てんとう虫コミックス第39巻


メルヘンランド入場券   11頁 小六86年4月号
 物置の整理を手伝うのび太とドラえもんだが、のび太は古本を読みふけって手伝おうとしない。のび太は動物たちが主人公の絵本を読み返し、子供の頃に夢見たメルヘンの世界を懐かしむ。ドラえもんはそんなのび太に「メルヘンランド入場券」を出した。22世紀のレジャー施設に入って動物に変身して遊ぶのだと言う。早速しずかを誘いに行くのび太だが、ジャイアン達にも見つかったために5人で行くことになってしまう。ドラえもんは4人にエチケットをきちんと守るよう忠告してからタイムマシンでメルヘンランドに向かう。キップを渡し、大きな木の幹の中を進んでいくと、5人は自動的に動物に変身しており、ドラえもんはタヌキ、のび太はカメ、しずかはウサギ、ジャイアンはゴリラ、スネ夫はキツネになってしまう。虹の橋を渡ってキャンプ場についた5人はいろんなお姫様が住んでいるお城を見かけるが、カメののび太はくたびれてしまったので道で眠ってしまい、ウサギのしずかがそれを起こす様子を見て笑う3人。貸しボートに乗るドラえもんとしずかを見てカチカチ山だとのび太達は笑い、ジャイアンは木の上に登って一人で木の実を食べ始め、木の実を欲しがるドラえもん達にジャイアンは青い実を投げつけてくるが、サルカニ合戦の臼や栗がでてきたのでジャイアンは驚いてしまう。食事をすることにした5人はレンタルしていた「北風のくれたテーブルかけ」を使って、満開の桜並木の下で食事をとる。ナイトゾーンに入った5人はジャック豆を使った豆の木エレベーターで雲の上に登り、天の川でスターフィッシュと遊ぶ。夢のような一時を過ごした5人は満足して現代に戻ってきた。みんなが帰ったあとでのび太は恐ろしい魔女が出るくらいの刺激が欲しいと話すが、現実の「魔女」であるママに物置の片づけをサボったことを怒られてしまい、のび太はやはりメルヘンランドはあれで良かったのだと納得するのだった。  

 (解説)子供の頃に夢見るメルヘンの世界を「科学」の力を使って実現させているという、まさに究極の理想を描いた夢物語になっていますね。様々なおとぎ話の一部分を盛り込んでいるメルヘンランドの描写は、のび太でなくても読む人間をメルヘンの世界に誘ってくれることでしょう。ところで、のび太はタヌキに似ているんじゃなかったっけ(「タヌ機」参照)?
のび太 神さまになる   10頁 小四83年4月号(神さまセット)
 ジャイアンとスネ夫に追いかけられるのび太は二人に捕まってしまうが、その時まばゆい光が空から照らされ、神さまを名乗る何者かが二人に天罰の雷を落とし、二人は慌てて逃げていった。助けてくれたことを神さまに感謝し、のび太は喜んで家に帰るが、部屋ではドラえもんが何かを広げていた。ドラえもんは「神さまぼう」をかぶり、「神さまプール」で町を観察し、「神さまマイク」で声を発して「神さまステッキ」で光を出したりしていたのだ。つまりさっきの神さまはドラえもんだったのだ。それを知ったのび太は早速それを借りて自分も神さまになるが、プールを覗くとまたジャイアンとスネ夫が意地悪を働いていた。のび太はまた雷をジャイアンに落とし、ジャイアンは驚いて逃げてしまった。神さまの存在を信じたスネ夫はジャイアンに取られた電子ゲームを取り返してくれるよう懇願し、のび太はステッキでゲームをスネ夫の元に届け、スネ夫から感謝される。他人を助けることに喜びを感じたのび太は他にもジャイアンに取られた様々なものをみんなに返していき、次にしずかに何かをしようとプールで見てみると、しずかは例によって入浴中だったがシャワーが出ないらしく、のび太はステッキから放水するが調節が難しく、自分もずぶぬれになってしまった。そこへ自分を呼ぶスネ夫の声を聞きつけたのび太がプールで見てみると、スネ夫はお礼にケーキを差し出そうというのでのび太もありがたく頂戴するが、その代わりにスネ夫は大量の欲しいものを全部授けてくれと図々しいお願いをしてきた。怒ったのび太は欲張りの罰として雷を落とすが他の連中も勝手なことばかり言いだし、のび太はそれを逆手にとって自分に頼まれたお使いを神の名の下に、友達に押しつけてしまう。のび太はマンガを取ったり宿題を見たりと行動をエスカレートさせていき、ついには賽銭を持って空き地に集まるよう言いだしてしまう。それを知ったドラえもんはプールにのび太を突き落とし、のび太はそこから空き地に落ちてしまい、みんなは神さまの正体がのび太だと知るのであった。  

 (解説)例によって増長したのび太が失敗するくだりを描いていますが、今話ではのび太は最初は真面目に行動しており、それを狂わせたのはむしろ神に対して「他力本願」な姿勢をとった他の連中によるものでした。力をかさに横暴を働くのは無論良くないことですが、自分で努力もせずに力にすがる事の愚かさも同時に描いているような感じがします。
メモリーディスク   8頁 小五83年6月号(メモリー・ディスク)
 のび太はスネ夫に借りた怖い本を読みながら歩くが、隠れていたジャイアン達に脅かされた拍子におしっこをもらしてしまう。のび太はドラえもんに何とかしてもらおうと家に帰るが、家ではママが財布を探しているところだった。どこに置いたか忘れてしまったというので話を聞いたドラえもんは「メモリーディスク」を出す。ディスクを使ってママの昨日から一日分の記憶を抜き取り、プレーヤーにかけて記憶を調べることにする。すると集金人にお金を払い、そのすぐあとにまたお客が来たところで画面が乱れてしまった。無意識の行動は記憶に残りにくいので、ドラえもんは何とかディスクを磨いて見られるようにしてみると、ママはお客を座布団に座らせる時に、その座布団の下に財布を置きっぱなしにしてしまっていたのだ。ディスクから記憶を戻して財布を見つけたドラえもんはママから感謝される。忘れっぽいママを笑う二人だが、のび太も自分がおもらしをしたことを今になって思いだし、二人はジャイアンの下へ急行する。ジャイアンは空き地で友達に話していたが、ドラえもんはディスクで三人の記憶を取って問題の部分を消してしまい、なんとか秘密が漏れるのを防いだ。次にしずかに話そうとしているスネ夫からも記憶を抜き取るドラえもんだが、今度はニセの記憶を送り込むことにし、ドラえもんはディスクに自分の記憶を移す。記憶が戻されたスネ夫はおもらしをしたのが自分だというようにしずかに話してしまい、しずかに笑われてしまう。不思議がるスネ夫を見て喜びの握手を交わすのび太とドラえもんであった。  

 (解説)この頃は「コンパクトディスク」が登場したばっかりの頃だったんですねえ…。最先端の技術をすぐに作品世界に取り込んでいる情報の早さもすごいですね。そのくせ乱れた画像を直すためにディスクを磨いたり、マジックで塗りつぶして記憶を消したりとやけにレトロな部分も出てきて、そのへんのミスマッチさもまたいい味を出しています。スネ夫はいつもおもらしの役目を担ってしまいますね(笑)。
ハンディキャップ   10頁 小四86年5月号
 またジャイアンにやりこめられたのび太は反論しようとするが、結局力に圧されて何も言えずに引き下がってしまう。悔しがるのび太の所に、パパがゴルフの優勝カップを持って帰ってきた。ゴルフが上手ではないパパが優勝したことを不思議に思うのび太だが、パパはゴルフのルールにある「ハンディ」をたくさん引いたために、結果的にスコアが最高になって優勝できたと話す。それを聞いてなんにでもハンディをつけられればいいと話すのび太だが、ドラえもんはそれに答えて「ハンディキャップ」を出した。これをかぶれば5メートル四方から最大日本中の人を、かぶっている人と同じ能力にすることが出来るのだ。だが日本中の人間がのび太のレベルになった場合を考えてドラえもんは貸すのを止めようとするが、ジャイアンと同じレベルでケンカしたいのび太はキャップを取っていってしまう。ジャイアンは空き地で腕立て伏せを百回行って、自分の体力をスネ夫に自慢していたが、そこに現れたのび太はジャイアンに先程のことでケンカを挑む。だがのび太はハンディキャップをかぶっているためにジャイアンものび太と同じ程度の強さになっており、しかもジャイアンの方が疲労していたので、のび太はジャイアンをうち負かしてしまう。逃げたカナリアを追いかけているしずかに出会ったのび太はダイヤルで範囲を広げ、カナリアの能力をのび太並みにしてスピードを落とさせ、カナリアを捕まえる。のび太はしずかと宿題をやることにするが、ハンディキャップをかぶっているためにしずかも問題が分からない。しずかは出木杉に聞いてみることにするが、出木杉にも分からないのでしずかは困ってしまう。のび太は先生の所に出かけて宿題を教えてくれるよう頼むが先生にも分からないので、先生は宿題をなしにしてしまった。それに気を良くしたのび太は日本中を自分と同レベルにしようとするが、それを見ていたドラえもんは熱戦銃で止めようとする。だがある考えを思いついたのび太は出木杉にハンディキャップをかぶせてみる。すると出木杉の能力がのび太に備わり、のび太の頭に今まで思いもしなかった考えが芽生えていく。だがそれが全て出木杉のおかげであることに情けなさを覚えたのび太は自分で努力することにし、ハンディキャップを自分からドラえもんに返すのであった。  

 (解説)今話のラストは自分ではまだよくわかっていません。のび太はラストに自分で努力をすることに気付きますが、それが元々ののび太という人間が思い当たったものなのか、それとも出木杉の知力を持っているから考えついたことなのか、どちらなのかが分からないのです。初めて読んだ子供の頃からずっと疑問に思っていたことなのですが、これに対する明確な回答をお持ちの方はいらっしゃいませんでしょうか?全然解説じゃないね(笑)。
十戒石板   8頁 小五83年4月号
 なんでもやりっぱなしののび太のだらしなさに困り果てたママは、家中に決まり事を作ることにする。決まりを一つ破るごとに小遣いから10円引かれることになったことを聞いて、のび太は困り果ててしまう。こうすることでのび太がしっかりした人間になることをドラえもんは期待するが、その前に小遣いがなくなってしまうと言うのび太の言葉に心を動かされ、「十戒石板」を出してやる。この石板に彫りつけられた決まり事を破ると、破った者に雷が落ちるのだ。ドラえもんは「のび太のこづかいをへらすな」と石板に書き、試しにのび太が決まりを破ってママが小遣いを減らそうとすると、雷でママは黒こげになってしまった。だがそれを見て調子に乗ったのび太は次々に勝手な決まりを作ってドラえもんさえも寄せ付けないようにしてしまう。決まりを作っては自分に逆らう者に雷を落としていくのび太を見て、ドラえもんは何とかしなければと対策を練る。一日中たっぷり遊んだのび太が帰ってくると、玄関のドアにまた張り紙がしてあった。それをママのものだと思いこんだのび太はまた雷を落とすために「かってなきまりをつくるな」と石板に書き込む。しかしそれを書き込んだ途端、今まで散々勝手な決まりを作ってきたのび太に雷が直撃し、黒こげになって気絶するのび太からドラえもんは石板を取り戻すのであった。  

 (解説)ママやジャイアンはともかく、他の友達連中まで黒こげになってしまう今話はすごい話ですね。ラストのオチは因果応報めいた説得力のあるオチで、読んでいて素直に納得させられました。今話のドラえもんはちょっとのび太に甘すぎる気もしますね。
厚みぬきとりバリ   8頁 小五86年6月号
 空き地で野球を始めるジャイアン達だが、駐車場代わりに車を空き地に止められてしまい、野球は出来なくなってしまう。ジャイアンにしごかれずには済んだものの、空き地が駐車場になってしまうことを心配するのび太だが、家に帰ってくるとパパがドラえもんに何事か相談していた。ゴルフに行く時に重いバッグを持っていくのが大変なので何とかならないかと言う。そんなパパにドラえもんは「厚みぬきとりバリ」を出し、バッグをハリで刺すと空気が抜けたようにバッグはペシャンコになってしまった。パパは慌てるが水をかけると元に戻ることを聞いて安心し、今度ゴルフに行く時に借りることにする。それを見たのび太はまた金儲けの話をドラえもんに振り始めたのでドラえもんは怒り出してしまうが、駐車場を作るというのび太の言葉を信用することにする。空き地に「駐車場」の張り紙を貼って、手始めに先程空き地に止められた車をハリでペシャンコにする。張り紙を見てやって来た車も全部ペシャンコにするが、そこにやってきたジャイアンが強引に野球の練習を始めてしまい、二人はたまらず逃げ出すが、知らぬ間に追ってきたジャイアンをハリで刺してしまい、ジャイアンはペラペラになってしまう。家に帰り着いたものの空き地に行けなくなったので困り果てる二人。一方ペシャンコのジャイアンを見つけたスネ夫はそれを絵だと思いこんで踏みつけるが、ジャイアンが睨んだために逃げてしまう。その時、雨が降ってきた。急いで二人が空き地に急行すると車は全部元に戻ってしまって、しかも重ねて置いていたために車の山が出来てしまっていた。運転手から文句を言われて困る二人の下にジャイアンが駆けつけようとしているのだった。  

 (解説)ついに空き地にも土地問題が直接絡んできましたか(笑)。道具の設定自体は「チッポケット二次元カメラ」によく似ており、不測の事態で平面上にしたものが全部元に戻ってしまうという展開も同じです。ただ「チッポケット〜」の方が強烈なオチを備えていた分、こちらは少し大人しめになってしまっていますね。ジャイアンのいぬ間にジャイアンを踏みつけるスネ夫も相変わらずで楽しいです。
乗りものぐつでドライブ   8頁 小二82年4月号(のりものぐつ)
 スネ夫は従兄弟の車で高井山までのドライブにみんなを誘うが、いつもの如くのび太だけは断られてしまう。負け惜しみを言うがそれでも行きたがるのび太にドラえもんは「乗りものぐつ」を出した。その名の通りいろんな乗りものになる靴で、足に履くと歩くことは出来ないが、左端のボタンを押すと車輪が出て車のようになって走り出した。前傾姿勢になることでスピードを上げ、スネ夫達の車を追い抜いてしまうのび太だが再び追い抜かれてしまい、さらにスピードを上げようとするがドラえもんに止められてしまう。二人は靴をジェット機に変えて空を飛び、あっという間に高井山に到着したがあっという間に通り過ぎてしまい、今度は靴をヘリコプターに変形させてのんびり遊覧飛行を楽しむ。湖を見つけた二人は靴をモーターボートに変えて楽しく遊び、休憩するために昼寝を始める。一方道路が混んでいたためにやっとスネ夫達は高井山に到着したが、スネ夫とジャイアンは寝ているのび太達と乗りものぐつを見つけ、靴を奪い取ってしまう。二人は右端のボタンを押すと、今までに変形したことのない形に靴が変化した。突然聞こえた叫び声で目を覚ますのび太達。行ってみるとジャイアン達の押したボタンが潜水艦に変形するボタンだったため、二人はどんどん湖に沈んでいく所であった。  

 (解説)潜水艦に変形できたって、履いているのが人間なら使いようがないと思うのですが(笑)。それとも「エラチューブ」でも使うんですかね?それはともかく、それぞれのタイプに変形した道具を均等に活躍させており、それぞれの見せ場がある点は好感が持てます。
ジャストホンネ   8頁 小五85年2月号
 空き地でまたウソとも本当ともつかぬ話をペラペラみんなに話すスネ夫。そこに機嫌の悪そうなジャイアンが現れたのでみんなは目を合わせないように注意し、スネ夫はその場からさっさと立ち去ろうとするが、ジャイアンに絡まれてしまったので咄嗟にコンサートのことを話題に出し、スネ夫におだてられたジャイアンはみんなにもコンサートを見たいかどうか聞いてきたのでみんなも同意してしまい、ジャイアンはコンサートを開くことにしてしまう。部屋でドラえもんと一緒にスネ夫の身勝手さを怒るのび太だが、そこに当のスネ夫が訪ねてきた。スネ夫はあれ以来誰からも口をきいてもらえないと言う。スネ夫はウソをつく癖を治したいとドラえもんに懇願し、それを聞いたドラえもんは「ジャストホンネ」という薬を出した。一日一錠飲むことで心に思っていることしか言えなくなってしまう薬なのだ。早速薬を飲んだスネ夫は家を出る時に思わずのび太のママの悪口を言ってしまう。だがそこにジャイアンが現れ、なんとこれからすぐにコンサートを開くと言ってきた。それを聞いたスネ夫は薬の効き目を消すよう二人に頼むが、さすがに二人も怒って追い出してしまう。ところがコンサートの話を聞いた二人は、薬を飲んだスネ夫がコンサートに行った時のことを想像して顔を青くしてしまう。スネ夫は遠くに逃げようとするがとても出来ず、居留守を使うことにするがウソがつけなくなっているのでそれも出来ずに外に出かけてしまう。ドラえもんはスネ夫だけでなく、あの時同意した全員に責任があると話し、みんなで薬を飲んで本音をぶつけることにする。ビラを配り終えたジャイアンは母ちゃんに店番を頼まれていたことを思い出すが、ウソをついてごまかすことにする。だがドラえもん達が友達に薬を飲ませているところを見かけたジャイアンは自分も薬を飲んでしまい、そのために母ちゃんにも正直に話してしまい、コンサートを止めるよう母ちゃんに叱られてしまう。結局ジャイアンは店番をすることになり、コンサートは中止されて安堵する一同であった。  

 (解説)ジャイアンに比べてあまり描かれることのない、スネ夫の心情を描いている数少ない話ということで、その点では興味深い話になっています。でも、ドラ達の前での反省もスネ夫なら計算ずくなのかも、なんて思えたりしますね(笑)。「スネ夫とウソ」と言えば「ウラオモテックス」ですが、今話は同じような道具を使っていても全く展開が異なっていて読み応えがありますね。母ちゃんは息子の音痴さを良く知っているようで(笑)。
手作りの雲は楽しいね   8頁 小三85年1月号(手作り雲セット)
 雲の舟に乗って空を飛び、雲の島でのんびり昼寝したという自分の夢をみんなに話すのび太だが、幼稚園みたいな夢だとジャイアン達にバカにされてしまう。落ち込んで帰るのび太だが、後からやって来たしずかはのび太の夢に共感してくれ、それを聞いたのび太はこの夢を実現できないものかとドラえもんに尋ね、ドラえもんは「手作り雲セット」を出した。好きな形の雲の芯を作り、雲作りマシンを動かして雲の素を入れると雲が出てくるのでそれで芯をくるみ、雲の舟が出来上がった。それぞれの舟が出来上がったところでドラえもんは風車のようなものを渡し、それを後ろに差すと雲は空へと進み始めた。そして空に芯を使って雲の島を作り始めた三人は、島にある木まで作ってついに島を完成させた。空き地にいるジャイアン達を見つけたのび太は二人も誘うが、二人は意地になって断るのでのび太も無視して雲の上でのんびり過ごす。だがやはり羨ましがったジャイアンとスネ夫はラジコン飛行機を雲に向かって発射し、三人をからかい始めた。怒ったドラえもんはラジコンを掴まえてそのラジコンを中心に芯を張っていく。ラジコンが降りてこないことを不審がるスネ夫だが、ラジコンと一緒にくくりつけられた恐竜の雲まで降りてきたので、二人は仰天してしまうのであった。  

 (解説)自分達で雲を作って、それを使って空で遊ぶという極めて単純なプロットの話ですが、それ故に余計なことを考えることなく、素直に楽しめる話になっています。風車型の道具は、後の「ゴーゴーカザグルマ」の原型でしょうか?
ぬけ穴ボールペン   10頁 小四86年2月号(抜け穴ボールペン)
 敵軍に追いつめられた殿様が、古井戸に作られていた秘密の抜け穴を通って逃げていくという筋書きのテレビ時代劇を見ていたのび太とドラえもん。のび太もまさかの時のために抜け穴が欲しいと言うが、ドラえもんはいざという時にだけ使うことを条件に、渋々「ぬけ穴ボールペン」を出した。部屋の壁に円を書くとそれがぬけ穴となり、どこに通じているかは分からないものの必ず外に、しかもなぜか靴まで履いて脱出することが出来るのだ。外で書いたぬけ穴を通ると部屋の中に戻ることが出来るので、のび太は早速ママを怒らせて実験し、さらにジャイアンもわざと怒らせ、ぬけ穴を使ってからかってしまう。ドラえもんは注意するがのび太は屁理屈を言って何度もジャイアンをからかい、そのたびに部屋に戻ってくるのでママも騒ぎに気付いてしまう。のび太を叱るためにドラえもんはママと一緒にのび太の部屋で待つことにするが、のび太はもういたずらを止めてしまっており、しずかの家に向かっていた。だがのび太があちこちに書き残したぬけ穴の存在が気付かれるようになっていき、ぬけ穴を見つけたスネ夫とジャイアンはゴミを放り込み、偶然ぬけ穴を見つけた友達は石を投げ込み始め、さらに自宅の庭に作られたぬけ穴にその家の老人が落ちてしまった。それらのものがいっぺんにのび太の部屋に出てきてドラえもん達は仰天してしまい、帰ってきたのび太に物凄い剣幕で怒りかかるが、当ののび太は事情が飲み込めずに慌てるだけであった。  

 (解説)なんか「大風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな感じの話になっていますね。のび太はジャイアンをからかっただけなのに、自分の知らないところでドラやママに迷惑をかけている。「カチンカチンライト」でしずかが被った迷惑と同じですね。靴を自然に履いているという設定が、実に細かくていいですね(笑)。
さとりヘルメット   8頁 小五85年9月号
 道ばたでジャイアンに呼ばれたのび太はそばに行くが、ジャイアンは機嫌が悪かったので鬱憤晴らしにのび太は殴られてしまう。だが遠くから危険を察知することなどのび太には出来るはずもなく、話を聞いたドラえもんは「さとりヘルメット」を出した。これをかぶると30メートル以内の人間の心を読むことが出来るのだ。早速かぶってみるとのび太の臆病さをバカにするドラえもんの声が聞こえてきてしまう。その時ママがのび太を買い物に行かせようとしていることを心の声で聞いたのび太は慌てて外に逃げてしまう。周囲の心の声を面白がるのび太だが、突然ジャイアンの心の声が聞こえてきたので慌てて逃げるが、その様子を見たジャイアンは不思議がる。しずかを見かけたのび太は一緒に遊ぼうとするが、心を読んだのでピアノのお稽古に行くしずかの用事を知る。のび太はヘルメットのことをしずかに話すが、それを見ていたジャイアンが速攻で突入してきてのび太からヘルメットを奪い去ってしまう。スネ夫の存在をかぎつけたジャイアンはわざと自分の印象について尋ねるが、スネ夫の本心を聞いたジャイアンは怒りだしてしまう。のび太から話を聞いたドラえもんは取り返すために外に出るが、早くも犠牲者になってしまったスネ夫を見てさらに慌てる。ジャイアンはヘルメットの力を使って心を読みまくり、いろんな友達をいじめまくってしまう。責任を押しつけられたのび太はドラえもんのアドバイスで心を空っぽにして近づくことにするが、「からっぽ」と自分で考えてしまったために存在に気付かれギタギタにされてしまう。だが気絶しているのび太を見て、今ののび太の心が空っぽであることに気付いたドラえもんは「人間ラジコン」でのび太を操縦し、ジャイアンからヘルメットを取り替えるべく、のび太をジャイアンの下に向かわせるのだった。

 (解説)心を読めるヘルメットがなんとジャイアンの手に渡ってしまうという、ものすごい展開を見せているのが今話の特徴です。どうやって取り返すかが物語の焦点となりますが、それに関しては未完のままになっているのでちょっと残念です。しかし今話は「心を空っぽにする」という、いろんなマンガで言われている難しい問題をあっさりクリアしたことがなによりすごいですね。確かに気絶している人間を動かせば心は空っぽでしょうからね。しかしそれを実行するドラはやはり非情だ(笑)。
風船がとどけた手紙   8頁 小五86年5月号(長距離風船手紙コントローラー)
 のび太達4人は手紙をつけた風船を空に飛ばす。見知らぬ誰かに手紙が届いて返事が来るのを待つのだ。しずかは外国の王子様が拾ってくれないかと話すが、風船のガスは抜けるのが早いのでそんなには飛ばないとスネ夫は話した。だが一日経ってスネ夫の手紙は隣家の女の子に拾われ、四日後にはジャイアンの手紙を拾ったどこかの先生が、誤字の多さを注意した手紙を送ってきた。そして一週間後、しずかが飛ばした手紙をリトルシュタイン公国のアドルフ皇太子が迎賓館の前で広い、しずかに返事が送られたことがテレビニュースで流されてのび太は驚く。そして自分にだけ返事が来ないことを悔しがったのび太はドラえもんに泣きつき、ドラえもんは「長距離風船手紙コントローラー」を出した。風船をこれでコントロールすることが出来るのだ。のび太は「もはん手紙ペン」で手紙を書き、手紙をつけた風船を飛ばす。しずかのように有名人に拾って欲しいと言うのび太の要望を受けて、ドラえもんは野球場に風船を移動させるが、飛んできたボールにぶつかってしまったので壊れる危険性があることから止めることにする。次にテレビ局の前でタレントが出てくるのを待つが、同じくタレントを待っているファンに風船を取られそうになってしまったので慌てて移動する。どうしても有名人に拾って欲しいと意地を張るのび太に、ドラえもんは京都にA国の首相が来ていることを思いだして京都に風船を飛ばすが、風船爆弾と勘違いされて銃撃されてしまい、ドラえもんは妥協するよう進言するがのび太はどうしても有名人に拾って欲しいと外国へ行くことにする。ところが突然何かが風船をつかんだ。それはなんとUFOで、しかも乗っている宇宙人が手紙を読んでしまった。困り果てる二人だが、深夜になって「誰か」が家を訪ねてきたので、ママはドアを開けようとするがのび太達はそれを必死に止めるのであった。  

 (解説)「手紙をつけた風船を飛ばす」などというメルヘンチックな冒頭から、うまく行かないのび太を描くいつものパターン、そして予想だにしなかった空前絶後のものすごいオチ(笑)と、一つの話の中でこれだけ雰囲気が変わっているのが面白いしすごいですね。しかもそんなことをしても物語全体が破綻していないのもさすがと言うべきでしょう。ちなみに本作のアニメ版の方はこちらとは違ったエンディングを迎えており、そちらも面白い作品となっています。
ずらしんぼ   8頁 小五86年3月号
 ジャイアンがなんとスネ夫にマンガを貸してくれた。あまりにも珍しいことに驚きながらも喜ぶスネ夫だが、マンガにチョコレートケーキを落としてしまい、ベットリとチョコレートを付けてしまった。責任逃れのためにスネ夫はその事を隠してのび太に貸し、何も知らないのび太はその汚れを見て驚くが、スネ夫はのび太の仕業だと言ってジャイアンに知らせに行ってしまう。泣き叫ぶのび太にドラえもんは「ずらしんぼ」を出した。文字通りなんでもずらすことが出来る道具で、マンガの汚れも持ってきたちり紙の上にずらすことで汚れを取ってしまう。部屋のふすまの破れた穴もずらしてみたのび太はもっと色々試そうと階下に降りるが、階下ではママがうっかりしてアイロンを畳の上に置きっぱなしにしていたために、畳を焦がしてしまっていた。ずらしんぼで新聞紙の上に焦げをずらすのび太だが、パパがまだ新聞を読んでいないというので焦げを庭に捨てる。外に出かけたのび太は道をふさいでいる大きな水たまりで困っているしずかを見かけ、水たまりをドブの溝まで移動させて始末してしまう。しずかに感謝されるのび太だが、その時いきなりジャイアンに殴られる。スネ夫から話を聞いたジャイアンは怒ってやって来たのだが、マンガを見るとどこも汚れていないのでスネ夫は不思議がる。だがスネ夫は「これから汚す」などと言って再び本を持ち出してしまい、二人はさすがに腹を立てる。ジャイアンから再び本を借りたスネ夫は家に戻るが、なぜか玄関先に移動していた池にはまってしまう。汚れを確認するためにマンガを広げようとしたところで、隠れていたドラえもんは「ウルトラストップウォッチ」を押して時間を止めた。二人はスネ夫からマンガを取ってずらしんぼで何事か行い、再びマンガを戻したところでタイムロックを解除した。中身を確認したスネ夫は汚れていないことに安心するが、中身が「真っ白」であるのを見て仰天する。二人はずらしんぼで紙にマンガの中身を移し、自分達の所に持って帰って楽しくマンガを読むのであった。  

 (解説)ずらした池は元通りにしないのか(笑)?まあそれはいいとして、単純な道具ではありますが、それに導かれて描かれる各キャラの描写が今話は特に楽しいですね。ジャイアンが本を貸したので、のび太とスネ夫が二人とも「雨でも降るんじゃないか」と同じ事を言ったり、汚れを見た時ののび太の仰天顔、そしてラストで真っ白なマンガを見た時のスネ夫の仰天顔などが特におかしいですね。
四次元若葉マーク   8頁 小三86年3月号(「お子さま練習カー」と「四次元若葉マーク」)
 今日も学校に遅刻してしまうのび太。のび太は学校が遠すぎるから遅刻するなどと先生に言ったために、また廊下に立たされてしまう。のび太は「学校を近くへひっこしさせる機」を出してくれとドラえもんに懇願するが、もちろんドラえもんはそんなものは持っていないのでのび太はすっかり元気をなくしてしまう。その時パパが帰ってきたが、なぜかひどく不機嫌な様子。パパは自動車の教習所に行って来たのだが、教官に「下手だから運転しない方がいい」と言われてしまったので、その事で怒っているのだった。同情したドラえもんはパパに車の練習を自由にさせるべく、庭に「お子さま練習カー」を出した。機構は今の車と変わりないのだが、当然庭では練習できるはずはないので、ドラえもんはさらに「四次元若葉マーク」を出した。これをつけたものは四次元世界に入ってしまうので、三次元空間のものにぶつかっても突き抜けてしまうのだ。これを車につけて半信半疑ながら走り始めるパパだが、確かにどこにもぶつかったりはしないのでパパはのびのびと練習を行うことにする。その時のび太の頭に良いアイデアが閃いた。のび太はドラえもんから若葉マークをもう一枚もらって自分に貼りつけ、学校まで直線コースで向かうことにする。障害物など関係なく走れるのでのび太はいつもより10分も早く学校に着いてしまった。これで遅刻の心配が無くなったのび太は、ジャイアンやイヌに襲われる心配もないし、車にはねられることもないと上機嫌になるが、四次元同士だったためにのび太はパパの車にぶつかってしまい、それを見たパパは運転を止めた方がいいのかと考え直すのであった。  

 (解説)読んでいれば大体オチは想像つくのですが、それでもなぜか笑ってしまいますね。その前のコマまでののび太が元気良くて勢いがある分、いきなり車にぶつかってしまうところが個人的にはつぼにはまった感じて面白いです。今話の道具の元祖ネタは「道路光線」ですかね。
ざぶとんにもたましいがある   10頁 小四83年2月号(たましいステッキ)
 道を歩いているのび太は酔っぱらいに割られたという街頭を眺めるが、気を取られていたために道に落ちていた空き缶につまずいて転んでしまう。人の家の梅の枝を誰かが折っていったり、出木杉が図書館から借りた本のページが破れていたりと、物が粗末に扱われている場面を見かけながらのび太は家に帰るが、なぜか部屋の本棚ががらんとしている。ママに古いマンガを捨てられてしまったのだ。泣いて悔しがるのび太は「物を粗末にしすぎる」ともっともらしい理屈を言うが、それを聞いたドラえもんも同調し、「たましいステッキ」を取り出した。これで触った物には全て魂が宿るのだ。試しに押し入れに隠していたマンガ雑誌に触ってみて、ママにわざと捨てさせるように仕向けると雑誌が突然泣き出し始めた。それを見て気をよくしたのび太は部屋中の物にステッキで触れ、さらに家中、町中の物にステッキで触れてしまう。その様子を見ていたジャイアンに木の枝を折らせようとするのび太だが、木がしゃべりだしてジャイアンを跳ね飛ばしてしまった。怒ったジャイアンはのび太を追いかけるが、のび太は家に逃げ帰る。魂を持った町の様子を二人は衛星テレビで観察し、空き缶やタバコのポイ捨てを咎めたり、ガラスを割って逃げようとする子供を教えたりと様々な行動をとっていた。これでみんなが物を大事にするだろうと喜ぶのび太は昼寝を始めるが、のび太のノートが宿題をやれと言いだし始めたのでのび太がノートを畳にぶつけると、部屋中の物がのび太の悪口を言い始めた。思わず叫んでしまうのび太だが階下でも同じような声が聞こえた。一階ではパパが座布団やテレビに色々文句を言われており、さらにおならをしてしまったので座布団に跳ね飛ばされてしまう。ママもゴミを吸うのを拒む掃除機にゴミを吹きつけられてしまい、やはり元に戻すことにするが肝心のステッキが見つからない。ジャイアンに追いかけられた時に空き地に置きっぱなしにしたことを思いだしたのび太は急いで向かおうとするが、せっかく持った魂を消されまいと靴までもが邪魔をする。それでも空き地に向かうのび太だが靴の力に負けてドブに落とされてしまう。タケコプターでステッキを持ってきたドラえもんが解除ボタンを押してやっと元に戻るが、座布団に座るのを遠慮するパパを見て、みんながこんな風に思いやりを持てばいいのではないかと話すドラえもんであった。  

 (解説)現代は「消費社会」などと言われますが、ドラの話によると22世紀でも無駄遣いは問題になっているそうで、それに対する対処法を今話ではさりげなく提示しているような気がします。それはやはり「一人一人が思いやりを持つ」こと。ただそれだけのことでも、みんなでやっていけば大きな物になっていく、と言うことではないでしょうか。展開そのものは「モノモース」に類似した展開ですね。
ジャイアン殺人事件   10頁 小六85年2月号(ジャイアン歌手になる!?)
 野良犬の足取りさえ弾んでいる晴れた日、のび太とドラえもんはそんな天気を満喫するかのように歩いていたが、突然前方に不吉な気配を感じ立ち止まる。少し進んでみてそれがジャイアンの歌であることに気付いた二人だが、回り道をすると遠回りになってしまうので、耳をふさいで駆け抜け目的地である空き地へと入っていくが、ジャイアンはそこで歌を歌っていたので二人は結局歌を聴かされる羽目になる。ジャイアン自身は自分のひどい歌に対して平気だと言うことを話し合う二人だが、そこにジャイアンの歌をべた褒めする男が現れ、ジャイアンに何事か話し始めた。ジャイアンはその男が持参したカセットテープに歌を吹き込み、男は車に乗って去っていった。ジャイアンによると今の男は歌手養成学校の教頭で、ジャイアンの歌を校長に聴かせるためにテープに吹き込ませたのだという。自分の才能が認められたと喜ぶジャイアンだが、二人はにわかには信じられない。話を聞いたしずかも疑問を抱き、さらにスネ夫は驚くべき仮説を考えついた。教頭は寝ている校長に毎晩こっそりとジャイアンの歌を聴かせ、次第に弱らせてついには命を奪い、学校を乗っ取ろうと画策しているというのだ。「ジャイアン殺人事件」トスネオが名付けたこの事件の話を聞いて慌てる三人だが、そこにジャイアンが現れたので4人は驚いてしまう。のび太達は今の推理を話そうとするが、当のスネ夫はジャイアンが持って来た「スリムローラー」なるやせるための道具を見てジャイアンをほめる。一応調べることにしたドラえもんは「警察犬つけ鼻」を使って教頭の後を追い、やがて古びたビルにたどり着いた。そこでジャイアンの歌を校長に聴かせていた教頭は、これと同じ歌をそれなりに歌える人に歌わせ、「入学前と卒業後でこんなにも上達する」という宣伝を行うためにジャイアンの歌を使おうとしていたのだ。真相は分かったものの、真実をジャイアンに伝えるべきかどうか、悩むドラえもん達であった。  

 (解説)ジャイアンの歌で殺人事件を引き起こすなどと考えるスネ夫の発想が面白いですね。バカらしいことを大真面目に話しているところが特にウケます。「スリムローラー」の解説書で「使用前と使用後」という伏線をきちんと張っているところはさすがですね。初めて読んだ時はこの伏線に気付きませんでした(笑)。
のび太の模型鉄道   8頁 小三87年1月号(ポップ地下室とフエルミラー)
 正月早々、机に向かって何かを作っているのび太。のび太はおじさんからお年玉に9ミリゲージのセットをもらったので、鉄道模型を作っていたのだ。パネルにレールを敷き、立木や家を貼りつけてパワーパックを繋げて完成させたのび太は電車を動かして、自分で作ったことの達成感を味わう。みんなに見せに行くのび太だが、スネ夫は広い家にさらに大きなレイアウトを作っていたので、それを自慢されたのび太は広いレイアウトが欲しいとドラえもんに頼み込むが、せまい家ではどうすることもできないのでのび太はふて寝してしまい、ママからも怒られる。それを見かねたドラえもんは「ポップ地下室」を出して広い場所を作り、「フエルミラー」でレールをどんどん増やす。さらに木や家なども増やして徐々にレイアウトを作り始め、のび太は学校が始まっても家に帰ってくるとすぐに模型を作り始める。怒るママだがドラえもんに昼寝をしているよりはましだと説得される。発泡スチロールで山を作るための下地を準備し、シリコンに青いカラーインクを混ぜたものを流して川や海を表現した。そして完成した一大レイアウトをみんなに見せるのび太。ドラえもんはスモールライトでみんなを小さくし、みんなは実際に模型電車に乗って遊ぶ。模型に夢中になることでのび太の怠け癖も直るだろうと期待するドラえもんだが、のび太は新たに寝台車の模型にベッドを入れ、それからは毎日、スモールライトで小さくなっては寝台車で昼寝をするようになってしまうのであった。  

 (解説)作者である藤子F先生の、鉄道模型に対する思い入れが全開になっている話ですね。模型に関する知識を披露しているところはまるで「こ○亀」のようです(笑)。模型電車を作っても結局昼寝をしてしまうのび太の精神にも脱帽?ですね。スモールライトで模型電車に乗り込むという「夢」の部分もきちんと描いています。
ロビンソンクルーソーセット   11頁 小四83年5月号
 空き地でしずかとバドミントンで遊ぶのび太だが、そこにジャイアン達がやってきて代わりに遊び始めてしまう。のび太はしずかと二人っきりで遊びたいのだがいろんな邪魔が入ってしまうので、二人で無人島にでも行きたいなどと突飛なことを言いだしてしまう。それを聞いたドラえもんは「ロビンソンクルーソーセット」を出した。この樽のスイッチを押すと霧が出て、その中を進んでいくと無人島に漂着し、サバイバル気分を味わうことが出来ると言うのだ。だがかつて風呂場で溺れかけたこともあるのび太に貸すことをためらうドラえもんだが、のび太は強引に借りていってしまう。だがそれでも過去の凡例から、また失敗するのではないかと心配するのであった。しずかをボートに誘ったのび太は隠れて樽のスイッチを押し、のび太のボートの周りだけを霧が包んだ。しずかはのび太に変わって必死に漕ぐがなぜか公園ではなく海に出てしまい、二人は無人島に漂着する。のび太はしずかを励ますが、やはりしずかはのび太を頼りにしていないらしい。とりあえず住まいの家を作ることにしたのび太だが、ドラえもんが言ったセリフを思いだして不安になってしまうも、奮起して家づくりを始める。セットの中の「マイハウスガス」を木に吹きつけてキビガラのようにしてしまい、のび太は自分でも信じられないくらいの立派な家を作ってしまう。だがそれでも信用しないしずかは家に入らないが、雨に降られたのでさすがにしずかも家に入り、のび太は着替えを探しに外に出る。「キモノン液」を木の幹に注射して服みたいな葉っぱを作り出してしずかに渡す。雨が上がったので食料を探しに行くのび太だが、その後をしずかが追ってくるのを見て自分が頼りにされ始めたことを感じる。のび太は「食べ物さがしめがね」をかけて食べられる木の実だけを選び、しずかから感心される。しずかに木の実を任せてのび太は魚を取りに行くが、海に「魚型かまぼこのもと」をばらまいて本物の魚のように大きくした状態で持って帰る。二人は食事を食べるが、のび太はしずかから頼りになると言われたために思わず照れてしまう。幸せな気分に浸るのび太だがボロが出ないうちに引き返すことにし、再び霧を出してボートで公園の池にたどり着く。無事に帰って来られたことでしずか以上に喜ぶのび太は、何も失敗しなかったことで自信をつけるが、貸しボートの超過料金を請求され、ママに睨まれてしまうのであった。  

 (解説)ずっとうまく行っていた分、意外な形で出てきたラストのオチでの脱力感がたまりませんね。確かに道具を扱っている点では今回のび太は一度も失敗はしていないのですが、ラストでのこのズッコケ感は、それまでうまく行っていただけに余計笑いを誘います。ドラが「風呂場で溺れかけたことも」なんて、「うちのプールは太平洋」の話をさりげなく持ち出してくれるところもオールドファンには嬉しいですね。
ねじ式台風   7頁 小一82年10月号(ねじしきたいふう)
 息を吹いてボールを浮かべる遊び道具で高さ比べをするのび太とドラえもんだが、負けそうになったのび太が思いっきり吹いたためにボールは庭にまで飛んでいってしまう。取りに行ったのび太は昨晩の台風のために、庭にたくさんの落ち葉が散っていることに驚くが、ママから掃除をするように言われてしまい、仕方なく庭掃除を始めることにする。そこへ通りがかったジャイアンに掃除していることを誉められたのび太は自分は綺麗好きだからと返事をするが、それを聞いてジャイアンはのび太に強引に自分の家の庭掃除を押し付けてしまう。一向に戻ってこないのび太を心配したドラえもんはタケコプターでのび太を探し、のび太を助けるために「ねじ式台風」を出した。ドラえもんはネジを巻いて小さな台風のような風を起こし、散っている落ち葉をすべて一ヶ所に集めてしまう。のび太は続いて自分の家の庭や、道端に散っている落ち葉も全部集めてごみ箱に捨ててしまい、しずかが掃除で苦労しているのを見たのび太はそれも台風で片付けてしまう。さらに良い考えを思いついたのび太はみんなと空き地に行き、少し大きな台風を起こしてその風に乗って遊ぶ。だがそれを見たジャイアン達が道具を奪ってしまい、自分の家の庭で台風を起こそうとする。しかしあまりにもたくさんネジを巻いてしまったために強力な台風が発生してしまい、ジャイアン達も吹っ飛んだ挙句に庭木の葉が全部落ちてしまい、母ちゃんに叱られるジャイアンを見て、せっかく綺麗にしたのにまた散らかってしまったことを残念がるのび太達であった。  

 (解説)ページ数が少ないためか、余計な描写がなく簡潔に話が展開していっているのが特徴でしょうか。低学年誌の掲載作品に特有のことではありますが、そのためにストレートに道具の効能が紹介され、それを使っての遊びやしっぺ返しなどがわかりやすく描写されていますね。
具象化鏡   10頁 小六86年3月号
 また昼間からゴロゴロしているのび太に勉強をさせようとするドラえもんだが、のび太は勉強をしようとしないのでドラえもんはポケットから道具を取り出してスイッチを押す。すると周りに何やら空気の流れのようなものが出来てきた。ドラえもんはこれを「時の流れ」と説明し、時間を無駄にしないために勉強しろと話すが、実はのび太は今日のテストに備えて珍しく勉強をしていたのだが、結果は恐らく0点だろうと思い込んだのでやる気をなくしてしまっていたのだ。もう一度ドラえもんが先程の機械のスイッチを押すと、のび太の周りが急に暗くなった。「暗い人」という言葉を具象化したのだ。ドラえもんが出した道具は「具象化鏡」と言って、言葉の上の表現を実際に目に見えるように具象化させる道具なのだ。意味がわからないのび太はそのままスイッチを入れてみると、部屋に突然現れたキツネに顔をつままれてしまう。「キツネに顔をつままれたよう」なのだ。それを見て気を良くしたのび太は外に遊びに行こうとするが、ママから成績のことでネチネチとイヤミを言われ、「耳に痛い言葉」を受けてのび太はその痛みに苦しむ。また暗くなってしまうのび太だが、それを見たスネ夫が上機嫌に話を始めると突然スネ夫の体が真っ赤になった。「真っ赤なウソ」をついていることに気づいたのび太はそれを見て笑い、コロっと「明るい人」になって道具をしずかに見せに行く。ところがしずかは出木杉と仲良さそうに話しており、それを見たのび太は「嫉妬の炎」を燃やして全身を炎で包んでしまう。玄関先に水を撒いていた近くの人に消し止められたのび太だが、のび太は再び落ち込んでしまい、暗くなるだけではなく「絶望のどん底」にまで落ちてしまう。通行人に助けられたのび太だったが、今度は気分が沈みすぎて「重い心」、「重い足取り」になってしまい、暗闇に包まれた中でのび太は悲しみに暮れる。様子を見に来たドラえもんは何とかとりなそうとするが、のび太は「胸が張り裂けそうな悲しみ」などと言ってしまったために本当に胸が張り裂けそうになってしまったので慌てて食い止める。そこへ先生がやってきた。先生は暗闇の中にいるのがのび太だと知って、何か話をしようとするが、のび太はそれがテストの点が悪いために叱られるのだと思い込む。だが先生はのび太の今回の点数が65点だったと話し、それを聞いて暗闇の中に「希望の光」が差し込まれたのび太は「天にも上る心地」になってはしゃぎ始める。喜ぶのび太は「弾む足取り」で家に帰るが、その途中に綺麗な花を咲かせている梅の木を見て、春がそこまできていることを実感する。そんな時、どこからともなく大きな足音が聞こえてきた。怖がるのび太にドラえもんは、『あれは「春の足音」だよ。』と説明するのであった。  

 (解説)とうとう来ました。僕の一番好きな道具であり、そして大好きな話である「具象化鏡」。この話には元気一杯、表情豊かに走り回るのび太の魅力や、「言葉上の表現を具体化する」という秀逸な道具の設定、のび太が「暗く」なったり、道に大穴が突然あいてもみんなは平然としているというナンセンス性、イイ味を出しているエキストラキャラ達、そしてほのぼのとした優しい気分にさせてくれるラストのオチと、すべての描写が高レベルに描かれており、ドラの歴史の中でも間違いなく「傑作」の部類に入ると断言できます(笑)。途中までのナンセンスな笑いの世界からほのぼのとしたハートフルの世界に違和感なく移行し、その二つを組み合わせてもストーリー全体はまったく破綻していない。僕はこの作品は、最初期からドラえもんが備えている「ナンセンスギャグ」と、中期以降に見出された「ハートフル」の二つの主軸を一つにまとめあげた、ある意味「ドラえもん」と言う作品の一つの完成形態だと思います。
虹のビオレッタ   10頁 小四88年11月号(CMキャンデー発射機)
 ジャイ子が自費出版したマンガ・「虹のビオレッタ」をのび太とスネ夫に見せるジャイアン。スネ夫はおべっかを使ってこのマンガを誉めるが、ジャイアンにマンガを売りつけられそうになったので慌てて逃げ出してしまい、のび太も一緒に逃げようとするがポケットから持っていた500円玉を落としてもらったため、強引にマンガを買わされてしまう。ジャイアンはそれからもマンガを売りつけようとするが、友達はみんなすぐに逃げてしまい、それを見ていたジャイ子は自分に才能がないと思い始めてしまい、そんなジャイ子を想うジャイアンは絶対に本を売ることを誓うのであった。一方、ジャイアンにミニ四駆を買うためのお金500円を取られたと聞いて、自分のドラやき代も出資していたドラえもんは怒り出すが、自分がいろいろ道具を出しているのだからミニ四駆を諦めろと言い出し、どうしてもほしいのび太と言い合いになってしまう。そんなのび太に根負けしたドラえもんは仕方なく「CMキャンデー発射機」を出した。これに宣伝したい言葉を吹き込んでキャンデーを発射すると、それを飲んだ人はその言葉を連呼するようになるのだ。試しに「ミニ四駆」と言ってママにキャンデーを食べさせると、ママは会話の節々に何故か「ミニ四駆」という言葉を連呼するようになり、それを聞くうちに影響されてしまったパパは急いでミニ四駆を買いに行ってしまう。買った後に、なぜ自分が買ったのかと不思議がるパパだが、パパからミニ四駆をもらったのび太は早速空き地で遊び始める。そこに本の在庫を抱えたジャイアンがやってきた。ジャイアンは自信を失いかけているジャイ子のために何とか本を売ってほしいと土下座までしてドラえもんに頼み込み、仕方なくドラえもんも引き受けてしまうがどうすればいいのかわからない。のび太はCMキャンデーを使うことにし、通行人や先生、飼い犬にまで様々な人たちにキャンデーを食べさせ、CM効果でみんなにマンガを買わせていく。とりあえず安心するのび太だが、ドラえもんはみんなに無駄遣いをさせているように感じられて今一つ喜べない。しかしその場にいたマンガのコレクターと言う学生は、このマンガを描いた作者は今に有名になるかもしれないと話し、そうなると自費出版で出したこの本は、古本屋で十万円くらいの値打ちがつくかもしれないと話す。それを聞いた二人はマンガを売るのをやめ、たくさんの在庫を抱えて買いたがる人から逃げるのであった。  

 (解説)小学生なのに自費出版までしてしまうジャイ子はすごいですね。CMキャンデーを使っての宣伝にすぐ乗せられてしまう人たちの姿には、CMの宣伝にすぐ気を取られてしまいがちの現代人を揶揄している部分もあるかもしれませんね。でも、ミニ四駆よりはドラの道具のほうが面白そうだと思うけどな…(笑)。



前ページに戻る