必殺必中仕事屋稼業

1975年1月4日〜1975年6月27日 全26回



☆オープニングナレーション
金に生きるは 下品に過ぎる
恋に生きるは 切な過ぎる
出世に生きるは くたびれる
とかくこの世は 一天地六
命ぎりぎり 勝負をかける
仕事はよろず 引き受けましょう
大小遠近 男女を問わず
委細面談 仕事屋稼業
(作:早坂暁 語り:藤田まこと)

☆エンディングナレーション(1話のみ)
どうせあの世も 地獄と決めた
命がっさい 勝負にかけて
燃えてみようか 仕事屋稼業
ようござんすね ようござんすね
勝負!
(作:早坂暁 語り:藤田まこと)

☆主題歌
「さすらいの唄」
作詞:片桐和子、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:小沢深雪


 当時裏番組で人気を博していた「傷だらけの天使」(日本テレビ系)を意識して、殺しやドラマなどの様々なシーンに「ギャンブル」という要素を加えることで新機軸を打ち出したシリーズ第5弾。
 全編を博打というギャンブルで覆い尽くしている感のある本作は、ストーリーそのものをギャンブル性の高いものとし、この時期既にシリーズものとして定着していた必殺シリーズに生じていたある程度の「予定調和」を見事に突き崩すドラマが展開、殺しのシーンさえも既存の作品のようにうまく行かず、ハプニングが続出する。その予定外の出来事をどううまく消化して仕置を遂行するかという緊張感が各話連続で登場し、視聴者の緊張感を高めるのに一役買っていた。さらに前作同様、ドラマの「縦糸」となる要素を今回も盛り込んだ。それは仕事屋・政吉と元締・おせいが、生き別れた親子であると言うことである。だが二人そろってこの稼業に足を突っ込んでしまったため、親子の名乗りをしない決意を固めながらも「母親」のように政吉を見つめるおせいのドラマは、前作での糸井貢のドラマ以上に共感を得た。
 また、主人公である「仕事屋」のメンバーもまた今までの仕置人とは違う異質の殺し屋である。仕事屋である半兵衛と政吉は1話で成り行き上、裏稼業のことを知って殺し屋となるが、ケンカこそするものの彼らは今までそのような裏稼業とは一切無縁の世界に住み、武芸の心得などあるはずもないいわゆる「素人」である。そんな彼らがある日突然仕事屋になってしまったのだ。前作「仕留人」での糸井貢と同じような状況に追い込みながら、貢とは180度異なる個性を持った半兵衛と政吉は、裏稼業の道を図太く生き抜くことになる。素人の殺し屋を支えるものは、二人が博打で鍛えた「度胸」のみ。仕置遂行時に発生する様々な困難を克服して、いかにして標的を仕留めるかというスリリングな展開は今まで以上にファンの共感を浴び、視聴率もついに30%の大台に達するという快挙を成し遂げた。
 だが番組も調子が出てきた中盤において大事件が発生する。関西地区での放送ネット変更により関西地区以外では2クール目は今まで放送されていたTBS系からNET(現テレビ朝日)系に移動、放送時間も土曜午後10時から金曜午後10時に変更され、しかも人気バラエティ「うわさのチャンネル!!」(日本テレビ系)とぶつかってしまい、視聴率が半減した。放送時間だけでなく放送局まで入れ替わってしまった「腸捻転事件」によって、当初は必殺が終わったと勘違いする人が大勢いたと言う。また、半兵衛の得物である剃刀を使った殺し技に、理容組合からクレームがついてしまうなどの不運が続いた。
 しかし、スタッフの熱意はむしろどんどん高まっていき、2クール目に入っても良作、佳作を連発。そして最終回は、様々な経緯を経て無敵の「プロの殺し屋」となった二人の仕事師の生と死を感動的に描き、生き残った半兵衛は「無様に」生き続ける道を選択した。時代に夢も希望もない。しかし命が続く限り生き続ける道を選択した半兵衛の姿は、仕事師の「死に様」ではなく「生き様」を強烈に我々に印象付けた。ラストシーンでこちらを睨み返す半兵衛の顔はファンの脳裏から消えることはないだろう。
 視聴率悪化のために、関西以外の地域では再放送に恵まれない作品ではある。しかし、この作品でさらに押し進められた「作品の長編性」と「スリリングな仕置描写」は、後の作品にまで生かされているのである。


 ☆登場人物

 知らぬ顔の半兵衛(演・緒形拳)
 蕎麦屋「坊主そば」の主人。無類の博打好きで、店も以前の博打で手に入れたものであるが、やはり博打好き。店の売上をこっそり持ち出して賭場に向かってしまうので、同居人で女房同然の存在であるお春を困らせている。偶然から殺人事件に巻き込まれ、その際に知り合った飛脚屋・嶋屋の女主人・おせいに裏稼業の匂いを感じ取り、彼女を脅迫して金をせしめようとするが、逆におせいにその度胸を買われ、嶋屋配下の仕事屋になるようスカウトされてしまう。
 「仕事も博打。人生も博打」というのが彼の人生哲学で、あらゆる無理難題に博打で鍛えた勝負強さと度胸を持って挑んでいく。殺しの得物はカミソリ。手ぬぐいを当てながら相手の首筋にカミソリを運び、そのまま頚動脈をかき切る。手ぬぐいは血が激しく吹き出るのを抑える効果がある。
 政吉とも賭場で知り合った仲だが、共闘していくうちに仲間意識が芽生え、仲のよい悪友となっている。基本的には陽気な性格で、普段はお春と源五郎の口ゲンカに悩まされたりと騒がしい毎日を送っている。
 25話において裏稼業のことがお春に露見。それでも二人で生きていくことを約束するが、最終話で役人に正体が知れてしまったために利助や政吉を失い、政吉の後を追って自害しようとするおせいに「明日のない俺達は、無様に生き続けるしかねえんだ!」と叫び、そのまま逃亡、お春にいくらかの小判を残していずこかへ消えた。

 侍くずれの政吉(演・林隆三)
 博打の天才を自認する若いチンピラ。元々は旗本・松永家の人間であったが、養子ということもあって家を飛び出し、今では博打をしながらその日暮らしの生活を送っている。1話で半兵衛と賭場で出会い、半兵衛が自分の店と女房を賭けた博打を行う。1人の女性からある同心を殺してくれと頼まれるが、偶然にもその同心が仕事屋となった半兵衛の最初の標的であり、2人同時に標的を仕留めた直後半兵衛と殺し合うが、そこへ止めに入ったおせいに仕事屋にスカウトされる。
 実は幼い頃に生き別れとなったおせいの息子なのだが、本人はそれに気づいていない。別れる際におせいが託した女物の懐剣を得物に使う。自信家ではあるものの博打にとても強いと言うわけではない。しかし博打で鍛えた度胸のよさは半兵衛並みであり、それゆえ二人で共闘して仕置を遂行していく。
 次第におせいが自分の母親ではないかと感づき始めるが、仲間への疑心暗鬼にかられて25話で半兵衛を刺してしまうという過ちを犯す。それが解決した矢先、最終話で火盗改めに捕らえられて拷問を受けてしまい、仲間をかばって役人の刀を奪い、おせいの眼前で自殺した。

 嶋屋おせい(演・草笛光子)
 飛脚屋・嶋屋を営む女主人。破蔵師(蔵破りの盗賊)であった亡き夫・清衛門が遺していた金を元手に、弱者の頼みを非合法で片付ける商売・仕事屋を行っており、自らその元締を務める。1話で配下の仕事人・伊乃(伊吹新吾)を失い、新たに半兵衛と政吉をスカウトする。
 清衛門と知り合う前に子供を産み落としており、訳あって旗本・松永家にその子を託し、その際に自分が持っていた護身用の懐剣を授けた。その成長した姿こそが政吉であり、彼の持っていた懐剣を見て一目で自分の子供だと察するが、自分からはそのことを言わず、彼と運命を共にする決意を固める。
 基本的に二人に指示を出すのが仕事だが、状況に応じて殺しの現場に赴くこともある。最終話では息子の仇である役人を己の手で殺し、半兵衛から形見の懐剣を受け取った。その後の消息は不明だったが…。

 利助(演・岡本信人)
 嶋屋の番頭を務める人の良い男だが、裏では仕事屋の密偵で、おせいの忠実な配下。真面目な性格でおせいに愛情を抱いていたようだが、最終話で刺客からおせいをかばって殺される。

 お春(演・中尾ミエ)
 半兵衛の押しかけ女房。きっぷのいい姉御的性格で、博打に興じて仕事に精を出さない半兵衛の代わりに、一人で蕎麦屋を切り盛りしている。陽性の性格だが、半兵衛を想う気持ちは何より強い。
 25話で半兵衛の裏稼業のことを知ってショックを受けるが、それでも一緒に生きていくことを決意する。しかし裏稼業の経緯から半兵衛は逃亡することになり、お春は一人残された。

 源五郎(演・大塚吾郎)
 半兵衛とは幼なじみの岡っ引き。強面をしているが実はオカマで半兵衛に惚れており、政吉やお春を「恋敵」だと思っている。仕事の方は真面目にこなしているようだが、それを利用して半兵衛が情報を聞き出すこともある。口癖は「半ちゃん、淡白ねえ」。

 おまき(演・芹明香)
 政吉の情婦。どことなく気だるい雰囲気を持っている女性で、似たもの同士の政吉とは気があっているらしい。最終話で刺客の不意打ちから政吉をかばって刺され、死亡した。


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