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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(5) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 7月18日(火) 0時 8分36秒 

                3.三国鼎立

一方・・・・ベルクファクス王国宮廷では・・・。
「いや〜この度の戦勝、まことにおめでとうございます。」何人かの文官が
歩いてきたマクシナスに頭を下げていた。
「これで・・・・・ガスタブルグの犬どもは手を出してきませんでしょう。
そうしたら・・・次はライゼーラか、それともギーガンあたりにでも遠征をして
王のご威光を知らしめる絶好のチャンスです!!」文官の一人が熱くマクシナスに
言い始めた。
しかし・・・・マクシナスの表情は変わらない。むしろ冷たさが増したような
感じであった。
「各々方、今回の件、本当に助かりました。ですがこれで今回の戦闘の件は
忘れてください。もう無かった事にしましょう。それから遠征の件はまた今度に。
むしろ・・・・戦闘で負けたと思っていてください。それから
食料の備蓄、さらに軍の再編成、亡くなった騎士たちの家族への見舞金、
塩漬けになっている肉の確認などすることは沢山あります。それからにしてください。」
淡々と話すマクシナスに周りの者は黙ってしまった。
「ですが・・・・もうガスタブルグは攻めてこれないでしょう。あれだけの
痛手を被ったのです、軍の再編成をするだけでも数ヶ月はかかるでしょう。」
文官の一人がマクシナスに話し掛けた。
だが・・・・・。
「それではお聞きします。あなたはガスタブルグが攻めてこないという確率は
何パーセントだとお思いですか?」
「・・・・・・・・・・まあ、見積もって60パーセントは来ないでしょう。」
「残りの40パーセントは来ますね。それではガスタブルグがこないという
事にはなりません。」マクシナスはかけていた銀縁のメガネをひょいとなおした。
「うっ・・・・・・・・。」
「まあ、今回だけ認めましょう。ですが油断大敵です。ライゼーラ側の国境警備頼みましたよ。」
マクシナスはそのまま文官の輪から抜け出していった。
「しかし・・・凄い方だ・・・。まるで精密を旨としているかのようだ。」
「ギア様も国政は一目おいているらしい・・・・。」
文官たちはマクシナスが去った後もそれぞれ噂し合ったのだった。

マクシナスはある部屋の前で止まった。そしてノックする。
「は〜い。」中から女性の声がした。
「失礼するよ。」マクシナスはそのまま部屋に入っていった。
そこには・・・・・。
ショートカットの栗色の髪の少女が子供達と遊んでいた。
と言うよりも優しさ、慈愛の目で子供達と遊んでいたのである。
「また・・・・・。子供達を中に入れて。」マクシナスは呆れたようなそれでいて
楽しくて仕方がないと言う表情をしていた。
「仕方がありません。可愛いじゃありませんか、マクシナス様。」
「むう・・・・。では話をしたいのだが・・・。」
「畏まりました。ねえ、お姉ちゃん、これからマクシナス様とお話があるの。
出ていてくれる?」
子供達は口々に返事をしながら出ていった。

そして・・・・。
「この度の戦功見事であった。」
「ありがとうございます。」少女はゆっくりと振り返った。
「ガスタブルグの者たちはみな退却し、しばらくは出て来れないだろう。
貴君も疲れただろう、ゆっくりと休むがよい、マリエン。」
ショートカットの少女はあのマリエンであった。そう彼女はベルクファクスの
ヤゲロー皇子に救われてここにいたのである。
「ありがとうございます・・・・。それで「ネロ君」の行方はどうなったのですか?」
「いや・・・・まだだ。もう少し待ってくれ。今探しているが・・・・。」
「そうですか・・・・。」マリエンはショボンとなった。
「マリエン・・・そんなに落胆するでない。きっと会えるからそれまで信じておれ。」
それを聞いたマリエンはぱっと明るく笑った。
「ありがとうございます!!マクシナス様。お褒めのお言葉ありがとうございます。」
「うむ・・・・。」マクシナスはそのまま部屋を出ていった。
一人残されたマリエンは・・・・窓のほうを見ていた。
「ネロ君・・・・私待っているんだよ、私の身体が高等魔族になっちゃったけど
今でも・・・あの記憶があるんだ。会いたい・・・ネロ・・・・君。」
マリエンは一人泣いていた。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(6) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 7月18日(火)19時 6分35秒 

               3.三国鼎立

どうしてベルクファクスはマリエンを重用しようとしたのだろうか・・・。
それはマクシナスの方針があったからである。
ヤゲロー皇子が連れてきたマリエンには最初マクシナスはまるで興味を示さなかった。
むしろ毛嫌いしていた感があった。
だが、魔族へと生まれ変わりしばらくヤゲローの話し相手になっていたマリエンを
見たときマクシナスは面白いことに気がついたのだ。

ちなみに一言でマクシナスを言うなら・・・・。
「冷淡。白皙が似合う男である。そして「切れる」。エリートなのだがそれだけに
収まらない魅力がある。まるで老獪な政治家のようだ。」

マリエンが試しに歌っていた人間界の「歌」に心を惑わせる効果がある事に気がついた。
それは耳をふさいでも鼓膜を通り越して直に脳まで到達する魔の歌声その物だった。
しかもマリエンは人間だったとき村の歌コンテストで優勝するぐらいの腕前だったのである。
そして・・・・・。
「マリエン。どうだ、その歌を父上にも聞かせてもらえないか?」
マクシナスはマリエンに話し掛けた。
「兄上?どうしたのですか?」ヤゲローはただ驚くしかなかった。
「ふっ・・・・今心が乱された。父上にもお聞かせたいのだ、協力してくれ、ヤゲロー。」
「わかったよ、兄さん。まったく・・・・何か考えたね。」
「まあな・・・・。」不敵な笑みを浮かべたマクシナスをマリエンはただ見ている
しかなかった。
「あの〜わたくしに何かミスでも・・・。」
「いや、何でもない。とにかく頼む。」マクシナスは頼み込んだ。
「そういうことでしたら・・・・。」

「なるほど・・・・・。」普段からあまり話さないギアはマリエンの歌声を聞いて
感づいたようだった。
「マクシ(マクシナス)。この件はおまえに一任する。
それからマリエン、お前を三年間徹底的に育てる。失敗しても構わんから
徹底的にやってもらう。良いな・・・・。」
「あの・・・どう言うことでしょうか・・・。」
ヤゲローがマリエンに耳打ちした。
(父上はマリエンの「歌」に興味を持ったんだよ。だからやって欲しいんだ。)
(それは・・・つまり・・・・わたくしも人殺しをしろと。)
(まあ・・・言ってしまえばそうだ。だが、ここで協力をして欲しい。まず私達が
マリエンの初恋の男性を探す。そうしたら・・・。)
(わかりました・・・・。それにネロ君に会えなくてもいつかはギア様に忠誠を
誓うつもりでしたから・・・。)
(どうして・・・・・。)
(それは・・・・・私が魔族だからです。助けてもらったのに何もしていないのは
失礼にあたるからです。だから・・・一生懸命がんばります。)
(わかった・・・・。)ヤゲローは今言ったことをギア、マクシナスに伝えた。

そうして・・・・・マリエンは忠誠を誓うことになったのである。

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(7) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日: 7月19日(水)19時38分16秒 

                3.三国鼎立

一方ここは中原の国、ギーガン。
そこの王、獣王「ガッシュ」は荒れていた。あちこちには酒瓶が散らばり、辺り一面
酒の匂いで充満していた。
「ちくしょう・・・・まるで・・・・籠の中の何かだ・・・。」
ガッシュはそれだけ言うとまた飲み始めた。
家臣の一人がそれを宥めようとするが逆に火に油を注ぐようなものであった。
どうしてこうなったのか説明をしよう。

・・・・・・中原の国、ギーガンは昔こそピサロが治めていた国の一つであった。
だが、ピサロが人間界に行き、そこで勇者「ユーリル」に敗れると
中原の諸国は周りの諸国の絶好の獲物になってしまったのである。
そう、ギルモアもそうした中原の国々の将軍の出だった。だが彼は遠征に行ったきり
戻らず、そのままガスタブルグ地方を領有するに留まったのである。
そうしてあちこちに北部連合、南部連盟、海洋共同体、と言った連盟を作りだし、
ギーガンの言う事など聞かなくなっていった。

今・・・ギーガンの置かれている立場は非常に厳しい物であった。
ギーガンは西に行けばガスタブルグ王国の首都、「ダークウィロー」に着き、
東に行けばライゼーラ帝国の帝都「ディープ・シー」に着く。
さらに街道を南下し、さらに山々を越えたところにあるのはベルクファクス王国
首都、「黄鶴都」がある。それぞれがギーガンに干渉し、大臣の買収、
さらには大臣同士が「ベルク派」、「ガスタ派」、「ライゼ派」に分かれて
闘争している状態だったのである。

ガスタブルグがベルクファクスに敗れる、という報はギーガンにも届いた。
だが、ギルモアの動きのほうが速かった。すぐにギーガンにガープを大将とする
左軍20万がギーガン国内にて示威行進を行い、牽制をかけたのである。
そのあとにはライゼーラが乗りだし、王を無視して行進をし、ベルクファクスも
同じ事をやってしまったのである。
つまり人の庭で勝手に領民安堵の練習をしてしまったのである。これでは
ガッシュの立場が無い。
それでガッシュは荒れていたのである。
「くそっ・・・・父代より預かりしこの領土を・・・何でこんなにも・・これでは
先祖に申し訳が立たない。」
「ですが・・・・・今の状態では・・・・それに領民たちが不安がっています。
「もしかしたら・・・大きな大戦が起きたらこの国はまず滅亡すると・・・・。」
そうしたら・・・もっと三国に被害が及びます。ここは我慢して下さい。
今はとにかく緩衝地帯になっていることを利用して国力をつけるべきです。
「我慢」です。陛下。」
「・・・・・・・くくっ。獣王とさえ言われたこの俺が・・・・。すまぬ・・・大臣
負担をかけるな・・・。」ガッシュは泣くしかなかった。
「いえ・・・今は辛抱です。私は父王よりのご恩がありますから陛下に忠誠を
誓っておるのです。とにかく領民ともども陛下のご恩に報いようとしております。
ここを我慢です、陛下。」
「わかった・・・・・すまぬ・・・・。」
ガッシュは酒盃を一気に仰いだ。だが酒の味は苦かった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(8) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日: 7月19日(水)21時29分07秒 

                3.三国鼎立

ここは「忘却の荒野」。もう日が暮れあたりが寒く、暗くなって行く・・・。
だが、小屋には明りが灯っていた。
その小屋の中で二人の男性がマップを見ながらあちこち指差していた。
「なあ、これは・・・どこだ?」ネロはマップを見ながらある地点を指差した。
「これが・・・お前さんとおれを追放した「ガスタブルグ」だよ。そしてお前さんが
指している地点は「ダーク・ウィロー」と言ってガスタブルグの首都だよ。」
「でかい・・・・こんな広大な領土を・・・・。」
「まあな・・・・ギルモアはただのバカじゃない。あいつは全土から有能な人材を
集めるのが上手いのさ。俺もそうしてスカウトされたのさ。」
「・・・・・・。」
「お前さんもその一人だよ。」
「えっ・・・・・・。」
「アイツさ、魔族の中でもまだ子供をスカウトしては育て上げるんだよ。そうして
改めて王国に忠誠を誓わせるのさ。」
「へえ・・・・。知らなかった・・・・。」

こうした制度は昔のオスマン=トルコ帝国に見られる。「イェニチェリ」という制度
である。これにはヨーロッパ人の少年を改宗させ、訓練させて常備歩兵軍団を
作り出したのである。

「じゃあ、これは・・・・?」ネロは別の地点を指差した。ちょうど真中の地点である。
それを見た途端、ライの表情は暗いものになった。
「こいつは・・・・・「ギーガン」だ。」
「ギーガン・・・?」
「ああ、中原の国でな。昔「ピサロ」という男が支配していた国の1つだよ。
だけどな、今は見る影も無い。いいか・・・。」
ライはネロの人差し指をとってあちこち動かし始めた。
「まず・・・・ガスタブルグ、それから・・・・。」ネロの指は西を指した。
「シャリムが治める帝国、「ライゼーラ」、それから「沙漠王」が治める
王国、南部の大国家「ベルクファクス王国」・・・・。」

ネロはただ驚くしかなかった。父ゾイドはそんな事教えてくれなかった!!

「これらが全て「ギーガン」を狙っている。言わば緩衝地帯なんだよ、ここは。
そして・・・・「爆弾庫」というあだ名がある。それだけ危ない国の1つだ。」
「ギーガンの王って誰なの?」
「うん・・・「ガッシュ」と言う男だよ。まあ、俺のダチだけどな。でも領民は
みな不安な生活をおくっているらしいぞ。」
「どうして・・・・・。」
「三国とも口と心がバラバラなんだよ。言っている事としている事が全部違う。
建前と本音が違うんだ。みな「ギーガン」が敵国に攻め込む先兵としか見ていないんだよ。」
「・・・・・・なんで・・・そんな事になるんだよ・・・。」
「それが国益と言う奴なんだ・・・。ギルモアもシャリムもそしてギアも・・・。」
「ギア・・・?」
「ああ、ベルクファクスの王さ。「沙漠王」って皆呼んでいる。しかし、ギアも
恐ろしいが一番恐ろしいのは・・・その息子達だな。まず凄いとしか言えない。」
「そんな・・・魔族が・・・?」
「ああ・・・・俺なんかよりも話に成らん。ギルモアはそのギアの息子、つまり皇太子
が欲しいって言っていたぐらいだからな。」
「どんな人なんだ・・・?」
「そうだな・・・・ギアには二人の息子と一人の娘がいる。娘はある若将軍の嫁になっている
からこれから外す。そうなると一番恐ろしいのは、マクシナスとヤゲローだ・・・。」
「マクシナス・・・?ヤゲロー・・・?」
「ああ・・・・一筋縄ではいかない連中だ。むしろ清濁併せ呑むって感じだ、マクシナスは。」
「つまり・・・・・。」
「つまり・・・・有能な政治家であり、トップクラスのエリートだよ。
神童って呼ばれていたこともあるって噂になっていた。」
「・・・・・・・・・。」
「あとは・・・・。」
ライは話を続けていたがネロはほとんど聞いていなかった。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(9) 投稿者:on see(おんしー)  投稿日: 7月20日(木)10時12分56秒 

                3.三国鼎立

「僕は・・・・どうすればいいのだろうか・・・。」
ネロは説明していたライのセリフをさえぎって話かけた。
話の腰を折られたライは不機嫌そうにネロに答えた。
「そんなもん、おまえが判断しろよ。いつまでもおれにくっ付いていたってしょうがないぞ。
もう俺から離れて良いようにサインは出していたのだがな。」
「えっ・・・・・・。」
ネロは気がつかなかった。いつそんなもの、出していたのだろう・・・・。
「そうだな・・・・。おれが剣を片付けていた時、お前は
どこにいた?」
「えっと・・・・・・。」ネロはしばらく考え込んでいた。
だがどうしても分からなかった。
「おまえは俺の側にいた。このまま出て行ってもおれは止めなかった。何故だと思う?
俺はお前に外の世界を知って欲しいと思ったからだ。いつまでもこの閉鎖された
世界にいたのでは逆にギルモアはおろかギアも、シャリムと言った
相手と勝負することなどできないぞ。それにマップをみてお前は知らなかったな。」
「そんな事無い・・・・・と思う。」
「嘘をつくな。お前の剣はあそこにある。おまえがこれからどうするか俺には
見当もつかない。だがら、俺はお前が羨ましいと思う。世界を相手に何かできるのでは
ないかと思うんだ。だから、これからはお前の番だ。」
「ライ・・・・・。」
「さて・・・・どうする?おれはこのままここにいるが・・・それとも明日練習するか
俺と。どっちでも良いぞ。」ライはじっとネロを見た。
「まだ・・・・・分からない・・・よ。」
「そうだな・・・・今日はもう寝て明日結論を出せや。それからでいいだろう。」
ネロは言われるまま寝床に行こうとした。そのネロの背後から声がした。
「だがな、いつまでも逃げていたら・・・マリエンだっけ、エリス・・・?
だったな、彼女らに笑われると思うが。」
「・・・・・・・・。」ネロは寝床に潜り込んだ。そしてそのまま深い眠りに
落ちて行くのに時間はかからなかった。

(羨ましいよ・・・・。)ネロの頭の中にさっきライが言った事が反復して思い出される。
「一体・・・これからどうすればいいのだろう・・・。」
ネロはそんなことを考えていた。

                   ***

一方マクシナスも同じようにマップを開いていた。
「しかし・・・このギーガンという国を最大限利用しないとこちらからの玄関口が
ないというのも何か不便だな。何か手があると良いのだが・・・。」
暗い部屋の中でマクシナスは本を読み、マップを凝視していた。
机の上の蝋燭が灯り、彼の影が揺らめいている。
「う〜む・・・・。こうしていても埒があかない。ここでライゼーラあたりが攻めてくれば
口実ができるのだが・・・・ギーガン国内にいる入植者保護の為と銘打ってやれば動ける。」
(・・・・・・申し上げます。)
微かに声がした。だが、蝋燭の小さな炎は動いていない。
「メリクリウスか・・・・・。どうした・・・・。」
(ライゼーラ帝国内でギーガン擁護派の意見が強まりました。おそらく属国化
するのではなく・・・・・。)
「飼い犬にでもするのだろう・・・あのシャリムならやりかねない。
どうせギーガン内の「ライゼ派」の者たちが手引きしたのだろう。
先に死ぬのはギーガンか・・・。そうしたら「大国の理屈」が動くわけだ。たぶん
同じ理由だろうな、私とシャリムの理屈は・・・。メリクリウスよ、
今度はガスタブルグの動き探っておいてくれ。連中、何か手を打ってくるぞ。」
(御意。すべてはギア様の御為に。)
メリクリウスの気配が遠ざかって行った。
「ふふっ・・・・面白くなってきたな。」マクシナスは不敵な笑みをもらした。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(10) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 7月20日(木)17時 1分08秒 

               3.三国鼎立

ここはガスタブルグ城。城内の様子を一望できるテラスにギルモアとその妹ニュクス、
そしてミルルがいた。背後にはアルファスがついていた。
「ミルルや・・・・お前何歳になった?」ギルモアは後ろにいた竜少女に話し掛けた。
「私は16歳になりました。」
「そうか・・・・もう16歳か。お前の母パーンが生きていたら喜んでいただろう。
そろそろ実戦を学ばせたいと思うのだがお前は何が得意だ?」
「えっ・・・・・・。」
「実戦ですよ、ミルル。一国の姫ともあろう者が武術の一つもできなくてどうしますか。」
ニュクスがたしなめた。
「え〜っと・・・・。」ミルルはわからない、という表情を浮かべた。
「何かガープから教えてもらったか?」ギルモアは問い詰めた。
「でも・・・・おかしいって思われます。その・・・・。」
「どんなものでも良い。お前がこうだ、と思う道具で。」ギルモアはアルファスを呼んだ。
「何か・・・・。」アルファスは跪いた。
「ミルルに武器を持ってきてくれ。剣でも槍でも。」
「はっ・・・・・。」アルファスは部屋を出ていった。

                  ***

だが・・・・ミルルには剣も槍も似合わなかったのである。
「お前は何が出来るんだ?」ギルモアが呆れながら近くにあった扇でパタパタを
涼を取っていた。
「では・・・・・・その扇を・・・・。」ミルルは指差した。
「これか・・?こんなものを使うより弓とかあるいはドラゴン用の武器やギーガが
良く使うハンマーのほうが・・・。」
「いいではありませんか、ギルモア。私も姪がどういう風に使うのか見てみたい。
誰かいますか?」ニュクスは誰かを呼んだ。
「はっ・・・・・。」ニュクスに呼ばれたのか、シールド・ヒッポが部屋に入ってきた。
「今からこの子の相手をして頂戴。」
「えっ・・・ですが・・・。」
「いいですから。」
「畏まりました。ではミルル様、痛くなったら止めますので。」
「あっ、はい。お願いします。」

               ***

「では、行きますよ、姫様。」シールド・ヒッポは両手に持っていた盾を構えた。
「はい!!」ミルルは扇を片手に襲い掛かった。
しばらくして・・・・・5〜6分が経っただろうか・・・。
「姫様、参りました!!」そう言いながら
シールド・ヒッポは盾を放り出して地面に伏せていた。 
「ほう・・・・・今の動き見えなかった。そうか、ミルルの武器は扇か。
竜の持つ気の力を刃にして敵に叩きつけるのか・・・言うなればカッターのように
なるわけだな・・。これは凄い。」ギルモアはしきりに感心していた。
「でも・・・・どうして・・・・。」ニュクスは尋ねた。
「ふっ・・・・・もともとミルルが戦闘用の竜だという事だ。だからあの扇子を
ミスリル(銀)のような物なら・・・魔力の伝達もスムーズに行くだろう。
あの子はそれを本能でやっていると言うことだ。」
「そんな・・・・だとしたら・・・・・。」
「そうだ・・・明日からは戦闘訓練もスケジュールに入れておこう。戦闘術さえ
わかるようになればすぐに戦い方なんて理解するようになる。」
ギルモアは腕を組んでミルルを見ていた。
(続く)    

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(11) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 7月21日(金)21時16分16秒 

                3.三国鼎立

その頃・・・・ライが住んでいる小屋に目指して歩いている人物がいた。
夜の中、その人物は寒さで震えながらもマップを頼りに歩いていた。
「もう・・・・少しだ・・・・。あともう少しで・・・・。」吐く息に白さが混ざる。
それでもその人は歩いていた。
そして・・・・・・。

            ***

ドンドン、ドンドン・・・・・・。
その人物はようやく小屋にたどり着いた。そしておもむろにドアを乱暴に叩いた。
「う〜ん・・・・ライ・・・誰か来たようだよ・・・。珍しいね、こんな場所に。」
ネロは隣で寝ているはずのライに話し掛けたが返事が無い。
「ライ・・・・・?」ネロは起きてみるがもうそこには彼の姿は無かった。
ベッドに立てかけてあった剣も消えている。
ネロは文句を言いながら同じく立てかけてあった剣を取って客間に向かったのだった。
そこで見たものは・・・・。

                  ***

「久しぶりですね、ライ殿。」その人物はフードを目深にかぶり顔が見えないように
していた。それに対してライはただ頷くだけである。
「それにしても・・・・ギーガン国の宰相が何の御用ですか。ここには何もありませんが。」
「おや・・・・もう分かっていたのですが。もう少し考えたほうが良かったですかな。」
「・・・・・・バレバレですよ。一流の剣士ともなれば大体分かります。」
そうこの人物はギーガン国の宰相であった。彼は遠路はるばるここまで来たのである。
だが、宰相はそんな事も関係無くただ笑うだけであった。
「ネロ・・・・このお方に何か暖かい飲み物を。それが終わったらドアの前で張り付いていろ。」
「えっ・・・・・。」
「そうだ・・・これから大切な話がある。宰相は笑っているが目はほとんど笑っていない。
俺のダチに何かあったのだろう・・・・。」
「ガッシュ・・・・・さん・・・・?」
宰相は無言で頷いた。そうして話始めたのだった。だがこの話がネロの運命を変えるとは
この時は誰も予想できなかったのである。
この話はまた今度に。
(続く)

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闇の覇者・真王たる者・三国鼎立(12) 投稿者:おんしー(on see)  投稿日: 7月21日(金)21時46分50秒 

                3.三国鼎立

そうして彼はゆっくりと話し始めた。
「まず・・・・・我々の状況について説明をしなければいけません。もうご存知かも
知れませんがかつて我々の国は中原の国として随一の繁栄をしていました。
今は・・・・見る影もありませんが。それはおいといてこれを見てください。」
そう言って宰相はマップを取り出した。そこにはギーガンを囲む国々が
汚い皮用紙に書かれてあった。
「どうしたのですか・・・・・。まさか三国のひとつが戦争を!!」
「それでしたら私はここにいません。」
「そうですね・・・では・・・どうしたのですか?」
「実は・・・・・。」

宰相の話によると三国のひとつであるライゼーラ帝国がギーガンから退却する、という
のである。だが、その際、ライゼーラの将軍であり、有能な武将であるバロールが
帯剣したまま殿中にあがりこみガッシュに要求を突きつけたと言うのである。
「ほう・・・・それで?」
「ガッシュ様はさすがにお怒りになりましたが、バロールめの背後にいる兵士たちが
一斉にこちらに武器を構えるので・・・止む無く・・・・。」
「要求を受け入れたのですか!!そんな事をしたら・・・間違い無くベルクファクスと
ガスタブルグは敵として攻めてきます!!」
「いえ・・・・返事を待ってくれ、ということで私がうまくこの場はまとめましたが
・・・・・・。」
「どういう要求だったのですか・・・・。」ライは気になったのか尋ねたが
予想できるのだろう、苦虫を噛み潰しているような表情をしていた。
「・・・・・・・・・・あなたが思っていることですよ。つまり・・・・。」
「国内干渉を止める代わりにギーガン国に対する保護優先権、ならびに
軍隊駐留権の要求ですね・・・・。」
「そう言うことです。つまり・・・・・・保護国として生を受けろ、と言っている
ようなものです。ですが・・・話はそれだけでありません・・・・。」
「と言うと・・・・。」ライは何か悪い予感がした。
「はい・・・・・ご想像の通りですが・・・・・。ガスタブルグとベルクファクスから
親書が届きました。」
「なぜ・・・・・両国だと?」
「わかりませんか・・・・・二つとも開けずとも紫の糸で編まれた布が被せられ、
もう一つは・・・生糸を黄色で染めた物が被せられていました・・・それだけで
分かるでしょう・・・・・。」
「どう言うことなの・・・・・?」ネロが心配そうに尋ねた。
「あっ、こら!!しょうがねえなあ・・・つまりな、この三国は王家のみが使うことが
許されている「色」というのがあるんだよ。ベルクファクスは黄色、ガスタは紫、
そしてライゼーラは藍色なんだよ。むろんギーガンにもそれはある。だが
こうして親書としてやってくるということは・・・・。」
「と言うことは・・・・・・?」
「つまり・・・・「要求」ではなく「命令」だと言っているんだよ、ライゼーラの
連中とした事を俺達にもしろ、と言っているんだよ。」
「そんな・・・・・・。」ネロはただ驚くしかなかった。
「で、どうするって、ガッシュの大将は?」
「・・・・・・・・・・。」
「やるのか・・・・正気の沙汰じゃねえぞ。最悪の場合・・・・・。」
「ええ・・・・でも民を塗炭の苦しみから逃すにはこれしかないと仰られて・・・。
そこで・・・・・助けて欲しいのです、ライ殿。貴殿の噂は聞いております。
今一太刀でもいい、思い知らせるのはあなた様しかいないのです。後生だと
思ってお救いください。」
「まあ・・・・ガスタブルグのギルモア公には色々あるしな・・・・いいぜ、付き合う。
そうガッシュに伝えてくれ。」
「はっ・・・有難うございます。ギーガン国に少しでも希望の明りが灯れば・・・・。」
「そうか・・・・・あいつも大変だな・・・・。聞いての通りだ、ネロ。
明日の朝ここを出る。そしてギーガンに向かう。良いな、良く寝ておけよ。」
「ああ!!」ネロは元気良く返事をした。だが、ライの心の中は
複雑であった。
(ネロ・・・・お前だけは俺みたいになっちゃ駄目なんだ・・・だからお前は
ギーガンに着いたら商人に頼んでライゼーラに行ってもらう。ベルクファクスでは
お前はどうなるか分からない・・だから避難民と一緒にライゼーラに
行けば・・・シャリム公は分かってくださるはずだ・・・・。)
ライはそんな考えていた。

・・・・・そうしてここに後世の歴史書に書かれている「ギーガン国第一次侵攻戦」が
始まったのである。
(続く)