐやは物事を良く知らないようで、服の着方もわからないことがあったが、のび太は彼女におやつをごちそうする。そんなのび太の様子を怪しんだママはなにか動物を拾ったのではないかと勘違いするが、のび太に追い返されてしまい、のび太はかぐやに「ママ」という危険な生物のことを教える。ママに気付かれないように二人は外に出て、のび太は外の世界の危険さを教えようとするが、説明している間に自分がドブに落ちてしまい、身をもって教える羽目になった。しずかに謝ってからジャイアンとスネ夫にかぐやを紹介するが、それを羨んだ二人はかぐやを自分達のところに連れていこうとして、のび太と口論を起こしてしまう。その間にかぐやはチョウを追いかけてどこかへ行ってしまった。気付いたのび太は必死に探す。かぐやは見知らぬ老人に声をかけられていたが、駆けつけたのび太は老人にロボットだということを話して連れて帰る。再び家にこっそりと上がる二人だが、その様子を怪しんだママは再びのび太の部屋に駆けつけるため、のび太は慌ててかぐやをどこでもドアの中に入れ、その場を何とかごまかすが、とうとうドラえもんにかぐやのことを知られてしまった。のび太は大事に育てると言うが、ドラえもんは人一人育てることの責任を負うことが出来るのかとのび太に問いただし、口論を始めてしまうが、かぐやが泣き出してしまったために口論を止める。月を眺めながら悲しそうな顔を浮かべるかぐやだが、今回ばかりはドラえもんにもどうすることもできない。その時のび太の家の前に高級車が止まった。訪ねてきたのは昼間会った月形という老人で、かぐやに15年前亡くした娘の面影を見いだし、ロボットであることを承知で彼女を養女にさせて欲しいと頼みに来たのだ。かぐやは結局、「月」からの迎えが来て去っていったのだった。  

 (解説)マニアックに考えれば、今話の道具はとんでもなくヤバイものと考えることも出来るのですが、まあそこらへんの考察は他のHPに任せましょう(笑)。「かぐや」というだけあって、今話はラストのオチも寓話的な情感溢れるものとなっています。のびドラがかぐやのことで議論しあうところは結構現実的で、ある意味シビアな描写ですね。身をもってドブに落ちてしまうのび太の図は最初期の「ペタリぐつとペタリ手ぶくろ」のオチにインスパイアされたのか!?…そんなわけないね(笑)。
カムカムキャットフード   8頁 小三84年10月号
 空き地で捨てられているネコを見かけるドラえもん。ドラえもんは部屋にいるのび太をこっそり呼んで、庭にまで連れてきた。ドラえもんは先程の捨て猫を拾ってきてしまったのだ。あまりにもネコの顔が自分に似ているので思わず拾ってしまったと言うドラえもんは、飼い主を見つけるためにのび太と一緒に飼い主探しに出発する。しかしどこをまわってもよい飼い主は見つからず、のび太は諦めようとするがドラえもんはまた捨てたくはないと言って聞かない。仕方なくもう一軒まわってダメだったら諦めることにするが、余計にプレッシャーがかかってしまってドラえもんは最後の一軒を見つけるのにも時間をかけてしまう。やっと古ぼけたラーメン屋に入ってみるが、そこは外観通り経営が厳しいようで、店の主人は飼うことは出来ないと断ってしまう。やむを得ずドラえもんは「カムカムキャットフード」を出してネコに食べさせた。そしてネコを置き去りにしたまま立ち去ろうとすると、ネコが手招きすると同時に自分達もネコの方に引っ張られてしまった。これを食べることで人を招き寄せることが出来るのだ。先程のラーメン屋に行ってその効果を主人に見せる二人。早速入ってきた客にラーメンを食べさせると、その人はあまりの美味さに驚いてしまっていた。主人は喜んでネコを飼うことを承諾するが、ドラえもんは何故か浮かない表情を浮かべている。実はあのキャットフードは三人招いたら効き目が消えてしまうのだ。ウソをついたことに後ろめたさを感じるドラえもんは10日ほど経って再びラーメン屋に様子を見に行くことにするが、まだネコは飼われていた。飼っているとだんだん可愛くなってきてしまったのだという。その事については安心する二人だが、次第に週刊誌を片手に持った客がどんどんラーメン屋に来るようになってきた。実は以前来たお客は有名なラーメン評論家で、この店のことを週刊誌に載せたために店が一躍有名になったのであった。  

 (解説)「遠写かがみでコマーシャル」と話の筋は同じですが、そこにさらに「捨て猫」を絡ませて話の同一性を回避しています。ですが今話においては道具も既存の道具の改良版が使われており、それらがストーリー全体のグレードを下げている点は否めません。ドラそっくりのネコとか、三人しか効果がないことを知っているくせに自分達で実験をしてしまうドラなんかは面白いです。
ふきかえ糸電話   7頁 小二85年6月号
 またテストで0点を取ってしまって先生に叱られるのび太だが、0点を取る理由を『先生がくれるから…。』などと言ってしまったので先生も怒り出し、家に行って直接ママに話すことになってしまう。ドラえもんに助けを求めるのび太だが、ドラえもんはネコに助けを求められていた。いつもネコやイヌをいじめる男の子がいるので助けて欲しいと言う。ドラえもんは本人の口から直接話すべきだと言って「ふきかえ糸電話」を出した。見えない糸をネコに繋ぎ、その男の子の下へ向かうと、男の子はまたネコをいじめようとするがドラえもんが糸電話に向かって声を吹き込むと、糸が繋がっているネコの方でもしゃべり始めた。それを気味悪がった男の子は逃げてしまう。ネコはドラえもんにお礼を言って去って行くが、そのスキにのび太は糸電話を持ち去ってしまった。のび太は急いで糸を先生につけ、ママにのび太のことを注意しようとする先生の言葉を巧みにすり替えて自分の言葉に変えてしまう。それを見たドラえもんは糸電話を取り戻そうとするがのび太は隠れて逃げのび、もっといたずらに使い始める。スネ夫にジャイアンの悪口を言わせて殴らせたり、今度はジャイアンの口を操って母ちゃんに怒らせたり、しずかにつけて出木杉をからかったりするが、タケコプターで空から迫ってきたドラえもんに糸電話を取り替えされてしまう。のび太は家に帰って昼寝するが、その間に糸をのび太にくっつけたドラえもんは部屋に入ってきたママに、今日のテストで0点を取ったことをのび太の口からばらしてしまい、ママは怒りで体を震わせるのであった。  

 (解説)人の口を操って思い通りの言葉を話すというコンセプト自体は以前からあるので目新しさは感じませんが、今話はその分キャラの描写が光っています。ジャイアンの悪口を言ったスネ夫が電光石火で殴られてしまう所の「間」なんかは最高ですね。37巻中では比較的ページ数は少ないですが、その分無駄のない展開になっています。
たまごの中のしずちゃん   10頁 小四85年1月号(刷りこみたまご)
 今日も出木杉と仲良くしているしずかを見てヤキモチを焼くのび太は、またドラえもんに文句を言ってくる。しずかは将来のび太と結婚する運命であるはずだが、未来が変わってしまうこともあるとドラえもんは脅かすので、のび太は何とかしてくれるよう懇願する。ドラえもんは頭と体を鍛えてしずかに好かれるように努力するべきだと言うが、そんなことがのび太に出来るはずがないことはドラえもんも良く知っているので、「刷りこみたまご」を出した。これは鳥類などに見られる「刷りこみ」現象を応用したもので、このたまごの中に目的の人を入れて15分間入っていると、たまごの蓋が開いて初めて見た人を激しく好きになってしまうのだ。のび太は早速しずかをたまごに入れようとするが理由がわからないのでしずかは入りたがらず、出木杉が入ろうとしてきたので二人は引き返してしまう。しずかが一人になった時を狙うことにする二人だが、今度はそこにジャイアンが現れてたまごを見てまわり始め、弾みで中に落っこちて蓋が閉まってしまう。15分後にジャイアンに好かれないようにとその場を二人は離れるが、15分後、その場に偶然スネ夫がやってきたため、ジャイアンはスネ夫に激しく惚れてしまう。邪魔が入らないように部屋に持ち帰ったのび太はドラえもんに頼んでしずかを何とかこの部屋に連れてくるようにする。出木杉と別れたしずかは玄関先に仕掛けられていた「ストレートホール」によってのび太の部屋にまで連れてこられてしまい、そのままたまごに入れられてしまう。ドラえもんも追い出したのび太は15分後を心待ちにするが、これからという時にスネ夫が助けを求めてくる。その頃引き返してきた出木杉もまたストレートホールに落ちてしまい、のび太の部屋に来たところでたまごの開いたしずかと目があってしまう。ジャイアンにスネ夫を任せて部屋に戻るのび太だが、しずかが出木杉に惚れてしまったことを知って泣き叫んでしまう。出木杉もしずかを元に戻すようドラえもんに頼み込み、好かれては迷惑なのかと問うしずかに、機械に頼って人の心を動かすことは望まないと出木杉は答える。ドラえもんによって元に戻ったしずかはますます出木杉のことを好きになってしまい、それを見てさらに泣きわめくのび太であった。  

 (解説)まさに野比のび太受難の日ですね(笑)。まあ、聖人君子みたいな事を言う出木杉と比べると、明らかにのび太のやっていることは小狡いので、しずかが出木杉の方に夢中になってしまうのも無理はないかと思いますが、本当にこんな調子でどうしてしずかはのび太と結婚したんでしょうね?本筋とは関係ないところで、いつもの如くスネ夫に惚れてしまうジャイアンと惚れられたスネ夫が笑えます。特にジャイアンに惚れられて『かっわい〜。』と言われた時に返した、『よせよ、今さらわかりきったことを。』というスネ夫の言葉はけだし名言ですね(笑)。
のび太の0点脱出作戦   8頁 小五85年7月号
 居間でのび太を叱りつけようとしているママだが、あまりの怒りに言葉も出さずに立ち去った。のび太は今まで五回に一回の割りで0点を取ってきたが、最近は立て続けに四回も連続で0点を取ってしまっていたのだ。明日のテストに向けて勉強を始めるのび太だが、のび太は「コンピューターペンシル」やら「わすれろ草」やら、何とか楽をしてテストを乗り切ることしか考えない。怒り心頭のドラえもんの迫力に圧されて仕方なく勉強を始めるが、その時にある考えを思いついたのび太はドラえもんを部屋から追い出してしまう。のび太はタイムマシンで一週間後の出木杉の部屋に行き、テストの問題と解答を見てくることを思いついたのだ。早速タイムマシンで一週間後の出木杉の家に向かうが、机に近づこうとすると何かに弾かれてしまった。なんとそこにはのび太がもう一人いて、答案を読ませないためにバリヤーを張っておいたのだ。そちらののび太は実力でテストを受けるべきだと話すが、答案を見に来たのび太は意地でもテストを見ようとし、先に来ていたのび太はそんな恥知らずな行為を止めさせるために「けんか手ぶくろ」を使って答案を読みに来たのび太をやっつけてしまう。のび太は引き返してドラえもんに話すが、ドラえもんにもその理由はわからない。全ての策が尽きたのび太はやっと自分でやる気を起こし、それを見たドラえもんは「時門」で時の流れを緩やかにして少しでも多くのび太に勉強させようとする。そしてテストは行われ、結果のび太は65点という点数を取ることが出来た。点数の高さよりも自分の努力でここまでの点が取れたことに感動するのび太は、明日、出木杉の答案を覗きに行くであろう過去ののび太の甘ったれた根性を叩き直すため、けんか手ぶくろを持ってタイムマシンで翌日の出木杉の部屋に向かうのであった。  

 (解説)努力をしても、全ての人が必ずしも報われるわけではないと思います。それでも人は努力をしなければならないし、そうすればいつかきっと自分が報われる日もやってくる。日頃「努力」とは無関係なのび太というキャラを通して、作者はその事を伝えたかったのではないでしょうか。のび太の努力は微々たるものだし、次の日になればまた元に戻ってしまうのでしょうが、「努力をすることは大切なこと」と言うことをのび太は学びました。それは我々全ての人間が心に留めておかなければならない事だと思います。他にはドラの怒り顔やのび太が悪巧みをしている時の姿などが見物ですね。
クローンリキッドごくう   7頁 小一82年9月号
 「孫悟空」のテレビアニメを見るのび太は、悟空が髪の毛を抜いて吹くと自分の分身を作り出すというところに憧れ、自分もやってみたいと言い出す。そんなのび太にドラえもんは「クローンリキッドごくう」を貸してやる。これを頭にふりかけてから髪の毛を抜き、それを吹き飛ばすとのび太そっくりの分身に変わった。いくらでも味方が作れると喜ぶのび太はジャイアンの所へ行って日頃の恨みを晴らそうとするが、ドラえもんは慌てて30分経つと効き目が切れることを説明する。空き地でスネ夫をいじめているジャイアンを見かけたのび太は抜いた髪の毛を吹くが、効き目が切れていたために髪の毛は変化せずにジャイアンに殴られてしまう。のび太は薬を容器ごと借りて再び空き地に行くがジャイアンは既にいなかった。訪ねられたしずかもジャイアンを知らなかったが、しずかが家の廊下掃除で大変なことを知ったのび太はしずかにも薬を貸して、しずかは分身と一緒に掃除をする。ジャイアンを見つけたのび太は薬をふりかけて分身をたくさん作った上で勝負を挑むが、ジャイアンにすごまれると同時に分身は一斉に逃げてしまい、のび太は殴られたあげくに薬を取られてしまう。分身は毛の持ち主とそっくりになってしまうので、のび太同様に怖がった分身は逃げてしまったのだ。それでもあの薬を使ってジャイアンをやっつけたいと涙を流すのび太。一方ジャイアンは自分の分身をたくさん作っていたが、ジャイアンそっくりになった分身はそれぞれ勝手にいたずらを始め、ジャイアンは母ちゃんに変なものを使うからだと怒られてしまう。それを見たドラえもんは『この薬でやっつけたようなものさ。』とのび太に話すのであった。  

 (解説)捻りのきいたラストのオチが何とも言えずイイですね。「髪の毛の持ち主にそっくりになる」という伏線がオチの直前に出てきたために、話に奥行きがなくなってしまったのは少々残念ですが、やはりラストに強引な理屈でのび太を納得させるドラのセリフが一番ですね。
しかしユーレイはでた!   21頁 小五82年8月号(記憶を消すワスレンボー)
 珍しくジャイアンが、おじさんが住職を努めている山寺で合宿をすると言ってのび太とドラえもんも誘ってきた。早速二人はママに許可をもらおうとするが、ママはなぜかものすごく機嫌が悪く、一喝の下に断られてしまう。廊下に散らばっている破れた0点の答案を見た二人は、隠してあった答案をママが見つけたために機嫌が悪いと推察し、ドラえもんは「ワスレンボー」を出した。これは忘れさせたい時間の間隔をセットして相手を叩くと、その時間内のことを忘れさせることが出来るのだ。ママに答案のことを忘れさせた二人は改めて合宿のことを頼み込み、何とか了解をもらう。のび太達5人は合宿に出発するが、そこは冬にはバスも通らなくなるような場所で、5人はヘトヘトになりながらも寺にたどり着く。しかし肝心のおじさんは隣村の葬式に出かけていたので、今夜は5人だけということになった。ご飯はしずかが引き受けて、風呂たきはドラえもんとのび太が押しつけられてしまった。水汲みをするのび太だがなぜかドラえもんは薪割りをしないで遊んでいる。訳を聞くとドラえもんは「変身ロボット」を自分そっくりに変身させて、そっちに薪割りを任せていると言う。一個しかないので貸せないとドラえもんは言うが、のび太はワスレンボーを使ってドラえもんにその事を忘れさせて薪割りをさせ、ロボットに水くみをさせてゆっくり休むことにする。一方退屈なジャイアンとスネ夫は、暗くなったら何かをしようと計画を練る。
 風呂が沸いたのでのび太は最初に入らせてもらうが、スネ夫が家の外からのび太を驚かしたので、のび太は素っ裸で台所に逃げ、しずかを怒らせてしまう。しずかの作ったご飯を食べる5人だが、のび太はトイレに行きたくなったのでトイレに行く。ところが今度はジャイアンがのび太を驚かしたのでのび太はおしっこを出したままみんなの所に戻ってしまい、ついにしずかにも軽蔑されてしまう。そしてそれぞれ眠りにつく5人だが、トイレに行くドラえもんと一緒にのび太はトイレに行くが、ドラえもんは先に寝床に戻ってしまい、戻ろうとするのび太の耳にジャイアン達の声が聞こえてきた。今まで自分を驚かしてきたのが二人の仕業であることに気付いたのび太は仕返しのために物置の方へ向かう。しかし、なぜかここでのび太の記憶は途切れ、のび太は訳の分からぬまま寝床へと戻る。だがその時電灯が消えると同時にどこからか悲鳴が聞こえた。非常灯を出してしずかと一緒に様子を見に行く二人だが、ジャイアンの仕業だと思っているスネ夫は騒ごうとしない。みんなが一旦部屋に戻った時点で自分も驚かしに出発するスネ夫だが、廊下の隅に不気味な影が立っているのを見かけ、近づいていって見るが、また寺の中に悲鳴が響く。のび太は怖がって布団から出ようとしないが、ジャイアン達がいないことに気付いたしずかはドラえもんと一緒に二人を探しに行く。そして二人も不気味な影を見つけ、のび太の耳に再び悲鳴が響く。しかも足音がだんだんのび太の部屋にまで近づいてきて、とうとうユーレイが部屋に入ってきた。仰天するのび太だが突然ユーレイは話しかけてきた。実はこのユーレイは変身ロボットで、先程ジャイアン達に仕返しをするためにのび太は逆に驚かそうとロボットをユーレイに変えたのだが、その時一緒に隠していたワスレンボーで頭を叩いてしまい、その時のことを忘れてしまったのだ。気絶したみんなを見て秘密がばれることを心配したのび太は、みんなの見ている前で自分がユーレイを退治するところを見せることにし、ユーレイをのび太が追い払うところをみんなは見るが、ドラえもんは「八百長くさい」と感じるのであった。  

 (解説)夜の寺でドラ達がどんどん消えていくという展開はホラー映画のような展開で、結構な緊張感を漂わせています。ワスレンボーの効力をそのままオチへの伏線にしてしまっていて、凝った構成になっています。「ギャーッ」という悲鳴も過剰気味になっていて笑いを誘いますね。個人的にはのび太がおしっこをしたままみんなの所に行った時、みんながみんながきちんとちゃぶ台を持って避けているところですね。
大人気!クリスチーネ先生   10頁 小六85年6月号(ジャイ子…まんが家への道)
 のび太に改まって話し出すジャイアンは、のび太のマンガを見る目を見込んで、ジャイ子が描いた新作マンガを読み、批評して欲しいと頼んでくる。一通り読み終わったのび太はその出来映えに感動し、新人賞に応募しても受賞の可能性があると話す。だがジャイ子は応募するのを嫌がっているのだと言う。久々の自信作だけに、落選した時のことを思うと怖くて応募できないと言うジャイ子のために、ドラえもんは「思いきりハサミ」を出して、ハサミを「チャキーン」と鳴らす。するとジャイ子は迷いを吹っ切って、応募することにする。このハサミが発する音を聞くと迷いを立ちきることが出来るのだ。のび太はこれを使って宿題を忘れて遊ぶ決心をつけてしまい、これを持ってしずかの家に行く。迷い事があると言うしずかにハサミの音を聞かせると、しずかは迷うのを止めて出木杉に勉強で分からないところを聞きに行ってしまう。ふてくされるのび太だが他にもハサミの音を鳴らすと、色々な人の迷いを断ち切って決断させ、その様子を見てのび太も喜ぶ。さらにのび太はハサミを鳴らして宿題をしない決断をしてしまい、それを見てドラえもんは二度とハサミを貸さないと言うのだった。そして月日はあっという間に流れ、ジャイ子が応募した新人賞の結果が発表される時が近づいてきた。ジャイアンはタイムマシンで雑誌が発売される翌日に行って、雑誌を買ってきてジャイ子を安心させたいと言うが、のび太が落選の話をしたために怒り出し、もし落選していたらのび太達のせいと言いだしてしまう。タイムマシンで翌日に向かって雑誌を読むが、やはりジャイ子は落選しており、怒ったジャイアンはのび太達のせいにして二人を追い回してしまい、二人は何とか逃げ延びるもののジャイアンがタイムマシンの出口で待ちかまえているために、帰ることもできなくなってしまう。だがそこへ翌日のジャイアンが現れた。翌日のジャイアンは今日のジャイアンに、昨日の夕方雑誌の編集長から電話があり、ジャイ子は今回は落選したが、才能のひらめきを感じるので新作が出来たら是非見せてくれと言われたことを話した。それを聞いてのび太達も安心して駆け寄るのであった。  

 (解説)今話も定番のジャイ子ネタになっていますが、途中でのび太が道具で遊ぶところもきっちりと挿入していて、本筋の話とうまくバランスが取れています。今回も道具のことを知っているジャイアンがタイムマシンを利用していましたね。道具中心の話ではないので今話の道具の影が薄くなってしまうのはやむを得ませんが、強烈な個性がないので印象に残りにくいのも残念でした。



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