てんとう虫コミックス第45巻


うきわパイプ   7頁 小二85年5月号(うきわパイプとたばこ)
 6月になり、のび太は例年のごとく今から泳ぎの稽古をしたいと言い出す。それを聞いたドラえもんはのび太を南の島に連れて行って練習させようとするが、のび太は溺れるのを嫌がって行きたがらず、さらに冷たくなくて広くて空いてて絶対に溺れないプールを出してくれと無茶苦茶なことを言い出す。怒るドラえもんだがある道具に思い当たったドラえもんはその道具・「うきわパイプとタバコ」を出した。子供はタバコを吸えないと話すのび太だが、もちろんこれはパパに吸ってもらうのだ。パパにタバコを吸ってもらい、煙をたくさん吐き出してもらうと、なんとその煙が浮き袋のような形になって固まった。それを使うことで二人は空を飛ぶことが出来るようになり、ドラえもんはこの空をプール代わりにして泳ぎの練習をすることを勧める。のび太は早速バタ足の練習を始めるが、それが出来たところで練習に飽きてしまい、勝手に遊び始めてしまう。しずかを見かけたのび太はパパにしずかの分のうきわも作ってもらい、二人で仲良く遊ぶ。しかしそれをうらやんだジャイアン達が二人に文句を言ってきたので、のび太はさらにパパに頼んでうきわを作ってもらうことにするが、予想以上に友達がやってきたのでパパは吸いすぎで咳き込んでしまう。混雑してきた空を快く思わないのび太だが、さらにみんなは泳ぎの競走を始めてしまい、のび太は遅れてしまった挙句に勢いあまってうきわから外れて公園の池に落っこちてしまう。その様子を見たドラえもんはのび太が泳ぎの練習をしていると勘違いし、溺れているのび太に泳ぎの練習をさせるのであった。  

 (解説)「空を海のように泳ぐ」という、藤子Fマンガの根底に流れている夢の世界がまた描かれている話です。沈んでいくのび太にドラが水泳を教えるというラストのオチは思わず笑ってしまうほどに面白い図ですね。パパは咳き込むほどタバコを吸っていたけど、あれは体には害はないのかな(笑)?
ドラえもんが重病に?   10頁 小三89年10月号(ドラえもんの健康診断)
 のび太は明日のテストでまたまた自信がないので、ドラえもんに「コンピューターペンシル」を貸してくれと迫る。そんなのび太に、のび太の以前よりの努力を認めてはいるものの、それでもまだ努力が足りないと言ってドラえもんは道具を貸そうとせず、二人は取っ組み合いを始めてしまう。しかし突然ドラえもんの体から力が抜けた。頭がふらふらしてしまったらしい。そこへ未来の世界からドラミがやってきた。ドラミはロボットは一年に一度定期検査を受けなければならないのに、ドラえもんがまだ受けていないことを話して、ドラえもんを未来に連れて行こうとしていたのだが、ドラえもんはそれを断る。しかし体から妙な音がしてくるのでしつこく追及するドラミを煩わしく思ったドラえもんは家を出て行ってしまう。のび太はドラミからロボットがかかるかもしれない重病の話を聞いて、自分からもドラえもんを説得することを約束する。のび太はタケコプターでドラえもんを探しに行くが、当のドラえもんは近くの木に隠れていた。ドラえもんは長期入院にでもなった場合、のび太が一人になってしまうことが気がかりで検査を受けたがらないのだ。部屋に戻ったドラえもんは体から妙な音をたてながらも昼寝につく。のび太はしずかに聞いたりして八方探すがドラえもんは見つからず、さらに捨てられそうになっている中古車を見かけてそれをドラえもんとダブらせ、ますます心配してドラえもんを探す。その頃部屋ではドラえもんの前にネズミが現れ、ドラえもんの口の中に飛び込んできた。それは夢だったのだが駆けつけたのび太に起こされて目を覚ます。のび太はドラえもんを工場に行かせようとするが、ドラえもんも頑として譲らない。自分が心配だから未来に行かないことに気づいたのび太は自分の力でやっていけることを証明するために、明日のテストで60点取ることを約束する。厳しい約束であることを実感しながらも勉強を始めるのび太。しかしその時突然ドラえもんの体が震えだし、ポケットから道具が飛び出してきた。ドラえもんの体の中で何かが動いているらしい。さすがに参ってしまったドラえもんを見かねたのび太は、スモールライトで小さくなってドラえもんの体の中に入って病原菌ロボットを倒すことにする。あまりにも危険なので止めようとするドラえもんだがまた震えだしたので、のび太は急いで小さくなって体の中に入る。のび太には内部構造などわかるはずもないが、とりあえず前進することにする。すると赤い色をした小さな何かを見つけ、のび太はそれを追いかけるが、誤ってエネルギーオイルの中に落ちてしまい流されてしまう。それを助けてくれたのはミニドラだった。兄の体を心配したドラミが、ミニドラを小さくして体の中を調べさせていたのだ。一応ミニドラによっておかしい所を治してもらったドラえもんだが、後で検査に行くことをドラミと約束する。のび太は先程散らばった道具の中にコンピューターペンシルがあったことに気づいていたが、自分が約束したのだからと道具に頼らずに勉強を始め、そんなのび太の姿を見てドラえもんは思わず涙ぐんでしまうのであった。  

 (解説)ドラえもんが深刻な病気になってしまう。これは長い短編シリーズの歴史の中でもたった一回きりの設定です。ですが、この話に息づいている根幹のテーマは、「さようなら、ドラえもん」とまったく同一なものになっています。のび太が心配なあまり未来に帰れないドラえもん。そんなドラえもんを安心して未来に送ってやるために一人で奮闘するのび太。この二人の姿が全てです。二人が持っている互いを思う心は、ラストでのび太が自力で勉強をし、それを見てドラえもんが涙を流しながら見つめるという図に集約されていると思います。
強力ハイポンプガス   8頁 小五79年7月号
 ジャイアン達に追いかけられ、ギリギリのところで家に駆け込んできたのび太。二人はのび太の家のプールに入れろとしつこく迫ってくると言う。ドラえもんは入れてやればいいと話すが、のび太は「今はダメ」と言って聞かない。電話をかけてきたしずかからも同様の催促を受けるが、のび太はそれさえも断ってしまい、水着に着替えて風呂場に向かう。途中でパパやママから掃除やうちわ扇ぎのアルバイトを頼まれるが、それも断って浴槽に入り、ドラえもんに出してもらった「シネラマン」を飲んで浴槽が大きくなったようにしてしまう。のび太は泳ぎの練習を開始するが、すぐに溺れてしまったのですぐに止めてしまう。そこまで見てドラえもんは、のび太がみんなの前で溺れるのが恥ずかしいから断っていたことを理解した。ふてくされるのび太にドラえもんは「強力ハイポンプガス」を出した。このガスを吸えば、肺を強くして通常の千倍の空気をため込むことが出来るのだ。空気をたくさんためれば息切れすることもないので、溺れる心配がなくなると言う。胸にいっぱい空気を吸い込んだのび太は溺れなくなったので、ドラえもんに指導されて泳ぎ始め、どうにか泳げるようになった。しかしその時に大笑いしてしまったために、肺活量千倍の息を受けたドラえもんは吹っ飛んでしまった。みんなもプールに入れることにしたのび太は、先程頼まれた掃除やうちわ扇ぎも行い、みんなを誘いに行く。ジャイアン達はプールに入りたがらないが、のび太が文句を言った拍子にその息で吹っ飛んでしまったので仕方なく入ることにする。みんなにも自分が泳げることを自慢するのび太だが、みんなが帰ってからもずっと一人で泳ぎ続けたために風邪を引いてしまい、夕食の際にくしゃみ一発で食卓ごと家族三人をふっ飛ばしてしまうのであった。  

 (解説)ウーン、話自体は面白いのですが、問題はこの話へと繋がっている前段階の作品・「うちのプールは太平洋」がてんコミ2巻に収録されているって事なんですよね。いくらなんでも離れすぎてしまっています。収録する作品の選出に苦労するようになったとはいえ、もう少し考えて選んで欲しかったというのが正直な感想ですね。以前はFFランドに収録されていただけなので、待望の収録ではありました。
南海の大冒険   20頁 小三80年9月号(南海の大ぼうけん)
 大慌てで部屋に駆け込んできたのび太。のび太は学校の図書館で「宝島」という本を読んだと言うのだが、そこまで聞いた時点でドラえもんはのび太を制す。のび太は宝島に行きたいと言い出すことを見越していたのだ。夢見がちなのび太を厳しく注意したドラえもんは自分の力で金を稼げるようになれと話すが、テレビで海賊キッドの埋めた宝がある島で発見されたというニュースが流れ、それを聞いたのび太は怒ってドラえもんに飛びかかってしまう。仕方なくドラえもんは「宝さがし地図」を出した。これは世界中を360枚に分けて描いた地図で、針で地図を突っついて探し、正確に宝の上を刺すとブザーがなると言う。その発見確率の低さをのび太に聞かせるドラえもんだが、のび太はなんと一発で宝のありかを探し出してしまった。ドラえもんはどこでもドアで出かけようとするが、のび太は船に乗って冒険がしたいなどとわがままを言うので、ドラえもんは海に行って帆船型のモーターボートを出し、二人はそれに乗って出航することにした。船出したことを後悔しないかとドラえもんは問いただすが、深く考えていないのび太はやる気まんまんだ。しかしすぐに腹が減り、食事を作るのを面倒がったのでのび太はドラえもんに文句を言われながらも家に帰ってご飯を食べる。ジャイアン達からの野球の誘いも断って二人は再び船に行くが、周り中海だらけなのでのび太はもう飽きてしまい、海賊や嵐が出ないものかとわがままを言い出してしまう。ドラえもんは「ほどほどあらし」を出し、ほどほどの嵐を作り出した。これは船が絶対沈まないように出来ているのだが、それ以前にのび太は気持ち悪くなってしまい、さすがにドラえもんも呆れてしまう。家に戻って散歩に出かけて気分を落ち着かせるのび太だが、ジャイアン達につかまってしまう。野球のメンバーが足りなくで野球が出来なかったらしいのだが、のび太が宝島を探しているという話を聞いて爆笑してしまう。悔しがったのび太はジャイアン達を海賊役にするようドラえもんに頼み、ドラえもんはうまく二人を誘導して二人に帽子をかぶせ、海賊船まで連れてくるが、二人は嫌がって帰ろうとしてしまい、のび太が説得したので何とか二人も付き合うことにする。ジャイアン達はのび太達の船を追いかけたり砲撃したりするが、これにもほどほど装置がついていて絶対当たらないはずなのになぜか当たってしまう。ほどほど装置が故障していると気づいたドラえもんは二人がかぶっている「ハンディキャップ」を締めて二人を気絶させ、そのスキに機械を修理する。日が暮れたので4人は町に帰るが、もし宝がなかった場合はとジャイアンはのび太を脅すのであった。
 それから毎日、追いつかない追いかけっこをしたり、当たらない大砲を打ったりするというワンパターンの船旅に飽きてしまったジャイアン達は、どこでもドアで勝手に町に戻ってしまう。だがのび太も船旅に飽きており、しかも43日後でないと島に着かないと聞いてウンザリしてしまい、のび太はどこでもドアにタイムふろしきをかけて43日分の時間を進ませ、宝島に到着する。4人は宝の埋まっている山にまで走り出すが、のび太は早々にバテてしまったのでジャイアン達に追い抜かれてしまい、仕方なくハンディキャップを締めてまた二人を気絶させる。ところがのび太達が宝のありかに着いてみると、既に掘り返されたあとだった。ここは以前テレビで紹介されていた海賊キッドの宝が埋まっていた島であり、地図は宝が発見されたことを知らなかったのだ。事実を知った時のジャイアン達の怒りを察した二人は何とかこれを埋め合わせようと、適当なものを集めて宝にしようとするのであった。  

 (解説)今の時点では、「南海大冒険」の元ネタになった話といったほうが通じやすいのでしょうか。後年になってそういう経緯をふむことになる本作ですが、今話は話の展開が単調で20ページのページ数をうまく消化しきれていない感じがします。ジャイアンではないですが読んでいて飽きてしまいました。のび太のわがままやヘナチョコさも今話に限っては素直に笑えるものではなく、むしろあまりのふがいなさに怒りさえ湧いてきてしまったりして(笑)、個人的にはあまり好ましい作品とは言えなくなってしまいました(あくまで個人的な考えなので)。まあそういう部分が今話の見所なのかもしれませんが。
自然観察プラモシリーズ   10頁 小五、六91年2月号
 大きな恐竜のガレージキットをスネ夫から自慢されるのび太。その出来栄えをうらやましがるのび太はドラえもんに頼み込もうと考えるが、それに感づいたスネ夫はこっそりと後をつける。のび太からプラモのことを頼まれたドラえもんは「TOKYO22世紀」というプラモのことを話すが、これは東京ドームより広い土地で作り、しかも完成するのに30年かかると言う。ドラえもんはのび太が今までプラモを作ろうとしてもすぐに諦めて投げ出してしまったことをもちだすが、のび太に泣きつかれたので仕方なく「自然観察プラモシリーズ」を出した。二人はそのナンバー1を組み立てるが、出来上がったのは小さな粒を飾り台に乗っけたものだった。これで完成だと聞かされて驚くのび太だが、それは家の外から様子をうかがっていたスネ夫も同じで、笑い出したスネ夫は登っていた電柱から足を滑らせて落っこちてしまう。だがプラモを見てみると、なんとプラスチックの毛虫が動いていた。先程の粒はタマゴだったのだ。このプラモは実際のように成長することが出来、しかも一日分を10分で済ませてしまうのだ。幼虫はあっという間にさなぎになり、そして成虫であるチョウになった。喜ぶのび太だがチョウはすぐに元のタマゴに戻ってしまった。のび太はしずかにこのプラモを見せることにし、電話でしずかを招待する。スネ夫は空き地でジャイアンにのび太のプラモのことを話して笑うが、そこへのび太の家に向かうしずかを見かけ、しずかにつまらないことだと忠告する。やってきたしずかにちょうど成長したカエルを見せるのび太だが、しずかはカエルが嫌いなので怖がってしまう。二人はもっと違うものをしずかにあげることにし、しずかはツバメのプラモをもらうことにし、成長しきった状態で保存できる停止液も借りていく。戻ってきたしずかに話しかけるスネ夫たちだが、しずかから話を聞いて二人は笑い飛ばすが、スネ夫が気になって様子を見ると、しずかが作ったプラモのツバメが空を飛んでいった。スネ夫は早速のび太の家に上がりこんでプラモをもらうことにし、怒るドラえもんにウソを言って驚かし、そのスキに一番大きなタマゴのプラモと停止液を持ち去ってしまう。スネ夫は早速プラモを作るが、それから少し経ってスネ夫からのび太の家に助けを求める電話が入った。スネ夫はウルトラザウルスのタマゴを作ったのだが、あまりに大きすぎて家が壊れる寸前になってしまい、しかも停止液をかけてしまったので元に戻すことも出来ず、さすがにドラえもんも諦め顔になるのであった。  

 (解説)プラモも時代が巡り巡って、ついにガレージキットが登場しましたね。よだれを垂らしてうらやましがるのび太の顔は最後期では屈指の笑える顔です(笑)。感じとしては「生き物しいくジオラマブック」に近いものがありますが、タマゴを産むものなら何でもあるという所は、「タマゴ産ませ燈」を思い浮かべますね。
四次元くずかご   10頁 小六85年11月号
 高井山の紅葉を今度の日曜日に見に行こうと話すしずかと出木杉だが、それを聞いたのび太はこれから行こうと言い出し、早速ドラえもんに頼みに行く。しかしドラえもんはいないのでスペアポケットを借りることにするが、なぜか寝床にはスペアもない。ところがのび太はその寝床の奥にあるくずかごを見つけた。中をいじるとドラえもんの道具がたくさん出てきたが、やって来たドラえもんによるとこれは「四次元くずかご」と言って、壊れて使えなくなった未来道具を捨てるゴミ箱なのだと説明する。また出かけようとするドラえもんにスペアポケットを貸して欲しいと頼むのび太だが、ドラえもんは今までのび太が未来道具を使って散々な目にあったことを話し、道具は勝手に使わせないと宣言する。そこでのび太はくずかごの中から使えるものがないかを探すが、タケコプターは使えそうだったので、しずかを誘って高井山に行くことにする。しかししずかは家で留守番を任されていると言うので、のび太は「分身ハンマー」を出してしずかの分身を作るが、どこかがおかしいためか分身の色が薄くなってしまった。飛び方が不安定なタケコプターに悪戦苦闘しながらも二人はどうにか高井山に着き、しばらく美しい紅葉に見とれるが、弁当を食べることにしてのび太は「グルメテーブルかけ」を出す。しかし出てきた料理は味も匂いも変だったので食べないことにした。二人は帰ることにするがタケコプターのコントロールが利かないので勝手に振り回されてしまい、山奥の方に飛んでいってしまう。のび太はどこでもドアを出して帰ろうとするがドアは壊れているので使い物にならず、仕方なく山を歩くことにする。そのうち夜になって冷え込んできたのでのび太は「着せかえカメラ」を出してしずかにオーバーを着せようとするが、信用できないしずかは試しにのび太を撮影する。するとのび太は素っ裸になってしまった。とりあえず壊れたタイムふろしきを腰に巻いたのび太だがやはり寒くてしょうがない。「SLえんとつ」を使って家まで走ることにするが、煙ばかりが出てちっともエネルギーが生まれない。その煙の中に様子を見に来たドラえもんが現れた。ドラえもんは勝手なことばかりするのび太を懲らしめるためにスモールライトでのび太を小さくし、箱庭シリーズ「そう難ごっこの山」にのび太を置いて困らせるのであった。  

 (解説)元から壊れているとわかっているものを使ってしまうのだから、のび太は随分無鉄砲ですね。何も考えてないだけ(笑)?今話も結局のび太が勝手に道具を使ったために、のび太自身がひどい目にあってしまうわけですが、便利な道具ではない道具を使って起きる騒ぎとしては、後年に「ドラえもんがいなくてもだいじょうぶ?」がありますね。
ボトルシップ大海戦   10頁 小四90年11月号(船舶びんづめ材)
 のび郎おじさんが作ったボトルシップを見せてもらうのび太。ビンの中に船の模型があるという不思議な模型に感心したのび太は早速しずかにそれを見せに行くが、それを見たスネ夫はもっとすごいのを見せようと言ってみんなを自宅へ連れて行く。そこにはコロンブスが乗っていたサンタ・マリア号のボトルシップがあった。またスネ夫に嫌味を言われたのび太はドラえもんに頼み込むが、ドラえもんもその気になってゴミ捨て場からビンを探し始める。ところが後をつけてその様子を見ていたスネ夫は二人の行動を邪魔しようと先回りしてのび太の家に行き、ママに宿題がたくさん出たとウソを言う。二人は結局二つしかビンを見つけられなかったが、例によって自分の息子よりもスネ夫を信じるママはのび太に宿題をさせようとし、二人は慌てて外に逃げ出す。二人は空き地にかべ紙ハウスを貼って秘密の部屋を作るが、きっとここに来るであろうと予測していたスネ夫が待ち伏せていた。ドラえもんは中で「船舶びんづめ機」と「船舶専用レーダー高性能ワールドタイプ」を出した。レーダーをびんづめ機につないでびんづめ機のノズルをビンにさし、船を見つけてキャッチボタンを押すとビンの中にコピーが映し出されるのだと言う。試しにやってみたのび太はたくさん船がある場所を見つけてコピーしてみるが、映ったのは公園のボートで、しかも誰もいないのにオールが動いていた。生き物はコピーできないのだ。海の船である「ふじ丸」をコピーした二人は、さらに帆船をコピーするためにレーダーをタイムマシンモードに切り替え、さらにビンを探しに行く。しかしその間にスネ夫がかべ紙ハウスごと持ち去ってしまい、ママから小遣いをもらってあきびんをたくさん買ってきて船のコピーを始めた。一方あきびんを集めて戻ってきた二人だが、かべ紙ハウスが消えていることに驚く。スネ夫はいろいろな船を集めるが、イギリス海軍の船が大砲を撃った時の弾がガラス瓶を壊してしまった。のび太達はスネ夫の仕業だと考えてスネ夫の家に向かうが、かべ紙ハウスの中では様々な船が海戦を始めてしまったのでビンが割れてしまい、コピーの水が溢れ出してきてスネ夫は流されてしまうのであった。  

 (解説)序盤はいつもの展開ではありますが、今話ではのびドラが何かをする前にスネ夫が先手を打って行動するという、ちょっと変則的な展開になっています。さすがに同じパターンを何年もやってきたのですから、これくらいの新味は必要でしょう。例によってのび太よりスネ夫を信じるママも出てきますが、はっきり言ってあれじゃ親失格だよな(笑)。
タイムワープリール   10頁 小四85年12月号
 今日はクリスマスイブなのだが、のび太は今晩贈られてくるプレゼントが一体何なのか気になって仕方がない。のび太はドラえもんに連れられて気晴らしにしずかの家に行くが、しずかは出かけていたので部屋で待つことにする。しかしなかなか帰ってこないのでのび太はイライラしだし、そんなのび太にドラえもんは「タイムワープリール」を出す。これを使うと時間をすっ飛ばして未来の時間に移動することが出来るのだ。少し動かしてみるがまだしずかは帰ってこないので、もう2,30分動かしてみると、突然部屋にしずかが現れた。二人はしずかと一緒に楽しく遊んで家に帰るが、調子に乗ったのび太は家に帰るまでの時間を飛ばしてしまう。そしてのび太は見たいテレビが始まるまでの時間がもったいないのでそれも飛ばしてしまい、一度飛ばした時間は元に戻せないとドラえもんに注意される。しかしそれでも気にしないのび太はそのまま一気に夜中にまで時間を飛ばしてしまう。そしてプレゼントを見てみるが、中に入っていたのは伝記の本だった。つまらないプレゼントにがっかりしたのび太は、思い切って来年のプレゼントを確認することにし、ワープリールを使って来年のクリスマスにまで飛んでいってしまう。しかしその年のプレゼントもいいものではなく、のび太はさらにもう一年飛ばすがそこでも良いプレゼントではなかったので、怒ったのび太はずっと先の未来にまで飛んでしまう。するとそこでは大きなイヌのロボットがプレゼントとして置かれていたが、そこにのび太そっくりの子供がプレゼントを取りに来た。のび太は時間を飛ばしすぎたために大人になってしまい、妻であるしずかや息子のノビスケまで存在していた。のび太は帰ろうとするがワープした時間は二度と戻らないという言葉を思い出して絶望する。それでもドラえもんが助けに来てくれることを願うが、自分が戻ったらこちらの世界の自分がいなくなってしまうことになり、のび太は混乱してしまう。その時ワープリールが変な音を立て始めたかと思うと突然爆発し、次の瞬間のび太は初めて道具を使ったしずかの部屋に戻ってきていた。話を聞いたドラえもんは無理しすぎて機械が壊れ、その拍子で全ての時間がリセットされたのだと言う。それを聞いて喜ぶのび太は、遅れて入ってきたしずかを笑顔で迎えるのであった。  

 (解説)タイムパラドックスを用いた複雑な話にこそなっていないものの、時間を飛ばしすぎて大人になってしまうというやりすぎの描写が笑えます。まあ、昔の作品には「無人島へ家出」なんていうとんでもない話もありましたが、その時よりはナンセンス色が薄れているのでしょうね。しかし、一年に一度のクリスマスプレゼントであんなプレゼントを贈る親も嫌だな(笑)。
人間すごろく   8頁 小四75年1月号
 朝から部屋をきれいに掃除するのび太。しずかが部屋に遊びに来るというので今からウキウキしているのだ。しずかを迎えに行ったのび太は、ジャイアン達と話しているしずかを見かけ、ジャイアン達も遊びに来たがっているのを聞いて渋々承知する。しずか達三人は何で遊ぶかで話が盛り上がるが、のび太はみんなで、幼稚園の頃雑誌についていた付録のすごろくで遊ぼうとしていたのだ。それをバカにされたのび太はみんなに仲間外れにされてしまい、それを聞いてさすがに怒ったドラえもんはみんなですごろくをすると宣言する。しずか達はスネ夫の家でトランプをすることにしたが、急にジャイアンとスネ夫が方向を変えて空き地の方に行ってしまった。それを見て怒ったしずかはのび太の家に行ってしまう。やはりすごろくをやると聞いてつまらなそうな顔をするしずかだが、これはドラえもんが作ってくれたすごろくなのだと言う。二人がすごろくのコマを動かすと、なんとその通りにジャイアンとスネ夫が動き始め、「歌を歌え」という指示のマスに止まったスネ夫は歌を歌い始め、ジャイアンは友達の女の子から招待を受けるが「四つ戻る」が出たのでジャイアンは反対側に移動していってしまい、さらに「振り出しに戻る」が出たスネ夫は一気に空き地にまで戻ってしまう。それからも三べん回ってワンと言ったり、交番や工事現場の真中で止まってしまったりするジャイアン達だが、のび太としずかは同時にゴールした。するとジャイアン達もゴールであるのび太の家に到着し、のび太は「みんなで」すごろくをしたことを喜ぶのであった。  

 (解説)45巻の中では古い話ではありますが、ドラ世界の基本に立ち返ったかのようなのんびりとした話の展開は個人的に好きです。すごろくと言う子供たちにとって身近なものを題材にして道具を作っている所もプラス点ですね。
身がわり紙人形   10頁 小三、四91年3月号
 しずかの家で、しずかの友達や出木杉と一緒にひな祭りを楽しむのび太。のび太は女の子だけ買ってもらえるひな壇をうらやましがるが、出木杉が雛人形は昔は切細工で簡単なものだったという歴史を話し、一同が感心した所でしずかのママがひしもち型のケーキを持ってきてくれた。早速食べようとするのび太だが、後から来るはずのドラえもんがまだ来ないので、のび太はケーキを残しておくよう頼んでからドラえもんを迎えに行く。のび太はタケコプターで急ぐが、その時飛んできた野球ボールを蹴っ飛ばし、それがホームランになってしまったのでジャイアンズが負けてしまったらしく、ジャイアンが怒り出したのでのび太は急いで家に向かう。家ではドラえもんが何か悩んでいた。階段付近にネズミが出たと言うのだが、階段の下にプレゼントを落としてしまったので拾いに行かなければならないと言う。ネズミを怖がって取りにいけないドラえもんだが、いい考えを思いついて「身がわり紙人形」を取り出した。一枚はがすとそれがドラえもんの身代わりをするようになり、身代わりはドラえもんの代わりにプレゼントを取りに階段を下りていき、その際にネズミが出なかったのでドラえもんも安心して降りていく。しかし身代わりはプレゼントを持ったままで外に出てしまい、風に飛ばされてしまう。追いかける二人だがのび太がジャイアン達に見つかってしまったため、のび太は紙人形に身代わりを任せてジャイアンの相手をさせる。ところがスネ夫はそれには引っかからなかったので追いかけられてしまい、のび太は偶然出会った先生と一緒に歩いて難を逃れるが、まだスネ夫はついてくるので紙人形をもう一つ作ってそっちにスネ夫の相手をさせる。喜んでしずかの家に行こうとするのび太だが、今度は先生につかまってしまって、漢字学習のために先生の家に連れて行かれてしまう。その頃身代わりののび太がしずかの家に到着し、同時に風で飛んでいったドラえもんの人形やもう一つののび太人形も飛んできて、しずかは二人を中に入れる。やっと先生から解放されたのび太達は急いでしずかの下に行くが、身代わりが全部ケーキを食べてしまったと聞いて、怒って人形を追いかけるのであった。  

 (解説)最後期の作品にしてはすごくナンセンスな仕上がりを見せている話です。身代わりを見て何の違和感も抱かないのもそうですが、やはり白眉はのび太の身代わりが2つも来たのに平然としずかが受け入れている所です。ママもドラの身代わりを見て「うすっぺらになって」なんて言っているし、こういうバカらしさがドラ世界本来の味なのだなあと改めて実感させられる話です。
何が何でもお花見を   8頁 小三86年4月号(お花見)
 しずか達三人から花見の話を聞いて自分も行きたくなったのび太は、明日の日曜日が最後のチャンスだと聞いてママに相談する。しかしママはパパの都合でいけないと話し、パパは翌日にゴルフがあるのでいけないと話すので、のび太は悲しんで泣き出してしまう。見かねたドラえもんは何とかすると言ってどこかに出かけていく。するとなぜかしずかのママが訪ねてきて花見の話をたくさんママにしていき、パパもゴルフが中止になってしまったと言う。そこでようやく花見に行くという話が持ち上がり、のび太は喜ぶがなんと翌日は大雨になってしまった。天気にも見放されたのび太はふてくされて寝込んでしまうが、約束を守ることを誓ったドラえもんは絶対に花見を行うことを決める。そして夜中、のび太を起こして花見に出かけ、散ってしまった桜の木に「花さかばい」をかけて一面の桜の花を作り出す。それでも不満そうなのび太の不満を全部聞き入れて望みをかなえることにしたドラえもんは、のび太の願いを「夜昼ランプ」、「立体効果音8チャンネル(花見のにぎわい)」、「グルメテーブルかけ」を使って叶え、さらに「ゆめふうりん」で家族やしずか、ついでに近くの酔っ払いまで連れてきて花見らしい花見を楽しむ。満足したのび太はわがままばかり言ってしまったことをドラえもんに謝る。翌日、花見に行った写真がアルバムにはさんであるのを見て、いつ行ったのかとママは不思議がるのであった。

 (解説)確かにのび太は運が悪いようですが、そんなのび太を見かねたドラが次々にいろんな道具を出して願いを叶えていくという展開が、桜の風景とも相まって華やかでいいですね。「のび太のわがままをあそこまで叶えるのはおかしい」と考える向きもあるかもしれませんが、今回に限っては大目に見たいところです。誰でも子供の頃、行きたい所に連れて行ってもらえなくて悔し涙を流した経験があるでしょうからね。
人間うつしはおそろしい   8頁 小四75年3月号
 またのび太はママに説教されてしまうが、余計なことを言ったために余計ママを怒らせてしまう。だがのび太はあまり真摯に受け止めず、しかも自分が人並みになるのではなく、人が自分並みになる道具はないかとまで聞いてくる。呆れてしまうドラえもんだがのび太は人間に能力差があることは不公平だと自説を述べ、ドラえもんはとりあえずと液体が入った試験管を出し、それをのび太に飲ませる。それは「人間うつし」という名のばい菌で、体の中で増えたばい菌は汗になって流れ、やがて乾いた汗は空気に混ざり、その空気に触れた人間はのび太病にかかってのび太そっくりになるのだと言う。マスクをつけたドラえもんはのび太を町中にばい菌をばらまかせに出発させる。そして翌日、のび太よりも先にパパの方が寝坊したことで騒ぎ出し、ママは料理を作ろうとするが面倒がってご飯を作りたがらない。早速のび太病が出てきたのだ。朝食を取らずに学校に向かうのび太だが、みんなそろって遅刻しており、先生さえも遅刻してしまった。さらにみんなも先生も算数の問題がわからず、その後の授業もめちゃくちゃになったのでのび太はみんなが平等になったことを喜ぶが、ドラえもんものび太も共に腹を空かしていた。ママはどこかに遊びに行ってしまっており、二人はママを探しに行くが、その途中でイヌに追いかけられてドブに落ち、泣き喚くスネ夫を見て二人は面白がる。さらにジャイアンがあやとりをしているところも見かけるが、ママは女の子にまぎれてゴムとびをしていた。ご飯の作り方を忘れたと言うママを見てさすがに困ってしまったのび太は、元に戻すようドラえもんに頼む。全てが元に戻って反省するのび太だが、のび太は先生にばい菌を飲ませてそのばい菌に自分が感染するなどと言い出し、それを聞いたドラえもんは呆れかえってしまうのであった。  

 (解説)「ビョードーばくだん」とまったく同系列の話ですが(「クルパーでんぱ」はこの際おいておきましょう)、今話ではのび太と同じになったために生ずる被害の部分があまり描かれていないので、その点では「ビョードー〜」の方に劣ってしまっていますね。ただ今回はばい菌の散布法がなんかリアルで、その辺は笑い系のビョードーばくだんよりは良いと思います。
地図ちゅうしゃき   8頁 小二85年12月号
 始業時間間近の学校の近くの公衆電話から家に電話をかけるのび太。宿題をやったノートを家に忘れたが、取りに帰る暇がないというのだ。だが話しているうちにチャイムが鳴ってしまったのでのび太はやむを得ず教室に駆け込む。するとノートの方が先にのび太の机に届いており、のび太は喜ぶが一体どうやったのか不思議がる。下校してドラえもんに聞いてみると、ドラえもんは「地図ちゅうしゃき」を使ったのだと言う。だが使い方が難しいのでのび太には貸さないことにするドラえもんだが、ママから声をかけられたのび太は急いで宿題をするふりをし、それを見たママは代わりにドラえもんにおばさんの所へお使いに行くよう頼む。仕方なくドラえもんは東京の地図を取り出してその中からおばさんの家の場所を探し当て、そこにちゅうしゃきを指して上の部分に荷物を入れ、地図に向かって注射する。するとすぐに荷物が届いたという電話がおばさんからかかってきた。一部始終を見ていたのび太は使わせてもらう事にし、宅急便を始めることにする。どこでもドアで宣伝に向かうのび太だが、どこでもドアでやれば簡単だと言うしずかのツッコミをうけ、意地でもちゅうしゃきで送ることにする。ジャイアンにそれを知らせると料金の10円が高いというのでただにし、ジャイアンはスネ夫からマンガを3冊貸してもらうよう注文する。さすがにスネ夫も断ろうとするが、相手がジャイアンなので泣く泣くマンガを渡す。のび太は早速ちゅうしゃきで本を送るが、ジャイアンからは催促の電話が届いてしまう。目標から百メートルも離れた地点に届いていたのだ。その様子を見かけたジャイアンは本を貸すよう言うがのび太はちゅうしゃきで届けると言って聞かない。ドラえもんは地図が本物の町のように見える虫メガネをのび太に渡し、のび太はそれを使ってジャイアンの家に本を送るが、針の突き刺し方が浅かったので屋根の上に乗っかってしまった。続いて差し込むもまだ届いていないと言う。今度は針を深く刺しすぎて地面の中に入ってしまったので、二人は地面を掘り返す羽目になってしまうのであった。  

 (解説)ドラは一見簡単そうに道具を使っていますが、やはり未来道具を使いこなすにはそれなりの腕が必要だったんですね。展開としてはのび太のおっちょこちょいぶりを描いたオーソドックスな話ですが、やはり面白いのは「どこでもドアでやればいいのに」というしずかのツッコミでしょう。これは今話の道具に限らず、他のいろんな道具に言えることですからね(笑)。
トロリン   9頁 小五76年8月号
 青ざめた顔で帰ってきたのび太だが、ドラえもんが軽口を聞いたためにのび太は怒ってしまう。改めてわけを聞くと、大変な役目を押し付けられたと言う。その時スネ夫が野球場で取ってきたホームランボールを自慢していたのだが、そのボールを見ようとしたジャイアンともみ合った弾みでボールを投げ飛ばしてしまい、近くに住む怖い学生にぶつかってしまった。学生は怒ってボールを持ち去ってしまい、ジャイアンはボールを取り戻しに行く任務をのび太に押し付けてしまったのだ。話を聞いたドラえもんは「トロリン」という薬を出した。家の外でのび太が出てくるのを待ち伏せるジャイアンとスネ夫だが、出て来たのび太に今度は「逃げる気だった」と難癖をつけて、学生のアパートまで連れて行こうとする。しかし次の瞬間のび太はぱっと消えてしまった。のび太はトロリンを飲んだことで自在に液体になれる能力を身につけたのだ。アパートに着いたのび太は学生の部屋を探すが、その時その学生の部屋から追い出されたラーメン屋の人を目撃する。その人たちの噂話を聞いて怖がりながらも液体になって部屋に侵入するのび太。押入れにしまってあるボールを見つけたのび太だったがその時に大声を出してしまったので学生に気づかれ、押入れを開けるが中のゴミに潰されてしまう。学生はのび太を捕まえようとするが、寸前でのび太が液体になったので勢い余って学生が窓ガラスを割って外に飛び出してしまった。ボールを取り戻したのび太に感謝するスネ夫だが、ジャイアンはのび太からトロリンを取り上げて自分も液体になれるようになって、道にいる女の子達のスカートの中を覗き始める。それに気づいて逃げる女の子たちをジャイアンは追い掛け回すが、その際ドブに落ちてしまい、泥水が混ざってジャイアンの体はぶくぶくに膨らんでしまうのであった。  

 (解説)この時期のドラには何でこういう「怖い大人」が出てくるんでしょうか?時代背景で何かあったのでしょうか?それはともかく、今話の真の見所は何かと言えば、ラストのジャイアンです。トロリンを飲んで液体になったジャイアンは「コソコソしのびこむようなみっともないまねはしねえ」と言っていますが、ここで全国のドラファンと一緒に突っ込んでみましょう。「こそこそパンツを見ることはみっともなくないのか!?(笑)」
ガラパ星からきた男   51頁 小三、四、五94年7〜9月号
 庭に座り込んでボーっとアリを眺めるのび太。だがのび太は草むしりの途中だったのでママに注意されて草むしりを急いで始める。しかしママはさらにいろんな用事を押し付けてくるのでのび太は怒り出してしまうが、実はこれは小遣いと引き換えにのび太が頼んだものだった。超人気のゲームソフト・「紅帝伝説」が発売されるので、まとまったお金が必要だったのだ。そんなのび太の所にやって来たジャイアンとスネ夫は今買ってきたばかりの「紅帝伝説」を見せ、もうすぐ売切れだと脅かす。それを聞いて慌てるのび太は小遣いだけを前借りしようとするがママに叱られてしまう。貯金箱を見てもいくらも入ってはいないので悔しがるのび太をドラえもんはやんわりと諭すが、のび太はやる気をすっかりなくしてしまう。ドラえもんはこれで叩けばその時考えていたことを忘れてしまう「ワスレバット」でのび太を叩こうとするが、のび太は急に何かを思いついたようで、タイムマシンに乗っていずこかへ向かった。行き先は一ヵ月後の未来で、未来の貯金をもらってこようという考えだったのだが、果たして貯金はたくさん貯まっていた。しかしのび太は自分の部屋に緑色のじゅうたんが敷かれていることに疑問を抱く。しかものび太の目の前を魚が飛んでいったので、のび太は急いで後を追うが見失ってしまい、今度は逃げたと思われるしずかのカナリヤを見つけたので捕まえようとするが、なぜかカナリヤのくせにイヌのように吠え、しかも網を破って逃げていってしまう。しずかに知らせるために家に向かったのび太だが、なんと出てきたのはアリのような姿をした人間の親子だった。町中がひっそりして誰もいないことを怪しむのび太は、さらに空き地に止まっているUFOを見つけ、ただ事ではないと直感。現代に戻ってドラえもんに相談することにするが、ドラえもんはのび太の思い付きを忘れさせるためにワスレバットを持って待ち構えており、のび太が話そうとした瞬間にバットで叩いたためにのび太は未来での事をすっかり忘れてしまう。ドラえもんに言われるままに草むしりを始めるのび太だが、どうも釈然としない。
 だがすぐに草むしりに飽きてしまったのび太はドラえもんに頼もうとするがドラえもんは厳しく突き放す。そこへしずかから電話がかかってきた。困っていることがあるので相談に乗って欲しいと言うしずかの頼みを聞いて、家の仕事をほっぽって駆けつけるのび太。ノラネコがしずかのカナリヤを狙ってきてしつこいので何とかして欲しいというのがその頼みだったが、のび太はドラえもんに相談してみることにする。一方ドラやきを買ってきたドラえもんはまたのび太がいなくなっているのを見て、のび太がタイムマシンで未来の自分の貯金を取りに行ったのだと推測。またワスレバットを持って机の前で待ち構えるが、なんとそこからもう一人ののび太が出てきて、ドラえもんはそののび太もバットで叩いてしまう。そちらののび太はママにお使いを頼まれてすっきりしない気分ながらも出かけ、現代ののび太と道一つ挟んだ所ですれ違う。現代ののび太と話をしたドラえもんは先程ののび太が過去か未来からやってきたのび太だと気づき、急いで探しに行く。しかしカナリヤの件は話せずじまいだったのでのび太も困ってしまうが、部屋に置いてあったワスレバットを使ってネコにカナリヤのことを忘れさせる作戦を思いつく。しかしそこにドラえもんが戻ってきてワスレバットを取り上げてしまったため、のび太はスペアポケットからバットを取り出すがその時一緒に封筒のようなものが出てきた。開けてみるとその中には掌大の機械が入っており、未来デパートからの秘密情報をお知らせすると言う。秘密の漏洩がないことを確認した上でその機械は実感映像を作り出し、その中でのび太を宇宙の惑星・ガラパ星に連れて行った。そこにはフライングマンタや音楽を奏でる花、巨大な虫や葉緑素を持っている豚や牛が存在していた。話によるとここは未来デパートの新商品開発の一環として作られた星で、ここにいる生物はみんな地球の生物を遺伝子的に改造して作り上げたものだと言う。遺伝子を操作して思い通りの生物を作れるというわけである。のび太はキノコのモデルハウスに案内され、そこで綺麗なじゅうたんのような芝生と、芝生を刈る芝刈り魚を見せられたのでのび太はこれを買うことにする。代金はドラえもんのカードにつけておき、早速芝刈り魚を使って庭の草を刈り、部屋には芝生の種を蒔いておく。
 その時しずかから、またノラネコがカナリヤを狙っていると連絡が入った。のび太はしずかからカナリヤを借りて、カナリヤを強く進化させることにする。のび太は実際に宇宙船に乗ってガラパ星に向かい、生物進化研究所で新製品セールス部のウランカナに案内されて中に入る。中には開発技術部長のダイウィン博士がいたが、博士は自分の研究に没頭しているのでウランカナが進化させてくれることになり、のび太はカナリヤを進化タンクに入れてカナリヤを強く進化させる。地球に戻ってきたのび太は早速実験してみることにするが、カナリヤはネコを追い返したものの、今度はどこかへ行ってしまった。探しに行くのび太だが、その頃空き地ではもう一人ののび太が何かを忘れている感じがして悩んでいた。そこにやってきたドラえもんに何かを話そうとするがどうしても思い出せない。バットを使えば思い出せるのだがそのバットがポケットの中にないので二人は急いで家に帰る。カナリヤを探しているのび太は適当な理屈をつけて探すのを止めてしまい、芝生の生えた部屋でゆっくり寝転がるが、ママに手伝いのことでまた怒られてしまい、その時のび太はアリを進化させてどんなに働いても文句を言わない生物を作ろうとする。のび太は再びガラパ星に出かけるが、そこにドラえもんたちが帰ってきた。バットを使って全てを思い出したのび太は、自分が未来からやってきたこと、そして地球は進化したアリ人間に征服されてしまうことをドラえもんに話した。ガラパ星で進化させたアリが強くなりすぎ、逆に人間を支配してしまったのだと言う。二人は現在ののび太を追いかけて、ガラパ星でアリを進化させるのを止めさせようと考えるが、タイムマシンの超空間を泳いできたアリ人間たちの攻撃によって、二人は繭の中に閉じ込められて連れて行かれてしまう。
 再びガラパ星にやってきたのび太だが、研究所には誰もいない。仕方がないので勝手に進化タンクを使ってアリを進化させることにしてしまう。進化するには一ヶ月かかると聞いて喜んで帰ろうとするのび太だが、途中で全長一キロのミミズに絡みつかれたり、人間も溶かす食虫植物に食べられてしまい、服の一部を溶かしてしまう。急いで地球に戻ったのび太は服を着替えて一ヵ月後を楽しみに待つが、さらに労働力を増やそうともっとアリを集めることにする。その時カナリヤを探しているしずかと出木杉を見かけたのび太は、アリを進化させるという話をするが、出木杉はこのアリは他のアリを捕まえて奴隷にするサムライアリなので、進化しても他の生物を奴隷にして働かせると言い、それを聞いたのび太はにわかに不安になってきた。のび太は一ヵ月後の世界に行ってみるが、別段変わった様子はない。そこにのび太を追って客急便が届き、危険生物を生み出す恐れがあるので研究所を閉鎖したという通知と、今までのお金が返ってきた。ドラえもんを探すのび太だがなぜか誰もおらず、外に出てみると空からUFOが降りてきて、そこからアリ人間たちが降りてきた。ネコを繭に閉じ込めてしまう所を見たのび太は恐怖のあまり大声を出してタイムマシンに逃げ込み、一ヶ月前のドラえもんに助けを求めようとするが、出てきたところをワスレバットで叩かれたためにそのことを忘れてしまい、ママに言われるままに買い物に行ってしまう。空き地で思い悩むのび太の所にやってきたドラえもんはバットを使って記憶を戻そうとするが、ポケットの中にバットがないので家に戻って記憶を戻し、のび太はアリ人間のことを話す。ところがその時間ののび太を止めようとしたところに、超空間をつたってアリ人間がやってきて、二人を繭の中に閉じ込めて一ヵ月後の世界に連れて行ってしまう。繭をのび太の部屋に置き去りにし、アリ人間は再び町へと向かった。
 だがアリ人間たちは付近に人間が誰もいないことを不思議がっていた。とりあえず仲間を増やすために近くでサムライアリを集めることにする。その頃のび太の元に客急便が届き、それがぶつかったので目を覚ましたのび太は繭を破って出てきた。封筒の中には「退化放射線発生ガン」が入っており、これを浴びせれば進化した動物を元に戻せるのだという。急いでUFOが止まっている空き地へ向かうのび太とドラえもん。サムライアリを大量に採取したアリ人間たちはUFOに乗ってガラパ星に向かい始め、二人は全速力で追いかけるがどうしても追いつけず、ついに諦めてしまう。しかし突然UFOが空中で何かにぶつかった。それは進化したままのしずかのカナリヤで、カナリヤはぶつかった腹いせにUFOを蹴っ飛ばし、UFOはこっちに戻ってきてしまう。すかさずのび太が退化放射線を浴びせると、UFOはコントロールを失って裏山に墜落した。中のアリ人間がみんな元のアリに戻っているのを見て安堵する二人。しかし町の人間はいないままなので二人は不思議がるが、その時ざわめきが聞こえてきて、一ヵ月後ののび太とドラえもんが家に帰ってきた。なんとのび太たち町の人間は、駅前で撮影されていた日米合作の超大作映画の撮影を見に行っていたのだ。その話を聞いてやるせない表情を見せる一ヶ月前ののび太とドラえもんであった。  

 (解説)ご存知の通り、今話は連載25周年記念作品として、小学三、四、五年生に三ヶ月にわたって掲載された、大長編を除けば唯一の連作形式のストーリーです。ファンの間では「大中編」として位置づけられていますが、「短編」という括りで見れば、これこそが藤子F先生が最後までご自分で書き上げた作品ということになります。
 肝心のお話ですが、ドラ世界十八番のタイムパラドックスを用いた伏線に次ぐ伏線、進化した生物が地球侵略を目論むという大長編並みの恐怖感、遺伝子科学の光と闇の部分をくどくならない程度に描いたその筆致、そして脱力することしきりのラストのオチと、ドラ世界を形成するあらゆるエッセンスが盛り込まれていると言っても過言ではありません。これら全ての要素こそがドラの真髄であり、ドラの魅力なのだということを改めて認識させられます。同時にまだまだこれだけのストーリーを描くことが出来た藤子F先生の力に改めて敬服させられます。のびドラ以外のレギュラーの活躍が少ないといった不満もなくはないですが、この完成度の前ではそんなものは霞んでしまうほどです。まさしく「ドラえもん」のエッセンスを受け継いだ、最高の「ギャグ」作品です。同時に、これを無理に改変してアニメ化してしまった今のスタッフには…(以下略)。



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