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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(9) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月04日(火)07時42分14秒 

                  1.魔皇変

ネロは森の中を突き進んでいた。さすが、人材登用にかけては目があるギルモアは
ネロのこの能力に魅力を感じていた。と言うのもネロが歩くだけでも木々が勝手に
避けて行くのである。これはエルフだけの力である。魔族はこうした力を持っていない。
魔族は破壊能力にかけては凄まじいものがあるが、こうしたネロの
能力は魔族には無い物であった。

そして・・・・ネロは小さい泉に辿り着いた。ここからちょっと歩けば人間の集落
がある。ネロは倒木の一つに腰掛けるとリュックを開いて中身の確認をはじめた。
「・・・・・・・・・・薬草、満月草、消え去り草が10袋・・・・っと。
世界樹の葉が5枚、毒消し草が10袋。ルラムーン草が5袋っと。
それから短剣。あとはブロンズナイフが3本。」ネロはそのうちの短剣を取り出して
素振りをはじめた。
「いつかは・・・・父さんみたいな剣士になって・・・父さんを楽させてやるんだ。」
だが、それは難しいこともネロはわかっている。自分は剣士や騎士というのに
向いていないということも。
でも今は一生懸命剣を振りつづける・・・・・。

                      ***

エリスは泣きながら森をうろついていた。父親が酔っ払ってエリスを殴ったからだ。
さらに父親は台所から包丁を持ってきた時、エリスはそのまま家を飛び出してしまった。
父親はテーブルに包丁を突き刺したままそんなエリスを追いかけもせず、ただ
ニヤニヤ笑うだけであった。エリスは・・・・頬を押さえたまま迷いの森の
方へ走って行ってしまった。この時母親が買い物に出かけなければ
エリスは、マリエンは人間界に戻ってこれたろう。
「ヒック、ぐすっ、ヒック・・・・・。」エリスは泣きながら森をウロウロしていた。
その時エリスの腕を掴んだ者がいた。マリエンである。
「慌てて出かけて行ったから追いかけたのよ。駄目じゃない・・・。」
「だって・・・・ヒック、グスッ、ヒック・・・父さんが・・・ヒック、グスッ
・・・・・・・今度は私を殺すんだ・・・ヒック・・・・。」
「そんなわけないじゃない・・・可愛い娘を殺すわけないじゃない。バカねもう・・。」
マリエンは笑おうとしたが、急にエリスに寄りかかった。
「マリエン・・・?どうしたの・・・?」
「げほっ、げほっ・・・・。薬が切れたみたい。私のポシェットに薬草があるの。
はあ、はあ・・・・苦しい・・・・げほっ、げほっ・・・。そこから
薬草を・・・・・。」
「待って!!分かった。この先に小さな泉があるから、そこで一休みしましょう。」
エリスはマリエンをオンブするとそのままゆっくりと泉の方へ歩き出した。

                    ***

ネロは剣を振るっていた。その時草叢がガサガサ音がしたので慌てて見構えた。
「誰だ・・・・・?」だがネロの本能は敵じゃないと教えている。
そして・・・出てきたのは人間の少女たちであった。
「あっ・・・・・。」エリスはそのまま固まってしまった。
「こんにちは。僕は怪しい者じゃないよ。物々交換に来た者なんだけど・・・。」
ネロは屈託の無い笑顔を向けた。
「えっ・・・そうなんですか・・・・すみません・・・てっきり・・・・。」
「エ、エリス・・・・。」マリエンの声がした。
「マ、マリエン!!早く降ろさないと。」
エリスはマリエンを静かに下ろした。そして寝かして、泉の水で濡らしたハンカチを
額にのせてやる。
「どうしたのですか!!」
「彼女・・・生まれつき心臓に病があって薬がないと行けないんです。私のために
走って追いかけてくれたんです。」
「どの薬ですか?」
「えっと・・・・・この薬ですが・・・。」エリスはネロの前にそれを出した。
ネロは、薬をちょっと舐め、匂い、香りを嗅いだ。
「なるほど・・・・この薬ですか。でもこれだとあまりいい効果は期待できないな・・・。」
「えっ・・・・・。」
「ちょっと待っていて下さい。調合してみます。」
「えっ・・・・でも・・・貴方は出きるのですか。だって・・・。」
「ふっ・・・僕は・・・・。」ネロは金髪の髪をそっとかきあげた。
「エルフですよ。薬草にかけては人間よりもはるかに知っていますよ。」
「エルフ・・・・・・。」

ギルモアが欲しがった理由の一つにネロのこうした薬草学があった。傷だらけになることが
ある魔界での戦いに薬草や回復魔法が使える者は重宝するのである。
ネロは本能でこれを理解している。

「えっと・・・・薬草を・・・・5袋。それから・・・満月草を・・・6袋。
これを摩り下ろして・・・あの・・・。」
「えっ・・・どうしたのですか!!」
「その人の胸に塗りますんで上着を・・・・・。」
「えっ・・・あの、その・・・・。」
エリスは真っ赤になってしまった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(10) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月04日(火)22時53分40秒 

                  1.魔皇変

「ようし・・・・あと少し。」ネロはエリスに調合した薬を渡した。
「これを・・・どうするのですか?」エリスは不思議そうな表情を浮かべた。
「まず、これはクリームだから胸に塗って。それから今作っている薬は飲み薬だから
これを一日3回で飲むようにすれば。とりあえずこの薬を塗ってください。」
エリスは言われた通り薬をマリエンの胸に塗り始めた。
するとどうだろう、苦悶の表情を浮かべていたマリエンの顔は不思議な事に良くなって行く
ではないか。
それを見ていたエリスとネロはお互いの顔を見て、ほおーっと一息をついた。
しばらくネロはそのマリエンの顔をじっと見ていた。
「あとは・・・・これはこの子が目覚めたらこの薬を渡して。
これは強心剤だから・・・本人に言えば・・・分かるから。」
「ありがとうございます。えーっと・・・。」
「ネロだよ。」
「ネロさん、ありがとうございます。私の名前はエリスって言います。それから
寝ている子はマリエンって言うんです。本当に
ありがとうございます。助かりました。」
「・・・・・・でも・・・・本当はベッドで安静にしないと・・・。」
マリエンをじっと見ていたネロは頬が赤くなるのも関係無しにエリスに話かけた。
「えっ・・・そんなに・・・だってマリエン・・・そんな事一言も・・・。」
「我慢していたんだよ。」
「どうしたら・・・・・・・。」エリスは涙を溜めてネロを見た。
「それなら・・・・・・・僕の家に来ない?そこなら・・・何とかなると・・・。」
「いいの・・・?だって迷惑じゃない?」
「ううん・・・ただ僕の家は・・・・。」
その時だった。二人が話している近くの草叢がガサガサ音がした。
「誰・・・・!!」エリスは咄嗟にマリエンを守ろうとした。
「大丈夫だよ、その人は僕の父さんだ。」出てきたのは筋肉質の魔物だった。
だが、その瞳には生気がない。ネロ達はそれに気がついていない。
「父さん・・・だって・・・。」エリスはそれしか言えなかった。
「僕は・・・魔物、って言うのかな、僕はその魔物に育てられたんだ・・・
でも大丈夫だよ、この人はいい人だよ。僕には分かるんだ。だから信じて欲しいんだ。」
「・・・・・・・・大丈夫?本当に・・・?」エリスは心配そうにネロを見つめた。
エリスの脳裏には・・・・・・・・昔、遥か昔にいた父親の姿が・・・
出てきた。それは今の酒乱の父親じゃない。とても優しくて・・・それでいて
厳しい人だった。母は嫌っていたけどエリスはその厳しい父が好きだった。
その姿とネロの父を名乗るアンクルホーンの姿が重なった。
「ねえ・・・・・連れて行ってくれないかな・・・マリエンもここで寝ていたら・・・
死んじゃう・・・・だから・・・・。」
「うん・・・・分かった・・・・喜んで・・・。」ネロはエリスの手を取った。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(11) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月07日(金)22時34分54秒 

                  1.魔皇変

気がついたマリエンとエリスはゾイドのあとをついて行った。
ネロとゾイドは黙ったまま話をしない。
「ねえ・・・・どうしたのかな・・?」マリエンが心配そうにエリスに聞いた。
「う〜ん・・・。どうして黙っているのかな?それとも・・・。」
エリスはネロに話しかけようとした。
「ねえ・・・・ネロ君・・・?」だがネロは急いでエリスの口を塞ぐと
黙って行くように目で合図をした。
目の前の地面にはたくさんの孔が開いており、何か空気が流れているように見えた。
(・・・・・・・?)マリエンは首を傾げながらもその指示に従った。
しばらくして・・・・4人はようやく話をする事が出来た。
「どうしたの・・・?」最初に口を開けたのはマリエンだった。
「ああ、あそこな・・・・あちこちに孔があったろ。あれ・・・・ラーバキングの棲家
なんだよ。少しでもあいつ等に感づかれたら最後、火炎か蟻酸のような物で
溶かされてしまうんだ。だから・・・。」
「そうだったの・・・・ありがとう・・・・。」
マリエンはニコリと微笑んだ。その顔を見たネロは途端に真っ赤になった。
だが、普通ならつられて笑うゾイドが笑おうとしない。
ネロは不思議な表情を浮かべながらゾイドに話かけた。
「どうしたの・・・父さん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
しばらく黙っていたゾイドは笑おうともせず、じっとネロを睨みつけた後、
話し始めた。
「ネロ・・・・・ギルモア様が呼んでいる。はやくトジョウするように・・。」
静かにそれだけ言うとゾイドは黙ってしまった。
「父さん・・・・?」
「登城するように・・・・・・・・・。」
「分かった・・・・いけばいいんだね。じゃあ、君達待っていて。遊ぶのはあとにしよう。」
それぞれ頷いた二人の少女は笑いながら部屋の中に入って行った。
「じゃあ・・・・行きますか、で、何の用なの?何か言っていた?」
「特に・・・・・・・。」ゾイドはそれだけを言うとスタスタ歩き出してしまった。
「ああ、ちょっと待ってよ、父さん!!」ネロはまるで走るかのようにゾイドのあとを
ついていった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者(12) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月08日(土)21時21分07秒 

                  1.魔皇変

マリエンとエリスの二人はネロに案内された部屋でくつろいでいた。
時々マリエンはネロの事をしつこくエリスに聞いていたものだから
エリスは頬を膨らませてしまうのだった。
「でねー、エリス、聞いているの!!ほら、私の話はこれからなの!!」
「もう・・・勘弁してよ・・・・マリエン・・・・。」
積極的に話すマリエンと比較してもエリスのほうは静かで大人しい印象を受ける。
それでもエリスはマリエンと笑い、時には怒ったりして話を興じていた。
だが・・・・・・・・・・・。

ガスタブルグ城の閲覧の間では、ネロとゾイド、それに彼の上官であるガープ、アガレスが、
そしてギルモアがネロをじっと睨みつけていた。
「久しいな、ネロ。どうだ、身体の方は?」ギルモアはじっとネロを確かめるように
話かけた。
「はっ・・・・・。ご壮健で何よりです。ギルモア様。」ネロはゾイドがした礼を真似て
頭を下げた。
「ふむ・・・・まあ、それなりに礼もできるようになったか。よい、よい。」
「それでご用とは何でございましょう、ギルモア様。」ネロは訊ねた。
「その件なんだが・・・・おい、アガレス、説明をしてやれ。」
「はっ。」アガレスは手にしていた皮用紙をネロに渡した。
「これは・・・・?」
「殿からの命です。本日付けをもってネロを遊撃軍に任命する。そしてこの書類を
もって第2騎士団のデュラハン殿のところへ行きなさい。」
「えっ・・・・・遊撃・・・?」

ガスタブルグでは遊撃というのは騎士団の先行部隊として敵と戦いながらも
索敵や諜報活動、さらには暗殺と言ったことをこなす部隊のことである。
ただ、現代と違う所はこういった部隊の兵士はエリートではなく、
「死にぞこない」の兵士の役目であったのだ。だから死亡率も高かったのだ。

「お断りします。どうして僕が、いえ、私が!!」激昂したネロは皮用紙を破り捨てた。
まわりにいた兵士や騎士たちが一斉に武器をとってネロ達を包囲した。
だが、ギルモアはその兵士達の動きを右手で制すると、ネロに話かけた。
「お主は、自分の力をどう思う?」
「えっ・・・・だって・・・私は・・騎士や剣士になりたくて・・・・。」
「しかしお主は、剣を装備できぬぞ。さらに重装備の物も出来ない。そうなれば
索敵や暗殺のほうが良いのではないか?私はそう思うのだがお主は
どう思う?」
ギルモアは静かにネロを睨みつけたがそれには命の反故や拒絶など引き受けない
意思の強さが感じられた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(13) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月09日(日)00時29分01秒 

                  1.魔皇変

謁見の間での事はネロにとって忘れられない出来事だったろう。のちに18歳になった
ネロはあの時の事をこう述懐している。

「確かに僕の能力は魔族から見たらどこか足りないものだったかもしれない。
それでも僕は生きることが出来た。」

さて、話をもとに戻すとしよう。
「お主は自分の力をどう思っておる?」ギルモアは皺だらけの手で顎をしきりに撫ぜていた。
「えっ・・・・私の・・・・力?」
「そうだ。お主は気がついていたか?お主は鉄製の物や重たい鋼鉄などは
装備できない。いや、お主の身体が受け付けないようにできておる。
その反面、お主は薬草学や森の精霊に話し掛けることで「道」を作り出す能力を
持っておる。だからだ。お主が攻撃魔法を習得するのではなく、マヌーサやピリオムと
言った攻撃補助魔法を習得すればこれほど優位なことはない。お主は力で勝負するのではなく
スピードで勝負するのだ。どうだ?」
「ですが・・・・・・。」
「まあ、剣の力を頼っても良いがそれでは直にそのギャップに苦しむ時が来よう。
それなら早いうちに・・・。」

のちにネロはこのギルモアを評してこう言っている。
「ギルモア、いやギルモア様はちゃんと見抜いておられた。僕はその言う事をきちんと
理解していなかった。ただ憎悪だけを心で燃やしてその後どうなるか考えていなかった
んだ。あれが国を治める、という事なんだと思う。」

「どうだ・・・・?」ギルモアは玉座から乗り出してネロを問い詰めた。
「・・・・・・・・嫌です!!だって僕は剣のために生きると決めたのです!!
だったら僕は、剣で戦って死にたい。」
「・・・・・・困ったな。ガープ、どうする?」
「そうですね。だったら・・・・・。ゾイド、彼を取り押えなさい。」
ガープは背後で跪いていたゾイドに命令を下した。
「えっ・・・?父さん。」ネロはあっという間に取り押えられた。
「何をするんだ!!ガープ様!!」
「言う事を聞かないというのが一番困るのだ。時には鬼となって国を守る為に
皇の言う事をそのまま実行しなければならないと言うことを。よく理解しておくのだな。
ギルモア様・・いかが致します?」
「ふ〜む・・・・仕方が無いな。こうなったら・・・「彼女」らに頑張ってもらおう。」
「えっ・・・・どういうことだ・・・・。」
ギルモアは右腕を伸ばした。ぐちゃという空間を裂く音がしてその先にいたのは・・・・
鷲づかみにされたエリスとマリエンだった。
「どうして・・・・・。」
「家臣の動きぐらい見ぬけんでどうするというのだ?お主が人間界に行ったことぐらい
分かっておったわ。」
「・・・・・・・・・・くっ。」ゾイドに取り押えられていたネロは項垂れるしかなかった。
しかしギルモアはエリスを見て内心驚いていた。
(まさか・・・・・どうしてここに・・・そうか・・・・お前帰ってきたのだな・・・
お帰り・・・・ミルル。)
「さて・・・慈悲ぶかい私はそれでもお主にチャンスをやろうと思う。」
ギルモアはそれだけ言うとネロの動きを封じていたゾイドの腕を緩めた。
ネロは・・・・しばらくギルモアをじっと睨みつけていた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(14) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月09日(日)11時06分35秒 

                   1.魔皇変

「さて・・・・はじめまして。私の名前はギルモア。ここの地を治める領主だよ。
こんにちは、マリエンちゃん、エリスちゃん。」
ギルモアはネロの声を真似て挨拶をした。
だが、二人とも涙とパニックのせいで声が出ない。ただ、涙のすすり泣く声がするだけである。
「ひっく・・・ぐすっ、ひっく・・・・。」マリエンはただ泣くだけである。
エリスはパニックになっていてもはや声も出てこない。
「困ったね。せっかく慈悲ぶかい領主様が僕を遊撃にしてくださると言うのに
僕ったらそれを断わってしまおうとしているんだ。どうしたら良いのかな?お二人さん?」
ギルモアはさらにネロの声を真似て話かけた。
「た、助けて・・・・ネロ君・・・。」マリエンは涙でぐしゅぐしゅになった顔を
ネロに向けた。だが、その瞬間、マリエンは吐血してしまった。
「おや・・・この子・・・身体に何か病を持っておるのか。だったら早く治療しないと
死ぬのではないか?私とて無意味な殺し合いというのは好きではないのでな。
ほれ、この子は返そう。」ネロはぽんと投げられたマリエンを優しく抱きしめた。
「マリエン・・・・ごめん。僕が・・・・。」ネロは抱きしめたままギルモアを睨みつけた。
「早くエリスも返せ!!殺し合いは好きではないのだろう!!」
「そうはいかん。これは君との態度で決まる事だ。どうするのか考えたか?」
ギルモアは高笑いをした。それがネロの怒りに火をつけた。
「お前は許せない!!」ネロの身体から魔力が噴出し始めた。
だが、抱き抱えているマリエンにとってその魔力は苦しさを増すだけであった。
「げほっ、げほっ・・・ぐはっ・・・げほっ・・・・ネロ君・・・・。」
さらに吐血して苦しんでいるマリエンを見てネロは魔力を抑えるしかなかった。
「ネロ君・・・・・・・いいの・・・・・私なら・・・・大丈夫だから・・・・
エリスちゃんを・・・・・。」マリエンはネロの腕の中で囁いた。
「くそっ・・・・・ごめん、マリエン!!」魔力をもとに戻したネロはそのまま
ギルモアに襲いかかった。
だが・・・・・・。

                    ***

「遅いな・・・・私を誰だと思っておる。私はこのガスタブルグを治める魔皇、
ギルモアなるぞ・・・・。」ひゅんと右手がしなったかと思った時には
ネロたちはいとも簡単に捕まえられていた。ギルモアの右手は確実にネロたちを
握りつぶそうとしていた。
そして・・・・ネロの身体のどこかがみしっと骨が砕ける音がしたあと、
ネロたちは壁に叩きつけられた。腕の中のマリエンは気絶し、ネロの上着に紅い染みが
できていた。
「ううっ・・・ぐっ・・・・・。」ネロの両腕は有らぬ方向へ折れ曲がり
ネロは激痛で身を屈めるしかなかった。それでもネロは立ちあがった。
エリスはもう・・・・・涙でぐしゅぐしゅになり、何かが壊れたような表情を浮かべていた。
「もう駄目だな・・・・この子。ほらネロ、お前に返そう。」エリスを投げた。
ネロはエリスを受け止めようとしたが、その瞬間、ギルモアの右腕がしなり、
ごきっと嫌な音ともにエリスの首が折れた。そしてネロの腕のなかに納まった。
「エリスーーーーーーーー!!」ネロは叫んでいた
だが、エリスは何も言わない。ただピクピクと身体が痙攣を繰り返すだけである。
「エリスちゃん・・・・・・・ごふっ、げほっ、げほっ・・・・。」
マリエンは涙を浮かべるしかなかった。
「エリス、エリス・・・・・・もう、お前は・・・許せない・・・殺してやる、
殺してやる!!」ネロの身体から魔力が溢れ出た瞬間、もの凄いスピードで
ギルモアに襲いかかった。
「さっきよりは早くなった。そうでないと困るのだ。だがな、私が本気を出したときよりは
遅い。」ギルモアは何かネロの前に手を振り翳した。
ネロは見えない手でいとも簡単に叩きつけられた。そして血の線を引いて崩れ落ちた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(15) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月09日(日)11時26分56秒 

                  1.魔皇変

「どうしたのだ?だからお前は遅いって言ったのだ。言ったであろう、お前は力では
勝負できないと。技やスピードで勝負するしかないのだと。」
ギルモアは玉座に座りなおした。
「ぐほっ・・・・それでも僕は・・・騎士に、剣士に・・・・。」
「やめとけ。お前はそうした素質を持っていない。ほら、私に頭を下げれば
その子たちの命ぐらい助けてやっても良いぞ。と言っても首の骨が折れた
そっちは助け様がないが。」
「貴様・・・・・・。」
ネロは立ちあがったがもう体力が残っていなかった。
ふうと一息ついたギルモアはゆっくりと玉座から立ちあがるとネロに近づいた。
「まったくしょうがない奴だ。そんな奴らのことなど放っておけばよいものを。
私がここまで頼み込んでやっているのだ、少しは反省したか?」
「お前のせいで・・・・だったら許せない・・・・。」
「もうちょっと反省が必要かな?」ギルモアは玉座に戻ろうとした。
その時だった。ギルモアは何者かに後から羽交い締めにされた。
「誰だ・・・・・。うん?お前は、ゾイド。何の真似だ。」
「お前のように・・・・人の命を玩ぶ奴に・・・・・・・。」ゾイドは力いっぱい
抱きしめた。
「早く・・・・ルーラで逃げるんだ。そのマリエンって子を連れて・・・・父さんは
もう・・・・。」
「父さん!!父さん!!はやく逃げるんだ!!でないと!!」
「早く行け・・・・・ぐぎゃああああああああ・・・・・・・。」
「喧しい。せっかくヘルバトラーにしてやったというのに。やっぱり失敗作だな、貴様も。」
あっという間にゾイドの両腕を飛ばしたギルモアはゾイドを真っ二つにした。
「さてと・・・・どうする?君のお父さんは中々言う事を聞かないから
私が処分したけど、まだやるかい。」
ギルモアは近づこうとしたがさっき切断したゾイドの腕に足を取られてしまった。
「まだ・・・・。くっ、しぶとい。しかたがないな、ゾイドに免じてお前を追放処分とする。」
そしてギルモアは右手を翳し、呪文を唱え始めた。
あっという間に右手に黒き球体が出来、ギルモアはそれをネロとマリエンに投げ付けた。
「うわあああああああああああ・・・・・・。」
「きゃああああああああああああ・・・・・・・。」
悲鳴と共に二人はそのまま黒き玉の中に吸い込まれて消えて行った。
「まったく・・・・大人しくしていれば・・・良いものを。」
ギルモアはそれだけ言うと玉座に座りなおした。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(16) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月09日(日)20時19分41秒 

                  1.魔皇変

「さてと・・・・・。邪魔者は去ったか。私が興味あるのは彼女だけだ。」
ギルモアは玉座から降り、首の骨が折れた少女をやさしく抱き上げた。
「ミルル・・・・お帰り。ようやく私の元へ。パーン、許せ。お前の娘、いや私の
娘でもあるか・・・死なせてしまって・・・だが、運命の神はようやく私のもとに
娘を返してくれた・・・・。アガレス!!」
「はっ・・・・ここに。」
「この娘・・・どうするか分かっておるな。」
「はい・・・・殿の気持ち、痛いほど分かります。」
「では・・・・任せる。」ギルモアは抱き上げた娘をそっとアガレスに渡した。
ガープはそんな二人をただ見ているしかなかった。

アガレスは地下の研究室へと降りていった。彼の後ろにはアークマージや
死霊使いと言ったキングレオ城にいたスタッフが続いていた。
そして、アガレスら一行は研究室に入った。そこは真中に
カプセルがあり、あちこちにはチューブで繋がれたカプセルがあちこちに配置してあった。
さらに怪しげな機械音がし、一緒に入ったアークマージたちは
四方に置いてあるカプセルの前の機械を操作し始めた。
「アガレス様。魂の固定は成功しております。今彼女には「魂」が固定され、
昇天する事はありません。ただ痛みが彼女を苦しめているだけです。」
死霊使いがエリスの顔色を見ながらアガレスに耳打ちした。
「では・・・・。」アガレスはエリスの着ている服を全て破り捨てた。
そのまま裸のエリスを中央にあるカプセルの中に入れた。カプセルの中は
何かの液体が入っており、アガレスはエリスをそこに浸すように入れ、
すぐに扉を閉めた。
「これで・・・・私の理論が完成する。あのピサロめは私を山師、狂言士など
いいおって、融合などに目も暮れなかった。だからこそ・・・・。」
「アガレス様・・・それで素体はこれでいいとして、融合する物は・・・・?」
「あるではありませんか。あのパーンの竜体ですよ。」
「えっ・・・・この少女と・・・・ですか?」死霊使いは目を丸くした。
「ギルモア様は許可を出しました。その為に使うのです。」
「では・・・・一部分だけ使います。」
死霊使いは肉片を入れると同じようにカプセルの蓋を閉めた。
「融合開始。」至る所から声がし、カプセルが振動をはじめた。
「いよいよ・・・・ふふっ。これで・・・。」アガレスはカプセルから生じる明りを
じっと見ていた。

そして・・・・どのくらい経ったであろうか・・・。
カプセルの蓋が開けられ、竜体が無いのを確認すると中央のカプセルの蓋も開けられた。
みな、カプセルの中を覗きこんだ。それを見たアガレスは声も出なかった。
「なんて・・・・美しい・・・・・まるで・・・パーン様・・・・・。」
そこには赤ちゃんのようにまるくなって寝ている竜の子がいた。耳には角が生えており
背中には竜の羽根が出ていた。銀色の髪はまるで銀糸ように美しく、液体の
中をまるで波のように揺らいでいた。尻尾には黄金の鱗のような物が
ついていた。
「これが・・・・・グレイトドラゴン・・・・女王竜・・・・の子・・・・。」
「まるでミルル様のようだ・・・いや、再臨だ・・・・あのいと優しきミルル様の・・・。」
そこにいた誰もが同じような声をあげた。
だが・・・・ギルモアの声がした。
「それでは駄目だ。もっと彼女を・・・・混沌に近づけないと・・・ミルルになれない。」
「ギルモア様・・・・ですが・・・。」
「構わん。今ある竜肉全部使え。それから暗黒水を。」
「ですが・・・・。そんな事をしたらせっかくの素体が・・・。ここまで
いけば成功そのものです。それにもしそんな事をしたら人間に戻せなくなります。
純粋に魔族となってしまいます。良いのですか!!」
「構わんと言っておるだろう。さっさと言われた事をやってみろ。私の予想が
正しければ・・・。」
「はっ・・・・では。」
アガレスは命令を実行に移した。

アガレスはこれでは素体の体力が持たないだろうと思っていたが・・・
この話はまた今度。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変編(17) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月10日(月)21時06分45秒 

                  1.魔皇変

あれから一週間が過ぎた。アガレスは研究室に篭りっぱなしで国政に
参加してこなかった。その行為を咎める家臣もいたがギルモアが、
「もう少し待ってやってくれ。」というのでその家臣もしぶしぶ同意していた。

夜になり、人間界よりも暗い闇がガスタブルグ城を覆い尽くす。
その地下室では未だにアガレスとそのスタッフ、そして「ミルル」と名づけられた
「素体」の実験が続いていた。
「これで全部です。」別のカプセルの前にいた死霊使いが叫んだ。
「分かった。では・・・・暗黒水を注入する。純度は・・・・・。まずは
50パーセント。それからだ。」
ネクロマンサーが別の容器に入っているドス黒い液体を「ミルル」と書かれている
カプセルに流入していく。そして真っ黒になり、中が見えなくなった時を見計らって
蓋が閉じられた。
すぐにアガレスが手前にあるレバーを引く。すると何か混ざる音がして静かになった。
「やはり・・・・・・駄目でしたか・・・ギルモア様にご報告を・・・。
皆さん、ご苦労様でした。直に殿より・・・何だ、この波動は!!」
アガレスは、いやそこにいた者全員が聞いた。
心臓の音である。しかもグレイトドラゴンを越える竜族の波動である。
そしてゆっくりとカプセルの蓋が開き、透明な水になり、そこには赤ちゃんのように
丸くなって液体に浮かんでいる竜の少女がいた。
アガレスはそんな彼女を見てただ感動しているだけであった。
「こんな・・・竜は聞いた事が無い・・・・もしかしたら・・・・これは・・・
面白い・・・・戦闘タイプの竜が出来あがるかもしれぬ・・・・ようし・・・・。」
「アガレス様・・・・どうしますか・・・・私はもう・・・・。」
死霊使いが口をガクガクしながらアガレスに話かけた。
「ふっ・・・・大丈夫ですよ。彼女は攻撃をしてきません。もしかしたら・・・
ガスタブルグに「勝利の女神」が降臨したのかもしれませんよ。何者にも
負けない「女王竜」を。」
「えっ・・・・・まさか・・・あの「地獄の四日間」で活躍した
若き頃の「女王竜」の・・・・・再来を・・・・。」
「ええ、そうです。我々は歴史の証人となるのです。ゾクゾクしますよ、これほどの
素体に会えた事を。さあ・・・・今度は我々の実験、やってみたい事につきあってもらい
ますよ、「ミルル」様。」
アガレスはカプセルの中をじっと見ていた。

「さて・・・・・次は・・・・・「暗黒水純度100パーセント」、これで行きます。
私もどうなるか見た事が無いのです・・・でもこの子はそれも可能になるはずです。
今まで純度50パーセントでも普通の人間は発狂し、死に至るのに、
この少女は物の見事に自分の力に変えてしまった。さあ、早く流入するのです!!」
「はっ・・・・・。」ネクロマンサーはカプセルに入っている無明の液体を
カプセルの中に注ぎ込んだ。あっという間に透き通っていたカプセルが
見えなくなり、そのまま蓋が閉じられた。
そして・・・・・先ほどと同じように何かが混ざる音がし、静かになった。
「分子レベルでの融合成功・・・・ですが・・・もう彼女は人間に戻れません。
純粋たる魔族になっています。ただ・・・私でも・・・どうなるのか・・・分かりません
我々を敵と思うのか、それとも・・・ミルル様と同じように・・・優しい皇女様に
なるのか・・・それは・・・。」
アガレスにレポートを渡しながら死霊使いやアークマージは同じことを言った。
「・・・・・・分かりました。では・・・・蓋を開けましょう。どうなっているのか・・。
さあ・・・・お目覚めですよ、ミルル様。」
アガレスはゆっくりとカプセルの蓋を開けた。
「こ、これは・・・・・・。」アガレスとそのスタッフはカプセルの中を見て
絶句してしまった。どうなってしまったのだろうか・・・・・。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・魔皇変(18) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日:07月11日(火)00時23分34秒 

                  1.魔皇変

「これは・・・・・何だ?何になってしまったんだ?」カプセルを覗きこんだ
アークマージはあちこち見ていたが・・・・・。
「ふ〜む・・・・融合を続けて行くとこうなるのですか・・・・。
参考になりました。おそらく・・・彼女は・・・・「女王竜」そのものになってしまった
のでしょうね・・・。だから・・・結果として・・・こうなったのも頷けます。」
「ですが・・・・これでは・・・・。」
「まあ、待ちなさい。これはこれで使えると思う。誰かギルモア様を呼んできてくれ。
見てもらいたいものがあると言っておきなさい。きっと気に入ると思うぞ・・・。」
「はっ・・・・・・。」誰かが部屋の外へと走って行ってしまった。
しばらくしてギルモアはやって来た。
「どうした・・・・・・。」
「いえ、これを見てください。カプセルの中を開けて見ましたところ、
こうなっておりまして・・・・。」
「ほう・・・・・どうやら完全な「竜族」になったのだな・・・。」
ギルモアはじっとカプセルの中を見つめていた。
皆の視線の先には・・・・・・「卵」になっていた彼女がいた。

そして・・・・・「卵」にひび割れが出来始めた。
誰かがごくりとツバを飲む音がする。誰もがこれからどうなるのだろう
という希望や複雑な心情で一杯になっていた。
「卵」の殻にはひび割れがあちこちに出来、卵の中で何か動いている事だけはわかる。
「うっ・・・・しかし・・・・物凄い竜気だな・・・・・。」
「まったくだ・・・・・もはや「魔竜気」と言った所か。」
彼らの後ろでは兵士達がひそひそ話をしていた。

そして・・・・・・・・・。
「卵」が割れ、そこから・・・・一人の少女が現われた。
まるで赤子のように目をくりくり動かしながらあちこちを見ていた。
ギルモアは改めて少女を見た。
あの「エリス」とかいう少女の顔・身体はそっくりだが、細かい所、例えば
髪は腰まであり、髪の色は銀色、額には何か竜の文字が書かれており、
グレイトドラゴンの特徴である「黄金」の尻尾が生え、翼はまるで
黄金の羽根が綺麗な形を作っていた。

「おお・・・・・何と言う美しさだ・・・・。」誰もが見惚れてしまった。
「素体」はじっとギルモアを見つめていた。
くりくりとした目は可愛らしく赤い竜眼はギルモアを掴んで離さない。
「あなたは・・・・誰ですか?」
「わしか・・・・わしは・・・・・お前の父じゃ。さあ、こっちへおいで。もっと
お前を見せておくれ。」
「・・・・・・・・お父様?私の・・・・お父様?」
「そうじゃ・・・。」
皆背後にいた者達はその少女の動作をじっと見ているしかなかった。
「・・・・・・・・お父様。はじめまして・・・ずっとここにいらしたんですね。
私の名前は・・・・・・・え〜っと・・・・・え〜っと・・・・。」
「どうしたのじゃ・・・・。」
「私の名前が・・・・・何と言う名前なのか分からないよう・・・え〜っと・・・・。」
「エリス・・・・という名前ではなかったか?」
アガレスがその少女に聞いた。だが、少女は首を横に振った。
「違う・・・・私はそんな・・・・。」
「では・・・・・。」アガレスは途方に暮れてしまった。

「ミルル・・・・・こっちへおいで。」ギルモアは手招きをした。
「えっ・・・・・・・。」
「ミルル・・・・・・・・。」少女はその名をゆっくりと繰り返した。
「そうじゃ・・・お主はミルル・・・・。」
「・・・・・・・・・よろしくおねがいします、お父様。私の名前はミルルって言うの。
これでいいんですね。」
「そうだ・・・ミルル・・・。お帰り・・・。」
少女はギルモアの胸の中で抱きしめた。
そう、そうして・・・・・「魔竜姫」が復活したのである。
(続く)