必殺剣劇人

1987年8月7日〜1987年9月25日 全8回



☆オープニングナレーション
あの町 この町 陽が暮れて
世の中 闇に沈む時
昼間 隠れたお化けども
大きな顔で歩き出す
金 金 金の亡者たち
土地を喰ってる赤鬼や
権力欲しい青い鬼
どこかのお国に似ています
あまりと言えばあんまりな
百鬼夜行の鬼どもを
バッタ バッタと斬り倒す
ゲゲゲの鬼太郎 桃太郎
今度の必殺剣劇人
大人のお伽噺です
(作:山内久司 語り:加賀まりこ)

☆主題歌
「ついて行きたい」
作詞・作曲:たきのえいじ、編曲:桜庭伸幸、歌:テン・リー


 1972年より放送が開始され、以後15年もの長きに渡って視聴者に娯楽を提供してきた「必殺シリーズ」であったが、ついに終焉の時を迎えることとなった。これは無論視聴率の問題や視聴者の飽きと言う現実もあったが、それ以上に影響を及ぼしていたのは、当時花盛りであったバブル景気である。消費は美徳となり、金こそ第一と言う時代の風潮に、わずかの金で晴らせぬ恨みを晴らす必殺シリーズの基本テーゼは受け入れられなくなってしまっていたのである。
 そんな中で最終作として制作された第29弾「必殺剣劇人」は、それまでのシリーズとはまったく趣を異にする作品として誕生した。往年の無声映画的大チャンバラ活劇作品の要素を大胆に取り入れたのである。派手な衣装を纏う主人公の三人組、その三人が披露する派手な立ち回り、ケレン味溢れる仕掛けなど、いわゆる「ご存知もの」的な作りが目指されることになった。これには無論「先祖返り」の意味があるが決してそれだけではなく、新しい時代劇を常に摸索してきた本シリーズが、最後の最後に全ての時代劇の原点たる大時代劇の作劇に立ち返り、そこからさらなるシリーズの可能性を見出そうとしたのである。
 さらに本作独自の特色として、主人公たる殺し屋の娘が、間接的な立場とは言え、全話通しての殺しの「頼み人」となることが挙げられる。三人のうち誰かの子供であるこの娘・お七は、佐渡から出てきた山出し娘であるが故に、江戸で様々な騒動を巻き起こす。今作はこのお七と、ある日突然「父親」になってしまった主人公連との葛藤や交流が主軸となっており、ある種のホームドラマ的な味わいを持っている。そのため従来のシリーズが持っていた人間の深い情念や怨念と言ったダークサイドの描写が描かれなくなったのも事実ではあるが、元来が明朗なカラーを持つ本作には妥当な措置であった。主人公の殺し屋三人組は、当時の日生劇場ミュージカル「三銃士」「四銃士」の主役トリオをそのままキャスティングしたものであり、この明るい世界観にマッチしていたことも特筆事項であろう。
 残念ながら本作は全8話というシリーズ最短話数で幕を閉じることになるが、最終話にはシリーズの顔と言うべき中村主水がゲスト出演し、主人公三人も往年の仕置人たちのコスプレをして、それぞれの技を用いて標的を仕留めると言う、ファンには嬉しいサービスを披露した。最終作ではありながらこの陽性の空気が意外に受け入れられたのか、実現には至らなかったものの、本作終了後に2時間スペシャル版の企画が立てられている。
 その特異な作劇からとかく色物と見られがちな本作であるが、最後まで視聴者へのファンサービスに徹したその姿勢は、常に新たな領域を摸索して視聴者を楽しませてきた「必殺シリーズ」根幹の理念に適った姿でもあった。最後の最後にまたも新たな可能性を見出した本シリーズではあったものの、今作を最後に連続テレビドラマとしての作品は終了し、以後数年は単発のスペシャルを何作か放送することになり、そしてちょうど4年後の91年、「必殺仕事人・激突!」として、ブラウン管に帰ってくることになるのである。


 ☆登場人物

 カルタの綾太郎(演・近藤正臣)
 普段は賭場の札撒きを生業としているが、実はかつて世間を騒がせた義賊「幻の世直し三人組」のリーダー格でもある。「風雲竜虎編」最終話において江戸城の御金蔵から一万両を見事に盗み出し、その半分を貧しい人々に分け与え、残りの半分を仲間と共有、現在は悠々自適の生活を送っている。
 ところが相棒である清次、松坊主らと共通の恋人だったお百が八丈島で産んだ娘・お七が現れたために生活は一変、彼女の夢を叶えるため、許せぬ悪を討つ「剣劇人」となった。
 殺しの際には白装束とイカ頭巾をかぶり、大刀と長刀の二刀流で鮮やかに大人数を斬り倒す。決めゼリフは「寄らば斬るぞ!」。しかし剣劇人は悪の中枢にいる人物を仕置することが目的であるため、必要以上に命を奪うことはしない。
 三人の中では一番の知性派で、メンバーを取りまとめる重要な役割を担っている。

 早縄の清次(演・田中健)
 元義賊で、「世直し三人組」の一人。他の二人と同居しながら毎日をのんびり過ごしている。ちなみに三人の住まいは入り口は三つあるが、中に入ると一つになっているという独特のもので、床下には盗んだ金の半分、五千両が隠してある。
 表の稼業は火消しであり、裏稼業で使用する得物も鳶口と鈎縄である。雑魚との乱闘の際には鳶口で殴りつけてダメージを与え、悪党を葬る時にのみ、鳶口先端の鈎爪で刺殺したり、鈎縄で締め上げたりする。通り名のままに投げ縄も得意。殺し装束は火消し風のものであり、彫り物が描かれた襦袢を着込んでいる。決めゼリフは「おととい来やがれ!」。
 三人の中では一番若いためか、その思考や行動にも若さやそれ故の青さが滲み出ることが多かった。その一方で、ケーナと言う外国製の縦笛を吹くという、意外な特技を持っている。

 すたすたの松坊主(演・あおい輝彦)
 綾太郎や清次と同じく、「世直し三人組」の一人。普段は「すたすた踊り」という踊りで安全と健康を祈る厄払い師として生活している。
 仕置の際は派手な衣装を纏い、棒術を用いて雑魚を蹴散らし、棒の中に仕込んである鋭利な刃を用いて標的を刺し殺す。また頭の鉢巻には何本かの手裏剣をつけており、それを敵に投げつけることもあった。最後に決めポーズを取る際には、空気で膨らませた紙製の大ガマを用意し、残った雑魚を気絶させる。決めゼリフは「むふふ、バカめ!」
 普段においても派手な衣装を着ていたりして怪しげな風貌だが、意外と真面目な性格でもあり、江戸へ出てきたばかりのお七に、生きる上での心構えを丁寧に諭すこともあった。

 お七(演・工藤夕貴)
 三人組共通の恋人であった女性・お百が流刑によって流された八丈島で産んだ娘。母から亡くなる直前に父親の存在を聞かされ、父に会いたい一心で江戸へとやってきた。三人のうち誰が父親かはわからないものの、当面は三人と暮らすことになる。
 佐渡から江戸へ出てきたばかりのため、良くも悪くも世間知らずであり、後先を考えずに行動するその無鉄砲さには三人も苦労させられている。気も強く、三人に初めて出会った際には、突然三人をひっぱたいて驚かせた。口癖は「夢みたい、カモノハシみたい!」。
 正義感が人一倍強い性格でもあり、悪しき者に虐げられる善良な弱者のため、悪党に裁きを与えるという「夢」を抱いている。この夢が、三人が剣劇人として活動する際の直接的な理由となった。悪を倒す剣劇人には素直に憧れているため、当初は三人の正体を知らないものと思われていたが、実は最初から剣劇人の正体には気づいていた。

 お歌(演・二宮さよ子)
 場末の飲み屋を切り盛りする女将。だがその裏では殺しの依頼を引き受ける仲介人であり、三人の剣劇人たちとも旧知の間柄であった。
 三人は大金を所持しているために金銭的な執着はほとんど持っていないのだが、そんな彼らに「三途の川の渡し賃」である4文銭を一枚ずつ渡すのが、彼女の仕事である。
 表稼業ゆえか、気風のいい姉御肌の好人物であり、同性ということもあって、お七の姉的立場になって話をすることも多かった。裏稼業のキャリアもそれなりに長いようで、中村主水の存在は既に認識していた。



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