てんとう虫コミックス第5巻


のろのろ、じたばた   15頁 小三71年3月号(くすりでジタバタ)
 ドラえもんにドラやきを渡そうとするのび太だが、宿題を頼むつもりと見抜いたドラえもんはそれを断る。ドラえもんはのび太があまりにものんびりしすぎているためにこのような事になると言い、「クイック・スロー」の薬を出す。心身ともに早くなるクイックをのび太に飲ませようとするが、まず試しにドラえもんが飲んでみる。すると何をするにもドラえもんはせっかちになり、しずかに宿題を聞きに行っても結局何も出来ずに帰る羽目になる。スローを飲んで元に戻ってもらおうとするのび太だが、ドラえもんは間違えてまたクイックを飲んでしまい、そのままどこかへ行ってしまった。後を追おうとするのび太は間違えてスローを飲んでしまい、のんびりと家に帰ろうとする。先に家に帰ったドラえもんだが、のび太がいない事を知り再び飛び出して行く。のびたはカタツムリと競争しながら家に帰るが、それを見かけた友達は今度はドラえもんに話しかけられる。だがイライラしたドラえもんは再び走り去ってしまう。やっと家に帰ったのび太だが、のび太の持つクイックとスローを見かけ、クイックをパパとママが飲んでしまう。互いにやっと薬の効き目が切れたドラえもんとのび太だったが、今度はパパとママが走り回り、四苦八苦する二人であった。  

 (解説)登場人物がドタバタと走り回る(例外あり)、まさに「ドタバタギャグ」と呼ぶにふさわしい作品です(笑)。しかしせっかちなドラとのんびりしたのび太というのは、まんま原作最初期の設定ですので、その効果が逆になっていたら違った面白さがあったかもしれませんね。「薬が嫌い」と言っているのび太も、後にたくさん薬を服用する事になりますが、やはり慣れたのでしょうか?
重力ペンキ   7頁 小三72年12月号
 今年のクリスマスパーティーの会場を決めようとするのび太達。その結果あばら谷くんの家で行う事に決まった。「インスタントツリー」を持ってドラえもんと出かけるのび太だが、みんなあばら谷くんの家を知らなかった。あばら谷くんの家をつきとめたのび太達だが、そこはとても狭い家だった。事の次第を聞いたあばら谷くんのお母さんは友達が家に入れるようにと、みんなで家の外に出る準備をはじめる。その話を聞いた二人は自宅でやろうとするが、ママに話を切り出せない。そんな時、パパが棚を完成させたと喜ぶが、すぐに壊れてしまう。それを見たドラえもんは、ペンキを塗った部分に重力を発生させる「重力ペンキ」を使う。これをあばら谷くんの家で使った二人は、みんなと一緒に楽しいクリスマスパーティーを行うのだった。  

 (解説)ドラの道具でのび太だけでなく、他のみんなまで幸せにしてしまうという、本当に心温まる話です。あばら谷くん家ほどではありませんが、家が狭い自分としてはかなり真に迫るものがあります(笑)。のび太のパパは竹馬を作ったり絵は描けるのに、棚はつれないという、ある意味本当の不器用らしさを出していますね。
地球製造法   16頁 小三73年3月号(地球せいぞうそうち)
 互いにプラモを見せっこしてジャイアンとスネ夫にバカにされたのび太は、「すごいプラモを作りかけている」と、またうそをついてしまい、ドラえもんに頼み込む。ドラえもんに「地球セット」を出してもらったのび太は、本物の地球を作ろうとする。慌ててジャイアン達に連絡するが、二人は相手にしない。作った地球ではついに生命が誕生し、古生代と言われる時代になった。スネ夫達を呼びに行くのび太だが、それでも二人はまだ来ようとしない。恐竜時代へ入った地球に行ってみたいというのび太を、かんさつ鏡を使ってつれて行くドラえもん。感激するのび太だが、地球を粘土と勘違いしたママが地球を窓から外に捨ててしまう。するとその影響で地球が壊れ始めた。しかしかんさつ鏡から外れたために出口も無くなってしまい、終いには恐竜に追い回されてしまう。その時通りかかった自動車が地球を再びのび太の部屋まで跳ね飛ばしたためにかんさつ鏡に繋がり、やっと戻ってきた二人。だが地球は爆発してしまう。その時になってジャイアン達がやって来た。泥の塊になってしまった地球を見てジャイアン達は笑うが、のび太にはもはや弁解する気力も無かったのだった。  

 (解説)ドラえもんらしいギャグ世界と、地球誕生の科学的説明を巧みに融合させた、面白い作品です。後の「創生日記」のルーツとも取れますが、こちらの地球は爆発してしまって、少しかわいそうな気もします。まあ、そこは「ギャグマンガ」ですから深く考えないように。それにしても今回ののび太、間が悪すぎ(笑)。
かがみの中ののび太   7頁 小三72年10月号(フエルミラー)
 欲しいものがたくさんあるのび太は、おやつのドラやきまで金に替えてもらう始末。そのくせ、ドラえもんの分のドラやきを欲しがるのび太にドラえもんは「フエルミラー」を出し、ミラーに映した写像から本物のドラやきを取り出す。それでお金を増やそうとするのび太だがうまくいかない。そこで友達からそれぞれおもちゃを借り、それを増やすことにする。しかしスイッチを切り忘れたため、ミラーの中からもう一人ののび太が現れ、本物をミラーの中に閉じ込めてしまう。遊び始めるニセ者だが、ママに叱られて勉強をさせられる。一方、ドラやきをまた増やして食べようとミラーを出したドラえもんは、本物ののび太を助け出す。だがニセ者の方はママに怒られっぱなしで、『ぼく、帰る。こんなきびしい世界はこりごりだい。』と叫ぶのだった。  

 (解説)欲しいものがたくさんあると言うのび太。気持ちは非常に良くわかる(笑)。この話のニセのび太は、後の「あべこべせかいミラー」のように性格までは逆転していないようですね。フエルミラーという道具の便利さ、そして怖さをきちんと描いている、「道具中心の話」の典型です。それにしてもミラーに映ったのび太の泣いている顔を見て「変なかお」はないだろう、ドラ(笑)。
わすれとんかち   14頁 小四70年11月号
 スネ夫の家でスネ夫と遊ぶのび太。そこへ記憶喪失の男性が突然上がりこんでくる。気の毒になった二人は家に連れて行って、ご飯を食べさせる。何も思い出せないと言うその男にドラえもんは「わすれとんかち」を出す。これを使うと忘れていた記憶を呼び覚ます事が出来るのだが、やりそこなうと余計におかしくなってしまう事もあると言う。びくつく男だが、結局やってみる事にする。だが映し出されたものは東京タワーから落ちたり、車に轢かれたり、誰かに刀で斬られたりというものばかり。すると次はお城のような家が映し出され、さらにたくさんの札束を数えている男の姿が映し出された。男を大金持ちだと思いこんだ二人は早速お城の屋敷を探しに行く。それを聞いたスネ夫は男を自分の家に連れて行き、ごちそうを食べさせる。スネ夫に頼まれてお城の映像を見せようとする男だが、映るのはろくでもない映像ばかりで、遂には自分がギャングになっている映像が出てくる。さらにスネ夫がとんかちで殴ると、男からいろんな映像が出てきた。一方ドラえもんたちは城を見つけたが、それは映画のセットであり、男は悪役スターだったのだ。そこへ、混乱するスネ夫や男たちを見つける二人。とんかちで殴りっこしておかしくなってしまったのだった。  

 (解説)とんかちで叩いて中のものが飛び出るという、いかにもマンガ的な手法を大真面目にやってしまうところがすごいですね。確かにやりすぎると余計におかしくなってしまうよな、こりゃ(笑)。ギャグマンガとしては突き抜けた笑いのシーンはありませんが、男にスネ夫母子が「お茶とおしぼりの上」を出したりと、スネ夫母子と男とのからみは笑えます。しかしこの男、いくら悪役スターとは言っても、役の幅広すぎ(笑)。
ばっ金箱   8頁 小四73年6月号
 ジャイアンがスネ夫のサッカーボールを破ってしまった。代わりのボールがないみんなはジャイアンの提案で、みんなで少しずつ金を出し合うことにするが、みんな出したがらない。話を聞いたドラえもんは、悪い事をして叱られると、1回につき10円の罰金を取る「ばっ金箱」を出した。早速のび太の友人が親に叱られ10円を取られてしまう。ばっ金箱は一番叱られやすいのび太にくっついて行ったため、のび太は叱られないように苦慮する。のび太の後をつけてきたジャイアンだったが、先生に叱られてしまい、ばっ金箱に10円取られる。さらにまた先生に叱られてしまい、困ったジャイアンはスネ夫に財布を預ける。安心して家に帰ってみると、ジャイアンがいじめた近所の子の親たちが待っていた。たっぷり叱られたジャイアンを見たばっ金箱は、ジャイアンの貯金箱からお金を取ってしまうのだった。  

 (解説)「貯金」と「罰金」をかけた面白い道具ですが、今回は結局ジャイアンがこの道具に振り回されてしまいました。自分で「金を集めよう」と言っておきながらスネ夫に財布を預けてしまうジャイアンもジャイアンですが、さらに貯金箱を狙うばっ金箱は一枚上手という事でしょうか。出されたばっかりのばっ金箱にマークされるほどのび太も叱られているわけですね(笑)。
ドラえもんだらけ   15頁 小三71年2月号(宿題でたいへん)
 たくさんのドラやきをのび太が目の前に差し出し、よだれを垂らすドラえもん。さらにのび太におだてられ、ドラやきを食べるかわりに宿題を押しつけられてしまう。他の部屋で眠るのび太だが、夜中、のび太の部屋で何事かあったようだ。そして朝、様子を見に行ったのび太は散らかった部屋、そしてボロボロに痛めつけられたドラえもんを見つける。ドラえもんは宿題をやったといって眠ってしまうが、のび太はタイムマシンで昨夜に戻り、何があったかを見に行く。そこではドラえもんが宿題で悩んでいた。押し入れに隠れるのび太。ドラえもんは2時間、4時間、6時間、8時間後の自分を連れてきて宿題をしようとする。だが連れてきた未来のドラえもんはみんな傷だらけで、8時間後に至っては睡眠不足で暴走寸前だった。それでもやっと宿題を終えた5人のドラえもん。だが未来のドラえもん4人はお返しと言って現在のドラを殴りつける。それでも安心して眠るドラえもんだが、今度は2時間、4時間前のドラえもんが呼びに来たためろくに眠れず、押し入れにいたのび太にかくまってもらう。しかし宿題が出来ないと聞いたのび太は6時間前のドラえもんに今のドラえもんを出してしまう。そして遂に狂ったドラえもんはのび太を追いかけ回す。8時間前のドラえもんに助けられたのび太は事の次第を知り、改めて感謝の気持ちを込めてドラやきを渡そうとするが、ドラえもんはドラやきを怖がってしまうのだった。  

 (解説)出ました!タイムパラドックス作品の超迷作!同じコマに傷だらけのドラが5人いる不可思議さ、宿題が出来ないと聞いて容赦なくドラを投げ出すのび太など、見所は本当にたくさんあります。タイムマシンという、ドラ世界を成立させるための根本的な道具を使って、ともすれば哲学的に論じられがちなタイムパラドックスを使って、ここまで破天荒なギャグにしてしまうのだから、もう見事としか言う他ありません。とにかく一度読んでみてください。
四次元サイクリング   8頁 小三73年5月号(ふしぎな三りん車)
 しずか達三人がサイクリングに行くのを見たのび太は、自転車に乗れないから誘わなかったという言葉を聞き、自転車に乗ろうとするがやはり乗れない。ドラえもんはのび太にも乗れる自転車を出そうとするが、ドラえもんが出したのは「未来の三りん車」だった。嫌がるのび太だが、仕方ないのでこれに乗ってサイクリングに出発する。第一ボタンを押すとにおい探査機が出てきて、三人の後をつけ始めた。子供にバカにされてしまうが、第三ボタンで四次元世界に入って消えたようになり、さらに変則レバーを切り替え、ひとこぎ100mのスピードから、ジェット機並みの速さになって三人に追いつく。しかし三人のそばについたが三りん車が故障してしまい、三次元に戻れなくなってしまい、その間にみんなは帰っていってしまう。やむを得ず帰る二人。だが丁度三人の前に来た所で機械が直り、ジャイアン達に「三りん車で遊んでいる」とバカにされてしまうのだった。  

 (解説)のび太たちのしている事が空回りして、結局失敗し、みんなにバカにされてしまうという、のび太にとっては災難ですが、読者は笑える話です(笑)。結局乗れなかったとはいえ、自分から自転車に乗ろうとした今話ののび太は偉いですね。しかしあんなスーパー三輪車、一体未来では誰が乗っているのだろう?三輪車に鉛筆削りまでついているというのがやたら庶民的でいいですね。後ろの座席に載っているドラが妙にカワイイ(笑)。
地底の国探検   16頁 小学館ブック74年6月号(ここほれワイヤー、メインタイトル『ドラミちゃん』)
 百円玉一枚しか今月の小遣いがないのび太は、宝捜しの道具を出してくれるようドラミに頼むが、にべもなく断られる。空き地に行くと、ジャイアンが友達にいわゆる「ダウジング」を行って鉄パイプを発見していた。のび太は自分の百円玉で試してもらうが、百円玉は発見することが出来なかった。泣きわめくのび太にドラミは「ここほれワイヤー」を出して、空き地を調べ始めた。するとワイヤーが百円玉の形を作って、その下の地面を示し、そこに百円玉があった。のび太は宝捜しをしようとしてワイヤーを使うと、ワイヤーは町のような形を示した。調査することにした二人は「地底探検車」に乗って地底の奥に出発する。だが深さ千メートルを越えても何も見つからない。地底人のまちではないかと話すのび太。さらにバックして戻る事が出来なくなってしまい、そのままスピードを上げ、地球の中心に飛びこんでしまう。気がついた二人は地底都市にたどり着いていた。人の気配がないが、たくさんの人骨を見て恐怖する二人。その時誰かがやってきたため、二人は大急ぎで引き返す。しばらくたってパパから最近発見された、メキシコのマヤ族の遺跡を見せてもらうと、それは二人が見た都市だった。二人は地球の中心を抜けて反対側に行ってしまっていたのだった。  

 (解説)作中に言葉は出ていないものの、「ダウジング」「地底文明」「古代文明」の三つを巧みに織り込ませた、読み応えある作品です。このような純冒険ものの話は、番外編的な「ドラミちゃん」だからこそ出来たのでしょうね。しかし地底探検車と言い、ドラえもんの穴ほり機と言い、地底の道具は壊れやすいですね(笑)。「ここほれワイヤー」があまり使われないのも残念でした。
ひらりマント   7頁 小一73年5月号
 今日もジャイアンに追いかけられるのび太はかろうじて家に逃げ帰るが、ママに手紙を出してくるように言われ、困り果ててしまう。ドラえもんは「ひらりマント」という、何が来てもこれを振ると横にすっ飛んでしまう道具をのび太に貸してやる。早速襲い掛かってきたジャイアンをかわすのび太。ジャイアンは先生を激突してしまう。吠えかかる犬もドブに落とし、雨が降ってもマントを傘代わりにして家まで帰る。濡れたマントを物干しで乾かすが、マントが風で飛んで、家の玄関にやってくる。そこへパパが帰ってくるが、マントが風でヒラヒラ動くたびにパパは横に飛ばされてしまい、どうしても家に入れなくなってしまうのだった。  

 (解説)恐らく闘牛士のマントに材を取ったのでしょうが、こんな小一に載った話に出てきただけのような道具が、よもや後年、あれほどの活躍をする事になるとは、誰が予想し得たでしょうか(このフレーズしつこいね)?しかし猛烈に間の悪い時に帰って来たパパ。間の悪さは親譲りですね(笑)。
バッジを作ろう   6頁 小二72年5月号(ふしぎなカメラ)
 みんなから持っているバッジの多さを自慢され、バッジを欲しがるのび太。ドラえもんは「バッジ製造カメラ」を出し、のび太は怪獣や虫や動物など、色々なものをバッジにし、みんなに自慢する。さらにカメラで自分たちのバッジも作りだし、ジャイアンとしずかのバッジも作ろうとするが、スネ夫がにせものとすりかえてカメラを持ち去ってしまった。自分のバッジを作ろうとするスネ夫だが、その時尻尾を踏んでしまった犬に襲われ、犬にボロボロにされている姿がどんどんバッジにされていってしまうのだった。  

 (解説)バッジに限らず、子供時代には必ず何かを集めるのが流行ったりすると思いますが、そんな子供の願いを叶えてくれる、正に最もドラえもんらしい世界を描いた話だと思います。でもラストのスネ夫バッジ、スネ夫は『つけないでくれ。』と頼んでいますが、普通つけないとおもう(笑)。ちなみに私的な事ですが、今話は今までのてんコミ収録作品で一番作品紹介文が短いです(笑)。しかしこれ以後、もっと短い文が出てくる・・・・・・はずです。
うちのプールは太平洋   7頁 小三74年7月号(広いプールでおよごう!)
 しずかと一緒にプールへ行こうとしたのび太だが、スネ夫にその混雑ぶりを聞かされ、行くのを止める。広いプールに行きたいと言うのび太にドラえもんはポケットからある薬を取り出し、のび太に飲ませる。すると部屋がいきなり広がった。しかしこれはドラえもんの出した薬「シネラマン」によって周りが広がったような気にさせられただけだった。これを使ってのアイデアをドラえもんから聞いたのび太はしずかをプールに誘う。三人で家の浴槽に入ってシネラマンを飲むと、広いプールに早変わりした。三人は楽しく泳ぐがのび太だけシネラマンをたくさん飲み、海のように広くしてしまう。ところがママからスイカを食べるように言われた他の二人は先に上がってしまい、のび太は岸にたどり着けずにとうとうダウンしてしまう。心配したママたちが見に行くと、溺れかけたのび太が浴槽に浮かんでいるのだった。  

 (解説)小さい頃はこの「シネラマン」という物の効用がよく分からなかったのですが、これはいわゆるバーチャルリアリティを見せる道具のようですね。ラストの溺れるのび太もそうですが、のび太からお風呂に入ろうと誘われて、(恐らく)勘違いしてのび太をぶってしまうしずかなど、要所要所のギャグが光っています。
つづきスプレー   7頁 小三72年7月号(つづきが見られるツヅキガス)
 戦艦大和が海上を進んでいる絵を描こうとして失敗してしまい、イライラするのび太。ドラえもんも絵を見て思わず笑ってしまうが、のび太に舳先のところだけ丁寧に描かせ、その絵に「つづきスプレー」をふきつけた。すると戦艦が動き、その全身が現れた。絵の続きの場面を映し出す事が出来るのだ。風景のイラストがあるカレンダーや、自分の写真にふきつけて遊ぶが、もっと色々やってみたい二人は、美術品の複製をそろえている成金さんの家に行き、色々な絵や彫刻にふきつけるが、怒った成金さんに追い出されてしまう。仕方なく家に飾ってある絵にかけるが、その裏にはママのへそくりが隠してあった。だがそのお札の絵まで変わっており、驚くママを見て慌てて逃げる二人であった。  

 (解説)写真はともかく、絵の続きが見られるというのは面白い発想です。イメージ溢れたいろんな「続き」の絵はどれも面白いですが、白眉はやはりのび太が入学した時のおもらし写真でしょう。今回限りの出演の成金さんもいい味を出しています。個人的にはもう一度くらい見たかった(笑)。
うつつまくら   14頁 小三70年9月号(ウツツまくら)
 今日から二学期が始まるその日、のび太は朝早くに目が覚め、既に夏休みの宿題も終わらせていた。さらに時間に余裕があるので予習をしていこうとするのび太を見て、ドラえもんはこれは夢だと告げる。その通りでこれは夢だった。夏休み最後の日で宿題が全然出来ていないため、起こしたドラえもんに怒るのび太。ドラえもんは夢と現実を取りかえられる「うつつまくら」を出す。さっきの夢の続きに戻ったのび太だったが、のび太が普通に登校したり、宿題をきちんとやってきたことでみんな必要以上に驚いたり疑ったりするため、不愉快になったのび太は再び元の世界に戻る。しかしそれも嫌になったのび太はドラえもんに調節してもらって、自分がすごく頭がよく、みんなが自分を尊敬してくれる世界へと行く。そこでは先生もジャイアン達も、いろんな人全てがのび太を尊敬していた。のび太は研究中の火星ロケットを完成させようとするが、とある国のスパイに襲われる。うつつまくらでこの世界を夢にしようとしたのび太はスパイに気絶させられてまた別の夢の世界へ行く。そこでは夏休みはまだ半分くらい残っており、ドラえもんもうつつまくらを持っていなかった。一体どれが夢なのか、わけがわからなくなってしまうのび太であった。  

 (解説)時間の混乱が「タイムパラドックス」ならば、これは「ドリームパラドックス」とでも言うべき、夢と現実がめちゃくちゃになってしまう話です。しかも物語が完全に完結していないところがなお面白いですね。一般的には最後にのび太のついた世界が現実だと思われてしまうが、僕としては結論をつけずに、のび太と同じ、『いったい、どれが夢なんだ。』という気分でいたほうが面白いと思います。
黒おびのび太   8頁 小三71年9月号(ふしぎなベルト)
 父ちゃんに習っているという柔道を見せるためにのび太を投げ飛ばすジャイアン。それで黙って帰って来たのび太にドラえもんは檄をとばすがのび太はやはり怖がる。仕方なくドラえもんは「ブラックベルト」を貸す。これをつけるだけで、どんな相手でも触ると自動的に投げ飛ばしてしまうのだ。ジャイアン以外に触らないように注意されたのび太は早速ジャイアンを見つけるが、ジャイアンは相手にしない。突っ込むのび太だがつまずいて転んでしまう。そこへ通りかかったしずかが怪我を見てあげようとのび太にさわり、のび太はしずかを投げ飛ばしてしまう。さらにそれを注意しようとする先生や他のものまで投げ飛ばしてしまう。ベルトをはずそうとするのび太だが、そこで不良学生に脅されているジャイアン達を見つけ、遠慮なく不良を投げ飛ばしてしまうのだった。のび太はベルトを返そうとするがドラえもんがいなかったため部屋に置きっぱなしにしておくが、それをママがパパに結んでしまった。しかも結び方がへんだったのでパパは自分ではほどけず、ほどけるまで誰も近寄れなくなってしまうのだった。  

 (解説)全体的には可もなく不可もなくの水準作ですが、だれかれかまわず投げ飛ばしてしまうというのは結構怖いですね。車まで投げてしまうし(笑)。不良を投げ飛ばして終わりかと思いきや、ラストにもう一捻りあり、それが今までの部分と遊離していないところはさすがです。
宝くじ大当たり   8頁 小三71年8月号(たからくじ)
 宝くじの当選発表の日、くじを探すパパだが今までのはずれくじをママに見せられ、くじを買わないように注意されてしまう。のび太はタイムマシンを使って一等くじを買おうとするが、ドラえもんはタイムマシンで金儲けをする事は法律で禁止されているとのび太を止める。はずれくじの5万円分だけ当てようと、結局タイムマシンで二週間前へ行く二人。しかし二人の行った店には当りくじがなかった。とその時、二人は一等くじを見つける。買おうとする二人だがお金を忘れてきてしまい、現代のパパから100円貰って買いに行くが、そのくじは売れてしまっていた。一旦は諦める二人だが、さっきよりも一足先の世界へ行ってみると、なんとパパがそのくじを買っていた。ママと友に興奮する二人だが、パパはそのくじを友達に売ってしまっていたのだ。怒る三人にパパは理由がわからず不思議がるのだった。  

 (解説)ずいぶんミニマムな世界でのタイムパラドックスですね。今回はのびドラがやたら元気で、金儲けのためにやる気まんまんののび太や、金儲けはダメだと言っておきながら、一等くじを見つけたとたんに構わずに買ってしまおうとするドラが受けます。何のかんの言っても、みんな大金を前にしたら心変わりしてしまうものかもしれない、という事を描いている・・・・・・のでしょうか(笑)?まあ、テーマを考えるよりも、前述の生き生きした二人を見て大いに笑いましょう。
おしかけ電話   6頁 小二72年9月号
 友人との長電話をパパに叱られるのび太。代わりにドラえもんが出した電話は、糸電話のような形をしており、「もしもし」と言う事で相手のところへ直接行く事が出来る「おしかけ電話」だった。早速みんなのところに電話をおいて来た二人は別々に相手の所に押しかける。のび太はスネ夫の家でホットケーキを食べ、ドラえもんはままごとで遊ぶジャイアンを目撃して口止め料にドラやきを貰う。しずかの家に来たのび太だったが行き違いになり、気味悪がったしずかは警察に電話するが、その時の「もしもし」の声でのび太の家にやってきてしまう。話を聞いたママは外のゴミ箱に電話を捨ててしまう。だがそこへ二人が帰ってきて、二人はゴミまみれになってしまうのだった。  

 (解説)これも子供の頃欲しかった道具ですね。糸電話という、子供にも馴染みの深いものを使って夢を膨らませた道具を創造しています。個人的に好きなのは、「ほほほ」と笑ってままごとに興じるジャイアン(笑)。今回のしずかの表情はヒロインとは思えないほど豊かです。
ぞうとおじさん   16頁 小三73年8月号(スモールライト)
 パパの弟ののび郎おじさんがインドから帰って来た。おじさんはパパ達に不思議な話をするという。おじさんは子供の頃、大好きだった動物園の象のハナ夫の話をし始めた。だがハナ夫は戦争の影響で殺されてしまったのだ。その事実に憤慨したドラえもんとのび太はハナ夫を助けるためにタイムマシンで過去に向かう。その動物園でハナ夫を見つける二人だが、ハナ夫は元気なく横たわっていた。飼育係の人が持ってきたジャガイモは毒入りのためにあげるのを拒むが、知らずに二人は餌をやってしまう。しかしハナ夫は食べなかった。爆弾が落ちて動物が町へ出たら大変な事になるというので、動物を殺す命令が出たと言うのだ。ハナ夫を殺そうとする軍人と口論を起こしてしまう二人だが、その時空襲が始まった。檻が壊れたためにハナ夫は逃げ出し、飼育係はハナ夫を連れて逃げようとするが、軍人達はハナ夫を殺そうと探索をはじめる。二人は「スモールライト」でハナ夫を小さくし、「ゆうびんロケット」でハナ夫をインドのジャングルへと送っていった。どこからともなく現れた二人に涙を流して感謝する飼育係。戻ってきた二人がおじさんの話を聞くと、インドのジャングルの中で倒れてしまった時、ハナ夫に助けられたのだと言う。パパ達はそれを夢だと考えるが、真実を知る二人は、ハナ夫は生きていると大喜びするのだった。  

 (解説)「歴史にIFは禁物」とよく言いますが、この話は実際にあった動物達の悲劇をもととして、その悲劇的な歴史に非日常の住人たるドラ達をからませる事で、動物を無事に救うという痛快感を描き出しました。このような、より良い方向へ向かうIFならば大歓迎ですね。F先生にもそのような考えがあったのかもしれません。飼育係にとってのびドラは「不思議」な二人だったし、パパにもおじさんにも、ハナ夫に助けられたことは「不思議」なことだった。「すこしふしぎ」な世界をストレートに描いた名作と言えるでしょう。

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