てんとう虫コミックス第44巻


人の身になるタチバガン   8頁 小二86年4月号(タチバガン)
 今日ものび太はジャイアン達にランドセルを取り上げられてしまい、そのランドセルを凶暴なイヌのそばに投げ込まれてのび太はイヌにぼろぼろにされてしまう。のび太のふがいなさを嘆きながらもジャイアン達の態度を見かねたドラえもんは、彼らを懲らしめるために「タチバガン」を出す。これを使えば自分と相手の立場を逆転させることが出来るのだが、のび太にはよく意味がわからない。何かに使ってみることにして二人は一回に降りようとするが、のび太は例によって階段から転げ落ちてしまう。おっちょこちょいののび太をドラえもんは注意するが、そのとき何気なくのび太がガンをドラえもんに向けてスイッチを押すと、二人の立場が入れ替わってのび太が注意する側になってしまった。これで道具の効果を理解したのび太は、いたずらに使うなというドラえもんの注意を受けて外に出かけようとする。しかしママにお使いを頼まれてしまったのでママと立場を逆転させてママをお使いに行かせてしまう。早速ジャイアンとスネ夫を探すのび太だが、そこで運悪く先生に見つかってしまい、またお説教を受けそうになってしまうが近くの通行人と立場を逆転させてその場を切り抜ける。だが探し回ってもジャイアン達が見つからないので、のび太は電柱に登って工事をしている人と立場を入れ替え、電柱に登って二人を探し、再び立場を戻してジャイアン達の下に向かう。のび太を見かけたジャイアン達はのび太をドブに突き落とすが、のび太はジャイアンと立場を入れ替えたために二人は不思議がってしまう。さらにのび太はイヌをわざと怒らせて自分を追うように仕向け、その上でジャイアン達と立場を交換して、イヌにジャイアン達を攻撃させる。ボロボロになった二人はのび太を追いかけ、のび太は空き地の土管の中にもぐりこんだので二人は挟み撃ちにしようとするが、のび太は後ろから入ってきたジャイアンと立場を交換し、ジャイアンが先に出てきた所をスネ夫が蹴っ飛ばしてしまう。怒り狂ってスネ夫をぶっ飛ばすジャイアンを見て、満足してタチバガンをドラえもんに返すのび太であった。  

 (解説)今話の骨子は「タッチ手ぶくろ(旧バージョン)」の話とまったく同一で、展開そのものはセオリーどおりに進んでいくので安心して読んでいられる話です。ただ「タッチ〜」のほうに比べるとジャイアンがあまりひどい目にあっていませんね(笑)。話はのび太の仕返しに終始しているので話の起伏は少ないですが、のんびりと読むにはちょうどいい話でしょう。
現実中継絵本   7頁 小一90年4月号(ほんものえほん)
 家の中でサッカーボールで遊んでいたのび太は、今に置いてあった花瓶にボールをぶつけて割ってしまう。ママに見つからないうちに花瓶を物置に隠すのび太だが、部屋に戻るとドラえもんが何かを見ながら笑っていた。本物の絵本を見ていると言うドラえもんが持っている本を見せてもらうと、その本は2ページしかないものの、ネコのみいちゃんが実際に映って動いていた。するとみいちゃんが近所のノラネコにいじめられそうになったので、慌ててドラえもんは助けに行くが、すると絵本の中にもドラえもんが登場してきた。これは「現実中継絵本」と言って、テレビみたいに本物を映すことが出来るのだ。それぞれの絵本のタイトルにふさわしいものを映すことが出来、試しに「おかあさん」の絵本を使ってママを映してみる。ママは古雑誌を整理していたが、その時に物置に入ってしまったので花瓶のことに気づき、それを見たのび太は慌てて外に逃げ出してしまう。逃げたついでに絵本を持ってきたのび太はしずかやヘリコプターを映すが、そのヘリコプターはスネ夫のラジコンだった。一休みして絵本を見ることにしたのび太だが、絵本を見るとしずかは逃げたカナリヤを追いかけており、スネ夫のヘリコプターは木の枝に引っかかっている所だった。のび太はヘリコプターを取ってやるが、そのときにカナリヤも見つけたのでそれぞれ二人に返してやる。そこへ雨が降ってきたのでのび太は仕方なく帰るが、ママはどこかへ出かけたらしく、絵本で見てみるとカサがないので帰れなくて困っていた。のび太は傘を持っていって、その際に花瓶を割ったことを謝るのであった。  

 (解説)難しい道具も破天荒なオチも一切登場しませんが、終始のんびりとした暖かいこの雰囲気は、低学年誌に掲載された作品ならではのものであり、こういう雰囲気こそがドラ世界の広がりを担う一つなのだなと実感します。惜しむらくはコミックス掲載版がトレス原稿であるということですが、てんコミ初期のトレス作品に比べるとオリジナルとの相違もそんなに目に余るほどのものではないので、安心して読むことが出来ます。
ムシャクシャカーッとしたら   8頁 小三77年12月号(ムシャクシャカーッとしたら…)
 なぜかイライラして部屋の中を動き回るのび太を見て不思議がるドラえもん。のび太は押入れから枕を引っ張り出してきて、それを畳に投げつけた。ドラえもんが事情を聞いてみると、のび太は腹の立つことがあったのでムシャクシャした気持ちを何かにぶつけて発散しようとしたが、本でやったら破けるしイスは重いので枕をぶつけてみたのだ。だがそれではあまりすっきりしない。それを聞いたドラえもんはおもむろにイスを背負って部屋の窓ガラスに思いっきりイスを叩きつけた。仰天するのび太だが、次の瞬間に窓ガラスを見てみると何事もなかったかのように元に戻っていた。ドラえもんは「ムシャクシャタイマー」をセットしていたので、窓ガラスを割ってもすぐに元通りに出来たのだ。ドラえもんはもう一度ガラスを割ってそれを実証し、それを見たのび太は試してみたいあまり、ドラえもんまで壊してしまおうかとまで言い出す。のび太はママに叱られることにしてママの所に行くが、なぜかママは上機嫌だった。今年はたくさんのボーナスが出たのでママは機嫌が良かったのだが、のび太はおもむろにそのボーナスのお金を一枚ずつ破き始めたので、ママはものすごい勢いで怒り出してしまう。しかしタイマーをセットしていたのでお札はすぐに元に戻り、勘違いしたママはのび太に詫び料として小遣いをあげてしまう。タイマーを持ってのび太が外に出かけると、向こうからジャイアンとスネ夫が頭を押さえてやってきた。スーパーカーに触って怒られたのだと言う。のび太はそのスーパーカーの所に出向き、タイマーをセットして近くから石ブロックを持ってきて、いきなりスーパーカーにそれを投げつけ、スーパーカーは見事にへこんでしまった。持ち主は怒り狂うがタイマーの力ですぐに元に戻る。しかしのび太はその場で種明かしをしてしまったため、持ち主にタイマーを取られてしまう。悲しむのび太だがドラえもんはあまり気にしてはいない様子。実はあのタイマーは4回使うと壊れてしまい、効力を失ってしまうのだ。スーパーカーの持ち主はそんなことは露知らず、自分の破壊願望を満たすためにスーパーカーをハンマーでグシャグシャに潰しているのであった。  

 (解説)道具自体はそんなに突飛なものではないと思いますが、やはり今話ですごいのは、いくら道具があるからと言っても手当たり次第にいろんなものをぶち壊そうとするのび太、及びドラの態度ですね。のび太がドラを壊そうとする所はとんでもなくブラックなジョークです。「分かいドライバー」にも通じるアブノーマルな部分が今話の最大の見所です。ある意味救いのないオチも面白いですね。
十円なんでもストア   7頁 小二83年1月号(10円なんでもストア)
 学校から急いで帰宅してきたのび太は、すぐに「小学四年生」を買いに家を飛び出す。しかし本屋が休みだったのでがっかりして帰ってきた。一日だけ我慢すればいいとドラえもんは諭すが、ドラえもんはその後ドラやきを買いにお菓子屋に行くもお菓子屋も休みだったので、のび太に言った言葉はどこへやら、我慢できないと騒ぎ出す。ドラえもんは何とかしようと「十円なんでもストアー」と「かんばん」を出した。かんばんに「おかしや」と書いてストアに貼り、10円入れてドラやきを頼むと中からドラやきが出てきた。かんばんを書き直せばどんな店にすることも出来、一枚のかんばんで買えるのは一つだけであるものの、どんな品物でも10円で買うことが出来るのだ。のび太は早速ストアを本屋にして目当ての本を買い、しばらくはその本を読んで楽しむ。ドラえもんは出かけるが、その間にパパからタバコを買ってくるように頼まれたので、のび太はストアをタバコ屋にして買い物を済ませてしまう。パパにタバコを渡すと、今度はママが困った様子でやってきた。ママは今晩のおかずをすき焼きにしようと買い物に出かけたのだが、肉屋が休みだったので買うことが出来なかったと言う。すき焼きを食べたいのび太はストアを肉屋にして肉を買い、それをママに渡す。しずかにストアを見せることにしたのび太はしずかの家に行くが、しずかは父親と一緒に映画に行ってしまい、自分も映画に行きたがったのび太はストアを映画館にして映画を見ることにする。空き地で一通り映画を見終えたのび太だが、そこへしずかがやってきた。混雑していて入ることが出来なかったと言うしずかに映画を見せたのび太は、さらに喫茶店を作ってジュースやお菓子を頼み、それを二人で一緒に食べる。それを目撃したジャイアン達はのび太からストアを取り上げようとして、のび太は急いで逃げ出すが追い詰められそうになったので、のび太はストアを交番にしてお巡りさんを呼び出してしまう。それを見たしずかは『十円ででてくるおまわりさんなんて初めて。』と呟くのであった。  

 (解説)同じ10円でも「うちでのデパート」とはえらい違いですね(笑)。今話は道具を使っての遊びがメインになっていて、そちらは十分楽しいものになっていますが、ちょっとオチに意外性がないので、オチで笑うのはちょっと厳しいかとも思います。それでも冒頭ののびドラセリフ重複(ドラがある言葉を言った後、立場が逆転したかのようにのび太が同じセリフを言う)はいつもながら笑えます。
恋するジャイアン   11頁 小五、六90年11月号(ホクロ型スピーカーで告白)
 のび太は急ぎの相談があるということで空き地に行ってみると、そこでは土管に座って後ろを向いたままのジャイアンがいた。一緒にいたスネ夫はジャイアンにのび太が来た事を話すが、ジャイアンはなぜか筆談でスネ夫と話し、のび太に事情を説明するよう命令する。その様子を見て面白そうな話だと考えたのび太だが、ジャイアンから紙で注意されたので二人は真面目顔になって話を始める。スネ夫の話によると、なんとジャイアンに好きな女の子が出来たという。話を聞いたのび太は思わず吹き出してしまうが、ジャイアンが怒りで肩を震わせるのを見て笑うのをやめて話を本題に戻す。ジャイアンはその子と友達になりたいのだが、自信がないので話し掛けられないと言う。だが二人は調子に乗ってどうでもいいことまでベラベラ話してしまったのでジャイアンは二人を殴りつけ、作戦を考えることを二人に命じる。のび太から話を聞いたドラえもんも大笑いするが、よく話を聞いてみるとジャイアンもその子にあったことがなく、その子の住所氏名を調べて出会いのきっかけを作り、その子が好きになってくれるような道具を出してほしいと言うわけなのだ。この間公園で相撲をとっていた時にスネ夫が撮った写真に写っていたのがジャイアンの想い人なのだと言う。ドラえもんは「万能プリンター」を出して少女の写っていない部分を調べることにし、その結果少女はイヌを散歩に連れていたことがわかり、その時間にその周辺で散歩しているのではないかと推理する。ジャイアンもイヌの散歩に行けばとりあえず話をすることは出来るだろうと考えるが、それからあとの会話のことをまた二人は考え、ドラえもんは「『ホクロ型スピーカー』と『マイク』」を出した。このホクロをつけてマイクに話し掛けると、ホクロをつけた人間がその通りの言葉を話すのだ。セリフはスネ夫が話すことにしてのび太達は作戦をジャイアンに持ちかけ、作戦を実行することにする。ジャイアンはムクを散歩に連れて行くが、いつも散歩にはジャイ子が連れて行っているのでムクは雪でも降るのではないかと心配する。ジャイアンから離れて後をついていくのび太とスネ夫だが、ムクはおしっこしたりゴミ箱をあさったりと行儀が悪い。そのうちに公園を一周してしまったのでジャイアンはもう一度廻ることにするが、飽きてしまったスネ夫は少女が現れたら呼ぶように言ってベンチで休んでしまう。ジャイアンの機嫌も次第に悪くなってくるが、その時目の前に例の少女が現れた。スネ夫を呼びに行っている暇がないので、仕方なくのび太が代役でセリフを話すことにする。最初こそ変なことを言ってしまうが、とりあえず無難に会話を始めるのび太。しかしかっこつけてムクの名前をベンジーと言ってしまったため、相手のイヌも同じ名前なので気まずくなってしまい、さらにのび太は「大ベンジーと小ベンジー」などと言ってしまったので余計に気まずくなってしまい、諦めてのび太はスネ夫を呼びに行く。ところがその間にムクが相手のイヌに襲いかかって痛めつけてしまい、少女は怒って立ち去ってしまう。絶望したジャイアンは近くのベンチに座り込むが、そこはペンキ塗りたてのベンチだった。一方のび太に呼ばれたスネ夫はようやくセリフを話し始めるが、その時ジャイアンはズボンがベンチにくっついてしまったために離れることが出来ず、しかもちょうどそこに現れた小さい女の子にスネ夫の言うセリフを話してしまう。困るジャイアンを尻目に、「タイプじゃない」とやけにませた事を言って女の子は立ち去るのであった。  

 (解説)パターン的には「泣くなジャイ子よ」と同じ感じですが、兄妹で迎える結末がこうも違うものか(笑)。ストーリーとしては「グンニャリジャイアン」とほぼ同じ感じですが、こちらの話のほうは全体的に抑えた演出になっているので、総合的に見れば「グンニャリ〜」より物足りない感じがします。それでも例の「大と小」やラストでいい味を出す女の子など、面白い場面はたくさんありますね。いつも以上にムクが擬人化されているところも愉快です。
サイオー馬   10頁 小四81年2月号
 のび太はおじさんの家にお使いに行く際に、天気予報を信じて傘を持って出かけるがずっといい天気のままで、バス停に着けばバスが、駅に着けば電車が目の前で出て行き、交差点に入れば必ず信号は赤になり、しかもおじさんは留守だった。おまけに傘を忘れてママに叱られてしまい、さすがにのび太もウンザリしてしまう。何とかしてくれるようドラえもんに懇願するのび太だが、ドラえもんは何かを言おうとして縄を探し始める。のび太は物置の荷物を引っ張り出して縄を出すが、ドラえもんはのび太にお説教するために縄を必要としていただけであり、さらにママから物置の整理をするよう言われてしまい、さらにのび太は落ち込んでしまう。仕方なくドラえもんは「サイオー馬」を出した。悪いことやいいことがあった時にこの馬に蹴られると途端に逆転し、いいことの後には悪いこと、悪いことの後にはいいことが起きるようになるのだ。のび太は早速馬に蹴られるが、すると古雑誌の中にあった大事なマンガを見つける。いいことがあったところでドラえもんは馬を捕まえる。そのままにしているとまた馬に蹴られて今度は悪いことが起きてしまうので、10分間押さえつけていなければいけないのだ。のび太は馬を持って出かけてしまうが、後片付けをしていかないのでドラえもんが物置の片づけをする羽目になってしまう。のび太は先程のマンガをしずかに貸しに行くが、途中でジャイアンにマンガを取られてしまったのですぐに馬に蹴られると、ジャイアンは家で母ちゃんに怒られ、部屋のマンガを全部外に捨てられてしまった。その本はのび太や他の友達から取り上げた本なのでのび太は本をみんなに返すことにするが、馬を捕まえることを忘れていたので馬は後を追いかけてきて、のび太は馬を捕まえようとするが逆に追いまわされてしまう。それでも何とか逃げるのび太はみんなに本を返していき、しずかに本を貸して部屋に上がらせてもらう。ところがそこにまた馬がやってきたので、馬を閉じ込めるようしずかに頼んで自分は逃げてしまう。ところが逃げている最中に犬にかまれてしまい、今度は蹴っ飛ばしてもらおうと思っても馬はイヌに追いかけられてどこかに行ってしまう。さらにそれからも立て続けにひどい目にあったのび太はようやく馬を見つけて蹴っ飛ばしてもらおうとするが、マンホールの穴に落ちてしまったので結局蹴飛ばされずに終わってしまう。ほとほと疲れて家に帰るのび太だが、そこに先程のお礼と言って友達がのび太にマンガを貸しにきた。さらにおじさんが家を訪ねてきており、先程留守だったお詫びにと小遣いまでくれた。悪いことばかり続くものではないと喜ぶのび太とドラえもんだが、そこにまた馬がやってきたので二人は何とか捕まえようと悪戦苦闘するのであった。  

 (解説)道具のコンセプトとしては「バランス注射」と同じ感じですが、今話のほうでは未来道具特有の「融通の利かなさ」も発揮しており、のび太の幸運、不運で見せると言うよりは、サイオー馬に振り回されるのび太の姿を描いています。しかしドラもあれだけのたとえ話のためにわざわざのび太に物置を探させるとは、のび太でなくても怒るよな(笑)。
たくはいキャップ   7頁 小二86年6月号
 のび太はママに呼ばれるが、ドラえもんに借りた「ナニスルグラス」を通してママを見ると、ママはのび太を叱ろうとしていたことがわかったのでのび太は慌てて逃げ出す。このグラスを通してみると、その人が何をしようとしているかが見えるようになるのだ。のび太はそれを使ってジャイアンを見るが、ジャイアンはのび太を殴ろうとしていたのでのび太は慌てて逃げ出し、それからもしずかの様子を見たりするが、何気なく通りがかったおじさんの様子を見てみると、その人は泥棒をしようと考えていた。驚いたのび太はママも無視して部屋に戻りドラえもんに相談するが、何も盗んでいないので警察に届けることも出来ず、二人は困ってしまう。その時名案を思いついたドラえもんは「たくはいキャップ」を出し、うまくそれを男にかぶせることに成功する。これをかぶった人は宅配便の配達員になってしまうのだ。ドラえもんはママからお花の先生への届け物を預かり、それを庭に置いておく。するとどこからか先程の男が現れて荷物を持ち去ってしまう。慌てるのび太だがドラえもんは動じずに後をつける。男はいろんな道を通っていくうちに迷子になってしまうが、窓が空きっぱなしの家を見つけたのでそこに入り込むも、家人がやってきたので荷物を置いて逃げていく。そこはちょうどお花の先生の家だったので、荷物が届いたことになった。男は続いて電気屋の外においてあったテレビを盗み出してしまうが、あまりに重いので疲れ果ててしまい荷物を降ろす。ところがちょうど降ろした所の家がそのテレビを注文した家だったので、男はまた品物を配達したことになってしまった。いいかげんウンザリした男は真面目に働くことを考え始め、それを聞いて一安心するのび太とドラえもんであった。  

 (解説)宅配を目的とした道具ですが、その形が猫耳タイプになっているのがご愛嬌ですね(笑)。ただストーリー自体は「することレンズ」の完全な焼き直しで、そこらへんに不満を感じる方も少なくないと思います。今話オリジナルの部分もほとんどなく、膨大な数のドラ作品の中では比較的「凡作」に入る部類の作品だと思います。
アニメばこ   7頁 小二85年3月号
 空き地でみんな一緒にマンガの「スーパーコアラッコ」を読むのび太達は、これがアニメになればもっと面白いのにと話すが、そこにスネ夫がスーパーコアラッコのアニメビデオを持ってやって来た。来月売り出されるビデオを父親のコネでもらってきたと言うのだ。だが話の展開を見抜いたのび太は早々に立ち去り、案の定スネ夫もこのビデオは3人用などと言って、ジャイアンとしずかにだけビデオを見せる。しずか達はアニメで動くスーパーコアラッコに感動するが、一人だけ仲間はずれにされたのび太はいつものごとく悔しがる。そこでドラえもんはコアラッコのマンガを持ってくるように言って「アニメばこ」を取り出した。この中にアニメにしたい本を入れると、それがアニメになってしまうのだ。スーパーコアラッコのアニメを見てたっぷり楽しんだ二人は、他にものび太の持っているマンガをアニメにして見るが、めぼしいものを全部見てしまったのでしずかの家に行って本を貸してもらうことにする。しずかも一緒になってたくさんのアニメを見た二人は満足して帰るが、その話を聞いたジャイアン達は適当な理屈を並べてアニメばこを借り、たくさんのマンガを持っているという理由でスネ夫の家に持ち込む。ところがジャイアンが見つけた本を入れてアニメにしてみると、その本はなんとスネ夫の日記だった。慌てて取り出そうとするスネ夫だがジャイアンは構わず見続け、1月1日の日記でスネ夫の家を訪れたジャイアンが図々しくスネ夫のおやつを食べるので、スネ夫が鼻くそをこっそりおやつにつけてジャイアンに食べさせてしまったことが流れた。それを見たジャイアンは怒り狂ってスネ夫を追いかけまわすのであった。  

 (解説)ある意味世界中のアニメファンの願望が結晶化した道具かもしれませんね。マニアックな見方をすれば、声優やBGMはどのように決まるのかとか、いろんな考えが頭をよぎるとは思いますが、それはまた別の機会にて。今話は中盤までは道具の機能を普通に描いている、これと言って特筆するべき点のない展開ですが、それだけにラストの汚れ系オチは壮絶です。アニメ版ではこの時の演出がさらに面白いものになっていて爆笑必至の快作に仕上がっていました。あの頃の演出テクを今のスタッフにも…(以下自粛)。
おれさまをグレードアップ   8頁 小三86年6月号(グレードアップえき)
 前から欲しかったマンガをついに買ったのび太は喜んで家に帰るが、その途中でジャイアンに見つかってしまう。ところが今回はのび太も踏ん張ってジャイアンの攻撃にも耐え抜き、先生が通りがかったのでジャイアンは逃げていった。安心して家に帰るのび太だが、宿題を終わらせるまではとママにマンガを取り上げられてしまう。同じく楽しみにしていたドラえもんも怒り、無理にでものび太に宿題をやらせ、ようやくのことでのび太は宿題を終わらせた。宿題のノートを見せに行くのび太だが、ママは掃除機の吸い込みが悪いために掃除がはかどらないことでイライラしていた。そこでドラえもんは「グレードアップえき」を出し、掃除機に吹きかける。これを吹きかけるとどんなものでも一時間だけ性能が良くなるのだ。通常どおりの吸い込みになった掃除機を使って掃除を終わらせたママはのび太にマンガを返し、二人は早速マンガを読もうとするが、ママに宿題が間違いだらけだと指摘されてやり直しを強要されてしまう。その時のび太は自分の頭に先程の液をかけることを思いつき、宿題を早めに終わらせることにする。ところが間違った解答を消すだけでも時間がかかるので消しゴムに液をかけてあっという間に解答を消し、宿題を終わらせたのび太は改めてマンガを読む。しかし思ったほど面白くなかったと言うので、ドラえもんは本に液をかけて読んでみると最高に面白くなって大爆笑してしまう。のび太もひとしきり笑った後でしずかに貸しに行くが、途中でジャイアンを見かけたので足に液を吹き付け、ジャイアンの前で本をちらつかせてわざと追いかけるように仕向けるが、のび太のスピードが速いのでジャイアンでも追いつくことが出来ない。読んだことがあると言うしずかに改めて本を読ませると、しずかも大爆笑してしまった。空き地でラジコンで遊んでいるスネ夫に、自分に貸してくれることを条件にラジコンに液をかけると、それにのび太が乗ったままで走るほどのパワーを発揮するようになった。ところがそれを見ていたジャイアンが液の秘密を知ってしまい、全身に液をかけるようにのび太に命令する。しかし尻にかけた時点でガスが切れてしまい怒り出すジャイアンだが、その時に発したおならの噴射によってジャイアンは空高く飛んでいってしまい、その様子を見てスネ夫は『すごい性能だねえ。』と呟くのであった。  

 (解説)今話も「アニメばこ」と同じく、ラストのオチが下品ですね(笑)。おならで吹っ飛んでしまうという発想そのものは「メロディーガス」で既に描かれていますが、その時もラストのコマでの『おうい、うちはこっちだよう。』というドラのやけにのんきなセリフが印象的でしたが、今話のスネ夫のセリフも負けてはいません。殊に飛んでいくジャイアンを無表情で見つめるのび太とスネ夫の顔もまたナイスです。今話の見所はまさにここと言っても過言ではないでしょう。
のび太の名場面   8頁 小三77年11月号(のび太くん、はじめてほめられる)
 突然朝早くに目を覚ましたのび太。不審に思ったドラえもんも起きてみるが、どうやらのび太は寝ぼけているようでパジャマ姿のままで外に散歩に出かけてしまう。ところがふらふらして歩いているので近くのゴミバケツにぶつかり、中身をひっくり返してしまう。ドラえもんはのび太にホウキを持たせて掃除をさせて自分は帰り、のび太は掃除をしている最中に目を覚ました。その時通りがかった老人にのび太は掃除をしていることをベタぼめされ、のび太は気を良くして家に帰り、学校に向かう。しかし学校へ行ってみれば、いつものようにジャイアンやスネ夫に馬鹿にされたり先生に叱られたりして、すっかり自分に自信を失ったのび太は今朝の出来事が夢だったのではないかと考え、帰ってきてからタイムマシンで朝へと戻って確認に行く。そこで自分が誉められる所を目撃したのび太はまた感動し、今度はカメラとテープレコーダーを持ってその時間に向かって記録に収めてしまう。さらに調子に乗ったのび太はこのシーンをみんなに見せて、自分を尊敬させようと考える。早速みんなを家に呼ぶのび太だが、事情を知らないみんなは時間旅行に行くものと思い込んで楽しみにしている様子。だがのび太がタイムマシンで連れて行くと、時間と場所が少々ずれてしまった。それでもその時間がくるまでみんなは弁当を食べることにするが、弁当も食べ尽くしてしまったみんなは文句を言い出し、さらに「いいもの」というのがのび太が誉められる所だと聞いてみんなは怒って帰ってしまう。そこへその家の主人がやってきて、弁当のカスを散らかしたことでのび太を叱り、掃除を強制されてしまう。壁をはさんだ向こう側の道でこの時間ののび太がゴミ掃除をしている中、のび太は庭の掃除をする羽目になるのであった。  

 (解説)自分が誉められると言うことは当人にとってはいいことだと思いますが、他人にとって見れば文字通りの「他人事」ですからね。そこらへんの感覚のズレを使ってオチを導くという話の構成はさすがと言う所です。のび太は普段誉められる経験が少ないためか、こういうことになると思い入れが過剰になりますね(「本人ビデオ」しかり)。なお今話が雑誌に初出した頃は大長編「のび太の恐竜」以前の話だったので、「タイムマシンの定員は3人」という設定はなかったようですね。
手作りミサイル大作戦   10頁 小六79年6月号(手づくりミサイル大作戦)
 タイムマシンに乗ろうとするドラえもんを必死に止めるのび太。ドラえもんは用事があるので出かけたいのだが、のび太はジャイアンに狙われているので何とかして欲しいという。時間がないので困ってしまったドラえもんは「ホームミサイル製造法」の本をのび太に渡して未来の世界へ出発する。それには身近なものでホームミサイルを作る、その作り方が書かれていた。半信半疑ながらも作ってみることにしたのび太は材料を準備し、まずミサイルの本体を作成し、次に爆弾部分にコショウを入れてコショウ爆弾を生成、燃料を入れてレーダー用の電子頭脳をセットし、発射台を庭に据え付けて目標物を捉えるレーダーを屋根の上にセットする。そしてジャイアンをマークすることで準備は完了し、これで後はボタンを押すだけでミサイル発射可能な状態になった。しかしそれでもまた疑っているのび太は一応ジャイアンの下に行ってスイッチを押してみるが、実際に飛んできたミサイルはふらふらとどこか頼りなく、しかも標的のジャイアンから外れて通りがかりのおじさんに当たってしまった。のび太は慌てて逃げてしまうが、のび太が落としていった製造法の本をスネ夫は見逃さなかった。やはり不器用な自分に工作は無理だったのだと自戒するのび太だが、窓の外にミサイルを見かけて驚く。しかもそのミサイルは部屋に入ってきたので慌てて逃げようとするがそれは爆発せず、代わりにジャイアンからの脅迫状が入っていた。ジャイアンの家に行ってみると、ジャイアンは既にのび太を標的としたミサイルを多数作っており、自分の頼みを断ればすぐさまミサイルを発射すると言う。言われるままに剛田家の雑用を押し付けられてしまうのび太。ようやく未来から帰ってきたドラえもんはのび太がいないことに気づいて探しに行くが、ママもわからないと言う。ようやく解放されたのび太は帰ってきてドラえもんに泣きつくが、話を聞いて怒ったドラえもんは言うことを聞く必要はないと宣言する。翌日、なおものび太に雑用を押し付けようとするジャイアンをドラえもんは挑発したため、ジャイアンは怒って全ミサイルを発射するが、ドラえもんもすかさず弾頭部分にのび太の顔に似せて書いた絵をくっつけたミサイルを、ジャイアンの部屋に向けて発射した。ミサイルはその絵をのび太本人と誤認してミサイルを追尾し、ジャイアンの部屋に入り込んで大爆発を起こした。真っ黒焦げになってしまったジャイアン達を見て、のび太とドラえもんは笑いあうのであった。

 (解説)ドラ世界のミサイル系ストーリーは、結構現実的な問題を暗喩して使っている場合が多く、今話も「ペンシルミサイルと自動しかえしレーダー」よりは明るい雰囲気ではあるものの、力による脅迫というシビアな世界を描いています。まあ、この話で何が一番おかしいと言えば、のび太の顔の絵を本物と誤認してミサイルが全部ジャイアンに戻ってしまうという、ミサイルそのもののいいかげんさなんですけどね(笑)。
腹ぺこのつらさ知ってるかい   8頁 小五77年11月号
 大した量でもないのに、たくさんご飯を残して食事を切り上げてしまうのび太。それを見かねたパパは注意しに行くが、のび太とドラえもんはテレビのボクシング中継に夢中になって話を聞いてない様子。パパは自分の子供時代、戦争で貧しかった頃の話をして何とかわかってもらおうとするが、空腹の苦しさを知らない人間には何を言っても無駄だと諦めてしまう。それを聞いていたドラえもんはのび太に空腹の苦しさを味わわせるため、「ヤセール」という薬を取り出した。これを一粒飲めば一食、食事を摂ることが出来なくなるのだ。だがその道具の説明さえものび太はまともに聞かず、ドラえもんは後で飲むよう言ってその場を立ち去るが、一段落ついたのび太は話をまったく聞いていなかったので、ヤセールを10粒ほど飲み込んでしまう。翌日、寝坊しすぎたために朝食を摂らずにのび太は学校に出かけてしまい、その様子を見てのび太にも空腹の辛さがわかっただろうとドラえもんは安心する。しかし帰ってきたのび太に聞くと、昼はトイレのカギが壊れていたために閉じ込められ、給食を食べることが出来なかったと言う。家にはおやつやラーメンといったものもなく、商店街は一斉休業なのでパンも買えず、仕方なく夜まで待つことにする。そんな中でジャイアンから将棋に誘われたのび太は気を紛らすために将棋をすることにするが、珍しく勝ち続けてしまったのでジャイアンが怒り出し、ジャイアンが勝つまでは帰れなくなってしまう。夜遅くになってようやく解放されたのび太だが、怒ったママはのび太に夕食をあげようとしない。ドラえもんはのび太がヤセールを10粒ほど飲んだことを聞いて、このままでは三日間は何も食べられなくなってしまうことを話す。困った二人は仕方なく四日後の世界に行って食事を摂ることにし、昼ごはんを持ち去ろうとするがママがやってきたので急いで外に逃げる。食事がなくなったことを四日後ののび太のせいにしたママはのび太を厳しく叱り、その様子を聞いて今ののび太は震えるが、とりあえずドラえもんはのび太にご飯を食べることを勧めるのであった。  

 (解説)空腹の辛さに関しては「ありがたみわかり機」で既に体験済みですが、まあそこはのび太だからということで(笑)。ただ今回はのび太が悪いと個人的には思うので、のび太の顛末にはあまり同情できません。ラストで四日後の自分が叱られていることを知りながらもラーメンを食べているのび太の行動がスキですね(笑)。
恐竜の足あと発見   7頁 小二85年7月号(恐竜の足あと発見!)
 恐竜の足跡の化石が発掘されたという記事が載っている新聞を読んで驚いたのび太は早速みんなに知らせに行くが、そのニュースは既にみんなは知っていた。のび太はママに古新聞を置かないように注意し、ドラえもんに化石のことについて聞くが、足跡の化石が次に出る見込みは少ないと話したためにのび太は残念がってしまう。そこでのび太は、自分がタイムマシンで恐竜時代に行って恐竜に足跡を作らせ、それを自分が発見するというアイデアを思いつく。だが漠然とその作業をしていては、その後地面に埋もれてしまったりするかもしれないと言うので、ドラえもんは「年代そくてい機」を出して古い地層を探し出し、約九千年前の地層を発見した。その場に立って「タイムベルト」で時間移動を敢行した二人は恐竜時代に到達、周囲に「そくせき岩のもと」を撒いて化石作りの下地を整える。続いて恐竜を探しに行く二人だが、のび太は偶然ティラノサウルスを見つけてしまったために追いまわされてしまい、さらに岩のもとを巻いた場所がわからなくなったので困り果ててしまう。ドラえもんは空気砲で恐竜を追い払うが、その際の衝撃でのび太は岩のもとをまいた場所に落ちてしまい、のび太の人型がついてしまう。後日、サルが転んだ跡のような珍しい化石が見つかったと言うニュースを聞いて、思わず恥ずかしがってしまうのび太であった。  

 (解説)ドラの話の中ではしばしば恐竜時代のことが出てきますが、これはやはり作者が恐竜時代に並々ならぬ興味を持っていたが故でしょう。で、その今話ですが、「恐竜さん日本へどうぞ」などに比べると幾分パンチ力の弱い構成ではありますが、ラストのオチは「恐竜ハンター」を彷彿とさせるものがあり、面白いですね。ママの年齢が38歳だと初めて判明した話でもあります。
虫よせボード   7頁 小一83年7月号
 大きなカブトムシをみんなに自慢するスネ夫。これは自分の家の庭に歩きに飛んできた所を捕まえたのだと言う。庭の広さを自慢されてむくれるのび太はドラえもんに頼み込むが、ドラえもんにも広い庭を出すことなどは出来なかった。それでも泣き叫ぶのび太にドラえもんは「虫よせボード」を出した。これはいろんな草花の絵がセットになっており、飾っておくとその花によってくるはずの虫が寄ってくるのだ。いろんな花を飾るといろんなチョウがやってきて、次に木の幹を貼り付けるとセミが木の汁を吸いにきた。ナラの木に傷をつけると、そこから出た甘い汁をなめにカブトムシやクワガタが飛んできた。細い竹のような一本の棒が立っている絵だけはどんなものかわからなかったが、その先端にトンボが止まったので二人は納得する。しずかにも見せることにした二人だったが、そこで出会ったジャイアンも欲しがったのでいくつかボードを貸すことにする。ジャイアンは寄ってきたチョウを捕まえようとするが逃げられてしまい、さらに別のボードを貼るとミツバチが大群で押し寄せてきた。のび太達はボードを帰してもらいに行くが、ミツバチに刺されて怒ったジャイアンはボードを捨ててしまっていた。それから二ヶ月ほど経って、しずか達と空き地で遊んでいたのび太は以前ジャイアンに取られたボードを見つける。見るとそこにはアゲハチョウのさなぎがくっついていた。さなぎから成虫のアゲハチョウが出て飛び立っていく様子を、三人は喜んで見つめるのであった。  

 (解説)これも「現実中継絵本」と同様、非常にのんびりとした暖かみのある作風になっています。純粋に道具の効果とそれによる楽しさを描いており、ラストまでその姿勢は貫かれています。掲載当時はまだ東京にもカブトムシがいたのでしょうか。古き良き時代も思わせますね。
バランストレーナー   10頁 小三90年9月号(バランストレーナーで練習)
 例年のようにしずか達を四丈半島の別荘に招待するスネ夫。サーフィンや牧場の馬などの話で盛り上がるが、どうせ自分は誘われないのだろうとのび太は考えて最初から無視を決め込んでいた。しかし今回に限ってなぜかスネ夫はのび太も連れて行くことにし、のび太は喜んでドラえもんに知らせるが、ドラえもんはこれには裏があることを予測する。案の定スネ夫がのび太のところを訪ねてきた。スネ夫は実は乗馬もサーフィンも出来ないので、ドラえもんの道具を使って練習させて欲しいと言う。厚かましい頼みに怒るのび太だが招待の件をちらつかされたので仕方なくドラえもんに頼み、ドラえもんは「バランストレーナー」を出した。ざぶとんのような形ではあるが、乗馬やサーフィンなどのバランス感覚を養う練習が出来るのだ。これを借りて家に帰るスネ夫だが、それを見たのび太はスネ夫が上手になってみんなに自慢する姿を思い浮かべ、行くのが嫌になってしまう。ドラえもんはそんなのび太にバランストレーナーをもう一つだし、早速のび太はサーフィンの練習をすることにするが、ドラえもんはまず板の上に立つバランス感覚を覚えるために、スキーから始めることを勧める。バカにしていたのび太だがそれさえも満足に出来ない。そこへドラえもんの知り合いのネコがやってきたのでドラえもんは出かけ、のび太は一人で練習するが階段に着いたところですべり落ちてしまい、のび太は馬の練習を始めることにする。よせばいいのにしずかに電話して馬に乗れると宣言してしまったのび太は練習を始めようとするが、馬の後ろから近づいたために馬に蹴飛ばされてしまう。帰ってきたドラえもんに注意されるのび太。廊下での騒ぎを聞きつけたママはトレーナーをざぶとんと勘違いして居間に運んでしまうが、馬が暴れだしたのでママは吹っ飛ばされてしまう。馬を追いかける二人はようやくスイッチを切ってつかまえるが、スネ夫の様子を見るとスネ夫も苦労している様子で、スネ夫は馬のバランス感覚に慣れるために牛から始めることにした。しかしスネ夫のママが買ってきた真っ赤なスカートを見て牛は興奮して暴れだしてしまい、スネ夫は怪我をしたので別荘行きが取りやめになってしまうのであった。  

 (解説)確かに練習にはなると思うけど、座布団みたいな形というのが意外性と言うべきなのか何なのか。海水コントローラーやはいどう手綱の方が役に立ちそうだと思うのは僕だけでしょうか(笑)?まあ、これまでそういった練習道具は数多く登場しましたが、それらの道具の集大成という感じなのでしょう。
季節カンヅメ   8頁 小三78年9月号
 真夏の暑さにすっかり参ってしまったのび太は、クーラーがきいているはずの家にやっと帰り着くが、家ではクーラーが壊れていた。ママもそのことで中古品を買ったからだと文句を言うが、夏が好きなパパは大して困ってはいない様子。ドラえもんに頼もうとしても部屋におらず、のび太はうちわを探すために押入れをいじるが、その中にたくさんのカンヅメが入った箱があるのを見つけた。その中の一個を適当に開けてみると、突然周囲が暑くなってきてのび太は苦しみだしてしまう。帰ってきたドラえもんがカンを外に捨てたので事なきを得たが、このカンヅメは「季節カンヅメ」の詰め合わせで、お中元にもらったのだと言う。カンを開ければ8時間、春夏秋冬のどれかの季節を作り出すことが出来るのだ。試しに春をあけると部屋の中の空気が春らしくなり、隣の家の桜の木の所にカンを放り込むと桜の花が咲いた。さらに秋のカンを開けて隣家の柿の木の横に投げ入れると、柿の実がなった。そしてドラえもんは冬のカンヅメを開けて涼むが、あまり寒いのでのび太はセーターを出すようママに頼み、ママはカンヅメの存在を知って冬のカンを借りることにする。気持ちよくなったママは家中を冬にしてしまうが、それに怒ったパパは冬の缶を外に投げ捨て、ドラえもんから夏のカンを借りて家中を夏にしようとしてしまう。それに驚いたママは夏のカンを外に捨てて怒り出し、夏か冬かで口論を始めてしまうが、その時外から誰かの声が聞こえてきた。それは次々にカンヅメを投げ込まれたためにめちゃくちゃな庭になってしまった隣の家の主人であった。  

 (解説)のび太がしょっちゅう窓の外に何かを捨てるのは、やはり親から受け継いだ癖だったんですね(笑)。野比家で繰り広げられるバカ騒ぎと、そのとばっちりを受けてしまう隣の家との対比が面白いですね。夏の暑苦しい描写が通常よりもしつこいほどに描かれている所も特筆点と言えるでしょう。
ジャイ子の新作まんが   10頁 小五、六90年8月号(ジャイアンの妹思いはいいけれど)
 近所のネコと一緒に合唱をするドラえもんだが、突然現れたジャイアンに邪魔されてしまったので仕方なく解散する。空き地でサッカーをしているみんなに出会ったドラえもんは仲間に入れてもらおうとするが、そこにもジャイアンが現れて騒ぐなと注意されてしまい、何事かと怪訝に思うみんな。ジャイアンはジャイ子が同人雑誌の締め切りに追われているのにいいアイデアが出ていないことを気にして、みんなを静かにさせていたのだ。まだ原稿が全然出来ていないと言うジャイ子を見たジャイアンは、編集長の茂手もて夫の所に行って脅しをかけようとするが、ジャイ子に止められたのでやめることにする。家で楽しくテレビを見るのび太とドラえもんだが、ドラえもんは家にもジャイアンが来るのではないかと心配する。そこに本当にジャイアンがやってきたので二人は慌ててしまうが、ジャイアンは今までの事情を二人に話し、ジャイ子が描きたがっている古代エジプトの時代考証のために、二人をタイムマシンで古代エジプトに向かわせようと言うのだ。だがその横柄な態度にさすがに二人は文句を言うが、ジャイアンに脅されて外に飛び出し、今までのジャイアンの勝手な行動のことを話すが、ジャイアンが珍しく平謝りするので、仕方なく二人は古代エジプトへ向かうことにする。二人は様々な写真を持ち帰り、ジャイアンは急いでジャイ子の所に持っていくが、今度はジャイ子は中世ヨーロッパを舞台にすることを考えていたと聞き、また二人に頼んで中世ヨーロッパの写真を撮ってきてもらう。ところが今度はジャイ子はジャイアンにも邪魔されない仕事場が欲しいと言い出し、ドラえもんは「カンヅメカン」を出してその中にジャイ子は入る。外で心配するジャイアンだがどうしようもないので無視することにし、そして編集長の茂手がやってきた。断ろうかとも考えるジャイアンだが、蓋が開いているので中に入ってみるとジャイ子は疲れきって眠っており、原稿は既に完成していた。茂手は受け取った原稿を読むが、そばでは「つまらない」と言った時に殴りかかれるようジャイアンが待機していた。その話はかわいい妹と、乱暴だけど妹思いの兄の話で、茂手はその話を読んで痛く感動した。顛末を聞いた二人は事が無事に済んだことを喜ぶのであった。  

 (解説)ウーン、さすがにこの時期になってしまうとこのパターンもちょっと食傷気味になってしまいますね。ジャイ子のために奔走するジャイアンの姿はいつ見ても面白いのですが、それだけではちょっとお腹いっぱいになってしまいますね。ただ、「泣くなジャイ子よ」で登場している茂手もて夫がきちんと再登場している所は細かくて好きです。
ハワイがやってくる   11頁 小四90年8月号(年月圧縮ガン)
 夏休み、スネ夫からのび太当ての分厚い航空便が届くが、案の定その中身はハワイで撮影したスネ夫の写真と、自慢がつらつら書き込まれた手紙だった。悔しがるのび太はママに頼んでどこかに連れて行ってもらおうとするがけんもほろろに断られてしまい、ドラえもんに頼んでハワイに行くことにする。しかしドラえもんは海外旅行なら飛行機や船で行こうと言い、そのどちらも持っていないので結局無理になってしまう。しずかの家に行くのび太だが、そこではスネ夫以外のみんなが集まって夏休みの中間発表をしていた。のび太は開き直って写真を見ることにするが、出木杉は夜更かしして撮影した天体写真を披露し、しずかは北海道へ行った写真と、天然記念物のマリモを見せた。それを見て慌てる出木杉だが、それはお土産用の作り物だったというのでとりあえず安心する。次にジャイアンは山口県の秋芳洞に行ってきたことを話し、さらにそこの鍾乳洞で取ってきた鍾乳石の先っぽを見せた。しかしそれを見た出木杉はものすごい剣幕で怒り出す。鍾乳石を取ることは禁止されているのだ。それを聞いてさすがにショックを受けるジャイアンだが、調子に乗ってのび太がからかったためにのび太はジャイアンに追いかけられてしまう。やっと家に帰り着いたのび太だが、みんなどこかに出かけていることをうらやましがり、そこでドラえもんは買ったばかりの「年月圧縮ガン」を出し、これを使ってハワイに連れていってやると宣言する。夜にならなければ出来ないと言うので夜まで待つことにするが、夜になって神妙な顔でジャイアンがドラえもんを訪ねてきた。やはり鍾乳石のことが気になっていて、何とか元に戻して欲しいと頼みにきたのだ。三人はどこでもドアで秋芳洞に行き、ジャイアンが壊した鍾乳石を見つける。そしてそれに年月圧縮光線を当て、何百年もかかる出来事をわずかな時間の中で進行させていく。そして鍾乳石は元通りになり、ジャイアンは安心して家に帰っていった。のび太は阿寒湖のマリモで実験してみることにするが、大きくしすぎたので逆光線で元に戻す。二人は改めてハワイに行くことにし、まず海岸に行って方角を合わせて海底に向かって光線を撃ち、その後は普通のボートに乗って海を出発した。怒り出すのび太だが、ドラえもんは地表のプレートについて説明し、ハワイ諸島が乗っかっている太平洋プレートが年に何センチか東に動いていることを利用し、年月を圧縮してハワイを日本側に連れてこようと言うのだ。ハワイでは夜の砂浜でスネ夫がくつろいでいたが、ボートでやってきたのび太たちを見て仰天してしまう。家に帰ってきたのび太はドラえもんからマイナスボタンで時間を戻すことも出来ると聞いて、地球から離れつつある月に光線を当てて地球に引き寄せてしまうのであった。  

 (解説)ヘタな子供向け科学解説書よりも役に立つかもしれないですね(笑)。今話はマリモ、鍾乳洞、そしてプレートや月のことと、いろんな話が目白押しに登場し、「科学マンガ」の側面を持つドラ世界の面目躍如という感じがします。鍾乳石のことで悩んでしまうジャイアンも珍しい描写でいいですね。ただ、ラストのオチは今までの話とはまったく関係がなく、さりとて「手にとり望遠鏡」のようにぶっ飛んだオチでもないので、なんか中途半端な気がしてしまいます。
海をひと切れ切りとって   7頁 小一85年10月号(きりとりナイフとフォーク)
 夏が終わったにも関わらず泳ぎの練習をしたいと言うのび太。二人はどこでもドアで南の島に行って練習することにするが、出かけるママから留守番を頼まれてしまい、出かけることが出来なくなってしまった。そこでドラえもんは「切りとりナイフとフォーク」を取り出し、ナイフで海の一部を切りとってフォークでそれを取り上げた。スモールライトで一旦小さくして家まで運んできた二人は、しずかも誘って一緒に泳ぐことにするが、しずかが着替える場所がない。ドラえもんは地球の反対側に行って土地を切り、暗闇を持ってきたのでしずかはその中で着替え、三人で仲良く泳ぐ。しかし浅すぎると言うのでドラえもんはもっと深い海を持ってきたが、浮き輪から外れてしまったのび太は溺れてしまい、泳ぐのをやめてしまう。さらにのび太は自分はスキーが好きだと言うので、ドラえもんは雪山を切りとって持ってくる。早速しずかと滑り始めるのび太だが早々に転んでしまい、スキーは嫌いだと言って雪だるまを作り始めてしまうのであった。  

 (解説)今回は道具中心ではなく、ストーリーがメインになっている話ですね。と言ってもそんなに密度の高い話が展開するわけではありませんが。それでも相変わらずののび太の情けなさを改めて描いていたりして、オールドファンも安心して楽しめる内容になっています。暗闇で着替えるしずかはなんかエッチな感じも…(笑)。
宝星   21頁 小五80年6月号
 テレビの前で何やら泣き喚くのび太。ドラえもんが聞いてみると、裏山から宝が発見されたことを悔しがっていたのだ。のび太は宝をいつか発見するという自分の夢を話し、どんどん発見されていったら自分が見つける分がなくなってしまうと言って泣いていたのだ。呆れながらも哀れんだドラえもんは「宝星探査ロケット」を取り出した。これは宇宙の果てまで飛び続けながら、搭載されている財宝探知レーザーで宇宙の宝を探す機械なのだ。しかしこれはロケットの進行上に宝がないと反応せず、宝くじよりも当たる確率が低いと言う。それでもと二人は三つのロケットを一斉に打ち上げる。もし見つかったら報知機のブザーが鳴るのだが、期待しないようにとドラえもんはのび太を遊びに行かせる。のび太はシャベルを持ったジャイアン達を見かけたのでついていってみると、二人は裏山に行って宝の残りがないかとあたりを掘り返し始めた。手伝うように言うジャイアンにのび太は宇宙の宝を探していることに触れてその場を去る。のび太はしずかにプールとテニスコートを作ってあげようと言うが、しずかはそれよりもこの間の電話代10円を返すよう言ってくる。家に帰ったのび太はブザーのことを聞くが、ドラえもんはお金のことでガツガツするなと注意する。しかし1号ロケットが宝を見つけたという合図のブザーを聞いて、ドラえもんは慌てふためいて外に飛び出してしまう。ドラえもんは帆船型の宇宙船を出し、それに乗って二人は宇宙へと旅立つ。方角を確認してワープすることであっという間に目標の地点に到着した二人は、「内用宇宙服」を食べて宇宙空間でも活動できるようにしてから宝の星へ向かって進んでいく。ついに到達した宝の星へ飛び降りる二人だが、突然海に落下してしまい慌ててしまう。だがそこはなぜか浅かった。さらに目の前をミニサイズの飛行機や船が通っていき、陸地に近づくとミニチュアのような町が存在していた。ここは小人の星なのだ。それでもブザーにしたがって宝が眠っている島に到着した二人は急いで掘り返すが、島がなくなるほど掘り返しても何も出てこない。実は掘っている最中に出てきた小さい金色の粉が宝だったのだ。落胆して地球に戻る二人。約束を守れなかったことをしずかに謝るのび太だが、しずかは最初から期待していなかった様子なので、のび太は意地になって残り二つに望みをかける。すると今度は2号ロケットからの反応があった。早速二人が出発すると、今度の星は先程の星よりも小さく、しかもそこには空気も何もなかった。それでも一応1周することにした二人だが、のび太が地面にあった穴に落ちてしまう。するとその中には大きな金の円盤がたくさん置いてあった。喜ぶ二人は一つずつ運び出すが、その時どこからかものすごく大きな手が伸びてきた。ここは巨人の住む星で、あれは貯金箱だったのだ。
 さすがにウンザリしたのび太は電話をかけてきたしずかの応対まで億劫がって出ようとしない。しかし3号ロケットのブザーがなったので、かすかな期待を抱きながら二人はまた出かけることにする。しかし今度の星は地球によく似ており、着陸してみると何もかも地球にそっくりだった。今度こそと望みをかけて掘り始める二人だが、出てきたのは大きな石貨だった。この星はまだ石器時代の文明なのだ。その星の人間とほんやくコンニャクを使って話してみると、二人はこの星で百億円ほどの宝を見つけたらしい。しかし石貨では地球での価値がないので、やはり諦めて二人は地球へと戻る。ジャイアン達にウソを言ったことをバカにされるのび太だが、宝を見つけたこと自体は本当なのだと言って、悔しがるのび太はあの宝を使うことにして、あの星へどこでもドアで向かう。のび太は見つけた宝を使ってその星の住人に望み通りの洞窟を造ってもらうことにしたのだ。そして完成したプールつきの家にみんなを招待するのび太。家こそ洞穴ではあったもののみんなはプールで泳ぎ、のび太はテニスコート建設のための計画を、その星の人たちと一緒に練るのであった。  

 (解説)世の中にトレジャーハンターもののマンガは数あれど、宇宙を舞台にしてしまった作品はそうはないでしょう。しかも宇宙を舞台にしているにも関わらず、なぜかスケール感が乏しい所がいかにも「短編ドラ」の味が出ていて好きです。まあ「宝さがし機」の方が現実的と言えばそうなんですけど(笑)。のび太以上に宝さがしに夢中になってしまうドラや、最初からのび太を当てにしていないしずかなど、キャラの細かい描写も生き生きしていて楽しいものになっています。
ブラック・ホワイトボールペン   8頁 小三87年2月号(ブラックボールペンとホワイトボールペン)
 パパが会社から、以前借りたカラオケセットを同僚の海野の家に届けるよう電話で頼んできた。ママはウンザリしてしまうが、なぜかのび太が率先して届ける役目を申し出る。一緒に行くことにしたドラえもんが聞いてみると、のび太は二度と0点を取らないと約束したにも関わらず、今日のテストで0点を取ってしまうと予測し、ママのご機嫌を取っておくことにしたのだ。それでもカラオケセットの重さにへとへとになってしまい、ドラえもんは仕方なく「ブラックボールペンとホワイトボールペン」を取り出し、ブラックボールペンを使って壁に円を書き、その中にカラオケセットを入れてしまった。慌てるのび太だがホワイトホールからいつでも取り出せると言う。海野さんの家に到着した二人はホワイトボールペンで円を書き、しまってあったカラオケセットを取り出す。セットを届けたのび太はその道具に感心し、自分も何かに使うことにする。その時二人は電柱に隠れているスネ夫を見つけた。マンガを買ってきたのだがジャイアンが待ち伏せしていると言う。のび太はブラックホールを書いてその中にスネ夫の本をしまってその場をやり過ごそうとするが、ドラえもんは慌てて描いたブラックホールを消す。待ち伏せしていたジャイアンはマンガを取り上げようとするが、スネ夫がどこにも持っていないので不思議がる。のび太はスネ夫の家に上がってホワイトホールを使ってマンガを取り出し、スネ夫と一緒に楽しくマンガを読む。そしてさらにしずかの持っていたバイオリンまでブラックホールの中に入れてしまった。のび太はその時もブラックホールを消し忘れ、さらにホワイトボールペンを落としてしまった。ドラえもんはホールを消そうとするが今度はドラえもんも中に吸い込まれてしまう。のび太はバイオリンを取り出そうとするが、ようやくホワイトボールペンがないことに気づいて慌てて探しに行く。その頃、自宅に帰ってきた先生は先程使ったホワイトボールペンを使ってテストの採点をすることにするが、のび太のテストを採点してまた0点だったので大きく「○」と書き、それがホールだと認識されて、そこからバイオリンとドラえもんが飛び出してくるのであった。  

 (解説)これは道具コンテストで賞を取った道具なのですが、話としては極めてオーソドックスな運びになっていますね。例によってボールペンを落とすのび太のおっちょこちょいぶりも相変わらずですが、今話では0点の「0」の字からドラたちが飛び出してくるというところが笑えますね。「ズボン」という擬音もいい味を出しています。



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