のび太の創世日記

☆ストーリー概略

 夏休みの自由研究で四苦八苦するのび太を助けるために、ドラえもんが未来デパートで購入した「創世セット」。これを使って2人は本物の地球を作り、その家庭を絵日記につけ始めた。いつもの3人も加わって研究は進むが、もう1つの地球では奇妙な昆虫の存在が見え隠れし、さらにジャイアンやスネ夫も謎の昆虫人にとらわれてしまう。人間と昆虫人との関係を知ったドラえもんは、鮮やかな方法で争いを起こそうとしていた2つの種族を和解させることに成功した。

☆予告編 (ビデオに収録されているものを参考にした)

 旧約聖書の天地創造の部分を要約したモノローグから始まるという重厚な出だしだが、使用されている映像は本編映像のみで、予告オリジナルのものはない。旧来なら主題歌がBGMとして使われそうなものだが、今回は通常の劇伴のみにとどまっている。声優のセリフはすべて新録の模様。

☆原作と映画の違い (原作はてんとう虫コミックス版を参考とした。コロコロ連載時を参考とする場合はその都度説明する)

 ・映画冒頭に挿入されるテロップは、「制作総指揮 藤子・F・不二雄」。
 ・原作ではのびドラの空き地での会話から始まるが、映画ではのび太が読んでいる絵本の内容そのものから始まる。
 ・原作でのび太は小さい子供から絵本を借りて、創世神話のことを知るが、映画では本屋で立ち読みをしている。店の主人に怒られて逃げるという黄金パターンもあり。
 ・オープニング映像は基本的にCG。ドラ自体はメインタイトルが出るまでの時はCG、それ以降はセル絵のものが利用されている。
 ・出木杉の「多奈川絵巻」、原作では「百国峠」と書かれている地名が、映画では「百国山」になっている。
 ・ジャイアン家の外観、映画ではテレビアニメ版と若干異なる部分がある。
 ・特典として用意されたスネ夫テレカのデザインも原作と映画で異なり、映画では普通の立ちポーズでウインクまでしている。ある意味原作以上にスネ夫らしさを演出(笑)。
 ・原作でののび太と会社帰りのパパとの自由研究に関する話や、その後のパパママの会話は映画では一切なし。
 ・創世セットの中の「ベースマット」は、映画では「神さまマット」に変更。
 ・映画では地球を作り始めて2日目の、食卓でののび太とパパママの会話で、「地球を作っている」という会話が追加されている。
 ・ジャイアンが「新曲」と言って、自分の歌のテープを持ってくるのは原作、映画共に同じだが、映画では新作と言っていながらかかる曲はいつもの曲(笑)。
 ・息抜きでのび太が出かけた時、原作ではタケコプターを使っていたが、映画では徒歩。
 ・ジャイアン家の電話は原作ではコードレスだが、アニメではダイヤル式。
 ・映画では一面海の地球を見たのび太が、「ドラえもんみたい」と呟いている。エンディングのスタッフロール時に表示される日記にもその言葉が書かれており、このへんかなり芸が細かい。
 ・「神さま雲」は映画では「神さまの雲」。
 ・以前の会話と連鎖した、のび太とパパママの会話が映画では挿入されており、恐竜についての話題が出る。
 ・原作にはなかった恐竜時代の絵日記も映画では見られる。ドラ曰く「お化けみたい」な絵。
 ・ジャイアンが本と一緒に持ってきた手紙は、映画にはなし。
 ・石器時代から5人が帰る時、映画では「さよならにさよなら」が、ジャイアンが家に帰るまでの部分でかかる。一番のみ。
 ・御神矢は原作では「ごしんや」だが、映画では「おかみや」と言っている。同様に白神様も原作では「しらがみ」なのだが、映画では「しろかみ」となっている。
 ・ヨミの岩屋へと向かう際の休憩時のシーンは、映画ではだいぶ簡略化されており、ノビ彦が生贄の娘に食事をさせようとするシーンはない。従って3人もこの時点ではノビ彦を見かけてはおらず、岩屋に到達してから知ることになる。
 ・エアコンボールのデザインは原作と映画で異なり、映画版の方がだいぶ機械的。
 ・「タテ全自動式」は映画ではただの「タテ」。デザインも原作と異なる。
 ・生贄は原作では布をかぶっているが、映画では仮面をつけている。
 ・映画でのび太としずか達が別れるシーンで、のび太がフエルミラーを使った描写はなし。
 ・原作ではのび太は髪の毛を使ってノビ彦の子孫を探すが、映画ではタイムテレビを使っている。
 ・映画では野比奈を探し当てる段階から石ころぼうしを使用。
 ・野比奈の前に現れた昆虫人の変身態は、原作では貴族風の格好をしているが、映画では普通の村人風。
 ・野比奈がかえらずの岩屋から帰る時、映画では再び主題歌がかかる。
 ・昆虫人は映画では人間と同じ大きさ。
 ・現れた鬼は、原作では裸同然だったが、映画では鎧姿になっている。
 ・映画の「京東新聞」は、ご丁寧にも漢字にルビが振ってある(笑)。
 ・野美秀がしず代にプロポーズするタイミングは原作と映画で異なり、映画ではのび秀が大統領に会いに行こうとする際に行っている。
 ・野美秀たちが地上へ戻ろうとする時、映画では開戦してしまった時の様子を幻として見せられるシーンがある。
 ・映画では飛行船は結局砲撃されない。
 ・エンディング時、主題歌はみんなが地底世界を去る時からかかる。原作で言うラスト1ページ分がそこに相当し、エンディングロール部分は5人の作った「創世日記」が順番に表示されていく。表紙には「監修」としてドラの名前も一緒に書かれていたり、話の展開によってきちんと絵や文章を書いた人間が異なり、文もそれらしい内容になっているところが非常に細かい。個人的には虫が発生したばかりの地球を書いた絵日記で、「でっかいトンボを捕まえるのに、でっかい網が必要だと思った」というのび太の一文が受けた。最終ページには「大変よくできました」という文と花丸が赤ペンで書かれている。

☆ゲスト&声優紹介

ノンビ、ノビ彦、ビタノ(CV・林原めぐみ)
 ノンビはのび太の作った新世界の石器時代にいる少年。のび太そっくりの気弱な少年で、ジャイアンやスネ夫に似た友達に始終バカにされていた。
 弥生時代に相当する新世界で、スネ若隊長の部下である一般兵士を勤めているのがノビ彦であり、顔が似ていることから恐らくノンビの子孫と思われる。こちらもパッとしない役どころで、白神と呼ばれるムカデが現れた時は、生贄の娘と共に早々に退散してしまった。
 ビタノは地球内部の空洞に広がっている昆虫世界に住んでいる大学生。古生物学を専攻しているようで、大学の卒業論文の課題に5億年前の「神のいたずら」を取り上げ、真実を知るためにエモドランの協力を得て調査していた。大統領の息子でもあるため、かなり裕福な家に育っているらしく、調査の際には侍従格と思われる昆虫人数名と行動を共にしていた。研究のためとは言え、ジャイアンとスネ夫をつかまえてしまったりもして、かなりせっかちな性格らしい。
 演じた林原氏はアニメファンならずとも名前と声は知っているのではないかと思われるほどの有名な方で、90年代初頭の声優ブームの中心的な存在でもありました。「チンプイ」の春日エリ、「21エモン」のモンガーなどの藤子キャラを経て、ついにドラえもんにも参加しました。ドラに参加するのは念願だったらしく、当時のインタビューでも喜びを語っていました。他には「魔神英雄伝ワタル」シリーズの忍部ヒミコ、「スレイヤーズ」シリーズのリナ・インバース、「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ、「名探偵コナン」の灰原哀などがあります。

野比奈(CV・辻村真人)
 平安時代に該当する新世界でのノビ彦の子孫。きつい性格のおばあさんと2人暮しで、山で取った薬草を売って生計を立てているようだが、貧乏暮らしからは抜け出せていない。心優しい性格の老人で、チュン子を救ったことから地底世界へ行くこととなり、その際にもらった数々の宝物が、後の野美一族発展の基礎となった。
 辻村氏も大ベテランの声優さんで、舞台でも活躍されています。声優としては仮面ライダーシリーズを始めとする様々な作品での怪人役や、「忍たま乱太郎」の学園長、などがあります。あ、スイートミントの王様も…って、これは最近読んだ同人誌のネタ(笑)。

野美秀(CV・井上和彦)
 野比奈の子孫であり、明治風の時代で野美コンツェルンの会長を務めている。原作では「のび秀」だったが、映画では名前もすべて漢字。原作よりもスマートな体型?会長と言う立場だけのことはあり、冷静で決断力にも優れているが、その一方で行動派の側面も持ち合わせており、南極探検に際して自分から同行を願い出るほど。終盤で秘書のしず代にプロポーズしていた。
 井上氏は「サイボーグ009(第2作)」の009こと島村ジョーを筆頭として、二枚目キャラを演じることが多い声優さんで、この人の声がのび太顔の人物から聞こえてきた時は、正直驚いたものでした(笑)。他に出演作としては「蒼き流星SPTレイズナー」のエイジ、「名探偵コナン」の白鳥警部(二代目)、「フルーツバスケット」の草摩はとりなどがあり、最近は「リアルバウトハイスクール」や「人造人間キカイダー THE ANIMATION」などで、スタッフの立場としても活躍されています。

チュン子(CV・こおろぎさとみ)
 野比奈が助けた奇妙な生き物。ちょうど人間の子供くらいの大きさで、角を2本生やしたカブトムシのような格好をしている。昆虫人たちに可愛がられている存在らしく、たまたま人間の街へ遊びに行ったところを、鬼と勘違いした侍に斬られて怪我を負い、野比奈やのび太から介抱を受けた。
 演じるこおろぎ氏は、年齢が低めの可愛い女の子や、マスコットキャラクター(含む非人間)の声を演じることが多い声優さんで、「クレヨンしんちゃん」の野原ひまわりとか「ママは小学四年生」の水木なつみなどが有名所ですが、「魔物ハンター妖子5」で若返った真野まどかをやってたりして、一般的な女性の役ももちろん演じられます。テレビ版ドラにもちょくちょく出演されていますね。

出木松(CV・速水奨)
 明治風新世界の科学者で、世界初の南極大陸横断を成し遂げた人物。その際南極点に巨大な空洞を発見し、野美秀に空洞調査のための資金援助を申し入れた。空洞調査用の巨大飛行船は自分で設計したものであり、自ら探検隊の指揮を取って南極へ向かう。昆虫人の攻撃という自体に遭遇しながらも冷静さを失わない、芯の強い人物である。
 一度聞いたら忘れられない独特の低音域の声を出す速水氏は、そのとおりで大体はクールなキャラを演じることが多く、「キン肉マン」のテリーマン、「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」のナイト・シューマッハ、「赤い光弾ジリオン」のリックスなどを演じています。藤子作品では「青いストローハット」に出演されているくらいでしょうか。

源しず代(CV・玉川紗己子)
 野美秀の秘書を務めている女性。登山家でもあり、出木松博士の南極探検にも自ら志願したほどの行動派。聡明で落ち着いた女性であり、地底世界という未知の世界に入りながらも、取り乱すことなく推移を見守った。映画では野美秀のプロポーズにきちんと返事をしていなかったが…。
 演じる玉川氏は「日本誕生」以来の出演で、代表作としては「大草原の小さな家」のローラ、「NG騎士ラムネ&40」のココア、「逮捕しちゃうぞ」の辻本夏実あたりでしょうか。

大統領(CV・村松康雄)
 昆虫人の支配する地底世界の大統領で、ビタノの父親でもある。地底世界にやってきた出木松たち地上人一行に会見を申し入れた。野美秀に対しては低い物腰で応対したが、野美秀の説得や和平案にも応じることはなく、地上侵攻を推し進めようとする。
 村松氏は脇役として様々なキャラを演じていますが、代表作となると難しいですね。名前をすぐに思いつけるのは「劇場版 機動戦士ガンダム」のレビル将軍くらいでしょうか。

神(CV・大塚明夫)
 南極探検中の飛行船の前に現れた巨大な人影。ブリザードを伴い、光の中から現れるなど、神を思わせる登場の仕方だったが、ドラの「正体スコープ」で昆虫人たちが結集して作っていた幻だと見抜かれた。
 大塚氏も様々な役を演じられるベテランで、「サイボーグ009(第3作)」の005や「機動戦士ガンダム0083」のアナベル・ガトーのようなシリアスな役から、「名探偵コナン」での横溝刑事のようなコメディチックな役柄まで、自在に演じ分けています。本作では昆虫人の声も一部担当されていますね。

ヒメミコ(CV・巴菁子)
 のび太達が訪れた弥生時代の村を統治している女王。シャーマンでもあり、神のお告げと称して恵みの雨を降らせるべく、生贄を白神に捧げるよう命令を下した。
 巴氏は様々な作品で個性的な脇役を演じることが多く、最近で有名なのは「忍たま乱太郎」での食堂のおばちゃんでしょうか。「チンプイ」や「パラソルヘンべえ」、「ポコニャン」など、妙に藤子アニメに縁の深い人でもあります。

王弟(CV・加藤治)
 恐らくはヒメミコの弟?ヒメミコの受けた神からの啓示を、大衆に伝えることが役目であり、御神矢がドラのために遠くへ飛ばされた時は、ヒメミコの啓示を疑ったりもした。
 加藤氏も映画ドラの中では常連なので、代表作などについては過去作品の紹介ページをどうぞ。

源頼光(CV・稲葉実)
 原作では名前が出ていなかったが、恐らくは鬼を退治するために山へ向かった武将のことだと思われる。原作よりもだいぶカッコよくなっているのは、元ネタとなった伝承により近い印象を与えるためか?
 稲葉氏はテレビ版ではよく出演していますが、映画では前作「夢幻三剣士」に続いての出演になります。色々な作品で欠かせない脇役を好演していますね。

男(CV・中村大樹)
 チュン子を助けてくれた野比奈を岩屋でもてなした昆虫人の男。野比奈と対面している際は人間の姿に変身している。
 中村氏も映画ドラに出演するのは本作が初めてですね。主役・脇役を問わず様々な作品に出演されていますが、個人的によく覚えているのは「パワーレンジャー」の初代レッドことジェイソン役でしょうか(笑)。

女(CV・伊藤美紀)
 野比奈をもてなした昆虫人の女。映画版では天女のような服を着ているが、昆虫の姿に戻ると同時に、昆虫人の証である羽も出てくる。
 伊藤氏は「雲の王国」に続いての登板で、テレビ版の方でも時々声を聞きますね。最近は洋画の吹き替えでもよく声を聞くようになりました。

スネ子(CV・山田恭子(現・山田ふしぎ))
 平安風新世界でのスネ麻呂の娘。親に似たのかは不明だが生意気な性格で、山へ登った折に迷子になってしまう。鬼に襲われたものと勘違いされたが、後に無事発見された。
 演じた山田氏はなんと言っても「ウルトラマンキッズ」関連作でのマー役でしょう(超個人的)。後は「機動武闘伝Gガンダム」のホイとか、「マシュランボー」のレイでしょうか。そう言えば実写作品「アニメちゃん」にも出てたな。筆者はあの作品で初めてブースカの存在を知ったものです(笑)。

タイムパトロール(CV・秋元洋介、掛川裕彦)
 超空間を移動するのび太の前に現れたタイムパトロールの隊員達。後にビタノのタイムマシンを所属不明機として追撃するが、超空間の支流について知らなかったために逃げられてしまった。
 クレジットされているお二方については、あまり説明する必要もないでしょう。テレビ版でも時々出演されていますね。

運転手(CV・岸野一彦)
 セリフが少ないので断定はできないのだが、恐らくはビタノのタイムマシンを操縦していた昆虫人だと思われる。
 岸野氏もテレビ、映画共にドラ作品に出演することが多いですが、それ以外としては「キン肉マン」のキン肉大王、「勇者特急マイトガイン」の青木さんなどでしょうか。

本屋(CV・田口昂)
 のび太や子供達がよく行く本屋の主人。本作の冒頭で、立ち読みをしていたのび太を追い出している。
 田口氏も「夢幻三剣士」に続いての出演で、その他様々な作品で脇役をこなす、中堅の声優さんです。名前の漢字は実際には旧漢字を使用していますので、お間違えのないよう。

昆虫(CV・大滝進矢)
 恐らくは単なる昆虫人のことだと思うが、昆虫人自体、全編を通してたくさん出てきたので、どこの昆虫人をこの人が演じているかということは断定できなかった(笑)。
 演じた大滝氏も主役から脇役まで縦横にこなす方で、「戦闘メカザブングル」のジロン・アモスや「逆転イッパツマン」の隠球四郎などを演じています。

☆映画主題歌

 さよならにさよなら 作詞・武田鉄矢 作曲・千葉和臣 編曲・藤原いくろう 歌・海援隊
 長い映画ドラの歴史の中では初めて海援隊が主題歌を担当することとなった。その内容は過去に別れを体験し、それに寂しさを感じながらも生きることで再び別れた人と出会い、さらには新しい出会いを経験しながら未来へ向かって歩いていこうという、メッセージとしてはオーソドックスなテーマを叙情感たっぷりに奏でている。過去から未来へと流れていく時の中で、その時代時代に生きる人の出会いと別れが未来を作っていくという、本作の中で描かれているテーマと非常にマッチした物に仕上がっている詞が印象的だ。

☆自分勝手な感想

 本作「創世日記」、筆者は残念ながら初見時はあまり良い印象を持てませんでした。今までの冒険譚とは一線を画す話は今でこそ理解できるものの、当時は単にレギュラーメンバーの活躍が少なかったということで、好印象を持つことが出来なかったのです。そして悲しいかな、本作は現在においてもあまり評価は高くないように思われます。
 しかし今になって思うのは、本作で描きたかったのはのびドラやレギュラーメンバーの冒険話ではなかったのではないかということです。本作では序盤こそいつもの大長編のような運びですが、中盤からはのびドラさえも完全に傍観者の立場に回り、彼らの目を通して新世界の中での「のび太」と思しき一族の歴史が描かれています。その歴史自体は実際ののび太、及びのび太の一族が辿ったであろう歴史とはもちろん違うでしょうから、一概に比べることは出来ません。ですが宇宙創生からの流れの中に、1人の人間の、引いては人類という種、そして地球という一つの星の生き様を見ることができるのではないでしょうか?
 今の自分が存在するのは、過去の歴史の中で生きてきた多数の人々がいるからだ。そんな当然の歴史の推移を、「ドラえもん」という作品世界を通して作者は伝えたかったのではないでしょうか。現在から未来へと流れる時間は、未来においては過去のものとなる。しかし過去の事象を血肉として現在、そして未来が紡がれていく。つまり本作はより良い未来を作るために奮闘するという、中盤以降の大長編作品のテーゼを、主要キャラでなく新世界の人類、昆虫人全体によって描いたのではないかと思えるのです。その未来を築くために、様々な時代でのび太達が力を貸すというのは、ある種の理想が入り混じっているのでしょうが、最後には新世界は創造主たるのび太の手を離れ、のび太は元の日常に戻ります。それぞれがそれぞれの力で未来を作るためにそれぞれの世界へ回帰するという幕の引き方は、「未来を作るために困難な現実に立ち向かう」というテーゼを描いた「ねじ巻き都市冒険記」にも通じるものがあるのではないでしょうか。
 作者は遺作となった「ねじ巻き都市」で、未来を作るためには困難であっても現実に立ち向かい、それを克服しなければならないことを示唆します。本作はその前段階として、「未来とは過去から現在へと続く長大な時間の元に生まれるものである」という当たり前の考えが込められているのではないでしょうか。過去の時代に生きていた人々も、その時代時代で「現在」、そして「未来」のために生きていた。そんな人達の作った歴史と言う名の過去の元に現在があり、未来が作られていく。そんな全宇宙的、生物的営みをあえて「大長編ドラえもん」の中で丹念に描いたことの意味を、改めて考えてみなければならないと思います。



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