てんとう虫コミックス第41巻


左、直、右、右、左…   11頁 小五、六90年2月号(進路アドバイザー)
 野球の対戦相手であるチラノルズに散々ホームランを打たれてしまうジャイアンズ。のび太は自分のせいで点が入ったわけではないと喜ぶが、ピッチャーであるジャイアンはあまりの悔しさに声も出せない。結局ジャイアンズは惨敗し、ジャイアンはその責任をのび太に押し付けて毎日三時間の自主トレをやるように命令してしまう。それを嫌がるのび太を見たドラえもんは「進路アドバイザー」を出した。困ったときにこれを使うと、進むべき道を教えてくれるのだ。「左 直 右…」と書かれた紙を見ながら、その通りに二人は道を進んでいき、指定された場所に到着した。そこで抜群のボールコントロールを持つ少年に出会った二人は、彼をチームに加えようとジャイアンに相談するが、ジャイアンズのエースピッチャーは自分だと言ってジャイアンが怒り出してしまったため、二人は逃げ帰ってしまう。しかし程なくジャイアンがのび太の下にやってきて、チームの勝利のためにマウンドを降りるという苦渋の決断を二人に話した。改めてあの少年を誘いに行くことにしたのび太は、またアドバイザーを使って少年の家を探し、チラノルズのキャプテンである寺野を近くで見かけたことに不審を抱きながらも少年の家に到着する。ところが少年は勧誘するのび太に対し、先ほどチラノルズのほうに誘われ、契約金代わりにマンガを三冊置いていってもらったと言う。話を聞いたジャイアンはマンガ五冊をスネ夫から徴収し、のび太を再び勧誘に行かせる。しかし今度は少年はチラノルズがくれたお菓子のことを話題に出し、のび太はアドバイザーに従って家に戻り、おやつのメロンを持っていってしまう。ところがさらに少年は苦手な勉強のことまで引き合いに出してきたので、のび太は出木杉に宿題を見てもらうよう頼み込む。困る出木杉から話を聞いたしずかは、その少年の横暴さに怒って抗議をしに行ってしまう。のび太のほうでは、また少年がチラノルズに入ると言い出していたのでのび太が慌てていたが、そこへやってきたしずかにまで失礼なことを少年が言ったために、ついに怒ったのび太は少年の勧誘を断って帰ってしまう。のび太はその時の勢いに乗って、ジャイアンにもはっきりと言うことにするが、ジャイアンの下に向かう間に興奮が醒めてしまったために怖がり出してしまう。ところがそこにやってきたジャイアンは、やはりマウンドを降りることはできないので、さっきの話はなかったことにしてくれと言ってきた。数日後、あの少年は実は親戚の家に遊びにきていただけで、もう帰ってしまったのだと怒ってジャイアン達に話す寺野の姿があった。  

 (解説)今話のゲストキャラクターは随分とパワーがありましたね。結局みんな彼に振り回されてしまったわけで、例によってその振り回され方が滑稽で面白いです。ただ道具的には少し面白みがないのが残念ですが、今話はストーリー重視の話なので、それもやむなしかなと思います。
みえないボディガード   10頁 小六85年6月号(かげながら)
 しずかは今晩家に誰もいなくなるので、一人で留守番することになったという。それを聞いて心配するのび太を軽く受け流すしずかだが、それでものび太は気がかりで仕方がない。そんなのび太に頼まれたドラえもんは適当な道具を探し始めるが、なかなかいい道具が見つからない。それでも四次元倉庫の隅にあった「かげながら」を出した。普段は何も見えないが暗くすることで見えるようになるこのロボットは、まさに陰ながら身を守ってくれると言う。二人にかげながらを届けられたしずかは、絶えず誰かに見られているような気がして仕方がない。夜になってしずかは一人なのをいいことに夜更かしを始めてしまうが、一方ののび太は気になって眠ることができず、ドラえもんを強引に説得してしずかの家まで様子を見に行くことにしてしまう。どこでもドアで行ってみると、ちょうど出口が浴槽の中につながってしまったため、お湯が全部流れ出してきてしまい、それでも家の中に潜入すると、それにいち早く気づいたかげながらが、二人をドロボーと認識して痛めつけ追い出してしまう。かげながらの性能をテストすることにした二人は「災難訓練機」で地震を起こすと、かげながらは一瞬でしずかを空き地まで連れて行ってしまう。だがそれでものび太は安心できず、さらに火事を起こして確かめると、かげながらはすぐにしずかを外に連れ出し、さらに消防車まで呼んでしまった。とりあえず正常に働いていることを確認した二人は家に帰ることにするが、しずかが眠るために部屋の電気を消すと、暗くなったためにかげながらの姿が浮かび上がってしまい、それを見たしずかはオバケだと言って怖がるのであった。  

 (解説)単純な話、今話はのびドラの「ありがた迷惑」が描かれているのでしょう。のび太は変に気を使ってしまっていますが、結局最後にしずかが怖がったのはかげながらそのものだったというオチが笑えます。のび太はかげながらのことを「頭が悪い」などと言っていますが、夜中にどこでもドアで侵入してくれば、誰だって怪しいと思うだろうね(笑)。
ハメルンチャルメラ   8頁 小二84年4月号
 絶叫して部屋に飛び込んできたドラえもん。ネズミが家に出没したと言うのだ。ネズミを爆弾で家ごと葬り去ろうとするドラえもんをのび太は落ち着かせ、ドラえもんは代わりに「ハメルンチャルメラ」を出し、これをネズミに向けて吹いてくれるようのび太に頼む。タンスの陰に向かってチャルメラを吹くと、そこからネズミが出てきた。のび太が吹き続けるとネズミは外へ出ていってしまう。これで吹かれると勝手に山の中に行ってしまい、しかも二度と降りてくることができないと言う。その時今度はママの悲鳴が聞こえた。ゴキブリが出てきたというので、ドラえもんはそのゴキブリもチャルメラで山へ送ってしまい、さらに生き物ではない庭の枯葉なども山に送ってしまった。物置を整理して出たゴミも全部山に送ってしまうが、それを見たしずか達に、のび太は一回10円でゴミ捨てを行うことにしてしまい、怒ったドラえもんはその場から立ち去ってしまう。たくさんのゴミを山に送ったのび太はさすがに疲れてしまったが、その時そばに置いてあったチャルメラを近くの子供に吹かれてしまい、のび太は山へと行かされてしまう。夜になってチャルメラを見つけたドラえもんはタイムテレビで事の顛末を知り、山へ行ってみるとのび太がどうしても山を下りられないと泣き叫んでいた。チャルメラを逆さにして吹けば戻ってくることが出来るのでドラえもんはチャルメラを吹くが、のび太だけではなく、その他のゴミがすべて戻ってきてしまうのであった。  

 (解説)ゴミを「山」という自分達の知らない所に捨ててしまうという発想は、「ないしょごみすてホール」とよく似ていますね。例によってネズミに大騒ぎするドラの様子も面白いし、何の脈絡もなく、突然現れた子供にチャルメラを吹かれてしまうのび太は最高です。そう言えば、「天つき地蔵」に続いてスネ夫は自転車を捨てに来ていたな…。
未来図書券   10頁 小五、六89年11月号
 なにやら映画のようなものを部屋で見ているのび太とドラえもん。それは未来の本で、字を読むのが苦手なのび太のために、ドラえもんがわざわざ「未来図書券」で購入したものだったが、のび太はやはり内容に興味を持てず、怒ったドラえもんは図書券を投げ出して部屋を出てしまう。やはりマンガを読みたいのび太はスネ夫のところへマンガを借りに行くが、空き地ではスネ夫がジャイアンに何かを見せていた。それはフニャコフニャオが「ハラハラコミック」に連載している「宇宙剣士バイロン」の最終回だった。まだ11月号が発売したばかりなのだが、これは12月号掲載分のゲラ刷りで、スネ夫はコネを利用してこれを手に入れたのだが、当然のび太は読ませてもらえない。悔しがるのび太だがその時未来図書券のことを思い出した。12月号のハラハラコミックも未来の本であることには変わりないので、早速図書券をポストに投函すると、家に帰った頃にはすでに本が届いていた。じっくり読んで楽しんだのび太はさらに新年号から始まるフニャコフニャオの新作も読もうと、再び図書券を使って本を取り寄せる。誰よりも早く新しい作品を読んだことで悦に浸るのび太はみんなに見せに行こうとするが、ただ見せるだけでは面白くないので、そっくりに描き写して持っていくことにする。それを読んだジャイアンとスネ夫も驚き、ジャイアンはこの原稿を借りることにする。楽しんだのび太だったが、ジャイアンから原稿を見せられたジャイ子もこのマンガに驚き、知り合いの雑誌社の人にまで見せに行ってしまい、その雑誌社の人がのび太を訪ね、12月号から「コミックドキドキ」に連載することにしてしまった。話を聞いてドラえもんは慌てるが、のび太は再び未来のハラハラコミックを図書券で購入し、それを読んで作品を描いていこうとする。しかし過去が変わってしまったためにフニャコのマンガは連載されなくなってしまっており、二人はタイムマシンで、さっきののび太がジャイアン達にマンガを見せる前に取り上げることにし、うまくマンガを回収したのび太は公園のくずかごに捨ててしまう。しかしそこに居合わせた本物のフニャコがそれを読んで感心し、このマンガを自分に描かせてくれとのび太に頼み込んできたので、二人は困り果ててしまうのであった。  

 (解説)タイムパラドックスを用いた初期の名作「あやうし!ライオン仮面」と、コンセプトはまったく同じで、フニャコ先生が登場するところも同じですね(笑)。アイデアは同じものではありますが、作品自体ははっきりと「別物」になっており、底の深さが窺い知れます。しかし、この中では2008年にタイムマシンが開発されることになっているんですねえ…。あと8年後ですよ。どうなることか(笑)。
つづきをヨロシク   10頁 小三89年6月号(つづきをよろしく)
 近くの小川で釣りに興じるのび太とドラえもんだが、二人とも魚が釣れないのでのび太は早々に諦めてしまう。ドラえもんは根気を出して釣ろうとするが、大事な用があることを思い出して釣りを続けられなくなってしまい、ドラえもんは「つづきをヨロシク」を出した。ここから出るガスを手につけるとすぐに固まって手袋のようになり、釣りをしながらその手を引き抜くと、あとはこの手袋が代わりに釣りをし続けてくれるのだ。ドラえもんは出かけるが、この道具を面白がったのび太は家に戻り、手始めに手袋に宿題をやらせ始める。次にしずかの所に出かけたのび太は、ピアノの練習で手を離せないというしずかのために、手袋を使ってそれにピアノを弾かせることにするが、しずかは出木杉の家に出かけてしまったのでのび太はふてくされてしまう。そこにジャイアンの歌声が聞こえたので空き地へ行ってみると、空き地ではジャイアンがスネ夫に歌を聞かせているところだった。スネ夫は頃合いを見て帰ろうとするが、スネ夫に拍手係を頼んでいたジャイアンはスネ夫を帰そうとしない。のび太はガスを使ってスネ夫に手袋を作らせ、それに拍手をさせることにする。これに気を良くしたのび太は調子に乗って、いろんな人にガスを提供することにしてしまい、犬の散歩や荷物運びなど、様々なことにガスを使ってしまう。すっかりくたびれたのび太は夜になってすぐに寝ようとするが、その時机の上の手袋に目がいった。なんと手袋は宿題の同じページだけをずっとやり続けていたのだ。のび太は止めようとするが手袋は一向に止めようとせず、逆にのび太を弾き飛ばしてしまう。その頃になって帰ってきたドラえもんは小川に行って釣りを続けている手袋にとり消しガスをかけ、手袋を消した。家に帰るとのび太が手袋と格闘していたので、手袋をガスで消したドラえもんは、手袋をたくさん作ったことを聞いて、手袋を作った人を一人一人まわることにするが、人数が多すぎるのでとても処理しきれず、ドラえもんはうんざりしてしまう。そこでのび太は今度は手袋を使って手袋を消していくことにし、最後まで道具に頼るのび太に、心底ウンザリしてしまうドラえもんであった。  

 (解説)あまりにもストレートな道具名ですね。こういった名前の場合は、全部カタカナになりそうなものですが、これは普通の文章と同じようにひらがなとカタカナが混ざっているので、僕としては少し気に入らないのですが。「融通の利かない機械」にしっぺ返しを受けるという構図はおなじみのものではありますが、やはり面白く描かれていますね。
ぼくミニドラえもん   10頁 小六87年4月号(ミニドラえもん)
 ドラえもんに何かを頼むことをみんなに約束したのび太は足早に家に帰るが、家ではドラえもんがネコに何かを相談されていた。のび太は今日出された「身近な野鳥の観察」のために山に行こうとみんなで考え、そのためにドラえもんに頼もうとみんなで話したのだが、ドラえもんは先程のネコのいとこが行方不明になったというので探しに行くことにしてしまい、のび太を振り切って出かけようとするが、泣いて喚くのび太のために「ミニドラえもん」を出し、これで間に合わせるように言って出かけていく。のび太はミニドラにタケコプターを出してもらうが、小さすぎるために飛んでものび太の重さを支えきれず、結局着地してしまう。みんなにミニドラを紹介したのび太はどこでもドアで山に出かけることにするが、ドアも小さいのでとてもくぐることができない。そこで今度はスモールライトを出してもらって小さくなってから行くことにするが、スモールライト自体が小さいためにのび太達もほこりのように小さくなってしまい、風が吹いただけで舞ってしまった。それでもどうにか山に着いたのび太はジャイアンとしずかを元に戻し、ジャイアンの鼻の穴に入っていたスネ夫も元に戻した。早速鳥を見つけた二人は観察しようと双眼鏡を出してもらうが、それもまた小さいので使い物にならず、スネ夫は天文台を出してもらい、そこから望遠鏡だけ外して使うことを提案する。それぞれ鳥を観察して宿題を終えた4人は、ミニドラの出したラジコンで楽しく遊ぶ。おなかがすいたのでグルメテーブルかけを出してもらうが、それも小さすぎるので、スネ夫がどこでもドアからママに頼んでおやつをもらうことにするが、小さいどこでもドアからスネ夫の手だけが突き出てきたのを見て、スネ夫のママは仰天してしまうのであった。  

 (解説)ファンの皆様お待たせしました、ミニドラの登場です(笑)。これは86年にコロコロコミック誌上で行われた「読者が考える道具コンテスト」に於いて入賞した作品をそのまま使っています。その昔、「幼稚園」誌上にて一度だけミニドラが登場したことについてはいずれ触れるとして、今話はそのミニドラ紹介編と言うべき内容で、それらしいテーマもないのに、ほのぼのとした印象をもっています。いつもの道具を小さくしただけで起こるギャップを楽しく描いていますね。
出ちょう口目   8頁 小三85年5月号
 みんなに自分が体験した奇妙なことを話すスネ夫。ほんの少しの窓の隙間から何者かが侵入し、スネ夫のマンガをベトベトに汚していったのだと言う。スネ夫はドラえもんが何か道具を使ったのではないかと考えるが、ドラえもんはまったく身に覚えがない。そんなドラえもんにのび太は「自分にだけマンガを見せてくれなかった天罰」だと言うが、ドラえもんは釈然としなかった。家に帰ってくると宿題をするようママに言われたためにのび太は宿題を始めるが、突然「表でドラ焼きが待ってる」などとウソをついてドラえもんを部屋から追い出し、我に返ったドラえもんが部屋から戻ってみると、なぜかのび太は宿題をスラスラと解き、しかもそれが全問正解だった。そこへケーキを焼いたと言うしずかからの電話をもらったのび太は、ご馳走になりにドラえもんと一緒に出かけるが、途中で野球に行こうとしていたジャイアンに会ってしまい、家の留守番を押し付けられてしまう。その頃しずかの家では、同じく来ていた出木杉が不思議な体験談を話した。つい先程、窓から目玉と口が入ってきて、口で宿題のページをめくりながら、宿題を見ていったと言う。その話を聞いて猜疑心を深めるドラえもん。果たしてそれらはすべてのび太のせいであり、のび太はドラえもんのいない間にデパートから送られてきた「出ちょう口目」を無断で使っていたのだ。目も口ものび太のものとまったく同じように動き、それを使ってのび太はしずかのケーキを平らげ、さらに野球をしているジャイアンまで驚かせてしまうが、スネ夫によって捕まえられてしまう。ジャイアン達は家に口目を持って帰ってくるが、のび太は知らない振りをして家に帰る。だがジャイアン達が口目をコショウぜめにしたためにのび太も苦しみだしてしまい、のび太はドラえもんに助けを求めるが、ドラえもんはのび太を懲らしめるためにそ知らぬ振りをするのであった。  

 (解説)冒頭は道具が出てこずに話が進行し、少しミステリアスな雰囲気も醸し出していますね。しかしいきなり口と目が入ってくれば、誰だって驚くよな(笑)。のび太のあからさまなウソに引っかかって外に飛び出していってしまうドラの姿がバカらしくてまた良ろし。
マジックの使い道   10頁 小四89年11月号(物体変換クロス)
 家でみんなにマジックを披露するスネ夫を見てしずかとジャイアンは感心するが、のび太はそれをバカにして、自分がもっとすごいマジックを見せると言ってふろしきのようなものを取り出した。テーブルにそれをかぶせてウサギに変えてしまったり、元に戻したりしたのび太はみんなに不思議がられるが、それを振り切ってのび太は家に帰ってきた。ドラえもんは先程のふろしきを返してもらおうとするが、しずかに種明かしをすることになっていると言う。実はさっきの手品はこのふろしき・「物体変換クロス」で行われたものだった。これは二つの物体の位置を瞬間的に交換する道具で、試しにしずかがバットを花と変えてみると、バットは花になり、一階では生け花をしていたママが、突然花がバットに変わったのを見て驚いていた。だが未来道具の力だと知ったしずかは興醒めして帰ってしまい、ドラえもんはクロスを返してもらおうとするがのび太はまだ使いたがり、試しに宿題をするために自分のノートと出木杉のノートを入れ替えてしまい、さらに自分のノートを取り戻すためにドラえもんと交換してしまう。部屋に突然現れたドラえもんを見て驚く出木杉。宿題を終わらせたのび太はお使いを頼まれたので、品物を全部お金と交換して手に入れてしまい、さらにスネ夫のラジコン飛行機と紙飛行機を交換してしまうが、ラジコンにクロスが引っかかったままでラジコンが飛んでいってしまい、慌てて取りに行くのび太はママにお使いのお釣りを渡すよう言われたり、ドラえもんから出木杉のノートを返すように言われるのを無視してラジコンを追いかけるが、結局ラジコンは墜落してしまった。追ってきたドラえもんたちから逃れるために、クロスを使って屋根の上にいるネコと入れ替わるのび太だが、これからどうやって降りたらいいのか、屋根の上で悩むのであった。  

 (解説)全体的にのび太が元気よく走り回っている印象が強く、そういう意味では初期の作風に近い作品と言えるかもしれません。「たねなしマジックハンカチ」と似ている部分もありますが、基本的には別物ですね。セリフの中に「ミスターマリック」が出てくるのが時代を感じさせますが、今でもこの人は時々出てくるし、「古い」わけではないですよね。
野比家は三十階   10頁 小三89年8月号(高層マンション化エレベーター)
 駅前にできた15階建てマンションに引っ越してきたと言う友達の家についていったのび太達は、高層マンションの部屋にすむことの良さを見て、スネ夫までもが羨ましがってしまう。のび太もマンションに引っ越そうなどと言い出すが、無論そんなことができるはずはなく、パパは人間は大地に住むのが一番いいとのび太を諭すが、聞き入れないのび太はしつこくドラえもんに文句を言い、ドラえもんは試してみようと何かを出そうとしたが、昼間にやっては騒ぎになるとのことで、夜中の2時ごろまで待つことにする。心待ちにするのび太だがグッスリ眠ってしまい、のび太を起こすだけでドラえもんは一苦労してしまう。ドラえもんは「高層マンション化エレベーター」を使って家ごと30階の地点まで持ち上げようと言うのだ。「亜空間コネクター」をつけて電気やガスを使えるようにしてから、家を30階の地点まで浮かばせる。お茶を飲みながら景色に見とれる二人だが、唯一地上と繋がっている玄関に誰かが訪ねてきたので、二人は応対に出てみると、隣の家の人が酔っ払って家を間違えていただけだった。起きてきたママを眠らせた二人は、今度は家を展望台のように回し、四方の景色を眺める。ところが風が出てきたので、台風警報が出ていたことを思い出したドラえもんは窓を閉める。その時誰もいないはずの二階の方で物音がしたので行ってみると、なんと泥棒が侵入していた。しかしここが30階であることを知らない泥棒はそのまま飛び降りようとしてしまい、ドラえもんは泥棒にパラシュートをつけさせて事なきを得る。しかし隠しておいたのび太の0点の答案が飛んでいってしまい、今度はそれの回収に苦労してしまう。それらの騒ぎでまた起きてきたママたちを「グッスリガス」で眠らせる二人だったが、今度は台風の直撃を受けてしまい、翌朝になっても家族全員が船酔いにあったかのようにフラフラになってしまい、のび太は高い所はもうこりごりだと話すのであった。  

 (解説)どんな所にもメリットだけのところと言うものはないということで、どこでもそれなりのデメリットはあるものなんですね。ギャグ仕立ての話ですが、今話に隠されていることと言うのは、パパがのび太に話した『人間は地面に足をつけて生きるのが自然なのだから』という考えではないでしょうか。もちろん今話にはメッセージ性はありませんが、こういうさりげない部分で本質を突くようなセリフをキャラに言わせているところが、ドラ世界の魅力のひとつだと思います。
時限バカ弾   8頁 小三85年7月号
 しずかや出木杉と一緒に下校するのび太だが、出木杉がディズニーランドに行ってきた事を話そうとするたびに、のび太が下らないダジャレを言って場を白けさせてしまい、ついにはしずかに追い払われてしまう。怒って家に帰るのび太だが家ではママが待ち構えており、二時間はお説教されると睨んだのび太はドラえもんに助けを求めるが、すぐママに呼ばれてしまう。ドラえもんは「時限バカ弾」を出し、タイマーを5分後にセットしてママにくっつける。5分経ってバカ弾が爆発すると、突然ママは意味不明なことを叫びながら、意味不明な行動をとり始めた。それを恥ずかしがったママは説教を止めてしまう。バカ弾が破裂すると、誰でもバカなことをやってしまうのだ。それを聞いたのび太はバカ弾をいくつか借り、これを出木杉につけてしずかの前でバカな事をさせようと画策する。途中、道を歩いていたジャイアンを実験台にしてバカ弾を取り付けるが、ジャイアンはスネ夫に自分の新曲を披露しようとしていた。「悲しい歌」らしいその歌を歌い始めるが、すぐにバカ弾が破裂してジャイアンはバカな事をしてしまい、それを見て笑ったスネ夫は殴られてしまう。出木杉にバカ弾をセットした上で一緒にしずかの家に行こうとするのび太だが、出木杉は水溜りの水をかぶってしまったので服を取り替えてしまい、家の中で母親の変な声が聞こえたのを無視してのび太は出木杉をしずかの家に連れて行く。バカ弾が破裂する時間は刻一刻と迫るが、破裂寸前になって偶然しずかがバカ弾を見つけて手に取ってしまったので、のび太は慌ててそれを取り上げるが、その瞬間にバカ弾が破裂し、のび太は二人の前でバカな事をしてしまうのであった。  

 (解説)これはホントにショーもない道具ですねえ(笑)。道具自体が「バカな事をしてしまう」という、ただそれだけの道具なのですが、それによる各人の壊れ方がすさまじいですね(笑)。まさに「爆笑必至」の快(怪?)作でしょう。掲載当時にできたばかりの「ディズニーランド」を話題に出しているのも時代を感じますね。
世界の昆虫を集めよう   10頁 小四86年7月号(昆虫集め)
 スネ夫からたくさんの昆虫標本を見せられるのび太としずかだが、これらがデパートで買ったものだと聞いたのび太は思わずスネ夫をバカにしてしまい、のび太は売り言葉に買い言葉で自分ももっと珍しい昆虫を集めると宣言してしまう。もちろんのび太はドラえもんを当てにしての発言だったが、当のドラえもんは下らない競争で虫を集めようとするのび太の態度を厳しく非難し、のび太は一人でどこかへ飛び出していってしまう。少し冷たすぎたかと考えるドラえもんだが、そこへジャイアンとスネ夫が訪ねてきて、のび太がいないことを聞いた二人は後でのび太をいじめると話すのだった。のび太は裏山で虫を追い掛け回していたが一匹も捕まえることができず、やってきたドラえもんは「昆虫マーカー」を取り出して、のび太が追いかけていたチョウにマーカーをつける。のび太を連れて家に帰ってみると、なんと家にあった虫かごに先ほどのチョウがおり、しかもその虫かごには網などがかかっていなかった。先程のマーカーをつけられた虫は、「かんさつ虫かご」でいつでも見ることが出来るのだ。早速いろんな虫にマークをつけに出発したのび太は、普通の虫や、さなぎになっているチョウ、そして水の中の虫までたくさんの虫にマークをつける。さらに「昆虫探知カード」をどこでもドアに貼り付けることで外国の虫も取りに行くことにする二人。二人がいない間に部屋に上がりこんだジャイアン達は、部屋に置かれている虫の数に驚き、どこでもドアを通って自分達も虫を取りに行ってしまう。その間に帰ってきたのび太達はどこでもドアを消して、他の場所へ虫を取りに行ってしまう。そして夜に寝静まった頃、虫かごの中から泣き声がするので見てみると、どこでもドアが消えてしまったために帰れなくなっていたジャイアンとスネ夫が映っているのであった。

 (解説)生きたままで虫を集めるということについての究極の理想を、いとも簡単に、そして楽しく描いています。虫集めに関する話も初期の頃から必ず出てくる話で、どちらかと言えば「定番」の部類に入る作品ですが、今話はストレートに道具の魅力が描かれていて、思わずほしくなってしまうような気分にさせられますね。
落としものカムバックスプレー   10頁 小四89年9月号(落し物カムバックスプレー)
 部屋に置いてあるマンガ本をすべてママに捨てられてしまったのび太。のび太に勉強させるためという大義名分ではあったが、のび太は深く落ち込んでしまう。ドラえもんは最初こそ静観していたものの、のび太が深く反省しているのを見て、「マンガはもうすぐ帰ってくる」と、意味不明なことを言い出す。すると本当に捨てられたマンガ雑誌や本が空を飛んで部屋に帰ってきた。ドラえもんは「落としものカムバックスプレー」を事前にマンガにかけていたのだ。これをかけておくと何があっても持ち主のもとに帰ってくると言う。ドラえもんに感謝したのび太は早速そのスプレーの効力を自分でも確かめようと、野球ボールにスプレーをかけて窓から放り投げ、戻ってきたのを見て感心する。のび太は部屋中のものにスプレーをかけ始めるが、勢い余ってのび太にお使いを頼みに来たママにもスプレーをかけてしまう。先程のことをまだ忘れていないのび太はお使いに行くのを断り、ママに叱られても動じないので仕方なくママがお使いに行くことにする。しずかにスプレーを見せに行くのび太だが、しずかはスネ夫と一緒にスネ夫の家にビデオを見に行くところであり、のび太も同行することにする。体がほこりっぽいことをスネ夫に注意されたのび太はほこりをはらうが、スネ夫は自分の家はきれい好きだとうるさく言って、煎餅の食べ方にまで文句を言う。スネ夫の見せるビデオとは緑が原でキャンプした際のホームビデオであり、しばらくはその様子を黙ってみるのび太だが、クワガタムシやカブトムシがたくさん採れたということを聞いて、のび太は早速緑が原まで虫を捕まえに向かう。だが虫はどこにもおらず、キャンパー達が残したゴミばかりが目に付く。土地の人から虫の出やすい時間の事を聞いたのび太はがっかりするが、その人がキャンプ場のゴミを集めているのを知ったのび太はキャンプ場のゴミすべてにスプレーをかけ、ゴミを全部捨てた人のところに帰してしまう。のび太も帰るが、家の近くではママが無くした財布を探していた。のび太は二度とマンガを捨てないことを条件に財布のありかを教えることにし、のび太の言う通りに家に戻ってみると財布が戻ってきていた。先程ママにスプレーをかけてしまった時に一緒に財布もかぶってしまっていたのだ。その頃スネ夫の家には、緑が原に捨てた大量のゴミが舞い戻ってきていたのであった。  

 (解説)ストロンガーとクウガを捕まえに行ったのか…。ベタなネタですいません。一度言ってみたかったんです(笑)。
 閑話休題。今回登場の道具は「位置固定スプレー」とほぼ同じ効果をもつ道具ですが、今話はむしろストーリー面の方で差異が見受けられます。旧来の作品に比べるとかなり露骨に「エコロジー」の要素を含ませており、説教話や教訓話というわけではありませんが、明確なテーマとして扱っています。最後期の作品にはこういうタイプの話が結構あったりしますね。オチには少しばかり皮肉めいたものも混じって…いるかな?
無人島の大怪物   21頁 小四81年9月号(変身リングとカード)
 暑い盛りの夏、しずか達はドラえもんに頼んで海に連れていってもらおうとするが、のび太はなぜかドラえもんがいないとウソをつく。しかしすぐにドラえもんが現れ、それでものび太は「どこでもドアが壊れている」などと言って、何とか止めようとするがドラえもんは事情がわからずにみんなを海に連れて行くことにし、のび太はドラえもんを睨み付ける。五人は人気の無い無人島にやってくるが、そこに来てみんなはのび太が泳げないことを思い出し、のび太を放って三人だけで遊び始めた。のび太はこれが嫌だったからみんなを海に連れて行きたくなかったのだ。悔しがるのび太にドラえもんは「変身リングとカード」を出すが、これは簡単過ぎると言ってドラえもんはそれを草むらに捨て、代わりに「スパルタコーチ」を出してのび太につけさせる。だがこれは泳げない人を無理やり海に引っ張りこんで強引に泳ぎの練習をさせる機械だったのでのび太は嫌がってしまうが、のび太のためを思えばこそとドラえもんは無視してみんなの所に戻る。くたびれ果てたのび太は機械に石をぶつけて壊し、ようやく外すことに成功する。そして先程ドラえもんが捨てた道具を探し、見つけたその道具に付属している説明書を読んで、好きな動物に変身できる道具であることを知る。試しに魚のカードを入れて下半身だけリングをくぐらせてみると下半身だけが魚に変身し、のび太は海を軽やかに泳ぐ。のび太を放って遊んでいるみんなをからかうが、有効時間である15分が経ってしまったのでのび太は溺れてしまう。変身する際に服を脱いでいたために素っ裸ののび太をみんなは笑うが、ドラえもんはのび太がリングを使ったことに気づき、逃げるのび太を追いかけるが、ネズミに変身したのび太を見て気絶してしまう。みんなは手分けして食べ物を探し始めただが、その隙を見計らってのび太はライオンや大蛇に変身し、スネ夫とジャイアンの水着を破いて裸にしてしまい、しずかは恥ずかしがってしまう。みんなはどこでもドアの下に急ぐが、ワシに変身して先回りしたのび太がドアを隠してしまい、みんなは困り果ててしまう。
 のび太は一旦家に帰っておやつのナシをもらい、島にいるみんなにそのナシを持っていく。さらにやたらとかっこいいことを言ってしずかから尊敬のまなざしを受けてしまう。しかしみんなは先程見た猛獣が幻覚ではないかと思い始めたので、のび太はさらに驚かすために恐竜に変身し、さらに自分が八百長試合で恐竜に活用しむけることにし、恐竜役になってもらうためにドラえもんを探しに行く。ドラえもんを探すのび太だが、そこになぜか恐竜が現れた。ドラえもんが変身したものだと考えたのび太は安心して近づくが、別のところからドラえもんがやってきたのを見て、その恐竜を本物と思い込み、ものすごい叫び声を上げて気絶してしまう。ドラえもんも怖がるが、実はそれはただのトカゲであり、のび太のいない間にリングをくぐっていたのだ。そこへやってきたみんなは素っ裸で気絶しているのび太を見て笑うのであった。  

 (解説)男性キャラクターがどんどん素っ裸になっていくところがバカらしくて楽しいですね(笑)。ただ内容的にはてれびくん版「ターザンパンツ」のように、ストーリー全体が間延びしている印象があり、21ページという総ページ数を十分に生かしているとは言いきれない部分があります。まあそれを抜きにしても、無人島での騒ぎっぷりは存分に楽しめますね。
恐怖のディナーショー   10頁 小四89年8月号(ジャイアンのディナーショー)
 町中の子供達の動きがあわただしいと思ったら誰もいなくなってしまった。この異常事態にただならぬものを感じるのび太とドラえもん。ドラえもんがなにやら不吉な予感を抱くが、その予感どおりにジャイアンが家にやって来た。ジャイアンはなんと「ディナーショー」を開こうと言うのだ。料理もジャイアンが作ると聞いて、かつてジャイアンが作った料理を思い出して思わず本音を口走ってしまう二人。それでも二人は仕方なくショーの準備を始め、のび太はチケットを配りに行くが、スネ夫を始めみんなは仮病や居留守ばかり使って誰もまともに応対してくれない。のび太はやむを得ずしずかを訪ねるが、しずかをショーに連れて行くのはあまりにもしのびないので帰っていく。空き地ではジャイアンのリハーサルが始まっていたが、チケットが一枚も売れていないことを聞いて二人は善後策を話し合う。その時裏山で出木杉を見かけた二人は彼にショーのことを話し、困りながらもチケットを買ってくれた。そして出木杉のアドバイスから二人はジャイアンの母ちゃんにこのことを知らせに行くが、家の中からはものすごい異臭が漂っており、さらに母ちゃんは慰安旅行で出かけていると聞いてがっかりする。ドラえもんは「お天気ボックス」で台風を作ることにしてジャイアンにそのことを知らせようとするが、あまりの異臭にジャイ子は家を飛び出し、ムクは気絶してしまった。しかもジャイアンは台風程度で中止はしないと意気軒昂に宣言し、仕方なく三人は覚悟を決めて歌を聴くことにする。しかし開始時間を過ぎてもジャイアンは姿を見せない。そこへジャイ子が現れ、ジャイアンが自分の料理を味見したら気絶してしまったことを話す。それを聞いた三人は涙を流して喜ぶのであった。  

 (解説)いつもの歌と「ジャイアンシチュー」で披露した料理がセットでくるとなれば、それぞれの対応も尋常ではすみません。今回はスネ夫まで泣き喚きながら断ったり、リサイタルには無関係と思われていた出木杉も絡んできたりして、いつもよりも世界が広く描かれていますね。ジャイアンの家からの異臭でトンボが落っこちてしまうところが芸コマです。しかし、しずかののび太に対する対応は結構ひどいものがあるなあ(笑)。あんなこと言われてチケット渡せるわけないじゃん。計算してたのか(笑)?
気まぐれカレンダー   11頁 小五、六89年7月号
 夏の強い日差しが照りつける中、ジャイアンから野球の練習にくるよう言われるのび太だが、熱いので外に出ることを嫌がるのび太は「冬の方がいい」と言い出す。そんなのび太をいつものことと思いながらもドラえもんは「気まぐれカレンダー」を出す。このカレンダーの日付を変えると、気候がその日付の季節と同じになるのだ。二月にセットしたので一気に寒くなったものの、服を着込んで寒さをしのぐのび太は空き地にいるジャイアン達の所に行き、練習を中止するよう言う。雪まで降ってきた中を帰るのび太だが、のび太はカレンダーの日付をクリスマスに変えてしまい、クリスマスプレゼントをママに買ってもらう。のび太は一緒に遊ぼうとしずかの下に行くが、しずかは今日プールに行くことにしていたことを聞き、のび太はカレンダーを使って元の日付に戻してしまう。だがしずかは出木杉とプールに出かけてしまい、のび太はまた冬に戻そうとするが、家におじさんが来ていることを知って今度は日付を元旦に変えてしまい、両親やおじさんからお年玉をもらい、さらにどこでもドアを使って親戚を訪ねまわってお年玉をもらってしまう。のび太は調子に乗って、しずかにプレゼントを贈るために今日をしずかの誕生日にしようとするが、その時地震が起きたと思ったらにわかに暑くなってきて、しかもカレンダーが動かなくなってしまった。慌てて駆け込んできたドラえもんは地軸に関係しているこの機械の仕組みを説明し、のび太がやたらと気候を変えたために地軸の回転が止まり、地球が太陽に吸い込まれる状況になってしまったことを話す。のび太は自分のしたことを後悔するがドラえもんにもどうしようもない。仕方なく「宇宙救命ボート」で野比家の人間を乗せて宇宙に脱出することにしたが、のび太はしずかを連れて行くためにしずかの家に向かう。だがその間にボートが発進してしまった。絶望感に苛まれるのび太だが、そこになぜか平然とした顔でドラえもんが現れた。今までのことはのび太を懲らしめるために「災難訓練機」を使って行っていたことであり、怒るのび太にドラえもんはエイプリルフールに設定したカレンダーを見せるのであった。  

 (解説)いつのまにか災難訓練機にはものすごい機能がついていたんですね(笑)。日付を変える道具というのは「日付変更カレンダー」で登場済みですが、今回は気候まで変わってしまうという点で差別化を図っています。途中までの展開はオーソドックスですが、終盤の大掛かりなウソは、これまでの「4月バカ」ネタの中でも群を抜くでしょう(笑)。ラストのコマで仲良くベロを出しているパパママとおじさんがおかしいですね。
いつでもどこでもスケッチセット   10頁 小四89年7月号
 写生を宿題に出されたのび太だが、絵を描くのが苦手なのび太はやる前から嫌がってしまう。そんなのび太にドラえもんは楽に絵を描く道具はないと前置きした上で、苦手でも一生懸命に描くよう諭す。のび太は町を歩いて写生するためのスポットを探すが、いい景色が見つからない。とある工事現場に差し掛かった時、のび太はおじさんと出会った。おじさんは自分が子供だった頃、まだ空き地がたくさんあった頃の町を懐かしみながらのび太の家に向かっていった。のび太はしずかを描くことにして家に向かうが、先に出木杉が来ていたので一緒に描くことにする。描き終えた出木杉のスケッチを見てその巧さにみんなは感心するが、のび太は自分の描いた絵が下手すぎて見せられないので家に帰ってしまう。家ではパパとおじさんが二人で何か作業をしていた。二人で協力して子供の頃の町の地図を作っているのだが、店の並び順の問題で口論が始まってしまい、ドラえもんは事態を収集するために「いつでもどこでもスケッチセット」を出し、問題になっている30年前の駅前商店街の様子をスケッチする。機械を操作すれば、いつの時代のどんな場所でもスケッチすることが出来るのだ。それを見せて二人の口論を止めることに成功するドラえもんだったが、一部始終を見ていたのび太はこの機械を使ってしずかを描くことにし、機械を試しに操作してみると、以前行ってきた七万年前の日本でののび太達の様子が描き込まれた。改めてスケッチを始めるのび太だが今度はしずかの入浴シーンが描かれてしまい、やっとのことで普通のスケッチを手に入れる。早速それを見せに行ったのび太はしずか達に感心されるが、しずかはスケッチブックの他のページを見始めてしまう。地図が完成したのでドラえもんは安心して部屋に戻るが、のび太が機械を使った形跡があるのを見て、「スペア・スケッチブック」で今ののび太の様子を見ると、のび太がしずかにスケッチのことで痛めつけられている様子が描きだされるのであった。  

 (解説)ストーリーとは全然関係ありませんが、今話は初めて短編と大長編の世界観が統一された作品でもあります。劇中に出てきた「七万年前の日本」は「日本誕生」のワンシーンであり、今でも時々話題になる個所です。でも、あのシーンはホントは中国なんですよね(笑)。話的にはオーソドックスな展開ですが、やはりのび太の絵は強烈ですね。のび太が書いたしずかのスケッチのまわりに描かれている渦巻きは何を意味しているのか(笑)。ついでに言えば、宿題は「写生」なんだから「人物画」はいけないような気も…。
ふんわりズッシリメーター   10頁 小五、六89年12月号(フンワリズッシリメーター)
 いつになくぴりぴりしているママは、部屋を散らかしてマンガを読みふけるのび太を厳しく叱り、それを諌めようとするドラえもんまでなぜか叱りだしてしまう。さらにパパまで叱られてしまったのでのび太とパパはドラえもんに相談するが、さしものドラえもんも女性の心理には疎いので、ピンチヒッターとしてドラミに救援を求めることにした。三人でママの様子を観察すると、ママはボーっとして顔色も悪い。ママはおもむろに体重計のところに行って自分の体重を量り始め、体重が増えていることを知ってショックを受けていた。ドラミはママが太りすぎを気にしてご飯を食べていないので、お腹が空いてイライラしているのだと考え、「ふんわりズッシリメーター」を出す。レンズで相手を除くな柄メモリを買えてスイッチを押すと、その分体重が変動するのだ。それを二人に渡してドラミは未来に帰り、二人は早速試そうとするが、いきなり体重が軽くなったらママが怪しむのではないかと考え、一粒ごとに一キロ減っていくという名目をつけたチョコボールをママに渡し、ママは一粒食べたので一キロ体重を減らし、体重が減ったことを喜ぶママはゆっくりとご飯を食べ、機嫌が直ったことを聞いてパパも安心する。だがのび太は野球に誘われてしまい、嫌がりながらも仕方なく出かけることにし、ドラえもんもついて行く。一方ママはスネ夫のママに出会い、スネ夫のママが七キロの減量に成功したという話を聞いて自分もチョコボールを食べるが、まったく体重が減らないのを見て驚いてしまう。野球の試合はチャンスの場面で打順がのび太になってしまった。のび太はピッチャーフライに終わりそうだったが、ドラえもんがボールを風船のように軽くしてくれたのでボールが浮かび上がってホームランになってしまった。野球を終えたのび太はメーターを持ってしずかの家に行き、すべてのものを軽くしてしずかと共に空中遊泳を楽しむ。家に帰ってきたドラえもんはママがチョコボールを全部食べても体重が減らなかったことに腹を立て、のび太のマンガを全部捨てようとしているのを見て慌ててのび太を呼びに行く。のび太が急いで戻るとママはマンガをちり紙交換に出そうとしていたので、マンガを重くして何とか防ぎ、今度はママを軽くしようとするが間違えて重くしすぎてしまい、ママは地面にめり込んでしまう。再び救援を求められたドラミはママのメガネをフトメレンズのものに変える。目を覚ましたママがドラミを見ると、なぜかドラミがいつもよりも太って見えた。周りの人が全部太めに見えるレンズで、太めに見えるスネ夫のママを見たママは、自分はまだまだ大丈夫だと安心するのであった。  

 (解説)ママのダイエットについての話は「おもかるとう」でも描かれていますが、そちらではのびドラがすぐにおもかるとうでママを軽くしていたのに対し、今話ではチョコボールを使ったりしてなるべくソフトに対応していますね。ダイエットに対する考え方の変化でしょうか?体重が増えたからといって子供に八つ当たりしてしまうママはいけない人です(笑)。「流行性ネコシャクシビールス」でも出ましたが、ひげをはやしていると偉そうに見えるんでしょうかね?ドラみたいなネコひげでも(笑)。
深夜の町は海の底   10頁 小五、六90年3月号(深夜の町でスキューバダイビングを!)
 スネ夫が、自分の従兄弟がスキューバダイビングのベテランだという話を切り出した途端、ドラえもんは駆け出して行ってしまった。不思議に思ったのび太が追いかけて聞いてみると、ドラえもんはあの後スネ夫が自分もスキューバを始めることを話し、それを聞いてのび太がうらやましがるであろうことを察して、スキューバをこの場で行う準備をするために家に帰ってきたのだ。ドラえもんは「架空水面シミュレーター・ポンプ」、「架空水体感メガネ」、「かなづち用足ひれ」を出し、メガネと足ひれをのび太につけさせる。するとおもむろにドラえもんはポンプを動かして水を出し始めた。慌てるのび太だがこの水は架空水で、メガネをかけていない人には体感することは出来ないのだ。自動で動くポンプをそのままにして二人は空き地へ行き、空き地の木に魚のえさになる「トトスキー」をつけ、さらに海へ行って「架空海水まきぞえガス」のタンクを落とした。このガスを浴びた魚は架空水の中でも泳げるようになるのだと言う。そして夜。メガネと足ひれをつけて夜の町に飛び出した二人は、水浸しになっている町を見渡す。空き地まで泳いで行ってみると魚がトトスキーに集まってきており、満月を背に泳ぐ魚の群れや流れてきたヤシの実を見て楽しむ二人。二人はスキューバの様子を写真に取るが、その時大きな悲鳴が聞こえたので行ってみることにする。そこでは酔っ払いがサメを見たと警官に話しており、もちろん警官は信じないがそれを聞いた二人は急いでサメ探しを始める。途中でのび太は受験勉強中の学生の部屋を通るが、それを見た学生は不思議がって外に飛び出してくる。しかし今度はそこにサメが現れ、学生は仰天して逃げ出してしまう。ドラえもんはショックガンを使ってサメを海に追い返し、のび太はポンプのスイッチを切って架空水面を消してしまった。学生はサメを見たことを話すがもちろん誰も信じてはくれなかった。そして翌日、ガスに触れたために架空水に流され、とある家の屋根の上に漁船が乗っかっている様子を見ながら、のび太は学校へ向かうのであった。  

 (解説)「空中を海の中のように泳ぐ」という発想を具現化した道具は古いものでは「ソーナルじょう」がありますが、今話登場の道具はその集大成と言うべきものでしょう。空中に完全な海の世界を作ることで、水中とも空中ともつかない幻想的な世界を作り上げています。中盤まではそうなのですが、後半の展開は少しありきたりになってしまった感も否めませんね。ですがラストの不条理感あふれるオチはドラらしいオチで楽しいです。



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