てんとう虫コミックス第9巻


ジ〜ンと感動する話   11頁 小四75年6月号(ジーンマイク)
 今日も0点を取ってしまったのび太は、家に帰りづらくて教室に一人残る。そこへやってきた先生は、「目が前についているのは前へ前へと進むため。振り返らないで、常に明日を目指してがんばれ。」とのび太を諭す。その言葉に感動したのび太は他のみんなにもこの言葉を聞かせようとするが、誰も真面目に取り合ってくれない。そのことを聞いたドラえもんは話を聞こうとするが、ドラえもんにはのび太の言っていることの意味がわからず、結局のび太をがっかりさせてしまう。そこでドラえもんは、感動周波音波を出す機能を持つ「ジーンマイク」を取り出す。これでしゃべると、どんな言葉でも人を感動させることが出来るというのだ。疑うのび太だが、そのときに呟いた「ほんとかなあ」というセリフを聞いただけでドラえもんは涙を流して感動し出す。さらに何気ない一言でママまでも感動させたのび太は、絶対に感動させるといってみんなを集める。だがその際にジーンマイクを落としてしまい、探す羽目になる。ようやくマイクを見つけたのび太だが、みんなは近くの公園にロケに来ている歌手の西条ひろみの方に行ってしまい、彼の歌と姿に感動するみんなを見て、のび太はここでジーンマイクを使って歌い、みんなを感動させようと考える。しかしポケットに引っかかって取るのに手間取っている間に、のび太のしたおならの音がジーンマイクに伝わってしまう。おならにこの上なく感動して追いかけてくるみんなを、恥ずかしがりながら逃げるのび太であった。  

 (解説)最初の先生の感動的なセリフと、ラストののび太の感動的な屁とのギャップがありすぎる怪作です。「感動」という、ストーリーまでも感動的になりそうなテーマを、よくここまで抱腹絶倒のギャグにしたものだなあ、と感心せずにはいられません。先生の感動的なセリフをみんなに伝えようとするのび太ですが、あれはみんなが真面目に聞いていないというよりは、のび太の話し方に問題があるようです(笑)。各キャラの感動の仕方もオーバーで、とにかく楽しく笑える話です。
ツチノコ見つけた!   10頁 小六75年3月号(歴史に名を残そう!)
 自分の将来を考え、歴史に何かを残すために何をすべきか考えるのび太。しかしすぐに眠ってしまう。その時未来の世界に出かけていたドラえもんが何かを持って帰ってきた。それは未来の百科事典で、ドラえもんは「ツチノコ」のページを見せる。なんとそこには、ツチノコを最初に発見したのは剛田武=ジャイアンであると書かれているのだ。驚いたのび太だったが、自分で先にツチノコを見つけようと空き地に向かう。だがそこでジャイアンとスネ夫に見つかり、追い返そうとするが逆に脅されて秘密を話してしまう。二人はツチノコなどいるはずないと言って去って行き、喜んでツチノコを探すのび太だが、疲れて飽きてしまって戻ってきた。幻滅したドラえもんはタイムマシンでどこかへ行ってしまうが、すぐに戻ってきた。未来の図書館へ行ってきたドラえもんは、今から約70年後にツチノコブームが起き、ペットショップでも買えるようになる事を調べ、その時代へ行ってツチノコを手に入れようというアイデアを出した。早速その時代へ行き、ツチノコを買おうとするが、のび太達のお金では古すぎて買うことが出来ない。諦めかける二人だが、ツチノコを捨てようとする人からツチノコをもらい、喜んで現代に戻ってくる。早速マスコミ関係の人を呼んでツチノコを公開しようとするが、ツチノコはカゴの中からどこかへ逃げ出してしまった。慌てて探す二人だが、その時空き地からツチノコを見つけたと言う声が。逃げ出したツチノコをジャイアンが見つけてしまったのだ。  

 (解説)これは個人的にはすごくナンセンスだと思う話です。何故かと言えば、「ツチノコ」といういるかどうかも分からないものを「いるもの」として扱い、さらにギャグマンガとして完成させているからです。ツチノコの姿なんかは独創性に溢れていて、まさに「センス・オブ・ワンダー」といった感じです。ジャイアンのゴウモンとか、やる気を見せながら次のコマで早くも諦めるのび太など、各所でのお笑いシーンも豊富です。
 ちなみに、今話はこのコミックス収録版と、初出時とではラストに違いがあります。初出時は「ツチノコを見つけられてしまったのび太が、自分の努力で歴史に名を残そうと考え、それを誉め、勉強させようとするドラだが、のび太はネッシーの発見者になろうと本を読み始める」というものでした。何故改変したのかという詳しい経緯は不明ですが、一般的には、6巻で既にネッシーはいるものとして描かれてしまっているため、帳尻合わせのために改変した、と言われています。 
かべ紙の中で新年会   8頁 小一71年1月号(しん年かい)
 新年会を自分の家で開こうとするのび太だが、ママに許可を出してもらえない。しかしみんなはもう家にやってきてしまい、困り果てるのび太。ドラえもんはみんなに静かに靴を持って部屋に行くように言い、部屋で「かべ紙ハウス」を出した。それを壁に貼り付けると、その中に入る事ができるようになるのだ。レストランやおもちゃ屋など、様々なかべ紙を出して楽しく遊ぶのび太達。だがその声に気づいたママが部屋にやって来た。丁度ドアのところに貼り付けたトイレに行っていたスネ夫は、かべ紙が外れたためにトイレごと回ってしまう。みんなが帰る時間になったが、玄関のところでママが電話をしているために外に出られない。そこでドラえもんはマンホールのかべ紙を出してみんなを外に連れて行き、みんなは喜んで帰っていくのだった。  

 (解説)いかにも低学年誌らしい、純粋に楽しい話です。比較的初期の話でありながら、ドタバタ色が一切無く、ドラの道具中心で話が展開している当り、作品世界の変容を知る事の出来る、貴重な作品と言えるかも知れません。ただ一つの難点は、てんコミ収録分はトレス原稿であるため、妙に汚いのです。これが無ければもっと読みやすくなっていたと思うのですが。でも、もうすぐもっと汚い絵が出てくるので(笑)。
王かんコレクション   11頁 小六75年10月号(のび太コレクション)
 幻と言われている「月に雁」の切手を手に入れてみんなに自慢するスネ夫。さらに家族、そしてジャイアンやしずかのコレクションの話を聞いて、自分も切手を再び集めようと思ったのび太はママにお金をもらおうとするが、ママはまたすぐ飽きると言って断る。そんなのび太にドラえもんは、のび太が以前集めていた王かんのコレクションを見せ、王かんをコレクションする事を「流行性ネコシャクシビールス」を使って流行らせようとする。落ち込んだままのび太が外に出ると、みんなは何故か王かんをコレクションしていた。それを見たのび太は自分のコレクションを見せてみんなを驚かす。負けじとみんなもそれぞれの方法で王かんを集め始め、調子に乗ったのび太達も、8月12日に三河屋で一本だけ売れたコカコーラの王かんを自慢して面白がる。だが予想以上にビールスが広まってしまい、二人は心配する。さらに例のコカコーラの王かんを二百万円で買いたいと言う人まで現れ、驚きながらものび太は売ってしまう。しかしその時にビールスの効き目が切れて結局二百万円はもらえず、がっかりする二人であった。  

 (解説)6巻収録の作品に引き続いて、流行というものを皮肉ったギャグ話です。何がギャグって、王かんと言う、現代ではほとんど手に入れることの出来ないものを流行らせるという事そのものがすでにギャグです。ドラ世界特有の「ナンセンス世界」が爆発した話ですね。王かんを集めるために苦労するしずか達三人の姿がバカらしいです。でも、真の「ナンセンス世界」と言うのは、この後に出てくるんですよね(笑)。
通りぬけフープ   5頁 小一74年2月号(ぬけあなフープ)
 ママに叱られたのび太はお仕置きのためにのび太を物置の中に閉じ込めてしまう。怖がるのび太だが、そこにドラえもんが現れた。どうやって物置の中に入ってきたのか不思議がるのび太だが、ドラえもんはどんな壁でも通る事が出来る「通りぬけフープ」を使ったのだ。物置から逃げ出したのび太は、通りぬけフープを使って壁を通ってママをくすぐってからかう。大きな犬に追いかけられている子犬をフープで助けたのび太はフープを転がしながら歩くが、坂道に来た時にフープを勢いよく転がしてしまう。転がっていったフープは女の子が道路に描いた遊びの円と混じってしまい、女の子はそこに落ちてしまう。さらに他の通行人も落ちてしまい、ドラえもんが救出するが、怒るみんなを見て二人は逃げ出すのであった。  

 (解説)このたった5ページのみの作品に登場した道具が、後年になって大活躍する道具になろうとは、この時点では誰も思わなかったでしょうね。それくらい、話としては平凡な今話です。通りぬけフープはどんな厚い壁や障害物でも通りぬけられるのですが、そうすると地面に落っこちた女の子達は一体どこに落ちていたのでしょう(笑)?今話は「かべ紙の中で新年会」以上にトレス原稿がへたくそで、オリジナルの復刻が望まれている作品でもあります。
アソボウ   4頁 小三75年10月号
 念願のステレオプレーヤーを買ったパパ。早速大音量で音楽を聴くが、近所から苦情が来たために、音を小さくせざるを得なくなってしまう。かわいそうに思った二人は人を遊びたくなるようにしてしまう超音波を発する「アソボウ」を出し、1キロ四方に流す。すると、野比家の近所の人達は皆どこかへ遊びに行ってしまった。1キロ四方には誰もいなくなり、パパにまた大音量を出させる二人であった。  

 (解説)音楽を聴くために周囲の人達をみんな遊びに行かせてしまうというアイデアはすごいですね。ラストのコマで屋根の上に乗って大音量の音楽を聴く二人には、爽快感があふれています。
人間あやつり機   9頁 小二70年11月号(人間あやつりき)
 ママにお使いを頼まれた二人だが、どちらも面倒がって行く気がしない。そこでドラえもんは操り人形のような「人間あやつり機」を出す。頭のボタンを押すと、体がひとりでに動くのだ。だがそれでもお使いに行くのが嫌な二人は昼寝しているパパに機械をつけてお使いに行かせようとする。しかし機械が故障していたためにパパはいきなり外に飛び出してしまう。修理して改めて機械をくっつけボタンを押したが、間違えてバレエやマラソン用のボタンを押してしまい、外に飛び出してしまう。やっと止まったパパだが今度はプロレス用を押してしまった。騒ぎをなんとかおさめた二人だが、パパは体中が痛いという。責任を感じたのび太はあやつり機で肩叩きをしてやろうと考えるが、調節が難しく、パパはさらに痛がってしまうのであった。  

 (解説)初期の話にありがちな、「出した道具が元から壊れている」パターンの話です。動きの激しいドタバタ基調の話ですが、それよりはむしろのびドラの勘違いに大笑いしてしまいました。あれだけの事をしても目を覚まさないパパは大物だ(笑)。最後のオチ?を見る限り、この道具はあまり最初から役に立つ道具ではなかったようで(笑)。
わすれろ草   9頁 小二71年3月号
 ジャイアンとスネ夫をバカにした落書きを描いていたのび太は、それをジャイアン達に見られ、家に逃げ帰ってくる。ところがママにお使いを頼まれ、いやがって部屋に閉じこもってしまう。話を聞いたドラえもんはポケットから「わすれろ草」を取り出す。だが道具の説明をしようとした時、急にドラえもんはポヤ〜ンとしてしまい、その間にのび太はママにつかまってしまう。いやがるのび太だが、ママの言いつけには逆らえない。その時成り行きを思い出したドラえもんが駆けつけ、ママにわすれろ草の匂いを嗅がせた。この匂いをかぐと、しばらくの間何もかも忘れてしまうのだ。ママをお使いに行かせたドラえもんはジャイアンにも嗅がせ、のび太の変わりにスネ夫を殴らせる。安心して草を持って外に出るのび太は、思い出したジャイアンにまた匂いを嗅がせてスネ夫を殴らせる。だが草の秘密を見ぬいたスネ夫はのび太からわすれろ草を取り上げて、自分のいたずらに使い始める。しかしトイレに行こうとする帰り道、転んだ拍子に匂いをかいでしまったためにその事を忘れてしまう。草はドラえもんが取り返したが、どうしても思い出せないスネ夫は、道の真ん中でおしっこを漏らしてしまうのだった。  

 (解説)この話の面白いところはラストのオチに尽きるでしょう。結局スネ夫はこういう汚れ役をもらってしまうキャラのようですね(笑、のび太も多いけど)。落書きをして憂さを晴らしているように見えるのび太も、彼らしくてマル。しかししずかは結構金の貸し借りにうるさいようですね(笑)。たしか「チョージャワラシベ」でものび太に金を請求していたような…。
ウラシマキャンデー   15頁 小学館ブック74年5月号(ふしぎなキャンデー、メインタイトル『ドラミちゃん』)
 みんなが遊びに行くというので、カバンを家に持っていく事を頼まれてしまったのび太。途中、かわいい女の子が定期券を落としたのを見たのび太は届けようとするが、ズル木に持っていかれてしまう。友達の家で色々文句を言われ、さらに家でもママに叱られ、自分の人の良さが嫌になってしまうのび太。そんなのび太にドラミは「ウラシマキャンデー」を取り出す。これをなめて人にいい事をすると、必ず恩返しされるというのだ。なめてみたのび太はママから何かを捨てるように頼まれる。中を木の枝でいじると、それはゴキブリホイホイで、ゴキブリが出てきた。そのお礼にママから小遣いを貰ったのび太は外を出歩いても、犬やネコを助けて親切にされる。そしてある婦人が落としそうになった高級な瓶を押さえたのび太は、お礼に自宅へと招かれる。そこは先ほどの定期券の持ち主・竜宮姫子の家だった。ごちそうをもらって姫子のバレエも見せてもらってご満悦ののび太。しかし家では帰りの遅いのび太をママが心配していた。のび太も家に帰ろうとするが、また姫子を助けてしまったために、帰れなくなってしまう。だが「強力においついせき鼻」で追いかけてきたドラミに助けられて家に帰る。のび太を叱ろうと待ち構えていたママだったが、昼間助けたゴキブリが恩返しに現れ、のび太は怒られずにすむのであった。  

 (解説)誰よりも人が良く、優しいくせにいい目に合えないというのは、のび太の欠点でもあり、魅力でもあります(笑)。もちろん優しいからといっていい思いが出来るわけではなく、この話はそういった現実を少しだけ描いているような気がします。でも竜宮家の人々は面白いですねえ。いくらなんでも家に帰れないように靴を隠そうとするか(笑)?そう考えると結構怖いですね。でも、一度こういういい目にあってみたいなあ(切実)。…って、どっかで聞いたようなフレーズだな(爆笑)。
無人島の作り方   13頁 小四75年8月号
 今月の小遣いが減らされている事に腹を立てた二人はパパ達に抗議しに行くが、家賃が値上がりしたためにパパにタバコを減らすように話すママを見て、二人は黙って部屋に帰る。自分の家を持てば家賃を払う必要もないが、そんな土地は今の日本にはない。考える二人は海に土地、すなわち島を作ることを考える。地底のマグマを利用して島を作ろうと計画した二人は、潜水道具を持って海へと向かう。「マグマ探知機」でマグマのあるところを探すがなかなか見つからず、のび太はくたびれはててしまう。その時遂にマグマを発見した。ドラえもんは「強力岩トカシ」で地殻を柔らかくし、そこからマグマを噴出させようとする。そして噴火が起こり、のび太は自分の島・のび太ランドに連れて行く事をパパ達や友達に約束する。完成した島へ行って見る二人だが、そこにはすでにたくさんの人がやってきており、しかもこの島は日本の領土として扱われる事になってしまった。みんなに話してしまって引っ込みのつかないのび太は、空中に土地を作る機械を出せといってドラえもんを困らせるのだった。  

 (解説)とても科学的な話ですが、子供向け漫画で土地問題を扱うとは、なんともシビアな話です。こういった土地関連の話は後年になっても頻出しますし、「日本誕生」だって発端は土地問題でしたからね。F先生がよほど土地問題を気にしていたのかどうかは定かではありませんが、ドラ世界を彩るファクターである事には違いないでしょう。ところで、この世界では日本には現実に存在しない島が一つあるというわけですよね。なんかすごい…。
ひっこし地図   6頁 小一75年9月号(ひっこしちず)
 今日も遅刻して先生に叱られるのび太。学校の隣に住んでいるという友達の話を聞いたのび太は、うちも学校の隣に引っ越そうとママにせがむ。話を聞いたドラえもんは「ひっこし地図」を取り出し、学校の位置をのび太の家の隣と張り替えた。すると、なんと学校がのび太の家の隣に現れたのだ。のび太たちは自分たちに都合のいい街を作ろうと色々張り替えてしまう。しかしそのためにママが道に迷って帰ってこれなくなってしまった。迎えに行った二人も道に迷って訳がわからない。やっとママに会えた二人だがその事でパパとママに厳しく叱られてしまい、慌てて地図を元に戻すのだった。  

 (解説)今回ののび太の悩みは、たぶん誰でも一度は思った事ではないでしょうか。そんな願いをかなえてしまうのが、ドラえもんの良いところ。ストレートに子供の夢を叶える作品になっています。地図をシールのようにはがしたりくっつけたりするというのも、子供がやる遊びのようで親近感が持てますね。
ごきげんメーター   4頁 小三75年9月号
 今日もテストの成績が悪かったのび太は、ママにいつ打ち明けるかで悩んでいた。機嫌の悪い時に打ち明けたら、激しく怒られてしまうためだ。そこでドラえもんは相手の気分を空もようにして映し出す「ごきげんメーター」をだす。それでママを見てみるとくもりだったため、打ち明けるのをやめるのび太。その時パパから電話がかかってきて、宝くじで10万円当たったと聞いて喜ぶママ。その機嫌も太陽が輝き始めたため、のび太はこの時に打ち明けて怒られずにすむ。みんなにも見せるのび太だが、ジャイアンはもっといろんな天気を見たいといって借りていってしまう。子犬を蹴って怒らせ、イナズマの天気を見て喜ぶジャイアンだが、親犬にメタメタにされてしまう。泣き喚くジャイアンをのび太がメーターで見ると、そこには土砂降りの雨が降っていた。  

 (解説)最初はなんで人の機嫌と天気が関係するのかと思いましたが、これは「お天気屋」という言葉をヒントにしているんですね。目の付け所に感心します。いろんな天気を見たいといたジャイアンがいろんな天気を逆に見せる立場になってしまうというオチも、ひねりがきいていて面白いです。
世の中うそだらけ   10頁 小六75年7月号(ギシンアンキ)
 100円と50円のアイスを買ったのび太。その帰りにジャイアンと会い、ジャイアンに50円のアイスを売る羽目になってしまった。しかしジャイアンはすぐに思いなおして100円のアイスを貰うが、ジャイアンは残り50円を払わない。だがのび太はジャイアンの詭弁に引っかかってだまされてしまう。そんなのびたのお人よしな性格を危惧したドラえもんは、人の言うことをなんでも疑うようになる薬「ギシンアンキ」をのび太に飲ませる。性格の変わったのび太は自分のしたことがおかしいことに気づくが、目の前のドラえもんを疑ってしまう。説得されてジャイアンのもとにやってきたのび太は、ジャイアン以上の詭弁をもって100円を貰おうとし、ジャイアンに殴られても引き下がらない。ジャイアンを見失ったのび太はジャイアンの家を調べようとしたり、スネ夫を疑ったりと、何もかも疑うようになってしまう。話を聞いたドラえもんはギシンアンキの反対の効力を持つ「スナオン」を飲ませようとするが、のび太によって自分が飲まされてしまう。のび太は更に疑うようになり、ついに工事中の地面の穴に落ちてしまった。ドラえもんはスナオンを毒だといってわざと飲ませ、のび太を元に戻すことに成功する。一方、金を払うことにしたジャイアンだが、50円玉を表が裏、裏が表についている珍しい50円玉だといってのび太に渡す。それを貰って素直に喜ぶのび太を見て、複雑な気分になるドラえもんであった。  

 (解説)今回ののび太はあまりにも素直すぎるため、ギシンアンキを飲んでからのギャップがものすごいですね。特に目つきが(笑)。ジャイアンとのび太の詭弁の応酬、のび太に顔を引っ張られるスネ夫、ドラを驚かして「フヒフヒ」と笑うのび太と、とにかくにぎやかで騒がしい感じのする話です。
のび太ののび太   10頁 小六75年8月号
 昨日プールに行ってしまって野球に行くのを忘れたのび太は、電話で今日は2時に必ず来るように注意される。物覚えが悪くて困ると言うのび太にドラえもんは工夫をすればいいと話すが、その時机の引出しからドラえもんがもう一人現れ、特売のドラやきを買いに行く時間であることを告げた。彼は午前7時のドラえもんで、忘れないようにこの時間へ来て知らせたと言うのだ。のび太もそれを真似して、1日の予定を立てて未来の時間へ行く。午前9時では宿題をさせようとするが、9時ののび太は笑っているだけだ。10時に行くと、10時ののび太はドラえもんと一緒におやつを食べており、12時30分ののび太はなぜか部屋で寝ていた。1時ののび太は今ののび太に来るなと言うが、のび太はかまわず1時45分へ行って野球に誘うが、なぜかその時間ののび太に怒られる。そして9時になり、過去ののび太が現れた。今日は宿題するのをやめたのび太はドラえもんがドラやきと一緒に買ってきたアイスを食べ、その時10時になって過去ののび太がやってきた。昼ご飯を食べてテレビを見ようとするが、ママに宿題をするように言われ、しぶしぶ宿題をするが、12時30分、机の引出しが開いたためにのび太は倒れてしまう。他の部屋に移るのび太だが、1時に過去ののび太がまたやってきた。そしてこっそり抜け出して野球に行こうとするのび太だが、1時45分にやってきたのび太の声で、ママに気づかれてしまうのだった。  

 (解説)時間移動という概念をフルに活用した、面白い話です。未来がどうなるかわからない現在ののび太はただ予定を押しつけていき、それゆえ結果的に自分の首をしめることになってしまうという、因果応報的な展開になっていますね。結局この程度ではのび太は変われないんですね(笑)。忘れっぽいとのび太が話した時に『さあ・・・・・・、頭の悪いのだけはとりかえがきかないもんね。』と冷静にかえすドラがなんかイイです(笑)。
トレーサーバッジ   10頁 小六75年9月号
 野球チームのマネージャーになったのび太だったが、みんなの居場所がわからないために連絡をとるのにも苦労してしまう。疲れきった様子ののび太にドラえもんは綺麗なバッジを出し、みんなに配るようにいう。これは「トレーサーバッジ」で、とレーサーの電波でレーダー地図にバッジのマークが現れるのだ。そのレーダーでみんなの動きを観察するのび太は、アイスを買っているスネ夫に電話をしたりして遊ぶが、空き地で止まったジャイアンとしずかのマークがくっついたきり離れないため、急いで空き地に向かうのび太。だがジャイアンはしずかの座っている土管の中に隠れていたのだ。のび太は更に友達の親に、今友達がどこにいるかを教えてしまったため、スネ夫はバッジに疑いを持つ。のび太は友人五人のマークが公園の池に入ったために駆けつけるが、それはジャイアン達の仕掛けた罠だった。みんなに追いかけられるのび太。地図で五人のマークがトイレの中にいるのを見たドラえもんが公園に来ると、バッジをつけられたのび太が中に隠れており、助けてくれるよう頼むのであった。  

 (解説)いつでも連絡をとれるようにしたいという気持ちはわかりますが、のび太は例によってやりすぎたようで(笑)。レーダーだけではその状況までは把握できないという事を用いて、中盤から終盤までの伏線を作っていて、なかなか奥が深いです。ちなみに冒頭でスネ夫が読んでいるマンガは「フジモトくん」でした。
デンデンハウスは気楽だな   9頁 小四75年7月号
 テストの答案をなくし、叱られたくないから捨てたとママに疑われるのび太。怒ったのび太は家出しようとするが思い止まり、家出しないでママに抗議したいとドラえもんに話す。ドラえもんは「デンデンハウス」を出し、その中に住むようにいう。のび太はこれを使って、ママが自分を信じてくれるまでストライキを行う事にする。そんなのび太をママは注意するが、爆弾でも壊せないというデンデンハウスをどうする事もできず、外へ逃げてしまう。玄関先で外を見つめるのび太は通りかかったジャイアンとスネ夫をバカにするが、デンデンハウスを殴った二人は逆に痛がってしまう。そこへしずかが、のび太に借りたノートの中に入っていたテストの答案を届けにきた。やっとわかったママだがそれでものび太はデンデンハウスを出ようとせず、出るかわりに様々な要求をつきつけた。一応納得したママだが、テストが0点だと知って再び激怒。デンデンハウスにこもったのび太は『答案がみつからなきゃよかった。』と言って震えるのだった。  

 (解説)許してもらうかわりに要求を突きつけると言うのが、本物のストライキっぽいですね。しかしママも初期と比べると随分変わってしまいました。こんなにものび太のことを信用しないとは。で、今回はのび太が一方的にやり込めたのかと思ったら、ママが怒ってしまって、結局元に戻ってしまいました。このどんでん返しが本話最大の見所ですね。
電話のおばけ   4頁 小三75年8月号(手ぶくろ電話)
 寝る準備を始めるのび太にかかってきた電話は、ジャイアンとスネ夫からのいたずら電話だった。だがそれを怖がったのび太はそのまま布団に潜ってしまい、おもらしをしてしまって、更にその布団をしずかに見られてしまう。仕返しをしようとドラえもんは「手ぶくろ電話」を出す。受話器のように手袋を使い、スネ夫の家に電話をかけ、ドラえもんの言うとおりにつねると、スネ夫の受話器が顔をつねり、スネ夫は驚いて逃げ出す。受話器を自分の手のように使う事が出来るのだ。ジャイアンもこれを使って殴り、更にのび太は先程のいいわけを信じてもらうために、しずかに電話をして受話器で肩をくんでしまうのだった。  

 (解説)ラストのしずかのセリフ『なれなれしい電話ねっ。』が今話の魅力そのものでしょう。受話器が伸びるという異常自体にこんな落ち着いたセリフを返せるのだから、しずかはやはり大物だ(笑)。あと、この時期は「ウエタケ」というのがブームだったのでしょうか?「のび太ののび太」でドラやきを売っていた店も「ウエタケ」でした。
ぼく、桃太郎のなんなのさ 37頁 小四75年9月号(ぼく桃太郎のなんなのさ、『ドラとバケルともうひとつ』内)
 ・その1 時間写真のなぞ
 夏休みでも毎日ごろごろするのび太。そろそろ宿題の事で騒ぎ出すと考えたドラえもんは一切手伝わないと決めるが、のび太は大学生になった自分を連れてきて宿題をさせる。あとは社会科の「町の歴史を調べる」という宿題だけだが、タイムマシンでは調査しきれないとドラえもんに言われ、結局ドラえもんに泣きつくのび太。ドラえもんは「時間カメラ」を取り出し、過去の写真を写してきて、大きな事件があればその時代へ行こうと言う。どんどん写真を撮っていくが、カメラが637年前についた時、カメラが戻ってこなくなった。二人は最後の写真に写っていたものを引き伸ばして見ると、なんとそこには宝物を運ぶ桃太郎と仲間達の姿が写っているのだった。
 ・その2 へんな外人のなぞ
 何かでもめている友達を見かけたバケル。外人が倒れていると聞いたバケルは話しかけてみるが、やはり言葉が通じない。外人の人形に乗り移ったバケルは外人を家に誘い、ごちそうを食べさせる。オランダから来たというその外人は、600年ほど前から家に伝わっているという古い絵に描かれている人物が日本の侍のような身なりのため、手がかりを求めて日本に来たという。その絵=写真に写っていたのは桃太郎だった。バケルは悩んだ末にドラえもんに相談に行くのだった。
 ・その3 桃から生まれた○○○
 自分たちの写真とバケルの写真を見比べ、真実を知るためにタイムマシンで637年前の世界へ行くことを決意するドラえもん。だがその途中、いきなりマシンが光り、すると唐突に目的地に着いた。ドラえもんは二人に何かを話そうとするが止め、桃太郎を探しに行く。
 だが村どころか犬さえも見つけられない。夜になってバケルは犬に変身して匂いをかぎわけ、ついに村を見つけるが、鬼退治の落とし穴に三人とも落ちてしまう。「モグラ手ぶくろ」で脱出した三人だが良い考えが浮かばないために、バケルはユメ代に変身して、川を下って海に行くアイデアを考える。ドラえもんは絶対沈まない「モモボート」を出して川を下るが、途中で滝に巻きこまれ、のび太だけはぐれてしまう。しかも村人に狙われているため、ドラえもん達もうかつに動けない。
 一方ののび太はモモごと老夫婦に拾われ、桃から生まれた桃太郎と呼ばれてしまう。鬼が島へ行こうとするのび太に老夫婦は鎧ときびだんごを渡して出発させる。
 海岸へ向かうのび太の前に、言葉を話すキジとサルが現れた。だが2匹はドラえもんとバケルの変装で、村人に追われているために変身していたという。しかもタイムマシンが壊れているという衝撃の話をドラえもんから聞いた二人は帰る方法はないのかと尋ねるが、ドラえもんは何もないという。結局鬼が島に向かった三人は「熱線じゅう」「光線じゅう」「原子核破かい砲」を持って鬼を迎え撃つ。三人の背後から鬼が襲いかかるが、ネズミに驚いたドラえもんの体当たりを受けて鬼は気絶してしまう。バケルが犬、ドラえもんはサルに変身して記念写真を撮ろうとするが、また現れたネズミを見てドラえもんが大声を上げたためにみんな驚いて飛び上がってしまい、オランダ人が持ってきた写真と同じ物が出来あがった。その時起きあがった鬼を見て、バケルが外人に変身して話しかけると、その鬼はオランダ人の船長だった。この人は日本に漂着してしまい、怖がった人間がこの人を鬼と勘違いしていたのだ。寂しがり、故郷を想う船長に同情した三人はどこでもドアで、写真を渡してから船長をオランダに送る。
 しかし三人には現代に帰る方法はない。宝を持って戻ってきたのび太達だが、その時にドラえもんは時間カメラを発見した。これにしがみついてやっとのことで現代に帰ってきた3人。しかしのび太は、宿題にこんな事を書いて、先生が信じてくれるかどうか悩むのだった。  

 (解説)一応説明しておきますと、「バケル」と言うのは藤子F先生の作品である「バケルくん」の主人公でこの話が掲載された1975年は「小四」誌上で「ドラ」と「バケル」が同時連載されており、さらに「ドラとバケルともうひとつ」という企画ページが1年間に渡って連載されていたのです。この話はその企画ページの中で掲載された話です。
 で、当のお話は、昔話と現実の交錯、タイムパラドックスなど、「ドラえもん」の持つ世界観を遺憾なく発揮した力作です。バケルも違和感なくドラ世界に解けこんでおり、実に楽しい仕上がりになっています。後の大長編のような「過去での冒険」物のルーツとも取れますが、「日常世界から逸脱しない」というテーゼもこの時点で既に完成されているようです。それを代表するのがラストののび太のセリフでしょう。



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