てんとう虫コミックス第42巻


町内突破大作戦   11頁 小五、六90年4月号(町内突破大作戦!!)
 下校時間を過ぎても家に帰ってこないのび太を心配するドラえもんは、宿題をし忘れたから居残りさせられているのかと考えるが、案の定のび太は居残りをさせられており、たくさんの宿題量にうんざりしたのび太は先生の目を盗んで学校を抜け出してしまう。のび太は家に帰るが、空き地で野球をしていたジャイアン達の野球ボールにぶつかってしまい、怒って投げ返した時にあさっての方向に飛んでしまい、神成さんの家の窓ガラスを割ってしまう。犯人を連れてくるよう言われたジャイアン達は全員でのび太を追いかけ始め、のび太は何とか逃げるものの、ジャイアンはスネ夫に賞品を出させてまでのび太を捕まえようとする。家でママが怒り出したのを見たドラえもんは「コンビパトボール」を出してのび太を探すと、のび太はみんなから逃れて裏山に避難していた。事情を聞いたドラえもんだがどこでもドアやタケコプターも修理中で使えないため、ドラえもんは「コノ道トーリャンセチャート」を出し、家から裏山までの地図を作ってから「障害チップ」をチャートにくっつける。のび太を狙っている敵をチャートで逐一観察しながら、ドラえもんはパトボールを使ってのび太を家まで誘導することにする。ドラえもんの指示通りにのび太は敵を避けながら家に向かうが、道の両側から挟み撃ちになってしまったために近くの家の庭に侵入してやり過ごすが、その時に犬を踏んづけてしまったために犬に追いかけられる羽目になってしまう。仕方なくドラえもんは「チップストッパー」を使って犬を止めるが、この道具は止め方が荒っぽいので犬は看板の下敷きになってしまう。家に行くまでに遠回りばかりしてウンザリしてしまうのび太だが、やっと家の近くまで到達することに成功し、最後の気力をふりしぼって走り出すが、突然黒チップが出現した。ジャイアンが近くのダンボール箱の中に隠れて待ち伏せしていたのだ。だがそこにジャイアンの母ちゃんが現れ、ジャイアンを厳しく叱り始めたのでジャイアンは逃げていってしまう。敵がいなくなったそのスキにのび太は家に駆け込むが、家の中に黒チップが2つもあることに気づいてドラえもんは驚く。一階に降りてみると、居残りの途中で抜け出したことで家にやって来た先生と、先生から話を聞いたママがのび太を叱っているところであった。  

 (解説)「日常の中の大事件」といった感じがして、個人的には好きな雰囲気を持っている作品です。今話については、タケコプターやどこでもドアが修理中だということで、新しい道具を使う必然性がつけられていますね。でも、犬が看板の下敷きになって「荒っぽい」とドラは言っていますが、かつてのび太は落下する鉄骨にぶつかったり(「悪の道を進め!」)、車にはね飛ばされたり(「百苦タイマー」)と、いろんな目にあっているんですよね(笑)。
断ち物願かけ神社   10頁 小四89年2月号
 今日もジャイアンとスネ夫にギタギタにされてしまったのび太は仕返しをしたいとドラえもんにせがむが、ドラえもんは願いをかなえるためにはそれなりの努力をしなければならないと説教する。しかしドラえもんも、のび太が体を鍛えたくらいでケンカに勝てるとは思えないので、「断ち物願かけ神社」を出した。お札に断ち物を書き、それを神社の穴の中に入れて願い事をすれば、お札に書いたものが断たれてしまう代わりに願い事が叶うのだ。のび太は嫌いな魚を断つことにして神社にお札を入れてジャイアン達の下に向かうが、一瞬で返り討ちにあってしまう。この道具は大好きな物を断たなければ効果がなく、さらに一年は断たないと効き目がないというので、のび太は何を断つべきか悩んでしまう。しばらく考えることにしたのび太はパパが禁煙で悩んでいるのを見て、パパがタバコを断つ代わりに自分の願いを叶えることにする。本当にタバコが吸えなくなったのかを確かめると、パパが吸おうとした時にママがコーヒーをタバコにこぼしてしまい、さらに買いに行っても店も休みで自動販売機も故障していた。それを見て安心したのび太は改めてジャイアン達の下に向かうが、直前になってドラえもんが現れて、他人の断ち物では全然効き目がないことを話したために、のび太は慌ててジャイアン達から逃げる羽目になる。その頃のび太の部屋では、のび太が様々な断ち物候補を書き込んだお札が風で散らばってしまい、それをママが神社をゴミ箱と勘違いして全部中に入れてしまう。大量の断ち物を入れたことで神社は今すぐに望みを叶えることにし、それを見たドラえもんは仰天する。ジャイアン達に捕まってしまったのび太は逆にジャイアン達をギタギタにやっつけてしまい、のび太はジュースで乾杯しようとするが販売機から飛び出たジュースがドブに落ちてしまったので飲むことが出来ず、さらに友達にマンガを読ませてもらおうと思っても逃げられてしまい、しずかにも逃げられてしまう。その様子を見ながら、事情を説明するべきかどうか悩むドラえもんであった。  

 (解説)原作最後期においても、のび太はやっぱりいじめられっぱなしなわけですね(笑)。例のごとく道具の効用を早とちりして先走るのび太がおかしいですが、ドラも最初から詳しく説明しておけばいいのに(笑)。この後の展開がどうなったのかが非常に気になるところではありますね。
けしきカッター   10頁 小四86年3月号
 写生の宿題を出されたのび太は公園で絵を描くが、どうもうまく描くことが出来ず、しかも絵が下手なために周りに人が集まって笑い始めたので、のび太は写生を止めてしまう。家出なら落ち着いて絵がかけると言い出すのび太に、ドラえもんは「けしきカッター」を出し、ビル街の風景を切り始めると、その部分だけが紙のようになって切れてしまった。それを家に持って帰って絵を描き始めるのび太だがやはりうまく描けないので、他の景色を取ってくることにする。偶然出会ったジャイアンにカッターを取られないように逃げながらも、様々な景色を切り取っていくのび太は、カッコいいスポーツカーを見つけたのでその景色も取っておくことにする。しずかにそれを見せに行くがスポーツカーは移動してしまった後だった。のび太はさらに玄関に立っているしずかの景色を切り取るが、家に帰るとしずかはいなくなっていたので玄関に立つよう電話をかけて文句を言われてしまう。改めて写生を始めるのび太だがどうもうまく描くことが出来ず、最後には飽きてしまう。その時空き地でスネ夫が新しいラジコンを飛ばしているのを見たのび太は空き地へ行こうとするが、ママに家で勉強するよう注意されたので、仕方なくテレビを見ることにするがそれさえもママに注意されてしまい、のび太はカッターで景色だけを切り取って部屋でテレビを見始める。戻ってきてその様子を見たドラえもんは怒るが、のび太はなんとカッターで切り取った景色そのものを「絵」と言って持っていくことにしてしまう。翌日、実物のようなその絵を見て先生は誉めるが、絵の中を小鳥が飛んでいるのを見て驚いてしまう。さらに雨が降り出したために絵の中でも雨が降り出し、のび太はこっそり逃げ出そうとするのであった。  

 (解説)立体空間である三次元に平面的なことをするという道具も、「空気クレヨン」以来の感がありますが、「立体空間を切り取る」という感覚の道具は「ロッカーカッター」と並んで僕が好きな道具です。子供の頃はああいう道具に憧れたものでした。話としては、やはりどんなに題材が良くても、描く人間にそれだけの技量がなければいけないということですね(笑)。
目は口ほどに物を食べ   10頁 小五、六90年6月号(食品視覚化ガス)
 スネ夫がジャイアンたちに何か話しているのを見てのび太も駆け寄ってみるが、スネ夫はいつものごとく自慢話をしており、今回はフランス料理の自慢話をしていた。それを知ったのび太は始めから聞かないことにして早々に退散するが、別の場所ではママがスネ夫のママからフランス料理のことで自慢話を聞かされていた。憮然とした顔で帰宅したのび太だが、部屋ではドラえもんがずっと紙を眺め、しかも「おいしい」などと呟いていた。のび太が見せてもらうとそれはドラやきの写真だったのだが、それを見ているとだんだん口の中にドラやきの味が広がってきた。ドラえもんはこの写真に「食品視覚化ガス」を吹き付けており、食べ物の絵や写真に吹き付けてそれを見つめることで、食事したような気分になることが出来るのだ。のび太は早速おいしそうな食べ物が載っている本を探すが、そこへ帰ってきたママが、今日はフランス料理を作ると宣言した。スネ夫のママに散々自慢されてさすがに対抗意識を持ったのだ。パパにもそのことを電話で知らせ、物置からほこりをかぶった本を出して料理作りを始める。フランス料理を食べる前に腹いっぱいにならないようにとガスを使わないようにする二人だが、使ってみたくて仕方がない。そこへ従兄弟の五郎さんが訪ねてきた。五郎さんは金欠なので何か食べさせてもらおうとやってきたのだが、ママは買い物に出かけてしまっていたので、二人はフランス料理の本にガスをかけてそれを五郎さんに見せ、五郎さんは腹いっぱいになって帰っていった。二人はテレビを見ながら夕食を待つことにするが、のび太がテレビにガスをかけてしまったので、食べ物のコマーシャルが流れるたびにそれを食べた気分になってしまい、少しお腹が膨れてきたのでテレビを見るのを止める。お使いからママが帰ってきたが、フランス料理に必要な高級食材がまったく売っていないとのことで、ママは何を作ったらいいか悩み始め、二人は料理が出来上がるまでしずかの家に行くことにするが、しずかはどんなケーキを作ったらいいかで悩んでおり、二人はガスを本にかけて食べ比べて決めることにするが、またお腹が膨れてしまったために慌ててしずかの家を出る。すると空き地で小さい子供から本を取り上げているジャイアンを見かけたので注意するが、ジャイアンはその子に絵本に載っている「お菓子の家」を見せてもらっていたのだ。のび太はそれにもガスをかけてみんなでお菓子の家を食べるが、そのせいでお腹はいっぱいになってしまった。家に帰ってみると先程ガスを吹きかけた料理本を見ていたママもお腹をパンパンに膨らませていた。夜になってパパが帰宅するが、結局本を見て食事をとることになってしまい、その味には満足しながらも複雑な思いを抱くパパであった。  

 (解説)単純だけど夢をかなえるドラらしい道具ですね。今まで同種の道具が出てこなかったのが不思議です。今話はその道具以上に様々なキャラが魅力を出しています。「アパートの木」以来の登場となる五郎さんもそうですし、親子そろって自慢話をする骨川一族、お菓子の家に憧れるジャイアンなど、今まででは描かれていなかったキャラの側面と言うべきものが描かれていて、楽しいものになっています。
あなただけの物ガス   10頁 小四89年12月号
 今日発売のマンガ雑誌をしずかと一緒に読もうとするのび太だが、しずかは出木杉と一緒に美術館に行く約束があったので、仕方なくのび太は家に帰る。しかし途中でジャイアンに本を取り上げられてしまい、悔しがって家に帰る。だが部屋にはドラえもんがおらず、ドラやきが一個置いてあるだけだった。のび太は腹いせにドラやきを食べてしまおうとするが、突然ドラやきがひとりでに逃げ出してしまい、驚くのび太の所にドラえもんが帰ってきてドラやきはドラえもんの口の中に飛び込んでいった。ドラえもんは「あなただけの物ガス」を事前にドラやきにかけていたのだ。試しにのび太の貯金箱にガスをかけて廊下に置いておくと、それを見つけたママが手に取ろうとした時に貯金箱が逃げ出し、のび太の下に戻ってきた。それを見て名案を思いついたのび太はガスを借りてしずかの下に向かい、しずかにガスを吹き付ける。するとしずかは出木杉との約束を断ってのび太の所へ向かい始め、のび太を見ると急いで駆け寄ってきた。気を良くしたのび太は先にしずかを家に向かわせ、ジャイアンに取られたマンガ本を取り返しに向かう。家にやって来たしずかとゲームをしようとするドラえもんだが、のび太としか遊ばないと言うしずかを見て不審がる。のび太はマンガ本にガスを吹き付けるが、怒ったジャイアンが本を追いかけ始め、仕方なくのび太は本だけ先に家に帰すことにする。のび太の部屋に本だけ戻ってきたので、ドラえもん達は本を読もうとするがなぜか本が開かず、さらに二人を突き飛ばしてしまう。急いで家に向かうのび太だが、途中でペットのサルに逃げられてしまった女の子に会い、のび太はそのサルにガスをふきつけようとするが、つまってしまったようで出が悪いのでネジをひねると、ひねりすぎたので一気に放出されたガスが偶然そばにいた先生に吹き付けられてしまい、先生はのび太を引っ張って家に連れて行ってしまう。夜になってものび太が帰ってこないので、部屋で待っているしずかを心配してしずかの家から電話がきてしまったので、ドラえもんはのび太を探しに行き、スネ夫から先程のことを聞いて先生の家に行ってみると、先生はのび太につきっきりで勉強をさせているのであった。  

 (解説)「位置固定スプレー」や「落としものカムバックスプレー」とは似て非なる、これまた面白い道具が登場しました。融通の利かない機械的な面も出していて、この種の道具の面白さが十二分に発揮されています。やっぱりラストのオチに先生が絡んでくるオチは問答無用に面白いですね(笑)。フランス印象派の美術展を見に行くなんて、出木杉もしずかもすごい小学生だな。
かくれん棒   10頁 小四87年5月号
 しずかと遊ぼうとするのび太だがしずかは出木杉と勉強をする約束があり、のび太は空き地の土管の上でふて寝するが、そこにジャイアン達が野球の練習をすると言ってきたので、のび太が断ると逆にジャイアンたちに怒られ、追いかけられてしまう。家に戻ったらママに叱られるのではないかと心配するのび太だが、果たしてのび太が家に入るとママはお説教を始めた。疲れ果ててしまったのび太は家出を考えるが、その程度のことはドラえもんも予測済みで、のび太も「家を出ないで家出する方法」はないかとドラえもんに聞いてくる始末。ドラえもんは呆れながらも「かくれん棒」を出した。これを持つと持っている人間に光が当たらなくなるので人間の目にはその人の姿が映らなくなってしまうのだ。早速のび太が使ってみると棒を残してのび太の姿は完全に消え、面白がったのび太は今に置いてある煎餅入れを取ってしまい、煎餅を平らげた後の入れ物をドラえもんのところに置いたので、ママはドラえもんを叱ってしまう。さらにテレビを見ようとするが、誰もいないのにテレビがついているとママがテレビを消してしまったのでのび太はすぐにスイッチをつけ、その繰り返しを続けてママは疲れ果ててしまう。その様子を見て怒ったドラえもんは棒を取り上げようとするがのび太はいち早く逃げ、外に飛び出してしまう。道を歩いていた先生をからかい、空き地でキャッチボールをしているジャイアン達の所に来る。スネ夫にわざとエラーをさせ、さらにジャイアンにも同じことをして思わず笑ってしまったスネ夫はジャイアンに殴られてしまう。出木杉を見かけたのび太は勉強が終わったことを聞いてしずかの部屋に上がりこむが、お風呂上りのしずかが現れたので部屋を出て行く。一方空き地でまだケンカしているジャイアン達の所にドラえもんが駆けつけ、二人はドラえもんから事の次第を聞き、さらにドラえもんはもうすぐ棒の電池が切れる頃であることを話す。電池切れで自分が見えていることに気づいていないのび太が再び空き地に現れたのを見て、見えないふりをしてのび太を近くにまで誘導する三人であった。  

 (解説)意外と科学的な公証がついている今回の道具ですが、名前が単純明快なダジャレなのが嬉しいですね。でも姿は消えても肝心の棒が見えっぱなしなのだから、よく考えると意味がないような気もします(笑)。話自体はのび太のいたずらを中心としたオーソドックスなものですが、今話ではそれに対するしっぺ返しのシーンをあえて描かないことで、読者に想像する楽しみを提供しています。
もぐれ!ハマグリパック   10頁 小三90年6月号(「ハマグリパック」は便利だけど、こわい)
 テストの答案を返されたのび太は、それを見て喜んで家に帰ってくるが、のび太の取った点数は0点だった。なぜそれで喜ぶのか不思議がるドラえもんだが、のび太はいつも五回に一回の割合で0点を取ってきたが、今回に限っては9回連続で点を取り続け、今回は久々にとった0点と言うわけである。のび太なりの進歩に納得するドラえもんだが、さすがにそれをママに見せに行くことは止めさせる。それでものび太が若干成長したことを祝うことにし、ドラえもんはどこかへ出かけ、小さいハマグリのような入れ物を持ってきた。スイッチを入れるとそのハマグリが大きくなり、中にはたくさんのドラやきがしまわれていた。ささやかなお祝いをする二人だが、喉が渇いたので再びドラえもんはどこかに出かけてしまう。すると庭の方で何か音がするのでのび太が行ってみると、ドラえもんが庭の土を掘り起こしていた。ドラえもんは地面の中からジュースの入った「ハマグリパック」を掘り返し、ジュースを二人で飲んだ。これは一種のタイムカプセルで、ふたを閉じると小さくなってひとりでに地面に潜るのだ。しかもパックの中は時間が止まっているので劣化することもないので、のび太は一番大きなハマグリを借りてその中に0点の答案をしまうことにする。家に戻ると、ママがたくさんの非常食を前にして悩んでいた。非常食を買い込んだのはいいが、しまい場所がないので困っていると言う。のび太はそれらを全部ハマグリパックにしまうことにし、ママに喜ばれる。それに気を良くしたのび太はさらに役立てようとしずかの家に向かうが、しずかは何もないと言うのでのび太は立ち去るが、しずかが日記を隠しておきたいと言うのでハマグリを一個貸すことにする。スネ夫の家に行くとスネ夫は自分が持っているたくさんのおもちゃやマンガをハマグリにしまうが、一部始終をジャイアンが目撃しており、後でこっそり掘り出しに来ると考えたのび太はドラえもんの所に行き、「ガードしおまねき」を借りてくる。これはハマグリをガードしてくれるもので、掘り出しに来たジャイアンを追い返してしまった。のび太はさらに困っている人を助けに行くが、一方のママは、先程の非常食と一緒に夕ごはんの材料をしまってしまったことを思い出し、ハマグリを掘り出そうとする。そして夜、お腹をすかせたパパが帰ってくるが、ママの姿が夜になっても見えない。その時ドラえもんが庭に落ちていた0点の答案を見つけてきた。ママが掘り出して怒ったはずみにハマグリの中に落ちてしまったと推理したドラえもんはすぐにハマグリを掘り出そうとするが、掘り出してママに怒られるのを嫌がるのび太は掘るのをためらい、その後ろではパパが早く掘り返すよう催促してくるのであった。  

 (解説)今回はちょっとおとなしめの話ですね。最近はレジャーとしても定着した「潮干狩り」に関連する事項をうまく道具の中に取り入れています。取り立てて特筆すべきような点は見当たらない話だと思いますが、ママが非常食を買い込んでくるあたりは、時代を感じさせますね。
ツーカー錠   8頁 小五87年4月号
 のび太は電話で出木杉に宿題でわからないところを聞くが、あまりに質問する量が多いので出木杉もくたびれてしまい、さらに長電話をママに注意されて取り上げられてしまう。電話が空くのを待つのび太だが、そこにパパがやってきてママに何かを聞いてきた。だがパパは面倒がって言葉を省略して話すのでママには内容が通じず、二人は口ゲンカを始めてしまう。仲裁に入ったドラえもんは「ツーカー錠」を出し、それを二つに割ってそれぞれをパパとママに食べさせる。すると二人は「ツー」と「カー」の二言だけで会話を済ませてしまい、パパは目当ての灰皿を取りに台所に向かった。この薬を二人で飲めば、どんな会話もツーカーで通じるようになるのだ。のび太はこれを使って出木杉から宿題の答えをいっぺんに聞くことにし、出木杉に薬を半分飲ませて宿題の答えを教えてもらう。のび太はついでに、今度の日曜に出かける計画について話し合うためにしずかの家に向かうが、空き地でジャイアンとスネ夫を見かけたので二人を避けて家に向かう。するとその途中で自分の家に向かっていたと言うしずかに会ったのでのび太は話を始めようとするが、ジャイアン達が現れたので話を止めてしまう。だがジャイアン達がついてくるのでのび太はツーカー錠を使ってしずかと無事に会話を果たす。それを見たジャイアン達は事の次第をのび太に問いただし、薬をもらって飲んでしまう。二人は会話をして楽しむが、スネ夫が話すと突然ジャイアンが怒り出してスネ夫を殴り飛ばしてしまう。薬を飲んでの会話ではウソがつけないので、思ったことがそのまま相手に伝わってしまうのだ。家に帰ったのび太は早速宿題をやるが、翌日に提出されたのび太のノートの一面に「カー」と書かれているのを見て、先生は驚いてしまうのであった。  

 (解説)初めてこれを読んだ時は、「ツーカーの仲」という言葉を知らなかったので、なぜツーカーなのかで悩んだ記憶があります。やはり今話はラストのコマのインパクトが全てですね。のび太と出木杉にしてみれば「ツーカー」で通じているわけですから違和感はないでしょうが、それをそのまま書いてしまうところがのび太らしいバカらしさですね。ノートを先生に見せている時の晴れやかな笑顔がまたおかしいです。
万能クリーナー   10頁 小三90年2月号
 珍しく寝坊しないできちんと学校に向かうのび太。風邪を引いたためにジャイアンが最近休んでいるので、毎日が平和なのである。登校するのび太はスネ夫に会ってジャイアンがいないことを喜び合うが、そこに風邪が治ったので学校に向かうジャイアンが現れた。するとスネ夫はころっと態度を変えてジャイアンへのごますりモードとなる。それを見てさすがに呆れてしまったのび太は家に帰ってドラえもんに愚痴をこぼす。そこへスネ夫が大慌てで駆け込んできた。スネ夫はジャイアンに休んでいた間のノートを見せることにしていたのだが、スネ夫は今までジャイアンにいじめられるたびに、その腹いせにノートに落書きをしていたのだ。ボールペンで書いているので消すことも出来ず、何とか消してほしいと頼み込むが、のび太は断ったのでスネ夫は怒って家を出るが、自分の家に向かっているジャイアンを見かけて帰るに帰れなくなってしまう。その頃、ドラえもんはのび太に、スネ夫を助けてやる代わりにこちらも交換条件を出すことを提案し、二人はスネ夫のところへ向かう。二人は人気マンガの「マジカルキャップ」と、人気スターの五島くに子のサインを自分達にくれることを条件に、「万能クリーナー」を出してノートの落書きを全部消していった。感謝するスネ夫はとりあえずジャイアンにノートを渡すが、それを喜んだジャイアンはお礼に一週間スネ夫のボディガードをすることにしてしまい、スネ夫に文句を言いに来た友達を殴り飛ばしてしまう。それに気を良くしたスネ夫は調子に乗って、先程のび太達が催促したマンガやサイン色紙を全部ジャイアンに渡してしまう。のび太はスネ夫にマンガの催促の電話をかけるが、スネ夫は悪びれてまったく相手にしない。怒った二人はさっき吸い取った落書きをノートに戻すことにし、「狂時機」で時間を止めてジャイアンの持っているノートに全部落書きを戻し、さらにマンガの中身や色紙のサインも吸い取ってしまう。家に帰ったジャイアンはマンガや色紙が真っ白なことに驚き、さらにノートに落書きがされているのを見て激怒する。スネ夫は虎の威をかる狐となって威張り散らしていたが、そこにジャイアンが近づいていく。のび太達は部屋で誰かの悲鳴を聞いたような気になるが、気にしないでマンガやサインを他の紙に移し変えるのであった。  

 (解説)ウーン、結構ラストのオチがブラックな感じが出ていていいですね。調子のいいスネ夫が今回は大活躍していますが、ノートに書いた落書きは、デザイナーを目指しているスネ夫にしては妙に下手くそだったような(笑)。ストーリーには全然関係ありませんが、狂時機の機能がどんどん変わっていくのは少し複雑な気分です。本来は時間を止める道具じゃなかったのに…。
深海潜水艇たった二百円!!   10頁 小三89年12月号(レジャー用深海潜水艇ペーパークラフト)
 ドラえもん宛に郵便が来たと大声で誰かが叫ぶのでのび太は玄関に向かうが誰もいない。ところが部屋に戻ると畳一畳ほどの大きさの封筒が届いていた。未来デパートからの商品カタログが届いたのだ。レジャー用の「深海潜水艇」についてのカタログで、のび太はそれを見てすぐにほしがるが、一番安い普及型でさえも五万円以上すると言うので驚いてしまう。ところがのび太はおしまいのページに二百円のものが載っているのを発見するが、それは深海探検の気分だけを味わうためのペーパークラフトだった。だがのび太はそれでもほしがるので仕方なくドラえもんはペーパークラフトを注文することにし、早速届いたセットを組み立てる。のび太は海で浮かべようとするが紙なので本物の水に入れることなど到底出来ず、ドラえもんはこれを裏山に持っていく。深海の気分が出ないと怒るのび太だが、中に入って外を見るとなぜか周りが海になっていた。幻視フィルターをつけているので外の景色を深海のように見ることが出来るのだ。赤いくらげを見つけたのび太はフィルターを外して風船という正体を確かめるが、いちいちフィルターを外していたら気分が出ないとドラえもんに注意され、今度はドラえもんに代わって操縦を行う。海底遺跡を見つけた二人はその中のひとつに入ってみるが、その中には人魚がおり、水の中なのにさらに水の中に潜ってしまう。その正体はしずかで、お湯をかけられそうになったので二人は慌てて退散する。次にスネ夫とジャイアンそっくりの魚を見つけたのび太はドラえもんの注意も聞かずに近づいてジャイアン達をからかったために、怒った二人は潜水艇に石を投げつけてきて、舵をやられてしまったので潜水艇は墜落を始めてしまう。しかも下には海底火山が見えてきて、潜水艇に火が燃え移ったので二人はかろうじて脱出する。火山だったのは実際にはたき火で、真っ黒焦げになりながら責任を擦り付け合う二人を見ながら、自分達は乗らなくて良かったと話すジャイアンとスネ夫であった。  

 (解説)普及タイプの潜水艇なら五万程度で買えるのか…。未来世界はすごいことになっているようです。今回は「未来道具」というには余りにもチャチな道具が出てきましたが、従来の「乗り物シミュレーター」系道具に新味を加えて、それなりに面白い道具になっています。ただ展開そのものはあまりにもオーソドックスすぎて、ちょっと不満が残る出来栄えでした。
運動神経コントローラー   10頁 小六83年8月号
 従兄弟が作ってくれたというラジコンヘリコプターをみんなに自慢するスネ夫だが、どうせ自分には貸してくれないと考えたのび太は家に帰ってしまう。ところがその帰り道の途中、のび太は二本足で歩く変な犬を見かける。しかもその犬はのび太の後をずっとついてきて、気味悪がったのび太はすぐに家に入ってしまうが、犬はどこからか家の中に入っており、二階に上がってドラえもんのところに向かった。ドラえもんは犬にソーセージをあげることを条件に「運動神経コントローラー」をつけて買い物に行ってもらっていたのだ。試しに受信アンテナをママにつけて操縦するが、のび太はまだ慣れていないのでママを倒してしまい怒らせてしまう。のび太は近くのノラネコを操ろうとするが、ドラえもんが交渉すると交換条件に刺身十人前と言ってきたので、何とかドラえもんが交渉してニボシ一掴みにまけさせ、のび太はネコを操縦することにする。だいぶ操縦になれてきたところにスネ夫がしょぼくれた様子で現れる。ジャイアンに先程のラジコンをとられてしまったと聞いて、のび太はラジコンネコを使ってラジコンを取り戻すことにする。モニターテレビで様子を見ながらのび太はネコを操縦してジャイアンの家に侵入させ、ジャイアンの追撃をうまくかわしてラジコンを取り戻すことに成功する。のび太は少しだけラジコンを借りることにするが、操縦が下手だったのでラジコンを墜落させてしまう。スネ夫まで怒らせてしまったために家に帰ることが出来ずに困り果てる二人だが、近くを通った先生を見かけたのび太は先生にコントローラーをつけて、先生と一緒に家まで帰ってジャイアンたちの攻撃を防ぐのであった。

 (解説)動物をラジコンにするというのは単純なアイデアですが、結構面白い話に仕上がっています。犬が二本足で歩いているシーンなんかはナンセンス性全開で楽しいですね。テーブルからのママの落っこち方もまたすごい(笑)。話とは全然関係ないところですが、ドラとノラネコの交渉シーンは笑えますね。
半分の半分のまた半分…   10頁 小五、六89年9月号(半分こ刀)
 テレビの前でチャンネル争いを始めてしまうのび太とドラえもん。二人のケンカを止めたママは何気なく「テレビを半分こしたら」と言うが、それを聞いたドラえもんは「半分こ刀」を出した。これで物を切ると半分に分けることが出来るのだ。大きさも半分になるので小さくなってしまうものの、テレビを二つに分けてゆっくりと番組を見始める二人。ところがそこにしずかから電話がかかってきた。のび太はしずかと一緒に宿題をする約束をしていたのだが、テレビで見ている野球の方も目が離せないので困るのび太は、なんと半分こ刀で自分の体を半分に分けることを思いつき、自分を二つに分けてしまう。どちらが宿題を引き受けるかで二人ののび太はケンカを始めてしまうが、ドラえもんがくじ引きを行ったので二人は役割を決め、宿題をしに向かう。だがその途中でジャイアンから野球の催促を受けてしまい、仕方なくのび太はさらに自分を半分に分ける。友達にも自分が小さくなってしまったことを不思議がられるのび太だが、今度は途中でのび郎おじさんに出会う。おじさんは買ったばかりのコンタクトレンズを落としてしまったそうで、仕方なくのび太はもう一回自分を半分に分け、レンズを探すことにする。しずかの家に急ぐのび太だが、ノートがあまりに重いのでついに倒れてしまい、そこに現れた子犬に体をなめられてしまったために慌てて逃げるが、逃げた先が女の子のスカートの中だったので、怒った女の子によってのび太は木の枝に引っ掛けられてしまう。一方コンタクトレンズを見つけたのび太は急いで後を追うが、枝に引っかかっているのび太を見つけたので助けようと枝に登るが、二人一緒に地面に落っこちてしまう。それでも二人はしずかの家に急ぐが、一方の野球をしに行ったのび太は、自分の体が小さいので満足に野球をすることも出来ず、ジャイアンたちに追い出されてしまう。これ幸いとしずかの家に向かうのび太。家で野球を見ていたのび太だが、野球場の方では雨が降り始めたようで野球は中止になってしまい、のび太は後を追ってしずかの家に向かうことにする。結局しずかの家には4人ののび太が出向くことになったが、いざ宿題を始めると4人ののび太はてんでに勝手なことを言い出して口ゲンカを始めてしまい、しずかはウンザリしてしまうのであった。  

 (解説)「人体分解系」道具の最終作品となった道具です(笑)。分解と言っても、今回はバラバラになったりするわけではないので、今までの道具よりはソフトな感じを受けますが、それでも半分に分けていくたびにどんどん小さくなっていく様などは、妙なリアル感を覚えますね。ラストは「自分同士のケンカ」ですが、自分同士でもケンカをするというのは「ドラえもんだらけ」とか「ボクを止めるのび太」でも実証済みですね(笑)。
実用ミニカーセット   8頁 小五86年7月号
 暑い夏の日、ドラえもんとのび太はアイスを食べたがるが、二人とも暑い中外に出てアイスを買いに行くのを嫌がるので、二人は口論を始めてしまう。仕方なくドラえもんは「実用ミニカーセット」を出して、その中から冷凍車を出してアイスを買ってきてもらう。セットの車庫の中にはいろんな車が入っているのだ。ママから手紙を出すよう頼まれた二人は郵便車を出して手紙を出しに行ってもらう。ところが家から急に飛び出してきたミニカーにびっくりしたパパが転んでしまう。ドラえもんは救急車を出して治療しようとするが、なぜかパパは車に対して怒ってしまう。パパが運転免許の試験に落っこちたことを察したドラえもんは、実用ミニカーでのドライブをパパに勧める。シミュレーターのシートを使って本物そっくりにミニカーを動かすことが出来るのだ。それを使ってパパは運転をはじめ、最初のうちこそ慣れなかったものの次第に運転に慣れてきたパパは、二人のリクエストに答えて山の湖に行くことにする。高速道路は車で大渋滞だったがミニカーには関係ないのでどんどん進んでいく。途中で見つけた車の中では骨川一家が渋滞にウンザリしていた。その後もミニカーは順調に進んでとうとう湖に辿り着いた。実際に湖にいけないことを残念がるパパだが、ドラえもんが出した「おっかけベルト」を使うことでミニカーの行き先に到達することが出来た。その景色に感動する二人だが、回りにずいぶんゴミが散らかっていることに気づいた三人は、ミニカーセットの中からゴミの回収車やショベルカーを出してゴミを集め、地面に掘った穴に埋めるのであった。  

 (解説)道具を使ってのび太たちが楽しむ姿だけが描かれている、のんびりホンワカとした話です。ミニカーでゴミを集めるというラストの美談的結末も、嫌味がなく素直に楽しめるものになっています。しかしパパはあの年になって車の免許を取ろうというのは難しいですね。道だけ知っているという点がさりげないですがおかしいところです。
男女入れかえ物語   10頁 小六85年7月号(入れかえロープ)
 裏山の千年杉に登るジャイアンとスネ夫を見つめるしずか。やって来たのび太はそんな二人をバカにするが、しずかはうらやましいと言う。しずかは小さい頃木登りが好きで、あの千年杉も大きくなったら登ろうと思っていたのだが、女だからという理由でママに止められたのだと言う。女の子であることが損だと言うしずかに、のび太は女の子の方がいいと返し、のび太はしばらく二人の体を交換することを思いつく。のび太からそのことを頼まれたドラえもんは「入れかえロープ」を出し、二人はそれを使って体を入れ替えてしまう。しずかになったのび太は喜ぶが、のび太になったしずかは慌ててしまう。のび太はしずかの家に向かうことにし、女の子になったことを喜ぶがスカートを履いている感触に慣れないでいた。しずかはのび太の体のままで外に出ることを恥ずかしがっていたが、意を決して飛び出し、急いで千年杉の下に向かう。しずかは容易く木を登っていって、あっという間にてっぺんに到達してしまい、満足感に浸る。一方ののび太は女の子の友達を見つけて一緒にゴムとびをしようとするが、能力はのび太のままなのでゴムとびも満足にすることが出来ない。しずかはジャイアン達に誘われるままに野球に参加するが、攻守共に大活躍したのでジャイアン達に喜ばれる。のび太の方では友達にいろんな話をするが、うまく話がかみ合わないで家に帰ることにする。ところがしずかの部屋にはマンガがないので仕方なく昼寝するが、そのことをしずかのママに怒られ、さらにあぐらをかいたことでも怒られてしまうのでウンザリしたのび太は家に戻ってドラえもんに泣きつく。ドラえもんは性別が問題ではなく、根本的な人間として問題があるのではないかと言うが、今ののび太はお説教を聞いているどころではない。ちょうどそこにしずかが帰ってくるが、しずかはのび太として生活することを楽しんでいるので元に戻ることを拒み、ドラえもんも結局ほったらかしにしてしまう。落ち込んでしずかの家に帰るのび太だが、帰るなりお風呂に入るように言われてしまう。一方のしずかは自分でお風呂を沸かして入ろうとするが、服を脱いで裸になった時に股間についているものを見て仰天してしまう。のび太は風呂に入るのを面倒がっていたがママにまた怒られたので仕方なく風呂場に向かう。その時点でのび太も「服を脱ぐこと」の重大さに気が付くが、お互い様だと考えて服を脱ごうとする。その時間一髪、どこでもドアでしずかが止めに入るのであった。  

 (解説)昔「身がわりバー」で入れ替わった時とは随分雰囲気が異なっていますね。今話ではしずかのやんちゃな一面が新たに描かれ、しずかのキャラクターにより深みが出ています。ラストのオチは結構下ネタっぽい気もするのですが、こういったネタも柔軟に取り込めるあたりが「ドラえもん」という作品の底力なのでしょうね。
やりすぎ!のぞみ実現機   10頁 小四89年10月号(のぞみ実現機)
 また自慢話を始めるスネ夫は、サッポロラーメンが食べたくなったので金曜の夕方に飛行機で北海道に向かい、ラーメンを食べて土、日は気ままにドライブを楽しみ、最終便で東京に戻ってきたことを話した。ジャイアンはそれを聞いてうらやましがるが、のび太はそれどころではなかった。今日は先生に特に怒られ、明日のテストで半分取れなかったら学校に来るなとまで言われてしまったのだ。急いで家に帰るのび太だが、玄関先にはジャイアンが先回りしており、ジャイアンはのび太がドラえもんに頼んでサッポロラーメンを食べにいくと思い込んで自分も連れて行くよう頼むが、のび太はこれから勉強をしなければならないことを話す。しかしそれを信じないジャイアンはのび太を殴り飛ばし、のび太は悔しがりながら部屋に入るが、部屋ではドラえもんが機械を相手になにやら難しい表情を見せていた。ドラえもんが使っていたのは「のぞみ実現機」と言って、頼めばどんな願いでも叶えてくれるのだが、調節が非常に難しいと言う。今もドラえもんは「腹いっぱいドラやきを食べたい」と頼んだのだが、どんな形で望みが叶うのかはドラえもんにも想像できないのだ。そこにドラミが、部屋いっぱいの大きさのドラやきを運んできた。近くのお菓子屋がギネスブックに載せるために作ったドラやきで、ドラえもんへのお土産として持ってきたのだと言う。あまりに大きいのでドラえもんも困ってしまうがそれでも食べることにし、全部平らげたドラえもんは腹が膨れて動けなくなってしまった。その間にのび太は機械を使うことにし、手始めにジャイアンに仕返しすることにして、望みの実現程度の度合いを最高にしてからジャイアンの様子を見に行くと、ローラースケートに乗っているジャイアンが車に轢かれそうになったのでのび太は慌ててジャイアンを突き飛ばして助けるが、事情を知らないジャイアンはまたものび太を殴ってしまう。それでも懲りないのび太は今度はサッポロラーメンを食べることを頼むが、なんとパパが北海道支社に転勤する話になってしまったため、もっと程度を下げてささやかな形にすることにすると、パパの転勤話はとり消しになった。そのすぐ後に北海道のおばさんからサッポロラーメンが届き、一応のび太の望みは叶う。のび太はさらに明日のテストを受けないですむようにとの願いをかけ、さらに明日どのような形で望みが実現するのかを調べるために、ドラえもんのポケットからタイムテレビを持ち出して調べてみると、明日になって東京を大地震が襲うことになってしまい、のび太は実現程度の度合いを一番低く設定する。どのように望みが叶うか不安になるのび太だが、翌日のび太は大寝坊してしまい、学校に到着するとテストはとっくに終わってしまっており、のび太はテストを受けることこそ免れたものの、廊下に立たされてしまうのであった。  

 (解説)道具の骨子そのものは極めてシンプルなのですが、その実現の仕方に程度の差があるところが面白いですね。大地震が起きるという実現の仕方はとんでもなくブラックですね。ラストのオチもとんでもなく情けないもので、逆に大笑いしました。骨川家の金の使い方も改めてわかり、全体的に爆笑してしまうシーンの多い、楽しいギャグマンガになっています。
感情エネルギーボンベ   10頁 小四85年10月号
 ジャイアンにラジコンを散々使われ、すぐに電池がなくなってしまうのでドラえもんに電気の減らない電池を出してくれるよう頼んでほしいとスネ夫はのび太に頼み込んでくる。しかし自分にはラジコンを貸してもくれないくせに、あまりにも図々しいその頼みごとに腹を立てたのび太はドラえもんには何も言わないことにする。そこへ未来の世界へ行っていたドラえもんが帰ってきた。ドラえもんはデパートへ「感情エネルギーボンベ」を取りに行っていたのだ。その時のび太はママに大声で呼ばれた。どうやら何かの理由でのび太を叱ろうとしているらしい。しかしママはすぐに気抜けしたようになってしまい、怒るのを止めてしまう。ドラえもんが先程の道具を使って怒りエネルギーを吸い取ってしまったのだ。怒りのエネルギーは様々なエネルギーに変換が可能で、お湯を沸かしたり電灯をつけたりラジカセをつけたりしていろいろ使ってみる。それらを見たのび太はスネ夫のラジコンをこれを使って動かすことにし、ラジコンを自分にも貸してくれることを条件に道具を貸すことにする。しかしエネルギーがなくなってしまったのでラジコンはすぐに止まってしまい、スネ夫の提案でのび太達はジャイアンの怒りエネルギーを取ることにする。だが当のジャイアンは機嫌がいいようで、仕方なくジャイアンが怒るまでついていくことにするが、それを待ちきれないスネ夫は自分でジャイアンを怒らせてしまう。のび太は寸手のところで怒りを吸い取り、スネ夫はラジコンにエネルギーを注いでたっぷり遊ぶがのび太に貸そうとしない。さらにスネ夫はたくさんの古い電池にエネルギーを注ぐことも提案し、尻込みする二人を尻目に自分がジャイアンの下に向かって、野球ボールをぶつけてジャイアンを怒らせる。二回ほど怒らせてメーターを満タンにしたスネ夫だったが、そのボールにジャイアンが偶然つまづいてまた怒り出してしまい、スネ夫は怒りを吸い取ろうとするが満タンだと怒りを吸い込まないので、スネ夫はジャイアンにギタギタにされてしまう。空き地にやっとのことで帰ってきたスネ夫だが到着すると同時に気絶してしまい、スネ夫をほっといてのび太達はラジコンで楽しく遊ぶのであった。  

 (解説)今回のスネ夫はかなり図々しい頼み事をしているので、終盤のしっぺ返しはまあ当然かなと(笑)。「まあまあ棒」のラストでドラは「すさまじい怒りのエネルギーを平和利用できないものか」と言っていましたが、未来世界ではついにそれを実現させたというわけですね。例によってこういう時はジャイアンを見下す態度を取るスネ夫が滑稽で面白いですね。
ふたりっきりでなにしてる?   10頁 小五、六89年10月号(密閉空間探査機)
 日差しが厳しい夏の日、のび太はイライラしながら下校していた。目の前でまたしずかと出木杉が仲良くいちゃいちゃとしているからだ。二人はどうやら食べ物を作る話をしているらしく、のび太は出木杉と別れたしずかに話し掛けるが、しずかはいつも以上にそっけない態度で、しかもしずかは今日がのび太の誕生日であることも忘れており、さらに家に遊びに来ないでほしいとまでのび太に言ってきた。大きなショックを受けたのび太はふらつきながら家に帰ってドラえもんに愚痴を言うが、ドラえもんは機械を操作しながら何か必死に作業をしている。ネコのミイちゃんが行方不明になったので、ドラえもんは道具を使っていろんな家を探していたのだ。ドラえもんはネコ嫌いの鍋島さんの家を探すがある部屋を調べると怒りながら飛び出していった。のび太がドラえもんの使っていたスコープを覗いてみると、その家のおじいさんにミイちゃんがつかまっており、そこにドラえもんが乱入してミイちゃんを救出していた。この道具がどういうものか大体理解したのび太は、しずかと出木杉が何をするかを探るために道具を操作してしずかの家を調べ始めるが、帰ってきたドラえもんに一発ぶたれてしまう。これは「密閉空間探査機」と言って、普段近づくことの出来ない古墳や火山の底などを調べる機械なのだ。ドラえもんはのび太がいたずらに使うものだと思って道具を取り上げようとするが、のび太から話を聞いたドラえもんはやむを得ず道具を貸すことにする。ところが家にやって来た出木杉としずかは宿題を始めた。二人は宿題を終わらせてから何かするつもりなのだ。のび太はスコープの倍率を変えて出木杉のノートを覗き込み、宿題の答えを書き写してしまい、呆れたドラえもんは部屋を出て行ってしまう。そして宿題を終わらせたしずか達は部屋を出て行ったのでのび太が家中を探すと、二人は台所でケーキを作り始めていた。それを見て腹を立てたのび太は思わず家を殴りつけてしまい、家が揺れてケーキの材料が散らばってしまう。だが悲しむしずかを出木杉が慰め、残った材料をかき集めてまたケーキ作りを始めたのを見て、のび太も諦めてしまう。しばらくしてしずか達がケーキを持ってのび太を訪ねてきた。実は二人は今日が誕生日であるのび太のためにケーキを作ったのであり、のび太を驚かそうとして秘密にしておいたのだ。それを聞いて自分のしたことが恥ずかしくなったのび太は思わず部屋に逃げ帰ってしまう。小さくはあったが二人の想いがこもった最高のケーキを、感激しながら味わうのび太であった。  

 (解説)8月7日だというのに何故学校があるのかということはおいておきましょう(笑)。しかし初出時は「話の都合で今は8月です」という断り書きがあったような気がするのですが。のび太の誤解ももっともではあるのですが、それだけにラストの展開は読んでいる読者の方も幸せな気分にさせてくれますね。こういう展開の話はドラの長い歴史の中では珍しいのですが、最後期に生み出された佳作として記憶に留めておくべきでしょう。
右か左か人生コース   10頁 小六85年3月号(コースチェッカー)
 ボクサーの世界チャンピオン、クラッシャー大岩がゲストのトーク番組を興味深く見るのび太は、道一本の違いが人間の人生を大きく左右することに気づき、いつか自分にもそういう時が訪れた時のために、ドラえもんに何か道具を出してくれるよう頼む。ドラえもんは右と左のコースを選んだ場合のそれぞれの予想を最大15分先まで知ることが出来る「コースチェッカー」を出した。のび太のほしがっているものとは多少ずれているものの、のび太は早速それを借りてしずかの家に向かうことにする。家の前でまず近道の方をチェックするとドブにはまる姿が映し出されたが、注意して歩いていれば大丈夫なのではないかと考えたのび太はかまわずにそちらの道を進む。しかし突然目の前に現れたクモに驚いて飛びのいた拍子に足をドブに突っ込んでしまう。次の分かれ道に到着して片方の道を見ると、道に迷っている人を道案内することになってしまうので、面倒がったのび太はもう一つの道を選ぶことにするが、そちらの道では先生に出会ってしまい、宿題のことでまたお説教されてしまう。道案内の方を選んだらどうなったかを調べてみると、道案内したことでその人に感謝され、しかもそれを見ていた先生にまで誉められてしまうことがわかり、のび太は急いで道案内の方の道に向かうが、結局また先生に怒られる羽目になってしまう。それでもしずかの家に向かうのび太はまた分かれ道で未来をチェックするが、片方では野球ボールにぶつかったり犬にかまれたりして、もう片方の道ではジャイアン達に野球に誘われてしまっていた。どちらの道にも障害があることを知って歩みを止めてしまうのび太だったが、そんなのび太をドラえもんは厳しく叱責する。道を選ぶということは決して進みやすい楽な道を選ぶということではない。先程の大岩選手にしても、チャンピオンへの道を血のにじむようなトレーニングで切り開いていったのだと。それを聞いたのび太は自分の力で困難に立ち向かっていく覚悟を決め、ボールにぶつかったり犬にかまれてもなおしずかの家に向かうのび太を見て、少しはたくましくなったのかと思うドラえもんであった。  

 (解説)久々に登場した教訓話です。人の未来を形作るのは、結局はその人自身の努力なのだということを改めて力強く語っています。小学校を巣立っていく六年生へ送るメッセージとして作られた作品ではありますが、どの世代にも通じる普遍的なテーマだと思います。もっとも同種の道具は「切り替え式タイムスコープ」で登場済みですが、同種の道具を使ってギャグと教訓という相反するものを描いているあたり、作者の力を感じさせますね。
宇宙完全大百科   10頁 小五、六90年5月号
 チラノルズとの野球の試合で、9回裏のスネ夫のホームへの滑り込みがセーフかアウトかで延々ともめるジャイアン達。宿題をまだやっていないのび太はこっそり抜け出して家に帰ってしまう。家ではパパが百科事典のセールスマンに応対していたが、セールスマンの巧みな弁舌に惑わされて、パパは次第にその気になっていってしまう。しかしそこに帰ってきたママはセールスを断って、パパにも今まで買った百科事典を見せて、それが宝の持ち腐れになっていることを注意する。のび太は宿題をするが、わからないのですぐに昼寝を始めてしまう。しかしドラえもんに注意されたのでパパにわからないところを聞きに行くが、パパは百科事典で調べるようのび太に言い、のび太もバカ正直に宿題の答えを調べ始める。部屋に戻ってくるのが遅いので様子を見に行ったドラえもんは事典を見て探し続けているのび太を見て呆れてしまい、その時「宇宙完全大百科」の事を口にする。それにはどんな小さなことでもちゃんと乗っているらしいのだが、ものすごい情報量なのでディスクにぎっちり詰め込んでも星一個ほどの大きさになって衛星軌道上に浮かんでいるのだと言う。ドラえもんは「宇宙完全大百科端末器」を出して宇宙空間の大百科につなぎ、のび太は宿題について聞くが、出てきたのは「宿題」という言葉の定義だった。ドラえもんに注意されたのび太はさらに詳しく尋ねることで解答つきの宿題を手に入れる。答えを書き写そうとするのび太を止めるドラえもんだが、その騒ぎを注意したパパに百科事典が役に立ったことを話し、パパも嬉しがってママにそのことを話す。結局答えを書き写すのび太にドラえもんはこんなことを続けていてはろくな大人になれないといって部屋を出るが、その言葉を聞いて不安になったのび太は大百科で自分自身を調べることにする。だが書いてある自分のプロフィールがあまりにひどいものだったので、思わず丸めて捨ててしまう。しかしそれでも気になるのび太はもう一度見始め、「源静香と結婚」という一文を見て興奮する。証拠の写真を大百科に求めると、のび太としずかの結婚式の写真が転送されてきた。それを見て他のことを忘れて幸せに浸るのび太。そこにドラえもんが慌てて帰ってきた。先程の野球の試合で多数決を取ることになり、のび太が抜けてしまっていたので9対8でアウトの判定になってしまい、ジャイアンがカンカンに怒っていると言う。困り果てるのび太だが、大百科を使って今日の試合について調べることにし、その結果スネ夫はセーフであることが判明した。それをのび太から見せられたジャイアンは、喜んでその記録をチラノルズの連中に見せるのであった。  

 (解説)今話はどちらかといえば残念な話です。話自体は面白くて水準レベルなのですが、今回登場の「宇宙完全大百科」はもっと様々な使い方が出来ると思うのですが、それを十分に生かせないままで終わってしまっているのが僕としては非常に残念です。これ以降の登場作品が「ドラビアンナイト」だけですからねえ…。登場時期がもう少し早ければ、もしもボックス並みに活躍できたと思うのですが、どうでしょうか?



前ページに戻る