必殺仕事人X激闘編

1985年11月15日〜1986年7月25日 全33回



☆オープニングナレーション
寂しさに 宿を立ちいで眺むれば
空に真っ赤な雲の色
この世は真っ赤な嘘ばかり
嘘と悪とで押しつぶされた
お前に代わって悪人どもを
真っ赤な血潮で染め上げましょう
仕事が済んだその上は
これやこの 行くも帰るも別れては
知るも知らぬもお前と私
仕事人の掟でござんす
(作:山内久司 語り:芥川隆行)

☆主題歌
「女は海」
作詞:京本政樹、作曲:京本政樹、編曲:京本政樹・大谷和夫、歌:鮎川いずみ


 前作「必殺橋掛人」で久々のハード志向を打ち出した必殺シリーズは、再び中村主水を迎えて「ハード時代劇」という原点への回帰を目指す事になる。橋掛人に続いて名匠・工藤栄一監督を迎えて開始された後期シリーズ屈指の意欲作が、シリーズ第25弾の本作である。
 本作のトピックスとしては「新必殺仕置人」以来のシステムとなる、裏稼業を束ねる巨大組織・闇の会が登場、殺しを競りにかけるというアナーキーな描写の復活と共に、物語展開の自由度に幅をつけることにも成功しており、旧来の仕事人シリーズが持っていたパターニズムに堕する事をこれによって防いでいる。さらに「はぐれ仕事人」の存在も本作の重要な彩りとなった。主水チームと共闘しながらも完全な仲間にはならず、一線を引いた形で接しているというその微妙な関係が絶妙なコントラストを生み、さらに3人のはぐれ仕事人も個々に魅力的に描かれており、特に壱は登場回数の多さとその奔放な性格とが相まって、後期のキャラクターとしては高い人気を誇るに至った。その一方で演出も、増加したレギュラー仕事人を過不足なく丁寧に描写しているという点を忘れてはならない。
 ドラマについても工藤監督が手がけた初期3話を始めとして、難関突破や純粋な仕置遂行に的を絞った作品が前半は頻出し、それによって改めて裏稼業におけるハードさや厳しさといったものを描く事に成功している。人間ドラマに関しても、類型的なものから少しずらして描かれる事が多くなり、一筋縄では行かない物語展開は視聴者の興味を誘った。殺し技についても従来のようなビジュアルインパクトを重視したものではなく、リアル志向へと方向修正を行っており、さらにレントゲン描写こそないものの、壱の怪力による頚椎へし折りは、かつての念仏の鉄を想起させて話題をさらった。加えて本作放映時と同時期に公開された映画「必殺!V裏か表か」も工藤監督が手がけ、後期作では例を見ないほどにハードで殺伐とした雰囲気に包まれた本作は、仕事人シリーズに慣れきってしまった視聴者に驚きを与えると共に、必殺シリーズが本来持っていた面白さを再認識させる事になった。
 しかしハードな空気を内包した作品世界は前半のみにとどまり、後半では従来の仕事人シリーズと同様のルーティンワークとなってしまう。これは今となっては残念ではあるが、放送当時の視聴者の求めていたものと、制作側の意図とに微妙なズレが生じてしまっていたと考えざるを得ない。だが必殺シリーズの魅力の一つである「キャラクターの魅力」は最終回まで色あせる事はなく、無事に終了を迎える事になる。今作は番組初期の企画意図が貫徹されたわけではないが、それでも必殺が本来持っているハードさや渋さを新しい世代の視聴者に教えるという意味では重要な役割を果たした。加えてキャラクターの魅力が今作を支えていたのも疑いのない事実であり、これによって本作は独自のオリジナリティを発揮することにもなった。しかし結局その後のシリーズはソフト化し、バラエティ路線へ戻る事になってしまう。今となっては結果論ではあるが、今作で打ち出された方向性を継承する事ができなかったということは、今更ながらに惜しまれてならない。


 ☆登場人物

 中村主水(演・藤田まこと)
 「仕事人X」での解散以降は、奉行所による仕事人狩りが激しくなり、知己の間柄である仕事人の元締・丁字屋半右衛門の処刑を目の当たりにしたこともあって、裏稼業から完全に手を引いていた。しかし表の仕事においても雑訴詮議所係、つまり体のいい「何でも係」に配置換えとなってしまい、あまり状況には恵まれていない。そんな中、いつの間にか江戸に舞い戻っていたかつての仲間と再会し、さらに闇の会やはぐれ仕事人との邂逅を経て、再び仕事人としての道を歩みだす事になる。
 本作では「闇の会」傘下の仕事人として活動する事になるが、既に裏稼業における経歴も相当のものであるために、闇の会元締からも時として優遇扱いを受けるほどになっている。殺し技は基本的に不意打ちによる一突きだが、今作では久々に立ち回りも幾度か披露、以前に開発した仕込み刀も状況に応じて使用する事があった。当初は金でしか繋がっていないはぐれ仕事人に一定の距離をおいて接していたが、次第に壱を始めとして仲間意識を抱くようになっていく。
 最終話では外道の手によって闇の会が壊滅し、さらに仲間達の素性が奉行所に知られるという窮地の中でチームを解散するが、これより少し後に真砂屋一味との極めて個人的な死闘を展開、ボロボロになり、多くの仲間を失いながらも決着をつけた。

 組紐屋の竜(演・京本政樹)
 「X」最終話で江戸を去って行ったが、いつの間にか江戸に舞い戻っていた仕事人。日本橋の近くに居を構えて今まで通りの組紐屋を営み、女性客や問屋からの評判も高い。しかし裏では凄腕の仕事人で、組紐を使った絞殺技も、今回は紐の先端に分銅を取り付け、それを使う事で支点を作り、それも利用して標的を縛り上げる。
 基本的にクールで、事件にも積極的に介入する事は少なく、情報がある程度集まってから行動する事が多い。以前からの仲間であった政やはぐれ仕事人たちともつるむ事はほとんどなく、孤独を愛するという印象さえ受ける。
 最終話では崩壊した闇の会の流れを受けて、チームの仲間と別れを告げて江戸を発つ。しかしその後、闇の金融業界との抗争の中で自ら囮役となり、多数の刺客に斬られて惨死した。

 鍛冶屋の政(演・村上弘明)
 竜と同じく江戸に帰ってきていた、主水の仲間の仕事人。商売を以前の花屋から鍛冶屋(打物屋)に変更しており、その経緯は不明。仕事における得物も季節ごとの枝木から組立式の手槍に変更された。
 ぶっきらぼうで冷めた視点を通そうとするものの、内にある激情を隠す事ができない好漢で、事件の被害者に対しても同情的な感情を持つことも多い。日常生活においても面倒見がいいので、多くの人に好かれている。身のこなしも早いので潜入捜査をすることもあり、情報収集にも一役買っている。当初ははぐれ仕事人をライバル視していたようだが、次第に壱とは気の置けない悪友として付き合うようになっていったようだ。
 最終話では一旦江戸を去るが、その後再び江戸に戻ったようで、後に良き友人となる飾り職人の秀との初邂逅を果たし、真砂屋一味との死闘を展開した。

 壱(演・柴俊夫)
 かつては丁字屋半右衛門の下で働いていた仕事人だが、元締の死によって仕事を取ることができなくなり、主水チームの助っ人として参入する事になった「はぐれ仕事人」。1話では「目明しの十一(とっぴん)」として登場していたが、それ以降は表の顔を持たない遊び人となった。
 お調子者で減らず口を叩く事が多い陽気な性格の持ち主で、その上無類の女好き。金にがめつく仕事料の分け前を多く取っていってしまうことが多いので、加代からは煙たがられる事もある。しかし実力はその態度に裏打ちされたものになっており、その怪力で相手の首を締め上げ、頚椎をへし折るという豪快な方法で悪党を地獄に送る。
 はぐれ仕事人の3人の中ではリーダー格のようで、他の2人と主水チームとの橋渡しになることもあった。幼い頃、悪党の仕組んだ罠によって母親と生き別れになってしまったという過去があり、そのため母親の面影を持つ女性に情をうつすこともあった。あまり感情を素直に吐露する事はないが、その裏には人並み以上の情や怒りを秘めている。
 最終話では笑顔で仲間と別れたが、その後の真砂屋一味との死闘では最後まで多勢を相手に大乱闘を展開、多数の敵に攻撃を受けながらも最後まで抵抗し、そのまま息絶えた。

 弐(演・梅沢富美男)
 はぐれ仕事人の1人。表の仕事が不明の自称役者崩れで、時には女形姿で座敷に上がり、芸を披露する事もある。扇子に仕込んだ鋭利な刃物を裏での得物としており、一瞬の隙をついて敵の急所を切り裂いたり突き刺したりする。その際には女形姿となって相手を翻弄する事もある。
 登場回数が少ない事もあって、私生活については不明な部分が多い。クールでニヒルな性格であり、事件の情報を得るために利用した女が殺され、その死体を見ても表情を変えないというプロらしさを見せてもいる。壱と同様に頼み料の分配にはがめつい。
 最終話でチーム解散と共に江戸を去っていくが、その少し後に起きた闇の金融集団との戦いには参加しておらず、その後の去就は一切不明である。

 参(演・笑福亭鶴瓶)
 はぐれ仕事人の1人。関西弁を使う陽気でとぼけた性格だが、奉行所に堂々と現れて主水と連絡を取り合うという大胆不敵な行動力を備えてもいる。表の稼業ではポッペン屋を営んでいるが、他のはぐれ仕事人と同様に金にはがめついため、時には他の商売を行う事もあり、加代さえも出し抜くことがある。
 殺しの得物には表稼業と同じくポッペンを使い、先端の球形部分を割って鋭利に欠けたポッペンを標的の額に突き刺して止めを刺す。仕事人としての経歴もそれなりのようだが、若干気の弱い部分もあり、仕事に対して愚痴を言う事もままあった。しかし仕事の際にはプロとしての態度をとり、冷徹に仕置を推敲する。
 最終話には登場しなかったがそのまま江戸に居残っていたようで、同じく江戸に戻っていた加代との付き合いも続いていたようだが、真砂屋一味との戦いで捕らえられ、他の仕事人への見せしめとして殺された上に晒し首にされてしまうという悲劇的な最期を迎えた。

 加代(演・鮎川いずみ)
 「X」最終話の後もいつの間にか江戸に舞い戻っており、しかもいつの間にか闇の会傘下の仕事人として活動していた。北町奉行の仕置依頼を引き受けた事からかつての仲間を再び裏稼業に誘う。
 今までと同じく表稼業ではなんでも屋を営み、金にがめついので後先考えずに難関仕事を引き受ける事が多く、そのたびに主水の注意を受けてしまっている。どうしても仕事の依頼をとるために、他の元締を買収する事もあった。
 最終話で再び江戸を去って行ったが、それも少しの間で再び江戸に戻ってきていたようで、闇の金融業界との戦いでは直接戦闘に参加こそしなかったものの、悲壮な覚悟で戦場に赴く主水たちを敢えて見送らずに立ち去った。

 闇の会元締(演・森秀人(1〜10話)、東悦次(11〜18話)、須永克彦(19〜33話))
 奉行所における仕事人狩りによって、行動が著しく制限された闇の仕事人にとっての唯一の頼み口である巨大組織「闇の会」を束ねている元締。その正体は一切不明で自分から口を開く事も滅多になく、一緒につれている猿の叫びによって他の仕事人を萎縮させている。
 主水チームにはかなり信頼を置いているようで、1話ではギリギリの賭けに出てまで主水を裏稼業の道へ戻そうとした。最終話で「新・闇の会」を名乗る上方の外道組織の手にかかり、殺されてしまう。

 影(演・加治春雄)
 元締の側近的存在。闇の会の進行役を勤める事が多く、その技量の程は不明だが、どうやら壱と同様に力技を用いての仕置を得意としているらしい。
 最終話では上方の外道組織によって、大して反撃する事もなく殺されてしまった。

 筆頭同心・田中(演・山内としお)
 「新仕事人」以来ずっと残留し続けている、南町奉行所の筆頭同心。基本的な性格や態度は今までとあまり変わってはいないが、女郎の一斉検挙などでは陣頭指揮を取って行動するなど、リーダーシップも十分に備わっている。
 主水に対しても今まで同様に蔑視した態度が続くが、それでも囚人護送の供に主水を選ぶ事もあり、仲が悪いというわけではないらしい。悪人によって人質にされてしまう事もあった。

 小物・六平(演・妹尾友信)
 主水の部下。詮議所に届けられた訴えを調べる際に、主水と共に行動する事が多い。主水の八つ当たりの対象になってしまうことも多いが、あまり悪い印象を持っているわけでもないようで、一緒に行動する事が多かった。

 中村りつ、中村せん(演・白木万里、菅井きん)
 主水をいびるのはもはや相変わらずの2人。主水が真砂屋の策略にはまって進退窮まった時は、武士の妻と姑として毅然とした態度を見せた。



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