てんとう虫コミックス第6巻


夜の世界の王さまだ!   13頁 小四71年12月号
 自分が普段あまりにも寝すぎて、色々な用事が出来ないと考えたのび太はドラえもんに「眠くならない薬」を出してもらい、ドラえもんが止めるのも聞かずに飲む。早速勉強しようとするが、ハナクソをほじったり影絵で遊んだりして落ち着かない。何かを食べようとするが何もなく、のび太はドラえもんに、寝ている人を操れる「ムユウボウ」を出してもらってママにラーメンを作ってもらうが、寝ぼけているママはラーメンを自分で食べてしまう。仕方なく先に遊ぼうとするのび太だが結局ひまで、無理矢理ドラえもんを起こして怒られる始末。暇なのび太はムユウボウでドラえもんを起こし外に出る。さらに友達も起こして野球をするが、へたくそなのび太はやはり球を打てない。やっと当たったと思ったら、空き地の隣りの家のガラスを割ってしまう。寝たままの家の主人に謝ったのび太だったが、夜中に起きていることにバカバカしくなってしまったのび太はドラえもんに薬の効力を消してもらう。翌朝、登校するのび太の横で、友達が夜中に野球をやった夢を見たと話しているのだった。  

 (解説)大筋は「ゆめふうりん」と同じですが、今回は起きているのはのび太一人のため、また違った面白さが出ています。やっぱり夜は基本的には寝る時間ですからね。「寝る」という当たり前のことの大切さを描いているような気もします。しかしのび太はホントにハナクソいじりが好きですね(笑)。
流行性ネコシャクシビールス   10頁 小六74年12月号
 知り合いのしゃれ子が長いスカートを履いているのを見て驚くのび太だが、これが最新の流行だとスネ夫にバカにされる。家でもママが、自分はミニスカートしか持っていないという事で、のび太どころかドラえもんにまで八つあたりする。「流行」というものにほとほと参った二人だが、ある実験をしてみようとドラえもんは「流行性ネコシャクシビールス」を出す。ビールスの成長段階で流行らせたいものを聞かせ、ばら撒かれたビールスに感染すると、それが流行するのだ。面白がったのび太はスカートをどんどん短くして流行らせようとするが、あまりにも短くしすぎてしまい、寒がって誰も外に出なくなってしまった。二人はすその太いパンタロンを流行らせ、さらにメチャクチャな衣服やあいさつを流行らせてしまう。ビールスの寿命は1日ほどという事で安心する二人だが翌朝、1日遅れでビールスに取りつかれたのび太は変な格好で学校に行く。それを見たドラえもんは『流行ににぶいんだなあ。』と呆れかえるのだった。  

 (解説)少女マンガ風に始まった今回の話は、「流行」という実体のないものにふりまわされる人々を皮肉ってパロディにしてしまった傑作です。作中ののびドラの流行についての会話は、そのままF先生が考えていたことだったのではないかとも思います。僕達も流行に影響されずに、いつまでもドラえもんを愛していきたいものです。二人の流行らせた流行も爆笑もので、個人的にはしかめっ面をしながら『セッセッセ』と呟くおっさんがイカス(笑)。短くなりすぎたスカートを履くしゃれ子ちゃんも見てみたかったりして(爆)。
温泉旅行   10頁 小四73年1月号
 「室内旅行機」を使って海岸の景色を映し出すドラえもん。それに飽きた二人は今度はアフリカのジャングルを映す。そのとき部屋に入ってきたパパは、立体映像のヒョウに驚いてしまう。パパはママから温泉旅行に行ってみたいと催促されていたのだ。話を聞いたドラえもんは温泉旅館のフィルムを映し、それを見たのび太は映像だということを忘れて温泉に入ろうとしてしりもちをついてしまう。機械を家中に置き、温泉旅館の映像を映す二人。実際は狭いために壁やテーブルにぶつかってしまったりもするが、四人は温泉旅行気分を満喫する。天丼を注文し、団体客のフィルムをかけてにぎやかになっていく。さらに旅館の人まで出てきて宿泊料を本当に催促してくるが、それはドラえもんの変装であり、お金をのび太と分けようとするドラえもんを追いかけるパパであった。  

 (解説)道具中心のストーリーを野比家の中だけで展開させてしまったという、珍しい形式のストーリーです。最後のオチはちょっと強引な気もしますが、それも良しとしましょう。こう見ると、ドラもすっかり野比家に馴染んでいるのですね。個人的には天丼を届けにきた天丼屋の人がイイですね。『アリイ!?』の叫びの後に声にならない声をあげるあたりが(笑)。
はこ庭スキー場   9頁 小三74年2月号
 しずかが悲しんでいる姿を見かけたのび太とスネ夫は、しずかのためならどんな事でもすると宣言する。しずかはパパと約束していたスキーに行けなくなったため、どうしてもスキーに行きたいというのだ。スネ夫は困って逃げてしまうが、のび太はドラえもんに詭弁を並べて説得し、ドラえもんは「はこ庭スキー場」の箱庭を庭にセットして雪を降らせる。しずかと、誘ってきたのび太にスプレーをかけて眠らせてから小さくし、箱庭に連れて行く。スキー場でのびのびと遊ぶ二人だが、しずかは覗いていたドラえもんの顔や、ママとちり紙交換の声を気にしてしまい、ドラえもんが虹を出す事でなんとかごまかす。だがしずかが箱庭の端に近づいたため、やむを得ずドラえもんは吹雪を起こしてしずかを気絶させ、ごまかしとおす事に成功する。後日、しずかからの話を聞いて、驚くジャイアンとスネ夫だった。  

 (解説)今回のしずかはかなりわがままですが(笑)、それを叶えるためにのび太が話す詭弁もさすが。ある意味のび太らしい一面が見られました。小さくなって箱庭の中で遊ぶという、誰もが一度は持つような願望をかなえているという素直さが光る好編です。箱庭を覗きこむ時に木箱を台にしているドラの芸の細かさもマル。
ほんもの図鑑   11頁 小二71年12月号
 スネ夫に自分の顔がめがね猿そっくりだと言われた話をのび太から聞かされ怒るドラえもんだが、のび太は自分に似ているならよほど立派な顔の猿だといって取り合わない。図鑑で調べようとするが、当のめがね猿のページは以前友達に貸した時に破られていた。ドラえもんは「ほんもの図鑑」のうちの動物図鑑を出してめがね猿の本物を出す。面白がって借りようとするのび太に一度は断るドラえもんだが、結局貸してしまう。のび太の部屋から煙が出ているのを目撃する友達。しかしそれは入道雲であり、みんなは夕立に降られてしまう。図鑑を自慢したのび太はみんなに図鑑を持っていかれてしまった。ドラえもんと一緒に図鑑の回収に向かうのび太だが、友達は図鑑のケーキを食べてしまったり、蝶を標本にしてしまったり、車を壊してしまったりと大騒ぎ。それでもなんとか図鑑を集めた二人だが、「大むかしの生きもの」という図鑑が足りないので、スネ夫の所に行ってみると、なんとスネ夫はマンモスを出してしまっていた。歌を歌って気を静めている間に図鑑に戻そうとするがマンモスに気付かれ、「お話図鑑」の強い人間もかなわず、のび太がつかまってしまう。タケコプターを使って空中からマンモスを図鑑に戻したドラえもんだが、その時一緒にのび太も図鑑の中に入ってしまったのだった。  

 (解説)6巻中では比較的ドタバタ色の強い話ですが、コメディ調の楽しい話になっています。オバケの図鑑でのオバケの中にQ太郎が混ざっているのはご愛嬌。めがね猿と言われても怒らない今回ののび太は最初期の様にのんびり屋ですが、本物を出されて「似ている」と言われるとさすがに怒ったようです。猿が『キキッ』と鳴いてのび太が『キーッ』と怒るのも面白いですね。
この絵600万円   12頁 小四72年12月号
 のび太たちと歩いていたパパは、身なりのいい老紳士に声をかけられる。その人は高名な洋画家で、昔はパパの絵の先生もしていた柿原先生だった。パパから、今の柿原先生の絵が六百万円もすると聞いた二人は、タイムマシンで無名時代の柿原先生の絵を買ってこようとする。ママからお年玉を千円前借りして過去へと向かう二人。柿原先生のいるアパートを訪れるが、先生は集金取りか何かと勘違いして取り合わない。それでも絵を買うことを告げると、涙を流して喜ぶ。しかし二人の持ってきたお金は新しすぎてこの時代では使えず、仕方なく二人はもとの時代へ戻る。スネ夫が古銭を集めている事を思い出した二人はお金を出してその金額分の古銭を譲ってもらい、再び先生の家に行くが、そこにいたのは若き日のパパであった。絵をひとつ選んで持っていこうとする二人は、水車小屋が描かれているような絵を選んで持って帰る。六百万円と喜ぶ二人だが、なんとそれはかつてパパが描いたものであった。がっくりするドラのびでありました。  

 (解説)時間逆行による金儲けシリーズのひとつですね(笑)。パパがかつて本気で絵描きを目指していた事がはっきりとわかるエピソードでもあり、夢を追いかける若いパパと、未来を知っているのびドラの掛け合いがおかしいです。恐らくのび太はこの話で「古銭」の知識を得たのでしょう。後の「ボーナス1024倍」でもその知識を役立てています。
こいのぼり   6頁 小三74年5月号
 大きなこいのぼりを持つことをみんなに自慢するスネ夫。と、それを聞いていたてつやという子供が泣きながら走り去った。てつやの家は貧乏でこいのぼりを買うお金もなかったのだ。その事をのび太たちに責め立てられたスネ夫はやけになってこいのぼりを全部あげてしまおうとするが、それを止めたドラえもんはスネ夫からこいのぼりを借りる。ドラえもんのだしたつぼの中から雲が出てきてのび太の部屋を雲だらけにし、「こいのぼりそうじゅうき」を使ってこいのぼりを操り始めるドラえもん。さらにこいのぼりは卵を産み、子供が生まれた。えさのかしわ餅を与えて大きくなったこいのぼりをてつやの家へ連れて行くドラえもん。てつやの家いっぱいのこいのぼりを窓から見たスネ夫はうらやましがるのだった。  

 (解説)こいのぼりを育てるだけではなくて子供まで産んでしまうという、ある意味すごくナンセンスな話なのですが、子供の願いをかなえる優しいのびドラを描いていて、個人的には好感が持てます。スネ夫も今回はさすがに自分の自慢行為について反省したようです。やはりスネ夫が安心して自慢できるのはのび太だけのようで(笑)。
ダイリガム   8頁 小四73年10月号
 またも空き地の隣の家のガラスを割ってしまったのび太たち。みんなは難癖をつけてのび太を取りに行かせようとする。困ったのび太はドラえもんにボールを作る機械を出してもらおうとするが、ドラえもんは代わりに、言いにくい事を他人に代わりに言ってもらう「ダイリガム」を出す。ドラえもんはそれをパパに使って、ママからガラスの弁償金をもらい、弁償しに行くのび太。しかしなぜ自分が弁償しなければいけないのかと考えたのび太は、自分に難癖をつけたスネ夫にダイリガムをくっつけてジャイアンの悪口を言わせる。そしてダイリガムを使ってジャイアンに弁償させようとするが、転んだ弾みで自分にガムをくっつけてしまい、正直に弁償しに言ってしまうのび太。だが正直に謝ったのび太を認めたその家の人は、今まで飛びこんだボールを全部のび太に渡す。それを見て感心するジャイアン達であった。  

 (解説)結局は誰かに頼るよりも、自分で正直に話したほうがいい、と言うことでしょう。その事を決して説教くさくなく、自然に描出しています。後は取りたてて目立つところはありませんが、のび太のジャイアンに対する悪口が面白いです。スネ夫に代理させても違和感がないのは、普段スネ夫も同じような事を考えているから(笑)?
どこでも大ほう   6頁 小二72年4月号
 大事な用で出かけるところだったが、電車に乗り遅れてしまったパパ。ドラえもんはどんな場所にも連れて行ける「どこでも大ほう」を出し、パパを乗るはずだった電車へと送る。みんなを驚かそうと大ほうで空き地へ飛んだのび太はドラえもんと共にみんなにも使わせようとするが、その時いきなり現れた男が大ほうを横取りする。男は銀行ギャングであり、警察から逃れるために外国に行こうと言うのだ。大ほうでは外国まで届かないので、外国に行く船を狙うドラえもん。打ち上げられたギャングは何故かそのまま交番に飛びこんだ。ドラえもんの選んだ船はお巡りさんの作っていた模型で、ギャングはそこに突っ込んでしまったのだった。  

 (解説)この話、普通に読んでいると大したことはないのですが、良く考えると実にナンセンスな味わいに満ちています。何せ「人間を大砲で発射する」というシチュエーションそのものが変です(笑)。電車に送ると言って電車の上に乗ってしまって叫ぶパパを見て「成功だ」と喜ぶのびドラの姿は変ですが面白いです。ラストのオチも上手くまとまっており、この時期の作品としては水準作と言えるでしょう。
赤いくつの女の子   10頁 小六74年9月号(ノンちゃんのクツ)
 ママから部屋にたまったガラクタを捨てるように言われて整理を始める二人。しかしあるものを見たとき、のび太の動きが止まった。それは小さな女の子の靴だった。のび太はドラえもんに、過去の悲しい話を聞かせる。昔のび太の家の隣にはノンちゃんという女の子が住んでいた。のび太と大の仲良しでいつもままごとをしていたが、それをバカにされたのび太はジャイアン達に言われるままにノンちゃんをいじめてしまい、クツを片方持ってきてしまった。その後仲直りできないまま、ノンちゃんはアメリカへ引っ越してしまったのだった。それを聞いたドラえもんはタイムマシンですぐに謝りに行こうと提案する。すぐさまノンちゃんに会いに行くのび太だが、成長した現在ののび太の姿では理解してくれるはずもなく、ドラえもんはタイムふろしきを使ってのび太を若返らせ、のび太はノンちゃんにクツを返し、今までのことを謝るのだった。ノンちゃんからお別れにままごとの道具をもらったのび太は、これをノンちゃんだと思って大事にしようとするが、現在のママにはガラクタでしかなく、ママと激しく口論するのび太であった。  

 (解説)幼い日の悔恨は誰にでもあるものですが、そのために過去へ行き、さらにその当時の姿になって解消するというのはまさにドラえもんの世界ならではであり、ドラ世界の面目躍如というところでしょう。悲しい思い出も過去へ戻ってやり直し、美しい思い出にする。ある意味理想論かもしれませんが、その理想をいつまでも貫いていたF先生らしい挿話と言えるでしょう。ママからままごとの道具をガラクタ呼ばわりされていつになく激しく怒るのび太の姿も印象的です。
エースキャップ   5頁 小三74年9月号
 部屋でボールコントロールの練習をするのび太だが、やはり上手くいかない。そこでドラえもんは絶対狙ったところに当たる「エースキャップ」を出した。見事に的の中央に命中させるのび太だが、のび太はこれを野球に使うのではなく、ごみを捨てる時や誰かに何かを渡すときに、寝そべりながら行えるようにするためだった。あきれ果てるドラえもん。その時しずかからの電話が来た。面倒がるのび太は自分で自分を投げる事でしずかの所に行こうとするが、のび太はどんどん飛んで行ってしまう。しずかは現在北海道に旅行中で、そこから電話をかけてきていたのだった。  

 (解説)短いページ数の中で、ものぐさなのび太と、それによるしっぺ返しを手堅く描いています。「自分を投げる」という発想を持つとはさすがはのび太。でもあれで本当に北海道まで行ってしまったんでしょうか?のび太はボールを的に当てるのは下手でも、ハナクソを当てるのは上手なようですから(笑)、おそらく肩が弱いのでしょうね。
のび太漂流記   9頁 小五73年7月号
 ママに頼んで割りばしを集めるのび太。のび太はこれでイカダを作り、無人島へ冒険旅行に行くと言うのだ。ロビンソン漂流記を読んで影響を受けたと知ったドラえもんは「風船イカダ」を貸そうとするが、のび太は全部自分の力でやり抜くと行って借りようとしない。それでもドラえもんに説得されてイカダだけ借り、誰の力も借りないと言ってリュックも持たずに旅立って行く。心配になったドラえもんがテレビで見てみると、海に出たのび太は早速弱音を吐いていた。こっそりついて行ったドラえもんはイカダに機械を取り付けて島へと連れて行く。だがそれでものび太は腹をすかしたり、雨でずぶぬれになったりと色々文句を言い、仕方なくドラえもんはパンを与えたり、洞窟に案内したり、湧き水を出したり、衣服になる木の葉を与えたりと色々世話をする。それでも夜が近づき、家を恋しがるのび太にドラえもんは家からママを連れてきて叱ってもらうがのび太は大泣きする。後日、自分の体験談を話すのび太と、そんなのび太に羨望の眼差しを向ける友達を見て苦笑するドラえもんであった。  

 (解説)お話の世界は上手くいっても現実はそう簡単にはいかないよ、という逆説的なメッセージがこもっているように思います。偉そうなことをいっても結局一人では何も出来なかったのび太。個人の力の限界を暗示しているようで、不思議な読後感を味わえます。でも後年、のび太は無人島で10年も生きることになりますね(笑)。
せん水艦で海へ行こう   9頁 小二71年8月号(せん水かんで海へ行こう)
 スネ夫がモーターボートを使って海に行くと自慢するが、例によってのび太だけ連れていってもらえない。話を聞いたドラえもんは潜水艦で海に行こうというが、出したのはおもちゃのような小さいものだった。怒るのび太だが、これは水にいれるとその周りに合わせて大きさを変えていくという「小型潜水艦」だった。しかも水から水へジャンプできるため、早速海の方角へと向かう二人。しかしその道中、ジュースのグラスの中に入ったり、洗濯機の中で目を回したり、金魚ばちの中に紛れ込んだり、お茶の中に入って飲みこまれてしまったりと大変な目に会う。それでもやっと、次のジャンプで海に着くという地点までやってきた。だがジャンプをしてみると、何故か狭い空間に辿りつき、しかも何故かすごく熱い。実はそこは海に来ていたスネ夫が持ってきていた水筒の中に入っているお茶だったのだ。  

 (解説)全編ギャグというか、のびドラ二人だけで大騒ぎするという、これも結構ミニマムな設定の話です。まあ、初期は大体そうなんですけど(笑)。それぞれのジャンプ先での騒ぎが楽しいのですが、個人的にはトイレの水の中に入るのがおかしいですね。ちなみにもう皆さんはご存知と思いますが、「ジャンプ」というのはいわゆる「ワープ」のことです。
ネッシーが来る   17頁 小学館ブック74年8月号(公園のネッシー、メインタイトル『ドラミちゃん』)
 「ネッシーがいるかいないか」という議題でズル木と討論会をすることになったのび太。ドラミにも協力してもらって準備を整えたのび太は討論会に臨む。だがそれでものび太が勝てるかは難しいと考えたドラミは、自動操縦装置を取り付けた地底探検車を公園の池の底から何処かへと走らせる。一方討論会のほうでは、始めはのび太が優勢だったが、ズル木の弁舌によって結局のび太は負けてしまう。それでも1週間以内に確たる証拠を見せると約束したのび太は、ドラミからある計画を聞かされる。それは地底探検車でスコットランドまでの穴を掘り、ネッシーを連れてこようというものだった。そして1週間の間、公園の池の穴を見に行ったりしてネッシーを待ち続けるのび太。そして約束の日。しかしネッシーは夜になっても現れない。昼間から待っていたズル木は怒って帰ってしまう。ドラミが潜ってみると、ネッシーは池の底にもう来ていた。慌ててズル木の家に向かおうとして間違えてジャイアンの家に寄ってしまうが、それでもズル木の家に行くと、ズル木は親戚の家に行ってしまった後だった。しかも湖面に上がったネッシーの姿を誰かに見られたため、仕方なくネッシーをスコットランドに返す二人。しかし翌日、ジャイアンは夜中に公園でネッシーを見たと言って、ズル木を強引に納得させるのだった。  

 (解説)初めてこの話を読んだとき、「のび太ってこんなに頭良かったっけ?」と思った方もいるのではないでしょうか。まあ実際はのび太郎なんですから、そのへんは深く追求しないように(笑)。この話でもF先生の造詣の深さが分かり、その影響でより面白くなっています。いるかどうかもわからない生物をいるものと考えているところが、作者の希望というか、夢と重なっている気がします。事前にのび太が起こしてしまったためにジャイアンがネッシーを目撃するというオチも無理なく仕上がっています。
台風のフー子   9頁 小二74年9月号(のび太くん、台風をそだてる)
 しずかが可愛がっている手乗りの小鳥を見せてもらったのび太は、自分も何かを育ててみたいと言い出す。ドラえもんは卵を出してみるが、何の卵だったか思い出せない。それでも卵を温めるのび太にママは生き物を飼うことを反対するが、パパがとりなす。だが生まれてきたのは、台風の子供だった。気象台の学者が実験用に作ったものだったのだ。捨てようとするドラえもんだがのび太はいやがり、「フー子」と名づけて育てることにする。えさをあげたり散歩をしたりしてフー子と仲良くなっていくのび太。しかし大きくなるに連れていたずらが激しくなり、ママに捨ててくるように言われてしまう。だがどうしてものび太にはフー子を捨ててくることが出来ず、なんとか家で飼って欲しいと涙を流して懇願する。そんなある日、大型の台風が関東を直撃しようとしていた。屋根の傷んでいた所を直していなかったため、このままでは家の屋根がはがれてしまう。それを聞いたフー子は外へ飛び出していく。フー子が台風と戦っていると知ったのび太とドラえもんは必死に応援する。その結果、台風もろともフー子も消えてしまった。夜空を見つめ、悲しむのび太。後日、小さな風が舞っているとフー子のことを思い出すというのび太を、ドラえもんは優しい笑顔で見つめるのだった。  

 (解説)のび太が異端者である動物と心を通わすという、後年になって定番化する話のプロトタイプといった感じの話です。のび太とフー子の交流も良いですが、結局自分の居場所がなく、台風からのび太たちを護ることで自分の成すべきことを見つけ、それに殉じたフー子の姿には、作者の一種冷徹な視点が生きているような気がします。ラストのコマも不思議な余韻が残っています。
ジキルハイド   9頁 小五73年5月号
 ジャイアンに取られた望遠鏡を取り返しに行ったのび太は殴られる覚悟まで決めてかかるが、今度は逆にジャイアンの泣き落としにあい、結局取り戻せずに帰ってきてしまう。呆れかえったドラえもんだが少しだけなら気を強くしてあげようと、「ジキルハイド」を出す。これを飲むと10分間、性格が今と逆転してしまうのだ。早速1つぶ飲んでみると見る見るうちにのび太の性格が変わり、ついにはドラえもんのひげを取ろうとまでしてしまう。再びジャイアンの家に向かったのび太は早速ジキルハイドを飲んで性格を変え、その豹変ぶりに驚いたジャイアンは望遠鏡を返そうとする。しかしいい所で薬の効き目が切れてしまったのび太を見てジキルハイドを見つけたジャイアンはそれを全部飲んでしまった。逃げ帰ったのび太はドラえもんと共にどこかへ逃げようとする。しかし時すでに遅くジャイアンがやってきてしまった。しかしジャイアンはのび太に今まで取ったものを返すと、悪いことをしたと女の子のように泣き出した。ジキルハイドを飲んで乱暴な性格が正反対になってしまい、おとなしくなってしまったのだった。  

 (解説)今話の最大の見所はやはりジャイアンの豹変ぶりでしょうね。あそこまで変わってしまっては誰でも驚きますし、なんと言ってもラストの「サメザメ」という泣き方には爆笑しました。ジャイアンが来ると言って大荷物を抱えて逃げようとするのびドラも笑えます。一体どこに逃げようとしていたのか。素直に笑える話です。
のび太のおよめさん   10頁 小四72年2月号
 今日はのび太の誕生日。家族そろって将来ののび太のことを話し合うが、ふとのび太は、自分にお嫁さんが来なかったらどうしようと考え出した。そこでドラえもんはのび太と共に未来のお嫁さんを見にいく。だがついたのは公衆便所だった。野比家のあった土地は未来では公園になってしまっており、一家はマンションに引っ越してしまっていた。野比家のドアの前まで近づく二人だが、やはり直接会うのは恥ずかしいと、「とうしめがね」で中を覗く。するとそこにいたのはすごい顔の女性だった。怖がるのび太を現れたきれいな女性がつかまえる。のび太はその女性が未来のしずかだとすぐに分かったが、のび太はそのまま連れていかれ、しずかの子供らしいノビスケと勘違いされてさっきの女性に謝らせられる。自分とそっくりな子供がいるという事から、未来ののび太がしずかと結婚していると悟ったのび太は大喜びするが、しずかはまだ勘違いしており、のび太の尻を引っぱたく。そこへ本物のノビスケが帰ってきた。のび太はえらそうに説教するが、のび太を悪い宇宙人だと勘違いしたノビスケはドラえもんと共々のび太を追いかける。タイムマシンの出入り口のあるトイレが使われていて入れない間にノビスケにボロボロにされる二人。帰ってきた二人を待っていたのは、お祝いに来てくれたしずかだった。だがのび太は恥ずかしがってテーブルの下に隠れてしまうのだった。  

 (解説)のび太の運命が変わったという事が初めて明確に綴られたエピソードです。結婚する女性がしずかに変わったことが、のび太のみならず、これからのドラ世界をも変えてしまうという、シリーズの分岐点にあたる話です。骨子はこのようなものですが、ギャグマンガとしての体裁もしっかり守られており、未来ののび太の家にいた女性を見て二人そろって『すごい!』と叫ぶシーンは個人的にお気に入りです。のび太とは性格が正反対のノビスケの設定もこの時点で既に完成されています。
 と言うわけで、のび太が幸福な未来を迎えることが取りあえず確定しました。次に二人が迎えなければならない運命。それは・・・・。

さようなら、ドラえもん   10頁 小三74年3月号(みらいの世界へ帰る)
 今日もジャイアンに追いかけられて慌てて逃げ帰るのび太。のび太はドラえもんにケンカに勝つための道具を出してもらおうとするが、なぜかドラえもんの様子がおかしい。話を聞いてみると、なんとドラえもんは突然未来へ帰ることになったと言うのだ。あまりのことに仰天したのび太はパパたちにドラえもんを引き止めるよう懇願するが、パパもママものび太の勝手な都合で引き止めてはいけないと叱咤する。その夜、野比家ではささやかなお別れパーティが開かれるが、そんな中でものび太はドラえもんと目を合わせられなかった。
 ドラえもんが帰る最後の夜、眠れない2人は夜通し話をすることにし、「ねむらなくてもつかれないくすり」を飲んでから夜の町に出かけた。時間が止まったような夜の町を、街灯に照らされた二人の影だけが動いていく。自分がいなくなってからののび太が心配なドラえもんはその心情を正直に話すが、のび太はドラえもんに心配をかけまいと『1人でちゃんとやれるよ!約束する!』と力強く答える。その言葉に感激したドラえもんは涙を見せまいとその場を走り去った。
 一人になったのび太は空き地の土管の上に座るが、そこへ寝ぼけてふらふらと散歩するジャイアンが現れる。それに気づいたジャイアンはのび太が自分の秘密を目撃したことに怒り、のび太に襲いかかってくる。思わずドラえもんを呼びそうになるのび太だが寸出のところでそれを抑え、土管の後ろに隠れてやってきたドラえもんをやり過ごす。のび太はドラえもんの助けを借りずに一人でケンカを始めるが、そんな簡単に勝てるはずも無くジャイアンにメタメタにされてしまう。そんな事とは知らないドラえもんは家に戻ってみるが、のび太はもちろん家にはおらず、のび太の身を案じるのだった。
 何度倒されてものび太はたちあがり、しつこくジャイアンに食い下がる。すでに体中がボロボロになりながらも必死にジャイアンにしがみつくのび太。『ぼくだけの力できみに勝たないと・・・・・・ドラえもんが・・・・・・安心して・・・・・・帰れないんだ!』。心配したドラえもんはもう一度外へ探しに出かけ、ようやくドラえもんが空き地に辿り着いた時には、ジャイアンはしつこいのび太に負けを認めて逃げ帰る所だった。ボロボロになりながらも自分が勝った事をドラえもんに伝えるのび太。ドラえもんに支えられながらのび太は『もう安心して帰れるだろドラえもん。』と呟いた。のび太は一人でも十分やっていけるということを、自分自身の力で証明したのだ。家に帰り布団で眠るのび太の寝顔をドラえもんは涙を流し、しかし微笑みながらいつまでも見つめていた。
 そして翌朝、のび太が目を覚ますと部屋にはもうドラえもんの姿は無かった。『ドラちゃんは帰ったの?』というママの問いに、静かに『うん』と答えるのび太。のび太は再び一人だけになった部屋に座り込んで、去っていった一番大切な友達のことを想い、穏やかな笑顔を浮かべるのであった。
 『ドラえもん。きみが帰ったら部屋ががらんとしちゃったよ。でも・・・・・・すぐになれると思う。だから・・・・・・・・・心配するなよドラえもん。』
 

 (解説)日常世界に紛れ込んできた異分子を中心として描く藤子Fマンガの場合、必然的にそのラストは「異分子との別れ」になります。かつての藤子F作品の代表的キャラクターも最後には皆それぞれの場所に戻っていきました。そしてそれは「ドラえもん」においても例外ではなかったのです。
 ドラえもんはダメな少年ののび太を成長させるためにやって来ました。だがいつしか二人は「守り、守られる」の関係ではなく、分かちがたい友情を育んでいたのです。しかしいつかは別れなければならない。それは二人も心のどこかで覚悟していること。この話では「その時」が訪れた時のドラえもんとのび太の心の機敏を丁寧に描出しています。
 未来に帰ると決まっても最後までのび太の心配をし続けるドラえもん。そんなドラえもんのために無理をしてでも自分一人で困難に立ち向かえることを証明しようというのび太。互いに誰よりも想いあっている友のために全力を尽くす姿は、嫌でも見る者の心を打ちます。そしてのび太は自分一人で困難に立ち向かえることを自ら証明し、そんなのび太の決意と自分への想いにドラえもんは万感の涙を流します。疲れきって眠るのび太を、涙を流しながら見つめるドラえもんの顔は笑っています。未来と過去。おそらく永遠の別れになるであろう瞬間にもドラえもんは笑っています。まるでこれからもいつまでも自分がそばにいて見守っていくかのように。
 そしてドラえもんはのび太の前から去りました。誰よりもそれを悲しみながらも笑顔でドラえもんのいない寂しさを乗り越えようとするのび太。それは「別れはただ寂しいだけではない」というメッセージがこもっているような気がしてなりません。二人は永遠の友情を築き、そして互いを信じあって笑顔の別れをしました。もしかしたら、いつかまた会えるかもしれない、そんな日まで・・・・・。

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