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闇の覇者・真王たる者・海帝(1) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月15日(火)21時44分50秒 

                  8.海帝

ギーガン国陥落より遡って数時間前・・・・・・一つの馬車がライゼーラの
首都「ディープ・シー」に向かっていた。
しかし・・・・このギーガンからライゼーラに抜ける道は山道であり
左右には切り立った崖が視線を狭めていた。
「そろそろライゼーラへの山道に差し掛かります。ほら、ネロ殿、貴方が
しっかりしてもらわないとシャリム帝に何と言うのか困ってしまいます。」
ネロは隣の席で蹲っていた。肩がわずかに震えている。
「どうして・・・・僕じゃ・・・駄目なのかよ・・・何故だよ・・・・。」
「それは・・・・・。」文官は何も言えなかった。
「・・・・・・・・・・・・。」
「どうして・・・・・何だろう・・・僕は弱いと言うのか・・・あの時
ギルモアが言ったとおり遊撃に回っていればエリスとマリエンを失わずに
済んだのに・・・・。僕が・・・・。」
「・・・・・・いい加減にしてもらえませんか?」
「えっ・・・・・・。」
「貴方はいつまで自分が被害者のつもりでいるのですかな?それじゃあ、
ガープ殿やライ殿にはどんなに背伸びをしても追いつけませんな。
どうして自分の長所を生かさないのかそっちのほうが不思議です。」
「ガープ・・・・・・ライ・・・・・。」
「あの方々はもっと大変な思いをしてここまで来たのだと思います。特にガープ様は
貴方は知らないでしょうがあの方は幼少の頃、妹君を戦乱で亡くされてお一人で
生きぬいてこられたそうです。それでも弱音は吐かなかったそうです。
貴方とどこが違うのでしょうね。考えた事ありますか?」
「・・・・・・・・。」
「まあ、良いでしょう。貴方はもっと強くならないといけません。ガープ殿は
貴方ぐらいの年には両親も妹君も誰も助けてくれる人なんていなかったそうですから
貴方のほうがよっぽど幸せですね。」
「・・・・・・・・。」
「さて・・・・・・・・・あと少しでこの山道も抜けます。そうしたら
ライゼーラ帝国の首都ディープ・シーです。宿を取ってから
帝との会談に臨みましょう。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」ネロは何も言えなかった。
しかし・・・・・・

「うん・・・?」馬車を操縦していたギーガン国の兵士が前方を見渡した。
「どうしました?」文官がネロに代わって応える。
「前方に岩が立ち塞がっています。」
「何ですと・・・確かこの道で良かったはず・・・なのに・・・何故?」
そんな二人を尻目にネロはささやくような声で呟いた。
「罠・・・・だよ。さっき大地の精霊が教えてくれた。僕達は囲まれたんだ。」
「誰に・・・・・・。」文官はネロの呟きに驚きの声を隠せなかった。
「山賊ウルフ・・・・・。」
「何・・・・・じゃあ・・・・我々は・・・・。」
「うわ!!」馬車を動かしていた兵士がそのまま滑り落ちるように叫び声と共
に馬車から落ちた。
「どうした!!」文官とネロが慌てて外に出た。
そこには・・・・・・。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(2) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月16日(水)21時45分46秒 

                   8.海帝

そこには肩に矢が刺さり傷口を押えている兵士がいた。
「おい、どうした、大丈夫か!!」
文官が立ち寄ろうとしたとき、岩の隙間からわらわらと狼のような者が出てきた。
そしてその狼の者たちのボスらしき者が不敵な笑みを浮かべた。
「へへへへ・・・・・かかったな、盗賊「ブラック・ファング」の罠。
さて・・・俺達は金品さえ渡してくれれば用は無いんだが。そうすれば
命だけは助けてやらんでもないけどな。」ボスは不敵に笑った。
「断ると言えば?」文官がたずねた。
「そうだな・・・・そこのお前が背負っている剣を奪ってお前達は自動的に
禿鷹の餌になるということかな?」
「そうか・・・・・。ネロ殿、お主はどうする?」
「・・・・・・・・誰が言う事を聞くか!!」
「ほほう・・・ずいぶん威勢の良いガキじゃねえか。じゃあ、軽く剣の練習でもしてやるか。
ほうれ、ゆっくりと引いて・・・・!!」ボスは剣を引きぬこうとした。
だが・・・・・気がついたときには・・・・。
「何ッ!!」ネロの身体が消えたと思ったときには後ろを取り囲んでいた山賊ウルフ
10人ほどの首が高く舞いあがった。
「なんだ・・・・コイツ・・・・・おい、手前・・・!!」
そう言ってボスは文官ののど元に剣を押し付けた。
「こいつがどうなっても良いのか!!さっさと武器を捨てろ!!」
ボスは叫んだ。するとどうだろう、ネロがボスの目の前に現れたのだ。
「ひっ・・・・・・いつの間に・・・・。」
「遅いよ。僕はさっきからここにいたけど・・・・わかった、捨てれば良いんだろう!!」
カランという乾いた音がしてネロは武器を捨てた。
「へへっ・・・そうすれば良いんだよ・・・じゃあ、部下を殺された恨みを晴らすとするか。」
「・・・・・・・・。」

それから・・・・・・ネロは十人の山賊ウルフにリンチに合っていた。
「ほらよ、ガキ!!」一人の山賊ウルフがネロを容赦無く殴る。蹲るネロに容赦なく
蹴りが入る。
文官と兵士はぐるぐる巻きにされ片隅に追いやられていた。
「へへへ・・・・次はお前達だ。さてと・・・・そろそろ金目の物をだしな。」
「ないよ・・・そんなもの・・・。」頬が青く変色した兵士は睨みつけた。
「やれやれ・・・自分の立場がわかっていねえようだな。良いかい、剣というのはな、
殺す為にあるんだよ。そうそう、こいつから奪った剣でお前を殺してみるか。」
山賊ウルフのボスはネロが身につけていた鞘からフレイム・タンを引きぬくと
ゆっくりと兵士に近づいた。
だが・・・・その時であった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(3) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月16日(水)22時03分02秒 

                   8.海帝

「へ〜それは良い事を聞いた。剣は殺す為にあるのか。じゃあ、お前の身体で試してみるか。」
不意にボスの背後に気配が立ち上った。それも殺気。
その殺気に気がついたボスは後ろを振り返った。そこには・・・・一人の
少年が立っていた。抜き身の剣をもち不敵に笑っている。そして・・・・・。
「なにっ・・・なんだ・・・・てめえ・・・・・は・・・・。」
ぐぷっという鈍い音ともにボスがゆっくりと剣に貫かれていく。
「だから言っただろう、殺す為にあるんだって。だからお前の身体で試しているのさ。」
「ふざけるな・・・・・。」ボスはフレイム・タンを振りかざそうとしたが、
間に合わなかった。
「遅いな・・・だから言っただろう、剣はお前みたいな腐れ外道を切り殺す為に
あるのだって。」少年はゆっくりとリンチを加えている所に近づいた。
ウルフたちはまだ気がついていない。ネロを痛めつけている。
だが・・・・・・・。少年の見えない斬撃がウルフの首を2〜3人刎ねた時
ようやく気がついた。
「てめえ・・・・いったいいつからそこに・・・。」
「親分、はやくこいつを殺してください!!」
数人のウルフがすばやく取り囲んだ。
「親分・・・・?」少年は首を傾げた。
「ああ、そうだ、強いんだぜ、お前なんぞ一撃さ。」
「そうか・・・コイツの事か?もしかして。」少年はボスの首を言った奴に放り投げた。
「ひぃ・・・・・。」
「お、俺達には、ひ、人質が、い、いるんだぜ・・・さ、さっさと武器を、す、捨てろ。」
「武器をすてたらお前達を殺せないが?」
「構いやしねえ。」
「そうか・・・・・・。」少年の姿が消えた。
「「「な!!」」」皆一様に声をあげる。
そしてその瞬間・・・・・・・・そこにいたウルフ全員・・・・斬り殺された。
ただ一人除いて。
「ひっ・・・・・・ひいい・・・・・。」
「お前のボスは言っていたぞ、剣は殺す為のものだって。だからころしてやったのに
皆逃げるんだな。俺は一向に構わないのに。」
「た、助けて・・・・そうだ、俺達の宝物をやろう、それでオレと兄弟に・・・・
ぐふっ・・・。」
「やかましい。さっさと死ね。それにお前なんぞ部下にしたら虫唾が走る。」
少年の剣が容赦なく生き残ったウルフを突き刺していた。
そして切り捨てる。
「まったく・・・・剣が汚れるじゃねえか。どうしてくれるんだ?」
少年はそう言いながらゆっくりと文官達がいるところまで歩いてきた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(4) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月17日(木)11時37分00秒 

                  8.海帝

少年は二人に近づくと無言で二人を雁字搦めにしていたロープを切ってやった。
「ありがとうございます。」文官と兵士は頭を下げた。
「ふん。別にお前達のためにやったんじゃねえ。それに見るに見かねてやっただけだ。
気にするな。」少年は途端に不機嫌な顔になった。
「あのそれでお名前は・・・・。」文官は申し訳なさそうに話しかけた。
「エクリマ。」少年はぶっきらぼうに答えた。
「エクリマ・・・・?」
「ってあの・・・・次期剣王の・・・・!!」兵士が驚きの声をあげた。
「そんなんじゃねえ。オレはザルト(ザルトベルト)の親父に言われて
諸国を回っているだけだ。剣術の修行もかねてな。」
「・・・・ありがとうございます。」
「そいつは良いんだけどよ、あそこで蹲っている奴はいいんか?」
エクリマはひょいと指を指した。そこにはウルフ達の死体に混ざってネロが
蹲っていた。
「ああ、いけない!!早く助けないと!!」二人がネロの元に駆け寄った。

                 ***

「それで・・・・君が助けてくれたのか・・・・ありがとう・・・。えっと・・・。」
べホイミの呪文でようやく身体を直したネロは剣を研いでいるエクリマに
礼を言った。
「エクリマ・・・・いつになったら人の名前、覚えるんだ?」
「ああ・・・すまない。」
「ふん・・・・まあいいさ、気にしていないから。」
「君はどうして・・・・あんなところにいたんだ?」
「ガッシュに会いに来ただけ。そうしたらもう陥落していた。」
「・・・・・・・。」
4人は焚き火を囲んでいた。ネロとエクリマは焚き火を挟んで向かい側に陣取っていた。
焚き火の赤い炎がネロを赤く染める。だが、エクリマはネロを睨んだままである。
「あの・・・・・それで・・・・。」ネロが無言の圧力に耐え切れずエクリマに
話しかける。
「これ・・・お前の剣だろう。さっき見させてもらった、お前の剣術を。」
「えっ・・・・・。」エクリマは鞘に収まったフレイム・タンを投げてよこす。
「・・・・・・・・・お前、誰から剣術を教えてもらった?」
「えっ・・・・・・・・・ライ・タツムネ、という人から教えてもらいました。」
「ライ・・・・だって!!で、ライさんはどうしたんだ!!」
エクリマはネロの首を締め上げる。
「おい、どうしたんだ!!ライさんはどうしたんだ!!言え、お前!!」
「エクリマ様、落ち着いてください、それじゃあ、ネロ殿が死んでしまいます!!」
文官がエクリマの身体を押えつける。
「ああ・・・すまない。だが・・・ライさんは・・・・。」エクリマはネロを放した。
「実は・・・・・・。」ネロはゆっくりと話し始めたのだった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(5) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月17日(木)16時42分49秒 

                  8.海帝

「それで・・・・お前は逃げてきたと言うのか。ギーガン国から・・・・。」
「だって・・・・ライが逃げろって。」
エクリマはネロの話を聞いていた。だが、どうみても憤りというのかそうした
感情がネロに向けられていた。
「・・・・・てめえ・・・・それでもライさんの弟子か。どうしてもっと抵抗
しねえんだよ。オレなら腕に噛り付いてでも付いていこうとした。てめえは
何をしていた!!」
「だから・・・・・・。」
「それで貴様はおめおめと逃げてきた、か。よくもまあそれで・・・恥ずかしくないか。
騎士を名乗るてめえがか・・・。」
エクリマはじっとネロを睨みつけている。ネロはまるで蛙のように動けない。
「だから・・・・言ってんじゃないか、ライがお前に余計な迷惑をかけさせたくない
から・・・・。僕を気絶させて・・・・。」
「・・・・・・・・くそっ。情けないぜ、手前は。で、それでどうするんだ、お前達は。
どこに行くんだ、どこに行こうとしているんだ!!」
エクリマが激しく問いただした。ネロに代わって文官が答えた。
「とりあえずライゼーラ帝国のシャリム様にご面会を申し込んで・・・・。」
「で、それから・・・どうするんだ?」
「それは・・・・・・・。」
「あのさ、ちなみに言っておいてやる、お前達の身分はなんだ?それがわからないと
会ってくれないぞ、シャリムの親父は。」
「・・・・・それは・・・・。」
「第一お前達の場合、難しいぞ。何しろ亡国の兵士と文官だろ。さらに身分不詳(ネロ)
までいるんだろ。お前達どうするんだ?すぐに捕まるぞ、衛兵に。」
「それは・・・・・・。」文官は黙ってしまった。
「一つだけ手があるんだけどな・・・・。」エクリマがニヤリと笑った。
「それは・・・?」
「だからよ、オレを同行させれば良いんだよ。そうすれば少しは分かってくれるぞ。
それに・・・・文官、お前何か持っているんだろ、シャリムに渡す書類とかさ。
加えてオレがいるんだ・・・・。」
「でもどうすれば・・・・・。」
「あるだろ・・・・たとえば・・・・お前達がこの何だっけ?あ、そうそう
このブラックファング団に襲われた。多分ライゼーラでも手を焼いていたはずだ。
そこでこいつらの首か何かを持っていって帝に拝謁するんだ。そこで
オレが身分を明かす。お前が持っている国書をホルム(=宰相)に渡せば良いんだよ。」
「なるほど・・・・・でも・・・・・いきなり捕まるという事は・・・・。」
「それもあるだろう・・・・だけど何も用意しないで行くのはバカのする事だぜ。
だったらこれで行こう。いきなり何の用意もせずに行くのは・・・!!」
エクリマは何かの気配に気がついたようだ。
「誰だよ・・・・出て来い!!」エクリマはメラゾーマの呪文をあらぬ方向に投げ付けた。
だが・・・・・・・。
「そんな必要は無い・・・・第一この程度の盗賊団なら我々特殊部隊が皆殺しに
している・・・・。お前達はギーガン国の残党だろう。」
いきなり4人がいる道から気配が現れた。
「おまえは・・・・・確か見た事があるな・・・・。」エクリマは何か思い当たったようだ。
「ほほう・・・さすがジュダ王国の皇子様は私の事を知っているようだな。」
「ああ・・・・知っているとも。お前はあの「切れ者バロール」だろう。」
「そうだ・・・・。」
「で、どうする・・・・。俺達を連行でもするのか。」
「そうだな・・・・まあ・・・・連絡だけはしておいてやろう。4人が低俗な盗賊団
を殺したとでも報告しておいてやろう。」
バロールは消えていった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(6) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月19日(土)19時22分03秒 

                  8.海帝

一方ライゼーラ帝国帝都「ディープ・シー」
その帝都の中心部に一つの大きい宮殿がある。宮殿はいくつかのブロックに分けられ、
その宮殿のもっとも奥に城があった。
そう、ここがライゼーラ帝国の政、司法を司る場所である。そしてシャリム一家の居城である。
その中の一室・・・・・。

その部屋は大きくベッドが部屋の端に置いてあった。そして部屋は魔族の部屋にしては
暖かい色調で統一され、人間界から持ってきた花々や透き通った水が満ち溢れていた。
さらに様々な花から出る芳香が部屋を満たしていた。
そしてベッドが大きく膨らんでいた。どうやら誰かが寝ているらしい。
微かだが可愛い寝息が聞こえる。どのくらい経っただろうか、
寝息の主はようやく起きあがった。蒼い長き髪が揺れる・・・・・。
「ふう・・・・・・・ふあああああ・・・・・。」声の主は大あくびをした。
「お目覚めですか。姫様。」ベッドの側に控えていた宮女が優しく声をかける。
「ええ・・・・・。あれ、今日はずいぶん騒がしいようですが。」
姫と呼ばれた少女の耳の後ろに生えている魚のえらみたいなものがピクピクと動いている。
「さすがに・・・・。」宮女がさすが、と言う表情をした。どうやら耳の良さは
良いらしい。
「今日は・・・・何かあったのですか?それとも面白い事でもありましたか?」
「いえ・・・・何もありませんよ。皆ライゼーラに忠誠を誓っております。だから
何もありません。ささ、顔を洗いましょう。」宮女が金色の洗面器を持ってきた。
そこには香しい香水が散りばめられ花びらが水の上を踊っていた。
「そう・・・・・そう言えば、あのブラック何とかと言う下賎の者たちが
皆「降伏」したとか。」
「姫様はそんな事気になさらなくて良いのです。そのような下賎の戯言など
聞かなくて良いのです。」
「そうなのですか・・・・でも貴方がそう言うのならきっと気にする事ではないのでしょう。」
アクリラと呼ばれた少女は可愛らしくクスクスと笑った。
宮女もつられて笑い出した。だが・・・本当はブラックファング団は「降伏」したのではなく
「全滅」し、「皆殺し」だったのである。

「私も・・・・素敵な殿方と出会って恋に落ちてみたいものですわ。」
「ひ、姫様・・・それはお父上のお気持ちを知っての事でございますか?」
いきなり話題を変えられた宮女は動揺してしまった。
「でも・・・・・・。」
「なりません!!お父上のお気持ちを察して下さいませ。ちゃんとアクリラ様に
相応しくお父上がお認めになられた殿方がきっと現れます。それに軽軽しく
恋なんて言わないで下さいませ。」
宮女は逸る気持ちを落ち着かせようと言葉を選びながらアクリラに優しく話した。
「・・・・・・・。そうですね。お父上がそう言うのでしたらきっとそうなのでしょう、
私に似合う殿方がきっといるのですね。」
「そうでございます。」宮女はアクリラの服をキャビネットから出すとアクリラの髪を
梳かし始めた。
「でも・・・・・見てみたいな。私に似合う人。」
「そうですね・・・・・。」
「ねえ・・・・ガスタブルグ王国のお姫様やギーガン国の姫様ってどんな人なの?
私会った事なくて。」
「そうでしたね。姫様はこの間の舞踏会を欠席なされましたから。「虫」がついてはいけない
とのお父上のお達しでしたから・・・。」
「どんな人達なの・・・・友達になれそう?」
「ええ・・・・ガスタブルグの姫様はミルル様で御座います。とても
御優しい方で扇を使った「舞い」は戦う者の心を慰めるとも言われています。
きっとお友達になれますとも。」
「そうなんだ・・・・・。」
アクリラはイヤリングを着けながら宮女の話を聞いていた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(7) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月19日(土)23時48分16秒 

                8.海帝

ネロと文官、ギーガン国の兵士、そして途中で知り合ったエクリマはゆっくりと
峠を下り崖道を通っていた。
その崖道の通っている中で・・・・・・。
「なあ、なあ、お前なんて言う名前なんだ?」エクリマが興味津々にネロに話しかけた。
「えっ・・・・ネロだけど。」
「ネロ・・・・ねえ。で、下の名前は?」
「下の名前?どういうこと?」
「だからさ、お前の出身はどこなんだよ?そのぐらい教えてくれてもいいだろう?」
「えっ・・・・・それはどういうこと・・・・だって僕はネロだって・・・。」

これはどう言う事だろうか・・・。
つまり魔族の名前のつけ方に特徴がある。たとえばエクリマの場合、
「エクリマ・ジュダ」という名前であるが実はエクリマとジュダの間に名前がある。
これはよく「真名」と言うもので昔の平安時代の貴族や貴族の子女に見られる特徴である。
だが、これを言う事はタブーであり、相手を呪い殺す材料にもなりかねないので
ほとんど言わないのである。それと同じようにエクリマ、ましてやあのキースも
言わないのである。「ガルジ」と言うのは「キースドラゴン族のガルジさん、そして
6代目ですね。」という意味でもある。
だが、ネロにはそれがない。

「だから・・・・・。」ネロは途中で口篭もってしまった。
「う〜ん・・・・それさえわかればお前さんの身分の保障ができるんだけどな。
何か保障するものはあるかな?例えば両親の形見の品とか・・・。」
「それは・・・・・・。」
「無いのか・・・・・・仕方が無い、お前さんは俺の国の部隊で俺の部下という事で
シャリムに紹介するしかないな。」
「なっ・・・・・でも・・・・・・。」
「しょうがないんだ、お前が分かるものがあれば良いんだけど、お前が分からないんじゃ
どうしようも無いんだ。だからライゼーラに着いたら一応俺のことを「隊長」でも
呼んでおけ。」
「・・・・・・・・。」ネロは黙ってしまった。
それを見ていた文官が仕方が無いという表情で話しかけた。
「まあ、我慢してくだされ。エクリマ殿下がシャリム様に話しかける方便を
作って下さったのです。今は我慢です。それにこうすれば確実に話も上手く行くでしょう。」
それを聞いていたネロの拳が震えていた。
「・・・・・・・・僕は一体誰なんだ・・・・。」
ネロはそれだけ言うと黙ってしまった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(8) 投稿者:メルトダウン  投稿日: 8月20日(日)19時01分09秒 

                8.海帝

崖道はやがて街道へ繋がり、そのままライゼーラの首都「ディープ・シー」へと繋がっていた。
「もうすぐだな…」
エクリマは地図を広げながら呟いた。
「港がやけに多いな…」
「それはそうでしょう…ライゼーラと海は切っても切れないものがありますからね…」
ネロの呟きに文官が答えた。
「おめぇは言ったことないかもしんねぇけどよ、ディープ・シーってのは物凄く広いから、迷子になんなよ?」
「子供じゃあるまいし…」
「子供じゃねェかよ!」
「確海帝の居城の作りは荘厳でした。おそらくダルドア城にも引けをとらないでしょう。」
「ダルドア城にも?」
一行は進路を真直ぐディープ・シーに向けて歩いて行った。

一方、こちらは場所も変わって…

ガスタブルグの王、ギルモアの居城ダルドア城

その荘厳かつ、威風堂々とした作りは、この城の城郭の高さをうかがわせた。
ギルモアの改築により、ここまで立派なものになったのである。

そのダルドア城の王室で、ギルモアはイライラしながら待っていた。
グロウとべゼルの2人を…である。
「遅い…何をしているのか…!」
「ギルモア様、どうやら来たようです…」
ガープが言ったとおり、それから数秒して二人は現れた。
「どうであった?無事にしとめたか?」
ギルモアは身を乗り出すようにして聞いた。
「それが…その…」
ベガン兄弟は酷くうろたえていた。
「何ぃ?まさか失敗したのではあるまいな?」
「も、申し訳ありませんっ!」
その報告に舌打ちすると、ギルモアは浮かしていた腰をおとして、静かに目を閉じた。
「それで?何があったと言うのだ?」
「は、それが…」
兄弟は事実をありのままに述べた。
すると、だんだんギルモアの顔が曇って行くのがわかった。
「確かに…黒い騎士だったのだろうな?」
「間違い有りません!黒い騎士でした。それでその男の…」
「もうよい!」
そこまで言うとギルモアは一括した。
「ガープ!」
「はっ!」
「四天王を…全員会議室に呼べ…」
「はっ!」
「これは…忌忌しき事態だ…」
ギルモアはそのまま立ちあがると、自らも会議室にむかった。

一方、ここはディープ・シーのシャリムの自室

中では、シャリムとバロールが何か話している。
「・・疑問とは?」
「は、エルフの少年を見ました。」
「エルフの少年?確かに”そうそう見かけるもの”ではないが…さして疑問を抱く必要もあるまい…」
「それが…ただのエルフとも思えません…魔族の血も引いているようで…」
「何?すると混血だと言うのか?」
「おそらくは…」
「ふぅむ…」
「それに、どこかで見たような気がします。」
「どこでだ?」
「それは…思い出せません…でも誰かに似ているような気がするのです。」
「そうか…もう下がって良いぞ。」
「はっ、失礼しました。」
バロールが出て行くと、そこにはシャリムが1人残された。
「エルフか…」
彼には一つ思い当たる節があった。
「フフ、まさかな…」
彼は苦笑するとそのまま部屋を出ていった。

続く。

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闇の覇者・真王たる者・海帝(9) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月20日(日)20時34分57秒 

                 8.海帝

「ひょえ〜〜〜〜〜でかいし、大きいし・・・・・こんな場所があったのかあ・・・。」
ネロは町が見える高台に上って全体を見渡していた。ネロの後ろでは
魔物や魔族の者がクスクス笑いながら通っていった。
「恥ずかしいだろうが、手前は!!」後ろからエクリマが殴った。
「痛いじゃないか、エクリマ!!」
「エクリマ・・・・・だと・・・・・。」エクリマはじっと睨みつけた。
「え・・・・・・・・。」ネロはエクリマの豹変に驚いている。
「お前・・・・さっき俺が言ったこと忘れているんじゃねえだろうな・・・・。」
「えっと・・・・・・。」ネロは首を傾げた。どうやら本当に忘れているようだ。
「隊長だろうが!!このバカたれ!!」エクリマの鞘がネロの頭を強襲した。
「だって・・・・。」
「もうライゼーラに入ったらそうだって覚えておけ。全く物覚え悪いな・・・貴様は。」
ネロは頭を抱えて蹲っていた。

それを見ていた文官は兵士と顔を合わせて呆れていた。
「まったく・・・どっちが子供か分からんな・・・・。」
「同じく・・・・・。」
4人は高台を降りていった。

一方・・・・ガスタブルグ・第一会議室では・・・・・。
四天王と各部隊の部将たちが集められた。
みな一様に緊張した面持ちであったがギルモアが来ると皆頭を下げた。
そしてギルモアはゆっくりと座ると・・アガレスに事の顛末を話した。
「お前は・・・黒い剣士という者を見た事があるか・・・・しかも「魔王斬」を使う
剣士を・・・?」
「いえ・・・・・ですが私の記憶が正しければ魔王斬を使えたのは「エスターク様」
ただお一人・・・・。」
「バカな・・・・エスターク様は勇者ユーリルの手の者によって倒されたはずだ。」
「ですが・・・・そのあと・・どうなったのか知る者はおりません。」
「確かに・・・・だが・・・・・まさかというのがある。して・・・・・
デリーンはどうした・・・・?」
「デリーンですか・・・そう言えば非常呼集をかけたのに・・・来ていないとは・・・。」
アガレスはドアのところにいる兵士にデリーンが来たかどうか確かめさせた。
兵士たちはみな「来ていません」や「朝から見ていません。」などと言うだけであった。
「おかしい・・・・俺が昨日飲み屋で一緒に飲んだときはいたはずなのに・・・。」
シャクスは首をしきりに傾けていた。
「それは真か、シャクス。」
「はっ・・・確かにあの時は赤い顔をしながら寄宿舎に引き上げたデリーンを私は
しっかりと見ていました。ですが・・・・そこから先は・・・。」
「そうか・・・・・。気に入らないな・・・・・。」
ギルモアは腕を組んで一言呟いたが皆その意味を知る者はいなかった。

ベルクファクス王国「黄鶴都」、「謁見の間」では・・・・
メリクリウス、マリエン、ヨアヒム、ダールと言った若手の武将や侍が集められ
会議が行われていた。
マクシナスが近臣に尋ねた。
「して・・・ライ殿はどこに行ったのだ・・・・。」
「それが・・・わかりません。我々の隠密の動きを察して上手く街道から外れたところを
歩いていたのは・・分かっていたのですが・・・。」
そう、ライはベルクファクスの隠密の動きを察して街道から外れた道を
歩いていたが、それが逆にバガン兄弟に襲う口実を与えてしまったのである。
その為、ベルクファクスの隠密たちはライを助ける事が出来ず、結果として
ライがピンチになったとき誰も助ける事が出来なかったのである。
「メリル(メリクリウス)よ、お主でもわからんか?」マクシナスはメリクリウスに
尋ねた。
「申し訳ありません・・・・私はギーガン国に潜入をしておりまして・・・
反逆分子の洗い出しをしておりました。」口紅をさっと引いた口が動いた。
このときは仮面を外している。
「そうだったな・・・・・すまぬ。」
「いえ・・・・・。」
そのときであった・・・・・玉座に座り何も言わなかったギアが一言言った。
「もしかしたら・・・・・アレが・・・・起きたのか・・・・。だとしたら
ガスタブルグのギルモア候も慌てて会議を開いているだろう・・・・。」
「父上・・・・今なんと・・・・?」
「いや・・・・(まさかな・・・・あれはマスタードラゴンによって・・・・
だが・・・・もう一つの可能性も捨てきれない・・・・復活はしないはずだ・・・
いやできない・・・・。)」
マクシナスはギアの顔を見て不思議そうな表情を浮かべていた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・海帝(10) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月21日(月)22時01分36秒 

                   8.海帝

ベルクファクス王国の謁見の間では・・・・・
いまだに会議が続いていた。だが、左右に分かれた文武官たちは直立不動で
文官や武官の弁を聞いていた。
無論、ヨアヒムやマリエンも意見を交わし文官達とやりあっていた。
そして・・・・・・。ギアが重い口を開いた。
「皆の者、ご苦労であった。あとはこちらで決める。マクシ、ヤゲロー、それから
ガロウはここに残れ。皆の者、大儀であった。明日また会議を開き
国策決定をしようではないか。では、散!!」ギアの底から響く声が聞こえた。
「はっ!!」文武官の気配が一斉に消えた。そう、みな左右にいた文武官たちは
ルーラか見えぬスピードで消えていったのである。
「父上。何か隠しておられませんか?私のような貧士にも教えてくださいませ。」
「・・・・・・・お前たちにはあとで教える。大切な事だが・・・
今は手を出してくるかどうか・・・わからん。とにかくお前に一任するが
国境警備をしっかりしておけ。それから侍衆と忍び衆にも警備を徹底させておけ。」
「御意。」マクシナスは頭を下げた。
「父上。マリエンはどうしますか?」ヤゲローの表情が変わっている。
ヤゲローの本能が只事ではない、と知らしている。
「あれは・・・まだ使うな。相手がわからん以上こちらから手を出しても
回りの国々が騒ぐだけだ。」
「御意。」
「義父上。私は・・・どうしたら・・・。」ガロウは頭を下げた。ガロウの妻は
ギアの娘でありギアはガロウを買っていた。
「そうだな・・・お前はガスタブルグの国境に赴き、そこにいる部将、校尉と
協力をしておいてくれ。ガスタブルグから来る商人たちに検閲をかけろ。
良いな、徹底的にだ。紛れてくるかも知れぬ、間者どもが。」
「御意。義父上の命のままに。」
「では・・・・大儀であった。ご苦労。」ギアはそれだけ言うと謁見の間を出ていった。

マリエン、ヨアヒム、メリクリウス、ダールの4人は黄鶴都のある飯店で
食事を取っていた。さすがに夜通し会議だったので疲れたのだ。
だが、その4人にはオマケが付いていた。そう、ルシア皇女とギーガン国の
宰相がついてきたのである。
「どうして・・・・お前らがいるんだ・・・・。俺達、腹減っているってえのに・・・。」
ダールはテーブルに座ると刀を手放さないようにしていた。
「まあ、食事は多いほうがよい。お前がいつも言っているではないか。」
ヨアヒムは文句を言うダールに話しかけた。
「だけどよ・・・・俺だって静かに食いたいときがあるんだぜ・・・俺って繊細だからよ。」
「うそ・・・・・。」マリエンがそんな彼にツッコミをいれる。
その脇でメリルがおもっきり首を縦に振る。
「マリエンの言う通りね。だっていつもアンタ、がさつで・・・・。」
「ひでえなあ・・・まあ、マリエン、おまえだったらわかるだろう、俺の繊細なハートを。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」三人の沈黙が続いた。
「ああ、そうかよ、お前らって良い度胸しているよな。せっかく飯おごってやろうかな
って思っていたのによ・・・。」
「そうか・・・・・悪いな、ダール。」ヨアヒムが手を出した。
「何言っているんだ・・・お前と俺とでマリエンちゃんとメリルちゃんにおごるんだよ。」
「しょうがない・・・侍に二言はないからな。二人とも、あっ、それから
ルシア様、お好きなものを頼んで構いませんよ。」
ヨアヒムは笑いながらちょこんとテーブルについたルシア皇女と宰相に話しかけた。
「なら・・・私も少しばかり都合致しましょう。」控えていた宰相も懐に手を伸ばした。
「忝い(かたじけない)。」二人は頭を下げた。
「しかし・・・・お館さまはどうしたのだろうか・・・何か隠していらっしゃる。」
麺をすすっていたダールはふとそんな事を呟いた。
彼らがいるテーブルの周りは魔物や魔族たちが他のテーブルにつき喧騒があちこちで
聞こえている。ダールは聞こえるか聞こえない程度の声で残りの三人に話しかけた。
「やっぱり・・・・そう思います?」マリエンもダールの意見に同調した。
「それがわかっていても・・我々は「シロだ」と殿が言えばとりあえずは「シロ」と
言わなければならない。それが臣としての役目だ。」ヨアヒムは首を傾げる
ダールに釘をさした。
「お前もそう思ったのか・・・・じゃあ、あそこにいる皆そう思ったのかもな。」
「・・・・・・・・・だが・・我々には反対する理由がない。」
メリルは呟くように言った。彼女の前には蒸した饅頭が置かれてあった。
「確かにな・・・・でも気になるな・・・これからどうなるんだろう・・・・。」
ヨアヒムは虚空を見上げ呟いていた。
(続く)