
斎藤澪(さいとう・みお)
1944年東京生まれ。料理雑誌編集部、広告代理店勤務を経た後の1981年、『この子の七つのお祝いに』で第1回横溝正史賞を受賞。同年12月に横溝正史が没した為、この作品が正史存命中における唯一の受賞作となる。展開に意外性などはあるものの派手なトリックはないという、所謂“社会派”に属するタイプのミステリを幾つか執筆している。
『この子の七つのお祝いに』(角川文庫)
・第1回横溝正史賞受賞作であり、正史はこれが受賞作に選ばれたことを「無上の欣び(よろこび)」だと語っており、また全日本大学ミステリー連合による昭和56、57年発表の国内ミステリー人気投票でも9位に選ばれました。ドラマだったか映画だったかは失念しましたが、映像化もされています。
(粗筋)
憎悪に満ちた復讐の言葉と哀しげな「とおりゃんせ」の歌を子守唄代わりに育った麻矢。彼女はまだ一度も会ったことのない父親を、いつかの日か必ず見つけ出して殺してやろうと誓った。それから十数年後、血みどろに彩られた陰惨な事件の幕が上がった……。
(感想)
「とおりゃんせ」の曲調にも似て、物悲しく暗い雰囲気が終始つきまとう物語。横溝正史を模倣しているのではないのですが、何かしら似通ったところが感じられますので、そういう意味では横溝正史賞に相応しい小説ですね。過剰な修飾はなく文章は至って平凡ですが最後まで一気に読み通せるぐらいの堅実さがあって、内容面を別にすれば退屈はしません。事件が解決されてゆくまでの論理的過程を重点においたミステリではなく、全編に散らばったパーツが徐々に繋がって行って事件の背景を含めた全体像が見えてくる……という感じですので、本格というよりサスペンスに近い社会派ミステリです。ただ、いまいち内容に衝撃が感じられないのが残念なところ。
『赤いランドセル』(角川文庫)
・受賞後第1作。授賞式の日に聞いた横溝正史の言葉によって「なにかがふっ切れた」作者が、それまで迷いながら書いていた作品の原稿を捨てて代わりに取り掛かった小説がこれだそうです。
(粗筋)
悪臭漂うコインランドリーに閉口した主婦が乾燥機の中を覗き込んだ。中ではゴトゴトと子供の死体が揺れていた。被害者は殺された後、乾燥機の中に放り込まれたらしい。フリー・ライターの浅見恭介は、真相究明のため早速現場付近での聞き込みを開始する。
(感想)
実際の新聞記事を読んでいるかのような生々しさを覚える作品です。ぐっと“社会派”の色合いが濃くなっていますが、幾つかの点で前作と通ずるところがあって、やはり物語に横溝正史のテイストが感じられます。前作はその横溝テイストと社会派サスペンスとの兼ね合いが成功していたのですが、今回はいまいち2つの要素が交わり切らず中途半端になってしまっている気がします。「読み応え」という点では前作より上回りますものの、もっとうまくつくれたのでは……という感は拭えないですね。
記憶をちょっと溯る
記憶をかなり溯る