のび太と鉄人兵団

☆ストーリー概略

 偶然北極で手に入れた巨大ロボット・ザンダクロスと謎の少女リルル。彼女たちは惑星メカトピアから、人類を奴隷にする事を目的とする鉄人兵団の先兵だった。それを知ったドラえもんたちは兵団を鏡の中の世界におびき寄せ、地球を救おうとする。そして自分達のしていることの過ちに気づいたリルルは、自らの手で鉄人兵団の存在を歴史から抹消し、自分も消えていくのであった。

☆予告編 (ビデオに収録されているものを参考にした)

 1・「特報」のロゴの後に、ザンダクロス、空気砲を撃つドラ、爆風で吹き飛ぶのび太としずか、そしてドラのセリフが入り、メインタイトルはラストに登場する。
 2・映像は本編、予告第一弾、そして今回オリジナルと、三つの映像が使用されている。メインBGMは「わたしが不思議」。ちなみに「映画化7周年記念作品」らしい。

☆原作と映画の違い (原作はてんとう虫コミックス版を参考とした。コロコロ連載時を参考とする場合はその都度説明する)

 ・映画の開巻部は町の空撮映像から始まっており、エンディングへの伏線になっている。
 ・映画では冒頭、ミクロスを自慢するスネ夫とともにジャイアンがいる。
 ・映画では最初のスネ夫の自慢で、もうロボットの決闘の約束をしている。
 ・冒頭のドラ、映画ではアイスを食べている。
 ・映画では冒頭ののびドラの口ゲンカは原作よりも激しい。
 ・オープニングはこの時既に恒例となっていた、のび太の「ドラえも〜ん」の叫び声から始まる。メインタイトルは例によってCG。他の画面はCGのイメージ画像と、かつての「ぼくドラえもん」の時のバックのような、「ドラづくし」の画面である。
 ・原作での「道に迷って白クマに追いかけられて…」というのび太のセリフは、映画ではバッサリカット。
 ・映画ではドラに投げられた影響で、ザンダクロスの脳は庭に飛び出してしまっているので、ママが転ぶのは一回きり。その時に物置にしまう描写もある。
 ・原作にあった「ザンダクロスが商店街を歩くシーン」は映画にはなく、いきなり飛行シーンになっている。
 ・ザンダクロスの名前を付ける時、映画ではのび太は「アントニオ」とか「ダンプ」という案を出す。さすがにアニメでは「マジンガー」や「ガンダム」はまずかったらしい(笑)。
 ・ザンダクロスのレーザー砲は、原作と映画とでは若干形状が異なる。
 ・原作ではビルが壊れた後、三人はコクピットを降りるが、映画ではコクピット内で話が進んでいる。
 ・原作では居残りの時、ザンダクロスを失ったためにやる気が出ないと考えるのび太だが、映画ではザンダクロスを扱うことがおもしろくて勉強どころではない、と考えている。少々説明すると、コロコロ掲載時は映画の時のセリフを言い、その後でザンダクロスがビルを破壊するというストーリーの順番だった。映画化に際して話の順番を変えてしまったために、多少矛盾している言葉が生まれてしまったわけである。
 ・映画ではリルルが「土木工事用ロボット」と説明するくだりはない。
 ・映画で鉄人兵団襲来を知らせるために電話をかけている時、ドラが「この映画を見ている人以外は無理だよ」と、観客のことを口にする。映画ならではのお遊び。
 ・映画ではドラたち4人がスーパーで夕食の買い物をする時、BGMとして往年の名曲・「ポケットの中に」がかかる。そう言えば、この時期何故かたくさん聞いた記憶が…。
 ・映画ではジャイアンとスネ夫が寝る家を交換したり、眠れないのび太たち三人が夜更かしをするシーンはなし。
 ・リルルに飲ませる睡眠薬は、映画では「コンピューター睡眠薬」という名称がついている。
 ・映画と原作では鉄人兵団が鏡面世界に来た時のしずかの描写が異なり、原作ではドラが「改良型山びこ山」の説明をした後にリルルを探すシーンになるが、映画では、その前にリルルを探しており、スネ夫に連れ戻されるシーンになっている。コロコロ掲載時は後者のパターンになっており、掲載時ではリルルがいなくなったことを聞いても「しょうがない」と大して気に止めずにしずかを連れ戻すスネ夫が不自然であったためか、映画ではリルルがいなくなったことはスネ夫は知らないままである。コロコロ掲載時とてんコミ版の中間タイプとなっている。
 ・行方不明のリルルを見つけるシーンは原作、映画ともに大差ないが、コロコロ掲載時ではのび太との会話はない。
 ・映画ではドラたちのトリックが兵団にバレた時、スネ夫がリルルを疑う描写がある。
 ・湖での第一戦時、兵団が明確に撤退する描写が映画ではある。
 ・映画ではしずか達がのび太の部屋に来た時、ミクロスがのび太のママにお世辞を言う。「ロボットは持ち主に似る」良い例(笑)。
 ・しずか達がメカトピアへ行く時、しずかは「ワープ!」と叫ぶのだが、公開当時このシーンで何故か笑いが起こった。なぜなんだ?
 ・映画では、アムとイムの「競争回路」の説明はなし。
 ・クライマックスのシーンは原作、映画ともにほぼ同じだが、細かい相違点や特筆点は「感想」にて。映画では「わたしが不思議」がBGMとしてかかり、歴代作品で一、二を争う名シーンとなっている。
 ・エピローグは、映画ではのび太の教室にドラが来ない。
 ・エンディングは、のび太がリルルを見つけ、リルルが空に舞い上がって行くところから「わたしが不思議」がかかり、キャストロールの部分はのび太がリルルのことをみんなに話すシーンと、オープニングから連鎖する町の空撮、そしてリルルの描写で構成されている。

☆主要ゲスト&声優紹介

 リルル(CV・山本百合子)
 人間を奴隷とするべく地球攻撃を目論むメカトピアから、地球での前線基地の建設、及び地球の内部観察を目的として、土木工事用ロボット・ジュドと共に派遣された鉄人兵団の先兵。飛行能力を有し、指先から熱戦を発射する事も出来る。偵察を任務としているため、外見は完全な人間の少女である。メカトピアに対し揺るぎない忠誠を誓っていたが、次元震に巻き込まれて傷を負い、その際にしずかの介抱を受け、次第に自分達の行為に疑いを持ち始めていく。そして自分の求める真の理想に気づいた時、彼女は鉄人兵団、そして己の存在さえも歴史からリセットした。大長編史上最初で最後、最初から悲劇性を持って登場したメインゲストで、彼女の「心」の葛藤はこれまでの作品には全くないものであった。それが彼女の特異性を際だたせている。最後にのび太が見たものは幻だったのか?いや、彼女は「天使」となって現実に存在しているのだと信じたい。
 演じた山本氏は、今回のリルルやリメイク版「魔法使いサリー」のサリーのような可愛い美少女から、「超獣機神ダンクーガ」の結城沙羅、「聖闘士星矢」の魔鈴など、大人の女性まで演じ分けられる方です。最近はあまり聞いていませんね。

ミクロス(CV・三ツ矢雄二)
 スネ夫のいとこが作ったラジコンロボ。指鉄砲(笑)を武器とし、背中に収納されているプロペラを使って飛行することも可能。ドラによってコンピューターを取り付けられ、自由に行動し、言語も介せるようになった。おっちょこちょいで臆病な性格だが、やるときはやるという憎めないロボット。「過去を変える」という秘策は彼が考え出したもの?
 三ツ矢氏は「海底鬼岩城」、「宇宙小戦争」に続き、三度目の映画ドラ出演です。適度なアドリブが、ミクロスを魅力あるキャラクターとして確立させています。

ロボット隊長(CV・田中康郎)
 地球侵攻に襲来した鉄人兵団の隊長。人間に対して情け容赦のない攻撃を展開させる。原作と映画では若干デザインが異なるものの、基本的なキャラクターは双方ともに同じ。
 演じた田中氏については、全くわかりません。これじゃ情報を載せる意味がないですね(笑)。情報をお待ちしています。

ロボット兵士(CV・広瀬正志、橋本晃一)
 鉄人兵団のロボット達。一般兵と、マントを羽織っている親衛隊らしきものたちで構成されており、親衛隊は常に隊長のそばにいて報告を行う。世界各国の状況を調査したりもしていた。
 広瀬氏の出演作は、「機動戦士ガンダム」のランバ・ラルや「キン肉マン」のリキシマンなどがあり、現在は地球防衛企業・ダイガード」の大杉課長を演じていらっしゃいます。橋本氏は「聖闘士星矢」のキグナス氷河や、「機動武闘伝Gガンダム」のウォン・ユンファなどが有名です。マニアな方は「聖戦士ダンバイン」のフェイ・チェンカですかね(笑)。「ドラえもん」においては、「タイムカプセル」「タイムワープリール」で大人のび太を演じています。

ジュドのコンピューター(CV・加藤治)
 ジュド、つまりザンダクロスの頭脳として設置されるはずであった球状のコンピューター。ザンダクロスの部品や、基地の設営に必要な物資、そして兵団の誘導のための電波を発信する。翻訳こんにゃくを介して会話することが可能で、ドラたちに鉄人兵団襲来を告げた。性格は結構乱暴なようだ。
 加藤氏の出演作は、「マジンガーZ」のゴーゴン大公、「新造人間キャシャーン」のサグレー、「機動戦士ガンダム」のコンスコンがありますが、「ドラえもん」でのスネ夫のパパ役を忘れてはいけないでしょう。と言うか、僕が知りませんでした(笑)。

博士(CV・熊倉一雄)
 三万年前、自分の星の人間たちに失望し、無人のメカトピアでロボット・「アム」と「イム」を作りだし、天国のような世界を作らせるための礎を作る。しかしロボットの頭脳に「競争回路」を取り付けたため、いつしかメカトピアは弱肉強食の世界となり、しずかに懇願された博士は、病身の体をおして、ロボットの改造に着手する。
 演じた熊倉氏はテアトルエコー所属の大ベテランの俳優で、声優としても「ひょっこりひょうたん島」の虎ヒゲや「ヒッチコック劇場」でのヒッチコックの吹き替えをはじめとして代表作が多く、ジャンル的には初代「ゲゲゲの鬼太郎」主題歌担当として知られています。

ゲスト声優の情報に関しては、おおはたさんより頂いた情報を元に作成いたしました。この場を借りて、お礼申し上げます。

☆映画主題歌

 わたしが不思議 作詞・武田鉄矢 作曲・菊池俊輔 歌・大杉久美子
 「涙を流す」という自分の行為に揺れる少女の心の機敏を優しく歌い上げている。叙情的な歌詞は武田氏ならではのもの。「映画主題歌」と言うよりは「リルルのイメージソング」と言うべきものであり、本編ではエンディング、そして改造を完遂したリルルがしずかと手を取り合いながら光の中に消えていくという感動のクライマックスに使用された。

☆自分勝手な感想

 「そして、機械は天使になった…」
 この映画は歴代の大長編作品を俯瞰して見ると、かなり異質の物語です。ドラたち5人と鉄人兵団との戦争、という構図は別段珍しいものではないのですが、今作の特筆点は、任務と感情の狭間で葛藤するリルルという一つのロボットの描写でしょう。与えられた命令だけを遂行し、自分の理想と大儀を疑わない単純な機械。それが優しさという「心」で接するしずかに出会った時、人間の感情が芽生え始める。そして自分のなすべき道を見つけたロボットは、笑顔で自分達の歴史を消去した。リルルという名の天使となって…。この悲劇的かつ感動的な描写は大長編史上唯一のもので、それが「鉄人兵団」という作品を際だたせている要因でもあります。
 映画で白眉と言えるシーンは、リルルに対するしずかの態度。原作では明確にされなかった「リルルと友達になりたい」という思いを最初からあらわにしており、その思いはラスト、消えゆくリルルへの「あなたはもう、天使になってるわ」というセリフに結実されている。そしてそのすぐ後、余韻も残さずに一瞬で消えるリルル。一種残酷とも思えるこの演出に、リルルという少女の悲しみと崇高さが一層際だちます。そしてエピローグの希望に満ちあふれたラスト。公開当時、あのシーンを見てどれだけの観客が心洗われたことでしょう。「原作のアニメ化」という観点においても、そして「大長編ドラえもん」というカテゴリーの中でも、今作は最高峰に到達している作品だと思います。


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