未収録作品た行 その3


通せんぼう   FF10巻、CC3巻 7頁 小二74年5月号
 居間で仲良く柏餅を食べるのび太とドラえもんだが、ママに呼ばれたので部屋に戻ってみると、部屋が散らかしっぱなしとのことでママに叱られてしまう。自分の部屋にまで口出しされることを嫌うのび太は覗かれないようにして欲しいとドラえもんに頼み、ドラえもんは「通せんぼう」を出した。チョークで地面に線を引くと、その線をまたごうとした者を通せんぼするのだ。部屋の前の床に線を引いたドラえもんは試しにのび太を通らせようとするが、のび太はどうやっても通ることが出来ない。定期券を見せることで通ることができるのだ。早速部屋に入れないママを見て二人は笑うが、ママがお使いに行ってしまったので二人は通せんぼうに留守番させることにして、家の周りを線で囲む。二人が空き地へ行ってみると中学生がUコン飛行機で遊んでいたのでみんなは遊ぶことが出来ずに困っていた。ドラえもんが注意しても聞く耳を持たないので怒った二人は学生がいなくなったスキに通せんぼうをセットし、入ろうとした学生がぼうに叩かれるのを見ながらみんなは空き地で楽しく遊ぶ。家に帰るとパパとママが家に入れないで困っていた。だがのび太は定期を無くしてしまったようで見つけることが出来ず、雨まで降ってきたのに中に入れず、困り果てる4人であった。  

 (解説)道具のコンセプトは「ふみきりセット」とほぼ同じですが、こちらの話はのび太のいたずらを抑えて道具の効能だけに重点を置いています。ラストのオチで雨を降らせたり、冒頭で柏餅を食べさせてさりげなく季節感を出したりと、細かい描写も光っています。
動物キャンディー   CC2巻 6頁 小一71年10月号
 自由に過ごす事が出来るネコをうらやましがるのび太。そこでドラえもんは「どうぶつにばけるキャンデー」を出した。これをなめてから化けたいものに触ると化ける事が出来るのだ。しかしネコは屋根の上に逃げてしまい、金魚を見せておびき出そうとするが、その時のび太が金魚に触ってしまったので、のび太は金魚になってしまう。仕方がないので2人でネコを探しに行く事にし、のび太はネコを見つけて飛びかかるが、そこへ通りかかったしずかはネコが金魚を食べようとしていると勘違いしてネコを追い払ってしまう。その時金魚がしゃべったのでしずかは驚いて逃げ、のび太は犬に触られたので犬に変身してしまった。しかし今度はその犬の飼い主に捕まってしまい、さらに首に買った牛肉を巻きつけられてしまったので牛に変身してしまう。飼い主も仰天して追い払うが、逃げるのび太は今度は子供の持っていた怪獣のおもちゃに触ってしまったので怪獣になってしまい、元に戻してとドラえもんに泣いて懇願するのであった。  

 (解説)後期にもこういう変身ネタがありますが、今話に限ってはおとなしめでむしろ後期作のほうが騒がしい雰囲気になっています。次々に変身しているのび太と、それを見てのいろんな人たちの騒ぎはいつ見ても楽しいのですけどね。
どうぶつごヘッドホン   6頁 小一75年3月号
 ネコを池に突き落として遊んでいるジャイアン。かわいそうに思ったのび太は止めようとするが、ジャイアンは泳ぎを教えていると言って聞かない。しかしそこにネコの飼い主が現れたので、ジャイアンはとっさにのび太がいじめていたとウソをつき、一緒にいたスネ夫も口裏を合わせたためにのび太が叱られる羽目になってしまう。話を聞いて怒ったドラえもんは「どうぶつごヘッドホン」を出した。これをつけると動物の言葉がわかるようになるのだ。
 ヘッドホンの力でネコから事情を聞いた飼い主はのび太に謝り、ジャイアン達を厳しく叱った。安心するのび太だったが、ジャイアン達は逆にのび太を逆恨みし、仕返しをしようと言い出してしまう。イヌ同士のうわさ話をヘッドホンで聞いてその事を知ったのび太は急いでドラえもんに知らせるが、ドラえもんは心配は無用と次なる道具を出すためにポケットに手を入れ、のび太はその様子を興味津々で見つめるのであった。  

 (解説)今話は一旦連載が休止された「小一」上で、「小二」で連載されているドラえもんという作品の紹介をするための話になっています。次作への引きとも取れるような珍しい形の幕引きには、こういう事情が絡んでいるわけです。話自体も短いページ数にレギュラーキャラの性格設定や秘密道具の魅力など、ドラ世界の根幹にあるものをわかりやすく丁寧に描写しており、イントロダクションとしては上出来の作品になっています。
動物セット   FF35巻、CC3巻、TCS4巻 7頁 小一79年10月号(どうぶつセット)
 ジャイアンが突然「正義の味方ごっこ」をしようと言い出し、のび太達を悪者に設定して暴れ始めた。隠れたのび太はドラえもんの事を小声で呟くが、するとドラえもんがどこからかやってきた。しかもウサギのような耳と足がついている。ウサギの大きな耳でのび太の声も聞き取ったのだ。これは「動物セット」のうちの「うさぎセット」で、のび太はその中から「ねこセット」を借りて屋根の上に上り、ジャイアンをやり過ごす。すると屋根の上からスネ夫がジャイアンに捕まっているところに出くわしたので、「ライオンセット」をつけてライオンのように吠えると、ジャイアンは驚いて逃げ出してしまった。スネ夫はドラえもんから「おさるセット」を借り、同じように屋根の上に上る。そしてまたジャイアンに捕まった友達を「ぞうセット」を使って助けたのび太は、さらに友達を集めて動物ごっこをすることにし、みんなはカンガルーやリスのセットをつけて遊ぶが、ジャイアンだけは意地を張って遊ぼうとしない。しかしそのままの姿でいる所を「ゴリラセットをつけている」と言って笑われてしまったため、怒ったジャイアンは「ワニセット」の尻尾を使ってみんなをふっ飛ばしてしまう。威張るジャイアンだが、みんなはいつの間にか「とりセット」をつけて空で遊んでしまっており、それを見たジャイアンは自分も入れてくれと頼み込むのであった。  

 (解説)展開も道具の効能もものすごく単純なので、難しく考えずに楽しむ事が出来ますが、逆に単純すぎて個性に欠ける面も出てしまっていますね。とりあえずはヒョンヒョロそっくりのウサギドラを拝んで、マニアックな笑いに浸ることにしましょう(笑)。
どうぶつドロップ   2頁 小一73年1月号
 ドラえもんが出した「どうぶつドロップ」は、食べると食べたドロップの形の動物と同じことができるようになる。早速のび太がネコのドロップをなめてみると木登りがうまくなり、ゴリラを食べると力持ち、鳩を飲むと飛べるようになった。それを見ていたジャイアンもドロップを一つ食べてしまうが、それが雌鶏の形をしていたために、泣きわめきながら卵を産んでしまうのであった。  

 (解説)基本骨子は「動物ビスケット」とほぼ同じで、その点では間新しさは見つかりません。やはり見所としてはニワトリのように叫びながら卵を産みまくっていくジャイアンの異様な(笑)姿でしょうね。
とうめいペンキ   4頁 小一73年2月号
 捨てネコを拾ってきたのび太だが、ママは家で飼うことに反対する。しかしネコがかわいそうで捨ててくる事ができないのび太のために、ドラえもんは塗ると透明になってしまう「とうめいペンキ」を出し、これをネコに塗ってこっそり飼うことを提案する。
 ネコにペンキを塗ったのび太は面白がって家中の色々なものにペンキを塗り、さらに自分の体にも塗ってしまうが、頭以外の部分を塗ったところでママの悲鳴が聞こえて来る。ネコが魚を加えていってしまったのだが、ママにはネコが見えないので魚が勝手に飛んでいってしまったと勘違いしたのだ。しかし頭だけののび太を見てママはさらに仰天して気絶し、町でも騒ぎになってしまう。それでものび太はネコを捕まえてペンキを落とし、無事に飼い主も見つけることが出来た。
 しかし家のふすまやテーブルにペンキを塗ったままだったので、ママやパパがそれらにぶつかってしまうのであった。  

 (解説)「にっくきあいつ」などで登場していた透明ペンキの初登場作ですが、物語そのものは特に際立った点もない水準作だと思います。しかし姿を消したままで飼い続けようと提案するドラはなかなかすごい(笑)。のび太の頭がふわふわ浮いている(ように見える)シーンが見所ですかね。
トカゲロン   7頁 小二84年6月号
 楽しく談笑しながら歩くのび太としずかに、突然車のクラクションの音が聞こえてくる。見るとスネ夫が、新しく買ったというパパの車に乗って鳴らしていた。スネ夫はしずかに運転の真似事を教え始めてしまい、水を差された形ののび太は面白くない。
 仕方なく1人でその場を後にしたその途中、友達が面白そうなマンガを読んでいるのを見かけ、見せてもらおうとするが友達と取り合いになってしまい、挙句に本を破ってしまう。慌てて逃げたのび太はジャイアンにキャッチボールに誘われるが、ジャイアンの打ったボールが近所の家のガラスを割ってしまい、のび太は責任を押し付けられてしまった。さらに帰路に着いた途中でイヌに噛み付かれてズボンを破いてしまい、困り果てたのび太はドラえもんに助けを求める。
 駆けつけたドラえもんはのび太のために、「トカゲロン」という薬品を出した。この薬を破損した箇所に塗ると、一旦切れてもまた生えてくるトカゲの尻尾のように、破損箇所が再生するのだ。早速のび太のズボンに塗るとあっという間にズボンは元通りになった。
 続けて割ってしまった窓のガラスと、破いてしまった友達のマンガ本を元に戻した2人は、先程のスネ夫の車が電柱に激突して壊れているところを通りがかる。車をいじっていたら本当に動き出してしまったのだ。ドラえもんは車の壊れた部分だけを切り取り、断面に薬を塗って車を元通りに直してやった。
 その時ある考えを思いついたのび太は、感謝するスネ夫からお礼として、スネ夫の持っているおもちゃやマンガを借りていく。のび太は借りたものを全て半分に切り取り、両方にトカゲロンを塗って2つにして片方を自分のものにしようと言うのだ。ドラえもんはこんなことにはいい知恵が出ると、半ば驚いた表情でのび太を見つめるのであった。  

 (解説)ストーリーを楽しむだけではなく、トカゲの生態についても少し勉強することができると言う、誠にためになる話ですね(笑)。ラストののび太のアイデアは、かつてフエルミラーで行おうとしたことと同じですが、今話ではのび太の嬉しそうな笑顔で締めくくられており、爽やかな読後感を与えてくれます。ところで破損部分を切り取るのに使っていた道具は「スッパリ包丁」ですかね?
どこでも風せん   TCS2巻 7頁 小一87年4月号(どこでもふうせん)
 しずかと一緒に緑が丘の桜を見に行く事にしたのび太だが、帰り道でジャイアン達に野球に誘われてしまい、やっとの事で逃げ帰る。このままではしずかの家に行けないのび太はドラえもんに頼むが、どこでもドアは鍵が見つからず、タケコプターは電池が切れていて使い物にならない。そこでドラえもんは「どこでも風せん」を出した。膨らませた風船に行き先を書いて栓を抜くと、その時の噴射の勢いで、持っている人を目的地にまで連れて行ってくれるのだ。しかし試しに行ってみたドラえもんがしずかの家に行ってしまい、その間にのび太はママからお使いを言いつけられてしまう。しずかの家についたドラえもんは、今度はのび太が来ると言い残して去っていった。のび太はジャイアン達とお使いとで板ばさみになって苦しんでいたが、やってきたドラえもんはお使いの荷物を風船につけて目的地まで飛ばし、改めて二人でしずかの家に向かう。しずかは時間が遅いから行くのを止めようと言うが、三人は風船を使って素早く移動し、あっという間に緑が丘に辿り着いた。ゆっくり遊んだ三人は夕暮れが迫った頃に帰ろうとするが、なんと風船は全部使い切ってしまっており、仕方なく三人は走って家に帰る羽目になってしまうのであった。  

 (解説)話自体は「空飛ぶ荷ふだ」とまったく同じなので、知っている人にしてみれば新鮮味には欠けてしまいますね。「空飛ぶ〜」の方にはママを空中に飛ばすという豪快なシーンもありましたが、今話の方には絵的に派手な部分もなく、幾分地味な印象がないでもありません。しかしカラフルな風船の色や夕暮れ、桜の色など、カラーならではの綺麗な色使いを堪能する事が出来るでしょう。
としの泉ロープ   TCS1巻 7頁 小一83年12月号(としのいずみロープ)
 今日もママに注意されるのび太。早く大人になりたいと言うのび太にドラえもんは「としの泉ロープ」を出す。赤い水はコップ一杯で1年歳をとり、青い水は1年若くなるのだ。10才歳をとったのび太はパパの服を着て外に出る。先生やタバコ屋のおばあちゃんと話したのび太は、スネ夫をいじめるジャイアンを注意する。しずかにあったのび太はしずかにも赤い水を飲ませるが逆に困らせてしまう。その時、ママが勉強も手伝いもしないとカンカンに怒っている、とドラえもんが知らせにきた。家に来た二人は、ママが若くなりたいと言っているのを聞き、青い水を一杯飲ませる。少し若返って機嫌が直ったため、怒られずにすむと安心する二人だった。  

 (解説)子供にとって「早く大人になりたい」というのは永遠の願望でしょう。そんな意味でこれも僕の憧れの道具でした。でも大きくなると逆に若くありたいと思うようになる。そんな意味ではこれは永遠のテーマなのかもしれません。大きくなっても顔が変わらないのび太も面白いですが、今回特筆すべきは、しずかファン必見の「しずか・メルモ状態」でしょうね(笑)。
とばしあな   FF17巻 7頁 小一75年11月号
 空き地にいるジャイアンとスネ夫に呼ばれたのび太は駆け寄ってみるが、二人の仕掛けておいた落とし穴に落っこちてしまう。その姿を笑われたのび太は悔しがってドラえもんに話し、怒ったドラえもんは落とし穴の反対である「飛ばし穴」を出した。地面に置くと見えなくなる丸いものなのだが、これは引力を遮る効果があるので、上に乗ると乗った人が吹っ飛んでしまうのだ。二人は早速空き地に仕掛けてからジャイアン達を呼び止めるが、さすがにジャイアン達はのび太よりも利口なので近づこうとしない。そこで二人はジャイアン達の通り道に穴を仕掛けることにするが、ジャイアン達は途中で方向を変えてしまい、さらに二人に道を尋ねようと近づいてきた人が穴を踏んでしまったので、ちょうど目的の家にまで吹っ飛ばされてしまった。しかも穴が風で吹き飛ばされてしまい、二人は急いで穴を探す。しずかが撒いている水が上昇しているのを見かけた二人はそこに穴があると考えるが、穴はまた風で飛んでいってしまい、いろんな所で人や車が飛ばされるものの、ついに見つけられずに二人もくたびれ果ててしまう。空き地で休む二人を見かけたジャイアン達は大声を出して二人を驚かしてやろうと考えてそっと近づくが、急に二人の体が吹っ飛んで木の枝にぶつかってしまう。飛ばし穴はちょうど空き地に落ちていたのだった。  

 (解説)低学年誌に掲載された作品にしては、細かい科学考証に基づいている道具が登場していますが、まあ設定よりも今話は飛ばし穴によって起こる騒動を見て素直に笑うのが一番でしょう。道を尋ねようとした人が吹っ飛び、落ちた先が探していた家だったので、二人が律儀に説明するシーンは爆笑ものですね。
ドラえもん誕生   13頁 コロデラ78年11月25日号
 この話は、藤子・F・不二雄(当時は藤子不二雄)が、あるマンガのキャラクターを生み出すまでの一日を、マンガにしたものである。
 昭和44年11月。藤本弘と安孫子素雄は悩んでいた。藤本は現在、学年誌の正月号から連載する新しいマンガの案を練っているのだが、〆切は間近だというのに何一つアイデアが浮かんでこないのだ。先月号の予告では、苦し紛れに主人公が書かれていない予告まで載せてしまった。「スタジオゼロ」が入っているビルの一階にある喫茶店で悩む二人。だが、安孫子の方も自分の連載があり、スタジオに引き返してしまう。行き詰まった藤本は一旦スタジオに戻り構想を練るが、夜10時になっても何も浮かばない。編集部からの催促の電話を何とかごまかし、帰宅することにする藤本。小田急線に乗り、川崎市生田の自宅へ着くまでにヒントだけでも考えようとするが、考えつく前に家に着いてしまった。
 二階の自室にこもってアイデアを考えるが、頭の中は空回りしてばかりで何も浮かんでこない。苦しむ中で藤本は、かつての「オバケのQ太郎」の時も同じように苦しんだこと、そして、上京してきたばかりのトキワ荘時代を回想する。4ページの連載が〆切を過ぎても完成せず、担当の女性記者や編集長を怒らせてしまったのだ。あれから15年以上も経っているのにまるっきり進歩がないことにウンザリする藤本は、「アイディア考え機」のような便利な機械があればいいと思うが、その考えも近くのネコのケンカで遮られる。そして、以前にもネコに邪魔されたことを思い出した。その時は今と同様に〆切ギリギリで、安孫子は手塚治虫先生の所へ出稼ぎに行っていて留守だった。アイデアを練っている時、アパートに住み着いている野良猫が入ってきた。ネコを無視しようとするが、突然ネコのノミを気にしだして、藤本は一日中ノミとりに夢中になってしまい、気がつくと、部屋には編集者の怖い顔があった。そんなことを考えているうちにもう午前4時になってしまった。タイムマシンがあったら、などという妄想も捨てて、漠然と頭の中にあるアイディアの部品を繋げるためのヒラメキが来るまで、絶対に寝ない決意を固めるが、すぐに眠ってしまう。
 そして翌朝、グッスリ眠ってしまい、さらに何も思いついていない藤本は混乱して階下へと駆け下りるが、その時何かに蹴つまづいて転んでしまった。それは娘が大事にしているおきあがりこぼしの「ポロンちゃん」だった。その音を聞く中で、藤本の頭の中にヒラメキが走った。「起きあがりこぼし」、そして昨晩思い出した「ネコ」の姿を組み合わせた風貌のキャラクター、「ドラネコ」から人間くさい名前である「ドラえもん」を発想し、昨晩自分が考えたような便利な道具を出してくれ、頭の悪いぐうたらな男…ではなく、「男の子」を助けるためにやって来る。アイディアはまとまった。藤本は喜び勇んで出かけていくのであった。  

 (解説)今作は「コロコロコミックデラックス・藤子不二雄の世界」において掲載された、ドラえもんの誕生秘話を語るエピソードです。元来藤子F先生はこの種のマンガを描くことは好んでおられなかったそうで、そういう意味では大変貴重な作品でもあります。「ドラえもん」の設定が完成するまでの作者の悲喜劇をユーモラスに描いていて、連載開始当初の時代背景や、数々の想い出話も挿入されて、ドラファンのみならず、藤子フリークにとっても重要な作品と言えるでしょう。
ドラえもん登場!   FF1巻 8頁 小一70年1月号
 ずぶぬれになって帰ってきた少年・野比のび太。手紙を出しに行ったのだがイヌに追いかけられてドブに落ちてしまい、そのために手紙を出すことが出来ず、さらに手紙もドブに落としてしまったと言う。だがパパとママはまったく叱らず、逆にのび太を甘やかしてしまう。部屋に戻るのび太だが、その時机の引出しからセワシ、ドラえもんと名乗る二人組が現れた。2人は自分達が未来から来たと言うが、信じられないのび太は慌ててママに話しに行く。しかしママが部屋に来てみると誰もいない。2人は机の引出しに隠れたのだ。2人はのび太があまりにもだらしないので、未来の世界からのび太を助けるためにやってきたのだと言う。それを聞いて怒ったのび太は再び手紙を出しに行くが、友達に誘われてすぐに遊びに行ってしまう。仕方なくドラえもんが道具を使って手紙をとり、セワシがのび太に変装して宛先であるおじさんの家に直接届けに行くことにする。おじさんはのび太が直接届けに来たことに感心し、返事の手紙を書いてのび太に手渡した。一方、本物ののび太は手紙を出そうとするが手紙が見つからない。その頃パパ達は返事が既に届いていることに驚き、しかものび太が届けてくれたことを知ってさらに驚く。泣きながら帰ってきたのび太だがパパ達に褒められ、不思議がる様子を影から見つめるセワシとドラえもんであった。  

 (解説)今話は「小学一年生」版のドラ第一回です。公式版と比べるとドラたちが過去の世界にやってきた理由が明確でないという点が異なっていますね。他の掲載紙ではセワシがさっさと未来に帰ってしまうのに対し、今話では最後までセワシが居残っているのも特徴的です。道具もまだ重要視されておらず、全体的に見れば面白味のない作品になっている点は否めません。しかし、のび太に対するパパママの甘やかしっぷりは全作品中屈指のものです(笑)。
ドラえもんの歌   FF1巻 14頁 小四71年10月号
 ジャイアンがのび太を誘いに家までやってきた。のび太は居留守を使おうとするがママに叱られてしまう。ドラえもんが理由を聞くと、これからジャイアンが独唱会を開くのだが、ジャイアンはものすごいオンチなので、とても聞いていられないと話す。ドラえもんは何か道具を出そうとするが、ポケットの中から見つからない。そうしているうちにジャイアンが怒り出したので先にのび太は会場に向かう。だが結局ドラえもんは間にあわず、独唱会は始まってしまった。苦しみながらも必死に耐えぬいたのび太たちだったが、スネ夫がおべっかを使ったためにアンコールを聞く羽目になってしまう。そこへようやく駆けつけたドラえもんだが、音に吹き飛ばされそうになるので這って進むことにする。その時に口の中に何か入ったような気がしたが、構わずにドラえもんはジャイアンにマイクを渡す。これは「音の出ないマイク」であり、これを通すとどんな音も聞こえなくなるのだ。ようやくジャイアンから解放された2人は家路につくが、急にドラえもんが歌を歌うと言い出した。だがその声はとんでもなくオンチで、のび太は歌うなと怒るが、きれいな声だと感じているドラえもんは理解してもらおうとジャイアンの家に向かう。だがジャイアンもその歌に文句を言うと、ドラえもんはいきなりジャイアンを殴りつけて強引に納得させてしまう。ドラえもんは他の友達にも聞かせに行くが、歌声を否定するとドラえもんは狂ったような素振りを見せるので、みんなはドラえもんの歌を褒めてしまう。家に帰ってきたドラえもんは何と独唱会を開くとまで宣言してしまい、のび太は止めようとするが様子のおかしいドラえもんは聞く耳を持たない。家で練習を始めたのでママは止めようとするがどうすることも出来ず、のび太はタイムマシンでいずこかへ向かう。そしてその日の夜、ドラえもんは道具を使って観客を強引に集め、一晩中かかってリサイタルを行おうとする。だがその刹那、のび太に言われて駆けつけたセワシがドラえもんの機能を停止させ、家に連れて帰ってドラえもんを調べ始める。すると内部の機械からマツムシが飛び出してきた。マツムシが電子頭脳の中に入って狂わせていたのだ。騒ぎも一段落し、のび太達三人は家の庭から聞こえる虫たちの美しい鳴き声に耳を傾けるのであった。  

 (解説)今話はドラ史で言えば「ジャイアンの歌が初登場した」話なのですが、今話はそれがメインではなく、なんとジャイアンの歌以上にひどいドラの歌がメインになっています。狂ってしまったドラの描写は「ねずみとばくだん」でテンパってしまった時の様子と双璧をなすくらいに怖いです。目が互い違いになっている描写がおかしさと怖さの両方を醸し出していますね。セワシの登場も無理なく描かれており、ラストの静かなシーンも含め、緩急織り交ぜた初期の佳作だと言えるでしょう。
トランポリンゲン   TCS1巻 7頁 小一83年11月号
 いつものように階段から転げ落ちるのび太。痛い目に会いたくないと言うのび太にドラえもんは「トランポリンゲン」を出す。これを吹きつけた所はトランポリンのように弾むようになるのだ。調子に乗って家中にまいたのび太だったがママに怒られてしまい、さらにジャイアンにぶつかって殴られてしまう。そこでのび太は自分にトランポリンゲンをかける。ジャイアンに殴られても痛くないし、うまく弾んで逃げる事も出きるようになった。ドラえもんとしずかにもトランポリンゲンをかけ、3人で遊び始める。ドラえもんが塀から飛び降りて高く弾んだのを見たのび太はビルの屋上から飛び降りてしまう。すると弾みがつきすぎて止まれなくなってしまい、ジャイアンと激突してやっと止まった。地面に埋まってしまったジャイアンを見てスネ夫が一言、『あれ、ジャイアンどうしてめりこんじゃったの?』  

 (解説)僕の大好きな話の一つです。やはり人間までトランポリンのようになれるというのが面白いですね。で、楽しく遊んだだけで終わるのかと思いきや、ラストのオチにひねりがあってこれも面白いです。何といっても「ジャイアンが地面にめり込む」という、ドラ世界では珍しい状況になったというのに、スネ夫ののんきな一言が爆笑を誘う事必至です。これが「ドラえもん」ギャグ世界の面白さと言えるでしょう。
とりかえミラー   TCS4巻 7頁 小一80年11月号
 おもちゃのネズミを使ってドラえもんを驚かすのび太。慌てて隠れるドラえもんをもっと驚かそうとするのび太の態度にドラえもんも怒り、ポケットから小さな鏡を取り出して、それを使ってのび太を映す。するとなんと二人の姿が入れ替わってしまった。ドラえもんになってしまったのび太は自分の持っていたネズミに逆に驚いてしまうが、すぐに本来の姿に戻る。ドラえもんの出した鏡は「とりかえミラー」と言って、鏡に映した相手と一分間だけ姿を交換する事が出来るのだ。面白がって借りてみたのび太はすぐにママからお説教を受ける事になってしまうが、姿を入れかえてうまくママをごまかし、説教を中断させることに成功する。さらにのび太は昼寝しているパパと入れ替わって、わざと自分に対して小遣いを上げてしまい、道具を取り上げようとするドラえもんも、ママと入れ替わる事でうまくやり過ごしてしまう。外に出かけるとジャイアンがのび太をいじめようとやってくるが、ここでものび太は姿を入れかえて、のび太の姿のジャイアンを逆にいじめてしまう。しかしすぐに元に戻ってしまったので、のび太は今度は近くを飛んでいたカラスと姿を入れかえてその場をうまく逃げる。しかし時間が経ってのび太の姿に戻ったら飛べなくなってしまい、弾みで先頭の煙突にしがみついたまま、降りる事が出来なくなってしまうのであった。  

 (解説)何となく道具の理屈がわかりづらいですね。でも姿が入れ替わっただけで自分が誰だか混乱してしまう姿は笑いを誘います。舞台がほとんど野比家限定なので、場面的には面白味がない点が残念でした。「いじめてやる」と言って現れるジャイアンがなんか平和的でいいです(笑)。
とりよせつぼ   FF18巻 4頁 小一76年7月号
 歩いている途中、雨に降られてしまったのび太とドラえもん。そこでドラえもんは「とりよせつぼ」を出して、家にある傘を二つ取り寄せた。これに注文すると何でも取り寄せることが出来るのだ。それを見かけた通り掛かりの男がつぼを借りたいと言ってきたので、二人は喜んで貸すことにする。しかしその男はドロボウで、男は金持ちの金庫を取り寄せてたくさんのお金を手に入れてしまう。そのスキに二人は逃げようとするが男に見つかってしまい、二人は必死に逃げ回るが、とっさにドラえもんがお巡りさんを取り寄せたので、さすがのドロボウも参ってしまうのであった。  

 (解説)総ページ数が4ページしかない以上、物足りなさを感じてしまうのは止むを得ないことですが、それを抜きにして見てみると、オーソドックスな手法を守った楽しい話に仕上がっていることがわかります。道具の効能だけをストレートに表現したのんびりとする展開は、ドラ世界の本質と言えなくもありません。
ドンブラクリーム   FF11巻、CC4巻 6頁 小二74年8月号
 みんなはこの夏でどのくらい泳げるようになったかを比べるが、一人だけ泳げないのび太は笑われてしまい、ドラえもんは練習するように言うがのび太は恥ずかしがってプールに行こうとしない。そこでドラえもんは「ドンブラクリーム」を取り出した。これを体中に塗るとタタミが水のようになってのび太は溺れだしてしまった。これを塗ると周りを水のようにすることが出来るのだ。浮き輪を受け取ったのび太はドラえもんの指導の下で泳ぎ方を教えてもらい、その音を聞きつけたママは水遊びをしているのかと注意に来るが、のび太がタタミで泳いでいるのを見て一応納得する。二人は外に出かけ、その様子を見たママは自分も床で泳ぐ真似をしてパパに不思議がられてしまう。随分泳げるようになったのび太は空き地にいたジャイアンやスネ夫にいたずらまでしてしまう。しかししばらくしてドラえもんが、のび太が溺れたと大慌てでパパの所にやってきた。パパも慌てて飛び出すが、泳ぎすぎて疲れたのび太を地面から掘り出す作業を不思議がりながら手伝うのであった。  

 (解説)後の「ドンブラ粉」「どんぶらガス」の元となった道具ですが、設定は同じであるにも関わらず、三作それぞれが異なる個性を発揮している点が興味深いですね。今話はオチとしては「ドンブラ粉」に近いのですが、そこにパパを一人加えることでさらにおかしさを倍増させることに成功しています。F先生のストーリーテラーぶりが良くわかる一編ですね。


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