必殺仕事人W

1983年10月21日〜1984年8月24日 全43回



☆オープニングナレーション
近頃世間に流行るもの
押し込み強盗 高利貸し
賄賂をもらう えれえ人
金 金 金の世の中で
泣くのは弱い者ばかり
涙をふいておいでなせえ
恨みを晴らす仕事人
陰膳据えて待っておりやす
(作:山内久司 語り:中村梅之助)

☆主題歌
「花の涙」
作詞:中西冬樹、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎孝路、歌:鮎川いずみ


 わかりやすさや明快さを基調として変遷を遂げてきた必殺シリーズだが、そのいわゆる「バラエティ路線」としては頂点を極めた作品が、シリーズ第21弾の本作である。
 あらゆる面で娯楽色を増した本作は、同時に仕事人たちの殺しのシーンにおけるカタルシスも追及し、結果として殺しのシーンそのものが一つの独立した見せ場として完成するに至った。裏を返せば殺しのシーンが必ずしもその時の話の筋と連鎖しない場合も起こりうるわけだが、殺しにおける迫力や華麗さはそれを補って余りある物となった。また本作では前々作「仕事人V」からレギュラー仕事人の増減がまったくないということも特徴的であり、つまり視聴者にとっては既知のキャラクターばかりが登場しているわけで、新作にありがちな新レギュラーメンバーの紹介編や過去編を初期に持ってくる必要がない分、既に完成されたキャラクターを用いての活劇が初期編から存分に描かれる事にもなっている。
 同時に本作ではセルフパロディとも言うべき笑いのシーンを今まで以上に大量に盛り込んでおり、新たにコメディリリーフとなる存在をレギュラーにしたこともあって、それらの要素が本作の印象を華やかなものとすることに成功している。しかし同時にドラマ性を高めるための新機軸も導入しており、秀を「子連れ仕事人」とすることで、既に完成されているキャラクターに新たな個性やドラマを与えようとしていた当時のスタッフの意欲が窺える。さらに本作は種々のバラエティ要素の影に隠れているが、外道仕事人との抗争劇が多い事も特徴の一つであり、仕事人同士の緊迫感溢れる戦闘シーンは視聴者に大きなビジュアルインパクトを与える事となった。
 本作は濃密なドラマツルギーを排除し、代わりに万人に認知してもらえる単純明快なストーリーと、迫力と様式美が溢れる殺しのシーンをメインとし、時々悪乗りする事こそあったものの、適度な笑いのシーンをスパイスとすることで完成した。この作劇法の是非については問うことはしないが、これによって必殺は老若男女に前例のない大人気を獲得する事となり、歴代最高の視聴率、及び平均視聴率をマーク、時流の勢いに乗って初の映画化作品「必殺!THE HISSATSU」が制作されたり、サウンドトラック「必殺BGM全集」が発売されるまでに至る。本作はあらゆる面において「必殺フィーバー」の頂点を極める作品となり、それは「必殺シリーズ」の名と存在を、一般の視聴者に改めて認知させる事となった。本作はバラエティ路線の必殺作品としては極めて高い完成度を誇っているが、それにより後のシリーズにもこの路線の影響を色濃く残すことになり、功罪はともかく、様々な点で今後の必殺シリーズの方向性を決定づけた作品ということができるであろう。


 ☆登場人物

 中村主水(演・藤田まこと)
 「仕事人V」での解散後は例によって裏稼業から手を引いていたが、そんな中、老中同士の裏抗争が勃発し、多数の仕事人を巻き込んでの抗争劇は否応なく主水も巻き込み、かつての仲間と共にその抗争に終止符を打ち、同時に裏稼業も再開する。
 主水のキャラクターシフトそのものに大きな変更はなく、厳格な元締のいないチーム内では元締格としての存在感を発揮した。若い仲間相手に強がる事もあれば、熟達の仕事人であるおりくとは対等に会話し、時折心情を吐露する事もあるなど、多面的な部分を見せて深みを増してもいる。殺し技はほぼ「せこ突き」に終始しており、太刀を用いての剣戟を演じる事はほとんどなくなった。
 少ない仲間と共に外道組織・六文銭一味を撃破し、裏の世界の秩序を守ることに成功したが、最終編での死闘の果てに秀の素性が奉行所に知れ、旅立つ秀たちを見送ると同時にチームを解散した。

 秀(演・三田村邦彦)
 今回は幼い少女・お民を連れて江戸に舞い戻ってきた秀。秀は殺しという己の行為への贖罪の意味もこめて、お民を育てる事を決意したのである。
 ぶっきらぼうだが情に厚い職人気質という性格は変わっていないものの、今作ではお民の兄的存在として落ち着いた大人の男性的な一面を見せるようになり、新たな魅力の一つとなっている。殺しにおいても縦横無尽に動き回る俊敏さと、簪刺しによる瞬殺技の腕は相変わらずだった。
 最終話では自分の殺しの現場を少女に目撃され、始末しようとするも、その少女にお民の面影を重ねてしまったために手を下す事が出来ず、そのために指名手配を受ける事になってしまい、お民を連れて夕陽の海へと船出して行った。

 勇次(演・中条きよし)
 「V」での最終話で江戸を去った勇次だが、江戸に戻ってきたおりくとともに抗争に巻き込まれる形で裏稼業に復帰を果たす。
 表の顔としては粋な大人の男としての魅力を見せるが、その一方で仲間との出会いと別れを繰り返すことに思うところがあったのか、必要以上に表の世界で仲間となれ合うことを拒むようにもなった。本作では中盤から「南無阿弥陀仏」と大きく書かれた殺し装束を着用し、それが本人のトレードマークとなった。
 六文銭一味とも苦闘の果てに決着をつけ、最終話では仲間と協力して激闘に終止符を打ち、母・おりくとも円満に別れて江戸に残った。

 おりく(演・山田五十鈴)
 勇次の母親である三味線引き。「V」での解散劇には立ち会うことなく旅を続けていたが、再び江戸に舞い戻り、裏稼業を再開することとなる。
 殺しの技、そして人生においても熟達した大人の女性で、しばしば己の意地を持ち出して衝突しがちな主水と秀、勇次の間に立ち、両者の仲を取り持つ橋渡しの役を演じていた。三味線撥を用いての殺しも冴え、時には鈴の音を用いて催眠術を使ってくる強敵に、自身の生業である三味線を披露、効果を打ち消す事にも成功している。
 六文銭とは過去に何かしらの関係があったようだが、主水と協力して強敵を葬り去っている。そして最終話では江戸に残るという息子と別れ、再び1人で旅立って行った。

 西順之助(演・ひかる一平)
 受験生としての平凡な生活を送っていた順之助だが、集まってきたかつての仲間が窮地と知り、再び裏稼業に復帰する事を決意する。
 今作では1話においてライデン瓶を父親に壊されてしまっており、新たな武器として投石器を発明した。アーム交換で飛距離を調節する事のできるこの道具は、殺しこそ出来ないものの、他のメンバーの殺しを円滑に実行させるためのアシストとして大いに役立った。
 その事もあってか、よく加代とつるむ事が多くなったが、さらに順之助に惚れこんでしまったオカマの玉助に追いまわされたりして、騒がしい日常を送っている。まだ未熟だからか、それとも前途ある若者であるためか、六文銭一味との戦いには参加させてもらえなかったものの、最終話では去り行く仲間を見送って、再び静かな日常に戻っていった。

 加代(演・鮎川いずみ)
 例によっていつの間にか江戸に舞い戻っていた加代は、仲間と共に再び裏稼業を開始、情報収集に精を出すことになる。
 表稼業は今まで通りのなんでも屋であり、秀と同じ長屋に住んでいるのでお民とも親しい間柄である。今作では殺しの際に順之助に協力し、投石器使用のサポートを行っている。
 乗り気ではなかったものの六文銭一味との死闘を果たし、最終話でのチーム解散に伴って再び江戸を離れて行った。

 筆頭同心・田中(演・山内敏男)
 今回も残留する事と相成った、主水の上司の筆頭同心。
 キャラクターシフトが大幅に変更しているという事はなく、オカマ口調や仕草を用いての主水との掛け合いは、本作を彩る重要な要素となった。特にオカマぶりには磨きがかかり、本作で初公開された自室は、まるで女性のものではないかと思えるような飾り付けが施されている。

 お民(演・林佳子)
 江戸に戻ってきた秀が旅先から連れてきた少女。秀が旅の最中に仕置した男の遺児であり、本人は当然その事実は知らない。
 明るく優しいごく普通の女の子だが、父親との死別がいまだショックなのか、夜に1人きりになることを怖がるため、秀はお民が眠りについてから仕置に出発している。それでもたまに目を覚ましてしまう事もあった。
 その笑顔は殺しという裏の世界に生きる秀にとって、まさに生きる理由とも言うべきものだったが、秀が指名手配を受けてしまったために、最終的には秀に連れられて夕陽の海へ旅立って行った。秀の裏の素性は最後まで気がつかなかったようである。

 玉助(演・梅津栄)
 一応は広目屋という肩書きを持ち、化粧品を宣伝したりしている中年のおじさんなのだが、筋金入りのオカマでもあり、順之助に一目惚れして追いかけまわす日々を送っている。「じゅ〜んちゃん♪」という嬉しそうな呼び声と共に唐突に現れ、瞬時に画面を独占してしまう強烈な個性が持ち味。
 順之助も煙たがっているものの、決して嫌悪感は抱いていないようで、それなりに仲の良い付き合いをしていたようである。

 中村りつ、中村せん(演・白木万里、菅井きん)
 例によって主水をいびる2人。六文銭一味との死闘の際には、せんが敵側に主水は仕事人だと吹き込まれ、主水の正体を疑い出すという緊迫したシーンも登場した。



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