てんとう虫コミックス第7巻


帰ってきたドラえもん   12頁 小四74年4月号(帰って来たドラえもん)
 ドラえもんが現代を去って幾日が過ぎたある日。スネ夫がのび太の家に来るが、寂しさを捨てきれないのび太はボーっとしっぱなし。だがママに激励され、気を取り直して外に出る。スネ夫はツチノコを見つけたので捕まえるのを手伝ってくれと言う。ツチノコが逃げ込んだという土管を突つくのび太だが、そこには犬がおり、のび太は犬に追いかけられてしまう。犬から逃げたのび太の所にジャイアンがやってきた。ジャイアンはなんとドラえもんに会ったという。あまりの事に家に飛んで帰るのび太だが、ママに尋ねてもドラえもんは知らないと言う。照れくさくて顔を見せないと考えたのび太はドラやきを買いに行こうとするが、しかしそれはジャイアンとスネ夫が四月バカでついたウソだった。部屋で悔し涙を流すのび太だがその時、ドラえもんが未来に帰る時に残していったものがあることを思い出した。それは「ウソ800(エイトオーオー)」という薬で、これを飲んでからしゃべると、しゃべった事がみんなウソになるという。薬を飲んだのび太は、自分にとって一番残酷なウソをついたジャイアンとスネ夫に、許す事のできない復讐の念を燃やす。二人の下にやってきたのび太はまず雨を降らせ、スネ夫を犬に襲わせ、ジャイアンを母ちゃんに激しく怒られるように仕向ける。その姿を見て笑うのび太。だがその後に残ったのは言いようのない寂しさだけだった。家に帰ってママにドラえもんの事を尋ねられ、『ドラえもんは帰ってこないんだから。もう、二度と会えないんだから。』と呟くのび太。しかし部屋に戻ってみると、のび太の部屋にいたのは紛れもないドラえもんであった。急にこっちへ来てもいいことになったと言う。のび太はウソ800を飲んだままでドラがもう帰ってこないと言ったため、それがウソとなってドラえもんは帰ってきたのだ。涙を流し、抱き合って再会を、そしてこれからまた一緒に居られることを喜び合う二人。
 『うれしくない。これからまた、ずうっとドラえもんといっしょにくらさない。』
 

 (解説)ドラと涙の別れをしたのび太ですが、その寂しさを完全には捨てきれていませんでした。結局のび太はジャイアン達にいじめられてやり返す事が出来ず、ドラの残していった道具を使って仕返しをせざるを得なくなります。ジャイスネに仕返しをしたあとののび太の表情、あれはいったい何を考えていたのでしょうか。ドラのいない寂しさ、仕返しする事のむなしさ、そして何より、ドラの道具を使わなければ何も出来なかった自分の無力さを悔しがっていたのでしょう。そんなのび太の所に帰ってきたドラ。それは神ならぬ原作者からののび太へのプレゼントのような気さえします。再びドラと歩み始めるのび太。そして「ドラえもん」という作品とずっと歩み続けていく藤子・F・不二雄という漫画家。この話はあらゆる意味で「ドラえもん」という作品世界のターニングポイントになった話だと思います。
小人ロボット   7頁 小二73年5月号
 今日も昼寝していてママに叱られるのび太。のび太は目を閉じて「1,2,3」と数えるだけで寝られると自慢するが、ママに言われて仕方なく宿題を始める。のび太は童話に出てくる、靴屋の仕事を手伝った小人のように、寝ている間に仕事をしてくれるものはないかと話すが、ドラえもんはそれがあると言って「小人ばこ」を出す。これに物事を頼んでから寝ると、「小人ロボット」が出てきてやってくれるというのだ。宿題を頼もうとするのび太だが、ロボットにできるか心配になったのび太は他のことで試そうと、ママの手伝いの靴磨きをロボットに任せる。しずかの家の草むしりやスネ夫の家の車の故障を直したりと、色々な家を周って手伝っていくのび太。そのせいで帰ってくるのが遅くなってしまうが、寝る時に小人に宿題をやってもらう事にする。しかし昼間に眠りすぎたため、どうしても眠くならなくなったのび太は、仕方なく自分で宿題をやり始めるのだった。  

 (解説)童話をモチーフにするという、いかにも「こんなこといいな」の世界です。小人ロボットは頼んだ人間が眠っていなければ働かないというのがミソで、その設定がラストのオチにつながっていくといううまい展開です。しかしママにまで「のび太に頼むと何やっても失敗する」と思われているのび太はさすが(笑)。
ジャイアンズをぶっとばせ   10頁 小四74年12月号
 珍しく庭でバットの素振りをするのび太。野球で負けた事を自分のせいにされたのび太は見返そうとするが、やはりドラえもんに頼る。その態度を厳しく批判するドラえもんだが、悔しがるのび太に仕方なく「エースキャップ」「ガッチリグローブ」「黄金バット」を渡すが、思わせぶりな事を言ってドラえもんは去る。自分のチームを作ってジャイアンズを負かそうと考えたのび太は、しずかを中心として女の子ばかりのメンバーを集める。ジャイアンズと試合を始めるが、自軍のキャッチャーが怒ってしまったためにピッチャーののび太は速球を投げられず、さらには誤解から、みんな飛んでくるボールを取らなくなってしまう。13点取られてやっと1回表が終わり、こちらの攻撃が始まるが、みんなルールをよく知らないようで、黄金バットを使ってもヒットにならず、結局すぐにアウトになってしまう。しかも怒鳴り散らすのび太は監督にむいていないとして、みんなに追い出されてしまうのだった。  

 (解説)確かにドラの言うとおり、いい道具があっても使う人間が良くなければどうしようもないですね。その考えでいくと、のび太は女子野球チームを作ろうという発想をした時点で失敗していた(笑)。今回は何と言っても「黄金バット」が最高に面白いです。知っている人にしかわからないでしょうが。この道具を見て、頭の中にアノ笑い声がリフレインしたなら、あなたは本物です(笑)。今話を読んで僕が思った最大の疑問。「女の子って、こんなにも野球というものを知らないものなの?」
空とぶさかな   9頁 小二71年5月号(さかなをかいたいな)
 スネ夫の家の庭にある池で、飼いならされた魚を自慢されたのび太がドラえもんに話すと、ドラえもんは自分たちも魚を訓練しようと言い出し、のび太と共に海へと向かう。そしてえさ袋を取りだし、そのえさをぎゅっと握ってにおいをつけ、海に落とすと、なんと魚が空中に飛んできた。このえさを食べると空気中でも生きられるようになり、えさをくれた人になつくと言う。魚を飼っていることをスネ夫達に話したのび太は空飛ぶ魚たちを自慢する。それをうらやましがったスネ夫は魚のえさを見つけ、留守番のタコや貝に攻撃されながらも、えさを一掴み取る。自分のおじさんでもある船長に、海の真ん中でえさをばら撒くように頼み、楽しみにするスネ夫だが、やってきたのは深海魚を始めとする不気味な魚ばかりで、逃げ惑うスネ夫だった。  

 (解説)まさに空を海に見たてて魚が空を泳ぐという、ある意味藤子Fマンガらしい話です。恒例の「キャラ同一表情の連続パターン」もあり、楽しい作品です。最後のオチも、魚は魚でも深海魚だったというオチで、まさに全編魚づくし(笑)。でも魚が立ちションする姿はちょっとイレギュラー的と言うか、シュールと言うか、ただのギャグと言うか(笑)。
好きでたまらニャい   14頁 小四71年2月号
 最近どうもドラえもんの様子がおかしい。昼間から珍しくゴロゴロしたり、ボール紙のつけ耳をつけてみたり。気になったのび太がわけを聞くが、逆にドラえもんが悩んでいると聞いて笑い出してしまう。ドラえもんは怒ってしまうが、冷静になって話を聞くと、なんとドラえもんに好きなネコができたという。だが相手は自分のことをどう思っているかも知らないと言うドラえもんにのび太は聞いてみろと助言する。その時目の前にそのネコが現れた。のび太にけしかけられてそのネコと話をするドラえもんだが、二言三言話をすると、突然家に戻り、自分の体をヤスリでこすったり、顔をとんかちで叩き始めた。のび太が話を聞くと、他愛のない話をした後に、あのネコがデブは嫌だ、風船みたいな顔は嫌だと言いたそうな顔で自分を見たという。のび太はドラえもんに自信を持たせるためにかつおぶしのプレゼントを渡すように言い、コーチを買って出る。会話練習こそうまくいかなかったものの、自信を持ったドラえもんはそのネコの下へ向かうがと中スネ夫にバカにされてまた戻ってしまう。のび太はプレゼントをあげるための練習にとしずかを練習台にするが、それを本気と勘違いしたしずかはのび太を留守番させてスネ夫と共にスケートに行ってしまう。仕方なく自分一人でネコの下に向かったドラえもんは、そのネコと友達になることに成功する。しずかの家の屋根でやかましく歌う二匹?にうるさいと叫ぶのび太であった。  

 (解説)秘密道具が一切出てこない、比較的ナンセンス色が薄いながらも抱腹絶倒の話であったりと、かなり異色の話です。恋に悩むドラえもんと、それを半ばからかいながらも応援するのび太の姿がユーモラスに、というかかなり暴走した感じで描かれています。今回はこの二人の表情がとにかく豊かで(特にのび太)、それだけでも十分笑いを誘います。恋に苦しんでいるうちに、いつのまにかいつもと立場が逆転してしまう二人もおかしいです。とにかく今話はこの二人の魅力に尽きるでしょう。
行かない旅行の記念写真   7頁 小三72年9月号(インスタント旅行カメラ)
 ハワイ旅行に行ったときの写真を自慢するスネ夫。ひがんでいるとバカにされたのび太は、つい自分は世界一周旅行をしてきたといってしまい、そのために旅行先の写真を見せる羽目になってしまう。泣きつかれたドラえもんはタケコプターで行こうとするが、それでは時間がかかってしまうというので、以前使った「電車ごっこ」を出す。しかしこれも壊れていたため、のび太は困り果てる。だがドラえもんは「インスタント旅行カメラ」を出して、世界各地の写真と、旅行姿ののび太を合成した。世界各地の旅行写真を撮る事に成功したのび太は早速みんなに自慢し、驚く友人達。だがしずかはさらに驚く一枚の写真を見つけた。それは月面の写真と合成したものであり、さすがにインチキがばれてしまうのだった。  

 (解説)のび太の負けず嫌いと言うか、ムチャクチャさが今回も爆発しています。まだ「どこでもドア」がなかった頃の話として、以前(FFランド収録)登場した電車ごっこが出てきますが、「ニューヨーク」を「ニューヨク(入浴)」と勘違いする当りはすごい。もう少し後の時代だったら、絶対しずかの風呂場に行っていたはずだ(笑)。オチも分かりやすく楽しいものになっています。
ママのダイヤを盗み出せ   10頁 小六73年7月号(ママがなくしたダイヤ)
 物を出しっぱなしにしているとして、ママに怒られるのび太。のび太が出したものはママが小さい頃の写真が載っているアルバムだった。それを見ていたママは急に声をあげる。その写真のママのお母さんは大きなダイヤの指輪をしていた。今ならかなり高額であろうその指輪は二人組の泥棒に盗まれたのだと言う。のび太達はそれを食い止めようと、盗まれた当日・昭和23年7月10日に向かう。そこで二人は少女時代のママに出会うが、怪しまれたために一旦逃げる。指輪を確保するためにママの家に向かった二人は、そこでママがお母さんから、出しっぱなしにしてはいけないと注意されているところを聞く。指輪を見つけた二人だがママに見つかり、指輪を置いて退散する。ママはこの指輪を借りて友達と一緒にお嫁さんごっこをはじめる。そばでやきもきする二人だが、紙芝居屋が来るとママは指輪をほっぽってそちらへ行ってしまう。指輪を家に届けた二人は、お母さんから指輪を持っていって欲しいと頼まれる。実は指輪はただのガラスで、お母さんはママのだらしない性格を直すためにこのことを利用しようと言うのだ。夕暮れになっても指輪を探し続けるママ。現代に戻ってきたのび太はママからまた叱られてしまうが、昔の出来事をそれとなく話し、ママを慌てさせるのだった。  

 (解説)パパに比べてママの過去というものは余り出てこないのですが、そういう意味では貴重な話ですね。今回も歴史にのびドラが介入しますが、直接ではなく、間接的に関与していた所(二人は指輪を故意に盗んだわけではない)が違いました。ママがそう思いこんでいただけだったのです(結果的には二人が取ったんだけど)。のび太のだらしない性格は実はママから引き継いだものだったんですね。
さいなんにかこまれた話   6頁 小五75年2月号
 歩いていて電柱にぶつかったと、今日もついていないのび太。自分が不幸な星の下に生まれていると信じるのび太は、せめて自分に降りかかる災難がわかればいいと話し、それに応えてドラえもんは災難が近づくとブザーを鳴らす「さいなん報知器」を貸す。ドラえもんはしっかりした心構えをするようのび太に説教し始めるが、のび太は報知器を持ってすぐに姿を消した。家の廊下に画鋲を置いて実験したのび太は安心して外に出る。早速ブザーが鳴り始めるが、周りには災難を引き起こしそうなものは何もない。と突然、頭上からペンチが落ちてきた。電柱で仕事をしている作業員が落としたのだ。ブザーを信じることにしたのび太が空き地に行くとまたもブザーが鳴った。土管に隠れるとジャイアンが現れた。ジャイアンはのび太をいじめた事を母ちゃんに告げ口されたとして、のび太を探していたのだ。家に帰ろうとするのび太だが、家ではママが廊下にあった画鋲を踏んで怒っており、さらにどこに行こうにもブザーが鳴ってのび太は動くに動けなくなってしまう。近くの家の庭に隠れるのび太だが、ブザーの音はどんどん大きくなっていく。すると、ブザーの音でその家の寝ついた赤ちゃんが起きてしまったという事で、家の人から水をぶっかけられてしまうのだった。  

 (解説)災難があることを知ることが出来るにも関わらず、災難にあってしまうのび太は「災難予報機」と似ていますね。世の中には災難の元となるものがたくさんあるから、問題は自分がそれをどう乗り越えるか、ということなのでしょう。
ネズミとばくだん   6頁 小五74年10月号
 仰天した様子でのび太の部屋に飛びこんできたママ。何か出たといわれて二人が見に行くが、その何か・ねずみを見るとドラえもんは慌てふためいて部屋に逃げ帰ってしまう。のび太とママはドラえもんに22世紀のねずみ取りを出してもらおうと部屋に入るが、途端にドラえもんに機関銃で狙われてしまう。ねずみのねの字を聞いただけでぞっとするというドラえもんは早くねずみを退治しようと、のび太には一発で戦車を吹き飛ばす「ジャンボ・ガン」、ママには鉄筋のビルを一瞬で消滅させてしまう「熱線銃」を渡す。もっとおとなしい方法を相談しようとしたのび太だが、気がたっているドラえもんは逆ギレしてしまう。さらにねずみを見つけられないドラえもんは遂に気が変になり、「地球はかいばくだん」まで取り出してしまう。やむを得ずのび太達は取りあえずドラえもんにねずみは逃げたとウソをつき、ドラえもんが安心しているスキに捕まえようとする。そこへ帰ってきたパパがねずみを目撃し、その事を二人に話すと、ネズミの事を口にしたと言うことで怒られてしまい、不思議がるパパであった。  

 (解説)「好きでたまらニャい」とは似て非なる、「狂ったドラえもん」が登場する話です。今話のドラのネズミ嫌いぶりは尋常ではなく、用途不明の攻撃用道具まで持ち出してしまい、さらには爆弾まで出してしまうという、「野比家騒動記」と言うべきギャグ話です。何と言っても、ファンの間では語り草になっている、『フヒーッ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒ。』と笑いながらヨダレを垂らして爆弾を抱えるドラの姿は今見ても強烈な印象を与えます。
未来からの買いもの   10頁 小六73年11月号(未来の自転車)
 新しい自転車を買ったスネ夫を見たのび太は自分も自転車を買ってもらおうとするが、パパはゴルフクラブを、ママは新しい服を欲しがっており、とても自転車は買えそうもない。部屋に戻ってみると、ドラえもんが何かを見ながら考え事をしていた。ドラえもんが立ち去った後に見てみるとそれは未来の商品カタログだった。最新の自転車を見つけたのび太はこれが欲しいと思わず呟いてしまう。すると何とのび太の目の前にその自転車が現れた。のび太はさらにゴルフクラブと服を買ってパパとママに渡す。そして友人達にもカタログの事を話し、いろいろなものを出すが、それを知ったドラえもんは仰天し、ものすごい剣幕で怒る。これは返品の認められない通信販売のカタログであり、代金を払えなかったら詐欺の罪で連れて行かれてしまうと言う。月賦で支払う事をパパ達に相談しようとするが、もう既に集金人の男はやってきていた。自転車の最高速度で逃げる二人だが、その時突然自転車がバラバラに分解した。男によるとその自転車は最高速度で走るとバラバラになってしまうという欠陥車であり、今回収しているのだと言う。他に買ったものは無料にすると言われ、思わず自分の分も買っておいてくれれば良かったと文句を言うドラえもんであった。  

 (解説)欲しいというだけで何でもすぐに手に入るという、いかにも未来的な部分と、代金を取り立てに来たり、ローンで支払おうとするなどのやけに現実的な部分とのアンバランスさの妙味が面白い話です。ラストのドラのセリフはまた図々しいですね(笑)。ちなみに今回のカタログは2087年度版のものなので、ドラの生まれた時からは25年も前のもののようです。
石器時代の王さまに   14頁 小三71年10月号(大むかし)
 のび太は突然石器時代へ行くと言い出した。何一つ便利なものを知らない石器時代の人達に現代の技術を見せ、王さまになろうというのだ。色々な道具を持って10万年前に行くが、村どころか人一人見つけることが出来ない。しかもタイムマシンの出入り口を見失ってしまったのび太は川に落ち、流されてしまう。気がついた時、のび太は原始人の一家に助けられていた。しかし言葉が通じないため、のび太をサルと勘違いした原始人は晩のおかずにしようとするが、結局のび太はスネルという、原始人の子供のペットにされてしまう。しかも現代から持ってきた道具もことごとく役には立たず、逃げ出すのび太だが、その時現れたマンモスに掴まってしまう。原始人が立ち向かっても埒があかないが、その時光と共にマンモスが倒れた。心配して見に来たドラえもんがマンモスを倒したのだ。それを見た原始人はドラえもんを神様と信じ、手厚いもてなしをする。喜ぶドラえもんの横でつまらなそうに帰る催促をするのび太であった。  

 (解説)のび太のしている事が全部空回りして、結局いい所は全部ドラに持って行かれるという、いささかのび太にとってはかわいそうな話ですが、最初から王さまになろうという野心を持っていたのび太にはいい薬でしょう。のび太の持ってきた道具がまったく使えなかったり、原始人一家の会話をのび太が勘違いするシーンなどはかなり笑えます。ちなみにドラの使った銃はショックガンのように思うのですが。
くせなおしガス   6頁 小五74年11月号
 ハナクソをほじる癖をパパ達に注意されたのび太は、パパの貧乏ゆすりや、ママが舌で口の周りをなめる癖を指摘するが逆にまた叱られてしまう。癖を気づかせたいと言うのび太にドラえもんは「くせなおしガス」という、癖を大げさにするガスを出し、のび太に吹きかけた後にパパ達に吹きかける。だが二人は言われたばかりで癖を出さず、そのうちのび太がほじったハナクソが巨大なボールとなってしまう。慌てた二人は捨てにいくが、丁度家に来たお客に巨大ハナクソをぶつけてしまう。お客と話すパパ達だが、その時唇をなめていたママの舌が伸び始め、お客の顔をなめてしまう。さらにはパパの貧乏ゆすりのせいで地震のような大きな揺れが発生し、3人は表に逃げる。互いの癖を注意するパパとママを見て、ガスが聞き過ぎだとのび太はドラえもんに話すのだった。  

 (解説)たった6ページの中によくまあこれだけの下品な内容を込めたものだ(笑)。「巨大なハナクソ」はドラ世界のプレミアアイテムになっていると思います。そう言う意味では今回一番の被害者はお客さんでしょうね。ハナクソをぶつけられ、舌でなめられてしまうんですから。『気になさらないで。』と言われても、そりゃ気にしますよねえ(笑)。癖というのは本当に知らないところで他人に不快を与えている時もあるので、気をつけるようにしなければと、僕は今話を読むたびに自戒します(笑)。
ウルトラミキサー   6頁 小二72年6月号
 犬とネコのケンカを止めているしずかを見かけたドラえもんたちは、二匹を一匹にまとめようと「ウルトラミキサー」を出し、犬とネコを合体させてしまう。家に帰ってくるとパパが古道具屋で買ってきた壷にママが文句を言っているところだった。かわいそうに思った二人はウルトラミキサーで壷と風呂桶をまとめ、さらに二人は色々なものをまとめまとめようとし、掃除機とくずかご、テレビとタンス、アイロンとトースター、電気カミソリとライター、冷蔵庫とトイレをまとめるがさすがにパパ達に怒られてしまい元に戻す。他に使い道を考える二人はおやつが一人分なのを見て、ミキサーで合体し「のびえもん」となった。しかし遊びに行こうとする意志と昼寝しようとする意志がぶつかり、一人でケンカを始めてしまうのだった。  

 (解説)これを素直にナンセンスと呼んでいいのか。まあ「二つの異なるものを合体させる」という事を考えると立派にナンセンスなのですが、とにかくそれ以上にすごい世界になりました。ドラたちは何故冷蔵庫とトイレをまとめようと考えたのだろう?そして極めつきはやはり「のびえもん」。人間まで簡単に合体させてしまうのだから、やはりすごくナンセンスな世界ではあります。一人でケンカも出来るし(笑)。
エスパーぼうし   17頁 小三70年12月号
 クリスマスパーティのための手品の練習をするのび太だがうまくいかない。未来の手品を教えてもらおうとするがドラえもんも手品は知らず、のび太はドラえもんを使って、胴体切りはなしの手品に挑戦するがドラえもんは素早く逃げ出す。みんなに電話して隠し芸のことを聞くと、みんなはもう準備を整えていた。困るのび太だがその時不意にのび太の体が宙に浮き、家のあちこちにぶつかりながら部屋まで連れて行かれる。ドラえもんが「エスパーぼうし」で使える超能力の1つ「テレキネシス」を使ったのだ。「テレキネシス」「テレポーテーション」「クレヤボヤンス」の3つが使えるようになるぼうしを使って隠し芸をしようと考えたのび太は早速テレキネシスの練習を始める。灰皿を使おうとするパパに、テレキネシスで持って行く練習をして遂に灰皿を浮かべるが、パパには怒られてしまう。かなり上手になったのび太はテレポーテーションでトイレに行こうとするが失敗してしまった。クレヤボヤンスの練習はうまくいき、安心するのび太だったが、玄関に出しておいたぼうしが無くなってしまった。何度もスネ夫に催促されて先にパーティに向かうのび太。クレヤボヤンスのおかげで誰が何をするか知っているのび太は事前にみんなばらしてしまうが、自分の隠し芸を見せろと言われて再びぼうしを探しに行く。そしてやっとぼうしを見つけたドラえもんと合流したのび太は家の外からスネ夫とジャイアンをテレキネシスで宙に浮かべるが、二人はこれが自分たちの隠し芸だとウソをついたため、テレポーテーションで飛びこもうとするのび太。しかしまだ不完全だったためか、服だけが中に飛び込んでしまうのだった。  

 (解説)ものすごく面白いギャグ話なのですが、ギャグ話なのにページ数が17ページもあるというのは珍しいですね。同じ超能力でものび太がやると、さすがに「エスパー魔美」のようにはいかないようで、最後まで失敗続きでした。今回は「テレビでは簡単そうだった」というだけでドラの胴を切り離そうとするのび太が、本筋とは関係無くコワイです。個人的にはドラのテレキネシスで宙に浮かんだのび太が天井にぶつかって「バタ」と落ちてくる時ののび太がスキです(笑)。
テスト・ロボット   5頁 小三75年1月号
 部屋で何やら身振り手振りでブツブツ言っているのび太。ジャイアンが珍しく貸してくれた本を汚してしまい、どう謝れば乱暴されずにすむかを研究していたと言う。ドラえもんは「反のうテストロボット」を出し、頭の部分にテストしたい相手、つまりジャイアンの顔を描く事で、本物とまったく同じに反応するようにする。だが軽く話しても、きちんと謝っても、すぐ逃げ出してもどうしてものび太は殴られてしまう。仕方なく傷薬などをドラえもんから受け取って返しに行くのび太だが、その途中ジャイアンに驚かされ、その拍子に本をドブに落としてしまう。笑って水に流そうと言うジャイアンの言葉を聞いてのび太は安心し、ジャイアンはそれが自分の本だと知るのだった。  

 (解説)オチに少し完結感が薄い気がしますが、まあそれは良しとしましょう。しかし相変わらずドラは絵心があるのか無いのかわかりませんね。急に下手になる時もあるし。ところでジャイアンがのび太に貸した本は「けんか読本」。すごそうな内容の本だけど、ジャイアンはどんな理由でこれを貸したのでしょう?ここらへんも謎だ(笑)。
タヌ機   10頁 小六74年6月号
 みんなと一緒に下校するのび太。その時ポイ捨てされた煙草の吸い殻がのび太の背中にくっつき、服を焦がして熱がる。カチカチ山というジャイアンの例えを聞いたスネ夫は、のび太がタヌキに似ていると言い出した。みんなに笑われたのび太はドラえもんに話すが、ドラえもんまで笑ってしまう。謝ったドラえもんはスネ夫を化かすようにとのび太に「タヌ機」という道具を出す。それをつけたのび太は試しにドラえもんを化かし、さらにスネ夫を化かして山道に迷い込ませる。夜になってしまい、スネ夫はボロ屋に見えるしずかの家にあがりこむが、雑巾をゆすぐバケツの水をおかゆと思ってがぶ飲みしてしまい、怒ったスネ夫はしずかを追いかけてジャイアンと出会うが、ジャイアンをゴリラと言ったためにジャイアンに殴られてしまい、目がさめる。胸がスッとしたのび太だったが、ジャイアンがスネ夫を追いかける際にとばっちりを食らって顔面にジャイアンのパンチを受けてしまい、その顔のアザからママにまでタヌキみたいな顔と言われてしまうのだった。  

 (解説)この話を読んだ全国のドラファンの方たちはきっと、「のび太がタヌキならスネ夫はキツネだ」とコンマ1秒でツッこんだ事でしょう(笑)。スネ夫の一人相撲も楽しいですが、文字通りのタヌキになってしまうドラも面白いですね。しかし「タヌ機」とはすごいネーミング。今回、「のび太の顔面にめり込むジャイアンのパンチ」というのはドラ史上屈指のビジュアルショックでしょう(大笑)。全編笑い通しの楽しい話です。
ねこの手もかりたい   15頁 小三71年1月号(目をかします、てんコミ初期『手足七本目が三つ』)
 今年もお年玉が少ないと言って、どこかにお金が落ちていないか探すのび太だったが、キョロキョロしすぎて車に轢かれそうになってしまう。ドラえもんは「つけかえ手ぶくろ」を出してのび太の左目を取り、後頭部に付け替えてしまう。体のどの部分でも付け替えできるのだ。コンタクトレンズをいれ、さらに右目を足につけて落ちているお金を探そうとするのび太だが、そんなのび太に出会った先生は驚いてしまい、仕方なくドラえもんは目を元に戻して人造目玉を足にくっつける。自分で色々くっつけようとするのび太はドラえもんの目を取って目を見えなくし、からだの人造部品を持って行ってしまう。これを使って金儲けを企んだのび太は手を貸して欲しいと言うママに人造手を一本貸してママを気絶させ、様々な体の部品を使ってスネ夫を驚かせて友達を集めさせ、トランプのカードを覗いたり大福を食べたりしてしまう。のび太は体の部品を1日10円で貸し出そうというのだ。早速やってきたしずかに少女マンガのような目をくっつけ、スネ夫にはすらりとした長い足をくっつける。だがジャイアンにでべそを取り替えて欲しいと頼まれるがヘソの部品は無いために、ジャイアンはのび太のヘソを取ろうとする。さらにしずかたちからも文句が来て、のび太はドラえもんに目を返して助けてもらった。反省するのび太にドラえもんは自分の腕を筋肉モリモリのものと取替え、のび太を困らせるのだった。  

 (解説)これは単純にナンセンスと言い切る事が出来ないほどの怪作です。体の一部を分解してつけかえるなんて発想、あってもなかなかマンガで表現できる事ではないでしょうに、それをあっさりとやってしまうのだから、改めてF先生のすごさを思い知らされます。個人的にはムスッとしたドラがいろんなコマにさりげなく入っている光景が好きですが、やはりこの話も是非ご自分で一読してもらうのが一番でしょう。後の迷作「人間切断機」や「分かいドライバー」へとつながる片鱗が垣間見られるでしょう(特に後者はスゴイ!)。
ピーヒョロロープ   6頁 小一74年3月号
 のび太の家の屋根にしずかのボールが乗っかってしまった。ドラえもんは「ピーヒョロロープ」を取り出して「もってこい」の曲を吹くと、ロープがボールを取りに行った。荷造りがうまくいかないママの変わりに「にづくり」の曲で荷造りをしたり、おやつを持って来たり勉強させたりトランポリンにしたりして楽しく遊ぶ二人。その時お客がやってきた。二人は案内するが、その男は泥棒だった。泥棒はロープの笛を見つけて吹くと、ロープは男を縛り上げてしまう。男は「にづくり」の曲を吹いてしまったのだった。  

 (解説)伏線のはり方も丁寧で、素直に楽しめる話ですね。のび太の家の前で何故しずかがボール遊びをしていたかという事には触れないように(笑)。
山おく村の怪事件   17頁 小学館BOOK74年3月号(ふしぎなドア、メインタイトル『ドラミちゃん』)
 近くでビル建設工事が始まったために、のび太の家では騒音がうるさくて話すことすらまともに出来ない。のび太はパパ達の結婚記念日に何かプレゼントしたいとドラミに相談するが、うるさくて落ち着かないというパパ達のために静かな所に連れていってあげようと計画する。ドラミがコンピューターで調べたその場所とは、高伊山の山おく村だった。「どこでもドア」でその村に向かった二人は一応周りを観察してから、掃除をしたり身の回りのものを持っていこうとする。だが二人はその背後に突き出された手に気付かなかった。パパ達を村に連れてきた二人は、パパからこの村の事を聞く。ここに住んでいた人達は、そのあまりの不便さに村を出て行ってしまったのだ。くつろぐパパとママを見て安心する二人はラーメンを作ろうとするが、湯を沸かすのにも一苦労する。家族四人で雪合戦をしている間、一人の男が家の中に入ってきてラーメンを食べあさる。彼は高伊山で遭難していた金原という男だった。金原はのび太達に助けてもらおうとするが、木から落ちてきた雪に埋まってしまう。その雪で雪だるまを作ったのび太達はどこでもドアで自宅の庭まで持って帰る。村に戻った二人だが、雪だるまの中から這い出た金原はのび太の家の近くの道路で倒れてしまう。ラーメンこそなくなっていたものの、囲炉裏のそばでのんびりご飯を食べる四人。帰って来て金原が東京で見つかったというニュースを聞いて不思議に思う四人であった。  

 (解説)大自然の中で楽しく遊ぶ野比一家と、遭難者の(自分たちは自覚していないにしろ)救助とを織り交ぜた、贅沢な作りの話です。山おく村の過去については、少なからず現実を反映している部分もあると思います。しかしシルエットでは怖かった金原は、実際はすごいギャグ顔なんで、昔はかなり笑ったおぼえがあります。全体的に情緒的な感じのする一編です。あと、パパが昔学生野球のピッチャーだったという事については・・・・・まあこれはのび太郎のパパなんで(笑)。

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