てんとう虫コミックス第8巻


ゆっくり反射ぞうきん   8頁 小四75年5月号(ゆっくり反しゃぞうきん)
 ジャイアンが町の電柱の根元に花の種をまいた。みんなに誉められるジャイアンだが、余計な事を言ったのび太はジャイアンに怒られる。家への帰り、道を走る車を避けたのび太は泥水で顔を汚してしまう。それをママに指摘されたのび太は鏡で確認しようとするが、何故か鏡に自分の姿が写らない。と思ったら数秒前の自分の姿が写し出された。やってきたドラえもんは、鏡を「ゆっくり反しゃぞうきん」でふいたのだという。これで拭くと写る時間を遅くする事が出来るのだ。早速ドラえもんが試したあとにママが鏡を見ると、ドラえもんのアカンベー顔が写ってママは仰天してしまう。しずかにぞうきんをみせようと向かう二人だが、しずかは留守だった為、部屋で待つ事にする二人。のび太はしずかの部屋の鏡をぞうきんで拭いて、しずかが一人の時の姿を見ようとする。ドラえもんも協力して拭くと、昨日のしずかが写し出された。そこへ帰って来たしずかは、外で騒ぎが起きているという。ジャイアンが育てた花の芽が誰かに踏まれたという。足跡が子供のものだった為にみんなを疑うジャイアンだが、のび太は正面にある建物のドアのガラスをぞうきんで拭いて犯人を調べようとする。しかしそこに写し出されたのは、車をよける時に芽を踏んでしまったのび太の姿だった。ジャイアンにボロボロにされたのび太だったが、家の鏡にはまだぞうきんの効力が残っており、傷の手当ても出来ないのだった。  

 (解説)今回の道具はイマイチ印象が薄いのですが、そのかわりに人物がとても生き生きとしています。しずかの鏡を拭くのび太を一旦注意するもすぐに荷担するドラや、ジャイアンに余計な事を言って怒られてしまうのび太などがその代表ですね。真実がわかってからの事をカットしてすぐにオチに持っていくところが、想像をかきたてられて面白いです。
ライター芝居   9頁 小五75年5月号(シナリオライター)
 ママが出かけている為に、いつも以上にのんびりするのび太。と、そこへやってきたドラえもんが、持っていたライターの火をつけると、のび太は自分の意志に反して勉強をはじめ、さらにドラやきを買いに行こうとしてしまう。ドラえもんの持っていたのは「シナリオライター」で、のび太のとった行動はシナリオに書いてあったものだった。シナリオを入れてライターの火をつけると、シナリオどおりに人物が動いてくれるという。のび太はそれを使って、のび太を主役、しずかをヒロイン、ジャイアンとスネ夫を悪役とした西部劇風のシナリオを作る。空き地へ行ってみると、ジャイアン達は昨日ダックスフントを見たので、普通の犬も伸ばしてやろうとしていた。のび太はシナリオどおりに行動するが、火がついていないために返り討ちにあってしまう。ライターをつけて改めて芝居が始まるが、シナリオの字が間違いだらけの為にのび太は変なセリフを言ってしまう。それでもシナリオどおりにジャイアン達をやっつけ、しずかが去って行くのび太にすがるシーンとなるが、しずかはジャイアン達がいじめていた犬にすがりついた。シナリオには「のび太」を「のび犬」と書いてあった為に、犬と去って行ってしまったのだった。  

 (解説)個人的にはものすごく秀逸と思うネーミングの道具が出てくる今話は、のび太の国語力の乏しさがはじめて明確に露呈された話でもあります(笑)。でもセリフはともかくストーリーはまともだったので、のび太には構成力はあるようです。しかしダックスフントを見たからといって、他の犬まで伸ばそうとするのはいくらなんでも無理がありますよねえ(笑)。
マッド・ウォッチ   10頁 小六75年2月号(狂時機)
 今日もママに叱られるのび太。もうすぐしずかが遊びに来るというのでなんとかして欲しいと言うのび太にドラえもんは、周囲の時間の進み方を早めたり遅くしたり出来る「狂時機(マッドウォッチ)」を出す。実験して二人のいた部屋だけ、1分につき1時間の割合で時間を早めてみるドラえもん。早速これを使ってお説教を早く終わらせたのび太は、マッドウォッチを返してもらおうとするドラえもんが飛びこんだ部屋の時間の進み方を100倍遅くする。さらにそこにママも入ってしまう。しずかを迎えに行ったのび太は、狭い道でスピードを出す車の動きを遅くして車に落書きをしてしまう。しずかを連れてきたのび太はお茶を入れて話をするが、どうものび太としずかの話があわず、しずかはイライラしてしまうが、のび太はマッドウォッチで時間を遅くして、しずかを見つめるうちに眠ってしまう。目覚めたのび太は時間を戻すが、しずかは家に帰ろうとする。さらにドラえもん達のいる部屋の時間を戻し忘れていたのび太は、外はもう真夜中になっていた事に驚くのだった。  

 (解説)時間の進み方を変えるという、文字通りドラ世界を代表するような話です。様々な時間を混乱させて、しまいには時間の感覚を忘れてしまい、ラストのオチを迎えてしまうのび太が滑稽です。今話のしずかは衣服もそうですが、かなり大人っぽく描かれており、やたら子供っぽいのび太との対比になっています。
 ところで今回の「マッドウォッチ」は、現在漢字表記では「驚時機」となっていますが、僕はこの改変にだけはどうしても賛成出来ないので、このページではこれからも「狂時機」と表記させていただきます。
グラフはうそつかない   4頁 小三75年2月号(正かくグラフ)
 4人で頭の良い順番を決めるのび太達。一番はしずかとして、どちらが二番かでもめるジャイアンとスネ夫。力持ちではジャイアンが当然一番となるが、誰がハンサムかという事でジャイアンとスネ夫はケンカになってしまう。三人の中でなら自分が一番ハンサムではないかと話したのび太はドラえもんに笑われるが、こういう事を正確に判断できるものは無いかと聞かれ、ドラえもんは「正かくグラフ」を出した。調べたい事と比べたい人物の名前を書くと、比較がグラフとして表されるのだ。力と頭のよさを比べるのび太だが、どちらとも自分がビリなのに腹を立て、頭のよさの自分のグラフに書き足してしまう。するとその書き足した部分が飛び出してきて、のび太に無理やり勉強をさせ始めた。グラフの通りに頭がよくなるまで勉強させられる羽目になってしまったのだった。  

 (解説)ずっとほのぼのした感じが続いて最後に「書き足したグラフが飛び出る」という、かなり唐突なオチが入るユニークな話です。自分をハンサムだと言うジャイスネは二人ともかなりうぬぼれていますね(笑)。ハンサム、と言うか一番普通そうな顔はのび太だと思うんですけど、どうなんでしょうね?
キャンデーなめて歌手になろう   10頁 小五73年8月号
 ドラえもんがのび太に見せていた機械は、人間の声紋の特徴をとらえて、しゃぶる事でその人の声で話せるようになるキャンデーを製造する機械だった。ドラえもんの実験のせいでママに叱られ、宿題をさせられる羽目になったのび太は宿題を終わらせて遊びに行くと、スネ夫からジャイアンのリサイタルの券を渡されてしまう。居合わせたジャイアンに脅されてドラえもんの分まで貰ってしまうのび太。そして当日、苦痛の時間を乗り切って遂にリサイタルは終わった。しかしスネ夫のお世辞に気をよくしたジャイアンはアンコールを歌おうとする。ドラえもんは歌手の声の入ったキャンデーをしゃぶらせて事無きを得る。後日、ドラえもんにしずかの声で好きと言わせて調子に乗るのび太だが、突然訪れたジャイアンがのび太に本をくれると言う。その本は以前のび太が貸した本だったが、ジャイアンは妙にのび太に優しい。ジャイアンは先日のキャンデーを使って「スターになろう」という番組で優勝して本物の歌手になりたいという。しつこく頼まれてドラえもんもキャンデーを渡す。しかし放送当日になってドラえもんは、ジャイアンにキャンデーの効き目が30分しか持たないことを話すのを忘れていた事を思い出す。果たして全国にジャイアンの歌が響き渡り、甚大な被害をもたらした。怒るジャイアンはのび太とドラえもんを襲うが、ジャイアンの母ちゃんの声のキャンデーを使ってなんとか逃げ延びるのだった。  

 (解説)今回はマンガの中にも関わらず、「声」が重要なファクターとなっているため、自然とキャラのセリフの面白さが目立っている感じがします。ドラがしずかの声でのび太を好きと言うシーンは、個人的にはかなり意味深な気がします(笑)。ジャイアンの歌に対するのび太たちの感想もすごいですが、極めつけは歌の力でテレビまで壊してしまうという強烈さでしょう。よく社会問題にならなかったものだ(笑)。ところで現在では「天地真理」という部分は変わっているのでしょうか?
人間製造機   11頁 小六74年7月号
 戦艦の模型を作るジャイアンとスネ夫に手伝いを断られたのび太は、ドラえもんに頼んで何か出してもらい、しずかと共に作ろうとする。だがドラえもんは断り、そして部屋にある機械に絶対触るなと忠告して出かけて行く。のび太はその機械が「人間製造機」と知って早速作ろうとするが、その時未来のデパートの社員が機械を回収しにやってくるが、のび太はうまくごまかして帰ってもらい、材料集めに取りかかる。しずかにも手伝ってもらおうとするが、赤ちゃんを作るというのび太のセリフを誤解したしずかはのび太を殴り、やむなくのび太は一人で材料をそろえ、人間製造を開始するが、その時ドラえもんが帰ってきた。デパートが回収したとウソをつくとドラえもんは心底ほっとした様子を見せる。ドラえもんが言うには、あの機械で生まれた人間は超能力を持つミュータントで、しかも彼等が仲間を増やして人間を征服しようとして、国連軍まで出動する事件になったと言う。驚くのび太から真実を聞いたドラえもんは急いで部屋に向かうが、既にミュータントは完成していた。ドラえもんは機械を壊そうとハンマーを持ち出すが、念力でそのハンマーを操られ、殴られたドラえもんは気絶してしまう。ミュータントに脅されてミルクを持っていくのび太だが、そこにやってきたしずかはまた誤解してのび太をぶってしまい、それを見たミュータントはしずかを電気死刑にしようとする。だがその刹那、ドラえもんが「逆時計」で時間を2時間前の状態に戻し、ミュータントを消滅させた。しかしそのためにジャイアン達の模型が組み立て前の状態になってしまったりと、色々周りに迷惑をかけてしまうのだった。  

 (解説)機械的に人間を作り、それがさらに人間に対して敵となる存在であったという、まさにSFの世界の話なのですが、そのためか、ラストのほのぼのとした感じとのミスマッチさが余計に引き立ちますね。自然界の様々な物質を人間製造の材料にするというのは、どこか観念的な考え方さえ存在しているようにも思います。ドラ世界の奥深さを知る事が出来る、よい作品ですね。
悪運ダイヤ   11頁 小四72年9月号
 家の中でも外でもついていないのび太。そんなのび太を見兼ねたドラえもんは「悪運ダイヤ」を出す。ダイヤを自分の体でこすり、そのダイヤを他人に持ってもらうと、悪い出来事をダイヤと一緒に人に移す事が出来るのだ。ダイヤをあげる人を見つけに外に行く二人。誰に渡すか悩むのび太にドラえもんは、ダイヤをわざと落としておき、誰かに拾ってもらおうとするが、しずかが拾いそうになったため、慌てて止める二人。そこに現れたスネ夫がウソをついてダイヤを持ち去るが、その途端に転びもしなくなったのび太はジャイアンをバカにしてわざと殴られようとする。だがそこに良心が咎めたスネ夫がのび太にダイヤを返してしまい、逃げるのび太はドラえもんに助けられる。再びダイヤを道に捨てる二人だが、やはり気の進まないのび太はダイヤを回収しようとする。だが通行人にダイヤのことをしつこく聞いた為に殴られてしまってものび太は痛みを感じない。誰かがダイヤを持っていると考えた二人はのび太の頭をぶちながら痛がっている人を探すが、それでも見つからない。そこへイライラするジャイアンが再び殴りにやってきた。だが殴られても逆にジャイアンが痛がる。ジャイアンがダイヤを持っている事を知った二人は、もうしばらく持たせておこうと話すのだった。  

 (解説)「持ち主に不幸を導くダイヤ」の話が元ネタのような気がしますが、そんな事よりもやはりまず、のび太の不運さが面白いですね。安全となると今度は何にも災難が無くなるというのは最たるものです。それでも自分の代わりに誰かがひどい目に会うのは悪いと、優しいのび太を描いているのもさすがです。どんな状況でも優しさを失わない、というのは、そのまま作者の理想像と重なる気がします。でもそれだけで終わらないのがこの時期のドラのいい所で、オチではしっかり笑いを取っています。
わらってくらそう   4頁 小三75年7月号(ゲラゲライヤホン)
 ゲラゲラ笑いたいので面白い話を聞かせて欲しいというのび太にドラえもんは、耳にはめておくと何を聞いても笑ってしまう「ゲラゲライヤホン」を出す。早速つけてみると、のび太はドラえもんの一言一言で大笑いする。だがママのお説教やしずかが悲しんでいる時でもイヤホンのせいで笑ってしまい、怒らせてしまう。さらにジャイアンが転んだ時も笑ってしまった為にジャイアンにギタギタにされたのび太は、笑い話を聞いてきたと言うドラえもんに『おもしろい話は、もうたくさんだ!!』と叫ぶのだった。  

 (解説)確かに笑うのはよい事なんですが、それも度を越すとこうなる――という事でしょうか。それにしても度を越しすぎ(笑)。ジャイアンが転んだ時に笑い始めたきっかけはなんだったのかが個人的には気になります。
とう明人間目ぐすり   12頁 小学館ブック74年9月号(とう明人間、メインタイトル『ドラミちゃん』)
 ズル木に透明人間の本を自慢されたのび太は、メンコをあるだけ渡して借りようとするが、ジャイアンに本を取られてしまう。怒ったのび太はドラミに頼んで、本物の透明人間になろうとするが、ドラミは卑怯だと言って断る。しかしのび太にカマをかけられ、「とう明人間目ぐすり」を出してしまい、のび太はそれをつけてしまう。透明人間になったのび太は勇んでジャイアンの家へ向かう。一方のジャイアンはズル木にいつ本を返すか質問されていたが、のび太の余計な一言のためにズル木はぶん殴られてしまう。ジャイアンと共に家に入るのび太だったが、そののび太の足跡をジャイアンのものと思った母ちゃんはジャイアンに掃除させ、さらにのび太のいたずらでバケツを頭からかぶってしまう。のび太は本を取り返したあとにジャイアンをからかい、暴れまわるジャイアンは母ちゃんに怒られてしまう。その頃のび太の家ではパパがただの目薬だと思って、とう明人間目ぐすりをつけてしまい、透明になったパパが風呂に入っているのを見て驚くママであった。  

 (解説)結構SF考証が深い作品ですが、ドラ世界らしい、楽しいドタバタチックの話に出来あがっています。オチはちょっと唐突ですが、一貫性はあるので違和感は感じないと思います。水晶体の説明で描かれている絵がのび太の顔だったり、ジャイアンが部屋でぶん投げる本の中に「ドラえもん」があるあたり、芸コマですね。
ニクメナイン   10頁 小六75年5月号
 のび太の友人がジャイアンを突き飛ばしてしまった。だがジャイアンは笑って許す。怒りっぽいのかどうか自分で試したのび太は顔面にパンチを貰ってしまう。ドラえもんはそれは「人柄」のせいであると言い、生まれつき得な人間、損な人間がいると話す。得な人間になりたいというのび太にドラえもんは、飲むだけで感じのいい人物になれる薬「ニクメナイン」を出す。早速飲んだのび太は、ドラえもんにもママにも怒られなくなり、自信をつけたのび太は池にいたジャイアンを、池に突き落としてしまう。しかしジャイアンはのび太に怒れない。試したスネ夫は一瞬でボロボロにされてしまった。のび太から話を聞いたみんなは羨ましがり、ジャイアンは自分が取ってきたオタマジャクシの入ったヤカンの水を知らずに母ちゃんが飲んでしまったので、怖くて家に帰れないという。のび太はジャイアンだけでなく、みんなの罪を全部引きうけると約束し、家までニクメナインを取りに行く。先程のいたずらで気絶しているドラえもんのポケットからニクメナインを出してたくさん飲んでしまうのび太。すると何故か今度はママや他の人からも急に嫌われてしまう。のび太が飲んだのは、誰からも嫌われてしまう「ムシスカン」だったのだ。  

 (解説)まさか最後にこんなオチが来るとは。結果が最後まで描かれていないぶん、かえって読者の興味を引きますね。のび太はムシスカンを飲んだあと、みんなの家を叱られにまわったのでしょうか?しかしいくらニクメナインを飲んでいるからといって、遠慮なくジャイアンを突き落とすのび太はすごいし、その瞬間を見ておびえる友達の描写で一コマ使ってしまう作者のセンスもすごいですね(笑)。それにしても、みんなすごいいたずらをしたなあ。
うちでの小づち   6頁 小二75年3月号
 ドラえもんに背を高くしてもらうために「うちでの小づち」を出して欲しいと頼むスネ夫だったが、ドラえもんはどうしてもだめだといって断った。のび太は持っているならスネ夫に貸してやればいいと言うが、ドラえもんはこの小づちはややこしいという。試しにドラやきを出そうとするが、出てきたのは10円玉で、しかもそれが道を転がり、引越しの荷物の中に入ってしまった。ついでに引越しの手伝いをさせられた二人はお礼にドラやきを貰うが、あまり得をした気にはなれない。次にのび太がこづかい千円ぐらい欲しいと言うと、友人が突然のび太に千円を手渡す。しかしそれはのび太の切手アルバムを無くしたための弁償金だった。その時小づちを見つけたスネ夫は背が伸びろと願うが、その時すっぽ抜けた小づちがジャイアンに当り、ジャイアンに殴られたスネ夫はそのタンコブによってのび太よりも背が高い計算になったが、ドラえもんはやはり小づちをしまうのだった。  

 (解説)うちでの小づちという、ある意味ずっと昔から存在していた「ドラの秘密道具」的なものを扱っていますが、さすがに本家とは違って使いにくい設定になっていますね。ここでもF先生の「こじつけギャグ」は全開です。ラストのオチのものすごい強引さは、今でもファンの間で伝説になっているほど(本当?)。よく考えれば、ドラ自体が「うちでの小づち」なのですから、このくらいの能力が丁度いいのでしょうね。
カネバチはよく働く   7頁 小五75年3月号
 暇に身を任せてあやとりで遊ぶのび太だが、ママに頼まれていやいやながらもドブ掃除をする事になる。その時に百円玉を見つけたのび太は、こんな風に人目につかないお金を集めようとドラえもんに頼む。ドラえもんは落ちているお金を集める「カネバチ」を出して働かせ始める。始めてから30分も経っていないのに、カネバチ達はたくさんお金を集めた。この調子でお金をためて色々な事をしようとママに話すのび太だが、ママは拾ったものは交番に届けないと罪になると話したため、二人は交番にお金を届けるが、それぞれ拾った場所と金額がわからないために受け付けてもらえない。カネバチにお金を拾った場所に戻してくるように命令するが、ハチは困った挙句、逆恨みして二人に襲いかかるのだった。  

 (解説)拾ったお金で得をしようというのび太に、ママが「拾得物横領罪」という罪になることを教えるという、なんとも教育的な話?です。しかしカネバチも逆ギレして二人を襲うとは、結構危ないヤツラですね。のび太がなんとも仰々しいセリフを並べ立てているのに対し、そっけなく聞き流しているドラの図が笑えます。
人間機関車   7頁 小二75年5月号(人間きかん車シュッポッポ)
 部屋でのんびりマンガを読んでいたのび太だが、ジャイアンに呼び出されてのんびりと空き地に向かう。今度の運動会での二人三脚の練習をしようとのび太を呼んだのだが、二人はペースが合わない。これでは絶対に勝てないと考えたジャイアンはのび太に当日学校を休めと強制し、もし出てきたらぶん殴ると脅す。それを聞いたドラえもんは「人間機関車セット」を出す。煙突をかぶって石炭を食べて水を飲むと、見る見る力がわいて来た。ジャイアンともう一度二人三脚をするのび太だが、のび太のあまりのスピードについていけずに、ジャイアンは引きずられてしまう。しかも弾みがついて止まれなくなってしまったため、のび太はそのまま走り続けてしまう。ドラえもんの出した「終点」の標識でやっと止まったのび太だが、今度はジャイアンが運動会を休むと言い出すのだった。  

 (解説)今話ではこの時期には珍しく、恐らく人間機関車のパワフルさを表現するためでしょうが、のび太がかなりのんびり屋に描かれています。「のろまなのび太が道具で早くなる」というのはお決まりのパターンですが、その根底には、どんな性格でもいいではないかという、作者自身の人類愛的なものが生きているように思います。しかし機関車の止めかたに標識を使うというには、変ですねえ(笑)。
進化退化放射線源   10頁 小六75年6月号
 新しいラジオが欲しいのにパパに断られて、長々と愚痴をいうのび太。そんなのび太にドラえもんは「進化退化放射線源」を出し、のび太の持つ10年前のラジオを現代まで進化させ、さらに「腕ラジオ」という未来のラジオにまで進化させた。次に退化させていき、最初の頃のラジオにまで戻してみる。鉛筆や電灯、ドアを進化させたのび太だが、ドラえもんはこれは本来は生物の進化退化を調べるものだとして、止めさせる。パパを進化させて未来人にしようとしたのび太だが、ダイヤルが退化にいなっていたため、パパはサルになってしまう。先に動物実験をしようとのび太はネズミを持ってくるが、ドラえもんは逃げ出してしまう。構わずにネズミを退化させるのび太だが、ネズミは次第に恐竜のような巨大な爬虫類となり、表に出て暴れ始めてしまう。困ったのび太はネズミ取りを進化させてなんとか巨大ネズミを捕まえる。返してもらおうとするドラえもんだが、のび太は最後にパパを進化させる。しかしそれによりパパは火星人のような姿になってしまい、ママは仰天してしまうのだった。  

 (解説)基調はギャグの話ですが、退化については作者の持つ様々な知識、そして進化については作者の豊かな想像力が働いており、見ていて楽しい作品になっています。しかも「腕ラジオ」については、一部の機能は現代で既に実用化されており、作者の先見の明が垣間見えます。常識にとらわれない藤子F式ナンセンスSFの真骨頂といえるでしょう。
マッチ売りのドラえもん   6頁 小二74年12月号(ドリームマッチ)
 今年もしずかの家のクリスマスパーティでどんな隠し芸をするか悩むのび太。そんなのび太にドラえもんは「マッチうりの少女」の本を見せ、その少女が使った不思議なマッチと同じ効力を持つ「ドリームマッチ」を出した。のび太が試すと、自分がクリスマスプレゼントに欲しいものが出てきた。パパやママにも使ってみてからしずかの家へ向かうのび太だが、しずかの家のほうからみんなが帰って来た。しずかが熱を出したためにパーティは取り止めになったのだ。家に戻った二人だが、パパ達は映画を見に出かけてしまったため、二人は家に入れない。寒がる二人は仕方なくドリームマッチで暖かいものをどんどん考える。マッチうりの少女の気持ちが身にしみてわかる二人であった。  

 (解説)ブッ飛んだギャグも、教訓色もない地味なお話ですが、童話を材にして、夢のある道具が描かれています。童話の世界とドラの世界を強引に繋げてしまう設定も面白いですね。しかしこの時期はのび太は必ず毎年隠し芸に悩まされていますね。この年中行事は時とともに次第になくなっていきました。
めんくいカメラ   4頁 小三75年6月号
 ドラえもんがカメラの手入れをしているのを見たのび太は、それで自分を撮ってもらおうとするが、ドラえもんは断る。そのカメラは「めんくいカメラ」であり、醜い顔や滑稽な顔など、標準以下の顔は写されないのだと言う。それでも挑戦するのび太だったが、やはり顔は写らなかった。大笑いするドラえもんを今度は撮ってやろうとするのび太だが、ドラえもんは準備するといって逃げ出す。ママからの撮影の催促も断って、友達に見せに行くのび太。しずかはもちろん平気だったが、スネ夫の顔は写らなかった。そして、撮影のために妙な化粧をしてドラえもんがやってきた時、のび太はジャイアンを撮影しようとしていた。ドラえもんはジャイアンの顔が写らないと、のび太どころかカメラまでボロボロにされてしまうと話すが、ジャイアンに怒鳴られて遂に写真を撮ってしまう。だが出てきた写真には、ジャイアンの顔が写っており、自信を持ってしまうジャイアン。自分が壊されるかもしれないと考えたカメラはおべっかを使ったので、あきれるのび太達であった。  

 (解説)カメラ自身が被写体を選ぶという、これまた面白い道具で、個人的にはお気に入り道具のひとつです。ジャイアンにおべっかを使うのも面白いですが、よくわからないのは写真にとってもらうためにドラが施した化粧。アレで写ったら奇跡だ(笑)。のび太がママの撮影を断るのもよくわかりますね。二人ともほとんど同じ顔なんですから。惜しいのはページ数が少ない事ですね。
見たままスコープ   10頁 小六75年1月号
 何かを熱心に探すのび太。ドラえもんは落ち着くように言うが、無くしたものが、二人の今年のお年玉だと聞いてのび太以上に大慌てする。外に出かけた昨日のことを思い出そうとするが、のび太は完全に思い出せない。そこでドラえもんは記憶を再生してスクリーンに映し出す「見たままスコープ」を出して昨日の行動を調べ始める。ぶらぶら歩いて色々他愛の無い事をするのび太にいちいち文句を言うドラえもんだが、スネ夫に見せられたネズミのビックリ箱のシーンを見て逃げ出してしまう。一人で見続けるのび太だが、お年玉を落とした様子はない。そこへしずかが遊びに来た。丁度昨日しずかと、そのいとこに会ったシーンになったが、そこではいとこばかりが写っていたためにしずかは怒り出してしまう。さらにのび太の立ちションの画面になって怒って家を出てしまう。だがそれでもお年玉を落とした場所は見つけられなかった。仕方なく今度は出かける少し前から見始めると、のび太が出かける直前、落としてはいけないと、ドラえもんがお年玉を預かるシーンが写し出された。怒るのび太にお互いさまだと話すドラえもんであった。  

 (解説)最初はミステリーっぽい話なのかなと思っていたら、最後で思いっきりずっこけるギャグ話です。お互いに忘れてしまっていたために騒ぎを大きくしてしまう二人の姿は、最初期の騒ぎを大きくするだけの存在だったドラの変形版のような感じもします。のび太の一日の行動を知る事が出来る重要な話でもある今話(笑)ですが、やっていることは僕らが知っていることと変わりませんね。のび太が慌てているのを諌めるドラが、お年玉が無くなったと聞いてのび太以上に騒いで逆にのび太に諌められるシーンは笑えます。
オトコンナを飲めば?   6頁 小三74年12月号(オトコンナ)
 新しいあやとり作品・おどるチョウを完成させたのび太はしずかに見せに行こうとするが、廊下でパパとぶつかって崩してしまう。パパはもっと男らしい遊びをしろとのび太に注意するが、のび太は普段男の子がやるような遊びは自分にはあわないといい、男がみんなあやとりに夢中になれば、あやとりは男らしい遊びになるのではないかという話を聞いたドラえもんはそれをやってみようと、男を女らしく、女を男らしくする「オトコンナ」を出し、町中に散布する。次第にジャイアン達男の子は女の子のようになるが、それでもジャイアンは仲間に入れない。男のようになったしずか達はサッカーで遊び、のび太はどちらのグループにも入れない。家に帰ってきて、ママが煙草を吸いながら新聞を読み、パパが料理を作っている姿を見たのび太は、元に戻すようドラえもんに頼むのだった。  

 (解説)のび太の言い分はもっともなのですが、それに対してドラが出した道具はあまりのび太の願いを純粋に叶えてくれる道具ではなかったような…。ストーリー的にも際立って面白い所はなく、キャラの変身ぶりが面白い作品となっています。
消しゴムでノッペラボウ   8頁 小五75年4月号
 友人の五郎が描いた少年の絵を誉めるしずかだが、それを嫉妬したのび太は逆にけなしてしまう。家に帰って自分の顔がママと似ている事を運が悪いといってしまったためにママに怒られてしまうのび太だが、ドラえもんが仲裁に入る。のび太の話を聞いたドラえもんは顔ではなく中身だと激をとばすが、余計な事を言ったために余計怒らせてしまう。そこでドラえもんは「取り消しゴム」と「目鼻ペン」を取り出した。消しゴムで顔を消してペンで新しい顔を描く事が出来るのだが、ドラえもんは絵がへたくそなために良い顔にならず、文句を言ったのび太に怒って部屋を出ていってしまう。仕方なく五郎の家に行ってさっきの事を誤り、綺麗な顔を描いてもらう。その顔を見てビックリするみんなだが、話を聞いたスネ夫は羨ましがって、のび太の顔に落書きしようとする。そこへやってきたドラえもんはみんなで顔を消して五郎に顔を描いてもらおうと提案し、みんなで顔を消すが、当の五郎はあのあと指を怪我してしまい、当分絵が描けなくなってしまっており、困ってしまう五人であった。  

 (解説)またもムチャクチャなのか、ナンセンスなのか、すさまじい話が出てきました。ドラ世界ではこう言った「体を人為的に変化させる」と言う話が多く出てきており、ドラ世界のテーマのひとつなのか、とまで考えてしまいますね。ノッペラボウの五人は見た目、かなりインパクトがあります(笑)。
ぼく、マリちゃんだよ   15頁 小三73年7月号(人気タレントこうたい)
 人気タレントの丸井マリのファンになってしまったドラえもん。その熱烈ぶりは、密かにブロマイドを集め、バカにしたのび太の首を締め上げてしまうほどだった。そんな時、近くの公園で丸井マリが撮影をすると聞き、興奮して向かう二人だが、なんと丸井マリが行方不明になってしまったという。がっかりして帰る二人だが、空き地の土管の中から声が聞こえたので覗いてみると、そこには丸井マリ本人がいた。ゆっくり休みたいという彼女を二人は家に連れて行く。そこでマリから、何もかも嫌になってしまったという話を聞いた二人は、自分たちと交代してみることを提案する。ジャンケンで勝ったのび太が「トッカエバー」でマリと体を交換し、マリが部屋で休んでいる間に二人で外に行く。友達にも自慢するのび太たちだったが、次第に大騒ぎになっていき、その混乱の中でのび太はマリの母親につかまってしまう。マリの代わりに歌の収録やインタビューを受ける羽目になるのび太だが、やはり本人ではないのでうまく行かない。さらに殺人的なスケジュールを知ってドラえもんの助けを待つのび太。やってきたドラえもんはのび太にトッカエバーを渡し、マリの母親と入れ替わる。その姿のままで家に帰ってきたのび太はのび太の姿のマリに驚かれてしまう。夜になって元に戻るために母親を探す三人は、仕事がきつくて逃げ出してきていた母親と出会う。もう無理はさせないと約束してくれた母親と、それを聞いて喜ぶマリを見て、心から喜ぶのび太とドラえもんであった。  

 (解説)人物交換シリーズ(?)の一本ですが、この時点で既に基本は完成していますね。おとなしくて礼儀正しいマリとの対比を出すためか、今話ののび太は少し言葉遣いも乱暴?になっており、人物が入れ替わっていても、個性を出す事に成功しています。ママがやってきたのび太の部屋で、丁寧にお辞儀するのび太の姿のマリと、飯を食っていってと言うマリの母親の姿ののび太が一緒にいるシーンは、なんともシュールですね。最後には母親も改心し、めでたくハッピーエンドとなるのでした。
ロボットがほめれば・・・・   7頁 小五74年12月号
 絵の評論家でもあるしずかのおじさんがみんなの絵を批評してくれると言う。その中でスネ夫の絵は誉められるが、のび太の絵は幼稚園のようだとバカにされてしまい、ドラえもんに泣きつくのび太。ドラえもんはどんな絵でも誉められるようにしてくれる「ひょうろんロボット」をのび太に渡す。早速パパとママに使うと、二人は涙を流して感動してくれた。のび太はジャイアン達に絵を見せに行くが、その時にロボットを落としてしまう。ロボットはパン屋の看板を描いている所で落ち、スイッチが入ったためにその絵を誉め始めた。ロボットのないことに気付いたのび太はロボットを探すが、その時パン屋の前では、ロボットのせいで看板を見るために行列までできてしまっていたのだった。  

 (解説)確かにのび太の絵はへたくそなんで、バカにされてもしょうがないですね(笑)。のび太の絵を見る時のママのセリフが面白いのですが、それと同じ事をパパも言いそうになったところがさらに面白いですね。こういう事については、のび太は両親からも期待されていないようです(笑)。
くろうみそ   10頁 小六75年4月号
 ボケっとしたまま机に座り、1時間経ったから遊びに行こうとするのび太をパパがずっと見ていた。パパの長いお説教を聞いて目覚めたのび太は、自分に様々な苦難を与えてくれとドラえもんに頼み、ドラえもんはなめると何をするにも苦労するようになる「くろうみそ」」を出す。なめてみたのび太はおやつを食べようとするが、手を洗おうとすると石鹸がなく、ママに石鹸の買い物、さらにパパに頼まれ、ついでに太田さんの家にゴルフバッグを取りに行く事になってしまう。町外れの店まで行ってようやく石鹸を手に入れたのび太だったが、その後さらに太田さんの家まで歩き、重いゴルフバッグを担いで帰ることになる。風がふいてほこりが目に入ってもやっと家に到着したのび太。しかしおやつを食べるためだけにこんなに苦労するのは割が合わないと考えたのび太は、パパにもくろうみそを貸してみるが、パパはみそをたくさん食べてしまう。煙草を吸おうとするパパだが、ライターのガスが無くなり、マッチも家になく、雨が降ってきたが傘がない為に出かける事も出来ないパパは、木を使って火を起こし始めた。その姿を二人は複雑な表情で見つめるのだった。  

 (解説)僕はのび太の言う通りだと思う(笑)。なんでも苦労していては身が持ちませんからねえ。ですが、二ページにわたってお説教をしたパパの言い分ももっともなのです。苦労はしておくに越したことはありません。結局、程度の問題なんでしょうね。教訓色は強くありませんが、訴えているものはあると思います。



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