のび太とブリキの迷宮

☆ストーリー概略

 パパが予約した不思議なホテル・ブリキンホテル。不思議なトランクの導くままにのび太とドラえもんはブリキンホテル、そしてそのホテルがあるブリキン島へと向かう。しかしそこで二人は離れ離れになってしまい、のび太達はチャモチャ星の少年・サピオに頼まれて、チャモチャ星を救うため、そしてドラえもんを助けるために戦う事を決意する。ドラえもんは拷問の果てに壊れてしまい、4人はそれぞれ潜入調査と島の大迷宮に挑戦するが難航、さらには星の人間を支配したロボット皇帝・ナポギストラーの魔の手も迫る。だが逆境を乗り越えたのび太はついにドラえもんと再会し、協力してロボット軍団を撃退、チャモチャ星を救うのであった。

☆予告編 (ビデオに収録されているものを参考にした)

 BGMは主題歌である「いつかいい事きっとある」。基本的に本編映像を使用しており、ナレーターはいつもの5人が交互に話し、最初と最後にはナポギストラー役の森山周一郎氏が担当している。

☆原作と映画の違い (原作はてんとう虫コミックス版を参考とした。コロコロ連載時を参考とする場合はその都度説明する)

 ・オープニングは例によってのび太の「ドラえもーん!」という叫びから始まるが、今回はその叫びと物語上の関連性はない。OP画面はメインタイトルが出るまではフルCGだが、あとはセルアニメのドラが飛行する画面に終始している。浮遊感溢れる飛行シーンが魅力的。
 ・原作では旅行できないのび太の愚痴をママがこっそり聞く場面があるが、映画ではなし。
 ・ブリキンホテルの場所の事で、原作ではパパがガイドブックで場所を探そうとしているが、映画ではそんな様子はなく、のんびりしたまま。
 ・ホテルの場所がわからないと知ったのび太は原作ではそのまま学校を休もうとするが、映画ではドラの道具に頼ろうとしている。物語の伏線を強化した演出。
 ・「荷物はこび用荷物」は映画では「荷物はこび用『お』荷物」。
 ・ブリキン島でのびドラが泳ぐ時、原作に出てくるブリキのカメは映画では未登場。のび太も砂遊びをしていない。
 ・雪山に二人が行く時、BGMに主題歌がかかる。
 ・雪山についた時、映画では「トンネルを抜けると雪景色」と、どこかで聞いたような言葉を言うのび太。
 ・ウルトラバランススキーは映画では「ウルトラバランスキー」と発音しているように聞こえる。
 ・映画での雪山はあまり冷たくないらしい。
 ・原作に出てきた雪だるまも映画では未登場。
 ・ドラが行方不明になってからニ、三日経った時の、朝ののび太とパパママとの会話は映画ではカット。
 ・のび太が3人にトランクを見せる時、原作では空き地で見せるが映画では川原の鉄橋の下で見せている。
 ・原作ではトランクに機械的なスイッチがついているが、映画ではなし。
 ・サピオのフルネームは原作では「サピオ・ブリーキン」だが、映画では「サピオ・ガリオン」になっている。「ガリオン」という名前は原作でのサピオの父の名前になっている。
 ・ホテルの隠し部屋に行く際、原作ではハシゴを使っているが映画ではエレベーターになっている。カプセルでハシゴを上るのはさすがに不自然だったためか。出来なくはないのだろうが。
 ・チャモチャ星での作戦会議の時、見たことのない道具は使い慣れているとのび太が言うシーンはアニメではなし。
 ・映画では「オアシス」という名称は出てこない。
 ・休憩所で休んでいる時、原作でも「ドラえもんのためならぼくは・・・・・・。」というのび太の名ゼリフがあるが、映画ではドラは自分のかけがえのない親友だと言うのび太に、ロボットに星を支配されているサピオが「でも、ロボットだろ?」と反論、それに声の調子を強めてのび太が「ロボットだって、人間以上のロボットなんだよ!」と反論し、件のセリフを言った後に声を詰まらせてジュースを飲むという凝った演出に変わっている。原作から数えての2人の長い付き合いをずっと見てきていればいるほど、その言葉の重みがわかる、後期映画屈指の名シーンである。
 ・映画ではタップの「ホタルライト」という名称もなし。
 ・迷宮を堂々巡りして、のび太が疲れ果ててあきらめかけてしまうシーンは、映画でよりリアルな演出になっている。こういうリアルな点をきちんと描くのが「ドラえもん」という作品の素晴らしい所。
 ・スペアポケットを使ってチャモチャ星に戻る時、再び主題歌がBGMとしてかかる。
 ・テキオー灯をのび太が出した時、映画ではのび太がドラえもんのように道具の説明をはじめてしまう。
 ・映画ではジャイスネが飛行機を奪取するシーンがある。
 ・絶対安全救命イカダでの食べ物は、映画では望む食べ物が自動的に選ばれるようになっている。映画で出てきた食べ物はスパゲティナポリタンとハンバーグ定食、そしてドラやき。
 ・迷宮からの脱出に原作ではぬけ穴フープを使うが、映画では通りぬけフープになっている。
 ・収容所の人間を救出する際も原作ではぬけ穴フープだったが、映画ではトランクの門を使っている。
 ・原作で使用した「必中ゴムパチンコ」の名称も映画では登場しない。
 ・知らない世代のために「イートマキマキ」なる歌詞の歌について説明すると、この童謡のタイトルは「いとまきのうた」、作詞:香山美子、作曲:小森昭宏である。いつ頃作られたのかは残念ながらわからなかったが、筆者の子供時代では「8時だヨ!全員集合」で志村けんが使っていたために、全国的に大ブレイクしていた。
 ・原作と映画ではエピローグが若干異なり、原作では地球でののびドラの日常風景がエピローグになっているが、映画ではチャモチャ星での大団円がエピローグになっている。
 ・エンディングはチャモチャ星の大団円シーンから始まり、朝日に向かって走るサピオ達と、5人のそれぞれの旅行先でのスナップ写真を交互にインサートしている。歌自体は二番が省略されている。

☆ゲスト&声優紹介

サピオ(CV・皆口裕子)
 チャモチャ星の少年で、ガリオン公爵の息子。父が残したロボット撃退のための発明品が眠っているブリキン島を守っていたが、ロボットの反乱に伴い助力を求めて外宇宙に逃亡、様々な星を回って地球に到着し、のび太達と共にチャモチャ星を救うため戦う事にする。チャモチャ星人は長い間の自堕落生活が元で、自分の力で動く事さえも困難になってしまっており、サピオも普段はカプセルに乗って行動している。どちらかと言えば気弱で物静かな性格だが、たった一人になっても人間の誇りのために戦う決意を見せるという情熱も持ちあわせている。
 演じた皆口氏は「YAWARA!」での猪熊柔や「ドラゴンボールZ」のビーデル、「美少女戦士セーラームーン」シリーズでの土萌ほたるなど、女の子の役が多く、最近では母親役を演じることも増えましたが、総じて女性役が多く、そういう意味では男の子である今回の役柄は珍しいかもしれません。

ブリキン(CV・大木民夫)
 ブリキンホテルの支配人を努めているブリキのロボット。サピオのブリキン島での世話係も努めているようで、島の操縦なども彼が行っているらしい。中盤で軍隊に捕らえられてしまうが、しずか達に救出された。
 大木氏は洋画の吹き替えが多い方ですが、「トップをねらえ!」のタシロ艦長や「テツワン探偵ロボタック」のマスターランキングなどを演じていらっしゃいます。

タップ(CV・鈴木みえ(現・一龍斎貞友))
 サピオのそばについているウサギのような形をしたロボット。口の中はドラの四次元ポケットのようになっていて、いろいろなものをたくさんしまっておく事が出来る。聴覚も優れており、音を瞬時に聞き分けてそれがどのような音かを分析する事も出来る。ブリキンホテルでは従業員の役目も果たしていた。
 演じた鈴木氏は今では「一龍斎貞友」と名乗っており、言うまでもなく近年のアニメドラを支えている「ドラえもんズ」のドラリーニョ役を演じていらっしゃいます。他には「北斗の拳」のバットや「忍たま乱太郎」のしんべヱを演じていますね。

ピエロ(CV・堀内賢雄)
 ブリキン島にいるピエロ。ホテルでは荷物運びやパフォーマンスの披露などを努めており、独特の口調もあって食事の時はのび太達も心を和ませていた。
 堀内氏はギャグからシリアスまで何でもこなす事が出来る実力派の声優さんで、「アンドロメロス」のアンドロメロス、「機動戦士ガンダムZZ」のマシュマー、「キャッ党忍伝てやんでえ」のナレーター、「ふしぎの海のナディア」のサンソンなど、多数演じていらっしゃいます。

ガリオン公爵(CV・屋良有作)
 サピオの父親で科学者でもある公爵。機械に依存する社会の危険性に最初の気づいた人物であり、やがて襲い来るであろう災厄から人類を救うために、大迷宮の中央ホールでロボットを狂わせるコンピューターウイルスを開発、国王に進言しようとメカポリスに戻ったものの、ロボットに捕らえられてしまった。確固たる信念を持った立派な人物で、その信念を貫くために国王に直訴するという行動派でもある。
 屋良氏は「雲の王国」に続いての登場となりました。もちろん「キテレツ大百科」でのキテレツの父親を始め、最近ではナレーターとしても活躍されていますね。

ガリオン夫人(CV・佐久間レイ)
 公爵の妻でサピオの母親。夫と共に一年間地底暮らしを続けて研究を手伝った事から、本人も学識は高いと思われる。セリフや登場回数は少ないものの、見た限りでは貞淑な妻、そして良き母親であるらしい。
 演じる佐久間氏は本作ではミニドラも演じてますね。ミニドラや「それいけ!アンパンマン」でのパタコさんのような子供系キャラから、「トップをねらえ!」のカズミなど、大人の雰囲気を持つ女性まで演じ分けられる声優さんです。

ネジリン将軍(CV・加藤治)
 ナポギストラー機動部隊を指揮する将軍。ブリキン島を追って宇宙へ出動したり、武力行使する際は部隊の総指揮を執るなど、地位的にはかなり高位に存在しているらしい。だが性格には若干粗暴な面も見受けられる。だいぶ歳を重ねているようで、動力源であるネジが切れやすいらしい。
 加藤氏も映画ドラには馴染み深い声優さんですね。前期作の頃から出演されているので、今さら代表作を言う必要もないですね(笑)。

隊長(CV・緒方賢一)
 ネジリン将軍直属の配下である部隊長。最初にドラを捕まえたのは彼の部隊である。ドラを大ダヌキと言って恐れたり、ドラが暴れ出したら真っ先に逃げたりと、かなり臆病な性格の持ち主らしい。
 緒方氏もいちいち代表作を語る必要などないくらいにいろいろな役を演じていますが、藤子ファンとしては「忍者ハットリくん」の獅子丸を忘れてはいけないでしょうね。

ロボット博士(CV・岸野一彦、広瀬正志)
 チャモチャ星のロボットであり、捕らえてきたドラからサピオの情報を探ろうと苛烈な拷問にかけ、ついにはドラのコンピューターを故障に追い込んでしまう。役に立たなくなったドラを海へ捨てろとすぐに命じる辺り、非情な性格を持っているようだが、科学者としての力はそんなに高くないようである。
 演じたお二方も映画ドラにちょくちょく出演されている常連ですね。

兵士(CV・茶風林、山崎たくみ)
 チャモチャ星のロボット兵士。すべてネジまき式のロボットであり、そのために大迷宮の調査に乗り込んだロボットは、ネジが切れてすべて機能が停止してしまっていた。普通の人間に比べても小さいため、個々人の近接戦闘能力はそれほど高くないようで、どちらかと言えば兵器を操縦する場合が多いらしい。
 お二人とももうアニメドラの常連なのですが、茶風林さんは最近では「名探偵コナン」の目暮警部を演じてます。山崎氏は最近では忘れてならない、PSソフト「仮面ライダーV3」の仮面ライダー2号役がありました。

ナポギストラー(CV・森山周一郎)
 元は様々な機械を発明するために作られた発明ロボットであったが、いつしか野心を持つようになり、便利な機械を作って人間を自堕落にしていった所で「皇帝・ナポギストラー1世」を名乗り、チャモチャ星を制圧した。ガリオン公爵を以前から警戒しており、彼がブリキン島に残したであろう何かを調査するべく、追撃団を派遣してブリキン島を追い続けた。全身のほとんどがコンピューターになっているため頭部が大きいが心配性な面もあり、その事をネジリン将軍に指摘されたりもした。最後にはコンピューターウイルスを送り込まれ、すべてのロボットを道連れにして自滅した。
 演じた森山氏は一度聞いたら忘れられない独特の低音の声が特徴で、最近では「紅の豚」のポルコ・ロッソ役ですっかり有名になりました。俳優としてももちろんご活躍されていて、「ウルトラマン」にも一回だけ出演していたという事実はあまり知られていませんね。

☆映画主題歌

 なにかいい事きっとある 作詞・武田鉄矢 作曲・芹澤廣明 編曲・小西貴雄 歌・島崎和歌子
 今作の主題歌はアイドル歌手であった島崎氏が担当しており、これは「魔界大冒険」での小泉今日子に続いて二人目のことである。歌詞そのものは「女性の成長」と言うものを歌い上げており、そういう点では映画ドラとはほとんど関連性が内容に思われるが、その華やかで楽しそうな雰囲気のする曲調は、今作の「おもちゃの世界」という世界観にはマッチしているように思う。劇中での効果的な使われ方も印象的である。

☆自分勝手な感想

 「アニマル惑星」から「ねじ巻き都市冒険記」までを映画の後期作とするなら、それ以前の前期作に比べて一般にオールドファンからの人気は高くないように思われています。それは前期作に良く見られたSFマインド溢れる設定、練りこまれた各キャラのドラマなどが後期作ではそれほど細かく描かれていないためと言われています。その事を頭に入れて今作を見てみると、確かに中途半端な感じは否めません。「機械に依存しすぎると人間はダメになる」というテーマは一応存在しているものの、それほど重い物として描かれているわけではありません。舞台設定もリアルなSF考証を無視して、大冒険のみに終始している印象を受けます。
 では今作はやはりつまらない作品なのでしょうか?そうではありません。序盤でのブリキン島で遊ぶのびドラの姿を見る時、我々はそこに確かに「ドラえもん」を見ることが出来ます。短編作を描くことが出来なくなっていた当時、作者は少しでも短編作にある「理屈抜きの楽しさ」を大長編で描きたかったのではないでしょうか。悪との戦いにおける悲壮感よりも冒険の爽快感を前面に押し出した後期の作風を代表する描写が多い今作の価値は、決して低くはありません。
 さらに忘れてはならないのは「壊れたドラえもん」。ドラが拷問の果てに壊れてしまうと言う描写は、前作「雲の王国」のラストにおける特攻シーンにも通じるものがあり、そしてそこではドラえもんの事を常に思いながらも一人で困難に立ち向かうのび太の姿が描かれています。それは近い将来、我々にとっての「ドラえもん」がいなくなってしまうことに対する暗示だったのではないでしょうか?今作は様々な意味で奥深い作品となっています。ですが、やはり今作は先述の通り、勇気と友情をスパイスとして、おもちゃの世界で繰り広げられる冒険を楽しむべきでしょう。



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