
-------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(1) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月27日(木)00時08分22秒 5.騎士乱舞 ライはルーラで南の砦に向かった。しかし飛んでいると次第に見えてきた。 黒い点が・・・・そうフラームが言っていた「黒魔甲冑騎隊」という 中身ががらんどうのムービング・アーマーが・・・・・。 「あれが・・・・・遥か南の首狩族の村を一人残らず殺したという・・・・。」 素直な感想であった。そしてライはネロを連れて行かなかった事が正解だったと 思った。 「よし・・・・・そろそろ南の砦だな・・・・。」ライは飛躍(ルーラ)のスペルを解いた。 あっという間に光の点が次第に止まって行く・・・。そうしてライは現れた。 「遅かったな!!どうしたのかと思ったぞ!!」ライは先に行っていたガッシュと合流 した。 「ああ・・・・あのネロにとまどってな・・・。」 「そうか・・・・まあ、戦争が終わったら会いに行けば良いさ。」 「それよりもお前・・・・ティルナとはもう良いのか。」 「まあな・・・・もう今生の別れのような物は済ませてきたしな・・・。」ガッシュが さびしく笑おうとしたとき・・・・ライは後ろにいる女性に気がついた。 だが、ガッシュは気がつかない。 「ガッシュ・・・・・本当に良いのか・・・。」 「ああ・・・・・これで良かったんだ・・・だってさ・・・・。」 「ええ・・・・私はぜんぜん満足していませんけどね・・・・。」 急に背後から女の声がしたのでガッシュは振り返った。 「じゃあな・・・・ガッシュ。良い想いでを。」ライはそのままどこかに行ってしまった。 「ライ!てめえ・・・・知っていやがったな・・・このやろう・・・・。」 ガッシュは叫んでいたがティルナが自分のほうを向けさせた。 「どうして・・・・ここにいるんだ・・・・。ルシアは・・・・どうした? 今母親が必要なのは分かっている事だぞ・・・。」 「ええ・・・・でも今は・・・貴方の妻として私もここで貴方と一緒にいる事にしました。」 「だが・・・・・。」 「私はもう王族を捨てました。今はただの高等魔族のティルナです。 ルシアは・・・・お父様のところにいます。お父様は仰いました。 「お前がどのような道を歩むかはお前次第だ。だが・・・・決して愛した男性の ところを離れるようでは・・・ガッシュに申し訳が立たぬからな。決して 恥ずかしくない戦いをして参れ。」と、仰いました。だから私の意思でここに 行くことにしたのです。」 「何考えているんだ・・・・お前は・・・・。」 「それに・・・貴方も王族を捨てたのでしょう・・・いつも着けている勲章が ありませんよ。ふふっ・・・・ガッシュ・・・。」 「・・・・・・・・。ふふふふ・・・・参りました。ではティルナ・・・行こうか。 どこまでどうなるか分からないけど・・・行くところまで、行く着くところまで 行こうか・・・・・。」 「はい・・・・ガッシュ。行きましょう・・・・私はどこまでも貴方についていきます。 来るなと言われても・・・ついていきます。」 「ティルナ・・・・。」 「ガッシュ・・・・・。」二人は抱き合ってキスを交わした。だが、周りにいた者は 顔を真っ赤にするだけであった。 しばらくして・・・・・ 「では・・・報告を聞こうか・・・。」ガッシュはフラームからの報告を聞いた。 だが・・・・それは好ましいものではなかった。 「・・・・・・・・・私は・・・・マクシナス、ヤゲローと言う男が 恐ろしく感じがします。あの首狩族の件だって普通なら苦戦するところが まさか一隊派遣しただけで・・・勝ってしまうのですから・・・・恐ろしい感じがします。」 「ふうむ・・・・・。」 ガッシュはうめくしかなかった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(2) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月27日(木)20時50分48秒 5.騎士乱舞 「なんだこりゃ!!俺達をバカにしているのかよ!!」ライと共に出撃した 部隊はあまりの兵の弱さにただ呆れていた。 面白いように攻撃があたる。しかもライが放つ剣戟は数体の鎧を弾き飛ばし ばらばらにしていった。 「こりゃ・・・・打って出たほうが正解だな・・・マクシナス・・・・ 恐れるに足らず。」ライは相手が繰り出す槍を避けつつ魔法剣を炸裂させた。 「鬼人剣!!」ライが放つ必殺の剣戟は数体の黒き鎧を弾き飛ばし そのまま大地に叩きつけた。地響きが南の砦まで聞こえてくる。 ガッシュはフラームに笑いかけた。 「これでは・・・話にならないな。どこが怖いというのだろう・・・拍子抜けだよ。」 「そうですね。マクシナスと言う男は何を考えているのでしょう。弱い兵士を派遣して。」 二人と周りにいた兵士、武将たちは笑っていた。 だが・・・・一人だけ笑っていない兵士がいた。首狩族の兵士が一言呟いた。 「あの時と同じだ・・・・あの時と・・・・俺達はあれでやられたんだ・・・。」 「何言っているんだ!!勝っているじゃないか。本陣に迫ってヤゲローの首を ・・・・・。」 「駄目なんだ!!それでは!!俺達には食料も水も豊富にある。遠戦をしかけてきた 連中は大変かもしれないけど・・・これからなんだよ、俺達が地獄を見るのは!!」 「おまえ・・・・・どうしたんだ・・・・一体・・・震えているじゃないか・・・。」 近くにいた兵士が話し掛けた。 「俺の村も・・・・・連中にやられたんだ・・・・。やられるはずがないんだ・・・・。 だけどな・・・・・。」 首狩族の戦士は黙ってしまった。ガッシュはその二人の会話を聞いていた。 「どうなるんだ・・・・第一勝っているじゃないか、俺達が!!」 ガッシュは首狩族の戦士に近づいて首を締め上げた。 「今は・・・です、陛下。でもそれが・・・・どういう事になるかご存知ですか?」 「何言っているんだ・・・お前・・・・。」 だがそこにいた者はみな黙ってしまった。言いようの無い不安と恐怖が確実に 襲い掛かっていたのである。 一方・・・・・黄鶴都では・・・・。 「負けているように見えます・・・・マクシナス様。やはり私が・・・・。」 マリエンは戦況を見て隣にいたマクシナスに話しかけた。 「いや・・・・これで良い。連中には良い夢を見たほうが良い。そのうち地獄が 待っているとも知らずにな・・・さあ、どんどん自分たちの持てる力を使って 相手を攻撃したまえ。」そこにはライが必殺剣を放っているのが写っている。 ギアは腕を組んで黙ったまま映し出されている画面を見ているだけであった。 そして・・・・・・恐怖が忍び寄ってくることも知らずに・・・夕方になろうとしていた。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(3) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月28日(金)21時39分22秒 5.騎士乱舞 戦闘はギーガン国有利で進んでいた。そして夕方になろうとしていた時のことである。 ギーガン国の兵士は全員負傷者無しで戦っていた。これもライの指揮能力が 高かったこともあるが・・・・だが本当に・・・何とも言えない恐怖が確実に 忍び寄っていったのである。それに気がついた者は一人もいなかった。 あのライも・・・・・・。 そして・・・・・ギーガン国に属するベレス族の戦士の胸を・・・・・槍が・・・・ 貫いた。そこにいた者は皆・・・信じられない・・・表情をしていた・・・・。 「どうして・・・・・・?なぜだ・・・・なぜ・・・当たったんだ・・・・・。」 ライはそんなベレスの死体を見ながら唖然としていた。 だが、ライにめがけて槍が投げられてきた。ライは何とか避けるとそのまま 黒い鎧を叩き潰した。 一方・・・・黄鶴都では・・・・・。 「あれ・・・・?どうして当たったんでしょう?さっきまで不利だったのに・・?」 「ふふふふ・・・・・・・。」マクシナスは不敵な笑みを浮かべた。 「ヤゲロー様はご存知なのですか?」 「ああ・・・・・・・知っている。弟は最初からこれを待っていたんだ。何もしなくても あっちから・・・・・・。」 マクシナスはただ見ているだけであった。 「・・・・・・・・・。」 ギアは何も言おうとしない。ただ・・・・見ているだけである。 「どうして・・・・・当たるんだ・・・・?」ライは回りの兵士たちを見てみた。 だが・・・・いつもより動きが悪い。だがしばらくして思い立ったのである。 「そうか・・・・我々は・・・・・最初から敵の罠に嵌められていたんだ。 早く退却するんだ!!このままではこちらが負ける!!」 「えっ・・・・・何言っているんですか!!ライ殿!!」 近くにいた兵士がライの発言に驚いた。 こういう話を聞いた事があるだろうか。第一次世界大戦の時、ドイツとフランスの 兵士たちは塹壕戦という熾烈な環境での戦いに強いられた。だが・・・・ それは様々な外圧精神的ストレスを生み出す結果になってしまったのである。 砲弾と銃器の・・・曝され、さらにいつやられるかもしれないという外圧の中、 さらに新兵器(戦車、火炎放射器など)が生み出されるまで 兵士達は「そこ(塹壕)」にいることを強いられた。 ストレス・・・・つまり・・・・ライたちの部隊はこれに陥ってしまったのである。 同じ事を繰り返し・・・さらに・・・「敵」が四六時中・・・戦いをし 「飯」を食べず、「寝る」こともしない。さらに「休憩」というのもない・・・・ ライ達はまさに単調な戦いの為に一瞬だが判断能力が鈍ってしまったのである。 だが・・・・恐怖はこれからである・・・・・・・もうすでにマクシナスの計に はまっている・・・・・・。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(4) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月29日(土)21時23分18秒 5.騎士乱舞 その効果はすぐに顕われた。囲みを突破して何とか戻ってきたライ達は戦闘能力が 大幅にダウンしていたのである。 「くそっ・・・・やられた・・・このままでは・・・俺達犬死だ・・。」 ライは右腕から流れている血を止血したあと呟いた。 「大丈夫か!!ライ。無理するな。」ガッシュが心配そうに近寄った。 「ああ、大丈夫!!元気だぜ・・・。」 「それなら良いんだ。だけどよ・・・・心配させるなよ。」ガッシュはクシャクシャと ライの髪を乱暴に撫ぜた。 しかし・・・夜になったとき・・・はじめて判ったのである・・・。 ライは寝床で軽い眠りについていた。だが・・・・良く寝ているはずなのに どうも身体が重い。別に風邪を引いているわけでもない。ただ重い。 それは城壁にいる兵士たちも同じような症状が出始めていた。 「うう・・・・・ううう・・・・。」城壁の壁に凭れかかっている兵士が うめき声を出している。回りの兵士たちも同じようにうめき声を出している。 彼らは聞いていたのである・・・黒い鎧達が行進をし、城壁の周りを無表情に、 何の感情も無く行進を繰り返していたのである。攻撃するわけでもなく ただ行進しているのである。 ガシャ、ガシャ、ガシャ・・・・・・。鎧の擦れ合う音が砦の中にまで響いてくる。 最初は兵士たちの間でも嘲笑したりしていたが時間が経つにつれて それがまるで死に誘う軍靴の音に聞こえてくるのである。 兵士達は耳を塞ぐか、物を鎧達に投げ付けたりしていたが相手は物言わぬ鎧、 無表情に何も無かったのかように行進を繰り返すだけである。 そう、死の行進のように軍靴の音がライ達をまるでノイローゼにしていくようである。 何人かの兵士達が砦を抜け出し、ベルクファクスへ下ろうとしたが・・・・・ 待っているの・・・・死だけであった。どうしてそうなったかはわかるだろう・・・。 それは戦闘部隊として戦っていたライにも・・・・・顕われた。彼が仮眠を取っていたが ・・・知らないうちに城門の鉄扉の閂に手をかけていた。 それに気がついた兵士が慌てて止めたのである。 「ライ殿、ライ殿!!」門番の兵士が押さえつけてようやくライは正気になったが 扉の取っ手に手をかけていた自分を見て何も言えなかった。 「・・・・・・そんなバカな・・・・俺は逃げようとしていた?無意識に・・・?」 「ライ殿・・・とにかく落ち着いてくだされ!!相手の誘惑に乗っては駄目です!! 今までだって数人の兵士が戻ってきていません!!今行ったら死が待っています!!」 門番の兵士はライを押さえつけながら叫んでいた。 「すまない・・・・もう大丈夫だ・・・・。」 ライは何とか立ち上がると埃を叩いた。 「これが・・・・マクシナスの計・・・・・。何と言う恐ろしさだ・・・・だから 南の首狩族が全滅したのは・・・これのせいなのか・・・・一体どうすれば・・・。」 そんな時だった。 「ライ殿!!ちょっと来てくだされ!!殿がお呼びでございます!!」 向こうからフラームがやって来た。 「どうしたのです!!」 ライはフラームと一緒に走っていった。 一体どうしたのだろうか・・・・・・・。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(5) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月29日(土)23時30分04秒 5.騎士乱舞 「どうしたというのだ?ガッシュ?」ライはガッシュの寝室に行ってみた。 そこには・・・・・なみなみとタブレットに酒が入っていた。 「おい、これは・・・?」ちょうどそのとき、ガッシュが現れた。 「どうも、こうも酒だよ、これは?お前なんだと思っているんだ?フラーム お前もちょっと付き合え。」ガッシュは待機していたフラームを手招きした。 「よろしいのですか?私で?」 「構わんよ。たまには下士官たちと飲むのも良いだろうと思ってね。ほら、 ティルナも何か作ってくれたし・・・・おい、ティルナ、付き合え。」 「ええ・・・良いの?でも・・・・。」台所から声がした。どうやら何か作っていたらしい。 「ふふふ・・・・良いだろう・・・たまには、な。それに・・・・・ もうギーガン国は・・・・・。」ガッシュの声のトーンが低くなった。 「どうした・・・・・?」ライは何か不吉な予感がした。 「まだ誰も言っていないんだが・・・・ギーガン城が無血開城した・・・。」 「えっ・・・・・何言っているんだよ!!どうして!!どこの者だ!!」 「ライゼーラだよ・・・・。」 つまり・・・・ギーガン国は無条件降伏をした、と言う事なのである。 ライゼーラのバロール将軍は住民を慰撫し、国印などを没収した。 「どうするんだよ・・・・・。」ライの頭の中はどうするか考えるのに必死であった。 「ほら・・・・・ちょっと飲め。一番辛いのは・・・俺なんだぞ。」 ガッシュは杯に酒を注いだ。 「ああ・・・・悪い・・・でも・・・・。」 「まあ・・・良いから、飲め。手は考えてある。それにな・・・・。」 「それにな・・・・?」 ライはくいっと杯を飲み干した。ガッシュはどんどん酒を継ぎ足す。 そうしてライは大量の酒を飲んで寝てしまった。 「・・・・・・・・・・・寝たのか?」 「ええ・・・・・・・・・。」ティルナはライの口に手を当てる。かすかな寝息がする。 「フラーム・・・・手はずはわかっているな・・・・。王族だけが知っている抜け道を 通ってお前はベルクファクスへ行け。それから宰相、お前もだ。ルシアを・・・ 頼む。そして・・・・・ライ・・・・。有難う・・・・今まで俺はお前に頼ってばかり だった。お前は・・・・自分でどうするか・・・考えろ。ベルクファクスへ行っても ライゼーラに行っても・・・・どちらでも好きな道を行け・・・・。」 ガッシュは熟睡しているライに話しかけた。ライは何も言わない。 「フラーム・・・・兵士達はどうしている・・・?」 「はっ・・・・もうすでに手はずは整っております・・・。」 「フラーム・・・・・俺は・・・・・有能な王だったか・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・・私は貴方にお仕えして・・・・幸せでした。 ささっ・・ティルナ様も・・・・。」フラームは後ろを向けたまま応えた。 その肩は何か震えているようであった。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(6) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月30日(日)18時52分13秒 5.騎士乱舞 「ティルナ様・・・・?どうしたのですか?」フラームは厨房にいるはずの ガッシュの妻に話しかけた。ティルナは肩が震えていた。泣いているのだろう・・・ 「ティルナ様・・・・・。」フラームは話かける言葉が無かった。 「ティルナ・・・・お前は国境を越えてベルクファクスへ行け。義父殿はああ申したが 私には大切な娘を死なせたくないと思うのだ・・・だから・・・・。」 ガッシュの最後の言葉は聞こえなかった。たぶん無念さと悔しさで一杯 なのだろう・・・・。握りこぶしには血が出始めていた。 「それから・・・・フラームと宰相の助命嘆願はギア殿とマクシナス殿下、ヤゲロー殿下の 了解を得てある。たぶん・・・・大丈夫だろう・・・・。ルシアの 件も・・・快く引受けてくれた・・・・。あとは頼む・・・・。」 「はっ・・・・・今まで・・・お仕え出来たこと・・・・このフラーム光栄で ございます・・・・。」 「無念でございます・・・・・。」二人は顔を伏せた。 「フラーム・・・・・・もう・・・・兵士達は知っているのだな・・・。」 「はっ・・・・・。」 「では・・・・・お前の軍団を・・・我々の直属部隊に編入して・・・ 突撃をかける。そしてお前達はその隙に・・・。」 「畏まりました・・・。」宰相は頭を下げた。 「それから・・・・兵士の中でベルクファクス、ライゼーラ、ガスタブルグに下ろうと 言うのであれば・・・止めはしない。」 「陛下・・・・もうそんな事・・・下知してありますよ。知っているから みなここにいるのです。」 「・・・・・・・そうか・・・・みな・・・ギーガン国が好きなのだな・・・。」 中庭の兵士たちはギーガンの国歌を口ずさみながら武器庫から槍や 剣、杖などを出して決戦の用意をしていた。誰も悲しむ者などいない。 もう・・・・・自分の運命は決まっている。だったら華々しく散りたい・・・ 兵士達は・・・・・何も言わず・・・黙々と準備をしていた。 そうして・・・・・最後の用意は整った。 ライは・・・・夢を見ていた。 ガッシュとその妻ティルナが出てくる夢だった。二人が楽しそうに笑い、 ライやゾイドと言った連中が酒を飲み、肉を食め楽しそうに談笑している。 だが・・・・・ゾイドが・・・・ギルモアに八つ裂きにされ・・・・ 夢の中でライは絶叫していた・・・・。 ライは・・・・・少年時代に戻っていた。村がまだ焼かれず皆元気であった頃の・・・ 夢。 「ほら・・・・どうした!!ライ!!お前の腕はこんなものか!!」 若い騎士の声がする。 「はあ、はあ、はあ・・・・・くそっ、もう一度お願いします!!ガープ先輩!!」 「そうだ!!お前はやればできる!!」ガープは身構えた。 ライは上から攻撃しようとして高くジャンプした。 「お前に・・・教えたよな、高く上がった場合・・・足元が隙だらけになるって。」 ガープは軽く剣をライの足に当ててやる。 「いて!!」もんどりうってライがそのまま落ちる。 「ほら!!剣は待ってくれないぞ!!」ガープの剣戟が迫る。 ガチッ!!剣が青い火花を散らしながらぶつかり合う。 「ライ・・・・私はもう一度教えたよな。相手が、上の場合どうするかって事を。」 「・・・・・・・・。」 「そのときは・・・・・。」ガープは一瞬力をこめた。ライも同じように力をこめる。 だが・・・・・。 「受け流す。」剣があっという間に外れたと思ったときにはライはたたらを踏んで 倒れこんでいた。そしてすぐにライが起き上がった時には目の前に剣先があった。 「ふふふ・・・ほら騎士殿、おきたまえ。」ガープは手を貸してやった。 「ど、どうも・・・・・。」 「まだまだだな・・・・ライ。」 ガープは竜に乗って飛び立っていった。 そんなガープをライはいつまでも見送っていた。いつまでも・・・・ (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者。騎士乱舞(7) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 7月31日(月)00時38分52秒 5.騎士乱舞 ライは・・・・・夢を見ていた。ライが登城しギルモアに謁見した時のこと、 そして王妃パーンにも会った事、その娘、皇女ミルルにも会った事・・・・・。 (そうだ・・・・オレはあの御方の笑みを見て憧れていたんだ・・・・・ あの竜のお姫様を見て・・・とても輝いていた・・・・あの御方が 太陽の日の光を見る事が出来ないって聞いたときも皇女様は何も言わず 明るく振舞っていた・・・・でもオレは知っている・・・・。) 「ねえ・・・・ライ。」ミルルは自分の部屋で絵本を読んでいる。 ライは剣を携え直立不動の姿勢で立っていた。 「はっ・・・・。なんでございましょう、ミルル様?」 「私が・・・・病気だって知っていた?ライ?」 「そんな事・・・ありません。きっと・・・・・。」 「うそ!!私が知らないと思っているの!!私知っているんだから!!自分のこと!!」 ミルルは赤い竜眼に涙をためてライをにらんだ。 「・・・・・・・・・・。」しかしライは何も言わない。 「ねえ・・・・ライ・・・・人間界ってどんな所?お父様は何も教えてくれない・・・ とても危険な場所で・・・・私達魔族が行けば狩られるって・・・・。 でもこの絵本に書かれている事は・・・ぜんぜん違う・・・どうして・・・・。」 「しかし・・・・それは・・・・。」 「ねえ・・・・ライ。連れていって・・・・人間界へ。」 ライは抱き着いてくる竜皇女に何も出来なかった。 でも・・・・・・。 「駄目でございます・・・・私は剣士見習の身。私は・・・・・。」 「・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・。」しばらく見詰め合う。そして・・・・・。 「ぷぷぷっ・・・ライって可愛い。冗談。冗談に決まっているじゃない。変なの・・・。」 (そうだ・・・・オレは・・・分かっていた・・・・皇女様が消えて無くなるのを・・・ 皇女は運命を黙って受け入れたんだ・・・・でも・・・オレは何も出来なかった・・・・。) そして・・・・ライは何かの夢を見た。そこは炎に包まれ、多くの兵士達が死に 躯が山のように積み重なっていた。 その上に・・・・血まみれのガッシュとティルナがいた。二人の身体には 槍が貫かれ、二人は全身血まみれでライを見つめていた。 「おい・・・・こっちは来ては行けないところだぜ。ふふふふ・・・・・。 ほら・・・・もうお前は・・・・戻りな・・・オレ達を乗り越えて・・・ お前がしたい事をやれよ。お前は出来る。やればできるんだ・・・・俺達は もう・・・・ここから先へ進む事も歩く事もできない・・・・だから・・・・ 見ていてやるよ。お前・・・・牙王なんだろ・・・・・ふふふふふ・・・・・・。」 「ライさん・・・・ありがとう・・・・ね。でもね、私達にいつまでも構っていては いけないの・・・・私は武人の娘だから・・・ガッシュの事好きだから、 愛しているから・・・・私も運命を受け入れるの・・・・好き・・・・ガッシュ・・・。」 頭から血を出しているティルナがライに話しかけた。 ガッシュとティルナは呪文を唱え始めた・・・・それは爆発呪文の中でも最高の破壊力を 誇る・・・・イオナズンのスペルであった。 そして・・・・二人の・・・・・体が爆風で消えていった・・・・・。 ライは叫んでいた。泣いていた。 「ライ殿!!、ライ殿!!」誰かの声がしてライは夢から醒めた。 身体中が冷水を浴びたみたいにびっしょり濡れていた。そして痛い。 「ここは・・・・・・?」ライは微かに目を開けてみた。どうやら三人の気配がする。 ライはゆっくりと身体を起こした。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(8) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 1日(火)20時49分55秒 5.騎士乱舞 「誰かいるのか・・・・・?」ライは身体を起こしたが誰かに止められた。 「まだ・・・駄目でございます。」ライを押さえた男性はライの事を知っている人物 であった。ライは彼の名前を呼んだ。 「フラーム・・・・ここは?」 ライは辺りを見渡してみる。見たことも無い大きめな部屋で、天井には円形の 絵柄が彫り込まれている。そして衝立の向こうには誰かいるのだろうか、 人の気配がしている。 部屋はまるでドーム状の部屋のようだ、ライは目を開けただけでしばらく 呆然としていた。 「・・・・・・・・ここは・・・・?」ライはフラームにたずねた。 「ここは・・・・・・ベルクファクス王国首都「黄鶴都」宮殿 の一室でございます。」 「なっ・・・・ベルクファクス!!」ライはおきようとしたが何故か身体が 痛いのかなかなか起き上がれない。 「ほら・・・・落ち着いてください。」フラームは何とか落ち着かせようとしたが ライは傍らにあった刀を取ってベッドから起きようとした。 「何をするのです!!ライ殿!!」 「決まっているだろう、ギーガン国を助けに行く!!お前も行くのだろう!! 早くしろ、出陣の用意だ!!」 「お止め下さい!!そんな事をしてもここは敵国の中心部ですぞ。」 「うるさい!!」ライの目に涙が浮かんでいた。 「ライ殿・・・・・・。」 そんな時だった・・・衝立をどかして二人の男性が入ってきた。 「どうですか・・・・ってライ殿!!何やっているんですか!!」 一人はギーガン国の宰相であった。もう一人は・・・・・眼光が鋭い 男性で年は・・・・おそらく28〜29歳ぐらいだろうか じろっとライをにらんでいた。 「しかし・・・・・落ち着かない男だな・・・貴殿は。」 「貴様・・・誰だ!!」ライは剣先をその男性に向けた。 だが男性は動じていない。むしろ冷たさというのか、そんなものが一層濃くなった ような気がした。 「私の名はマクシナス・ベルクファクス。貴殿も聞いた事はあるだろう。 今回は事情聴取という形で参った。さらにこのお二人からは事情は聞かせてもらった。 ガッシュ公の遺命の件・・・・は分かった。しかし・・・この男性は 何者なのだ?」 「オレは・・・・ガッシュの盟友のライ・タツムネ!!義によって助太刀をしたんだ、 それを・・・貴様のせいで・・・・。」 「分かっているなら・・・話は早い。で、お前はどうする?その身体で私を殺すか。」 「当ったり前だ!!くらえ、鬼の剣!!鬼陣斬!!」 ライは剣を繰り出そうとしたが、マクシナスは避けてアッパーカットを 食らわした。 「そんな満身創痍で何が出来る。それに・・・・もう一人客人がいることを 忘れるな。」マクシナスは平然と言うと衝立の裏に隠れていた人物を呼んだ。 それは・・・・・・幼い少女であった。 「貴方は・・・・・?」ライは顎をさすりながらたずねた。 「わたしは・・・・・・・ギーガン国の皇女、ルシア・ギーガンと申します。」 幼いルシア皇女は何とか挨拶をした。 「・・・・・・どうして・・・・・・。」 「貴殿は知らないだろうが説明しておく。ガッシュ王はギーガン国が滅ぼされるのも 時間の問題として母方の両親がいるベルクファクスへと秘密裏に送っておいたのだ。 そして・・・・ここにいるお二人に姫の養育を頼んだのだ。 ティルナ嬢はこれでもベルクファクスの武士の家柄でな・・・・。」 マクシナスは腕を組んで話はじめた。 「そうか・・・・・・そうだったのか・・・・・。くくっ・・・・どうして みんな先に行ってしまうんだよ・・・・そんなに死に急ぐ事が 勇敢の証左なのかよ・・・・くくっ・・・おかしいぜ・・・・・ ゾイド、ガッシュ・・・・ティルナ・・・・・。」 「泣かないで・・・・・。」ルシア皇女は懐からハンカチを出した。 「姫・・・・・・・・・。寂しくありませんか・・・・・。」 「うん・・・・でも母様は・・・・・とても勇敢だったってフラームさんが・・・。 それに今泣いたら・・・・ギーガン国にいるみんなに笑われちゃう・・・だから・・・・。」 「姫・・・・・・・。」 「だから・・・・笑って・・・・ライ。お父様はそんな事で泣かなかった。 貴方が・・・・・泣いてどうするの・・・・・・。」ルシアは言葉を選んでいるが あちこちに涙まじりの声がしていた。 「・・・・・・・そうですね・・・・・。」 ライは何とか笑おうとした。 (続く) -------------------------------------------------------------------------------- 闇の覇者・真王たる者・騎士乱舞(9) 投稿者:おんしー(on see) 投稿日: 8月 1日(火)21時12分02秒 5.騎士乱舞 そんな時だった。何か声がしたと思ったときには衝立のほうから にゅっと人形が出てきたのだ。しかもそれは熊の人形であった。 「あれ・・・・・・?」ルシアはきょとんとその人形をしばらく見ていた。 マクシナスは呆れたような表情を浮かべていた。 「ねえ、ねえ・・・・ルシアちゃん、ボクと遊ぼうよ、ね、ね。」人形は その小さな手で手招きをした。 「貴方だあ〜れ?」ルシアは涙を浮かべながらいたずらっぽく返事をした。 「えっ・・・・・・ボクは熊ちゃん。だから・・・。」 「うそ。後ろにいる人誰?」ルシアは指を指した。 「えっ・・・・だれもいないよ。だって・・ボクは人形の・・・。」 「バレているぞ・・・・まったくお前は精神年齢いくつだ?」 マクシナスは呆れたように衝立の後ろにいる者に話しかけた。 「え〜・・・・もうバレたんですか・・・・・。せっかく人間界から 人形を取り寄せてきたのに・・・。」 「女性・・・?」ライは首をかしげた。 そして・・・・衝立を避けるように一人の女性が進み出た。 「・・・・・・・貴方は?」宰相が尋ねた。 「私の名前はマリエンと申します。これでも・・・。」 マクシナスがいきなり口を手で塞いだ。 「ここから先は軍事機密でな。申し訳無いが名前だけと言う事で勘弁してもらおう。」 「そうですか。なら仕方ありません。私の名は・・・・。」 順次宰相、フラーム、ルシアと挨拶していくが・・・・ライは何か首を傾げていた。 (はて・・・・・どこかで聞いた事があるなあ・・・どこかで・・・・ 思いだせん・・・・・はて・・・・・どこで・・・・どこかで少女の名前を 聞いた事があるのだが・・・・思いだせん。) 「あの〜どうしました?」マリエンが覗きこむ。 「えっ、あああ・・・いや、その・・・・。」 「おかしな方。私の名前はマリエンと申します。貴方のお名前は?」マリエンが くすくす笑っている。 「・・・・・・・あっ、ライ・タツムネと申します。」 「まあ・・・・ライさんと仰るのですか。よろしくお願いします。」 「マリエン。すまぬがルシア皇女を連れて行ってくれ。」マクシナスは目配せをした。 「・・・・・・・・。」笑顔だったマリエンの表情が消えるとそのままルシア皇女を 抱き上げた。 「ね、ね、お姉ちゃんと遊ぼう。ルシアちゃんと同じぐらいの年齢の子、沢山いるよ。」 「本当!!」いつのまにかルシアは笑顔になっていた。 そして色々と話ながらマリエンはルシアを連れて部屋を出ていった。 「さてと・・・・・・。」マクシナスはライのほうを向き直った。 (続く)