未収録作品は行 その3


分かいドライバー   25頁 てれびくん77年6月号
 壊れた時計をもらったのび太はそれを直そうと考えて分解をし始めるが、構造が難しいのでどこをどういじれば分解できるのかわからない。そこでドラえもんは「分かいドライバー」を取り出した。これを使えばどんなものでも簡単に分解できると言う。早速ドラえもんは時計の真ん中部分にドラーバーを当てて分解するが、時計は細かい部品まで完全に分解してしまったため、逆にのび太には組みたてられなくなってしまう。
 そこへ物置の整理をしていたママが、のび太に「手を貸して欲しい」と言ってきた。だがのび太は組み立てに夢中になって行こうとせず、ママも怒り出したので、慌てたドラえもんは『手をかせばもんくないんだ。』とわけのわからないことを言って、ドライバーでのび太を分解してしまい、その右腕をママのところに持っていってしまう。さすがにヒクヒク動く右腕を見たママは気絶するが、ドラえもんにはその理由がわからない。バラバラになったのび太は持っていかれた右腕以外の部分をくっつけて元に戻ろうとするが、コントロールがうまく行かないので、腰が余ってしまい、一本足で左腕の部分に足がついてしまうという姿になってしまった。のび太はもう一度分解しようとするが、この姿に面白みを持ったのび太はそのままでドライバーを持ったまま遊びに行ってしまう。ドライバーごとのび太がいなくなった事に気づいたドラえもんは慌てて探しに行く。
 何かをバラバラにしてみたいと考えながら歩き回るのび太は、学生が作ったプラモデルをバラバラにしたり、ケンカしているイヌとネコを分解して頭だけ付け替えたりして遊ぶ。そこでジャイアンを見かけたのび太は左腕の部分についている足で肩を叩いてジャイアンを呼び止め、ドライバーのことを自慢する。それを羨んだジャイアンは足で自分を叩いたことにイチャモンをつけてドライバーを奪おうとする。その頃ドラえもんは残ったのび太の腰と右腕をくっつけて、彼と一緒にのび太を探し始めていた。
 一方ドライバーを巡ってジャイアンともみ合っていたのび太だが、そのうちドライバーが両者の体に触れてしまい、二人の体はバラバラになってしまう。そこで名案を思いついたのび太は頭以外のジャイアンの体を奪ってしまい、ジャイアンは仕方なくのび太の体にくっついて逃げ出す。だが一緒にドライバーを持って行かれたためにのび太はジャイアンを追いかける。
 ジャイアンは腹いせに自転車や自動車を分解してしまうが、怒った持ち主たちは犯人を捕まえて弁償させようと相談を始め、それを聞いたジャイアンはのび太に体を返すことにする。家に帰ろうとするのび太は先ほどの持ち主たちに見つかってしまうが、のび太にはまったく身に覚えがない。近くのビルの陰に隠れるのび太だが、そこにやって来たのび太の片割れを見た持ち主たちは、あれを人質にとって弁償を強要しようと企む。困り果てるのび太だが、そこに隠れていたビルの管理人たちが現れて、ビルの解体工事の話をし始めたので、のび太は自転車と自動車を弁償できるだけの額で解体工事を引き受け、ドライバーでビルを壊してしまうのだった。
 お金を作って弁償したのび太はやっと元の体に戻って家に帰ってきたが、夜になって自分の頭を分解してドラえもんに歯を磨かせようとするので、その無反省ぶりに怒ってしまうドラえもんであった。  

 (解説)「人間切断機」と並ぶ、「人体バラバラ系」作品の最高峰です(笑)。今話に限ってはストーリーなどあってないようなもの。初期のドタバタギャグを思わせる各キャラの異様な暴走ぶりが最大の見所です。まずを持って注目すべきは、のび太やジャイアンがバラバラになった時の強烈なビジュアルショック。二人そろって五体がバラバラになった時の図はブラック過ぎます。その他かつての珍作「手足七本目が三つ」を思わせる「手を貸して」ネタや、とにかく何かをバラバラにしたいという本能丸出しで行動するのび太とジャイアン、そして人質を取ろうとしたりとやたら凶悪なことを考えるエキストラキャラなど、初期作のエッセンスがこれでもかと注ぎ込まれている作品です。「ギャグマンガ」というドラの根本的な面白さを再認識すると同時に、すでに作品的には「中期」に入っているにも関わらず、このようなパワー溢れる怪作を描きあげることが出来た藤子F先生にも脱帽させられます。
ふんわりガス   FF11巻 8頁 小一76年4月号(ふわふわガス)
 パパに竹ひごで飛行機を作ってもらうのび太とドラえもん。しかし不器用なパパが作ったためにうまく飛ばず、パパは飛ばし方が悪いと言って帰ってしまう。ジャイアン達の飛行機と比べられた2人は腹を立て、飛行機に「ふんわりガス」をかけた。これをかけるとかけられた物は空気よりも軽くなるのだ。飛行機に乗った2人はうちわを使って前進を始め、空を飛んで楽しく遊び、そんな様子を見たパパは飛行機が高く飛んでいることを喜ぶ。
 だがのび太は調子に乗ってさらにガスを吹きかけてしまった。軽くしすぎると降りることが出来なくなってしまうのだ。二人は飛行機の上で大慌てするが、その際にガスの入れ物を落としてしまい、それを拾ったママは香水だと勘違いしてしまう。飛行機は2人を乗せたままどんどん上昇してしまうが、雨が降ってきたのでドラえもんは開いた傘を逆さにし、その中に水を溜めてその重さを使ってようやく着陸することに成功する。
 ところが家に帰ってみると、香水と間違えてガスを自分に吹き付けてしまったママが空に浮かんでいるのであった。  

 (解説)道具を純粋に楽しむ話ですので特筆すべき山場は設定されていませんが、起承転結はきちんと構成されており、最後のオチもしっかり描いています。短編作の手本のような内容ですね。
ペタリ甲板   FF34巻、CC5巻 13頁 てれびくん79年8月号
 スネ夫が今度はヨットで九州まで船旅をすることをみんなに自慢した。当然の如く悔しがるのび太だったが、さすがにママに相談するのもはばかられ、ドラえもんにも話さないことにする。それでも無理に話を聞いたドラえもんは、一週間経ったらタイムマシンで現在の時間に戻ってくればいいと、船旅を提案する。しかし肝心の船は海へ行ってから見つけると言うのでのび太は冗談だと怒り出してしまう。
 だが翌日、ドラえもんは荷物をまとめてのび太と一緒に海に出かけ、「イルカ探し機」でイルカを探し、イルカの頭上に「ペタリ甲板」を貼り付ける。甲板の上に行くと小さくなって中に乗ることが出来るのだ。中に入ってイルカと一緒に海に潜った2人は九州へ行く事にし、合成エサを使ってイルカを九州方面まで誘導する。ところが何故かイルカの悲しそうな声が船の中に響いた。イルカが嫌がれば船は操縦できないはずなので、不思議がる2人。
 それでも二人は海上に出て、水の上を歩く事が出来る「プカリクリーム」を塗って楽しく遊ぶ。そんな中、二人はスネ夫のヨットを見つけるが、スネ夫は穴のあいたヨットが沈まないようにと水汲みをしている最中だった。たっぷり遊んだ2人は眠りにつくが、また悲しげなイルカの声が聞こえたので、イルカの心の中を見てみることにする。するとそこにはイルカの群れが映し出されていた。このイルカは群れからはぐれてしまい、群れに戻りたがっていたのだ。翌朝、2人は新たに「ペタリゴンドラ」をつけてイルカをゴンドラに変え、空から群れを探すことにするが、その様子を見ていた骨川一家は仰天してしまう。ほんやくコンニャクを使って海鳥から情報を集め、群れと合流できたイルカは仲間の下に戻っていった。
 後日、ジャイアン達に空飛ぶイルカの話をするスネ夫だが、もちろん信じてもらえないのであった。  

 (解説)導入部から道具の効果、それによる話の展開、終盤のちょっと感動的な話、そしてラストのオチと、今までのドラ世界を見事になぞったお手本のような構成の話です。「こんなこといいな」の世界をストレートに描いており、理屈抜きで楽しむことが出来ます。イルカも可愛く描写されており、ほのぼのとした佳編ですね。
ペタリぐつとペタリ手ぶくろ   11頁 小二70年4月号
 忍者の真似をして、古びた屋敷へ忍び込もうとするのび太たち。しかしドジなのび太が失敗をしてしまったので屋敷には入り込めず、のび太はみんなに追い返されてしまう。話を聞いたドラえもんも、人の家に勝手に入るのが悪いとたしなめるが、のび太はその屋敷にまつわる妙な噂を語りだす。その屋敷は一日中閉めきられているのだが、時折ゴリラのような風貌の男が見回っており、さらには子供の泣き声まで聞こえてくるというのだ。話を聞いて怪しんだドラえもんは「ペタリぐつ」と「ペタリ手ぶくろ」を出し、壁に貼り付いて屋敷に忍び込むことにする。
 怖がるのび太を元気付けるドラえもんだが、ネズミを見たせいで大声を張り上げてしまい、中にいる人間に気づかれてしまった。ドラえもんは尻尾の力で姿を消し、のび太を連れてある部屋へと逃げ込む。するとそこにはベッドに横たわった少年がおり、その少年はなぜか2人が普通にあるいているのを見て驚く。一方2人を探していた屋敷の主人達は、たまおという子供の部屋へ向かう。それは2人が出会った少年のことだった。
 主人はなぜか小さな箱で出来た車に乗ってたまおに会うが、人間は普通に歩くことができるとたまおが言い出したので、主人は慌てだしてしまう。だがそこへ隠れていたドラえもんが思わず割り込んでしまい、ついにのび太がつかまってしまった。
 そしてのび太は主人から事の真相を聞かされた。たまおは生まれついての病気で歩くことが出来ず、自分が他人と違うことを知れば、たまおがきっと悲しむであろうと考えた主人は、たまおに会う時は車に乗り、外に連れ出すこともしなかったのだ。話を聞いて同情したのび太は帰ることにするが、そこへまた足音が聞こえてくる。音の主はなんとたまおだった。ドラえもんが未来の薬でたまおの病気を治してしまったのだ。抱き合って喜ぶたまお親子。
 2人はたまおを案内するために外へと連れ出すが、彼に「歩く時にも注意しろ」と言ったそばから、自分たちがそれぞれ転んだりドブにはまったりしてしまうのであった。  

 (解説)「あやしい」を「くやしい」、「にんじゃ」を「だいじゃ」と言い間違えるドラが有名な今回の話ですが、最初期に多く見られたドタバタギャグの体裁を取っているものの、中身は意外としっかりしたストーリーが展開しています。最後のドラの薬でゲストの病気が治るという展開も強引と言えば強引ですが、ここは素直に美談的展開に感銘を覚えたいところですね。むしろ本当に唐突なのはラストのオチかもしれません(笑)。
ペットペンキ   TCS2巻 7頁 小一83年4月号
 家で飼っていた金魚が死んでしまったので、のび太は庭に墓を作って金魚を埋める。また金魚を飼いたいとママに話すのび太だが、すぐに死んでしまうからと断られてしまう。家では何も飼うことが出来ないので金魚ぐらい飼いたいというのび太のために、ドラえもんは「ペットペンキ」を出した。このペンキを使って石を金魚のように塗ると、塗った動物そっくりになるのだ。早速ペンキで金魚を作ったのび太は、もっとたくさんの動物を作るために川原から石をたくさん取ってきて、小鳥やネコ、イヌを作り上げる。しかし作った動物は家の中で暴れ始め、ぶつかったママは倒れこんでしまった。
 動物達にそれぞれの家を作ってあげた二人は、イヌを散歩に連れて行く。石のイヌはノライヌよりも強く、よくのび太になついていた。それを見たジャイアン達もペンキを使いたがり、ジャイアンはオウム、しずかはパンダをそれぞれ作るが、二人の気づかない間にスネ夫がペンキを持ち去ってしまっていた。
 スネ夫は家の庭にある小石を全部小鳥に変え、手乗りにしようとしていたのだが、石の小鳥を全部自分の体に止めたら、あまりに重すぎるのでつぶれてしまうのであった。  

 (解説)個人的にリアルタイムで読んだので非常に親しみがありますね。意志にペンキを塗って動物のようにするという、子供のよくやる遊びを使って道具を作ってしまう所はさすがと言うべきでしょう。冒頭、金魚の墓を作るのび太の様子も、彼の優しさをさり気なく描いていてイイですね。
ヘリカメラ   8頁 小二83年10月号
 いとこの作ったラジコン飛行機を自慢するスネ夫。しかしすぐさま駆けつけたジャイアンに取られてしまい、いつものように触らせてもくれないだろうと考えたのび太も、早々に興味をなくして家に帰る。
 その時のび太は庭を飛んでいるラジコンヘリのようなものを目に留める。案の定それは「ヘリカメラ」というドラえもんの道具で、ドラえもんはネズミがいないかと調査していたのだ。調査が終わってドラえもんはすぐにカメラをしまうが、そこへスネ夫がやってきた。ジャイアンがラジコンを操縦しそこない、ラジコンがどこかへ行ってしまったというのだ。のび太は早速ドラえもんからヘリカメラを借り、スネ夫のラジコンを探すことにする。
 最初こそ宙返りなどして遊んでいたものの、スネ夫の言葉に従い、ラジコンの飛んでいった方向へカメラを移動させていくのび太。しかし途中でしずかを見つけたのび太は、顔にご飯粒がついていることをわざわざ知らせに行ったため、さすがにスネ夫も怒り出してしまう。しかしのび太もラジコン探しをやめようかとやんわりスネ夫を脅し、ラジコン探しを続ける。
 念入りに探すもののなかなか見つからず、さらに友達の読んでいたマンガを見かけたのび太は、次に貸してもらおうとまたわざわざ出かけてしまい、ついにはスネ夫も泣き出してしまう。
 しかしラジコンは見つからず、そのまま裏山に到達してしまう。しかしその裏山にラジコンは落ちていた。スネ夫は喜んで裏山へ向かい、のび太はカメラを呼び戻そうとするが、なぜか操作しても反応がない。今度はヘリカメラが遠くへ飛ばしすぎたために行方不明になってしまい、話を聞いたドラえもんはただ呆れ返るばかりであった。  

 (解説)操作しているラジコンの視点で物を見る、という行為も、子供の頃に一度は夢想するものだと思います。その願望をストレートに実現している今話ですが、展開は単なる道具の効能紹介だけに留まらず、道具を使用することになった契機がそのままオチへ連鎖するという、落語のオチのようになっているところが面白いですね。ちなみにスネ夫のラジコンヘリはライト兄弟が使った飛行機(ライト・フライヤー)と言うことです。
べんきょうねまき   2頁 小一72年2月号
 宿題をまだやっていないのにも関わらず眠ってしまったのび太。ドラえもんが起こしても目を覚まさないので、ドラえもんは着ると寝ている間に勝手に勉強をしてくれる「べんきょうねまき」をのび太に着せてやる。するとのび太は寝ている間に宿題をしてしまい、そうとは知らない本人は翌朝になって慌てるが、ノートを見た先生はのび太を褒めてくれるのであった。  

 (解説)短い話ですが、その中にも仰角カットを混ぜたりして構図に凝っている雰囲気が窺えます。寝巻の柄が「+−×÷」になっているところも芸コマで楽しいですね。
変身ロボット   TCS2巻 7頁 小一85年6月号(へんしんロボット)
 またまたジャイアンに追いかけられるのび太。何とか逃げおおすことに成功したのび太は、ちょうどそこにやってきたドラえもんに助けを求めるが、何故かドラえもんは何も話さず、しかも尻尾の形がいつもと変わっていた。そのドラえもんについていって家に帰ると、なんと部屋には本物のドラえもんがいた。ドラえもんがもう一人のドラえもんの尻尾を引っ張ると、ドラえもんは狐の形をしたロボットに戻っていった。これは「変身ロボット」と言って、油揚げをあげるとくれた人に化けて、頼みごとを何でも引き受けてくれると言うのだ。
 のび太は早速油揚げを取ってきてロボットに食べさせると、ロボットはのび太そっくりに変身し、ジャイアンをやっつけてほしいという頼みを聞いて出かけていく。のび太はわざわざジャイアンに電話してその事を知らせるが、ロボットののび太は油揚げを黙って食べた事でママに叱られてしまっていた。そうとは知らないのび太はジャイアンがやっつけられる所を見に出かけるが、当のジャイアンは被害にあってないので逆に追いかけられてしまう。
 一方やっとママのお説教が終わり、ロボットののび太はジャイアンの下に行こうとするが、期限の30分が切れてしまったので、途中で元のロボットに戻ってしまう。戻ってきたのび太はロボットを追いかけ、ちょうどロボットが落ちているところを歩いていた買い物帰りのしずかに話しかけるが、のび太自身はロボットに気づかない。その間にロボットはしずかが買ってきた油揚げを食べ、のび太の言ったセリフを、しずかがオウム返しに『たけしさんをやっつける』と呟いたので、それを頼み事と受け取って変身してしまう。
 のび太は再びジャイアンに見つかり、ついにつかまってしまうが、そこにやってきたロボットしずかがジャイアンをやっつけてしまう。尻尾を見たのび太はロボットである事に気づくが、ロボットの尻尾はスカートの中から生えているので、のび太は尻尾を引っ張るのをためらってしまうのであった。  

 (解説)今回はなかなか可愛らしい道具が登場しますが、変身したロボットがニコニコしながらジャイアンをやっつける姿は、見ようによってはダークに見えないこともありませんね。元々そういう表情なんですが。全体的に小ぢんまりした小品で、特に目を見張るシーンなどはありませんが、ラストのオチは一部のファンの想像力を掻き立てる良い出来栄えになっている…と思いますよ(笑)。
変装服   FF9巻 4頁 小一71年7月号
 だぶだぶの変な服を着始めたドラえもん。その姿を見てのび太は笑うが、ドラえもんがのび太のことをジロジロ見ると、なんとその姿が次第にのび太に変わっていった。これは誰にでも化けられる「変装服」なのだ。早速これを使ってママになってみたのび太はその姿のままでジャイアン達の下へ行き、のび太をいじめたお詫びにとジャイアン達が持っていたキャンデーを奪ってしまう。キャンデーをなめながらジャイアン達が描いていた変な落書きをジロジロ見つめるのび太だが、すると姿がその落書きの絵のように変わっていってしまい、気味悪がられて追いまわされるのび太はドラえもんに助けを求めるのであった。  

 (解説)短いページ数の中に良くまとめられていると思います。やはり面白いのはラストのお化けでしょうかね。いくらドラ世界とは言え、ああいうものが走り回る様はなかなかにインパクトがあります。
望遠メガフォン   8頁 小五86年4月号
 野球をしていて神成さんの家のガラスを割ってしまったジャイアンとスネ夫。そこへ偶然通りがかったのび太を見た2人は、のび太にバットやグローブを預けて逃げてしまい、何も知らないのび太は誤解した神成さんに叱られ、さらに名前や住所までも聞かれてしまう。すっかり落ち込んで帰るのび太は野球道具を取りに来たジャイアン達に文句を言うが、2人はまったく相手にしない。
 悔しがるのび太だが、その時のび太の耳にドラえもんの声が聞こえてきた。しかしそばにドラえもんはいない。家に帰って聞いてみると、ドラえもんは「望遠メガフォン」を使って声を届けたのだと言う。これを使うと遠くにいる相手にも自分の声を直接聞かせることができるのだ。その時、家に神成さんが向かっているのを見つけたのび太は慌てるが、ドラえもんがメガフォンを使って追い返してくれる。
 のび太から事情を聞いたドラえもんは、2人にメガフォンで仕返しをすることにし、再びやってきた神成さんとママを会わせないために、ママにうるさい音楽を聞かせて神成さんの呼び声が聞こえないようにする。次に2人は手分けしてジャイアン達をからかい、さらに嘘つきだと責めたてる。天の声だと言うその声があまりにしつこく耳につきまとい、ついに精神的にまいってしまったジャイアンとスネ夫は神成さんに真実を話し、その様子を見届けて喜ぶのび太とドラえもんであった。  

 (解説)今までにものび太は神成さんの家にボールを取りに行ったことがあるのに、名前も知らなかったんですかね(笑)?典型的な「仕返し」の話ですが、ジャイスネのやっていることはあまりにひどいことなので、仕返しにもカタルシスを持つ事が出来ます。しかもその仕返しの仕方が直接的なものではなく、精神的に追い詰めていくという「必殺仕置人」チックなものなので、個人的には大好きな仕返しのやり方です(笑)。
防水折り紙   FF15巻 7頁 小一77年8月号(ぼう水おりがみ)
 折り紙でヨットを作ったのび太とドラえもんはテーブルの上でレースをするが、のび太はすぐに飽きてしまい、山の中の湖でヨットに乗っているであろうスネ夫をうらやましがる。そこでドラえもんは「防水折り紙」を出し、これで船を作ることを提案する。早速2人は湖に行ってヨットを作り、2人で競走を始める。しかし本物のヨットに乗っているスネ夫にバカにされ、二人はもっと速くなるタイプのヨットを作って対抗する。
 しかし風が強くなってきたので2人のヨットは転覆してしまい、ドラえもんは寸出のところでボートを作り、その上に2人は乗っかる。2人は転覆したスネ夫のヨットを見つけ、スネ夫の従兄弟からスネ夫が溺れたままだということを聞かされたドラえもんは、透明折り紙を使って湖に潜り、何とかスネ夫を救出した。2人はありったけの紙を使って大きな遊覧船を作り、みんなでそれに乗って遊ぶのであった。  

 (解説)子供の遊びをストレートに取り込んでいて、まさに「こんなこといいな」の世界を具現化している点は好感が持てます。ラストではスネ夫たちも一緒に仲良く遊んでいますが、低学年誌掲載版ではラストはみんなで仲良く遊ぶというパターンが多いので、素直に楽しく読める所が良いですね。
暴力エネルギー探知機   8頁 小五85年3月号
 イライラしているジャイアンを見て逃げるみんな。困り果てるのび太とドラえもんだが、ジャイアンの苛ついた気持ちをすっきりさせるために、誰かとケンカをさせようと考え、「暴力エネルギー探知機」でケンカ相手を捜し始める。早速反応があるがそれはジャイアンだったため、隣町へ行ってみることにする。しかし小さい子供だったり、大人の怖い人だったりとなかなかピッタリの相手がいない。
 それでもやっとケンカ相手にふさわしい少年を見つけ、ジャイアンの家まで連れて行くが、今度はジャイアンが捕まらない。イライラしたケンカ相手の少年は二人を追いかけ始めるが、そこで遭遇したジャイアンと大ゲンカになる。結局、決着こそつかなかったものの、気分の晴れたジャイアンを見て安心する2人。
 ジャイアンはその少年とケンカすることを楽しみにしている様子だったが、その少年が引っ越していってしまったためにジャイアンはまたも苛つき始め、ジャイアンは二人に新しいケンカ相手を捜すよう命令するのであった。  

 (解説)しかし、22世紀にはすごい道具があったものだ(笑)。ジャイアンがイライラしている時の顔はどれも笑えるものばかりですが(私的ベスト1は『スーパーダン』)、今話のジャイアンもまた表情が豊かで、特にラストのいらついた表情は凄まじいものがあります。まるで別のマンガのようだ(笑)。ケンカをすることで友情を育むという、「ケンカするほど仲がいい」的なものも表現していますね。今ではすっかり見られなくなった光景ですが。
ポケット信号機   TCS4巻 7頁 小一83年3月号(ポケットしんごうき)
 今日もジャイアンとスネ夫に追いかけられるのび太はドラえもんに助けを求めるが、結局捕まって殴られてしまう。しずかに言われてドラえもんがいるという交差点の方に行ってみると、そこではドラえもんが、車の通行が激しくて道を渡れないおばあさんのために、「ポケット信号機」を使って車を止めていた。この信号機を使うと動くものなら何でも止める事ができるのだ。試しに屋根から落ちそうになった人を寸出のところでドラえもんは止めてみせ、のび太も早速道具を借りて、誰かの役にたとうと交差点の前に立つ。しかしそういう時に限って誰も渡ろうとせず、しかも勝手に車を止めたので運転手に怒られてしまう。
 残念がるのび太が空き地のそばを通ると、飛んできたボールが神成さんの窓ガラスを割るところだったので、信号を使ってボールを止めた。しかしボールの主がジャイアン達だったのでのび太は再び動かし、ボールはガラスを割って二人は神成さんに怒られてしまう。のび太はしずかに信号機を自慢し、実践するためにわざとイヌを怒らせて動きを止めてしまう。さらにのび太は取り上げようとするドラえもんやママ、ジャイアン達など、怖いものを次々に止めていってしまい、さらにジャイアン達に落書きまでしてしまう。
 笑い転げて楽しむのび太だが、弾みで川に落っこちてしまった。慌ててドラえもんに助けを求めるが信号機に止められていて動けないので、のび太は急いで信号機を解除する。するとドラえもん以下、止められていたみんなが動き出し、のび太は川から助けられるものの、動きを止めていた全員に追いまわされる羽目になってしまうのであった。  

 (解説)「ふみきりセット」なんかと同じ系統の道具ですが、こちらの方がどことなく近代的な印象を受けるのはどうしてでしょう(笑)?単なる「通せんぼ」だけでなく、動いているものすべてを止めるという点を新たに加えている事で、展開をバラエティー豊かなものにすることに成功しています。でもドラは「たまには人の役に立ちたい」とか言ってますが、いつも役に立っているような気がするのは気のせいか(笑)?
ポケットの中でかくれんぼ   4頁 小一71年8月号
 空き地でかくれんぼをしているのび太が隠れ場所を探していると、土管の上で昼寝しているドラえもんが目に入った。その時ドラえもんのポケットの中に隠れる事を思いついたのび太はポケットの中に隠れてしまうが、それからすぐに逃げてきた蝶を追いかけてきた少年がポケットの中に入ってしまい、それを見ていたほかの子供たちもどんどんポケットの中に入ってしまった。さらに犬から逃げてきたジャイアン達も入り込み、犬まで入ってきてしまったのでようやくドラえもんも目を覚まし、大声とともにみんなをポケットから追い出してしまうのであった。  

 (解説)始終土管の上で静かに眠るドラの顔が印象深いせいか、何となく静かな印象を与えてくれる話ですね。いろんな人がポケットに入り込んでも目を覚まさないドラがなんか笑えます。
本物クレヨン   FF12巻、CC3巻 8頁 小一73年7月号
 ライオンの絵を描いてみたのび太たちだったが、のび太だけが下手くそだったのでジャイアンやスネ夫にバカにされてしまう。絵が描けるようになれる道具を出してくれと頼まれたドラえもんは「本物クレヨン」を出した。これで描いたものは本物になるので、これで絵描きさんを描いてその人に教えてもらえば良いというわけだ。
 だが出てきた絵描きは教える前に何か食べさせろと横柄な態度を取ってくる。おやつはもうなかったので絵描きは怒ってふて寝してしまう。そこでのび太はクレヨンを使っておやつを描くことにするが、やはり下手なのでうまそうに見えないらしく、絵描きは自分で食べ物の絵を描いてそれを食べだした。そこにやってきたママを見た絵描きはもっといいママを描くと言って女性を描きあげてしまい、さらにその人と結婚するとまで言い出す。さすがにのび太達も怒るが絵描きはさらに子供の絵まで描いてしまい、のび太たちを家から追い出そうとして騒ぎになってしまう。その騒ぎの中でクレヨンが窓から外に落ちてしまい、それをスネ夫が拾ってしまった。
 家ではようやくドラえもんがすべての絵を消して騒ぎを静めたが、二人はクレヨンのことに気づいたので探しに行く。するとスネ夫が描いた落書きのライオンが本物になっており、スネ夫が慌てて逃げ惑っているのであった。  

 (解説)初期のカラー作品ということで比較的のんびりした雰囲気がありますが、やってることはどちらかと言えばドタバタチックになっています。クレヨン調のままで実体化する絵がなんか可愛らしいですね。「空気クレヨン」の変形版と言える作品です。「クレヨン」という子供に馴染み深いものを材にとっているところにも好感が持てますね。
本物げんとう機 FF28巻,CC5巻,TCS3巻 7頁 小一80年8月号(FF版『じったいげんとう機』,CC版『じっさいげんとう機』)
 スネ夫からパパの趣味である骨董品のツボを自慢され、腹を立てながらもうらやましがるのび太は一応親に相談してみるが、珍しくパパが乗り気になってツボを買おうと言い出した。しかし反対するママと口論になってしまい、助けを求めてドラえもんの所に行くのび太だが、部屋に入ると何故か巨大な化け物がいたので、のび太は仰天して気絶してしまう。しかしこれはドラえもんが「本物げんとう機」で映し出した怪獣の絵だった。試しにのび太もしずかの絵を映してみるが、幻灯なので手に触る事は出来ない。
 そこである考えを思いついたのび太は、パパからツボのカタログを借りて、家中にツボの幻灯を映し出し、それからスネ夫たちを呼びに行く。その間にパパの所に客がやってくるが、客は家中に置いてあるツボを見て感心してしまい、それを見たスネ夫は悔しがって退散する。のび太は残ったジャイアンとしずかに種明かしをし、道具を使って世界各地の建物を映し出して楽しく遊ぶ。
 しかし家に帰ってみると、床の間においてあるツボを幻灯と知らないママが、いつのまに買ったのかという事でまたパパと口論を始めてしまっているのであった。  

 (解説)FFランド、カラーコミックスといろんな単行本に収録されながら、なぜかてんコミにだけ収録されなかった不遇の作品が、今回やっとてんコミ(カラー作品集)に収録されました。ただ内容自体はちょっと物足りない感じもするので、てんコミに収録されなかった理由もわからないではありません。けれど、「ケンカを静めるために出した道具で再びケンカが起きる」という、オチの王道はしっかりと守られています。
ほんものになるひかり   2頁 小一72年9月号
 人気のヒーロー・ブルトラマンのおもちゃで遊ぶのび太とドラえもん。しかしそこにジャイアンが怪獣のおもちゃを持ってきて意地悪するので、ドラえもんは「ほんものになるひかり」を怪獣に浴びせて、本当の怪獣そっくりに動くようにしてしまい、ジャイアンを襲わせる。さらにブルトラマンのおもちゃにも光を浴びせて、怪獣のおもちゃを退治してもらうのであった。  

 (解説)この時期の低学年誌掲載作にヒーローのパロディが出てくるのは、やはり当時の雑誌内容に影響されているのでしょう。おもちゃを本物そっくりにしてしまうというのも、子供の願望をストレートに描いていて好感が持てますね。


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