必殺からくり人 血風編

1976年10月29日〜1977年1月14日 全11回



☆オープニングナレーション
さよならだけが 人生か
それならこんちは 何なのさ
きのう勤皇 きょう佐幕
きのうホントで きょうはウソ
雨は降る降る 血の雨が
人の情けは 泥まみれ
あした天気になあれ
(作:早坂暁 語り:芥川隆行)

☆主題歌
「負犬の唄(ブルース)」
作詞:荒木一郎、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:川谷拓三


 「新必殺仕置人」の製作が予想以上に遅延してしまったため、その穴埋めとして作られた作品。幕末は鳥羽伏見の戦いを背景に、西から官軍が攻め上ってくる時期の品川宿を舞台とした、史上最も現代に近い裏稼業・からくり人の活躍を描くシリーズ第9弾である。
 名前こそ前作を踏襲しているものの、基本的に前作「からくり人」との関係はなく、幕末の動乱という巨大なものに振り回される市井の人々と、そんな弱い人々をさらに追い詰める悪を倒していくからくり人の活躍がメインである。だがもちろんそれだけではなく、戦争が頻発して人が死ぬことに違和感を感じなくなってしまった「異常な世界」も描き出し、さらにそれぞれの大義を持つ幕軍も官軍も、一皮剥がせば権力を欲する悪人どもの塊であったという展開は、とても急場しのぎで作られたとは思えない秀逸な文芸である。
 登場人物も官軍の密偵でありながら裏稼業を行う土左ヱ門を始めとして、どちらかと言えばネガティブな印象が付きまとっている。さらに元締・おりくを慕うからくり人・直次郎と土左ヱ門との三角関係はこの作品の縦糸であり、それは最終話において最悪の悲劇を招くことになってしまう。
 話数の少なさも相まって、シリーズ全体を通してみると印象が薄い感も否めないが、前作から受け継いだ「情による殺し」をメインとした作劇は一つ一つの話の中で個別の輝きをはなっており、ファンを魅了してくれるのである。


 ☆登場人物

 土左ヱ門(演・山崎努)
 からくり人一党が品川の葦辺で見つけた男。銃弾を体に受けており、しかも体は冷え切っていたが、おりくの献身的な介護によって意識を取り戻し、白濱屋に裏稼業の匂いを感じ取って居座ってしまう。なかなか本音を見せない性格だが心根は非常に熱く、さらに弱者に対する情けも持っている。
 実は薩摩から派遣された官軍の密偵であり、裏稼業を遂行する中で官軍としての仕事もこなすが、次第に官軍も倒すべき幕軍も同じ穴のムジナであることを感じ始め、最終話ではついに官軍と決別することになる。おりくに想いを寄せているようだが、それを表に出すことはほとんどない。
 殺しの得物は多岐に渡り、刀から最新式の拳銃まで縦横に使いこなすが、一番使用回数が多かったのはウインチェスターライフル。これを使うことで許せぬ外道どもを地獄に送る。官軍の同志からも一目置かれている存在らしく、かなり高位の軍人か、もしくはかなりの戦績を上げたことがあるらしい。
 最終話で直次郎の仇を討った土左ヱ門は一人、荒野の中に去っていった。

 直次郎(演・浜畑賢吉)
 「玉転がし」と呼ばれる女郎や芸者の斡旋業を表稼業とする男で、女達からの評判は良い。裏ではからくり人のメンバーで、強烈な威力を持つ足の指を使った喉笛砕きを必殺技とする。
 お調子者で気のいい性格だが、自身が捨て子という境遇からか、同様の境遇である人間には同情することもある。さらに深川の女郎達に育てられたものの、7歳の時に無理やり女郎によって初体験をさせられてしまったため、女性に対しての不信感を拭うことが出来ないでいる。白濱屋とは先代主人からの付き合いのようで、当初は土左ヱ門を敵対視して命を狙う時もあったが、次第に分かちがたい友情を育むようになる。
 しかし以前から想いを抱いていたおりくの気持ちが土左ヱ門に傾いているのを知り、焦燥感にかられてしまった彼は官軍への密告屋という取り返しのつかない行為を働いてしまう。最後は自分でけじめをつけようとするも、からくり人であることを知られたために官軍の攻撃を受け、おりくへの遺書を書き記して息絶えた。

 新之介(演・ピーター)
 白濱屋近くの寺院で寺坊主を務める美少年。仏門に仕えている身でありながら積極的に遊び、行きずりの女とイイ事をしようとする時もあった。からくり人であるために白濱屋に顔を出すことも多く、手伝わされることもしばしばである。生まれは河内のようで、激昂すると河内弁が飛び出す熱血漢でもある。
 殺しの武器は針。針を口に含んで敵の首筋などの急所に向かって発射。そのまま刺殺する。場合によっては指ぬきを使ってさらに針を押し込み、相手の動きを封じたりすることも可能。またその容姿を利用して敵を油断させて近づき、攻撃する戦法も披露している。
 おいねに恋心を抱いていたようで、彼女が足ぬけを考えた時には裏稼業の掟を持ち出してまでも彼女を止めようとした。最終話で土左ヱ門とともに直次郎の仇を取り、一人去ってゆく土左ヱ門についていこうとしたが断られ、その背中を見送った。

 おいね(演・吉田日出子)
 白濱屋の飯盛り女を務める娘で、からくり人のメンバー。おりくとはかなり以前からの仲らしい。とてもしっかりした性格で、店の裏には彼女専用の畑があり、そこから取れた野菜を板前に売りつけている。1話のみ鎌を持ち出したが、基本的に殺しには参加せず、他の三人のサポートに徹する。
 7話で若侍の精霊村源次郎と恋に落ち、白濱屋も裏稼業も止める決意をするが、彼らの理想の真の姿を知って絶望、土左ヱ門たちに救出されるも8話以降姿を消した。

 おりく(演・草笛光子)
 飲み屋と女郎屋を兼ねている品川の当宿宿・白濱屋を切り盛りしている女主人。その美貌と人徳で周囲の男女から敬愛される女性だが、裏では許せぬ悪党を闇に葬るからくり人の元締である。元々裏稼業は白濱屋の先代主人だった父が行っていたもので、父が亡くなった事で7年前に元締職を継承、その際に新徴組に参加した婚約者。佐久洋三と袂をわかっている。
 裏稼業の基本料金は十両だが、場合によっては無償で動く。殺しは行わないが御高僧頭巾姿で現場に赴くこともある。婿養子である芳太郎(柳沢真一)がいるが、裏稼業のカモフラージュのようなものであり、彼に男を求めたりはしない。
 気丈な女性ではあるが、やはり普通の人間並みに乱れることもあり、7話でおいねがやめてしまった時に自棄酒をあおる姿は印象的である。次第に土左ヱ門に気持ちを傾かせていったが、それゆえに予想以上に深かった直次郎の思慕に気づくことが出来ず、結果として最終話の悲劇を招いてしまい、仇を取った後、一人で荒野に旅立つ土左ヱ門を見送った。

 熊谷隊長(演・桑山正一)
 白濱屋の常連客で、品川に駐留する幕府軍の指揮官。およそ軍人らしからぬのん気な性格で、日和見者の一面も持つ。だが彼自身も、幕軍も官軍も似たようなものだと思っているらしい。隊長なのに仕事をしている描写はほとんどなく、9話で直次郎と将棋を指している姿が印象的。


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