--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(11) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月22日(火)21時32分18秒 

                   8.海帝

ネロ達はライゼーラの宮殿が見える門のところまで来た。多くの者たちが兵士たちに
よってチェックを受けて帰るもの、向こうにいるのはご用達の商人だろうか、
頭を下げて通っていく者、門の待合所、門番は人、人、人でごった返していた。
「何で・・・こんなに・・・・。」ネロはうんざりしていた。
と言うのも彼らは門をひとつ通る度にチェックを受け、剣を検められ、他の武器の
携帯など、厳しく検められたのである。
「ここは・・・・ジェリルの大門って言ってな、ここを抜けて馬車で乗合馬車で
しばらく揺られたあと、ようやく詰所が見えてくる。そこはここよりももっと
チェックが厳しい。たとえ、知人でも検められるんだぜ。」エクリマが
自慢そうに話した。
「え〜これから馬車に乗るの!!だって・・・もう宮殿が見えているじゃないか・・・。」
ネロは遠くにかすむ王宮を指差した。
「何言っているんだ・・・・他の国もこのぐらいは当たり前だぞ。」
「まあ・・・・・こちらはバロール殿の心証を得ております。これなら何とか
なるんじゃないかと・・・。」文官が取り成したが・・・・。
「それはないんじゃないかな・・・・あのおっさん、相当意地悪だぜ・・・。」
エクリマが門の前から動かない。
「どうしたんだよ・・・・。エクリマ、じゃ無かった、隊長。」
ネロが尋ねた。
「さっきから兵士たちが俺達を見ているんだ。何かこちらを見て何か言っているんだ。
相当・・・何かやったぞ・・・。」エクリマがじっと詰所にいる兵士たちを睨みつける。
その表情は険しく、いつ剣に手をかけてもおかしくない雰囲気があった。
「それなら・・・・わっ、こっちに来た・・・。」ネロは慌てて剣に手をかけようとした。
だが・・・エクリマがそれをやめさせた。
「やめとけ・・・この数ではお前に勝ち目はない。相手は・・・お前より「できる」。」
「何だって・・・・・・。」
「さっきから・・・見ていたんだが・・・あいつら・・・ただの衛兵じゃねえ・・・
精鋭部隊の連中だ・・・・剣の手付き、というのか持ち方、それから腰の構え方、
隙がまるでねえ・・・・・俺ぐらいになれば一目見れば分かる。」
「えっ・・・・だって・・・・。」
「バロールは・・・・特殊部隊の隊長でもあると同時に潜行部隊の長でもあるのさ。
だから・・・このぐらいの兵士配置は当たり前なんだよ。俺達を試しているのさ・・・。」
「何言っているんだ・・・・。」そうやっているうちにも精鋭部隊の兵士たちは
ゆっくりとネロたちに近づいていく。
「バロールの置き土産と言う事か・・・・最悪だな・・・・。」エクリマは辺りを見渡した。
「だって・・・・。」
「ここじゃ・・・剣は抜けねえよ。民を殺すのは・・・最低のする事だ。
だったら態度で示さなくちゃいけねえってことだ。」
「そんな・・・・・。」
4人は・・・・・辺りを見渡した。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(12) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月23日(水)16時11分16秒 

                  8.海帝

一方・・・・ここはどことも知れぬ場所。だが、ここに入ってくる者は意外と少ない。
むしろ、いないと思ったほうがよい。そこは黒塗りの宮殿があり、そこにいる者は少なく
誰もいないような雰囲気を醸し出していた。
だが・・・・きちんと整備された庭、さらに誰もいないのに刈り取られた草木がきちんと
整備されていた。
その宮殿の中では・・・・・。
数人が何やら声を出していた。
「俺達はいったい何時になったら遊ばしてくれるんだよ!!あのおっさんに付いていったら
このザマだ。だったらあの牢屋にいたほうが良かったぜ。」
一人は褐色の肌を持った竜族で、彼は声を張り上げて騒いでいた。
「少し・・・・静かにしないか・・・・・。」
傍らにいた黒ずくめの騎士がじろっと睨みつけた。
「あんだと・・・・俺がどうしようと勝手じゃねえか。そんな事より
お前こそ国を売って大丈夫なのかよ。黒騎士ボーゼルともあろう者がねえ・・・・
まさか黒剣士の誘いに乗ってくるとは・・・・。」
「ふん・・・・私はこの腐った世を浄化しようと思っただけだ。それに
いつかはデュラハンとも決着をつけなければならぬ。だが、いつまでも
あれと共にいたら私は自分が見失ってしまう。なら新しき世に賭けようと思ったまでだ。
もしかしたら・・・・民が豊かに暮らせる世が出来るかも知れぬ。そう思ったまでだ。
だからこそ、私は黒剣士殿に賭けてみようと思ったのだ。お前こそいつまで
同族を集めようとしない、キース?」
「ふん・・・・・・・楽しみは取っておく主義なんだよ・・・。それに
俺達の同志が集まり始めている。ギアやシャリム、ギルモアなんぞ敵じゃねえ。
だから、あと少し遊んでやろうとおもってな。」
「きゃはははははははは・・・・・・・!!!」そんな二人の会話に割り込んでくる
少女の声がした。暗闇からゆっくりと現れた少女はまだ10歳もいっていない少女であった。
だが、どう見ても狂気というのか、何か怨念のようなモノが感じられた。
「ばっかじゃないの!!キース。「殺し」こそ最高の美学。そうなのに遊んでいるなんて
信じらんない!!」
「けっ・・・・良い度胸しているぜ、ルナは・・・・。ウサギならここにはいないぜ。」
「ウサギは・・・・・逃げるだけだもの・・・・・あたしちゃんがじわりじわりと
追い詰める・・・・・・そして・・・ゆっくりと・・・・。」
少女は狂笑をしたが・・・・誰もそれを止めようとしない。
「しかし・・・・良く見付けて来た物だな・・・アガレスの失敗作を
拾ってくるなんて・・・・でも失敗作というのも頷けるぜ・・・・。」
「きゃははははははははは・・・・・そうそうアガレスお父様にははははは・・・
お礼をををを・・・しないと・・・・いけませんんえええええ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・狂気だな・・・・。魔物との合体がこんなに苦しめるもの
なのか・・・・魂が歪められるとこうなるのか・・・・。」
ボーゼルは剣を見ながら呟いていた。その声には哀れみが混ざっていた。

だが・・・そんな時あの黒剣士が現れた。
「ずいぶんと騒いでいるようだが、どうしたのだ・・・?」
「あっ・・これは黒剣士殿。これからの事を話していたところです。」
「これからの事・・・・?」
「そうです・・・・手始めにまず何をするべきなのか・・教えていただけませんか?」
「そうだな・・・・・だが・・まだ人材が足りない。お前達の出番はまだだ。
いくらルナ、キース。ボーゼル、ライだけでは話にならん。ようやく
我の声に反応したデリーンとか言うヘルバトラーを連れてきたが
使い物になるか分からん・・・・・。」
「そんなの・・・さっさと殺しちゃえば良いのに・・・・ぐずぐずなの物に
用はないよう・・・・あたしちゃんとライ兄ちゃん、ボーゼル、バカキースだけでも
十分だよ・・・・。」ルナが残酷な笑みを浮かべている。
「バカとは何だよ、バカとは・・・・手前・・・・ずいぶん調子こいてんじゃねえぞ・・。」
「へへーんだ。バカキースにやられないもんねえ・・・。バカ、バカ、バカ・・・
あれだったらライ兄ちゃんのほうがよっぽど良いもんねえ。優しいし。」
「何だと・・・・・・。そんなバカな。俺の皮膚装甲が。」
キースがルナの胸倉を掴もうとしたが・・・・キースの指から血が出てきた。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(13) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月25日(金)23時28分24秒 

                   8.海帝

アガレスは一人地下4階にある自分の研究室に向かっていた。壁から染み出る地下水は
澄みわたり、石という自然の濾過を得て綺麗な水となって階段をぬらしていた。
「ここまで来ると・・・むしろ底冷えがする・・・。」
アガレスは右手に持っていたランプを左手に持ちかえると目の前にある銀のドアに手を
かざした。するとどうだろう、ドアがぎぎぎと重い音を立てながら開いていった。
「よし・・・・・これを・・・そろそろ保管場所を変えないと。
殿には知らせていないが・・・必要になるかも知れぬ。」
アガレスは目の前にある何かの液体が浸してあるカプセルに手を伸ばした。
カプセルには何かの心臓だろうか、それがゆっくりと脈打っていた。
「・・・・・・すまぬ・・・・パーン殿。本当なら貴方もミルル様と一緒に
いたかったでしょうが・・・・・。」
アガレスはゆっくりとカプセルに手を伸ばすと不思議な事にカプセルを通過し、
心臓を掴んだ。
「あとは・・・・・これを・・・・この別のカプセルに入れてと・・・・。」
アガレスは手早くそれを別のカプセルに入れるとカプセルごとルーラを唱えた。
「もしかしたら・・・必要になるかも知れぬ・・・「ルナ」のように・・・・
「狂い」がミルル皇女に起きないとは限らない・・・だが・・・母の想い、
人間として生きたエリスの想い、本当のミルル皇女の想いがきっと
今のミルル皇女を助けてくれる・・・・だから・・・・これを・・・・。」
そう思いながらアガレスはどこかへとカプセルを運んでいった。
誰も知れぬ密かな場所へと・・・・・。
だが、のちにこのパーンの心臓はミルルがピンチになったとき・・・・・
役に立つことになるのである。

一方・・・・・・ライゼーラでは・・・・・。
四人は完全に囲まれていた。回りの兵士たちは黙って剣の柄に手をかけている。
隙あらば斬ろうという事なのだろう、じわりじわりと輪を縮めていく。
「くそっ・・・・!!俺は抜くぜ。おめえらは俺が引きつけている間に逃げろ!!」
エクリマは剣を抜こうとした。だが、そんな時だった。
ネロが兵士たちの隊長とおぼしき者に近づいたのである。
「お、おい!!お前、何やっているんだ!!さっさと戻れ!!」エクリマは叫んだが、
ネロはそれを聞こうとしない。そしてゆっくりと剣を捨てた。
「お前・・・怖くないのか・・・?」隊長は剣に手をかけたままじっとネロを睨みつけた。
「怖いさ。でも今逃げては駄目なんだ。これだけはわかる。だから僕は逃げない。
僕は・・・・逃げるのだけは嫌なんだ。みんな、僕をおいてどこかに行こうとしている。
でも僕は何も出来なかった。止める事なんて・・・出来なかった。だから・・・
今度は僕の番。だから斬りたければ斬れば良いさ。でも・・・・・それでも
僕は歩みを止めない。」
「ほほう・・・良い度胸だ。だがな・・・・それだけでは我々は通さんぞ。」
「それでも通してもらう。」ネロは隊長の間合いに入ってきた。ここまで来ると
剣が届く範囲である。それでもネロは入ってくる。隊長は剣を引き抜くと
ネロの頬に刀身を当てた。ひんやりと冷たい刀身がネロの頬に当たる。
「どうした・・・・もうびびっているのではないか?だったらそこに落ちているお前の剣を
拾えば良いだろう、どうしてやらない?」
「お前は・・・・斬れないよ。僕を・・・・分かるもの・・・・。」
「なんだと・・・・。」
「僕達は・・・バロール殿から心証を得ている。でもそれでも試そうとしている。
だけど・・・・「殺せ」という命を貴方は受けていないはずだ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」隊長は黙ってしまった。頬に当てている剣が震えている。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(14) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月26日(土)18時16分27秒 

                  8.海帝

どのくらい経っただろうか・・・・・・。隊長とネロは睨み合ったまま動けずにいた。
「どうしてわかる・・・。いや、わかったのだ。ふふふふ・・・・いやこうした
斬り合いの雰囲気という物が・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」ネロは黙って剣を見ず、じっと隊長を見つめていた。
「ふふふふ・・・・良い目だ。そうそう・・・・こういう目こそ大帝(シャリム)は
お望みなのだよ。民が望む事、ちゃんと理解する事・・それこそが
民を治める上で大切な事だ。ふふふ・・・さあ、こちらへ参られよ。
案内して進ぜよう。」隊長は剣をしまうと手招きをした。
「ふう・・・・・。」ネロは腰を降ろしてしまった。
「おい、おい、なんだよ、こいつ腰抜かしてやがる。情けねえ野郎だ。」
エクリマがネロの背中をバンバンと叩く。
「いてッ、痛いよ、隊長。」ネロは笑っていた。

隊長はそんな彼らを見て不敵な笑みを浮かべていた。
(そうだ、民を治めるという事は自分を犠牲する事も厭わない事も必要なのだ。)
隊長はネロに近づき手を伸ばした。
「ほら、立ち給え。大帝様がお待ちだ。付いて参れ。」
4人はゆっくりと隊長のあとをついていった。

そして・・・・・・・どのくらい時間が経っただろうか、ネロとエクリマ、文官と
ギーガン国の兵士はシャリムの前に立ち並んでいた。
「ようこそ・・・・ライゼーラへ。ご苦労であった。」シャリムは朗々とした声で
4人に話しかけた。
「はっ・・・・・お出迎えありがとうございます。シャリム大帝様。」
文官は恭しく頭を下げた。
「ふふふ・・・・気に入ったかね、私のプレゼントは。」シャリムは不敵な笑みを
浮かべていた。だが、ネロはじっとそんなシャリムを見つめていた。
「ああ、気に入ったよ、シャリム。おかげで剣を抜く羽目になりそうだったよ。」
エクリマは腕を組んで睨みつけた。
「おい!!貴様!!大帝の御前で!!」ホルム(宰相)が注意しようとしたとき
シャリムが笑って止めた。
「ふふふ・・・これはザルトの・・・・・・。どうかな?我々の国のもてなし方は?
お気に召したかな?」
「ああ・・・・・田舎侍の国(ベルクファクス)とは大違いだったがな・・・・
気に入られねえな・・・・。」エクリマは睨んだまま口元をゆがませた。
「まあ、そう言うな。おや、君は・・・・どこかで・・・・?」
シャリムはさっきから見つめているネロに気がついた。
(本当だ・・・どこかで見たことがある・・・誰だったかな?でも面白そうな目を
しているな・・・・。ベルクファクスの間者という可能性もあるが・・・
エクリマがいるんだ、多分、あいつの「おもちゃ」なのだろう。間者という「線」は
薄いな・・・・。)
シャリムはそんなことを考えながらネロを値踏みし始めていた。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(15) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月26日(土)21時52分24秒 

                  8.海帝

「おまえ・・・・名前は?」シャリムは跪いているネロに話しかけた。
だが、何も言わない。
「お前・・・大帝が質問をなされておられるのだ、さっさと答えぬか?」
宰相であるホルムが訝しげにネロに質問をした。
「おい、お前何やっているんだよ、さっさと答えるんだよ!!ははっ、こいつはさ、
俺の国の剣士隊の一人でお忍びで旅をしている俺の為につけてくれた部下だよ。
名前はネロって言うんだけど・・・・。」エクリマが焦りながら答えた。
だが・・・・・・シャリムはエクリマを一目見てこう言った。
「嘘だね。お前はさっきから嘘をついている。ネロという名前は本当らしいが
どう見てもお前の国の部隊の一人ではあるまい。」
「くそっ・・・・だから言ったんだ、手前の名前がはっきりしないから
こうなるんだ、早くシャリム帝に何か言うんだよ。おい、ネロ!!」
エクリマがネロに詰め寄ったがネロはじっとシャリムを見つめていた。
シャリムは何かネロと話してみたい気になった。というよりも興味が出てきたのだ。
「おい、ホルム、あとでコイツを私の私室に案内いたせ。それからエクリマ殿達には
それ相応の部屋を用意いたせ。良いな。」
「陛下!!どうなされました!!」ホルムはシャリムの突然の言葉に驚いていた。
「ふふっ・・・・コイツの剣、取り上げておけ。それから私の部屋へ。
興味がある。何かどこかで見たことがあるのだが、どうも良く分からない。
エルフの匂いと魔族の匂いが混ざったような匂いがするのだが・・・・
お前、今までどこの国にいた?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ガスタブルグでございます。」
「ガスタブルグ・・・・・・か・・・・。」シャリムは呟いた。
「ふふふっ・・・・どうだ?ちょっとばかり話をしてみないか?外国がどうなっているのか
教えてもらえないか?そうだ、お前幾つだ?」
「・・・・・・・・16歳でございます。」
「16歳か・・・・愛娘と同じだな・・・・。」
「えっ・・・シャリム、お前に娘がいたなんて初耳だぞ。名前何て言うんだ?」
エクリマが興味津々に話しかけた。
「お前のような「虫」がいたので今まで話さなかっただけだ。それに
お前に教えても意味がない。」
シャリムは憮然とした表情で答えた。
「それではネロとやらこちらに参れ。ホルムよ、文官からの書物を頼む。」
「御意。しかし・・・あの少年、どこかで見たことがあるのだが・・・・一体
誰だったのだろう・・・・それに私もバロールも何となく知っているようなのだが・・・。」
シャリムとネロが奥の部屋へ出ていったあと、ホルムと文官、エクリマたちは
首を傾げていた。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(16) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月27日(日)21時50分19秒 

                  8.海帝

ここはシャリムの私室。シャリムとネロは部屋に入った。そこは広くなく
ソファーと簡単ないすがいくつかあるだけであった。
「ここは・・・・・?」ネロはあたりを見渡した。
「ここか。ここは私の書斎みたいな部屋だ。一昔前は暗殺者たちがここに
入っていて要人暗殺などにも使ったんだよ。こうした隠れ部屋はいくつもあるんでね。
だが、田舎侍(ベルクファクス)の連中は
こうした部屋は無いと聞く・・・しかし我々のいる中央はそう言うわけにはいかなかった。
他人を簡単に信用するなど信じられなかった。今日の友は明日の敵、という感じだった。」
「・・・・・・・・・。」ネロは信じられない、という表情を浮かべていた。
昔言っていた、ライの話ではライゼーラはもっとも文化が進み、中央がよく機能していたと
言っていたからだ。だが、本当は違う。ネロはシャリムの話を聞いて
考え直さなければならなかった。本当は陰では暗殺も、毒殺も
汚い事をやっていたのである。
「どうして・・・・・・。」ネロは聞いた。
「そんな事よりも座り給え。執事に何か飲み物を持ってこさせよう。何が良いかね。」
「えっ・・・・・・何でも良いです。」
「そうか・・・ならお酒は、と言いたい所だが未成年には酒は勧められないから・・・・
甘いジュースにしておくか。」
「ありがとうございます・・・。」ネロは頭を下げた。
シャリムは頷くと呼び鈴を鳴らして執事を呼んだ。そしていくつか頼むと
執事は頭を下げ出ていった。
「さて・・・聞きたいことって何かね。」
シャリムは椅子に座りじっとネロを見た。シャリムのグリーンの瞳はネロが
どう言う行動を取るのか興味がつきない、という目をしていた。
「ライゼーラは・・・・どうしてそんな事までして・・・・命よりも国の法が優先される
のですか?」ネロは食って掛かった。
「ふふふ・・・・・君は青いな。」
「青い・・・・・どうして・・・・だってライさんが昔ライゼーラは良き国だって・・・。」
「果たしてどうかな、それは。どの国だって良き面と悪い面というのがある。
どちらも責められないのだよ。ベルクファクスも、それから君がたいせつにしていた
ギーガン国も裏では汚いことぐらいやっているんだよ。」

近代ヨーロッパの政治学者のマキャヴェリはよく国家を運営する上で
「宗教、道徳とは関係ない者こそが国家を運営する者であり
まさに「獅子の勇猛さと狐の狡知を兼ね備えた人物」こそが治めるべきである」
と言っていたそうである。だが、これは当時のイタリアが大国に囲まれていたという
事からそうした理論が必要だったのだ。
シャリムは国家を運営する上でこうした犠牲を伴う事も厭わず民を導いていく為には
必要と認識していたのである。だから暗殺者や情報収集部隊などが
存在していたのである。

(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(17) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月28日(月)21時17分38秒 

                   8.海帝

ネロは黙ってしまった。だが、シャリムはそんなネロをじっと見ていた。
「しかし・・・・君には何か懐かしいモノを感じる。昔どこかで会った事があったような
何処でだろう・・・・思い出せない。」
「はっ・・・・・・?でも大帝とは初対面ですが・・・・。」
「ふふっ・・・そうだったね。まあ、いずれ思い出すだろう。どうに年を取ると
嫌だね。とんと昔ばかり思い出して。そう言えば・・・アイツは人間界に行くって
聞かなかったな・・・・。こっちの国をほっぽりだして・・・・。」
「アイツ・・・?誰の事ですか。」
「ふふっ・・・・・昔のことだ・・・・ライゼーラ帝国より中央の
ギーガン国あたりに一大帝国があったのだよ。我々ライゼーラの者も
ベルクファクスの者もガスタブルグの王族達はそこの貴族だった者たちだ。
そこの王をピサロって言ってね、私とは魔軍の青年将校として同期だったんだ。
よく私とメランナが結婚した時は文句を言いながらわざわざ来てくれたものだ。」
「そのピサロさんはどうしたのですか・・・・。」
「私は・・・・・よく夢を見る・・・・・。」

シャリムはゆっくりと話し始めた。
「おい、シャリム!!シャリムって聞いているのか!!」ピサロが原っぱで寝ている
シャリムを叩き起こした。
「う〜ん・・・何だ、ピサロではないか。どうしたのだ?」
「なんだではない!!喜べ、あの勇者どもの所在がわかったのだ!!これも
ジャコージュのお陰だ。」
「ジャコージュ・・・・・・。」シャリムはその名前を繰り返した。
どうも危険な匂いがする。ここで王としている限り安泰なのに誰かが誑かした
せいでコイツ(ピサロ)がおかしくなってしまった。シャリムはそう思えて
ならなかった。
「おい、そこでシャリム!!お前を魔軍の魔将軍の地位を与えるから我々と共に
戦わぬか?そうすればこんな荒れ果てた魔界など捨てて人間界へ
誰にも束縛されない自由の世界を創造しようではないか。」
「・・・・・・・・・・・・・・・誰の差し金だ?」
「もちろん・・・・ジャコージュだ。彼は私の為に粉骨砕身して働いてくれている。
そうすれば・・・・・。」
(ジャコージュに近寄りすぎだな、ピサロ。)シャリムはそんな事を考えていた。
「どうだろう・・・シャリム。俺はお前が欲しい。ここで・・・。」
「すまぬがその話は遠慮したい。私には己が一族をまとめなければならぬという
使命がある。そっちのほうが先だ。だから遠慮させてもらいたい。」
「・・・・・・・・・そうか・・・残念だ。そうだ、気が変わったらいつでも来てくれ。
歓迎するぞ。」ピサロはそう言ってシャリムの元を離れていった。
ピサロのあとを追いかける形になってしまったシャリムはそこに何人か
ピサロを待っていた事に気がついた。
一人は女のエルフであり、もう一人は間違いなく魔界の者だ。シャリムの本能が告げている。
・・・・・・・アイツに関わってはいけない、と。
「そうか・・・・アイツがジャコージュか・・・・・危険な匂いがするな。」
シャリムの視線に気がついたピサロは手を振った。それに応えるように手を
振り返したが・・・・シャリムの表情は暗いものになっていた。

のちにピサロは勇者ユーリルに倒されるのである。それは皆さんが良く知っている事だろう。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(18) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月29日(火)21時46分00秒 

                   8.海帝

シャリムはそこまで言って少し照れくさくなったのか笑ってしまった。
「どうも、ね。こうした話には若い人は付いて来れないようだね。」
「えっ・・・いえ・・・そんな事は・・・。でもそのエルフはどうしたのですか?」
「ああ・・・・・可哀想なことをしたよ。何でも人間に死ぬまで
「泣かされて」しまったそうだ。」
「「泣かされた?」どういうことです?」
「ああ・・・・君は恐らく気がついていると思うけど・・・・。」シャリムはじっと
ネロを見た。その視線の意味に気がついたネロはちょっと不機嫌になった。
「ええ・・・・。陛下の思っておられる通りのことでございます。」
「相当嫌な思い出があるのだろう。まあ、深く追求しないさ。
エルフの事だったね。この女のエルフは珍しいことに涙が宝石になるんだ。だから
最後は哀れなものさ。人間に捕まってね。ピサロの胸の中で死んでいったんだけど・・・
どうやら・・・・ジャコージュが一枚かんでいたんだ・・・。
もうその頃にはピサロの胸は憎悪や憤怒などで一杯になっていた。救いようが
なかったんだな。それに・・・・・・ピサロが人間界に行っている間に
魔界の状況も変わった。ピサロの戻るべき国はもうすでに無く、
群雄割拠していたんだ。久しぶりにピサロが戻った時には・・・・
頭を下げる文官や群臣たちはそっぽを向き自分達が王を名乗って戦っていた状態
だったんだ。これも自分が悪いのに・・・・どうする事も出来なかった。
ギルモアなぞ、鼻で笑っていたぐらいだ、「そろそろ陛下もご隠居なされたほうが
利口ですな。もしよろしければ私のほうで小さい一戸建てをご用意致しますが。」
などと言っていたよ。そう、「ピサロ」という過去の遺物にもう用は無かったんだよ。
だから・・・・ピサロは地上に目を向けるしかなかったんだ・・・・。」
「そんな・・・・だったらピサロさんが可哀想だ。」
「そうだな・・・・昔はアイツから手紙をもらっていたよ。人間界で
黄金の腕輪を見つけたとか、どっかの国の武術大会に出て結構人間にも強い者がいると
感心していた事とか、どこだったかな、どこかの村を焼き討ちしたとか
自慢気に書いてあったよ。だが・・・次第に手紙に愚痴が混ざるようになっていったよ。
ジャコージュがまた人間をいたずら半分で殺したが・・・・どんなに刑罰を与えようと
しても部下の何人かが言う事を聞いてくれないとか書いてあった。
あの時からかな・・・・字が乱雑で読みにくくなったんだ。どうやら酒におぼれて
いたらしい。よくその愚痴を書いてあったがインクが滲んでいたり、乱雑だったりで
読めないんだ・・・。ところどころには涙のあともあったな。」
「そうなんですか・・・・・。」ネロは見た事もない父に哀れみを感じていた。
(続く)

--------------------------------------------------------------------------------

闇の覇者・真王たる者・海帝(19) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 8月30日(水)21時42分10秒 

                  8.海帝

そして・・・・・シャリムの私室のドアがきいと開いた。
「わっ・・・・誰だ!!」ネロは思わず身構えたが剣が無いのに気がついて
どうする事も出来ず立ったままになってしまった。
「こら!!どうしてお前が来ているんだ!!」シャリムは思わず怒鳴ってしまった。
だがドアから出てきた少女は父の怒鳴り声を聞いて思わず身を固くしてしまった。
「だって・・・執事さんが・・・急用で・・・その・・・来られないって・・・
だから・・・・・お父様の少しでも・・・・えぐっ・・・・ぐすっ・・・・・。」
少女は思わず泣き出してしまった。
「ああ、落ち着きなさい、アクリラ。父が悪かった。だが、ノックをしないのは
失礼な事だぞ。」
「だって・・・・えぐっ・・・ぐすっ・・・えぐっ・・・・。」
アクリラと呼ばれた少女はなかなか泣き止まない。ネロはどうする事も出来ず
ただ立ち尽くしていたがシャリムがネロに頭を下げた。
「すまないね。見苦しいところをお見せして。この子は私の愛娘のアクリラだ。」
「い、いえ・・・・・。」ネロはどうしたら良いか分からなかったが
アクリラに近づくとポケットからいくつかの貝殻を出した。
「ねえ・・・・これ・・・嗅いで見て・・・・。これ落ち着くから・・・ね。」
ネロは貝殻に塗られている薬草をちょっとアクリラに嗅がせた。
するとどうだろう、アクリラは少し気分が落ち着いたのか泣き止んだ。
「良かった・・・。」ネロは安心した。
「え・・・・・えへへへへ・・・・ごめんなさい・・・ちょっとどうかしていました。
そうですわ、私のほうが悪かったのです。駄目なアクリラです。」
アクリラはちょっこと舌を出した。
「ふふふふ・・・・・。」
「クスクスクス・・・・・。」二人は笑い出した。
シャリムは何か感づいていた。
(ほう・・・・アクリラを落ち着かせるとは・・・・しかも薬草だけで・・・・
これは・・・こいつに「投資」をしてみるのも良いかもしれんな。
まあ、駄目だったら「切り捨てれば」良いしな。使い道がありそうだ・・・・。
それにアクリラがあんなに笑うなんて見たことが無い。可愛い笑顔だ・・・・。
う〜ん・・・・そろそろアクリラにも「外遊」させてやりたいと思っていたが
もしかしたら・・・ネロ君と一緒なら世間を知る良い機会になるかもしれんな。)
「まあ、ネロ君って仰るんですね。私の名前はアクリラって申します。」
「よろしくアクリラ様。」
「アクリラ様なんて他人行儀ですわ。アクリラで構いません。」
「えっ・・・・でも・・・・・。アクリラ様はここの姫様で・・・・。」
「なら・・・アクリラさんで構いませんか?その代わり私もネロ君で通しますから。
これならいかがでしょう?」
「それなら・・・・・・・・・。」
ネロは納得した表情を浮かべていた。
(続く)