必殺仕置屋稼業

1975年7月4日〜1976年1月9日 全28回



☆オープニングナレーション
一筆啓上 火の用心
こんち日柄も 良いようで
あなたのお命 貰います
人のお命 頂くからは
いずれ私も 地獄道
右(め)手に刃を 握っていても
にわか仕込みの 南無阿弥陀仏
まずはこれまで あらあらかしこ
(作:早坂暁 語り:草笛光子)

☆主題歌
「哀愁」
作詞:片桐和子、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:葵三音子


 前作「仕事屋稼業」での「腸捻転事件」による視聴率低迷に加え、TBSがかつての「必殺シリーズ」放送枠であった土曜午後10時に必殺亜流時代劇「影同心」(毎日放送、東映)を登場させ高視聴率を獲得。この事態に危機感を覚えたスタッフは、打開策として人気キャラ中村主水を三たび復活させ、主水を必殺のメインキャラクターとして完全に確立させた。ある意味、今後の「必殺」の方向性を決定づけたとも言えるシリーズ第6弾。
 歴代の5作品のエッセンスを投入しながらも、今作では「仕置屋稼業」の名の通り、仕置遂行に的を絞った作品展開がなされ、それ故展開がダレることなく、常に高いテンションを保ってストーリーが展開していった。他にも、主水の妻と姑である中村りつとせんが今作で初めて正式なレギュラーとなり、そのために登場頻度が増えて、一連の「中村家コント」と言われるお笑いシーンがメインストーリーとの抜群のコントラストを描いていた。さらに主水の奉行所仲間として上司の与力村野、下っ引きの亀吉、その他主水が憧れる少女・おはつなど、大挙して脇役が登場。新規視聴者に好感を与えると共に、画面に様々なバリエーションを生み出す原動力ともなった。
 従来のファンにとってのトピックスとしては、第2作「仕置人」において棺桶の錠を演じて人気を博した沖雅也が2度目の必殺出演を果たし、錠とは180度異なるクールな美形殺し屋・市松を演じ、その華麗さと、それとは対照的な「殺人マシン」ぶりは多くの女性ファンを魅了。第1作「仕掛人」に出演していた中村玉緒も同じく二度目の出演を果たし、共演陣も豪華なものとなった。
 脚本もますます充実しており、代表例としては俳優・中村敦夫の実弟である中村勝行の存在がある。彼が脚本を執筆した20話では中村敦夫が往年の「木枯し紋次郎」よろしく渡世人の姿でゲスト出演、市松と共同戦線を張った。他にも円熟したベテランスタッフが多数参加、さらに後々の作品で才能を開花させる若手製作者も参画し、この上ない豪華な布陣となった。
 こちらは比較的再放送に恵まれ、傑作選や完全版のLDも発売されており、視聴しやすい作品である。作品世界全体を俯瞰してみれば、全体を通してのテーマ性というものは前2作よりは希薄だが、裏稼業に生きる人間達の団結を謳った最終話はいつまでもファンの心を離さないであろう。


 ☆登場人物

 中村主水(演・藤田まこと)
 今作より北町から南町奉行所に栄転。心機一転やる気を見せるかと思われたが、相変わらずの昼行灯ぶりを見せていた。主水サーガの前作「仕留人」において糸井貢の死を目の当たりにしてからは完全に裏稼業から足を洗っていたが、彼の正体を見抜いて復帰させようと企んでいたおこうの策略によって、再び裏稼業に復帰することとなり、1話冒頭で殺しの現場を目撃した市松を仲間に引き入れて「仕置屋」稼業を開始する。
 仕置人として様々な修羅場を潜り抜けてきた彼は、仕置という行為そのものに自身の正義感といった夢を託すことは出来ないと判断し、純粋な「仕事」として裏稼業をこなしていくことにする。おこうに惚れられているが、主水もまんざらではない模様。飯屋の看板娘であるお初に熱を上げている。
 必殺の剣技はますます冴え渡り、19話では「鬼」と化した道場時代の先輩・全覚と死闘を演じた。

 市松(演・沖雅也)
 殺し屋の一族に生まれ育った青年で、物心ついた時から殺し屋としての養育を受けてきたため、どんな標的も冷酷無比に仕留める。1話冒頭で殺しの現場を主水に見られたことから戦うことになるが、それが縁で仕置屋に参入する。
 実の父親は子供の頃に死んでおり、養父の鳶辰に育てられていたが、その鳶辰が父を殺していたことを知り、ためらうことなく養父を仕留めた。これ以外にも12話では幼なじみの女性を自らの手で仕置するなど、「殺人マシン」としての描写がしばしば描かれている。一人で行動してきたために仲間意識というものも持たず、そのため若い仕置人である印玄や捨三からは煙たがられることもある。
 表稼業は竹細工屋。竹細工を使って子供達と遊んだりして、表での人当たりは悪くはないらしい。その竹細工の腕を用いて作った竹串が殺しの際の得物であり、これを頚椎などの急所に刺して刺殺、さらには確実に止めを刺すために串を引き抜かずに折ってねじ込むということも行う。折鶴に鋭利に研ぎ澄まされた竹を仕込んで敵に投げつけ、敵の頚動脈を切り裂くという戦法をとることもある。
 長い共闘の末に人間らしい心をつかんでいった市松は最終話、「心を通わせた仲間」として印玄の最期を看取り、奉行所に捕縛されるも主水の助けで脱出、旅に出て行った。旅のさなかで赤井剣之介に出会うことになるらしい。

 印玄(演・新克利)
 托鉢僧であるが破戒僧。大変な女好きでしかも精力絶倫。女郎達に注意を促す張り紙がしてあるほどである。躁鬱病の気があるので感情の起伏が激しいらしいが、中途からそのような描写はなくなっていく。
 卓越したその怪力をもって相手を頭上に持ち上げ、屋根の上や階段など、高所から突き落として絶命させるのが殺し技。明るい性格であり捨三とは旧知の間柄だが、仲間に溶け込もうとしない一松の態度が気にいらず、いちいち文句を言ってくる。激昂にかられて実の母親とその愛人を殺してしまったという過去がある。
 市松を当初は毛嫌いしていたが、次第に仲間意識が芽生えていき、最終話では裏切りの疑いをかけられた市松をただ一人信じ、そして外道組織に囚われたおこうを救出するべく一人で出陣、敵と相打ちになって絶命した。

 捨三(演・渡辺篤史)
 印玄の友人で主水の無二の子分。かつて主水に命を救われたことから忠誠を誓っており、しかも何らかの事情で主水の裏稼業のことも知っていた。仕置屋の密偵として諜報活動を担当、その機動力は仕置屋の活動を支える貴重な戦力となった。
 湯屋「竹の湯」の釜番が表稼業で、絵草子に夢中になったりする普通の青年でもある。

 おこう(演・中村玉緒)
 表では髪結い床の女主人であり、店で働いているるみ(香川留美)やのぞみ(星野のぞみ)に囲まれてかしましい日々を送るが、裏では仕置屋の仲介役。「おさすり地蔵」にやって来た仕事の以来を主水に取り次ぐ。主水の裏稼業のことを知っており、主水を再びこの稼業に戻そうと考えていた。離婚経験があるがそんなことはおくびにも見せず、コテコテの関西弁で元気に毎日を過ごしている。
 主水とは互いに惹かれあう仲であったが、最終話で外道組織に自分の正体が知られてしまったために捕らえられて激しい拷問を受け、印玄と市松の協力もあって脱出には成功したが、主水に裏稼業を止めないでほしいと訴えて、主水の腕の中で息絶えた。

 亀吉(演・小松政夫)
 主水配下の下っ引き。主水に従うふりをしながら内心では反発しており、せんから小遣いを貰っては主水の行動を逐一報告している。

 与力村野(演・宗方勝巳)
 奉行所での主水の上司。昼行灯で通っている主水の態度に辟易して入るが、一方で気を許しやすいタイプだと思っているのか、主水に相談を持ちかけることもある。最終話で牢屋見廻に格下げされた主水に心底同情していた。

 お初(演・石原初音)
 主水が密かに憧れている、飯屋の看板娘。しかし当人にはもちろんそんな気はない。
 ちなみにお初を演じた石原初音は、約2000人の応募の中から選ばれた「中村主水の心の恋人」だったらしい。

 中村せん、中村りつ(演・菅井きん、白木万里)
 今作から正式にレギュラーとなり、おのずと登場回数も増えた。主水が南町に栄転したことで、序盤はそのことで騒ぐ描写が多い。亀吉を使って常に主水の動向をチェックしている。


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